説明

露光装置、露光方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】基板に形成された下地パターンの上に新たなパターンを露光する際、下地パターンの位置ずれ量が基板内で場所によって異なっても、新たなパターンを基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光する。
【解決手段】下地パターンが形成され、下地パターンの上にフォトレジストが塗布された基板1の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、描画データを作成する。基板1をチャック10で支持し、チャック10をXステージ5により移動し、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1を走査して、基板1にパターンを描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、フォトレジストが塗布された基板へ光ビームを照射し、光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置、露光方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に係り、特に基板に形成された下地パターンの上に新たなパターンを露光するのに好適な露光装置、露光方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造は、露光装置を用いて、フォトリソグラフィー技術により基板上にパターンを形成して行われる。露光装置としては、従来、レンズ又は鏡を用いてマスクのパターンを基板上に投影するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがあった。
【0003】
近年、フォトレジストが塗布された基板へ光ビームを照射し、光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置が開発されている。光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを直接描画するため、高価なマスクが不要となる。また、描画データ及び走査のプログラムを変更することにより、様々な種類の表示用パネル基板に対応することができる。この様な露光装置として、例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−332221号公報
【特許文献2】特開2005−353927号公報
【特許文献3】特開2007−219011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、表示用パネルの各種基板の製造では、大型化及びサイズの多様化に対応するため、比較的大きな基板を用意し、表示用パネルのサイズに応じて、1枚の基板から複数枚の表示用パネル基板を製造している。主に大型の基板の露光に用いられるプロキシミティ方式では、基板の一面を一括して露光しようとすると、基板と同じ大きさのマスクが必要となり、高価なマスクのコストがさらに増大する。そこで、基板より比較的小さなマスクを用い、基板をXY方向にステップ移動させて、基板の一面を複数のショットに分けて露光する方式が主流となっている。基板の一面を複数のショットに分けて露光する場合、マスクと基板との相対的な位置及び回転、並びにマスクと基板との間のプロキシミティギャップを各ショットで全く同じにすることは困難であり、基板へ転写されるパターンの位置、回転又は大きさがショット毎に微妙に変化する。
【0006】
また、基板にパターンを直接描画する方式では、基板と光ビームとを相対的に移動して光ビームによる基板の走査を行うが、その際、精密な光学系を含む光ビーム照射装置を固定し、基板を支持するチャックをステージにより移動するのが一般的である。ステージによりチャックを移動する際、ステージに横揺れやヨーイング等の走行誤差が発生して、チャックに支持された基板の移動経路がずれると、光ビーム照射装置からの光ビームにより描画されるパターンの位置がずれる。このステージの走行誤差によるパターンの位置ずれ量は、基板内で場所によって異なってくる。
【0007】
この様に、プロキシミティ方式又は基板にパターンを直接描画する方式による露光で基板に形成された下地パターンの上に、新たなパターンを露光する場合、下地パターンの位置ずれ量が基板内で場所によって異なるため、下地パターンと新たに露光するパターンとの位置関係が基板内で場所によって変化する。そのため、例えば、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造において、基板上に形成されたブラックマトリクスの上に着色パターンを露光する場合、着色パターンが、基板内で場所によって各画素の位置からずれてしまうという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、基板に形成された下地パターンの上に新たなパターンを露光する際、下地パターンの位置ずれ量が基板内で場所によって異なっても、新たなパターンを基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光することである。また、本発明の課題は、高品質な表示用パネル基板を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の露光装置は、下地パターンが形成され、下地パターンの上にフォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、チャックを移動するステージと、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを備え、ステージによりチャックを移動し、光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、基板の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成する描画制御手段とを備えたものである。
【0010】
また、本発明の露光方法は、下地パターンが形成され、下地パターンの上にフォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、チャックをステージにより移動し、光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、基板の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成するものである。
【0011】
光ビーム照射装置の空間的光変調器は、光ビームを反射する複数の微小なミラーを二方向に配列して構成され、駆動回路が描画データに基づいて各ミラーの角度を変更することにより、基板へ照射する光ビームを変調する。空間的光変調器により変調された光ビームは、光ビーム照射装置の照射光学系を含むヘッド部から、チャックに支持された基板へ照射される。基板の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成するので、下地パターンの位置ずれ量が基板内で場所によって異なっても、新たなパターンが基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光される。
