説明

電磁弁

【課題】経済的に過流防止を行なうことができるとともに、上流側流体圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制可能な電磁弁を提供する。
【解決手段】弁体17が電磁的に駆動されて流路が開閉される遮断弁(電磁弁)3において、流体圧に抗して弁体17を開状態に保持するソレノイドのコイル18の保持電流値を、遮断弁3の上流側流体圧(一次圧)に応じて選択する制御部を備えた。台座の弁座に対する相対位置を上流側の流体圧によって調整可能にしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。さらに詳述すると、本発明は、ガス等の流体の供給流量を制御可能な電磁弁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料ガスと酸化ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池の発電電力で走行用モータを駆動する燃料電池自動車や、天然ガス(CNG)を内燃機関で燃焼させて走行用の駆動力を直接得る天然ガス自動車等において、燃料ガスのタンク用の開閉弁として電磁弁が多く利用されている。
【0003】
この場合における電磁弁は、一般に、閉弁方向に付勢するバネ力と流体から受ける力との合力に対し、閉弁しない程度の一定電流をコイルに通電することによって開弁状態を保持するように制御されている。また、仮に当該電磁弁の下流側の部品にてガス漏れが生じた場合に備え、EFV(過流防止装置)が併設されていることもある。あるいは、燃料ガスの流路に流量測定器を設置し、別に設置した流量判定器によって過流判定を行ない、所定の時には電磁弁への通電を遮断して閉弁するようにした制御装置も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−153136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電磁弁とは別に上述したような流量判定器をさらに設けると、コストや質量等が増加するという問題がある。
【0005】
また、EFV(過流防止装置)として機械式のものが設けられる場合もあるが、このような過流防止装置を用いた従来のシステムでは、タンク圧力によって作動質量流量が変化するから設計自由度が減るという問題がある。即ち、EFVにおいては、弁体を付勢するバネが、一次圧(当該弁の上流側の流体圧)の高低にかかわらず弁体と弁座との距離を一定に保持する構造となっているため、一次圧が高いと閉作動時の質量流量が大きくなる閉作動特性がある(図6中に符号Xで示すマップ参照)。つまり、弁体と弁座との隙間を通過する燃料ガスの体積流量は一次圧の高低によらずにほぼ一定であるものの、一次圧が高圧であるほど燃料ガスの密度が高くなることから、これに伴って閉作動時の質量流量が高くなってしまう。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、経済的に過流防止を行なうことができるとともに、上流側流体圧(一次圧)の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制可能な電磁弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、流体の流路を開閉する弁体と、該弁体を電磁的に駆動してストロークさせるコイルとを備えた電磁弁において、前記流体の流体圧に抗して前記弁体を開状態に保持する前記コイルの保持電流値が、当該流体の流体圧に応じて制御装置により制御されるようになっている。
【0008】
この構成によれば、一次圧(当該弁の上流側の流体圧)に基づく弁体の制御が可能であるため、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を電気的に抑制することが可能となる。この場合、制御装置には、予め弁体を開弁状態に保持するための保持電流値と一次圧との関係を表した制御マップを記憶しておくことができる。
【0009】
かかる電磁弁においては、前記コイルの保持電流値が、前記流体の流体圧にかかわらず略一定の質量流量となった場合に前記弁体が閉状態となるように当該弁体を開状態に保持する値に制御されることが好ましい。こうした場合、当該流体がある質量流量に達したところで弁体自体の過流防止機能を作動させて閉弁状態とすることができる。
【0010】
また、前記流体の流体圧が増えるにつれ、前記コイルの保持電流値が少なくなるように制御されることも好ましい。これによれば、弁体を保持するのに要する電流の消費を抑えることも可能となる。
【0011】
また、本発明は、流体の流路を開閉する弁体と、該弁体を電磁的に駆動してストロークさせるコイルとを備えた電磁弁において、弁体バネを介して台座に支持された前記弁体が前記弁体バネの付勢力に抗して移動して弁座に着座することで流路を閉止するものであり、前記台座の前記弁座に対する相対位置を上流側の流体圧によって調整可能としている。
【0012】
