説明

電磁弁

【課題】自励振動を抑制する等によって、より実用的な電磁弁を得る。
【解決手段】流量制御弁たる電磁弁400のプランジャ410の基端側にストレート部420を設け、そのストレート部420より先端側の部分を、先端に向かって直径が漸減するテーパ部422とする。それにより、プランジャ410を、ストレート部420とハウジング120との嵌合部を中心に傾動可能とする。プランジャ410の後退限度を、吸引面196とプランジャ410の肩面との、薄板194を介しての当接により規定し、その後退限度においてもプランジャ410の先端に保持させた弁子としてのボール130が、弁座128としてのテーパ面に接触可能とする。いかなる開度においても、ボール130が弁座128に接触し続け、プランジャ410の軸方向の振動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁子を往復動させて、弁座に着座、弁座から離間させることにより開閉する電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁弁には、例えば、下記特許文献1に記載されているように、ポペット弁がスプリングによって弁を閉じる向きに付勢されるとともに、電力の供給によってソレノイドで弁を開く向きに駆動されるものがある。その電磁弁は、例えば、車両用液圧ブレーキ装置等の液圧制御装置に使用されている。その様な場合に、弁の開閉時に弁子(弁子を保持するプランジャ等を含む)が振動する自励振動が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開11−278233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弁子等の自励振動を抑制するために、例えば、上記特許文献1に記載の技術のように、弁子およびプランジャの固有振動数と電磁弁に接続される低圧側の液通路の圧力変動の固有振動数とが互いに異なるようにすべく液通路の長さを調節する手段がある。しかしながら、その手段によれば、弁子等の共振を生じにくくすることができるが、弁子等の振動に抗する力を付与するものではなく、自励振動の発生を確実に抑制することは難しいという問題がある。このような問題は、従来の電磁弁の実用性を向上させる上で障害となり得る問題の一例であり、電磁弁には種々の観点からの改良の余地がある。すなわち、従来の電磁弁に改良を施すことによって、あるいは、従来と異なる新たな自励振動を抑制する装置、機構、構造、手段を電磁弁に設けることにより、電磁弁の用途や作動条件に応じて適切な1以上の自励振動抑制装置等を選択することができる等、実用性を向上させることが可能である。本発明は、そういった実情に鑑みてなされたものであり、より実用的な電磁弁を得ることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の電磁弁は、(a)高圧側の液通路および低圧側の液通路が接続され、それら高圧側の液通路と低圧側の液通路とを連通させるハウジングと、(b)そのハウジング内に軸方向に往復動可能に設けられたプランジャと、(c)そのプランジャの先端部に保持された弁子と、(d)前記ハウジングの前記弁子と対向する位置に、その弁子に向かって広がるテーパ状に形成され、前記高圧側の液通路が前記弁子によって閉塞可能に開口させられた弁座と、(e)前記プランジャを前記弁座に接近または弁座から離間する向きに付勢する弾性体と、(f)その弾性体が付勢する向きと逆向きにプランジャを移動させる磁気力を発生させるソレノイドと、(g)前記プランジャの往復動を抑制する力を付与する抑制力付与装置とを含み、その抑制力付与装置が、(i)前記ハウジングに設けられて前記プランジャの先端部とは反対側の部分である基端部の、そのプランジャの往復動する方向と直交する方向である直交方向への移動を規制する直交方向移動規制部と、(ii)前記プランジャの先端部の前記直交方向への移動を許容する直交方向移動許容部とを備え、前記プランジャが最大限後退した状態においても、前記弁子が前記弁座に接触することを許容する弁子弁座接触許容機構を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電磁弁によれば、例えば、流体圧力の変動等に起因するプランジャの振動を抑制することができ、より実用的な電磁弁が得られる。なお、本発明の電磁弁の各種態様およびそれらの作用および効果については、以下の、〔発明の態様〕の項において詳しく説明する。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から一部の構成要素を削除した態様も、請求可能発明の
一態様となり得るのである。
【0008】
(1)高圧側の液通路および低圧側の液通路が接続され、それら高圧側の液通路と低圧側の液通路とを連通させるハウジングと、
そのハウジング内に軸方向に往復動可能に設けられたプランジャと、
そのプランジャの先端部に保持された弁子と、
前記ハウジングの前記弁子と対向する位置に設けられ、前記高圧側の液通路が弁子によって閉塞可能に開口させられた弁座と、
前記プランジャを前記弁座に接近または弁座から離間する向きに付勢する弾性体と、
その弾性体が付勢する向きと逆向きにプランジャを移動させる磁気力を発生させるソレノイドと、
前記プランジャの往復動を抑制する力を付与する抑制力付与装置と
を含むことを特徴とする電磁弁。
本項に記載の電磁弁は、弁子を往復動させることにより、弁子が弁座に着座した状態と、弁座から離間した状態とを切り換えて弁の開閉を行うものであり、例えば、ポペット弁をソレノイドで駆動するといった態様である。すなわち、弁子と弁座とを含んで弁が構成されているのである。なお、弁子およびプランジャの弁座に接近する向きの移動を前進、弁子等の弁座から離間する向きの移動を後退と表現する場合がある。
本電磁弁は、常閉弁と常開弁とのいずれとしても構成することができる。例えば、本電磁弁が常閉弁にされる態様では、弾性体によってプランジャが弁座に接近させる向きに付勢されており、電力が供給されていない状態において弁子が弁座に着座させられて弁が閉状態にされ、一方、電力が供給された状態において、ソレノイドの磁気力によって強磁性体のプランジャが弁座から離間する向きに移動させられ、弁子が弁座から離間させられて弁が開状態にされる。逆に、本電磁弁が常閉弁にされる態様では、電力が供給されていない状態において、弾性体の付勢力によって弁子が弁座から離間させられて弁が開状態にされる。
一般的に、電磁弁の開度が中間的な状態において、弁子およびプランジャ(以後、「弁子等」と略記する場合がある)には、弾性体の付勢力(以下、「弾性力」と称する場合がある)、ソレノイドの磁気力、流体の圧力(高圧側の圧力と定圧側の圧力との差圧)が作用している。ここで、電磁弁が常閉弁であるとすると、弾性体の付勢力が弁子を弁座に接近させる向きに作用するのに対し、流体圧力に基づく差圧作用力と磁気力とが弁子を弁座から離間させる向きに作用する。ところが、これら弾性力、磁気力および差圧作用力の釣り合いが振動状態となり、弁子等が軸方向(往復動方向)に振動させられ、自励振動が発生する場合がある。この自励振動が大きい場合や、あるいは、最初は小さくとも自励振動が成長した場合には、例えば、液圧の制御が困難になったり、異音が発生したりするなど、好ましくない状況となる。
それに対し、本電磁弁によれば、プランジャにそれの往復動を抑制する力を付与することにより、弁子等の振動が発生すること、あるいは、弁子等の振動が成長することを抑制することができる。すなわち、本発明によればより実用的な電磁弁が得られるのである。
プランジャの往復動を抑制する力は、例えば、後述するように、プランジャとハウジングとの摩擦抵抗を意図的に増加させることや、弁が開いた状態においても弁子を弁座に接触させ続けること等によって付与することができる。なお、抑制力付与装置は、プランジャの前進、後退のいずれか少なくとも一方を抑制するものとすることができる。例えば、プランジャの前進のみを抑制することによって自励振動を抑制することもできる。
本電磁弁は、例えば、ソレノイドへの供給電流の増減に応じて開弁圧や開弁量が変化するリニア電磁弁として構成することができる。リニア電磁弁は、液圧制御や流量制御のために弁が中間的な開度にされる状態が、単に弁の開閉が切り換えられる電磁開閉弁に比較して多いため、抑制力付与装置を設けて自励振動を抑制する必要性が大きい。ただし、電磁開閉弁であっても、自励振動が生じる可能性がある場合には、抑制力付与装置を設けることは有効である。
(2)前記抑制力付与装置が、前記プランジャにそれが往復動する方向と直交する方向である直交方向の力を付与することによって前記プランジャと前記ハウジングとの摩擦抵抗を増加させる直交力付与装置を含む(1)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、ハウジングに対してプランジャを直交方向に相対移動させる力を付与し、例えば、プランジャをハウジングに押し付ける等によってハウジングとプランジャとの摩擦抵抗を増加させるものである。摩擦抵抗は、ハウジングとプランジャとの往復動方向の相対移動を妨げる向きに発生するため、自励振動を抑制することができる。直交力付与装置には、例えば、後述するように、直交方向の力である直交力を発生させるために、磁気力の偏りを生じさせる態様や、直交方向の弾性力を付与する態様がある。
(3)前記プランジャが、強磁性を有するとともに柱状をなし、前記ハウジングが、強磁性を有して前記プランジャの往復動方向に延びる筒状をなすとともに前記プランジャが相対的に往復動可能に嵌合される筒状壁を含み、
前記直交力付与装置が、前記プランジャの往復動方向と直交する直交平面内において、前記筒状壁と前記プランジャとの間に作用する磁気力の総和に偏りを生じさせる磁気力偏寄装置を含む(2)項に記載の電磁弁。
