説明

電磁弁および電磁弁の組立て方法

【課題】所望の摺動性能を満たしつつ自励振動を抑制することができる電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁100は、スリーブ108の内部の空間に設けられ、通電されたコイル116の働きによりスリーブ108の内部を軸方向に移動する弁体ユニット104と、弁体ユニット104が当接することで流路における作動液の流れが遮断される弁座106bと、弁体ユニット104をハウジングの軸方向に付勢するスプリング110と、を備える。弁体ユニット104は、コイル116への通電時にハウジングを構成するスリーブ108との間で軸方向の吸引力が働く磁性体としてのプランジャ122と、コイル116への通電時にガイド102の内壁に摺動しながら移動する磁性体としてのシャフト120と、を有し、シャフト120は、その軸方向と交差する方向の断面積がプランジャ122の軸方向と交差する方向の断面積よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関し、特に、コイルに電流を供給して可動子を推進させる電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される複数の車輪の各々に与える制動力を電子的に制御することにより走行安定性や車両安全性の向上を図る電子制御ブレーキシステムの開発が盛んに進められている。電子制御ブレーキシステムには、ホイールシリンダ圧の増圧および減圧のために、コイルに電流を供給してプランジャを推進させることにより開弁および閉弁させる電磁弁が広く用いられている。このような電磁弁では、開弁または閉弁時にプランジャが振動して異音の原因となる自励振動が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、このような自励振動の発生を抑制するために、プランジャの側面に強磁性体からなる凸部を設けた電磁弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電磁弁は、凸部に磁束が集中することで凸部とプランジャ室の内周壁との磁気的な吸引力が大きくなり、プランジャとプランジャ室の内周壁との摩擦力が増すことで自励振動を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−39157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の電磁弁は、プランジャとプランジャ室の内周壁との摩擦力が上昇しすぎると摺動性能の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所望の摺動性能を満たしつつ自励振動を抑制することができる電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電磁弁は、作動液が流入および流出するためのポートが形成されているとともに、各ポート間を連通する流路が形成されているハウジングと、前記ハウジングの内部の空間に設けられ、通電されたソレノイドの働きにより該ハウジングの内部を軸方向に移動する弁体と、前記弁体が当接することで前記流路における作動液の流れが遮断される弁座と、前記弁座をハウジングの軸方向に付勢する弾性体と、を備える。前記弁体は、ソレノイドへの通電時にハウジングを構成する磁性体との間で軸方向の吸引力が働く磁性体としての吸引部と、ソレノイドへの通電時に前記ハウジングの内壁に摺動しながら移動する磁性体としての摺動部と、を有し、前記摺動部は、その軸方向と交差する方向の断面積が前記吸引部の軸方向と交差する方向の断面積よりも小さい。
【0008】
この態様によると、摺動部を通過する磁束が吸引部を通過する磁束より少ないため、摺動部での摩擦力を適宜抑えることができる。つまり、摺動部で摩擦力を発生させることで自励振動の抑制を実現するとともに、過大な摩擦力を発生させないように摺動部を通過する磁束を抑えることで所望の摺動性能も実現することができる。
【0009】
前記ハウジングは、前記弁体のうち少なくとも前記摺動部を軸方向にガイドするガイド部材を有してもよい。前記ガイド部材は、前記吸引部が存在する空間と前記弁座が存在する空間とを連通する流路が形成されていてもよい。これにより、予めガイド部材に流路を形成してからガイド部材をハウジング本体に装着することが可能となり、ハウジング本体に流路を形成する場合と比較して、部材の加工や電磁弁の組み立てが容易となる。
【0010】
本発明の別の態様は、電磁弁の組立方法である。この方法は、複数の部材から構成される電磁弁の組立方法であって、弁座を有するシートに弁体をガイドするガイド部材を固定し、ガイド部材に弁体を挿入してユニットを作製する工程と、前記弁体をシートの弁座に着座させた状態で、ガイド部材の端部と前記弁体の張り出し部との軸方向の第1のギャップを測定する工程と、一方の端部に底部を有するスリーブの開口部から弾性体を挿入した後に前記ユニットを挿入し、弁体または弁体に取り付けられたストッパと、スリーブの底部との第2のギャップが所定の値となるまで前記シートをスリーブの開口部に圧入する工程と、を備える。
【0011】
この態様によると、シートをスリーブに圧入する前のユニットの段階で第1のギャップを測定することが可能となる。そのため、部品の寸法誤差や組み付け誤差などにより第1のギャップの値が所望の範囲に含まれていない場合には、容易に新たな部品と交換することが可能となる。また、予め第1のギャップの値が所望の範囲に含まれているユニットを選別してスリーブに装着することができるため、シートのスリーブへの圧入時には第2のギャップの調整のみでよいため、組み立てが容易となる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、電磁弁である。この電磁弁は、作動液が流入および流出するためのポートが形成されているとともに、各ポート間を連通する流路が形成されているハウジングと、前記ハウジングの内部の空間に設けられ、通電されたソレノイドの働きにより該ハウジングの内部を軸方向に移動する弁体と、前記弁体が当接することで前記流路における作動液の流れが遮断される弁座と、前記弁体をハウジングの軸方向に付勢する弾性体と、を備える。前記弁体は、ソレノイドへの通電時にハウジングを構成する磁性体との間で軸方向の吸引力が働く磁性体としての吸引部と、ソレノイドへの通電時に前記ハウジングの内壁に摺動しながら移動する磁性体としての摺動部と、を有する。電磁弁は、前記弁座の孔から流入した作動液が前記弁体へ向かう流れを妨げる遮蔽部を更に備える。
【0013】
この態様によると、弁座から流入した作動液が直接弁体に向かうことが抑制されるため、作動液の流体力が弁体に与える影響、例えば起振力が低減される。そのため、自励振動の抑制を実現するために、過大な摩擦力を発生させる必要がなくなり、所望の摺動性能も実現することができる。