【0012】
さらに、本発明の露光装置は、検出手段が、下地パターンが複数のショットに分けて露光された基板の表面を各ショットの区画に分割し、各ショットの区画毎に下地パターンの位置を検出するものである。また、本発明の露光方法は、下地パターンが複数のショットに分けて露光された基板の表面を各ショットの区画に分割し、各ショットの区画毎に下地パターンの位置を検出するものである。下地パターンがプロキシミティ方式で露光された基板において、下地パターンの位置ずれ量がショト毎に異なっても、新たなパターンが基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光される。
【0013】
さらに、本発明の露光装置は、検出手段が、分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークの画像を取得して、画像信号を出力する複数の画像取得装置と、各画像取得装置が出力した画像信号を処理して、各位置検出用マークの位置を検出する画像処理装置と、画像処理装置の検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置を検出する検出回路とを有するものである。また、本発明の露光方法は、分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークの画像を取得し、取得した画像の画像信号を処理して、各位置検出用マークの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置を検出するものである。分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークを用いて、画像処理により、分割した区画毎の下地パターンの位置が精度良く検出される。
【0014】
さらに、本発明の露光装置は、基板をチャックに搭載する前に、基板を搭載して基板の温度を調節する温度調節装置を備え、複数の画像取得装置が、温度調節装置の上空に設けられて、温度調節装置に搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、描画制御手段が、温度調節装置により基板の温度を調節している間に、検出回路の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成するものである。また、本発明の露光方法は、基板をチャックに搭載する前に、基板を温度調節装置に搭載して基板の温度を調節し、温度調節装置の上空に複数の画像取得装置を設けて、複数の画像取得装置により、温度調節装置に搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、温度調節装置により基板の温度を調節している間に、分割した区画毎の下地パターンの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成するものである。基板を温度調節装置からチャックへ搬送した後、描画データの作成を待つ必要がなく露光処理を開始することができ、タクトタイムが短くなる。
【0015】
あるいは、本発明の露光装置は、チャック及びステージを複数備え、各ステージが、各チャックを、光ビーム照射装置の下から離れた待機位置から、光ビーム照射装置の下の露光位置へ順番に移動し、複数の画像取得装置が、待機位置にあるチャックの上空に設けられて、待機位置にあるチャックに搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、描画制御手段が、基板を搭載したチャックが待機位置で待機している間に、検出回路の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成するものである。また、本発明の露光方法は、チャック及びステージを複数設け、各ステージにより、各チャックを、光ビーム照射装置の下から離れた待機位置から、光ビーム照射装置の下の露光位置へ順番に移動し、待機位置にあるチャックの上空に複数の画像取得装置を設けて、複数の画像取得装置により、待機位置にあるチャックに搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、基板を搭載したチャックが待機位置で待機している間に、分割した区画毎の下地パターンの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成するものである。複数のチャックに搭載された基板を、露光位置で描画データの作成を待つ必要がなく順番に露光することができ、タクトタイムが短くなる。
【0016】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかの露光装置又は露光方法を用いて基板の露光を行うものである。上記の露光装置又は露光方法を用いることにより、新たなパターンが基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光されるので、高品質な表示用パネル基板が製造される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の露光装置及び露光方法によれば、基板の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することにより、下地パターンの位置ずれ量が基板内で場所によって異なっても、新たなパターンを基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光することができる。
【0018】
さらに、本発明の露光装置及び露光方法によれば、下地パターンが複数のショットに分けて露光された基板の表面を各ショットの区画に分割し、各ショットの区画毎に下地パターンの位置を検出することにより、下地パターンがプロキシミティ方式で露光された基板において、下地パターンの位置ずれ量がショト毎に異なっても、新たなパターンを基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光することができる。
【0019】
さらに、本発明の露光装置及び露光方法によれば、分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークの画像を取得し、取得した画像の画像信号を処理して、各位置検出用マークの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置を検出することにより、分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークを用いて、画像処理により、分割した区画毎の下地パターンの位置を精度良く検出することができる。
【0020】
さらに、本発明の露光装置及び露光方法によれば、基板をチャックに搭載する前に、基板を温度調節装置に搭載して基板の温度を調節し、温度調節装置の上空に複数の画像取得装置を設けて、複数の画像取得装置により、温度調節装置に搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、温度調節装置により基板の温度を調節している間に、分割した区画毎の下地パターンの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することにより、基板を温度調節装置からチャックへ搬送した後、描画データの作成を待つ必要がなく露光処理を開始することができるので、タクトタイムを短くすることができる。
