説明

露光装置及び露光方法並びに微細加工装置及び微細加工方法

【課題】本発明は、極めて微細な加工を簡易な制御により行う。
【解決手段】光ディスク用原盤製造装置20は遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト材料を基板100上に成膜してレジスト層102を形成しレジスト基板103を得て、当該レジスト層102に特異出力光LEを照射し所望の凹凸パターンと対応した選択的な露光を施し感光させる。その後光ディスク用原盤製造装置20は、当該パターンが露光されたレジスト基板103を現像し光ディスク用原盤を得る。これにより露光部26は、レジスト層102にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。かくして光ディスク用原盤製造装置20は極めて微細な加工を簡易な制御により行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光装置及び露光方法並びに微細加工装置及び微細加工方法に関し、例えば光ディスク用原盤製造装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種情報を記録保存する記録媒体等のパターンを加工するために利用されるリソグラフィ技術として、紫外線と有機レジストとを組み合わせた光リソグラフィや、電子線を用いる電子線リソグラフィ等が知られている。
【0003】
かかる光リソグラフィでは、特殊な光源や装置が必要であり、短波長の光源の開発が困難であった。また電子線リソグラフィでは、大型の設備や装置が必要であり、さらにパターンを描画する速度が極めて遅かった。
【0004】
そこで、装置の小型化やパターンの描画速度の向上、より微細なパターンの描画を図るための手法の一つとして、熱リソグラフィを利用する手法がある。
【0005】
熱リソグラフィとは、光スポット内に生じた温度分布を利用する方法である。光を物質に照射した場合、その物質が光を吸収する性質を持っていると、光のエネルギーは熱に変換される。ここで、光をレンズによって基板上に集光すると、当該集光された光は図31に示すように、基板上でガウス分布を持った光強度分布となる。また、物質が光を吸収して発熱する熱分布も、同様な温度分布になる。
【0006】
よって、光を吸収し発熱すると急激に変化する材料を光吸収物質として用いると、図31に示す熱リソグラフィ描画サイズのように、光のスポット径以下の微細な描画が可能となる。
【0007】
そのような熱リソグラフィを利用したものとして、例えば、基板の上に無機系のレジスト材料からなるレジスト層を成膜し、露光、現像等の工程を経て光ディスク用原盤を得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3879726号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような熱リソグラフィでは、露光の工程において基板のレジスト層にパターンを描画する際、レジスト層で熱が拡散してしまうため、さらなる微細なパターニングを行うことができなかった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、極めて微細な加工を容易に実現する露光装置及び露光方法並びに微細加工装置及び微細加工方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の露光装置においては、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層の所望の位置に、パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として半導体レーザより照射するよう半導体レーザの焦点を移動させ、レジスト層に所望の形状を生成し露光するよう半導体レーザの照射を制御するようにした。
【0011】
これにより本発明の露光装置では、レジスト層にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。
【0012】
さらに本発明の露光方法においては、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層の所望の位置に、パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として半導体レーザより照射するよう半導体レーザの焦点を移動させ、レジスト層に所望の形状を生成し露光するよう半導体レーザの照射を制御するようにした。
【0013】
これにより本発明の露光方法では、レジスト層にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。
【0014】
また本発明の微細加工装置においては、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層に、パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際、パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として半導体レーザより出射し所望の凹凸パターンと対応する形状を露光した後に現像し所望の凹凸パターンを形成するようにした。
【0015】
これにより本発明の微細加工装置では、レジスト層にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。
【0016】
また本発明の微細加工方法においては、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層に、パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際、パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として半導体レーザより出射し所望の凹凸パターンと対応する形状を露光した後に現像し所望の凹凸パターンを形成するようにした。
【0017】
これにより本発明の微細加工方法では、レジスト層にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レジスト層にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。かくして本発明によれば、極めて微細な加工を容易に実現する露光装置及び露光方法並びに微細加工装置及び微細加工方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.半導体レーザによる短パルス出力原理