【0014】
前記ハウジングは、前記弁体のうち少なくとも前記摺動部を軸方向にガイドするガイド部材を有してもよい。前記遮蔽部は、前記摺動部と前記弁座との間の空間に位置するように前記ガイド部材に設けられていてもよい。これにより、部品点数を低減することができるとともに、組み立てが容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電磁弁によれば、所望の摺動性能を満たしつつ自励振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置の系統図である。
【図2】第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置に搭載される電磁弁の構成を詳細に示す断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る電磁弁においてシャフトが傾いた状態を示す要部断面図である。
【図4】本実施の形態に係る弁体ユニットの吸引部および摺動部における断面積の大きさを示した模式図である。
【図5】第2の実施の形態に係る電磁弁の構成を詳細に示す断面図である。
【図6】第3の実施の形態に係る電磁弁の構成を詳細に示す断面図である。
【図7】第3の実施の形態に係るガイドの斜視図である。
【図8】図7に示すガイドをC方向から見た上面図である。
【図9】図8に示すガイドのX−X断面図である。
【図10】図6に示すガイド近傍のY−Y断面図である。
【図11】シートにガイドを固定する工程を示す断面図である。
【図12】ガイドに弁体ユニットを挿入し第1のギャップを測定する工程を示す断面図である。
【図13】スリーブに弁体ユニットおよびガイドが固定されたシートを挿入する工程を示す断面図である。
【図14】スリーブにシートを圧入し第2のギャップを調整する工程を示す断面図である。
【図15】第5の実施の形態に係る電磁弁の構成を詳細に示す断面図である。
【図16】第5の実施の形態に係るガイドの斜視図である。
【図17】第5の実施の形態に係るガイドに弁体ユニットを取り付けた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の形態で説明する電磁弁は、液圧を制御する液圧回路などに適用することが可能であり、例えば、車両用の電子制御式ブレーキシステムの液圧回路に用いると好適である。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置10の系統図である。ブレーキ制御装置10には電子制御式ブレーキシステム(ECB)が採用されており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作に応じて車両の4輪のブレーキを独立かつ最適に設定する。
【0019】
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動液としてのブレーキオイルを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。また、ブレーキペダル12には、その踏込ストロークを検出するストロークセンサ46が設けられている。更に、マスタシリンダ14にはリザーバタンク26が接続されており、マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、電磁弁23を介して運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。電磁弁23は、いわゆる常閉型のリニアバルブであり、電流が供給されていない状態では閉弁し、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み操作が検出された場合に電流が供給され開弁する。
【0020】
マスタシリンダ14の一方の出力ポートには、右前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されている。ブレーキ油圧制御管16は、右前輪に制動力を付与する右前輪用ホイールシリンダ20FRに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポートには、左前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されている。ブレーキ油圧制御管18は左前輪に制動力を付与する左前輪用ホイールシリンダ20FLに接続されている。
【0021】
ブレーキ油圧制御管16の途中には右マスタ弁22FRが設けられており、ブレーキ油圧制御管18の途中には左マスタ弁22FLが設けられている。右マスタ弁22FRおよび左マスタ弁22FLは、何れもいわゆる常開型のリニアバルブであり、電流が供給されている状態では閉弁してマスタシリンダ14と右前輪用ホイールシリンダ20FRまたは左前輪用ホイールシリンダ20FLとの連通を阻止し、電流の供給が減少または停止されることにより開弁してマスタシリンダ14と右前輪用ホイールシリンダ20FRまたは左前輪用ホイールシリンダ20FLとを連通させる。以下、必要に応じて右マスタ弁22FRおよび左マスタ弁22FLをマスタ弁22と総称する。
【0022】
また、ブレーキ油圧制御管16の中途には、右前輪側のマスタシリンダ圧を検出する右マスタ圧センサ48FRが設けられている。左前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、左前輪側のマスタシリンダ圧を検出する左マスタ圧センサ48FLが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、右マスタ圧センサ48FRおよび左マスタ圧センサ48FLによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。電子制御ユニット(以下、「ECU」という)90は、ストロークセンサ46の故障などを考慮して、フェイルセーフの観点から右マスタ圧センサ48FRおよび左マスタ圧センサ48FLの検出結果からマスタシリンダ圧を監視する。
【0023】
リザーバタンク26には油圧給排管28の一端が接続されている。この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるポンプ34の吸込口が接続されている。ポンプ34の吐出口は高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプがポンプ34として採用されている。また、アキュムレータ50として、ブレーキオイルの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるアキュムレータが採用されている。