【0021】
あるいは、本発明の露光装置及び露光方法によれば、チャック及びステージを複数設け、各ステージにより、各チャックを、光ビーム照射装置の下から離れた待機位置から、光ビーム照射装置の下の露光位置へ順番に移動し、待機位置にあるチャックの上空に複数の画像取得装置を設けて、複数の画像取得装置により、待機位置にあるチャックに搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、基板を搭載したチャックが待機位置で待機している間に、分割した区画毎の下地パターンの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することにより、複数のチャックに搭載された基板を、露光位置で描画データの作成を待つ必要がなく順番に露光することができるので、タクトタイムを短くすることができる。
【0022】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、新たなパターンを基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光することができるので、高品質な表示用パネル基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による露光装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による露光装置の正面図である。
【図4】光ビーム照射装置の概略構成を示す図である。
【図5】レーザー測長系の動作を説明する図である。
【図6】基板のアライメントマークを示す図である。
【図7】図7(a)は温度調節装置の上面図、図7(b)は温度調節装置の側面図である。
【図8】受け渡し位置にあるチャックの上面図である。
【図9】受け渡し位置にあるチャックの側面図である。
【図10】描画制御部の概略構成を示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。
【図12】待機位置にあるチャックの上面図である。
【図13】待機位置にあるチャックの側面図である。
【図14】描画制御部の概略構成を示す図である。
【図15】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図16】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図17】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図18】光ビームによる基板の走査を説明する図である。
【図19】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図20】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。また、図2は本発明の一実施の形態による露光装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態による露光装置の正面図である。本実施の形態は、プロキシミティ方式による露光で基板に形成された下地パターンの上に、新たなパターンを露光する露光装置の例を示している。露光装置は、ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック10、ゲート11、光ビーム照射装置20、リニアスケール31,33、エンコーダ32,34、レーザー測長系、レーザー測長系制御装置40、走行誤差検出回路46、画像処理装置48,53、温度調節装置50、位置検出回路54、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70を含んで構成されている。なお、図2及び図3では、レーザー測長系のレーザー光源41、レーザー測長系制御装置40、走行誤差検出回路46、画像処理装置48,53、温度調節装置50、位置検出回路54、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70が省略されている。露光装置は、これらの他に、基板搬送ロボット、装置内の温度管理を行う温度制御ユニット等を備えている。
【0025】
なお、以下に説明する実施の形態におけるXY方向は例示であって、X方向とY方向とを入れ替えてもよい。
【0026】
図1及び図2において、チャック10は、基板1の受け渡しを行う受け渡し位置にある。受け渡し位置において、図示しない基板搬送ロボットにより基板1がチャック10へ搬入され、また図示しない基板搬送ロボットにより基板1がチャック10から搬出される。チャック10は、基板1の裏面を真空吸着して支持する。基板1の表面には、プロキシミティ方式による露光で形成された下地パターンの上に、フォトレジストが塗布されている。
【0027】
基板1の露光を行う露光位置の上空に、ベース3をまたいでゲート11が設けられている。ゲート11には、複数の光ビーム照射装置20が搭載されている。なお、本実施の形態は、8つの光ビーム照射装置20を用いた露光装置の例を示しているが、光ビーム照射装置の数はこれに限らず、7つ以下又は9つ以上の光ビーム照射装置を用いてもよい。
【0028】
図4は、光ビーム照射装置の概略構成を示す図である。光ビーム照射装置20は、光ファイバー22、レンズ23、ミラー24、DMD(Digital Micromirror Device)25、投影レンズ26、及びDMD駆動回路27を含んで構成されている。光ファイバー22は、レーザー光源ユニット21から発生された紫外光の光ビームを、光ビーム照射装置20内へ導入する。光ファイバー22から射出された光ビームは、レンズ23及びミラー24を介して、DMD25へ照射される。DMD25は、光ビームを反射する複数の微小なミラーを二方向に配列して構成された空間的光変調器であり、各ミラーの角度を変更して光ビームを変調する。DMD25により変調された光ビームは、投影レンズ26を含むヘッド部20aから照射される。DMD駆動回路27は、主制御装置70から供給された描画データに基づいて、DMD25の各ミラーの角度を変更する。
【0029】
図2及び図3において、チャック10は、θステージ8に搭載されており、θステージ8の下にはYステージ7及びXステージ5が設けられている。Xステージ5は、ベース3に設けられたXガイド4に搭載され、Xガイド4に沿ってX方向へ移動する。Yステージ7は、Xステージ5に設けられたYガイド6に搭載され、Yガイド6に沿ってY方向へ移動する。θステージ8は、Yステージ7に搭載され、θ方向へ回転する。
【0030】
θステージ8のθ方向への回転により、チャック10に搭載された基板1は、直交する二辺がX方向及びY方向へ向く様に回転される。Xステージ5のX方向への移動により、チャック10は、受け渡し位置と露光位置との間を移動される。露光位置において、Xステージ5のX方向への移動により、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームが、基板1をX方向へ走査する。また、Yステージ7のY方向への移動により、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームによる基板1の走査領域が、Y方向へ移動される。図1において、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、θステージ8のθ方向へ回転、Xステージ5のX方向への移動、及びYステージ7のY方向への移動を行う。