通常の電磁弁では、直交平面内において、ハウジングの筒状壁とプランジャとの間に作用する磁気力は、できる限り釣り合うようにされている。そのため、筒状壁とプランジャとを直交方向に相対移動させる力はほとんど生じず、それらの摩擦抵抗は非常に小さいものとなる。それに対して、本項の電磁弁は、筒状壁とプランジャとの間の磁気力を直交方向において偏らせることにより、それらを直交方向に相対移動させる比較的大きな力を発生させることができる。その結果、筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が大きくなり、自励振動を抑制することができる。
磁気力を偏らせるために、例えば、後述するように、直交平面内の特定の向きにおいて、筒状壁とプランジャとの間の磁気抵抗を他の向きとは異ならせることができる。特定の向きにおいて磁気抵抗を小さくすれば、その磁気抵抗が小さい部分を通過する磁束が増加し、その特定の向きにおいて筒状壁とプランジャとが引きつけ合う磁気力が増大する。その結果、その特定の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が増加するのである。逆に、特定の向きにおいて磁気抵抗を大きくすれば、特定の向きとは反対の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が増加する。
ここで、筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗の変化について述べる。筒状壁とプランジャとの間の磁気力は、ソレノイドに供給される電力に応じた大きさとなる。したがって、例えば、本電磁弁が常閉弁である場合には、弁の開度が大きい場合は磁気力も大きくなり、その結果、摩擦抵抗も大きくなる。すなわち、本項の電磁弁において、筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗は、ソレノイドに供給される電力に応じて変化する。そのため、本電磁弁が常閉弁である場合には、弁の開度が小さく自励振動が発生しにくい状態では摩擦抵抗が小さくなるため、弁子等を比較的スムーズに移動させることができるとともに、弁の開度が大きく自励振動が発生しやすい状態では摩擦抵抗が大きくなるため、自励振動を抑制しやすくなる。つまり、本電磁弁には、自励振動が発生しやすい状態において、自然に摩擦抵抗が大きくなるというメリットがあり、常閉弁として構成されることが特に好適である。ただし、常開弁として構成された場合であっても、自励振動を抑制することができる。
(4)前記磁気力偏寄装置が、前記直交平面内の特定の向きにおいて、前記筒状壁と前記プランジャの側面とのうちの少なくとも一方に設けられて他の部分よりも透磁率を増加または減少させる透磁率変更部を含む(3)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、特定の向きにおいて、筒状壁とプランジャとの少なくとも一方に透磁率の大きなまたは小さな部分を設けて、特定の向きにおける筒状壁とプランジャとの間の磁気抵抗を他の向きとは異ならせる態様である。透磁率の大きな部分は磁気抵抗が減少し、透磁率が小さい部分は磁気抵抗が増大する。
透磁率変更部は、例えば、直交方向のうちの特定の向きにおいて、筒状壁とプランジャの側面とのうちの少なくとも一方(以後、「プランジャ等」と略記する)の少なくとも一部分を異なる材質にすることによって設けることができる。例えば、特定の向きにおいてプランジャ等の一部分を樹脂,銅合金,アルミニウム合金等の非磁性材料に置換すれば、透磁率が低下して磁気抵抗が増加する。その結果、特定の向きとは反対の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗を大きくすることができる。また、プランジャ等の一部分を凹部や空洞とすることもできる。その凹部等に空気や作動液が充填されれば、その凹部等の透磁率はプランジャ自身の透磁率よりも著しく低下する。
また、例えば、上記プランジャ等の一部分を、プランジャ本体よりも透磁率の大きい部材(例えば、透磁率が数倍〜数十倍程度)に置換することもできる。その場合は、プランジャ本体の他の部分に比して、透磁率の大きい部材の磁気抵抗が小さく、その特定の向きにおいて筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗が大きくなる。
また、筒状壁あるいはプランジャを、それぞれ筒状壁本体とその内周壁を覆うスリーブ、あるいはプランジャ本体とその側面を覆うスリーブを含むものとし、そのスリーブの一部分を透磁率変更部とすることができる。例えば、スリーブ自体を非磁性材料で形成し、それの一部分を強磁性材料で透磁率変更部として形成することにより、透磁率変更部の磁気抵抗を減少させて特定の向きにおける筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗を大きくすることができる。逆に、スリーブ自体を強磁性材料で形成し、透磁率変更部を非磁性材料で形成することもでき、その場合は、特定の向きとは反対の向きにおける筒状壁とプランジャとの摩擦抵抗を大きくすることができる。また、後述するように、プランジャ本体に凸部を設け、スリーブの凸部を覆う部分を薄肉部や切欠部とすることもできる。
透磁率(μ)は、磁束密度(B)を磁界の強さ(H)で除したものとすることができる。なお、鋼鉄等のように、磁界の強さによって透磁率が変化する材質の場合は、例えば、自励振動が生じる際の磁界の強さにおける透磁率を基準とすることができる。自励振動は、弁が中間的な開度であって、比較的流量が多い場合に生じやすいことから、弁の開度が70%〜80%程度(弁子の最大後退量に対する後退量の割合)になる電力供給量で生じる磁界の強さにおける透磁率を基準とすることができる。有意な磁気力の偏りを生じさせるためには、例えば、透磁率変更部の透磁率が、変更前の透磁率の2倍程度以上(または2分の1以下)であることが望ましい。
(5)前記筒状壁と前記プランジャとの一方が、前記筒状壁と前記プランジャの前記筒状壁に対向する面である側面との間に介在させられる非磁性のスリーブを含み、
前記磁気力偏寄装置が、前記直交平面内の特定の向きにおいて、前記筒状壁と前記プランジャの側面と前記スリーブとのうちの少なくとも1つに設けられ、他の部分よりも透磁率を増加または減少させる透磁率変更部を含む(3)項または(4)項に記載の電磁弁。
本項の態様は、前項の態様において、筒状壁とプランジャとの一方が非磁性のスリーブを含む態様に限定したものである。透磁率変更部が、筒状壁,プランジャ,スリーブのうちのいずれに設けられても、前項の態様と同様の作用効果が得られる。
本項の態様では、スリーブが非磁性にされているため、例えば、スリーブの一部分を強磁性材料に置き換えることによって、その部分の磁気抵抗を減少させて磁束を増加させることができる。
(6)前記透磁率変更部が、前記筒状壁と前記プランジャの側面との前記一方に突出して設けられた凸部を含む(5)項に記載の電磁弁。
本項の態様によれば、凸部が設けられた部分と、筒状壁とプランジャの側面との他方との間の磁気抵抗を、容易に減少させることができる。なお、スリーブの凸部を覆う部分に薄肉部または切欠部を設けることができる。
(7)前記直交力付与装置が、前記プランジャと前記ハウジングとの一方に設けられて前記プランジャと前記ハウジングとにそれらを前記直交方向に付勢する弾性力を付与する弾性体を含む(2)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、プランジャとハウジングとの摩擦抵抗を増加させるために、弾性体によって直交方向の力を発生させる態様である。本項の態様によれば、例えば、プランジャとハウジングとの一方に凹部を設けて、その凹部にゴム等の弾性体を配設すれば摩擦抵抗を増加させることができ、容易に自励振動を抑制することができる。また、プランジャとハウジングとの一方に、弾性体と、その弾性体によって直交方向に付勢されてプランジャとハウジングとの他方に当接する当接部材とを設けることもできる。
なお、自励振動の抑制については、供給された電力に応じて摩擦抵抗が変化しないこと以外は、前述の「磁気力を偏らせる」態様と同様である。
(8)前記ハウジングが、前記プランジャの往復動方向に延びる筒状をなすとともに前記プランジャが相対的に往復動可能に嵌合される筒状壁を含み、
前記直交力付与装置が、前記プランジャと前記ハウジングとの前記一方に回転可能に保持されて、前記弾性体の弾性力によって前記プランジャの側面と前記筒状壁との他方に押し付けられるとともに、前記プランジャと前記筒状壁との相対的な往復動に伴って回転する回転体を含む(7)項に記載の電磁弁。
本項の態様によれば、回転体によって、直交力付与装置と、プランジャと筒状壁との他方との局部的な摩擦の発生を回避しつつ、プランジャと筒状壁との摩擦抵抗を増加させることができる。
(9)前記弁座が、前記ハウジングの内側に向かって広がるテーパ状に形成されたものであり、
前記抑制力付与装置が、
前記ハウジングに設けられて前記プランジャの先端部とは反対側の部分である基端部の前記直交方向への移動を規制する直交移動規制部と、
前記プランジャの先端部の前記直交方向への移動を許容する直交移動許容部と
を備え、前記プランジャが最大限後退した状態においても、前記弁子が前記弁座に接触することを許容する弁子弁座接触許容機構を含む(1)項に記載の電磁弁。