【0024】
アキュムレータ50は、ポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキオイルを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキオイルの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキオイルは油圧給排管28へと戻される。更に、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキオイルの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
【0025】
高圧管30は、右前輪用増圧弁40FR、左前輪用増圧弁40FL、右後輪用増圧弁40RR、および左後輪用増圧弁40RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「増圧弁40」という)を介して、右前輪用ホイールシリンダ20FR、左前輪用ホイールシリンダ20FL、右後輪用ホイールシリンダ20RR、および左後輪用ホイールシリンダ20RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「ホイールシリンダ20」という)にそれぞれ接続されている。増圧弁40の各々はいわゆる常閉型のリニアバルブ(電磁弁)であり、電流が供給されていない状態では閉弁してホイールシリンダ圧を増圧させず、電流が供給されることにより開弁してホイールシリンダ圧を増圧させる。
【0026】
右前輪用ホイールシリンダ20FR〜右後輪用ホイールシリンダ20RRは、それぞれ右前輪用減圧弁42FR、左前輪用減圧弁42FL、右後輪用減圧弁42RR、および左後輪用減圧弁42RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「減圧弁42」という)に接続されている。
【0027】
右前輪用減圧弁42FRおよび左前輪用減圧弁42FLはいわゆる常閉型のリニアバルブ(電磁弁)であり、電流が供給されていない状態では閉弁してホイールシリンダ圧を減圧させず、電流が供給されることにより開弁してホイールシリンダ圧を減圧させる。一方、左後輪用減圧弁42RLおよび右後輪用減圧弁42RRはいわゆる常開型のリニアバルブ(電磁弁)であり、電流が供給されている状態では閉弁してホイールシリンダ圧を減圧させず、電流の供給が減少または停止されることにより開弁してホイールシリンダ圧を減圧させる。
【0028】
右前輪用ホイールシリンダ20FR、左前輪用ホイールシリンダ20FL、右後輪用ホイールシリンダ20RR、および左後輪用ホイールシリンダ20RL付近の油圧配管には、それぞれ対応するホイールシリンダ20の液圧を検出する右前輪用ホイールシリンダ圧センサ44FR、左前輪用ホイールシリンダ圧センサ44FL、右後輪用ホイールシリンダ圧センサ44RR、および左後輪用ホイールシリンダ圧センサ44RL(以下、必要に応じてこれらを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という)がそれぞれ設けられている。
【0029】
上述のマスタ弁22、増圧弁40、減圧弁42、ポンプ34、アキュムレータ50、マスタ圧センサ48、ホイールシリンダ圧センサ44、アキュムレータ圧センサ51などによって油圧アクチュエータ80が構成される。油圧アクチュエータ80はECU90によってその作動が制御される。
【0030】
図2は、第1の実施の形態に係るブレーキ制御装置10に搭載される電磁弁100の構成を詳細に示す断面図である。電磁弁100は、右前輪用減圧弁42FRおよび左前輪用減圧弁42FLに採用される。なお、電磁弁100が他の常閉電磁弁に採用されてもよい。電磁弁100は、ガイド102、弁体ユニット104、シート106、スリーブ108、スプリング110、コイルヨーク112、リングヨーク114、コイル116、およびストッパ118を備える。
【0031】
ガイド102は、円筒状に形成された磁性体であり、軸方向の略中央から一方向側にシート嵌込孔102aが、他方向側にシャフト摺動孔102bが、ガイド102の中心軸と同軸となり且つ相互に貫通するよう設けられている。シャフト摺動孔102bのプランジャ122側の端部には、シャフト摺動孔102bよりも内径が大きい挿通孔102cが設けられている。
【0032】
弁体ユニット104は、シャフト120およびプランジャ(可動子)122を有する。シャフト120は、磁性体によって形成され、一方の端部から所定長さにわたって他の部分より径の細い挿入部120aが設けられている。シャフト120の他端部には、後述する弁座に着座して作動液の連通を阻止するように半球状に形成された先端部120bが設けられている。
【0033】
プランジャ122は、円筒状に形成された磁性体であり、シャフト120が嵌め込まれて固定されるシャフト嵌合孔122aが中心軸と同軸に貫通して設けられている。プランジャ122は、他の外周面よりも径が小さい挿通部122bが一端部から所定長さにわたって設けられている。また、プランジャ122は、シャフト嵌合孔122aが設けられている側と反対側の端部に、ストッパ118がシャフト120の軸方向に取り付けられている。ストッパ118の周囲には、ストッパ118を中心としてスプリング110が配設されれている。プランジャ122は、シャフト120の挿入部120aがシャフト嵌合孔122aに挿入され嵌合することにより、シャフト120に固定される。
【0034】
シート106は、円筒状に形成された非磁性体である。シート106には、中心軸と同軸に作動液が流入するポートとしての作動液路106aが設けられている。作動液路106aは、深部において細くなっており、細くなった作動液路106aとシート106の端部との境界部に弁座106bが形成されている。弁座106bは、弁体ユニット104が当接することで流路における作動液の流れが遮断される。シート106は、弁座106bが設けられた端部からスリーブ108の後述する開口部に圧入され、スリーブ108から抜けることのないよう堅固に嵌め込まれる。
【0035】
スリーブ108は、円柱状に形成された磁性体である本体部108aに厚みが薄い円筒部が同軸となるよう一体的に結合された形状に形成される。この円筒部は、非磁性体によって形成された第1ガイド部108bおよび磁性体によって形成された第2ガイド部108cによって構成される。第2ガイド部108cは開口端部から所定長さにわたって設けられ、第1ガイド部108bは本体部108aと第2ガイド部108cとの間に設けられている。また、スリーブ108には、端部の開口部108dの内壁から外面へと径方向に貫通し、作動液が流出するポートとしての作動液路108eが設けられている。作動液路108eは、油圧給排管28と連通し、作動液路106aから流入した作動液を油圧給排管28を介してリザーバタンク26へ導出する。