【0031】
図1及び図2において、ベース3には、X方向へ伸びるリニアスケール31が設置されている。リニアスケール31には、Xステージ5のX方向への移動量を検出するための目盛が付けられている。また、Xステージ5には、Y方向へ伸びるリニアスケール33が設置されている。リニアスケール33には、Yステージ7のY方向への移動量を検出するための目盛が付けられている。
【0032】
図1及び図3において、Xステージ5の一側面には、リニアスケール31に対向して、エンコーダ32が取り付けられている。エンコーダ32は、リニアスケール31の目盛を検出して、パルス信号を主制御装置70へ出力する。また、図1及び図2において、Yステージ7の一側面には、リニアスケール33に対向して、エンコーダ34が取り付けられている。エンコーダ34は、リニアスケール33の目盛を検出して、パルス信号を主制御装置70へ出力する。主制御装置70は、エンコーダ32のパルス信号をカウントして、Xステージ5のX方向への移動量を検出し、エンコーダ34のパルス信号をカウントして、Yステージ7のY方向への移動量を検出する。
【0033】
図5は、レーザー測長系の動作を説明する図である。なお、図5においては、図1に示したゲート11、光ビーム照射装置20、画像処理装置48,53、温度調節装置50、及び位置検出回路54が省略されている。レーザー測長系は、公知のレーザー干渉式の測長系であって、レーザー光源41、レーザー干渉計42,44、及びバーミラー43,45を含んで構成されている。バーミラー43は、チャック10のY方向の一側面に取り付けられている。また、バーミラー45は、チャック10のX方向の一側面に取り付けられている。
【0034】
レーザー干渉計42は、レーザー光源41からのレーザー光をバーミラー43へ照射し、バーミラー43により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光源41からのレーザー光とバーミラー43により反射されたレーザー光との干渉を測定する。この測定は、Y方向の2箇所で行う。レーザー測長系制御装置40は、主制御装置70の制御により、レーザー干渉計42の測定結果から、Xステージ5により移動されるチャック10のX方向の位置及び回転を検出する。
【0035】
一方、レーザー干渉計44は、レーザー光源41からのレーザー光をバーミラー45へ照射し、バーミラー45により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光源41からのレーザー光とバーミラー45により反射されたレーザー光との干渉を測定する。レーザー測長系制御装置40は、主制御装置70の制御により、レーザー干渉計44の測定結果から、Xステージ5により移動されるチャック10のY方向の位置を検出する。
【0036】
走行誤差検出回路46は、レーザー測長系制御装置40の検出結果から、Xステージ5がX方向へ移動する際の横揺れやヨーイング等の走行誤差を検出する。レーザー測長系を用いて、チャック10の位置を検出することにより、チャック10の位置を精度良く検出することができるので、Xステージ5の走行誤差を精度良く検出することができる。走行誤差検出回路46は、検出結果を主制御装置70へ出力する。
【0037】
図1において、ベース3の手前には、温度調節装置50が設置されている。通常、基板1は、前工程での処理により温度が上昇又は下降しているため、露光を行う前に基板1の冷却又は加温を行う必要がある。図示しない基板搬送ロボットは、基板1をチャック10へ搬入する前に、基板1を温度調節装置50へ搬入し、温度調節装置50により温度が調節された基板1を、チャック10へ搬入する。温度調節装置50は、チャック10に搭載された基板1の露光が行われている間、次に露光を行う基板1を搭載して、基板1の温度を調節する。本実施の形態では、基板1の表面をプロキシミティ方式により露光された各ショットの区画に分割し、温度調節装置50により基板1の温度を調節している間に、各ショットの下地パターンのアライメントマークの位置を検出して、各ショットの区画毎の下地パターンの位置を検出し、各ショットの区画毎の下地パターンの位置に応じて、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成する。
【0038】
図6は、基板のアライメントマークを示す図である。図6は、1枚の基板から4枚の表示用パネル基板を製造する例を示している。基板1の表面の四隅には、基板1の位置及び回転を検出するためのクローバルアライメントマークGAMが設けられている。また、基板1の表面には、4回のショットにより、4つの下地パターン2a,2b,2c,2dが形成されている。下地パターン2a,2b,2c,2dには、下地パターン2a,2b,2c,2dの位置、回転及び大きさを検出するためのショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdがそれぞれ4つずつ設けられている。
【0039】
図7(a)は温度調節装置の上面図、図7(b)は温度調節装置の側面図である。図7(a),(b)に示す様に、温度調節装置50の上空には、基板1のクローバルアライメントマークGAMの真上の位置に、CCDカメラ51が設置されている。CCDカメラ51は、クローバルアライメントマークGAMの画像を取得し、画像信号を図1の画像処理装置53へ出力する。また、温度調節装置50の上空には、基板1のショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの真上の位置に、CCDカメラ52a,52b,52c,52dが設置されている。CCDカメラ52a,52b,52c,52dは、ショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの画像をそれぞれ取得し、画像信号を図1の画像処理装置53へ出力する。
【0040】
図1において、画像処理装置53は、CCDカメラ51が出力した画像信号を処理して、クローバルアライメントマークGAMの位置を検出する。位置検出回路54は、画像処理装置53が検出したクローバルアライメントマークGAMの位置から、温度調節装置50に搭載された基板1の位置及び回転を検出する。また、画像処理装置53は、CCDカメラ52a,52b,52c,52dが出力した画像信号を処理して、ショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの位置を検出する。位置検出回路54は、検出した基板1の位置及び回転、並びに画像処理装置53が検出したショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの位置から、下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさを検出する。各ショットの下地パターン2a,2b,2c,2dに設けられたショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdを用いて、画像処理により、各ショットの下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置が精度良く検出される。