本項の態様は、プランジャの弁座に向かう向きの移動を抑制することによって自励振動を抑制するものである。弁が開かれる際に、プランジャの後退距離がある程度以下の状態では、従来の電磁弁においても弁子が弁座のテーパ面に接触した状態で斜めに移動することが確認されている。そして、弁子が弁座に接触した状態において流体圧力の変動が生じたとしてもプランジャの前進が抑制されるため、自励振動が抑制される。しかしながら、従来は、プランジャの先端部の直交方向への移動許容量が小さく設定されており、弁の開度が大きくなってプランジャがある程度後退すると、弁子が斜めに移動できなくなり、弁座から離れるように構成されていた。
それに対し、本項の態様においては、プランジャの先端部の直交方向への移動が従来より大きく許容され、弁が全開状態になるまで、つまり、プランジャが最大限後退するまで弁子が弁座に接触した状態を保つことができるようにされている。その結果、弁がどのような開度であっても自励振動が抑制される。プランジャの先端部の直交方向への移動を許容するには、プランジャとハウジングとのクリアランスを大きくすればよく、例えば、プランジャとハウジングとの少なくとも一方の弁座側の部分の径を減少あるいは増加させることや、後述するようにプランジャとハウジングとの少なくとも一方にテーパ部を設けることができる。プランジャは、例えば、それが往復動する方向に延びた柱状(円柱状等)をなすものとすることができる。
なお、本項の態様において、弁子と弁座との接触が許容されるのであり、それらが強制的に接触させられるわけではない。よって、仮に、弁の開度が中間的な状態において、弁子が弁座から自然に離れてしまう場合には、例えば、前述の直交力付与装置と同様な装置によって、プランジャをハウジングに対して直交方向に移動させる力を付与して弁子を弁座に強制的に接触させることもできる。その場合には、直交力付与装置は、必ずしも摩擦抵抗を増加させる必要性はなく、比較的小さな力を発生させるものでよい。
(10)前記弁子弁座接触許容機構が、前記プランジャと前記ハウジングとの少なくとも一方に設けられて、前記プランジャの基端部から先端部に向かう向きにおいて前記プランジャと前記ハウジングとのクリアランスを漸増させるテーパ部を含む(9)項に記載の電磁弁。
本項の電磁弁によれば、テーパ部を設けることにより、プランジャとハウジングとの離間距離の増加を抑制しつつ、プランジャの先端部の直交方向への移動を許容することができる。そのため、プランジャとハウジングとの間の磁気抵抗の増加を抑制することができる。
(11)当該電磁弁が常閉弁であり、前記ハウジングが、前記プランジャと当接してそのプランジャの後退限度を規定する当接部を含む(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の電磁弁。
本項の電磁弁は、弁が全開状態にされた場合に、プランジャが当接部に当接し、自励振動を抑制する態様である。また、(9)項または(10)項に従属する態様に関しては、「プランジャが最大限後退した状態」が当接部により明瞭に規定される利点もある。ただし、不可欠ではない。ソレノイドへ最大の電流が供給された状態におけるプランジャの後退位置を後退限度とすることも可能なのである。なお、プランジャの少なくとも一部が当接部に当接した状態も、「プランジャが最大限後退した状態」に含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】請求可能発明の一実施例である電磁弁を備えた車両の液圧ブレーキシステムを概念的に示す図である。
【図2】上記電磁弁の正面断面図である。
【図3】上記電磁弁のプランジャの側面図である。
【図4】上記プランジャに作用する力を模式的に示す図である。
【図5】上記電磁弁のソレノイドが発生させる磁力線を模式的に示す図である。
【図6】上記電磁弁を制御する液圧制御ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図7】増圧処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図8】減圧処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図9】上記とは別の実施例の電磁弁の正面断面図である。
【図10】上記とはさらに別の実施例において、ボールの移動を模式的に示す図である。
【図11】従来の電磁弁のプランジャに直交方向の移動を規制する力を模式的に示す正面図である。
【図12】上記実施例の電磁弁の正面断面図である。
【図13】上記電磁弁のプランジャが後退した状態を示す正面図である。
【実施例】
【0010】
以下、請求可能発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0011】
図1に、請求可能発明の一実施例である電磁液圧制御弁を備えた車両の液圧ブレーキシステムが概念的に図示されている。本液圧ブレーキシステムは、ブレーキ操作部材たるブレーキペダル10と、マスタシリンダ装置12と、ブレーキアクチュエータ14とを備えている。
【0012】
マスタシリンダ装置12は、ブレーキペダル10の踏込みに基づいて作動液(ブレーキ液)を加圧するマスタシリンダ18を備えている。マスタシリンダ18は、本実施例において、2つの加圧室20,22を備えており、それら加圧室20,22は、それぞれ液通路24,26によって、左前輪28,右前輪30の回転をそれぞれ制動するブレーキのホイールシリンダ32,34と接続されている。また、マスタシリンダ装置12には、作動液が大気圧で蓄えられるリザーバ36が設けられており、そのリザーバ36からマスタシリンダ18の加圧室20,22の各々に作動液が供給される。なお、ブレーキペダル10が踏込まれた際には、リザーバ36と加圧室20,22との連通が遮断されるとともに、加圧室20,22において加圧された作動液がホイールシリンダ32,34に供給される。さらに、マスタシリンダ18の一方の加圧室20には、電磁開閉弁40を介してストロークシミュレータ42が接続されている。
【0013】
ブレーキアクチュエータ14を説明する。
ブレーキアクチュエータ14は、上記ホイールシリンダ32,34および左後輪46および右後輪48の回転をそれぞれ制動するブレーキのホイールシリンダ50,52の各液圧を制御する。ブレーキアクチュエータ14は、図1に示すように、2つのマスタカット弁56,58,液圧源たる動力液圧源60,液圧制御弁装置62,2つのマスタシリンダ圧センサ64および4つのホイールシリンダ圧センサ66を備えている。これらブレーキアクチュエータ14の構成要素は図示を省略するブロック状の本体部材に組み付けられて1ユニットを構成している。
【0014】
動力液圧源60は、リザーバ36から作動液を汲み上げるポンプ70と、ポンプ70を駆動する電動モータ72と、ポンプ70から吐出された作動液を加圧された状態で蓄えるアキュムレータ74と、ポンプ70の吐出圧を設定値以下に規制するリリーフ弁76とを含んでいる。
【0015】
動力液圧源60には、液圧制御弁装置62を介して前記4つのホイールシリンダ32,34,50,52が接続されている。液圧制御弁装置62は、ポンプ70とアキュムレータ74との少なくとも一方から各ホイールシリンダ32,34,50,52への作動液の流入を制御する増圧用電磁液圧制御弁(以後、増圧弁と略称する)80,82,84,86と、各ホイールシリンダ32,34,50,52からリザーバ36への作動液の流出を制御する減圧用電磁液圧制御弁(以後、減圧弁と略称する)90,92,94,96とを含んでおり、ポンプ70およびアキュムレータ74と増圧弁80〜86とは増圧通路98により接続され、減圧弁90〜96とリザーバ36とは減圧通路100により接続されている。4つのホイールシリンダ32,34,50,52のそれぞれについて増圧弁と減圧弁とが1つずつ設けられ、それぞれ液圧が互いに独立して制御されるのであり、4組の増圧弁および減圧弁はそれぞれ、ホイールシリンダ通路102,104,106,108によってホイールシリンダ32,34,50,52に接続されている。
【0016】
ポンプ70と増圧弁80〜86との間には、動力液圧源60の液圧を検出する液圧源液圧センサ110が設けられている。また、各ホイールシリンダ通路102〜108には、、ホイールシリンダ32,34,50,52の各液圧を検出するホイールシリンダ圧センサ66が設けられている。また、マスタシリンダ18の2つの加圧室20,22とホイールシリンダ32,34との間にそれぞれ前記マスタカット弁56,58が設けられており、それらマスタカット弁56,58と加圧室20,22との間にそれぞれ設けられた前記マスタシリンダ圧センサ64によって加圧室20,22にそれぞれ発生させられる液圧が検出される。
【0017】
上記増圧弁80〜86および減圧弁90〜96はいずれもリニア弁とされている。リニア弁は、その上流側と下流側との液圧差と供給電流との間に予め定められた一定の関係があり、供給電流の増減に応じて開弁圧が変えられる。したがって、増圧弁80〜86および減圧弁90〜96は、供給電流の制御により、ホイールシリンダの液圧であるホイールシリンダ圧を連続的に変化させることができ、ホイールシリンダ圧を容易に任意の高さに制御することができる。
【0018】
本液圧ブレーキシステムにおいては、増圧弁80〜86はいずれも常閉弁とされ、左右前輪28,30について設けられた減圧弁90,92はそれぞれ常閉弁とされ、左右後輪46,48について設けられた減圧弁94,96はそれぞれ常開弁とされている。本実施例では、増圧弁80〜86および減圧弁90,92であって、常閉のリニア弁が請求可能発明に係る電磁弁とされている。以下、増圧弁80を代表的に説明する。
【0019】