この構成によれば、台座の弁座に対する相対位置を上流側の流体圧(一次圧)によって調整可能としているため、台座に弁体バネを介して支持された弁体と弁座との隙間を一次圧の高低に応じて可変にできる。したがって、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を機械的に抑制可能となる。
【0013】
また、前記台座が移動可能であって前記弁体バネの支持部を前記弁座から離間させる方向に前記流体圧を受ける流体圧受圧部を有しており、該台座を前記流体圧の受圧方向とは反対向きに付勢する台座バネを備えたものでもよい。
【0014】
この構成によれば、上流側の流体圧(一次圧)が高いと台座バネの付勢力に抗して台座が弁体バネの支持部を弁座から離間させる方向に移動して、支持部に弁体バネを介して支持された弁体と弁座との隙間を小さくする。また、上流側の一次圧が低いと台座が弁体バネの支持部を弁座から離間させる方向に移動せず、弁体と弁座との隙間を大きくする。したがって、一次圧が高い場合に弁体と弁座との隙間を狭くして体積流量を減らすことで、質量流量の増大を抑制できるため、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制できる。
【0015】
さらにまた、前記台座が、前記流体圧の受圧方向とは反対向きに大気圧を受圧する大気圧受圧部を備えていてもよい。
【0016】
この構成によれば、台座が大気圧受圧部で上流側流体圧(一次圧)の受圧方向とは反対向きに大気圧を受圧するため、二次圧を受圧する場合のように二次圧による影響つまり下流側の運転状況による影響を抑制して台座の位置を調整できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上流側流体圧(一次圧)によらずにある一定の質量流量にて弁体が閉弁する。即ち、電磁弁により経済的に過流防止を行なうことができるとともに、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る電磁弁が用いられる高圧タンク5の概略図である。尚、本実施形態における高圧タンク5は、燃料電池システムにおける高圧水素ガスを貯留するために使用可能なタンクである。
【0019】
高圧タンク5の開口部には遮断弁(電磁弁)3が設けられている。また、高圧タンク5の圧力を検出する圧力センサ6と、この圧力センサ6の出力を監視するとともに遮断弁3を制御する制御装置10とがさらに設けられている。
【0020】
続いて、図2に遮断弁3の構造の一例を示す。図のように、遮断弁3は、流体(例えば水素ガス)の流路15と、水素ガスを高圧側から低圧側に導くボディ16と、このボディ16に対して軸線方向(流体流れ方向)に移動可能に収容保持され流路15を開閉する弁体17と、を備えている。遮断弁3の弁体17はソレノイドを構成するコイル18により駆動されてストロークする。この際、コイル18に給電される電流が制御装置10により制御されて弁体17が移動する(ストロークする)ようになっている。さらに、弁体17はバネ20により弁座19に対して付勢されることにより流路15が封止されるようになっている。
【0021】
遮断弁3の開弁動作及び開弁状態保持はコイル18の電磁力により行なう。図3に示したように、弁体17には、上記バネ力と流体圧が閉弁方向に作用しており、制御装置10により通常時は上記電磁力がこれら閉弁方向に作用する力を上回り、開弁を保持する。
【0022】
遮断弁3の下流側の流路において破断等が発生した場合、遮断弁3の二次圧(当該弁の下流側の流体圧)が低下して流量が増加する。これにより、弁体17に作用する流体力が増大し、これとバネ力との合力が上記電磁力を上回ると、閉弁することとなる(図4)。
【0023】
ここで、図5に符号X1で示したように、コイル18による電磁力が圧力によらず一定であるとすると、一次圧が高いほど閉作動時の質量流量は高くなってしまう(図6の符号X参照)。この点、本実施形態においては、図5の符号A1で示したマップが制御装置10の記憶部10aに記憶されており、制御装置10は、現在の一次圧に適したコイル18の電流を記憶部10aのマップから読み取って算出するようになっている。このマップは、図6に符号Aで示したように、圧力に拘わらず弁体17が閉となる質量流量(作動流量)が略一定となるような、保持電流と一次圧との関係を表したものである。即ち、図5の符号A1のラインは、圧力が高いほど保持電流が低くなるようなマップである。
【0024】
このように、本実施形態の遮断弁3によれば、タンク圧力によらずにある一定の質量流量にて閉弁する。即ち、遮断弁3により経済的に過流防止を行なうことができるとともに、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制可能である。さらに、コイル18の保持電流を最適化させることができるので、消費電力を抑えることができる。
【0025】
尚、電磁弁保持電流を、タンク圧力だけではなくガス温度も参照して決定してもよい。これにより、閉弁流量の精度を上げることができ、設計自由度の更なる向上、消費電流低減等が期待できる。この場合は、高圧タンク5に圧力センサ6だけではなく温度センサも設け、制御装置10に該温度センサの出力が与えられるようにすればよい。さらに、記憶部10aに、作動流量が略一定となる、一次圧、およびガス温度の関係を記憶させておくことができる。