2.第1の実施の形態(光ディスク用原盤製造装置、製造方法)
3.第2の実施の形態(ハードディスクのプラッタ用原盤製造装置、製造方法)
4.他の実施の形態
【0020】
<1.半導体レーザによる短パルス出力原理>
まず、半導体レーザ3から高い光強度でなり短いパルス状でなるレーザ光LLを出力する原理について説明する。
【0021】
[1−1.短パルス光源の構成]
ここでは、図1に示す短パルス光源装置1を例に説明する。この短パルス光源装置1は、レーザ制御部2と半導体レーザ3とから構成されている。
【0022】
半導体レーザ3は、半導体発光を利用する一般的な半導体レーザ(例えばソニー株式会社製、SLD3233)でなる。レーザ制御部2は、半導体レーザ3に供給する駆動信号SDを制御することにより、当該半導体レーザ3からパルス状のレーザ光LLを出力させるようになされている。
【0023】
レーザ制御部2は、所定のタイミングで複数種類のパルス状の信号を生成するパルス信号発生器4、及び半導体レーザ3を駆動する駆動回路6により構成されている(詳しくは後述する)。
【0024】
パルス信号発生器4は、その内部で所定の周期TSの矩形波でなる同期信号SSを生成しており、当該同期信号SSに基づいたタイミングで動作すると共に、当該同期信号SSを外部の測定装置等(図示せず)へ供給し得るようになされている。
【0025】
またパルス信号発生器4は、図2(A)に示すように、周期TSごとにパルス状に変化するパルス信号SLを生成し、これを駆動回路6へ供給する。このパルス信号SLは、駆動回路6に対し、半導体レーザ3へ電源を供給すべきタイミング、期間及び電圧レベルの大きさを示している。
【0026】
因みに図1に示すように、駆動回路6はパルス信号発生器4よりパルス信号SLを供給されている。本発明はこれに限らず、駆動回路6はレーザ制御部2の外部より信号を供給されるような構成としても良い。
【0027】
駆動回路6は、パルス信号SLを基に、図2(B)に示すようなレーザ駆動信号SDを生成し、これを半導体レーザ3へ供給する。
【0028】
このとき駆動回路6は、パルス信号SLを所定の増幅率で増幅することによりレーザ駆動信号SDを生成する。このためレーザ駆動信号SDのピーク電圧VDは、パルス信号SLのピーク電圧VLに応じて変化することになる。因みにレーザ駆動信号SDは、駆動回路6の増幅特性により、その波形が歪まされている。
【0029】
半導体レーザ3は、レーザ駆動信号SDの供給を受けると、図2(C)に示すように、光強度LTをパルス状に変化させながらレーザ光LLを出射する。以下では、レーザ光をパルス状に出射することを「パルス出力する」と表記する。
【0030】
このように短パルス光源装置1は、レーザ制御部2の制御により、他の光学部品等を用いることなく、半導体レーザ3からレーザ光LLを直接的にパルス出力するようになされている。
【0031】
[1−2.緩和振動モードによるレーザ光のパルス出力]
ところで、一般にレーザの特性は、いわゆるレート方程式により表されることが知られている。例えば、閉込係数Γ、光子寿命τph[s]、キャリア寿命τs[s]、自然放出結合係数Cs、活性層厚d[mm]、電荷素量q[C]、最大利得gmax、キャリア密度N、光子密度S、注入キャリア密度J、光速c[m/s]、透明化キャリア密度N0、群屈折率ng及び面積Agを用いると、レート方程式は次に示す(1)式のように表される。
【0032】
【数1】

【0033】
次に、(1)式のレート方程式を基に、注入キャリア密度Jと光子密度Sとの関係を算出した結果を図3のグラフに示し、注入キャリア密度Jとキャリア密度Nとの関係を算出した結果を図4のグラフに示す。
【0034】
因みにこれらの算出結果は、閉込係数Γ=0.3、光子寿命τph=1e−12[s]、キャリア寿命τs=1e−9[s]、自然放出結合係数Cs=0.03、活性層厚d=0.1[μm]、電荷素量q=1.6e−19[C]、及び面積Ag=3e−16[cm2]として得られたものである。
【0035】
図4に示したように、一般的な半導体レーザは、注入キャリア密度J(すなわちレーザ駆動信号SD)の増大に応じてキャリア密度Nが飽和状態の少し手前となる飽和前点Slにおいて、発光を開始する。
【0036】
また図3に示したように、半導体レーザは、注入キャリア密度Jの増大に伴って光子密度S(すなわち光強度)を増大させる。さらに図3と対応する図5に示すように、半導体レーザは、注入キャリア密度Jのさらなる増大に伴って、光子密度Sをさらに増大させることがわかる。
【0037】
次に、図5に示した特性曲線上に、注入キャリア密度Jが比較的大きいポイントPT1、及び当該ポイントPT1よりも注入キャリア密度Jが順次小さくなるポイントPT2及びPT3をそれぞれ選定した。
【0038】
続いて、ポイントPT1、PT2及びPT3における、レーザ駆動信号SDの印加を開始してからの、光子密度Sが変化する様子を算出した結果を図6、図7及び図8にそれぞれ示す。因みに、注入キャリア密度Jの大きさは半導体レーザに供給されるレーザ駆動信号SDの大きさに対応しており、また光子密度Sの大きさは光強度の大きさに対応している。
【0039】
図6に示すように、ポイントPT1において、光子密度Sは、いわゆる緩和振動により大きく振動してその振幅が大きくなり、かつ振幅の周期(すなわち極小値から極小値まで)となる振動周期taが約60[ps]と小さいことが確認された。また光子密度Sの値は、発光開始直後に出現する第1波の振幅が最も大きく、第2波、第3波と徐々に減衰し、やがて安定している。
【0040】
このポイントPT1の光子密度Sにおける第1波の最大値は約3×1016と、光子密度Sが安定したときの値である安定値(約1×1016)の約3倍であった。
【0041】
ここで、レーザ駆動信号SDを印加し始めてから発光を開始するまでの時間を発光開始時間τdとすると、(1)式に示したレート方程式から当該発光開始時間τdを算出することができる。
【0042】
すなわち、発振以前に光子密度S=0であったとすると、(1)式における上段の式は、次に示す(2)式のように表すことができる。
【0043】
【数2】

【0044】
ここでキャリア密度Nを閾値Nthとすると、発光開始時間τdを次に示す(3)式のように表すことができる。
【0045】
【数3】

【0046】