増圧弁80は、図2に示すように、バルブハウジング120,シート弁122および電磁駆動力発生装置であるソレノイド124を備えている。シート弁122は、テーパ内周面状の弁座128,弁子としてのボール130,ボール130を保持するプランジャ132,およびボール130が弁座128に接近する向きにプランジャ132を付勢する弾性部材としてのスプリング138を含んでいる。また、ソレノイド124は、本実施例では、ソレノイドコイル140と、そのソレノイドコイル140を保持する樹脂製の保持部材142と、第一磁路形成部材144と、第二磁路形成部材146とを含んでいる。第一,第二磁路形成部材144,146は、強磁性材料により形成されている。
【0020】
バルブハウジング120は、本実施例では、複数の部材が互いに一体的に組み付けられて成る。第二磁路形成部材146は、バルブハウジング120の構成部材の1つである第一部材150により、バルブハウジング120の別の構成部材である第二部材152と同心に結合されている。第一部材150は、非磁性材料により形成されて薄い有底の円筒状を成し、その第一部材150内に第二磁路形成部材146が嵌合され、収容されている。第二部材152は強磁性材料により形成されて中空の円筒状を成し、その軸方向の一端部において第二磁路形成部材146との間に非磁性材料製のスペーサ154を挟んで第一部材150内に嵌合されている。第一磁路形成部材144はソレノイドコイル140を覆って第一部材150の外側に嵌合されている。
【0021】
上記第二部材152には、その周壁の2箇所に第一ポート158が形成され、ホイールシリンダ通路102によって左前輪28のホイールシリンダ32に接続されている。なお、第二部材152には、増圧弁80を組み付けるための組付部材160が装着されているが、この組付部材160には図示を省略する開口が設けられ、作動液のホイールシリンダ32への流入を許容する。バルブハウジング120を構成する更に別の部材である第三部材162は、第二部材152の他端部に嵌合され、第三部材162を軸方向に貫通して形成された貫通穴が動力液圧源60に接続され、第二ポート164を構成している。前記弁座128は、第二ポート164の第一ポート158側の開口端に設けられている。
【0022】
上記第二,第三部材152,162および第二磁路形成部材146の間にプランジャ室170が形成され、前記プランジャ132が軸方向に往復動可能に嵌合されている。プランジャ本体172は横断面形状が円形を成しており、概して円柱状の空間を形成するプランジャ室170に、プランジャ室170の内周壁との間に僅かな隙間176を有して嵌合されている。その結果、プランジャ室170内には、プランジャ132の弁座128側に弁室178が形成され、第二磁路形成部材146側であって、ソレノイド124側に空間180が形成されている。本実施例において、プランジャ室170の内周壁が「筒状壁」として機能している。
前記スプリング138は、プランジャ132と第二磁路形成部材146との間に配設され、プランジャ132はスプリング138により、ボール130が弁座128に着座する向きに付勢されている。
【0023】
プランジャ132は、強磁性材料により形成されたプランジャ本体172,そのプランジャ本体172の側面を覆う樹脂製(非磁性体である)のスリーブ174,およびプランジャ本体172の先端部に固定されてボール130を保持するボール保持体175を含む。
プランジャ本体172の先端部には、プランジャ132と同心に嵌合穴182が設けられており、その嵌合穴182にボール保持体175の嵌入軸部184が圧入されている。ボール保持体175は、弁座128側に延び出す保持軸部186において、ボール130をプランジャ132の軸線上に位置させて保持しており、ボール保持体175の中央に設けられた嵌入軸部184よりも径が大きくされた大径部188がプランジャ本体172の先端面に当接することによって、プランジャ132におけるボール130の軸方向の位置が規定される。
【0024】
プランジャ本体172には、その軸心を中心とする一円周上に位置するとともに、直径方向に隔たった複数箇所(本実施例において3箇所)にそれぞれ、プランジャ本体172を軸方向に貫通して延びる貫通孔190(図には2つの貫通孔を示す)が形成されており、これら貫通孔190および前記隙間176が、弁室178と空間180とを連通させ、作動液たる作動液を出入りさせる連通路192を構成している。なお、プランジャ本体172のスプリング138側の端面には、スプリング138を支持する支持部材193が設けられている。
【0025】
空間180は、作動液が収容された液室である。なお、プランジャ132の第二磁路形成部材146側への移動限度は、肩面が第二磁路形成部材146に設けられた当接面ないし吸引面196(当接部)に当接することにより規定されるが、この肩面には非磁性材製の薄板194が設けられている。その薄板194は、肩面と吸引面118との間の距離を確保し、磁気吸引力によって吸引面196に引き付けられたプランジャ132の吸引面196に対する張り付きを防止し、吸引面196からの離れを良くするようにされている。
【0026】
図3に、プランジャ132を拡大した図を示す。プランジャ本体172の側面には、プランジャ本体172と連続的に形成された透磁率変更部としての凸部200が設けられている。その凸部200は、プランジャ本体172と同じ材質で形成され強磁性を有している。また、凸部200のプランジャ本体172の側面からの突出量は、スリーブ174の厚さ寸法より若干小さくされ、凸部200とプランジャ室170の内周壁とが接触しないようにされている。一方、スリーブ174の凸部200に対向する部分には切欠部202が形成され、その切欠部202に凸部200が収まるようにされている。なお、図において、スリーブ174の厚さ寸法は実際よりも厚く示されている。
【0027】
常閉の減圧弁90,92は、第一ポート158が減圧通路100によってリザーバ36に接続され、第二ポート164がホイールシリンダ通路106,108によって左右後輪46,48の各ブレーキのホイールシリンダ50,52に接続されていることを除いて増圧弁80と同様に構成されている。
【0028】
また、常開の減圧弁94,96は、例えば、特開2000−95094号公報に記載の減圧弁と同様に構成されており、説明を省略する。
【0029】
本液圧ブレーキシステムは、図1に示すECU(電子制御ユニット)250の指令に基づいて制御される。ECU250は、図示は省略するが、コンピュータおよび入出力部を含む制御部と、複数の駆動回路とを含む。コンピュータは、CPU,ROM,RAMおよびそれらを接続するバスを含み、入出力部には、前記マスタシリンダ圧センサ64等、各種センサ等が入力側に接続され、前記増圧弁80〜86および減圧弁90〜96等のソレノイド等が出力側に接続されている。また、ROMには、図示を省略するメインルーチン,液圧制御ルーチン,増圧処理ルーチン等、種々のプログラムが格納されており、各種センサの検出結果に基づいて車両状態が取得され、電気制動制御等が行われる。制御部においては、上記メインルーチンが予め定められた設定時間毎に繰り返し実行され、その他のサブルーチンはメインルーチンの指令に応じて実行される。
【0030】
本液圧ブレーキシステムにおいては、電気制動制御等、ブレーキアクチュエータ14の作動によるいずれの制御が行われる際にも、ECU250は、4つのホイールシリンダ32,34,50,52のそれぞれについて目標液圧を決定し、その目標液圧が得られるように増圧弁80〜86および減圧弁90〜96の各ソレノイド124等に供給されるべき電流を決定し、供給を制御する。この決定された電流の供給により液圧制御弁装置62が作動させられ、ホイールシリンダ32,34,50,52の各液圧が目標液圧に制御されつつ、ブレーキが作動させられる。これら制御時にはマスタカット弁56,58が閉じられる。ブレーキペダル10の踏込みに基づいてホイールシリンダ圧が電気的に制御される場合には更に、電磁開閉弁40が開かれ、加圧室20からストロークシミュレータ42に作動液が排出され、踏力に応じた操作感が運転者に付与される。
【0031】
前述のように、増圧弁80〜86および減圧弁90,92は常閉弁であり、ソレノイド124への電流供給により開かれてホイールシリンダの液圧を制御する。減圧弁94,96は常開弁であり、ソレノイドへの電流供給により閉じられてホイールシリンダの液圧を制御する。以下、増圧弁80の作動およびホイールシリンダ32の液圧制御を代表的に説明する。
【0032】
ソレノイド124に電流が供給されない状態において、プランジャ132に作用する力について説明する。図4に模式的に示すように、プランジャ132には、スプリング138の付勢力Fsと、作動液の圧力差による差圧力Fpとが作用する。差圧力Fpは、第二ポート164の圧力(高圧側圧力)とホイールシリンダ通路102の圧力(低圧側圧力)との差圧に、ボール130の弁座128に対する着座部分の断面積を乗じた大きさとなる。付勢力Fsは、設計上予定されている最大の差圧力Fpよりも大きくなるように設定されており、プランジャ132は、付勢力Fsから差圧力Fpを差し引いた力によって前進方向に付勢され、ボール130を弁座128に押し付ける。ボール130は、弁座128に着座させられ、増圧弁80が閉状態に保たれる。
【0033】
ソレノイド124に電流が供給された場合には、磁界が形成され、図5に白抜きの矢印で模式的に示すように、磁力線が、その多くが、第一磁路形成部材144,第二磁路形成部材146,プランジャ132および第二部材152を通る。その際、磁力線は、プランジャ132と第二磁路形成部材146との間のギャップ(空間180)、および、プランジャ132と第二部材152との間のギャップ(隙間176)を通る。なお、図において磁力線の向きがスプリング138側からプランジャ132の先端部側に向かっているが、電流の向きを変えて磁力線の向きを逆向きにすることもできる。
【0034】