【0041】
図8は、受け渡し位置にあるチャックの上面図である。また、図9は、受け渡し位置にあるチャックの側面図である。図8及び図9に示す様に、受け渡し位置にあるチャック10の上空には、基板1のクローバルアライメントマークGAMの真上の位置に、CCDカメラ47が設置されている。CCDカメラ47は、クローバルアライメントマークGAMの画像を取得し、画像信号を図1の画像処理装置48へ出力する。図1において、画像処理装置48は、CCDカメラ47が出力した画像信号を処理して、クローバルアライメントマークGAMの位置を検出する。
【0042】
図1において、主制御装置70は、画像処理装置48が検出したクローバルアライメントマークGAMの位置から、チャック10に搭載された基板1の位置及び回転を検出する。主制御装置70は、検出した基板1の位置に基づき、ステージ駆動回路60を制御して、基板1の中心点が露光を開始する前の所定の位置へ来る様に、Xステージ5によりチャック10を露光位置へ移動させる。また、主制御装置70は、検出した基板1の回転に基づき、ステージ駆動回路60を制御して、チャック10に搭載された基板1の直交する二辺がX方向及びY方向へ向く様に、θステージ8をθ方向へ回転させる。
【0043】
主制御装置70は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給する描画制御部を有する。図10は、描画制御部の概略構成を示す図である。描画制御部71は、メモリ72,76、バンド幅設定部73、中心点座標決定部74、座標決定部75、及び描画データ作成部77を含んで構成されている。
【0044】
メモリ76には、設計値マップが格納されている。設計値マップには、描画データが、下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさが設計値通りである場合のXY座標で示されている。描画データ作成部77は、温度調節装置50により基板1の温度を調節している間に、位置検出回路54が検出した下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさに応じて、メモリ76に格納された設計値マップの描画データのXY座標を変換して、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成する。メモリ72は、描画データ作成部77が作成した描画データを、そのXY座標をアドレスとして記憶する。メモリ72には、既にチャック10に搭載された基板1に対する描画データAを記憶する領域と、温度調節装置50に搭載された基板1に対する描画データBを記憶する領域とが設けられている。
【0045】
バンド幅設定部73は、メモリ72から読み出す描画データのY座標の範囲を決定することにより、光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射される光ビームのY方向のバンド幅を設定する。
【0046】
レーザー測長系制御装置40は、露光位置における基板1の露光を開始する前のチャック10のXY方向の位置を検出する。中心点座標決定部74は、レーザー測長系制御装置40が検出したチャック10のXY方向の位置から、基板1の露光を開始する前のチャック10の中心点のXY座標を決定する。図1において、光ビーム照射装置20からの光ビームにより基板1の走査を行う際、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Xステージ5によりチャック10をX方向へ移動させる。基板1の走査領域を移動する際、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Yステージ7によりチャック10をY方向へ移動させる。図10において、中心点座標決定部74は、エンコーダ32,34からのパルス信号をカウントして、Xステージ5のX方向への移動量及びYステージ7のY方向への移動量を検出し、チャック10の中心点のXY座標を決定する。そして、中心点座標決定部74は、走行誤差検出回路46の検出結果に基づき、決定したチャック10の中心点のXY座標を補正する。
【0047】
座標決定部75は、中心点座標決定部74が補正したチャック10の中心点のXY座標に基づき、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データのXY座標を決定する。メモリ72は、座標決定部75が決定したXY座標をアドレスとして入力し、入力したXY座標のアドレスに記憶された描画データを、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ出力する。
【0048】
各ショットの区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさを検出し、検出結果に基づき、各ショットの区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさに応じて、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成するので、下地パターン2a,2b,2c,2dの位置ずれ量が基板1内で場所によって異なっても、新たなパターンが基板1全体に渡って下地パターン2a,2b,2c,2dに合わせて露光される。
【0049】
また、温度調節装置50により基板1の温度を調節している間に、各ショットの区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置、回転及び大きさの検出結果に基づき、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成するので、基板1を温度調節装置50からチャック10へ搬送した後、描画データの作成を待つ必要がなく露光処理を開始することができ、タクトタイムが短くなる。
【0050】
さらに、Xステージ5の走行誤差を検出し、Xステージ5の走行誤差の検出結果に基づき、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データの座標を補正し、補正した座標の描画データを、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給するので、Xステージ5に横揺れやヨーイング等の走行誤差が発生しても、パターンの描画が精度良く行われる。
【0051】
図11は、本発明の他の実施の形態による露光装置の概略構成を示す図である。本実施の形態は、図1に示したXステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック10、リニアスケール33、エンコーダ32,34、レーザー測長系のレーザー干渉計42及びバーミラー43,45、並びに温度調節装置50を、2組設けたものである。なお、図11では、図1に示したレーザー測長系のレーザー光源41、レーザー測長系制御装置40、走行誤差検出回路46、画像処理装置53、位置検出回路54、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70が省略されている。