このように発光開始時間τdは、注入キャリア密度Jに反比例することがわかる。
【0047】
図6に示すように、ポイントPT1では、(3)式から発光開始時間τdが約200[ps]と算出される。このポイントPT1では、半導体レーザに大きな電圧値でなるレーザ駆動信号SDを印加しているため、当該レーザ駆動信号SDを印加し始めてから発光を開始するまでの発光開始時間τdも短くなっている。
【0048】
図7に示すように、ポイントPT1よりもレーザ駆動信号SDの値が小さいポイントPT2では、明確な緩和振動を生じているものの、ポイントPT1と比して振動の振幅が小さくなり、且つ振動周期taが約100[ps]と大きくなった。
【0049】
またポイントPT2の場合、(3)式から算出される発光開始時間τdは約400[ps]となり、ポイントPT1と比して大きくなった。このポイントPT2では、光子密度Sにおける第1波の最大値は約8×1015となり、安定値(約4×1015)の約2倍であった。
【0050】
図8に示すように、ポイントPT2よりも供給したレーザ駆動信号SDの値がさらに小さいポイントPT3では、緩和振動が殆どみられなかった。またポイントPT3の場合、(3)式から算出される発光開始時間τdは約1[ns]となり、比較的長いことが確認された。このポイントPT3の光子密度Sにおける最大値は安定値とほぼ同一であり、約1.2×1015であった。
【0051】
ところで一般的なレーザ光源では、半導体レーザに対してポイントPT3のように緩和振動の殆どみられない比較的低い電圧のレーザ駆動信号SDを印加するようになされている。すなわち一般的なレーザ光源は、レーザ光の出射開始直後における光強度の変動幅を小さく抑えることにより、レーザ光LLの出力を安定させるようになされている。
【0052】
以下では、短パルス光源装置1において、半導体レーザ3に比較的低い電圧でなるレーザ駆動信号SDを供給することにより、緩和振動を生じず安定した光強度でなるレーザ光LLを出力する動作モードを、通常モードと呼ぶ。また、この通常モードにおいて半導体レーザ3に供給するレーザ駆動信号SDの電圧を通常電圧VNと呼び、当該半導体レーザ3から出力されたレーザ光LLを通常出力光LNと呼ぶ。
【0053】
これに加えて本実施の形態による短パルス光源装置1は、ポイントPT1及びPT2の場合のように、比較的高い電圧のレーザ駆動信号SDが供給されることにより、光強度特性に緩和振動を生じさせる動作モード(以下、これを緩和振動モードと呼ぶ)を有している。
【0054】
この緩和振動モードの場合、短パルス光源装置1は、レーザ駆動信号SDの電圧V(以下これを振動電圧VBと呼ぶ)を通常電圧VNよりも高めることになる(例えば1.5倍以上)。この結果、短パルス光源装置1は、レーザ光の瞬間的な光強度LTの最大値を、通常モードの場合よりも増大させることができる。
【0055】
すなわち短パルス光源装置1は、緩和振動モードで動作する場合、半導体レーザ3に対して比較的高い振動電圧VBを供給することにより、当該振動電圧VBに応じた大きな光強度でなるレーザ光LLを出射することができる。
【0056】
これを別の観点から見れば、半導体レーザ3は、振動電圧VBでなるレーザ駆動信号SDが印加されることにより、通常電圧VNを印加していた従来と比して、レーザ光LLの光強度を大幅に増加させることが可能となる。
【0057】
例えば半導体レーザは、ポイントPT1において緩和振動の第1波による光子密度Sが約3×1016であり、通常電圧VDNを印加した場合を示すポイントPT3の場合(約1.2×1015)と比して、半導体レーザ3の光強度を20倍以上に増大させることが可能となる。
【0058】
実際上、一般的な半導体レーザ(ソニー株式会社製、SLD3233VF)に対して、比較的高い電圧のレーザ駆動信号SDを印加した時に測定された光強度特性の波形を図9に示す。ここで図9では、半導体レーザに対して矩形のパルス状でなるレーザ駆動信号SDを供給し、その結果得られたレーザ光LLの光強度特性の波形を示している。
【0059】
この図9から、図6及び図7において光子密度Sの算出結果としてみられた緩和振動が、実際の光強度の変化としても生じていることが確認された。
【0060】
ここで、半導体レーザ3に供給するレーザ駆動信号SDとレーザ光LLの光強度との関係について、詳細に検討する。
【0061】
図10(A)は、図7と同様、光子密度Sの時間変化の様子を示している。例えば図10(B)に示すように、短パルス光源装置1のレーザ制御部2は、緩和振動を生じさせるのに十分な振動電圧VB1でなるパルス状のレーザ駆動信号SDを半導体レーザ3に供給する。
【0062】
このときレーザ制御部2は、レーザ駆動信号SDを、発光開始時間τdに緩和振動の振動周期taを加算した時間(すなわちτd+ta、以下これを供給時間τPDと呼ぶ)に亘ってローレベルからハイレベルに立ち上げることにより、矩形状のパルス信号とする。
【0063】
なお説明の都合上、レーザ駆動信号SDのうちパルス状に立ち上がっている部分を駆動パルスPD1と呼ぶ。
【0064】
この結果半導体レーザ3は、図10(C)に示すように、緩和振動における第1波の部分のみに相当するパルス状のレーザ光LL(以下、これを振動出力光LBと呼ぶ)を出射することができる。
【0065】
このときレーザ制御部2は、パルス状でなる駆動パルスPDを供給しているため、高い振動電圧VBの印加時間を比較的短く抑えることができ、半導体レーザ3の平均消費電力を低下させて過発熱等による当該半導体レーザ3の不具合や破壊を防止させることができる。
【0066】
一方レーザ制御部2は、図10(D)に示すように、緩和振動を生じさせ得る程度に高い電圧であり、且つ振動電圧VB1よりも低い振動電圧VB2でなる駆動パルスPD2を半導体レーザ3へ供給し得るようにもなされている。
【0067】
この場合半導体レーザ3は、図10(E)に示すように、駆動パルスPD1が供給された場合と比して光強度の小さい振動出力光LBを出射することができる。
【0068】
このように短パルス光源装置1は、レーザ制御部2から比較的高い振動電圧VBでなる駆動パルスPD(すなわち駆動パルスPD1又はPD2)を半導体レーザ3へ供給する緩和振動モードで動作し得るようになされている。このとき短パルス光源装置1は、光強度が緩和振動によりパルス状に変化する振動出力光LBを出射し得るようになされている。
【0069】
[1−3.特異モードによるレーザ光のパルス出力]
さらに短パルス光源装置1は、通常モード及び緩和振動モードに加えて、振動電圧VBよりも高い特異電圧VEでなる駆動パルスPDを半導体レーザ3に供給する特異モードで動作するようにもなされている。