【0036】
このようなスリーブ108に対して、プランジャ122を先頭に弁体ユニット104が円筒部内部に挿入される。その後、シート106が端部に嵌合したガイド102が挿通孔102cが設けられた側からスリーブ108の円筒部内部に嵌め込まれて、ガイド102がスリーブ108に固定される。これにより、弁体ユニット104は、シャフト120の先端部120bが弁座106bに向かう方向および弁座106bから離間する方向に移動可能に設けられる。
【0037】
シャフト120の先端部120bは、弁座106bに着座することにより作動液路106aと作動液路108eとの連通を阻止し、弁座106bから離間することにより作動液路106aと作動液路108eとを連通させる。以下、シャフト120の先端部120bが弁座106bから離間する方向を「第1方向」、シャフト120の先端部120bが弁座106bに向かう方向を「第2方向」という。
【0038】
スリーブ108の本体部108aのうち第1ガイド部108bに連結された側の端部には、有底のバネ収容孔108fが設けられている。スプリング110は、圧縮された状態で一端がスリーブ108のバネ収容孔108fの底部108f1に当接し、他端がプランジャ122の底部に当接することにより、プランジャ122に第2方向に向かう付勢力を与える。つまり、スプリング110は、弁体ユニット104を弁座106bに向けて付勢する。したがって、通常は、スプリング110の付勢力によってシャフト120の先端部120bが弁座106bに着座した状態となっている。
【0039】
コイル116は、プランジャ122の外部を囲うよう、スリーブ108の外部において巻回されたソレノイドである。コイルヨーク112はカップ状に形成された磁性体である。コイルヨーク112は、コイル116の径方向外側に、コイル116を囲うように配置される。リングヨーク114は円板状の磁性体であり、中央の挿通孔がスリーブ108の外周に嵌め込まれることによりスリーブ108に固定される。コイルヨーク112は、スリーブ108の本体部108aおよびリングヨーク114に取り付けられる。こうしてコイル116は、磁性体であるコイルヨーク112およびリングヨーク114によってその外周が覆われる。
【0040】
プランジャ122には、第2方向側の端部として、外周近傍に円環状の第1端部122cが形成されている。スリーブ108の底部108gは、コイル116に電流が供給されて発生する磁束により、第1端部122cとの間でプランジャ122に対し第1方向に吸引力を与えるようプランジャ122の第1端部122cと対向する位置に形成されている。以下、プランジャ122の第1端部122cとスリーブ108の底部108gとの間に生じる第1方向への力を「第1吸引力」という。なお、本実施の形態における「吸引力」とは、電磁力や磁力によって与えられる力をいう。
【0041】
電磁弁100は、コイル116に開弁電流より大きな電流が供給されると、シャフト120がシート106の弁座106bから離間することで開弁し、シート106の作動液路106aからスリーブ108の作動液路108eに作動液が流出する。このため、開弁直後に作動液路106a内部の液圧が一時的に低下してスプリング110によって弁体ユニット104が押し返され、シャフト120の先端部120bが再び弁座106bに着座する。これによって作動液路106a内部の液圧が上昇し、再び電磁弁100が開弁する。電磁弁100の開弁直後は、このようにシャフト120の先端部120bが弁座106bに繰り返し当接する「自励振動」が発生する可能性があり、これが異音の発生に繋がるおそれがある。
【0042】
そこで、プランジャ122には、第2方向側の端部として、外周部近傍に円環状の第2端部122dが形成されている。また、ガイド102の上端部102dは、コイル116に電流が供給されて発生する磁束により第2端部122dとの間でプランジャ122に対し第2方向に吸引力を与えるようプランジャ122の第2方向側に位置する。以下、プランジャ122の第2端部122dとガイド102の上端部102dとの間に生じる第2方向への力を「第2吸引力」という。
【0043】
第1の実施の形態に係る電磁弁100では、第1吸引力と第2吸引力との合力によって弁体ユニット104が推進され開弁する。このように第2吸引力を弁体ユニット104に与えることにより、第2吸引力を与えない場合に比べて、同様の推進力を得るために高い値の電流をコイル116に供給することが必要となる。多くの磁束がプランジャ122を通過させて、弁体ユニット104に与える減衰力を増加させることができ、電磁弁100における自励振動を抑制することができる。
【0044】
なお、本実施の形態に係る電磁弁100は、主としてガイド102、シート106、スリーブ108によりハウジングが構成されている。そして、スリーブ108とシート106で囲まれた空間には、作動液路106aと作動液路108eとを連通する流路が形成されている。弁体ユニット104は、このようなハウジングの内部の空間に設けられ、通電されたコイル116の働きによりハウジングの内部を軸方向に移動する。
【0045】
次に、電磁弁100の磁束経路について説明する。なお、以下では主な磁束経路を中心に説明し、それ以外の磁束経路については適宜省略している。
【0046】
電磁弁100においてスリーブ108の本体部108aおよび第2ガイド部108c、プランジャ122、シャフト120、ガイド102、リングヨーク114、およびコイルヨーク112が磁性体である。ここで、シャフト120の先端部120bが弁座106bに着座しているときのプランジャ122の第2端部122dとガイド102の上端部102dとの間隔を第1のギャップgとする(詳細は後述)。第1のギャップgは、ゼロ以上1mm以下の間隔とされている。
【0047】
スリーブ108の本体部108aを通過した磁束は、第1ガイド部108bが非磁性体であるため、まず軸方向にプランジャ122に進む。このように軸方向に磁束が進むことにより、スリーブ108とプランジャ122との間に強い第1吸引力を発生させることができ、スプリング110による弁体ユニット104への付勢力に逆らって、プランジャ122を円滑に第1方向に移動させることができる。
【0048】
次に、磁束はプランジャ122から磁性体であるシャフト120へ向かう。ここで、プランジャ122は、スリーブ108の第2ガイド部108cおよびガイド102の挿通孔102cと、それぞれ径方向に相互に隣接しており、軸方向に重なり合う部分を有する。そのため、プランジャ122を通過する磁束は、シャフト120に向かうだけでなく、一部がスリーブ108やガイド102に向かう。また、シャフト120を通過する磁束は、最終的には、径方向に隣接するガイド102およびスリーブ108を経てリングヨーク114およびコイルヨーク112を通過して再びスリーブ108に進む。
【0049】