【0052】
受け渡し位置において基板1が搭載された各チャック10は、Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、光ビーム照射装置20の下から離れた待機位置へ移動される。なお、本実施の形態では、待機位置を受け渡し位置とは別の位置としているが、待機位置を受け渡し位置と同じ位置としてもよく、その場合、各チャック10の受け渡し位置から待機位置への移動は不要である。
【0053】
図11は、各チャック10が待機位置にある状態を示している。各チャック10は、待機位置から光ビーム照射装置20の下の露光位置へ順番に移動され、各チャック10に搭載された基板1の露光が行われる。本実施の形態では、基板1の表面をプロキシミティ方式により露光された各ショットの区画に分割し、基板1を搭載したチャック10が待機位置で待機している間に、各ショットの下地パターン2a,2b,2c,2dのショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの位置を検出して、各ショットの区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置を検出し、各ショットの区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置に応じて、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成する。
【0054】
図12は、待機位置にあるチャックの上面図である。また、図13は、待機位置にあるチャックの側面図である。待機位置にあるチャック10の上空には、基板1のクローバルアライメントマークGAMの真上の位置に、CCDカメラ51が設置されている。CCDカメラ51は、クローバルアライメントマークGAMの画像を取得し、画像信号を図14の画像処理装置53へ出力する。また、待機位置にあるチャック10の上空には、基板1のショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの真上の位置に、CCDカメラ52a,52b,52c,52dが設置されている。CCDカメラ52a,52b,52c,52dは、ショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの画像をそれぞれ取得し、画像信号を図14の画像処理装置53へ出力する。
【0055】
画像処理装置53は、CCDカメラ51が出力した画像信号を処理して、クローバルアライメントマークGAMの位置を検出する。位置検出回路54は、画像処理装置53が検出したクローバルアライメントマークGAMの位置から、チャック10に搭載された基板1の位置及び回転を検出する。また、画像処理装置53は、CCDカメラ52a,52b,52c,52dが出力した画像信号を処理して、ショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの位置を検出する。位置検出回路54は、検出した基板1の位置及び回転、並びに画像処理装置53が検出したショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの位置から、下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさを検出する。各ショットの下地パターン2a,2b,2c,2dに設けられたショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdを用いて、画像処理により、各ショットの下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置が精度良く検出される。
【0056】
主制御装置70は、位置検出回路54が検出した基板1の位置に基づき、ステージ駆動回路60を制御して、基板1の中心点が露光を開始する前の所定の位置へ来る様に、Xステージ5によりチャック10を露光位置へ移動させる。また、主制御装置70は、位置検出回路54が検出した基板1の回転に基づき、ステージ駆動回路60を制御して、チャック10に搭載された基板1の直交する二辺がX方向及びY方向へ向く様に、θステージ8をθ方向へ回転させる。
【0057】
主制御装置70は、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ描画データを供給する描画制御部を有する。図14は、描画制御部の概略構成を示す図である。描画制御部71’は、メモリ72,76、バンド幅設定部73、中心点座標決定部74、座標決定部75、及び描画データ作成部77’を含んで構成されている。
【0058】
描画データ作成部77’は、基板1を搭載したチャック10が待機位置で待機している間に、位置検出回路54が検出した下地パターン2a,2b,2c,2dの基板1内での位置、回転及び大きさに応じて、メモリ76に格納された設計値マップの描画データのXY座標を変換して、各光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成する。メモリ72は、描画データ作成部77’が作成した描画データを、そのXY座標をアドレスとして記憶する。メモリ72には、一方のチャック10に搭載された基板1に対する描画データAを記憶する領域と、他方のチャック10に搭載された基板1に対する描画データBを記憶する領域とが設けられている。その他の構成要素は、図10に示した描画制御部と同様である。
【0059】
基板1を搭載したチャック10が待機位置で待機している間に、各ショットの区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置、回転及び大きさの検出結果に基づき、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成するので、複数のチャック10に搭載された基板1を、露光位置で描画データの作成を待つ必要がなく順番に露光することができ、タクトタイムが短くなる。
【0060】
図15〜図18は、光ビームによる基板の走査を説明する図である。図15〜図18は、8つの光ビーム照射装置20からの8本の光ビームにより、基板1のX方向の走査を4回行って、基板1全体を走査する例を示している。図15〜図18においては、各光ビーム照射装置20のヘッド部20aが破線で示されている。各光ビーム照射装置20のヘッド部20aから照射された光ビームは、Y方向にバンド幅Wを有し、Xステージ5のX方向への移動によって、基板1を矢印で示す方向へ走査する。
【0061】
図15は、1回目の走査を示し、X方向への1回目の走査により、図15に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。1回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図16は、2回目の走査を示し、X方向への2回目の走査により、図16に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。2回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図17は、3回目の走査を示し、X方向への3回目の走査により、図17に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われる。3回目の走査が終了すると、Yステージ7のY方向への移動により、基板1がY方向へバンド幅Wと同じ距離だけ移動される。図18は、4回目の走査を示し、X方向への4回目の走査により、図18に灰色で示す走査領域でパターンの描画が行われ、基板1全体の走査が終了する。