【0026】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について図7を用いて説明する。本実施形態の遮断弁(電磁弁)4は、過流防止装置27aが設けられたものである。過流防止装置27aを除く遮断弁4の主要な構成は遮断弁3と同様であるため、説明を省略する。
【0027】
過流防止装置27aは、その外側部分を構成するケーシング31を有しており、このケーシング31には、高圧タンク5への連通側(図7左側)に第1孔部32が形成され、この第1孔部32の高圧タンク5とは反対側にこの第1孔部32よりも小径の第2孔部33が形成されている。
【0028】
また、このケーシング31には、第2孔部33の第1孔部32とは反対側にこの第2孔部33よりも小径の第3孔部34が形成されており、この第3孔部34の第2孔部33とは反対側にこの第3孔部34よりも大径の第4孔部35が形成されている。
【0029】
さらに、ケーシング31には、この第4孔部35の第3孔部34とは反対側にこの第4孔部35よりも小径で、下流側に設けられた不図示の燃料電池へ連通する第5孔部36が形成されている。ここで、これら第1孔部32〜第5孔部36は同一軸線上に形成されている。
【0030】
加えて、ケーシング31には、これら第1孔部32〜第5孔部36と同心の円筒状の収容空間部38が第4孔部35を囲むように外側に形成されており、第4孔部35及び収容空間部38の軸線方向中間部分は全周にわたって連通空間部39で連通している。さらに、ケーシング31には、収容空間部38の軸線方向における第1孔部32側の端面と第1孔部32とを連通させる分岐流路41が形成されており、また、収容空間部38の軸線方向の連通空間部39を挟んで両側の内径側それぞれに円環状のシール溝42,43が形成されている。加えて、ケーシング31には収容空間部38の第5孔部36側に大気開放の大気圧ポート44が形成されている。
【0031】
また、過流防止装置27aは、第2孔部33の内周面に嵌合される円環状のシート部材46を有しており、このシート部材46には、第1孔部32側の内周側に面取りされた弁座47が形成されている。
【0032】
過流防止装置27aは、上記したケーシング31内に摺動可能に設けられる台座49を有している。この台座49はケーシング31の収容空間部38に摺動可能に設けられる円筒状の摺動ベース部50と、この摺動ベース部50の軸線方向中間部から内側に円環状に延出し主として連通空間部39内に配置される内フランジ部51とを有しており、この内フランジ部51の内周部は、第4孔部35内まで延出している。また、この台座49の摺動ベース部50の外周面には円環状のシール溝52が形成されている。
【0033】
ここで、ケーシング31の第1孔部32側のシール溝42には台座49の摺動位置にかかわらず常に台座49との隙間をシールするシールリング53が配設され、第5孔部36側のシール溝43にも台座49の摺動位置にかかわらず常に台座49との隙間をシールするシールリング54が配設され、台座49のシール溝52にも台座49の位置にかかわらずケーシング31との隙間をシールするシールリング55が配設されている。
【0034】
加えて、過流防止装置27aは、ケーシング31の収容空間部38内に、その軸線方向における第5孔部36側の端面と台座49の摺動ベース部50との間に介装されるコイルスプリングからなる台座バネ58が設けられている。この台座バネ58は、台座49を軸線方向における第1孔部32側に付勢する。
【0035】
さらに、過流防止装置27aは、台座49の内フランジ部51の内周側の支持部60に一端側が固定され他端側がシート部材46の内側を通過して第1孔部32側まで延出するコイルスプリングからなる弁体バネ61と、第1孔部32内でこの弁体バネ61の他端側に固定される弁体17とを有している。
【0036】
このような構造の過流防止装置27aは、ケーシング31の第1孔部32が高圧タンク5へ、第5孔部36が燃料電池スタック側に向けた状態で吐出流路22aに配置されることになる。この状態で、過流防止装置27aは、弁体バネ61を介して台座49に支持された弁体17が弁体バネ61の付勢力に抗して移動して弁座47に着座することで流路を閉止することになる。
【0037】
また、このとき、一次圧が分岐流路41を介して台座49の摺動ベース部50の第1孔部32側の端面に、台座49を台座バネ58の方向に移動させるように作用することになり、その結果、この端面が、弁体バネ61の支持部60を弁座47から離間させる方向に一次圧を受ける一次圧受圧部63となっている。
【0038】
さらに、台座49の摺動ベース部50の一次圧受圧部63とは反対の端面が一次圧の受圧方向とは反対向きに大気圧を受圧する大気圧受圧部64となっている。そして、台座バネ58は、この台座49を一次圧の受圧方向とは反対向きに付勢する。
【0039】
以上の構造の過流防止装置27aによれば、台座49の弁座47に対する相対位置を上流側の一次圧によって調整可能としているため、台座49に弁体バネ61を介して支持された弁体17と弁座47との隙間を一次圧の高低に応じて可変にできる。
【0040】