【0070】
このとき短パルス光源装置1は、半導体レーザ3から振動出力光LBよりもさらに大きな光強度でなるレーザ光LLをパルス出力し得るようになされている。
【0071】
[1−3−1.光測定装置の構成]
ここでは、短パルス光源装置1から出射されたレーザ光LLを測定及び分析する光測定装置11(図11)を用いることにより、短パルス光源装置1における駆動パルスPDの電圧Vを変化させた場合のレーザ光LLの光強度を測定する実験を行った。
【0072】
光測定装置11は、短パルス光源装置1の半導体レーザ3からレーザ光LLを出射させ、これをコリメータレンズ12へ入射させる。
【0073】
続いて光測定装置11は、レーザ光LLをコリメータレンズ12によって発散光から平行光に変換して集光レンズ15へ入射させ、さらに集光レンズ15によって集光させる。
【0074】
その後光測定装置11は、レーザ光LLを光サンプルオシロスコープ16(浜松ホトニクス株式会社製、C8188−01)へ供給することにより、当該レーザ光LLの光強度を測定し、その時間変化を光強度特性UT(後述する)として示すようになされている。
【0075】
また光測定装置11は、レーザ光LLを光スペクトラムアナザイザ17(株式会社エーディーシー製、Q8341)へ供給することにより、当該レーザ光LLの波長を分析し、その分布特性を波長特性UW(後述する)として示すようになされている。
【0076】
また光測定装置11は、コリメータレンズ12及び集光レンズ15の間にパワーメータ14(株式会社エーディーシー製、Q8230)が設置されており、当該パワーメータ14によりレーザ光LLの光強度LTを測定するようになされている。
【0077】
さらに光測定装置11は、必要に応じて、コリメータレンズ12及び集光レンズ15の間にBPF(Band Pass Filter)13を設置し得るようにもなされている。このBPF13は、レーザ光LLにおける特定波長成分の透過率を低減させることができる。
【0078】
[1−3−2.設定パルスと駆動パルスとの関係]
ところで短パルス光源装置1では、実際に生成されるパルス信号SLやレーザ駆動信号SD等がいわゆる高周波信号であることから、それぞれの波形が理想的な矩形波から変形した、いわゆる「なまった」波形となることが予想される。
【0079】
そこで、パルス信号発生器4に対し、図12(A)に示すように、パルス幅Wsが1.5[ns]でなる矩形状の設定パルスPLsを含むパルス信号SLを出力するよう設定した。このパルス信号SLを所定の測定装置により測定したところ、図12(B)に示すような測定結果が得られた。
【0080】
図12(B)のパルス信号SLにおいて、設定パルスPLsに対応して生成されるパルス(以下、これを生成パルスPLと呼ぶ)の半値幅である生成信号パルス半値幅PLhalfは、約1.5[ns]であった。
【0081】
また、パルス信号発生器4から駆動回路6に対し上述したパルス信号SLを供給した際に、当該駆動回路6から半導体レーザ3に実際に供給されたレーザ駆動信号SDについても同様に測定したところ、図12(C)に示すような測定結果が得られた。
【0082】
このレーザ駆動信号SDにおいて、生成パルスPLに対応して出現するパルス(すなわち駆動パルスPD)の半値幅である駆動パルス半値幅PDhalfは、生成パルスPLの信号レベルに応じて約1.5[ns]〜約1.7[ns]の範囲で変化した。
【0083】
このときの生成パルスPLの最大電圧値に対する駆動パルスPDにおける電圧パルス半値幅PDhalfの関係、及び当該生成パルスPLの最大電圧値に対する駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxの関係を、図13に重ねて示す。
【0084】
この図13から、駆動回路6へ供給される生成パルスPLの最大電圧値が増加するに連れ、当該駆動回路6から出力されるレーザ駆動信号SDにおける駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxも増加することが分かる。
【0085】
また図13から、駆動回路6へ供給される生成パルスPLの最大電圧値が増加するに連れ、駆動パルスPDの駆動パルス半値幅PDhalfも徐々に増加することが分かる。
【0086】
このことを換言すると、短パルス光源装置1は、一定のパルス幅でなる設定パルスPLsをパルス信号発生器4に設定した場合であっても、駆動回路6に供給する生成パルスPLの最大電圧値を変化させることにより、当該駆動回路6から出力されるレーザ駆動信号SDにおける駆動パルスPDのパルス幅及び電圧値を変化させることができる。
【0087】
[1−3−3.駆動パルスの電圧と出力されるレーザ光との関係]
そこで、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxを様々な値に設定した場合について、当該駆動パルスPDに応じて半導体レーザ3から出力されるレーザ光LLの光強度を、光測定装置11(図11)の光サンプルオシロスコープ16によりそれぞれ測定した。
【0088】
図14(A)及び(B)は、この測定の結果を示す。ここでこの図14において、時間軸(横軸)は相対的な時間を表しており、絶対的な時間を表していない。またこの測定においては、BPF13は設置されていない。
【0089】
図14(A)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが8.8[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT1には、比較的幅広い小さな出力ピーク(時間1550[ps]近傍)が1つのみ確認され、緩和振動による振動は見られなかった。すなわち光強度特性UT1は、短パルス光源装置1が通常モードで動作し半導体レーザ3から通常出力光LNを出力していることを表している。
【0090】
また図14(A)に示したように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが13.2[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT2には、緩和振動による複数のピークが確認された。すなわち光強度特性UT2は、短パルス光源装置1が緩和振動モードで動作し半導体レーザ3から振動出力光LBを出力していることを表している。
【0091】