本電磁弁80において、第二磁路形成部材146とプランジャ132の後端面との間の磁束密度が比較的高くなるようにされており、プランジャ132を第二磁路形成部材146に接近する向きに吸引する磁気力Fmが発生する。また、プランジャ132には、上記付勢力Fsと差圧力Fpとが作用しており、従来の電磁弁であれば、次式の関係が成り立つ。そして、プランジャ132は、これら3つの力が釣り合う位置に停止することとなる。
Fm+Fp=Fs ・・・(1−1)
【0035】
ところで、本実施例において、前述のように、プランジャ本体172の側面には凸部200が設けられている。本実施例において、プランジャ本体172および凸部200は強磁性体によって形成され、スリーブ174は非磁性体によって形成されている。そうすると、凸部200が設けられた部分は、設けられていない部分よりも透磁率が大きくなり、プランジャ本体172と第二部材152との間の磁気抵抗が小さくなる。そのため、スリーブ174に覆われた部分と比較して、凸部200を通過する磁力線が多くなり(中程度の大きさの白抜き矢印)、磁束密度が大きくなり、他の部分に比較して、凸部200とプランジャ室170の内周壁とが互いに引きつけ合う力が大きくなる。その結果、プランジャ132が往復動する方向と直交する直交平面における磁気力の総和に偏りが生じ、プランジャ132をプランジャ室170の内周壁に対して往復動する方向と直交する直交方向に移動させる力、つまり、プランジャ室170の内周壁に対してプランジャ132を凸部200が設けられた側に移動させる直交方向の力である直交力Fnが発生する。その力によってプランジャ132の側面がプランジャ室170の内周壁に押し付けられ、プランジャ132が往復動する際の摩擦抵抗力Fr(以後、抵抗力Frと略記する)が発生する。なお、抵抗力Frは、プランジャ132が移動する向きと反対向きに作用する。
【0036】
上記凸部200が設けられていない場合には、直交方向において磁気力が互いに打ち消し合うため、直交力Fnが十分小さくなる。その場合であっても、プランジャ132とプランジャ室170との摩擦抵抗力が発生するが、その摩擦抵抗力は、磁気力の総和に偏りが生じる場合と比較して非常に小さいため無視することとする。
本実施例において、「磁気力偏寄装置」が、凸部200およびスリーブ174を含んでいる。また、直交平面内の凸部200が設けられた向きが「特定の向き」である。
【0037】
以上のことから、ソレノイド124に電流が供給された場合には、プランジャ132に軸方向の4つの力、磁気力Fm、差圧力Fp、付勢力Fs、抵抗力Frが作用する。なお、プランジャ132を凸部200が設けられた側に移動させる直交力Fnは、軸方向と直交する方向の力であるため、プランジャ132の往復動への作用は考慮しなくてもよい。
軸方向の4つの力には、次の2式の関係が成り立つ。抵抗力Frは、プランジャ132が移動する向きと反対向きに作用することから、上記シート弁122の開度が増加する場合(プランジャ132が後退)には、シート弁122の開度を減少させる向き(プランジャ132を前進させる向き)に作用し、シート弁122の開度が減少する場合(プランジャ132が前進)には逆の向きに作用する。
[開度増加時]Fm+Fp=Fs+Fr ・・・(1−2)
[開度減少時]Fm+Fp=Fs−Fr ・・・(1−3)
【0038】
磁気力Fmは、ソレノイド124に供給される電流iに応じた大きさとなり、電流iに係数Aを乗じた値となる。
Fm=A・i ・・・(1−4)
なお、プランジャ132のスプリング138側の端面には、プランジャ132よりも直径が小さくされた小径部210が設けられている。また、プランジャ室170の弁座128と反対側の端部を形成する第二磁路形成部材146には、小径部210よりも内径が若干大きな凹部212が形成されている。プランジャ132が後退する際に、凹部212に小径部210が進入することによって、小径部210の側面と凹部212の内周壁との間を通過する磁力線が増加する。すなわち、プランジャ132の後退に伴い吸引面196とプランジャ132の肩面との距離が小さくなり、プランジャ132を後退させる磁気力の作用が大きくなるのであるが、プランジャ132の後退に伴い小径部210の側面と凹部212の内周壁との重なる部分を通過する磁力線が増加するため、吸引面196とプランジャ132の肩面との間を通過する磁力線が減少するようにされているのである。したがって、本実施例において、プランジャ132の後退距離に拘わらず、供給電流が一定であれば磁気力Fmもほぼ一定となる。
【0039】
抵抗力Frは、磁気力Fmと同様に、ソレノイド124に供給される電流iに応じた大きさになると考えることができる。それは、抵抗力Frは、プランジャ132がプランジャ室170の内周壁に押し付けられる力、つまり、直交力Fnの大きさに比例し、その直交力Fnの大きさは電流iに応じた大きさとなるからである。したがって、抵抗力Frは、電流iに係数Bを乗じた値となる。
抵抗力Fr=係数B・電流i ・・・(1−5)
【0040】
差圧力Fpは、前記差圧ΔPに前記ボール130の断面積Sを乗じた値となる。なお、差圧ΔPは、液圧センサ110によって検出される増圧通路98の高圧側液圧Phから、ホイールシリンダ圧センサ66によって検出されるホイールシリンダ通路102のホイール液圧Pwを減じた値となる。
Fp=ΔP・S ・・・(1−6)
ΔP=Ph−Pw ・・・(1−7)
【0041】
付勢力Fsは、プランジャ132の後退距離Xに応じた大きさとなるものとする。なお、閉弁状態(X=0)における付勢力Fsは定数Cとする(K:スプリング138のばね定数)。
Fs=K・X+C ・・・(1−8)
【0042】
以上に説明した関係に基づけば、ソレノイド80,90に供給する電流を調節することにより、ホイールシリンダ32に加圧された作動液を供給、あるいはホイールシリンダ32から作動液を排出し、ホイール液圧Pwを制御することができる。図6に、ホイール液圧Pwを制御する液圧制御ルーチンのフローチャートを示す。本液圧制御ルーチンは、車両のメインスイッチのON操作後あるいはブレーキペダル10の操作時にメインルーチンの指令の下、極短時間毎に繰り返し実行される。
【0043】
ステップ11(以後、ステップ11を「S11」と略記し、他のステップについても同様とする)において、マスタシリンダ圧Pm,増圧通路98の液圧Ph,ホイールシリンダ圧Pwが、それぞれ液圧センサ64,110,66の検出値に基づいて取得される。次に、S12において、ホイールシリンダ32の液圧目標値Pxが決定される。その液圧目標値Pxは、本実施例において、マスタシリンダ圧Pmに基づいて決定される。なお、車両の液圧ブレーキシステムにおいて、アンチロック制御、トラクション制御、回生制動協調制御等が行われている場合には、それらの制御によって液圧目標値Pxを決定することもできる。
【0044】
液圧目標値Pxが決定されると、S13〜S17において、ホイールシリンダ32の液圧を、増圧するか,減圧するか,保持するかのいずれかの処理が選択される(各処理の詳細は後述する)。これらの処理において、増圧弁80の目標電流値Iaおよび減圧弁90の目標電流値Ibが決定される。すなわち、液圧目標値Pxが、ホイールシリンダ圧Pw(以後、「ホイール液圧Pw」と称する場合がある)に設定値E1を加えた値よりも大きい場合には、増圧処理が行われる(S13,S14)。なお、設定値E1は、液圧目標値Pxの最大値に比べて非常に小さい値にされている。一方、液圧目標値Pxが、ホイール液圧Pwよりも小さい場合には、減圧処理が行われる(S15,S16)。また、液圧目標値Pxが、ホイール液圧Pw以上かつPw+E1以下である場合(Pw≦Px≦Pw+E1)に、現在の液圧を保持する液圧保持処理(S17)が行われる。なお、S18〜S20において、それぞれ、S16の減圧処理で用いられる記憶変数Xbo、S14の増圧処理で用いられる記憶変数Xao、の少なくとも一方が0に初期化される。これは、例えば、増圧処理が行われた後に減圧処理が行われた場合に、増圧処理において用いられた変数を初期化して、再度増圧処理が行われるのに備えるためである。
【0045】
目標電流値Ia,Ibが決定されると、S21において、増圧弁80および減圧弁90に電力供給がなされ、それぞれの開度が目標値になるように制御される。なお、後述するように、増圧弁80と減圧弁90との一方が開状態にされると、他方は閉状態にされる。
【0046】
図7にS14の増圧処理ルーチンのフローチャートを示し、そのフローチャートに沿って説明する。増圧処理ルーチンは、ホイール液圧Pwを増加させる際に、増圧弁80および減圧弁90の目標電流値Ia,Ibを決定する処理である。
まず、S31において、液圧目標値Pxとホイール液圧Pwとの偏差が設定値Hよりも小さいか否かが判定される。これは、偏差が大きい場合には増圧弁80の開度を最大にし、そうでない場合には増圧弁80の開度を偏差に応じたものにするためである。例えば、ホイール液圧Pwを大気圧付近から最大圧付近まで増圧するような場合に開度が最大にされる。
【0047】
上記偏差が設定値Hよりも小さい場合には、S32において増圧弁80の開度目標値Xaが決定される。なお、開度目標値Xaは、ボール130の後退距離、つまり、プランジャ132の後退距離とされる。したがって、開度目標値Xaが0である場合は、プランジャ132が最も前進した状態、つまり、閉弁状態となる。一方、開度目標値Xaが最大になる場合は、プランジャ132が最も後退した状態となる。その開度目標値Xaは、次式に示すように、液圧目標値Pxからホイール液圧Pwを減じた値に設定値αを乗じた値とされる。
Xa=α・(Px−Pw) ・・・(2−1)
上記偏差が設定値H以上である場合には、S33において増圧弁80の開度目標値XaがXh(Xaの最大値である)にされる。
【0048】