具体的には、上流側の一次圧が高いと、図7に示すように、分岐流路41を介して一次圧受圧部63に加わる圧力で台座49が台座バネ58の付勢力に抗して支持部60を弁座47から離間させる方向に移動することになり、支持部60に弁体バネ61を介して支持された弁体17を軸線方向に沿って下流側に移動させて弁体17と弁座47との隙間を小さくする。
【0041】
また、上流側の一次圧が低いと、分岐流路41を介して一次圧受圧部63に圧力が加わっても、台座49が台座バネ58の付勢力で移動せず、弁体17と弁座47との隙間を大きくすることになる。したがって、一次圧が高い場合に弁体17と弁座47との隙間を狭くして体積流量を減らすことで、質量流量の増大を抑制できるため、図6に符号Aで示したように、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制でき、一定に制御できる。
【0042】
しかも、台座49が大気圧受圧部64で一次圧の受圧方向とは反対向きに大気圧を受圧するため、二次圧を受圧する場合のように二次圧による影響つまり下流側の燃料電池の運転状況による影響を抑制して台座49の位置を調整できる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、上記実施形態と同様の効果が得られると共に、圧力によらず作動流量を機械的に一定化させることができるため、上記第1実施形態におけるマップ(記憶部10a)が不要となり、制御ロジックを簡素化させることができる。
【0044】
尚、以上においては、弁座47を位置固定で台座49を一次圧に応じて移動可能にしたが、台座49の弁座47に対する相対位置を上流側の一次圧によって調整可能にできれば良く、台座49を位置固定で弁座47を一次圧に応じて移動可能にすることも可能である。
【0045】
また、ケーシング31が第1大気圧ポート44を有しておらず、また、収容空間部38の第5孔部36側のシール溝43及びシールリング54を有していない構成であってもよい。この場合、台座49の一次圧受圧部63とは反対の端面が一次圧の受圧方向とは反対向きに下流側の二次圧を受圧する二次圧受圧部65となる。
【0046】
このような実施形態においても、上記と同様に、一次圧の高低によって生じる質量流量に対する閉作動特性の変動を抑制できることになり、これに加えて、大気圧ポート、シールリング及びシール溝を減らすことができるため、製造コスト及び部品点数を低減できる。
【0047】
尚、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本発明にかかる遮断弁(電磁弁)3を、タンク直下(システムにおける最上流)でガスを遮断するべく、パイロット式であって小型ソレノイドを利用した構造としてもよい。このような構造の遮断弁3を例示して説明すると以下のとおりである。
【0048】
図8は高圧ガスタンク30の主たる部分を構成しているタンク本体の一端部(口元部)に電磁弁からなる遮断弁3を装着した状態の要部を示す断面図であり、当該遮断弁3は高圧ガスタンク30の外部からタンク室103内、すなわち高圧側に突入している。
【0049】
遮断弁3は、筒状の筐体104を有し、該筐体104の上部が高圧ガスタンク30の口元構成壁101aにねじ105により螺着され、該筐体104の下部がタンク室103内に突入し、上端部が高圧ガスタンク30の外部へ突出している。
【0050】
筐体104内であって、タンク室103内に位置する部分には、励磁用のコイル(電磁コイル)106を巻設したボビン107が配設され、該ボビン107の内周には筒状のガイド108が設けられ、ボビン107の外周には保持筒109が嵌着されている。そして、該保持筒109が筐体104内に嵌挿されている。
【0051】
ガイド108内にはプランジャ110が軸方向に摺動可能に配設され、該プランジャ110の一端にパイロットバルブ111が設けられ、他端はステータ112に接離可能に対向している。
【0052】
そして、コイル106の通電によりプランジャ110がスプリング113に抗してステータ112側へ吸引され、パイロットバルブ111がパイロットシート114より離間して開弁し、コイル106の非通電によりスプリング113の付勢力によってパイロットバルブ111がパイロットシート114に圧接して閉弁する。
【0053】
ガイド108の内周部であって、かつ、パイロットバルブ111の外周部にはパイロットシート114を有するメインバルブ115が軸方向に摺動可能に備えられているとともに該メインバルブ115に対向して筐体104側に環状のメインシート116が配設されており、メインバルブ115がメインシート116に接離可能に設けられている。
【0054】
筐体104におけるメインシート116の中央部にはガス流出路117が形成され、メインバルブ115がメインシート116に圧接することによりガス流出路117が閉塞され、メインバルブ115がスプリング118によりメインシート116より離間することによりガス流出路117が開口される。
【0055】