図3は、第1の実施の形態に係る電磁弁においてシャフトが傾いた状態を示す要部断面図である。上述のように、磁束が径方向に向かうことにより、弁体ユニット104にはガイド102やスリーブ108の内周壁に向かう吸引力がかかる。そのため、図3に示すように、シャフト120は、コイル116に電流が流れていない場合の静止位置に対して、僅かに傾く。その結果、シャフト120の外周面の一部はガイド102の内周壁に接触する。この状態でコイル116に更に電流が供給されると、弁体ユニット104は、スプリング110の付勢力に逆らってスリーブ108の底部108gに向かって移動する。
【0050】
その際、シャフト120は、図3に示す接触部Aにおいて、ガイド102の内周壁に対して摺動する。そのため、シャフト120とガイド102との間には摺動摩擦力が働くことになる。その結果、シャフト120の自励振動を抑えることができる。
【0051】
ところで、上述のようにシャフト120がガイド102に対して積極的に摺動するように構成すると、場合によっては摩擦力が過大となる。その結果、自励振動は抑制されるものの弁体ユニット104の摺動性が悪化する可能性がある。そこで、本実施の形態に係る弁体ユニット104は、コイル116への通電時にハウジングを構成するスリーブ108との間で軸方向の吸引力が働くプランジャ122、および、コイル116への通電時にハウジングを構成するガイド102の内壁に摺動しながら移動するシャフト120、の形状が工夫されている。
【0052】
図4は、本実施の形態に係る弁体ユニットの吸引部および摺動部における断面積の大きさを示した模式図である。本実施の形態に係るプランジャ122において、主に吸引部として機能するのは、第1端部122cを含む直径L1の円形領域であり、その断面積はS1となる。また、本実施の形態に係るシャフト120において、主に摺動部として機能するのは、直径L2の円周部であり、その断面積はS2となる。
【0053】
本実施の形態に係る弁体ユニット104では、吸引部の断面積S1>摺動部の断面積S2となっている。このように、各部の断面積を異ならせることで、各部を通過する磁束の量が異なることになる。そのため、弁体ユニット104では、摺動部を通過する磁束が吸引部を通過する磁束より少ないため、吸引部での吸引力を下げずに摺動部での摩擦力を適宜調整することができる。つまり、摺動部で摩擦力を発生させることで自励振動の抑制を実現するとともに、過大な摩擦力を発生させないように摺動部を通過する磁束を抑えることで所望の摺動性能も実現することができる。
【0054】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る電磁弁200の構成を詳細に示す断面図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し説明を適宜省略する。
【0055】
電磁弁200は、右前輪用減圧弁42FRおよび左前輪用減圧弁42FLに採用される。なお、電磁弁200が他の常閉電磁弁に採用されてもよい。電磁弁100は、ガイド202、弁体ユニット104、シート106、スリーブ208、スプリング110、コイルヨーク112、リングヨーク114、コイル116、およびストッパ118を備える。
【0056】
ガイド202は、円筒状に形成された磁性体であり、軸方向の略中央から一方向側にシート嵌込孔202aが、他方向側にシャフト摺動孔202bが、ガイド202の中心軸と同軸となり且つ相互に貫通するよう設けられている。シャフト摺動孔202bの外部に開放される側の端部には、シャフト摺動孔202bよりも内径が大きい挿通孔202cが設けられている。また、ガイド202には、シート嵌込孔202aの内壁から外面へと径方向に貫通する作動液路202dが設けられている。作動液路202dは、油圧給排管28と連通し、作動液路106aから流入した作動液を油圧給排管28を介してリザーバタンク26へ導出する。
【0057】
スリーブ208は、円柱状に形成された磁性体である本体部208aに厚みが薄い円筒部が同軸となるよう一体的に結合された形状に形成される。この円筒部は、非磁性体によって形成された第1ガイド部208bおよび磁性体によって形成された第2ガイド部208cによって構成される。第2ガイド部208cは開口端部から所定長さにわたって設けられ、第1ガイド部208bは本体部208aと第2ガイド部208cとの間に設けられている。
【0058】
このようなスリーブ208に対して、プランジャ122を先頭に弁体ユニット104が円筒部内部に挿入される。その後、挿通孔202cが設けられた側からガイド202がスリーブ108の円筒部内部に嵌め込まれて、ガイド202がスリーブ208に固定される。この際、ガイド202の挿通孔202cとスリーブ208の第2ガイド部208cが重なった状態で、矢印Bの位置が溶接される。これにより、弁体ユニット104は、シャフト120の先端部120bが弁座106bに向かう方向および弁座106bから離間する方向に移動可能に設けられる。
【0059】
次に、電磁弁200の磁束経路について説明する。なお、以下では主な磁束経路を中心に説明し、それ以外の磁束経路については適宜省略している。
【0060】
電磁弁200においてスリーブ208の本体部208aおよび第2ガイド部208c、プランジャ122、シャフト120、ガイド202、リングヨーク114、およびコイルヨーク112が磁性体である。スリーブ208の本体部208aを通過した磁束は、第1ガイド部208bが非磁性体であるため、まず軸方向にプランジャ122に進む。このように軸方向に磁束が進むことにより、スリーブ208とプランジャ122との間に強い第1吸引力を発生させることができ、スプリング110による弁体ユニット104への付勢力に逆らって、プランジャ122を円滑に第1方向に移動させることができる。
【0061】
次に、磁束はプランジャ122から磁性体であるシャフト120へ向かう。ここで、プランジャ122は、スリーブ208の第2ガイド部208cおよびガイド102の挿通孔202cと、それぞれ径方向に相互に隣接しており、軸方向に重なり合う部分を有する。そのため、プランジャ122を通過する磁束は、シャフト120に向かうだけでなく、一部がスリーブ208やガイド202に向かう。また、シャフト120を通過する磁束は、最終的には、径方向に隣接するガイド202を経てリングヨーク114およびコイルヨーク112を通過して再びスリーブ208に進む。
【0062】
本実施の形態に係る電磁弁200においても、弁体ユニット104では、吸引部の断面積>摺動部の断面積となっている。したがって、第1の実施の形態と同様に、電磁弁200によっても、摺動部で摩擦力を発生させることで自励振動の抑制を実現するとともに、過大な摩擦力を発生させないように摺動部を通過する磁束を抑えることで所望の摺動性能も実現することができる。