S34,S35において、本増圧処理が前回実行された際の開度目標値である旧開度目標値Xao(XaoはXaoldの略である)と、今回決定された新たな開度目標値Xaとが比較される。それは、前述のように、プランジャ132が前進するか、後退するかによって摩擦抵抗力Fr(以後、「抵抗力Fr」と略記する場合がある)の作用する向きが反対になるため、増圧弁80の開度が増加する場合(後退)と開度が減少する場合(前進)とで演算方法を変えることが望ましいからである(前述の式1−2,1−3参照)。
【0049】
ここで、S36,S37における開度増加時および開度減少時の目標電流値Iaの演算について説明する。開度増加時には、前述の式(1−2)に示すように抵抗力Frが弁を閉じる向き、つまり、プランジャ132を前進させる向きに作用する。そして、式(1−2)の4つの力(Fm,Fp,Fs,Fr)に、式(1−4)〜(1−8)を代入すると次式が得られる。
A・i+ΔP・S=(K・X+C)+B・i ・・・(2−2)
この式のXに開度目標値Xaを、電流iに目標電流値Iaを代入して整理すれば、開度増加時の目標電流値Iaが得られる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/(A−B) ・・・(2−3)
なお、差圧ΔPは、式(1−7)より高圧側液圧Phからホイール液圧Pwを減じた値となる。
一方、開度減少時には、式(1−3)に、式(1−4)〜(1−8)を代入すると次式が得られる。
A・i+ΔP・S=(K・X+C)−B・i ・・・(2−4)
上述と同様に、開度目標値Xa、目標電流値Iaを代入して整理すれば、開度減少時の目標電流値Iaが得られる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/(A+B) ・・・(2−5)
【0050】
上記S34において新たな開度目標値Xaが旧開度目標値Xaoに設定値E2を加算した値よりも大きいと判定された場合は、開度を増加させる必要があるため、S36において上記式(2−3)によって目標電流値Iaが求められる。なお、設定値E2は、開度目標値Xaの最大値に比べて非常に小さい値にされている。一方、S35において開度目標値Xaが旧開度目標値Xao未満である場合には、開度を減少させる必要があるため、S37において上記式(2−5)によって目標電流値Iaが求められる。
【0051】
また、S38において、新たな開度目標値Xaと旧開度目標値Xaoとの差が微少である場合、具体的には、新たな開度目標値Xaが、旧開度目標値Xao以上かつ旧開度目標値Xaoに設定値E2を加えた値以下である場合(Xao≦Xa≦Xao+E2)に、開度を維持する目標電流値Iaが求められる。この開度を維持するための電流値は、上記式(2−3)と式(2−5)との中間の大きさになるようにされ、それら2つの式の和の半分となる。
Ia=A・(K・Xa+C−ΔP・S)/(A2−B2) ・・・(2−6)
【0052】
なお、開度が同じである場合に上記3つの目標電流値Iaを比較すると、開度減少時、開度維持時、開度増加時の順に大きくなる。そして、例えば、差圧ΔPの変動が生じた場合、開度減少時の目標電流値Iaは弁の開度が減少しやすく、開度増加時の目標電流値Iaは弁の開度が増加しやすくなる。それら2つの目標電流値Iaは、それぞれ抵抗力Frに抗して弁の開度を減少あるいは増加させ得る大きさにされているためである。しかしながら、開度増加時の目標電流値Iaが供給されている状態において、抵抗力Frがプランジャ132の前進を抑制するため、自励振動が発生しにくく、自励振動が発生したとしても減衰される。また、開度減少時の目標電流値Iaが供給されている状態において、抵抗力Frがプランジャ132の後退を抑制するため、自励振動が発生しにくく、自励振動が発生したとしても減衰させられる。それに対して、開度維持時の目標電流値Iaは、抵抗力Frに抗して弁の開度を増減させ得る大きさとされていないため、抵抗力Frがプランジャ132の前進および後退を抑制することで、さらに自励振動が発生しにくくなる。
【0053】
S39において、上記偏差(Px−Pw)が設定値Hを超える場合(S31)に、開度を最大にする目標電流値Iaが決定される。この場合には、上式(2−3)において、開度目標値Xaに最大開度の目標値Xhが代入され(S33)、さらに、補助電流値Ihが加算されて、次式を得る。そして、補助電流値Ihが加算されることによって迅速かつ確実に開度が最大まで増加するようにされている。
Ia=Ih+(K・Xa+C−ΔP・S)/(A−B) ・・・(2−7)
【0054】
以上に述べた処理によって目標電流値Iaが決定されると、S40において、旧開度目標値Xaoに今回の開度目標値Xaが記録される(S40)。また、S41において、減圧弁90の目標電流値Ibが、弁を閉じるための電流値である閉弁電流値I0にされる。その閉弁電流値I0は、本実施例において0にされる。なお、閉弁電流値I0を、閉弁状態を維持しつつ、迅速な開度増加を行うために、ある程度電流を供給しておくこともできる。例えば、上式(2−5)において、Xa=0とした電流値よりも小さい電流を供給することができる。
【0055】
図8に、S16の減圧処理ルーチンのフローチャートを示し、そのフローチャートに沿って説明する。減圧処理ルーチンは、ホイール液圧Pwを減少させる際に、増圧弁80および減圧弁90の目標電流値Ia,Ibを決定する処理である。なお、この減圧処理ルーチンは、上述の増圧処理ルーチンと同様の部分が多いため、異なる部分を中心に説明する。
S51において、液圧目標値Pxが大気圧(=0)にされ、かつ、ホイール液圧Pwが設定圧力Uよりも小さいか否かが判定される。S51の判定がNoとなる場合、つまり、液圧目標値Pxが大気圧でない場合、あるいは、ホイール液圧Pwが大気圧に比して十分大きい場合には、S52において、減圧弁90の開度目標値Xbが次式に基づいて決定される。なお、次式のβは設定値である。
Xb=β・(Pw−Px) ・・・(3−1)
一方、S51の判定がYesとなる場合には、つまり、ホイール液圧Pwを大気圧まで下げる等の場合には、S53において、開度目標値Xbが設定開度Xuにされる。設定開度Xuは、ホイール液圧Pwが大気圧に近くなった場合であっても、比較的スムーズにホイール液圧Pwを減少させ得る開度とされている。
【0056】
S54〜S58の処理は、上述の増圧処理ルーチンにおけるS34〜S38の処理と同様である。なお、開度目標値XaがXbに、旧開度目標値XaoがXboに、目標電流値IaがIbに、変更される。以下に、S56〜S58で用いられる式を示す。
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/(A−B) ・・・(3−2)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/(A+B) ・・・(3−3)
Ib=A・(K・Xb+C−ΔP・S)/(A2−B2) ・・・(3−4)
なお、減圧処理における差圧ΔPは、ホイール液圧Pwから大気圧を引いた値、つまり、ホイール液圧Pwと同じ値になる。また、スプリング138のばね定数Kの値が、増圧弁80と減圧弁90とで異なる場合がある。
S59において、ホイール液圧Pwを大気圧まで下げる場合の目標電流値Ibが、上式(3−2)に基づいて決定される。
S60,S61の処理は、上述の増圧処理ルーチンにおけるS40〜S41の処理と同様である。
【0057】
ここで、S17の液圧保持処理ルーチンを説明する。
この処理は、液圧目標値Pxとホイール液圧Pwとの差が微少である場合に、ホイール液圧Pwが変化しないように目標電流値Ia,Ibを決定する処理である。本実施例において、目標電流値Ia,Ibは、いずれも閉弁電流値I0にされ、増圧弁80、減圧弁90ともに閉弁状態とされる。なお、閉弁電流値I0は、0あるいは閉弁状態を維持可能な電流値とされる。
【0058】
以上に述べた液圧制御により、ホイール液圧Pwが制御され、車両の制動が実現される。その液圧制御において、弁の開度が中間的な状態にされるが、プランジャ132には上述の抵抗力Frが作用するため、例えば、差圧の変動等の振動要因が生じても、プランジャ132が移動しないか、あるいは、比較的移動距離が小さくなり、自励振動が抑制される。また、抵抗力Frは、前述のようにソレノイド124に供給される電流に応じた大きさとなることから、自励振動が発生しやすい比較的大きな開度にされた状態で抵抗力Frが大きくなり、自励振動が発生しにくい比較的小さな開度で抵抗力Frが小さくなる。すなわち、効果的に自励振動を抑制することができるのである。
【0059】
本実施例において、凸部200が、プランジャ本体172と連続的に形成されていたが、別体の部材によって形成することもできる。例えば、強磁性を有する薄板状の部材をプランジャ本体172に接着等によって固定することや、スリーブ174の一部を強磁性を有する薄板状の部材にすること等ができる。
また、本実施例において、凸部200が、軸方向においてプランジャ本体172の中央に配設されていたが、ボール130側あるいはスプリング138側に配設することもできる。
【0060】
上記の「磁気力を偏らせる電磁弁」とは別の実施例である「弾性体によって直交力を付与する電磁弁」を図9に示す。
本電磁弁300は、上記実施例と同様の液圧ブレーキシステム(図1)において、増圧弁80〜86あるいは減圧弁90,92のいずれかの箇所に設けられる。また、本電磁弁300は、多くの部分が上記実施例の電磁弁80と同様な構成とされているため、同じ構成部品については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0061】
本電磁弁300において、プランジャ310が、弾性体によって往復同方向と直交する方向の力である直交力を発生させる弾性力発生機構320を備えている。弾性力発生機構320は、プランジャ本体330に、プランジャ310が往復動する方向と直交する直交方向に設けられた収容穴332内に収容されている。その収容穴332は、断面形状が円形にされている。