一方、図14(B)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが17.8[V]、22.0[V]、26.0[V]及び29.2[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT3、UT4、UT5及びUT6には、比較的早い時間に先頭のピークとして表れるピーク部分と、その後細かい振動を伴い緩やかに減衰するスロープ部分が確認された。
【0092】
光強度特性UT3、UT4、UT5及びUT6は、先頭のピーク部分の後に大きなピークが表れていないことから、第1波に続いて第2波、第3波のピークを有する緩和振動モードによる光強度特性WT2(図14(A))と比して、波形の傾向が明らかに異なっている。
【0093】
因みに、光測定装置11の光サンプルオシロスコープ16における解像度が約30[ps]以上であるため図14等には表われていないが、別途ストリークカメラを用いた実験により、先頭ピーク部分のピーク幅(半値幅)は、約10[ps]であることが確認された。
【0094】
このように光サンプルオシロスコープ16における解像度が低いため、光測定装置11では、必ずしも正しい光強度LTを測定できていない可能性がある。この場合、図14等における先頭ピーク部分の最大光強度は、実際の値よりも低く表われることになる。
【0095】
次に、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxを変化させたときのレーザ光LLについて、さらに詳細に分析する。
【0096】
ここでは、光測定装置11を用い、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxを変化させたときに半導体レーザ3から出射されるレーザ光LLについて、その光強度特性UT及び波長特性UWを光サンプルオシロスコープ16及び光スペクトラムアナライザ17によりそれぞれ測定した。
【0097】
図15〜図19は、この測定の結果をそれぞれ示す。因みに図15(A)〜図19(A)では、光スペクトラムアナライザ17により測定したレーザ光LLの波長特性UW(すなわち波長ごとに分解した結果)を表している。また図15(B)〜図19(B)は、図14と同様に、光サンプルオシロスコープ16により測定したレーザ光LLの光強度特性UT(すなわち時間変化の様子)を示している。この測定において、BPF13は設置されていない。
【0098】
図15(B)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが8.8[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT11波形にはピークが1個のみ確認された。このことから、このとき短パルス光源装置1は通常モードで動作しており、当該レーザ光LLは通常出力光LNであるといえる。
【0099】
また図15(A)に示すように、このときの波長特性UW11には、波長約404[nm]に1個のピークのみが確認された。このことから、このレーザ光LLの波長は約404[nm]であることがわかる。
【0100】
図16(B)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが13.2[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT12には比較的大きなピークが複数確認された。このことから、このとき短パルス光源装置1は緩和振動モードで動作しており、当該レーザ光LLは振動出力光LBであるといえる。
【0101】
また図16(A)に示すように、このときの波長特性UW12には、波長約404[nm]及び約407[nm]に2個のピークが確認された。このことから、このレーザ光LLの波長は約404[nm]及び約407[nm]であることがわかる。
【0102】
図17(B)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが15.6[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT13には、先頭のピーク部分及び緩やかに減衰するスロープ部分が見られた。
【0103】
このとき図18(A)に示すように、波長特性UW13には、約404[nm]及び約408[nm]に2個のピークが確認された。この波長特性UW13では、緩和振動モードで確認された約406[nm]のピークが長波長側へ2[nm]移動しており、さらに398[nm]近傍が僅かに盛り上がっていることが確認された。
【0104】
図18(B)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが17.8[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT14には、先頭のピーク部分及び緩やかに減衰するスロープ部分が見られた。
【0105】
また図18(A)に示すように、このときの波長特性UW14では、約398[nm]と約403[nm]に2個の大きなピークが確認された。この波長特性UW14では、波長特性UW13(図17(A))と比して、約408[nm]のピークが非常に小さくなっており、その代わりに約398[nm]に大きなピークが形成されていることが確認された。
【0106】
図19(B)に示すように、駆動パルスPDの最大電圧値Vmaxが38.4[V]のとき、レーザ光LLの光強度特性UT15には先頭のピーク部分及び緩やかに減衰するスロープ部分が明確に見られた。
【0107】
また図19(A)に示すように、このときの波長特性UW15では、約398[nm]及び約404[nm]に2個のピークが確認された。この波長特性UW15は、波長特性UW14(図18(A))と比較すると、約408[nm]のピークが完全に消失しており、また約398[nm]に明確なピークが形成されていることが確認された。
【0108】
これらのことから、短パルス光源装置1では、振動電圧VBよりも大きな特異電圧VE(すなわち最大電圧値Vmax)でなる駆動パルスPDを半導体レーザ3に供給したことにより、振動出力光LBとはその波形及び波長の異なるレーザ光LLを出力し得ることが確認された。またこのレーザ光LLの発光開始時間τdは、上述したレート方程式から導かれる(2)式とは一致しなかった。
【0109】
ここでレーザ光LLの波長に着目する。レーザ光LLは、最大電圧値Vmaxが高くなるにつれて通常出力光LN(図15)から振動出力光LB(図16)へと変化し、さらに当該振動出力光LBからその波長を変化させる。