【0063】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態に係る電磁弁300の構成を詳細に示す断面図である。通常、ソレノイドに電流が供給され、弁体ユニット104が駆動されると、シャフト120が軸方向に移動する。このようなシャフト120の移動に伴い、プランジャ122が存在する空間と弁座106bが存在する空間の容積が変化するため、各空間の作動液の量を増減させる必要がある。そのためには、シャフト120とガイド102との隙間を介して一方の空間から他方の空間へ作動液をスムーズに移動させることが求められる。
【0064】
しかしながら、例えば、第1の実施の形態に係る電磁弁100は、自励振動を抑制するために、シャフト120の摺動部がガイド102の内周壁と摺動するように、各部材が互いに近接した位置に配列されている。そのため、作動液の移動がスムーズとは言い難い。そこで、本実施の形態に係る電磁弁300は、シャフトとガイドとの隙間を介した作動液の移動がスムーズになるように、ガイドの形状が工夫されている。
【0065】
なお、本実施の形態に係る電磁弁300は、後述するガイド302の形状が第1の実施の形態に係るガイド102と異なるだけであり、他の部分については図2に示す電磁弁100と同様である。そのため、図6に示す電磁弁300のうち、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し説明を適宜省略する。
【0066】
図7は、第3の実施の形態に係るガイド302の斜視図である。図8は、図7に示すガイド302をC方向から見た上面図である。図9は、図8に示すガイド302のX−X断面図である。
【0067】
図7乃至図9に示すように、ガイド302は、円筒状に形成された磁性体であり、軸方向の略中央から一方向側にシート嵌込孔302aが、他方向側にシャフト摺動孔302bが、ガイド302の中心軸と同軸となり且つ相互に貫通するよう設けられている。シャフト摺動孔302bのプランジャ122側の端部には、シャフト摺動孔302bよりも内径が大きい挿通孔302cが設けられている。また、ガイド302は、円筒部の一部に軸方向にスリット302dが形成されている。スリット302dは、図6に示すようにガイド302がスリーブ108に装着されている状態において、プランジャ122が存在する空間Dからシート106の弁座106bが存在する空間Eまで連通する流路として機能するように形成されている。
【0068】
図10は、図6に示すガイド302近傍のY−Y断面図である。図6、図10に示すように、空間Dと空間Eとの間を作動液が移動する場合、シャフト120とガイド302との隙間だけでなく、スリット302dを経由して作動液が移動できる。そのため、開弁時に弁体ユニット104が移動することで空間Dの容積が減少し、空間Dを満たしていた作動液が空間Eに向かって押し出されるような状況において、作動液は、スリット302dがない場合と比較して弁体ユニット104の動きを妨げることなくスムーズに空間Eに移動することが可能となる。
【0069】
その結果、自励振動を抑制するためにシャフト120とガイド302とが互いに摺動するように隙間が狭く設定されている電磁弁300であっても、作動液の移動がスムーズとなり所望の摺動性能が確保されることとなる。
【0070】
また、ガイド302にスリット302dを形成してからガイド302をハウジング本体であるスリーブ108に装着することが可能となり、スリーブ108に流路を形成する場合と比較して、部材の加工や電磁弁の組み立てが容易となる。なお、ガイド302に形成されるスリット302dは、一つに限られるものではなく、複数であってもよい。
【0071】
(第4の実施の形態)
次に、第3の実施の形態で説明した電磁弁300の組立方法について詳述する。図11は、シートにガイドを固定する工程を示す断面図である。図12は、ガイドに弁体ユニット104を挿入し第1のギャップを測定する工程を示す断面図である。図13は、スリーブに弁体ユニット104およびガイドが固定されたシートを挿入する工程を示す断面図である。図14は、スリーブにシートを圧入し第2のギャップを調整する工程を示す断面図である。なお、上述の各実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0072】
はじめに、図11に示すように、ガイド302のシート嵌込孔302aにシート106の弁座106bが設けられている小径部106cを圧入する。その後、シート嵌込孔302aの先端部Fがかしめられ、シート106がガイド302から抜けないように固定される。次に、図12に示すように、予めユニット化された弁体ユニット104をガイド302のシャフト摺動孔302bに挿入し、シャフト120の先端部120bをシート106の弁座106bに着座させる。この状態で、プランジャ122の第2端部122dとガイド302の上端部302eとの軸方向の間隔である第1のギャップgが測定される。
【0073】
本実施の形態に係る電磁弁の組立方法によると、シート106をスリーブ108に圧入する前のユニットの段階で第1のギャップgを測定することが可能となる。そのため、各部品の寸法誤差や組み付け誤差などにより第1のギャップgの値が所望の範囲に含まれていないことが測定により明らかになった場合には、容易に新たな部品と交換することが可能となる。
【0074】
第1のギャップgの値が所望の範囲に含まれている場合、図13に示すように、スリーブ108の開口部108dから底部108f1を有するバネ収容孔108fへストッパ118およびスプリング110を挿入する。そして、更に弁体ユニット104がスリーブ108の内部に挿入され、プランジャ122の端面にストッパ118が取り付けられた状態でスプリング110に当接する。その際、図14に示すように、スリーブ108の内周壁にガイド302がまず圧入された後、スリーブ108の開口部108dにシート106も徐々に圧入される。
【0075】
ストッパ118は、弁の開閉時における弁体ユニット104のストローク量を規定する役割を果たすものである。ストローク量は、弁体ユニット104がシート106に着座した状態でのストッパ118の先端118aとバネ収容孔108fの底部108f1とのギャップg(第2のギャップ)に対応する。ここで、ギャップgは、蝕針により測定しながらシートの圧入量を変化させることで調整される。このように、本実施の形態に係る電磁弁の組立方法によれば、予め第1のギャップg1の値が所望の範囲に含まれている組み合わせ(弁体ユニット104とシート106が固定されているガイド302)を選別してスリーブ108に装着することができるため、シート106のスリーブ108への圧入時には第2のギャップの調整のみでよい。そのため、組み立てが容易となる。
【0076】
なお、本実施の形態に係る電磁弁300は、ストッパ118とスリーブ108の底部108f1とのギャップgを調整する構成となっているが、ストッパを用いずに弁体ユニットの一部とスリーブの一部とのギャップを調整する構成の電磁弁であってもよい。