【0062】
複数の光ビーム照射装置20からの複数の光ビームにより基板1を走査する際も、各光ビーム照射装置20からの光ビームにより描画されるパターンがXステージ5の走行誤差により互いにずれるのを防止することができるので、パターンの描画を精度良く行うことができる。そして、複数の光ビーム照射装置20からの複数の光ビームにより基板1の走査を並行して行うことにより、基板1全体の走査に掛かる時間を短くすることができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0063】
なお、図15〜図18では、基板1のX方向の走査を4回行って、基板1全体を走査する例を示したが、走査の回数はこれに限らず、基板1のX方向の走査を3回以下又は5回以上行って、基板1全体を走査してもよい。
【0064】
以上説明した実施の形態によれば、基板1の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターン2a,2b,2c,2dの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置に応じて、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成することにより、下地パターン2a,2b,2c,2dの位置ずれ量が基板1内で場所によって異なっても、新たなパターンを基板1全体に渡って下地パターン2a,2b,2c,2dに合わせて露光することができる。
【0065】
さらに、下地パターン2a,2b,2c,2dが複数のショットに分けて露光された基板1の表面を各ショットの区画に分割し、各ショットの区画毎に下地パターン2a,2b,2c,2dの位置を検出することにより、下地パターン2a,2b,2c,2dがプロキシミティ方式で露光された基板1において、下地パターン2a,2b,2c,2dの位置ずれ量がショト毎に異なっても、新たなパターンを基板1全体に渡って下地パターン2a,2b,2c,2dに合わせて露光することができる。
【0066】
さらに、分割した区画毎に下地パターン2a,2b,2c,2dに設けられた複数のショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの画像を取得し、取得した画像の画像信号を処理して、各ショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの位置を検出し、検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置を検出することにより、分割した区画毎に下地パターン2a,2b,2c,2dに設けられた複数のショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdを用いて、画像処理により、分割した区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置を精度良く検出することができる。
【0067】
さらに、図1に示した実施の形態によれば、基板1をチャック10に搭載する前に、基板1を温度調節装置50に搭載して基板1の温度を調節し、温度調節装置50の上空に複数のCCDカメラ52a,52b,52c,52dを設けて、複数のCCDカメラ52a,52b,52c,52dにより、温度調節装置50に搭載された基板1の表面の複数のショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの画像を取得し、温度調節装置50により基板1の温度を調節している間に、分割した区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成することにより、基板1を温度調節装置50からチャック10へ搬送した後、描画データの作成を待つ必要がなく露光処理を開始することができるので、タクトタイムを短くすることができる。
【0068】
また、図11に示した実施の形態によれば、チャック10並びにXステージ5及びYステージ7を複数設け、Xステージ5及びYステージ7により、各チャック10を、光ビーム照射装置20の下から離れた待機位置から、光ビーム照射装置20の下の露光位置へ順番に移動し、待機位置にあるチャック10の上空に複数のCCDカメラ52a,52b,52c,52dを設けて、複数のCCDカメラ52a,52b,52c,52dにより、待機位置にあるチャック10に搭載された基板1の表面の複数のショットアライメントマークSAMa,SAMb,SAMc,SAMdの画像を取得し、基板1を搭載したチャック10が待機位置で待機している間に、分割した区画毎の下地パターン2a,2b,2c,2dの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置20のDMD駆動回路27へ供給する描画データを作成することにより、複数のチャック10に搭載された基板1を、露光位置で描画データの作成を待つ必要がなく順番に露光することができるので、タクトタイムを短くすることができる。
【0069】
なお、以上説明した実施の形態では、1枚の基板から4枚の表示用パネル基板を製造する例を示したが、本発明は、1枚の基板から3枚以下又は5枚以上の表示用パネル基板を製造する場合にも適用することができる。また、以上説明した実施の形態では、基板の表面を各ショットの区画に分割していたが、本発明はこれに限らず、基板の表面をさらに細かい区画に分割してもよい。さらに、本発明は、プロキシミティ方式による露光で下地パターンが形成された基板に限らず、下地パターンを直接描画する方式で下地パターンが形成された基板にも適用することができる。
【0070】
本発明の露光装置又は露光方法を用いて基板の露光を行うことにより、新たなパターンを基板全体に渡って下地パターンに合わせて露光することができるので、高品質な表示用パネル基板を製造することができる。
【0071】
例えば、図19は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等によりフォトレジストを塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、露光装置を用いて、フォトレジスト膜にパターンを形成する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0072】
また、図20は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、印刷法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。
【0073】
図19に示したTFT基板の製造工程では、露光工程(ステップ103)において、図20に示したカラーフィルタ基板の製造工程では、着色パターン形成工程(ステップ202)の露光処理において、本発明の露光装置又は露光方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 基板