弾性力発生機構320は、弾性部材として、平面形状が円形の皿ばね336を備えており、その皿ばね336は、収容穴332に、それの底面の側に凹部側を向けて配設されている。また、弾性力発生機構320は、収容穴332の皿ばね336の凸部側に回転可能に収容された「回転体」たる転動ボール340と、その転動ボール340と皿ばね336とのすべり摩擦を軽減する摩擦低減部材342とを備えている。転動ボール340は、プランジャ室170内周壁よりも硬度の低い非磁性材料によって形成されている。摩擦低減部材342は、転動ボール340と皿ばね336とを直接接触させる場合に比較して転動ボール340との接触面積を大きくできる形状,寸法を有するものであれば、効果が得られるが、少なくとも転動ボール340との接触面がポリテトラフルオロエチレン等低摩擦係数の材料によって形成されることが望ましい。
【0062】
転動ボール340は、皿ばね336が変形していない状態において、その一部がプランジャ310の外周に突出するようにされている。そのため、プランジャ310がプランジャ室170内に嵌合させられた状態において、皿ばね336が、プランジャ室170内周壁に押される転動ボール340と、収容穴332の底面とに挟まれて弾性変形させられる。そして、皿ばね336は、概ね弾性変形量に応じた弾性力を発生し、転動ボール340をプランジャ室170内周壁に押し付ける。その転動ボール340をプランジャ室170内周壁に押し付ける弾性力は、プランジャ310とプランジャ室170の内壁とを直交方向に付勢する力となる。その結果、収容穴332が設けられた側とは反対側の向きにプランジャ310が押され、その反対側の向きにおいてプランジャ310の側面とプランジャ室170内周壁との摩擦抵抗が増加する。一方、プランジャ310がプランジャ室170内を往復動する際には、転動ボール340がプランジャ室170内周壁上を転動するため、転動ボール340とプランジャ室170内周壁との摩擦抵抗は小さいものとなる。
【0063】
本電磁弁300において、ソレノイド124に電流が供給された場合に、プランジャ310に作用する力は、前述の電磁弁80と概ね同様である。なお、Fmは磁気力、Fpは差圧力、Fsは付勢力、Frは抵抗力である。
[開度増加時]Fm+Fp=Fs+Fr ・・・(4−1)
[開度減少時]Fm+Fp=Fs−Fr ・・・(4−2)
したがって、本電磁弁300が配備された液圧ブレーキシステムにおいて、前記実施例と同様の液圧制御(図6〜8)がなされる。しかし、本電磁弁300において、抵抗力Frの大きさは、供給電流の大きさによって変化しない点が、電磁弁80と異なる。本電磁弁300の抵抗力Frの大きさは、皿ばね336が発生する弾性力に応じた大きさとなり、ほぼ一定である。そのため、液圧制御の増圧処理(図7)において、目標電流値Iaを決定する前述の式(2−3),(2−5),(2−6),(2−7)は、それぞれ次のようになる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S+R)/A ・・・(4−3)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S−R)/A ・・・(4−4)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/A ・・・(4−5)
Ia=Ih+(K・Xa+C−ΔP・S+R)/A ・・・(4−6)
上式(4−3)は開度増加時の目標電流値、式(4−4)は開度減少時の目標電流値、式(4−5)は開度維持時の目標電流値、式(4−6)は開度最大時の目標電流値をそれぞれ求めるものである。なお、変数Rは、抵抗力Frの大きさである。
また、液圧制御の減圧処理(図7)において、目標電流値Ibを決定する前述の式(3−2),(3−3),(3−4)は、それぞれ次のようになる。
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S+R)/A ・・・(4−7)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S−R)/A ・・・(4−8)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/A ・・・(4−9)
【0064】
本電磁弁300においても、前記電磁弁80とほぼ同様に摩擦抵抗によって自励振動が抑制される。本電磁弁300は、前記電磁弁80と異なり、開度が小さい場合に摩擦抵抗が小さくならないが、電力を消費せずに摩擦抵抗を発生させることができるというメリットがある。
なお、上記2つの実施例においては、プランジャ132あるいは310と、プランジャ室170の内壁との摩擦抵抗の作用方向を考慮して、ソレノイド124への供給電流が開度増加時と開度減少時とで互いに異ならされるため、ホイールシリンダ32の液圧の制御精度が高くなる効果が得られるが、不可欠ではなく、開度増加時も開度減少時も同じ式に基づいて決定されるようにすることも可能である。
【0065】
上記2つの実施例の電磁弁では、プランジャに直交方向の力を付与することによって自励振動が抑制されていたが、「プランジャの先端部の直交方向への比較的大きい移動を許容する電磁弁」によっても自励振動を抑制するとすることができる。
まず、シート弁122が開閉する際に、弁子たるボール130がどのように移動するかについて説明する。図10に、ボール130と弁座128とを拡大し、ボール130の動きを模式的に示す。なお、ボール130の動きを分かり易くするために、ボール130の移動量等を誇張して示した。二点鎖線で示す閉弁状態において、ボール130は、一円周に沿って弁座128と接触し、高圧側の液圧通路たる第二ポート164を塞いでいる。シート弁122が開かれる場合には、実線で示すボール130はプランジャ310が後退する向きに移動させられる、つまり、後退させられるのである。しかし、後退を開始した直後に弁座128に接触しなくなるわけではなく、後退開始当初は弁座128のテーパ面に沿って斜めに移動する場合が多い。それは、ボール130と弁座128との間の隙間を通って弁室178に流入する作動液により、ボール130が半径方向において一方の側へ寄せられることが一因であると推測される。そして、ボール130がさらに後退すると、ボール130およびプランジャ310の直交方向の移動は、プランジャ室170の内壁によって規制されるため、点線で示すようにボール130は弁座128から離れることとなる。
【0066】
上述のボール130が弁座128に接触している状態では、ボール130およびプランジャ310を往復動方向に振動させる力が生じたとしても、それらの前進が妨げられるため自励振動が発生しにくい。それに対して、ボール130が弁座128から離れると、ボール130およびプランジャ310は往復動し易くなり、自励振動が発生しやすくなる。なお、プランジャ310の薄板194が吸引面196に当接した状態では、プランジャ310の後退が禁止されるため自励振動が発生しにくくなる。以上のような事象に鑑みれば、電磁弁を、プランジャの後退が規制されるまでの間に、ボール130を弁座128に接触させたまま弁を開くことができるものとすれば、自励振動を抑制することができることとなる。
【0067】
図11に示すように、ボール130がある程度後退すると弁座128から離れるのは、プランジャの先端部および基端部の直交方向への移動がプランジャ室170内周壁によって規制される(互いに対向する黒い矢印のいずれか一方の力によって)ことにより、ボール130の直交方向への移動が制限されるためである。
それに対して、図12に示す電磁弁400は、プランジャの先端部の直交方向への移動を意図的に比較的大きく許容するものである。なお、本電磁弁400は、上記最初の実施例と同様の液圧ブレーキシステム(図1)において、増圧弁80〜86あるいは減圧弁90,92のいずれかの箇所に設けられる。また、本電磁弁400は、多くの部分が上記最初の実施例の電磁弁80と同様な構成とされているため、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0068】
本電磁弁400は、プランジャ410の先端部側(ボール130側)の直交方向への移動を許容すべく構成されている。本電磁弁400のプランジャ410の基端部側(スプリング138側)には、外径が均一にされてプランジャ室170内周壁によって直交方向への移動が規制される被規制部(ストレート部)420が設けられている。一方、プランジャ410の、被規制部420よりも先端側の部分は、先端に近づくほど外径が小さくなる向きのテーパ状にされたテーパ部422(図において、テーパの角度を誇張して示してある)が設けられている。そのため、従来の電磁弁と比較して、プランジャ410の先端部、つまりボール130が、直交方向へ、より大きく移動可能になっている。プランジャ410とプランジャ室170の内壁との隙間は、被規制部420とスペーサ154との間が他の部分に比較して小さくされており、プランジャ410はスペーサ154との嵌合部を中心に傾動可能となっており、ボール130の直交方向の移動は主としてこの傾動によって許容される。
【0069】
図13に、プランジャ410が、吸引面196に当接するまで後退した状態を示す。プランジャ410の先端部は、白抜き矢印で示すように直交方向へ移動することが許容されている。そして、ボール130が弁座128に接触することによって、プランジャ410の先端部の直交方向への移動が規制されている。このように、本電磁弁400は、プランジャ410が後退を開始してから後退が規制されるまでの間、ボール130が弁座128に接触しながら斜めに移動することができるようにされている。