【0077】
(第5の実施の形態)
通常、電磁弁のシートから流入する作動液がシャフトにあたると、弁体ユニットに起振力が発生するおそれがある。そこで、本発明者らは、この点に着目して更に検討したところ以下の構成に想到した。本実施の形態では、シートから流入する作動液がシャフトに直接当たりにくいように、シートとシャフトとの間に遮蔽部を設けている。
【0078】
図15は、第5の実施の形態に係る電磁弁の構成を詳細に示す断面図である。なお、上述の実施の形態と同様の構成については説明を適宜省略する。
【0079】
電磁弁400は、ガイド402、弁体ユニット404、シート406、スリーブ408、スプリング410、コイルヨーク(不図示)、リングヨーク(不図示)、コイル(不図示)、ストッパ412を備える。弁体ユニット404は、シャフト414およびプランジャ416を有する。
【0080】
ガイド402は、円筒状に形成されておりであり、軸方向の略中央から一方向側にシート嵌込孔402aが、他方向側にシャフト摺動孔402bが、ガイド402の中心軸と同軸となり且つ相互に貫通するよう設けられている。シャフト摺動孔402bのプランジャ416側の端部には、シャフト摺動孔402bよりも内径が大きい挿通孔402cが設けられている。
【0081】
シャフト414は、磁性体によって形成され、一方の端部から所定長さにわたって径の細い挿入部414aが設けられている。シャフトの他端部には、後述する弁座に着座して作動液の連通を阻止するように半球状に形成された先端部414bが設けられている。
【0082】
プランジャ416は、円筒状に形成された磁性体であり、シャフト414が嵌め込まれて固定されるシャフト嵌合孔416aが中心軸と同軸に貫通して設けられている。プランジャ416は、他の外周面よりも径が小さい挿通部416bが一端部から所定長さにわたって設けられている。また、プランジャ416は、シャフト嵌合孔416aが設けられている側と反対側の端部に、ストッパ412がシャフト414の軸方向に取り付けられている。ストッパ412の周囲には、ストッパ412を中心としてスプリング410が配設されれている。プランジャ416は、シャフト414の挿入部414aがシャフト嵌合孔416aに挿入され嵌合することにより、シャフト414に固定される。
【0083】
シート406は、円筒状に形成された非磁性体である。なお、シート406は、磁性体であってもよい。シート406には、中心軸と同軸に作動液が流入するポートとしての作動液路406aが設けられている。作動液路406aは、深部において細くなっており、細くなった作動液路406aとシート406の端部との境界部に弁座406bが形成されている。弁座406bは、弁体ユニット404が当接することで流路における作動液の流れが遮断される。
【0084】
スリーブ408は、円柱状に形成された磁性体である本体部408aに厚みが薄い円筒部が同軸となるよう一体的に結合された形状に形成される。この円筒部は、非磁性体によって形成された第1ガイド部408bおよび磁性体によって形成された第2ガイド部408cによって構成される。なお、第1ガイド部408bは、円筒部の一部を改質により非磁性化して形成してある。また、第2ガイド部408cには、端部の開口部408c1の内壁から外面へと径方向に貫通し、作動液が流出するポートとしての作動液路408c2が設けられている。作動液路408c2は、油圧給排管28(図1参照)と連通し、作動液路406aから流入した作動液を油圧給排管28を介してリザーバタンク26へ導出する。
【0085】
このようなスリーブ408に対して、プランジャ416を先頭に弁体ユニット404が第2ガイド部408cの内部に挿入される。その後、シート406が端部に嵌合したガイド402が挿通孔402cが設けられた側からスリーブ408の第2ガイド部408cの内部に嵌め込まれて、ガイド402が第2ガイド部408cに固定される。また、シート406は、第2ガイド部408cから抜けることのないよう堅固に嵌め込まれる。これにより、弁体ユニット404は、シャフト414の先端部414bが弁座406bに向かう方向および弁座406bから離間する方向に移動可能に設けられている。
【0086】
シャフト414の先端部414bは、弁座406bに着座することにより作動液路406aと作動液路408c2との連通を阻止し、弁座406bから離間することにより作動液路406aと作動液路408c2とを連通させる。
【0087】
スリーブ408の本体部408aのうちプランジャ416と対向する側の端部には、有底のバネ収容孔408a1が設けられている。スプリング410は、圧縮された状態で一端が本体部408aのバネ収容孔408a1の底部408a2に当接し、他端がプランジャ416の底部に当接することにより、プランジャ416に対してシート側に向かう付勢力を与える。つまり、スプリング410は、弁体ユニット404を弁座406bに向けて付勢する。したがって、通常は、スプリング410の付勢力によってシャフト414の先端部414bが弁座406bに着座した状態となっている。
【0088】
なお、図15において省略されている、コイルヨーク、リングヨーク、コイルについては、その構成や作用は前述の実施の形態と同様である。
【0089】
プランジャ416には、コア側の端部として、外周近傍に円環状の第1端部416cが形成されている。本体部408aのプランジャ側の端面408a3は、コイルに電流が供給されて発生する磁束により、第1端部416cとの間でプランジャ416に対しコア側に向かって吸引力を与えるようプランジャ416の第1端部416cと対向する位置に形成されている。
【0090】
電磁弁400は、コイルに開弁電流より大きな電流が供給されると、シャフト414がシート406の弁座406bから離間することで開弁し、シート406の作動液路406aから第2ガイド部408cの作動液路408c2に作動液が流出する。この際、前述の自励振動が発生する可能性があり、これが異音の発生に繋がるおそれがある。そこで、本実施の形態に係る電磁弁400では、シート406から流入する作動液がシャフト414に直接当たらないように、シートから流入する作動液の流れが規制されている。具体的には、シート406とシャフト414との間に遮蔽部が設けられている。
【0091】
図16は、第5の実施の形態に係るガイドの斜視図である。図17は、第5の実施の形態に係るガイドに弁体ユニットを取り付けた状態の斜視図である。なお、本実施の形態に係るガイド402の形状は、遮蔽部が設けられている以外は図7乃至図9に示したガイド302と同様である。
【0092】