【0110】
具体的に振動出力光LB(図16)は、その波長特性UW12において、通常出力光LNとほぼ同等の波長(通常出力光LNの波長から±2[nm]以内)のピークに加えて、当該通常出力光LNよりも約3[nm](3±2[nm]以内)長波長側にピークを有する。
【0111】
これに対して図19に示したレーザ光LLは、その波長特性UW15において、通常出力光LNとほぼ同等の波長(通常出力光LNの波長から±2[nm]以内)のピークに加えて、当該通常出力光LNよりも約6[nm](6±2[nm]以内)短波長側にピークを有する。
【0112】
そこで以下では、図19に示したようなレーザ光LLを特異出力光LEと呼び、短パルス光源装置1において半導体レーザ3から当該特異出力光LEを出力するような動作モードを特異モードと呼ぶ。
【0113】
[1−3−4.特異モードにおけるレーザ光の波長]
ところで、最大電圧値Vmaxが15.6[V]のときの波長特性UW13(図17(A))に対して最大電圧値Vmaxが17.8[V]のときの波長特性UW14(図18(A))を比較すると、長波長側のピークは消失し、代りに短波長側のピークが出現している。
【0114】
すなわち波長特性UWは、最大電圧値Vmaxの上昇に伴いレーザ光LLが振動出力光LBから特異出力光LEへ変化する過程において、長波長側のピークが徐々に減少し、その代りに短波長側のピークが増大していくことがわかる。
【0115】
そこで、以下では、波長特性UWにおいて短波長側のピーク面積が長波長側のピーク面積以上となるレーザ光LLを特異出力光LEとし、当該波長特性UWにおいて短波長側のピーク面積が長波長側のピーク面積未満となるレーザ光LLを振動出力光LBと定義する。
【0116】
因みに、図18のように2つのピークが重複する場合には、通常出力光LNの波長から6[nm]短波長側の波長を短波長側の中心波長とし、当該中心波長±3[nm]の範囲における面積を当該ピークの面積とする。
【0117】
従って、この定義により、最大電圧値Vmaxが15.6[V]のとき(図17)のレーザ光LLは振動出力光LBとなり、最大電圧値Vmaxが17.8[V]のとき(図18)のレーザ光LLは特異出力光LEとなる。
【0118】
次に、光測定装置11において短パルス光源装置1を特異モードで動作させ、光ビームLL(すなわち特異出力光LE)の光強度特性UT16及び波長特性UW16を測定した。また、光測定装置11にBPF13を設置することにより光ビームLLにおける波長406±5[nm]の透過率を低下させるようにした状態で、同様に光強度特性UT17及び波長特性UW17を測定した。
【0119】
図20に、光強度特性UT16及び光強度特性UT17を重ねて示す。この図20から分かるように、BPF13が設置されたときの光強度特性UT17は、光強度特性UT16と比較して、ピーク部分の光強度が殆ど同等であったのに対し、スロープ部分の光強度が大きく減少した。
【0120】
このことは、スロープ部分の波長が約404[nm]であるためにBPF13により出射高強度が減少したのに対し、ピーク部分の波長が約398[nm]であるためにBPF13によっては光強度が減少しなかったことを表している。
【0121】
また図21(A)及び(B)に、波長特性UW16及びUW17をそれぞれ示す。因みに図21は、波長特性UW16及びUW17をそれぞれ最大の光強度に応じて正規化しており、縦軸の光強度を相対値としている。
【0122】
波長特性UW16(図21(A))では、光強度特性UT16において大きな面積を有するスロープ部分に対応するように、波長404[nm]の光強度が波長398[nm]の光強度に比して大きくなっている。
【0123】
一方波長特性UW17では、スロープ部分の減少に伴い、波長404[nm]の光強度と波長398[nm]の光強度とがほぼ同程度となった。
【0124】
このことからも、特異出力光LEは、図22に示す光強度特性UTにおける特異スロープESLの波長が約404[nm]であり特異ピークEPKの波長が約398[nm]であること、すなわちピーク部分の波長がスロープ部分の波長よりも短いことが分かった。
【0125】
これを換言すると、特異出力光LEの光強度特性UTにおけるピーク部分は、通常出力光LNの場合と比して、その波長が約6[nm]短波長側にシフトすることになる。因みに、他の実験において通常出力光LNの波長が異なる他の半導体レーザを用いた場合であっても、同様の結果が得られた。
【0126】
また光測定装置11において、半導体レーザ3としてソニー株式会社製SLD3233を使用して特異出力光LEを測定したところ、図22に示すような光強度特性UT20が得られた。
【0127】
このとき、特異出力光LEにおけるピーク部分(以下これを特異ピークEPKと呼び、このとき出力される光ビームを特異ピーク光LEPと呼ぶ)の光強度は、パワーメータ14により測定したところ、約12[W]であった。この約12[W]という光強度は、振動出力光LBにおける最大の光強度(約1[W]〜2[W])と比して極めて大きい値といえる。因みに図22では、光サンプルオシロスコープ16の解像度が低いために、この光強度は表れていない。
【0128】
さらにストリークカメラ(図示せず)による分析の結果、特異出力光LEの光強度特性UTは、特異ピークEPKにおけるピーク幅が10[ps]程度であり、振動出力光LBにおけるピーク幅(約30[ps])と比較して小さくなることも確認された。因みに図22では、光サンプルオシロスコープ16の解像度が低いために、このピーク幅は表れていない。
【0129】
一方、特異出力光LEの光強度特性UTにおけるスロープ部分(以下、これを特異スロープESLと呼び、このとき出力される光ビームを特異スロープ光LESと呼ぶ)は、その波長が通常モードにおけるレーザ光LLの波長と同一であり、最大の光強度は約1[W]〜2[W]程度であった。
【0130】
このように短パルス光源装置1は、半導体レーザ3に対し振動電圧VBよりもさらに高い特異電圧VEでなるレーザ駆動信号SDを供給することにより、特異出力光LEとして特異ピーク光LEP及び特異スロープ光LESを順次出射することができる。
【0131】
<2.第1の実施の形態>
[2−1.光ディスク用原盤製造装置]
第1の実施の形態では、光ディスクを製造する際に用いられる原盤を製造する製造装置について説明する。この製造装置は、後述するように露光部26を有している。また当該露光部26は、上述した短パルス光源装置1と同様に構成された短パルス光源部10が組み込まれている(詳しくは後述する)。