そして、コイル106に通電すると、プランジャ110が図2において下方へ移動し、タンク室103内の水素ガスが、筐体104に形成した流路119からメインバルブ115とガイド108との隙間130及びメインバルブ115とパイロットバルブ111との隙間131を通じてパイロットシート114部に流入して穴132からガス流出路117へ流出し、更に、流路119側とパイロットシート114部側との差圧が小さくなって、スプリング118の付勢力によりメインバルブ115がメインシート116より離間すると、タンク室103内の流体が、流路119からメインバルブ115とメインシート116との隙間を通じてガス流出路117より流出する。
【0056】
筐体104は、例えばステンレス製またはアルミニウム製とされていて、その上部には、図3に示すように、上記ガス流出路(燃料流出路)117と、ガス流入路(燃料流入路)120とが所定の間隔をおいて貫通形成されている。これらガス流入路120及びガス流出路117は、例えばドリル等の穿孔工具によって加工される。
【0057】
ガス流入路120には、通常時は当該ガス流入路120を閉状態に維持するが所定圧以上の圧力が外部から作用したとき、つまり、ガス充填時にはタンク室103内と外部との連通を許可する逆止弁(図示略)が配設されている。コイル106には、高圧ガスタンク30の外部から電力を供給するハーネス(配線)121の一端が接続されている。
【0058】
本実施形態においては、ハーネス通路120aの上端開口部に密閉シール(シール部材)122が設けられている。つまり、ハーネス通路120aは、ガス流入路120とその途中から兼用されており、高圧ガスタンク30の外表面側に開口するハーネス通路120aの開口部123aに密閉シール122が設けられている。
【0059】
ハーネス121は、高圧ガスタンク30の外表面より内側に開口するガス流入路120の開口部123bからガス流入路120およびハーネス通路120aを通り、大気側(高圧ガスタンク30の外表面より外側)の密閉シール122を介してタンク外部へ引き出される。ハーネス121の他端は、コネクタ124に接続されている。このコネクタ124は、外部電線へ接続される。
【0060】
本発明にかかる遮断弁(電磁弁)3は、このように、タンク直下(システムにおける最上流)でガスを遮断するべく、パイロット式であって小型ソレノイドを利用した構造であってもよい。こうした場合にも、流体流量が規定流量以上となる過流時にバルブを封止できるようにすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係る遮断弁が用いられる高圧タンクの概略図である。
【図2】同遮断弁の構造を示した断面図である。
【図3】同遮断弁が開状態で受ける力を示した模式図である。
【図4】過流時に同遮断弁が受ける力を示した模式図である。
【図5】本実施形態と従来技術における一次圧とソレノイドの保持電流との関係を示した図である。
【図6】本実施形態と従来技術における一次圧と作動質量との関係を示した図である。
【図7】第2実施形態に係る遮断弁の構造を示した断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
3…遮断弁(電磁弁)、4…遮断弁(電磁弁)、5…高圧タンク、10…制御装置、15…流路、17…弁体、18…ソレノイドのコイル、19…弁座、61…弁体バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路を開閉する弁体と、該弁体を電磁的に駆動してストロークさせるコイルとを備えた電磁弁において、
前記流体の流体圧に抗して前記弁体を開状態に保持する前記コイルの保持電流値が、当該流体の流体圧に応じて制御装置により制御される電磁弁。
【請求項2】
前記コイルの保持電流値が、前記流体の流体圧にかかわらず略一定の質量流量となった場合に前記弁体が閉状態となるように当該弁体を開状態に保持する値に制御される請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記流体の流体圧が増えるにつれ、前記コイルの保持電流値が少なくなるように制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
流体の流路を開閉する弁体と、該弁体を電磁的に駆動してストロークさせるコイルとを備えた電磁弁において、
弁体バネを介して台座に支持された前記弁体が前記弁体バネの付勢力に抗して移動して弁座に着座することで流路を閉止するものであり、前記台座の前記弁座に対する相対位置を上流側の流体圧によって調整可能とした電磁弁。
【請求項5】
前記台座が移動可能であって前記弁体バネの支持部を前記弁座から離間させる方向に前記流体圧を受ける流体圧受圧部を有しており、該台座を前記流体圧の受圧方向とは反対向きに付勢する台座バネを備えた請求項4に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記台座が、前記流体圧の受圧方向とは反対向きに大気圧を受圧する大気圧受圧部を備えている請求項5に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−196599(P2008−196599A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32357(P2007−32357)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】