図15乃至図17に示すように、ガイド402は、円筒部の一部に軸方向にスリット402dが形成されている。スリット402dは、図15に示すようにガイド402が第2ガイド部408cに装着されている状態において、プランジャ416が存在する空間からシート406の弁座406bが存在する空間まで連通する流路として機能するように形成されている。また、ガイド402は、シャフト摺動孔402bの内部に遮蔽部402eが設けられている。遮蔽部402eは、弁座406bの孔から流入した作動液がシャフト414に向かう流れを妨げ、第2ガイド部408cの作動液路408c2に向かうように設けられている。
【0093】
本実施の形態に係る遮蔽部402eは、シャフト414と弁座406bとの間の空間に位置するようにガイド402に一体的に設けられている。これにより、部品点数を低減することができるとともに、組み立てが容易となる。また、遮蔽部402eは、シャフト摺動孔402bの軸方向へ作動液が流れることを規制するために、シャフト摺動孔402bの直径とほぼ同じ直径を有する円形部品である。なお、弁座406bが存在する空間からプランジャ416が存在する空間へ作動液が向かう流れを遮断しないように、遮蔽部402eの外周部分のうちスリット402dと対向する部分が切り欠かれている。また、遮蔽部402eの中心部は、シャフト414の先端部414bが通過できるように孔402fが形成されている。なお、遮蔽部402eは、必ずしもガイド402に設ける必要はなく、例えば第2ガイド部408cの内周部に設けてもよい。
【0094】
このようにガイド402の内周部に遮蔽部402eが設けられていることで、弁座406bから流入した作動液が直接シャフト414に向かうことが抑制される。そのため、作動液の流体力が弁体ユニット404に与える影響、例えば起振力が低減される。つまり、自励振動発生の原因である起振力自体を低減することで、自励振動を抑制するために過大な摩擦力を発生させる必要がなくなり、所望の摺動性能を確保しつつ自励振動を抑制することができる。
【0095】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0096】
上述の実施の形態では常閉弁を例に説明したが、常開弁において閉弁時に自励振動が生じる可能性がある電磁弁であれば、本発明を適用することで所望の摺動性を満たしつつ自励振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 ブレーキ制御装置、 40 増圧弁、 42 減圧弁、 100 電磁弁、 102 ガイド、 102a シート嵌込孔、 102b シャフト摺動孔、 102c 挿通孔、 102d 上端部、 104 弁体ユニット、 106 シート、 106a 作動液路、 106b 弁座、 106c 小径部、 108 スリーブ、 108a 本体部、 108b 第1ガイド部、 108c 第2ガイド部、 108d 開口部、 108e 作動液路、 108f バネ収容孔、 108g 底部、 110 スプリング、 112 コイルヨーク、 114 リングヨーク、 116 コイル、 118 ストッパ、 118a 先端、 120 シャフト、 120a 挿入部、 120b 先端部、 122 プランジャ、 122a シャフト嵌合孔、 122b 挿通部、 122c 第1端部、 122d 第2端部、 302 ガイド、 302a シート嵌込孔、 302b シャフト摺動孔、 302c 挿通孔、 302d スリット、 302e 上端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が流入および流出するためのポートが形成されているとともに、各ポート間を連通する流路が形成されているハウジングと、
前記ハウジングの内部の空間に設けられ、通電されたソレノイドの働きにより該ハウジングの内部を軸方向に移動する弁体と、
前記弁体が当接することで前記流路における作動液の流れが遮断される弁座と、
前記弁体をハウジングの軸方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記弁体は、ソレノイドへの通電時にハウジングを構成する磁性体との間で軸方向の吸引力が働く磁性体としての吸引部と、ソレノイドへの通電時に前記ハウジングの内壁に摺動しながら移動する磁性体としての摺動部と、を有し、
前記摺動部は、その軸方向と交差する方向の断面積が前記吸引部の軸方向と交差する方向の断面積よりも小さいことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記弁体のうち少なくとも前記摺動部を軸方向にガイドするガイド部材を有し、
前記ガイド部材は、前記吸引部が存在する空間と前記弁座が存在する空間とを連通する流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
複数の部材から構成される電磁弁の組立て方法であって、
弁座を有するシートに弁体をガイドするガイド部材を固定し、ガイド部材に弁体を挿入してユニットを作製する工程と、
前記弁体をシートの弁座に着座させた状態で、ガイド部材の端部と前記弁体の張り出し部との軸方向の第1のギャップを測定する工程と、
一方の端部に底部を有するスリーブの開口部から弾性体を挿入した後に前記ユニットを挿入し、弁体または弁体に取り付けられたストッパと、スリーブの底部との第2のギャップが所定の値となるまで前記シートをスリーブの開口部に圧入する工程と、
を備えることを特徴とする電磁弁の組立て方法。
【請求項4】
作動液が流入および流出するためのポートが形成されているとともに、各ポート間を連通する流路が形成されているハウジングと、
前記ハウジングの内部の空間に設けられ、通電されたソレノイドの働きにより該ハウジングの内部を軸方向に移動する弁体と、
前記弁体が当接することで前記流路における作動液の流れが遮断される弁座と、
前記弁体をハウジングの軸方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記弁体は、ソレノイドへの通電時にハウジングを構成する磁性体との間で軸方向の吸引力が働く磁性体としての吸引部と、ソレノイドへの通電時に前記ハウジングの内壁に摺動しながら移動する磁性体としての摺動部と、を有し、
前記弁座の孔から流入した作動液が前記弁体へ向かう流れを妨げる遮蔽部を更に備えることを特徴とする電磁弁。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記弁体のうち少なくとも前記摺動部を軸方向にガイドするガイド部材を有し、
前記遮蔽部は、前記摺動部と前記弁座との間の空間に位置するように前記ガイド部材に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−12808(P2011−12808A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86140(P2010−86140)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】