【0132】
図23に示すように、光ディスク用原盤製造装置20は制御部21、操作部22、表示部23、ウェーハローダ24、スパッタリング部25、露光部26、現像部27及び洗浄脱水部28より構成されている。
【0133】
光ディスク用原盤製造装置20は全体として制御部21が統括制御している。制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、各種プログラム等が格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)とによって構成されている。
【0134】
光ディスク用原盤製造装置20は操作部22を介して、例えば製造する原盤の種類を選択するなどのユーザによる操作を受け付ける。
【0135】
表示部23は、製造過程の各種情報等を表示する。
【0136】
原盤を製造する際ウェーハローダ24は、後述するスパッタリング部25によりレジスト層が成膜される基板を、製造装置へ引き込む。当該基板は、図示しないウェーハハンドラによりウェーハローダ24からスパッタリング部25へ運ばれる。
【0137】
スパッタリング部25は、スパッタリング法により基板上にレジスト層を成膜し、レジスト基板を作製する。当該レジスト基板は、図示しないウェーハハンドラにより露光部26へ運ばれる。
【0138】
露光部26は、レジスト基板に対してレーザ光を照射して露光する。当該露光されたレジスト基板は、図示しないウェーハハンドラにより現像部27へ運ばれる。
【0139】
現像部27は、露光されたレジスト基板を現像し原盤を作製する。当該原盤は、図示しないウェーハハンドラにより洗浄脱水部28へ運ばれ、洗浄される。
【0140】
[2−2.光ディスク用原盤製造手順]
まず、光ディスク用原盤製造装置20により光ディスク用原盤製造処理を行う際の光ディスク用原盤製造処理手順について、図24のフローチャートを用いて説明する。
【0141】
光ディスク用原盤製造装置20の制御部21は、光ディスク用原盤製造処理手順RT1(図24)を開始すると、ステップSP1へ移る。
【0142】
ステップSP1において制御部21は、スパッタリング部25においてスパッタリング法により、図26(A)に示す円板状の基板100の上に所定の無機系のレジスト材料からなるレジスト層102を均一に成膜し、次のステップSP2へ移る。レジスト層102に適用される材料及びレジスト層形成工程の詳細については後述する。
【0143】
因みに、図26(B)に示すように、レジスト層102の露光感度の改善のために基板100とレジスト層102との間に所定の中間層101を形成してもよい。以下、図26(B)に示すようなレジスト層102が成膜された基板100をレジスト基板103とも呼ぶ。
【0144】
ステップSP2において制御部21は、上述した短パルス光源部10が組み込まれた露光部26を利用して、図26(C)に示すようにレジスト層102に所望の凹凸パターンと対応した選択的な露光を施し感光させ、次のステップSP3へ移る。レジスト層露光工程の詳細については後述する。
【0145】
ステップSP3において制御部21は、現像部27においてレジスト層102を現像することにより、所望の凹凸パターンが形成された図26(D)に示す円盤状の原盤104を得て、次のステップSP4へ移る。レジスト層現像工程の詳細については後述する。
【0146】
ステップSP4において制御部21は、電鋳法によって原盤104の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図26(E))、次のステップSP5へ移る。
【0147】
ステップSP5において制御部21は、ステップSP4において得られた、原盤104に析出させた金属ニッケル膜を原盤104から剥離させる。その後制御部21は剥離させた金属ニッケル膜に所定の加工を施し、原盤104の凹凸パターンが転写された図26(F)に示す成型用スタンパ105を得て、次のステップSP6へ移り光ディスク用原盤製造処理手順RT1(図24)を終了する。
【0148】
因みにその後制御部21は、射出成型法によって、熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる図27(G)に示す樹脂製ディスク基板106を、成型用スタンパ105から成形する。
【0149】
さらに制御部21は成型用スタンパ105を剥離し(図27(H))、得られた樹脂製ディスク基板106の凹凸面にAl合金等の反射膜107(図27(I))と膜厚0.1[mm]程度の保護膜108とを成膜することにより、
図27(J)に示す光ディスク109を得る。
【0150】
次に、レジスト材料、レジスト層形成工程、露光工程及び現像工程について詳細に説明する。
【0151】
[2−2−1.レジスト材料]
まず、レジスト層102に用いられるレジスト材料について説明する。
【0152】
上記レジスト層102に適用されるレジスト材料は、遷移金属の不完全酸化物である。ここで、遷移金属の不完全酸化物とは、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物である。すなわち、遷移金属の不完全酸化物における酸素の含有量が、当該遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
【0153】
例えば、遷移金属の酸化物として化学式MoOについて説明する。化学式MoOの酸化状態を組成割合MoOに換算すると、x=0.75の場合が完全酸化物であるのに対して、0<x<0.75で表される場合に化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。
【0154】
また、遷移金属では1つの元素が価数の異なる酸化物を形成可能なものがあるが、この場合には、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より実際の酸素含有量が不足している場合を本発明の範囲内とする。
【0155】
例えばMoは、先に述べた3価の酸化物(MoO)が最も安定であるが、その他に1価の酸化物(MoO)も存在する。この場合には組成割合MoOに換算すると、0<x<0.5の範囲内であるとき化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。因みに遷移金属酸化物の価数は、市販の分析装置で分析可能である。
【0156】