3 ベース
4 Xガイド
5 Xステージ
6 Yガイド
7 Yステージ
8 θステージ
10 チャック
11 ゲート
20 光ビーム照射装置
20a ヘッド部
21 レーザー光源ユニット
22 光ファイバー
23 レンズ
24 ミラー
25 DMD(Digital Micromirror Device)
26 投影レンズ
27 DMD駆動回路
31,33 リニアスケール
32,34 エンコーダ
40 レーザー測長系制御装置
41 レーザー光源
42,44 レーザー干渉計
43,45 バーミラー
46 走行誤差検出回路
47,51,52a,52b,52c,52d CCDカメラ
48,53 画像処理装置
50 温度調節装置
54 位置検出回路
60 ステージ駆動回路
70 主制御装置
71,71’ 描画制御部
72,76 メモリ
73 バンド幅設定部
74 中心点座標決定部
75 座標決定部
77,77’ 描画データ作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地パターンが形成され、下地パターンの上にフォトレジストが塗布された基板を支持するチャックと、
前記チャックを移動するステージと、
光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置とを備え、
前記ステージにより前記チャックを移動し、前記光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光装置であって、
基板の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成する描画制御手段とを備えたことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記検出手段は、下地パターンが複数のショットに分けて露光された基板の表面を各ショットの区画に分割し、各ショットの区画毎に下地パターンの位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記検出手段は、
分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークの画像を取得して、画像信号を出力する複数の画像取得装置と、
各画像取得装置が出力した画像信号を処理して、各位置検出用マークの位置を検出する画像処理装置と、
前記画像処理装置の検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置を検出する検出回路とを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
基板を前記チャックに搭載する前に、基板を搭載して基板の温度を調節する温度調節装置を備え、
前記複数の画像取得装置は、前記温度調節装置の上空に設けられて、前記温度調節装置に搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、
前記描画制御手段は、前記温度調節装置により基板の温度を調節している間に、前記検出回路の検出結果に基づき、前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項5】
前記チャック及び前記ステージを複数備え、各ステージは、各チャックを、前記光ビーム照射装置の下から離れた待機位置から、前記光ビーム照射装置の下の露光位置へ順番に移動し、
前記複数の画像取得装置は、待機位置にある前記チャックの上空に設けられて、待機位置にある前記チャックに搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、
前記描画制御手段は、基板を搭載した前記チャックが待機位置で待機している間に、前記検出回路の検出結果に基づき、前記光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することを特徴とする請求項3に記載の露光装置。
【請求項6】
下地パターンが形成され、下地パターンの上にフォトレジストが塗布された基板をチャックで支持し、
チャックをステージにより移動し、
光ビームを変調する空間的光変調器、描画データに基づいて空間的光変調器を駆動する駆動回路、及び空間的光変調器により変調された光ビームを照射する照射光学系を有する光ビーム照射装置からの光ビームにより基板を走査して、基板にパターンを描画する露光方法であって、
基板の表面を複数の区画に分割し、分割した区画毎に下地パターンの位置を検出し、
検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置に応じて、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することを特徴とする露光方法。
【請求項7】
下地パターンが複数のショットに分けて露光された基板の表面を各ショットの区画に分割し、各ショットの区画毎に下地パターンの位置を検出することを特徴とする請求項6に記載の露光方法。
【請求項8】
分割した区画毎に下地パターンに設けられた複数の位置検出用マークの画像を取得し、
取得した画像の画像信号を処理して、各位置検出用マークの位置を検出し、
検出結果に基づき、分割した区画毎の下地パターンの位置を検出することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の露光方法。
【請求項9】
基板をチャックに搭載する前に、基板を温度調節装置に搭載して基板の温度を調節し、
温度調節装置の上空に複数の画像取得装置を設けて、複数の画像取得装置により、温度調節装置に搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、
温度調節装置により基板の温度を調節している間に、分割した区画毎の下地パターンの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することを特徴とする請求項8に記載の露光方法。
【請求項10】
チャック及びステージを複数設け、各ステージにより、各チャックを、光ビーム照射装置の下から離れた待機位置から、光ビーム照射装置の下の露光位置へ順番に移動し、
待機位置にあるチャックの上空に複数の画像取得装置を設けて、複数の画像取得装置により、待機位置にあるチャックに搭載された基板の表面の複数の位置検出用マークの画像を取得し、
基板を搭載したチャックが待機位置で待機している間に、分割した区画毎の下地パターンの位置の検出結果に基づき、光ビーム照射装置の駆動回路へ供給する描画データを作成することを特徴とする請求項8に記載の露光方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項12】
請求項6乃至請求項10のいずれか一項に記載の露光方法を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−169949(P2010−169949A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13091(P2009−13091)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】