【0070】
なお、本電磁弁400を備える液圧ブレーキシステムの制御は前記最初の実施例とほぼ同様である。以下に、異なる部分を中心に簡単に説明する。
本電磁弁400において、ソレノイド124に電流が供給された場合に、プランジャ410に作用する力は、前述の電磁弁80と概ね同様であるが、開度増加時に抵抗力が作用しないものとされる点が異なる。なお、次式において、Fmは磁気力、Fpは差圧力、Fsは付勢力、Frは抵抗力である。
[開度増加時]Fm+Fp=Fs ・・・(5−1)
[開度減少時]Fm+Fp=Fs−Fr ・・・(5−2)
したがって、本電磁弁400が配備された液圧ブレーキシステムにおいて、前記実施例と同様の液圧制御(図6〜8)がなされる。液圧制御の増圧処理(図7)において、目標電流値Iaを決定する前述の式(2−3),(2−5),(2−6),(2−7)は、それぞれ次のようになる。
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S)/A ・・・(5−3)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S−Z)/A ・・・(5−4)
Ia=(K・Xa+C−ΔP・S−Z/2)/A ・・・(5−5)
Ia=Ih+(K・Xa+C−ΔP・S)/A ・・・(5−6)
上式(5−3)は開度増加時の目標電流値、式(5−4)は開度減少時の目標電流値、式(5−5)は開度維持時の目標電流値、式(5−6)は開度最大時の目標電流値をそれぞれ求めるものである。なお、変数Zは、抵抗力Frの大きさである。
また、液圧制御の減圧処理(図7)において、目標電流値Ibを決定する前述の式(3−2),(3−3),(3−4)は、それぞれ次のようになる。
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/A ・・・(5−7)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S−Z)/A ・・・(5−8)
Ib=(K・Xb+C−ΔP・S)/A ・・・(5−9)
【0071】
本電磁弁400において、プランジャ410の前進に対して抵抗力が生じるが、後退に対して抵抗はほとんど生じない。しかしながら、プランジャ410を振動させる力が発生した場合に、プランジャ410の前進が抑制されるため、自励振動が抑制される。本電磁弁400は、前記電磁弁80と異なり、開度が小さい場合に摩擦抵抗が小さくならないが、電力を消費せずに摩擦抵抗を発生させることができるというメリットがある。
なお、本実施例においても、前記2つの実施例と概ね同様に、ボール130が弁座128に接触することによる抵抗の作用を考慮して、ソレノイド124への供給電流が開度増加時と開度減少時とで互いに異ならされるため、ホイールシリンダ32の液圧の制御精度が高くなる効果が得られるが、不可欠ではなく、開度増加時も開度減少時も同じ式に基づいて決定されるようにすることも可能である。また、開度減少時にボール130が弁座128に接触することによる抵抗が作用し、開度増加時に抵抗が作用しないものとしてソレノイド124への供給電流を決定しているが、不可欠ではなく、開度増加時も開度減少時も抵抗が作用するものとしてソレノイド124への供給電流を決定することもできる。なお、開度増加時と開度減少時との抵抗の大きさが同じものとすることや異なるものとすることができる。
【0072】
なお、ボール130はボール保持体175に回転可能に保持させることも、回転不能に保持させることもできる。回転可能に保持させれば、ボール130が弁座128に沿って移動する際のすべりを回避し、両者の摩耗を低減することができる。特に、ボール130は回転によって弁座128と接触する部分が変化するため、局部的な摩耗を回避することができ、耐久性向上に非常に有利である。それに対して、ボール130をボール保持体175に回転不能に保持させれば、ボール130が弁座128に沿って移動する際の摩擦力によって、プランジャ410の自励振動を、より効果的に抑制することができる。
【0073】
本実施例において、プランジャ室170内周壁のうちの、被規制部420の直交方向の移動を規制する部分が「直交移動規制部」として機能している。また、テーパ部422が「直交移動許容部」として機能している。さらにまた、直交移動規制部と、直交移動許容部と、プランジャ132の後退が規制されるまでボール130を接触させ得る構造にされた弁座128とを含んで、「弁子弁座接触許容機構」が構成されている。
【符号の説明】
【0074】
<磁気力を偏らせて直交力を付与する電磁弁> 10:ブレーキペダル 12:マスタシリンダ装置 14:ブレーキアクチュエータ 18:マスタシリンダ 20,22:加圧室 24,26:液通路 28:左前輪 30:右前輪 32:ホイールシリンダ 34:ホイールシリンダ 36:リザーバ 40:電磁開閉弁 46:左後輪 48:右後輪 56:マスタカット弁 58:マスタカット弁 60:動力液圧源 62:液圧制御弁装置 64:マスタシリンダ圧センサ 66:ホイールシリンダ圧センサ 80,82,84,86:増圧用電磁液圧制御弁(電磁弁) 90,92,94,96:減圧用電磁液圧制御弁(電磁弁) 98:増圧通路 100:減圧通路 102,104,106,108:ホイールシリンダ通路 110:液圧源液圧センサ 120:バルブハウジング(ハウジング) 122:シート弁 124:ソレノイド 128:弁座 130:ボール(弁子) 132:プランジャ 138:スプリング(弾性体) 144:第一磁路形成部材 146:第二磁路形成部材 150:第一部材 152:第二部材 154:スペーサ 158:第一ポート 162:第三部材 164:第二ポート 170:プランジャ室 172:プランジャ本体 174:スリーブ 176:隙間 190:貫通孔 192:連通路 194:薄板 196:吸引面(当接部) 200:凸部 202:切欠部 250:ECU(電子制御ユニット) <弾性体によって直交力を付与する電磁弁> 300:電磁弁 310:プランジャ 320:弾性力発生機構(弾性体) 332:収容穴 336:皿ばね 340:転動ボール 342:摩擦低減部材 <プランジャ先端部の直交方向の移動を許容する電磁弁> 400:電磁弁 410:プランジャ 420:被規制部 422:テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側の液通路および低圧側の液通路が接続され、それら高圧側の液通路と低圧側の液通路とを連通させるハウジングと、
そのハウジング内に軸方向に往復動可能に設けられたプランジャと、
そのプランジャの先端部に保持された弁子と、
前記ハウジングの前記弁子と対向する位置に、その弁子に向かって広がるテーパ状に形成され、前記高圧側の液通路が前記弁子によって閉塞可能に開口させられた弁座と、
前記プランジャを前記弁座に接近または弁座から離間する向きに付勢する弾性体と、
その弾性体が付勢する向きと逆向きにプランジャを移動させる磁気力を発生させるソレノイドと、
前記プランジャの往復動を抑制する力を付与する抑制力付与装置と
を含む電磁弁であって、
前記抑制力付与装置が、
前記ハウジングに設けられて前記プランジャの先端部とは反対側の部分である基端部の、そのプランジャの往復動する方向と直交する方向である直交方向への移動を規制する直交方向移動規制部と、
前記プランジャの先端部の前記直交方向への移動を許容する直交方向移動許容部と
を備え、前記プランジャが最大限後退した状態においても、前記弁子が前記弁座に接触することを許容する弁子弁座接触許容機構を含むことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記弁子弁座接触許容機構が、前記プランジャと前記ハウジングとの少なくとも一方に設けられて、前記プランジャの基端部から先端部に向かう向きにおいて前記プランジャと前記ハウジングとのクリアランスを漸増させるテーパ部を含む請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記プランジャの前記基端部に、外径が均一なストレート部が前記ハウジングの内周壁によって直交方向への移動が規制される被規制部として設けられ、そのストレート部より先端側の部分が先端に近づくほど外径が小さくなる向きのテーパを有するテーパ部とされ、前記プランジャが前記被規制部と前記ハウジングの内周壁との嵌合部を中心に傾動可能とされた請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記プランジャが強磁性材料から成り、前記ハウジングの強磁性材料から成る部分と共同して磁路を形成する一方、前記ハウジングの、前記プランジャの前記ストレート部と嵌合する前記内周壁が非磁性材料製のスペーサにより形成された請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
当該電磁弁が常閉弁であり、前記ハウジングが、前記プランジャと当接してそのプランジャの後退限度を規定する当接部を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−99563(P2011−99563A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284788(P2010−284788)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【分割の表示】特願2006−217869(P2006−217869)の分割
【原出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】