このような遷移金属の不完全酸化物は、紫外線又は可視光に対して吸収を示し、紫外線又は可視光を照射されることでその化学的性質が変化する。これにより、無機レジストでありながら現像工程において露光される部分と露光されない部分とでエッチング速度に差が生じる、いわゆる選択比が得られる。
【0157】
また、遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト材料は、膜材料の微粒子サイズが小さいために露光される部分と露光されない部分との境界部の凹凸パターンが明瞭なものとなり、分解能を高めることができる。
【0158】
ところで、遷移金属の不完全酸化物は、酸化の度合いによってそのレジスト材料としての特性が変化するため、適宜最適な酸化の度合いを選択する。
【0159】
例えば、遷移金属の完全酸化物の化学量論組成より大幅に酸素含有量が少ない不完全酸化物では、露光工程で大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりするなどの不都合を伴う。このため、遷移金属の完全酸化物の化学量論組成より僅かに酸素含有量が少ない不完全酸化物であることが好ましい。
【0160】
レジスト材料を構成する具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。この中でも、Mo、W、Cr、Fe、Nbを用いることが好ましく、紫外線又は可視光により大きな化学的変化を得られるといった見地から特にMo、Wを用いることが好ましい。
【0161】
因みに、遷移金属の不完全酸化物としては、1種の遷移金属の不完全酸化物の他に、第2の遷移金属を添加したもの、さらに複数種類の遷移金属を添加したもの、遷移金属以外の他の元素が添加されたもの等のいずれも、本発明の範囲に含まれ、特に複数種の金属元素を含むものが好ましい。
【0162】
ここで、1種の遷移金属の不完全酸化物の他に、第2の遷移金属を添加したもの、さらに3種以上の遷移金属を添加したものの場合、結晶構造のある1種の遷移金属原子の一部が他の遷移金属原子で置換されたものと考えられる。この場合、当該複数種類の遷移金属がとりうる化学量論組成に対して酸素含有量が不足しているか否かで不完全酸化物かどうかを判断することとする。
【0163】
また、遷移金属以外の他の元素としては、Al、C、B、Si、Ge等のうち少なくとも1種を使用可能である。2種以上の遷移金属を組み合せて用いることで、あるいは遷移金属以外の他の元素を添加することにより、遷移金属の不完全酸化物の結晶粒が小さくなる。これにより、露光される部分と露光されない部分との境界部がさらに明瞭となり、分解能の大幅な向上が図られる。また、露光感度を改善することができる。
【0164】
因みに、上記レジスト材料は、所定の遷移金属を含んだターゲットを用いたAr+O雰囲気中のスパッタリング法によって作製すればよい。例えば、チャンバー内への導入ガスの全流量に対してOを5[%]〜20[%]とし、ガス圧は通常のスパッタリングのガス圧(1[Pa]〜10[Pa])とする。
【0165】
[2−2−2.レジスト層形成工程]
次に、基板100上にレジスト層102を成膜し、レジスト基盤103を得る工程について説明する。
【0166】
具体的な成膜方法としては、例えば遷移金属の単体からなるスパッタターゲットとして表面が充分に平滑とされた基板100を用いて、アルゴン及び酸素雰囲気中でスパッタリング法により成膜を行う方法が挙げられる。この場合には、真空雰囲気中の酸素ガス濃度を変えることにより、遷移金属の不完全酸化物の酸化度合いを制御できる。
【0167】
2種類以上の遷移金属を含む遷移金属の不完全酸化物をスパッタリング法により成膜する場合には、異なる種類のスパッタターゲット上で基板100を常に回転させることにより複数種類の遷移金属を混合させる。混合割合は、それぞれのスパッタ投入パワーを変えることにより制御する。
【0168】
また、先に述べた金属ターゲットを用いた酸素雰囲気中のスパッタリング法の他、予め所望量の酸素を含有する遷移金属の不完全酸化物からなるターゲットを用いて通常のアルゴン雰囲気中でスパッタリングを行うことによっても、遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト層102を同様に成膜できる。
【0169】
さらに、スパッタリング法の他、蒸着法によっても遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト層102を容易に成膜可能である。
【0170】
基板100としては、ガラス、ポリカーボネート等のプラスチック、シリコン、アルミナチタンカーバイド、ニッケル等を用いることができる。レジスト層102の膜厚は任意に設定可能であるが、例えば10[nm]〜80[nm]の範囲内とすることができる。
【0171】
以上により、基板100にレジスト層102が成膜されたレジスト基板103が得られる。
【0172】
[2−2−3.レジスト層露光工程]
次に、レジスト層形成工程により得られたレジスト基板103に対してレーザ光を照射して露光し、レジスト層102の科学的性質を変化させる工程について説明する。
【0173】
図25に示すように露光部26は、全体として露光制御部30が統括制御している。露光制御部30は、図示しないCPUと、各種プログラム等が格納されるROMと、当該CPUのワークエリア等として用いられるRAMとによって構成されている。
【0174】
露光制御部30は、回転駆動部31を介してスピンドルモータ32を回転駆動させることにより、ターンテーブル33に載置されたレジスト基板103を所望の速度で回転させるようになされている。
【0175】
また露光制御部30は、送り機構駆動部34を介して送り機構35を駆動させることにより、ターンテーブル33をレジスト基板103の半径方向へ移動させるようになされている。
【0176】
また露光制御部30は、フォーカス駆動部37を介してアクチュエータ42を駆動させることにより、対物レンズ40を光軸方向に移動させるようになされている。
【0177】
ここで、露光部26は上述した短パルス光源装置1と同様に構成された短パルス光源部10が組み込まれている。当該短パルス光源部10は、露光制御部30からレーザ制御部2の駆動回路6へ供給されるレーザ制御信号S4を所定の増幅率で増幅して、レーザ駆動信号SDを生成し、これを半導体レーザ3へ供給する。
【0178】
露光制御部30は露光を開始する前に、レジスト層102が露光されない程度となる、図29に示す照射閾値Pth未満のレーザ光LL(詳しくは後述する)を、レーザ制御部2へレーザ制御信号S4を供給することにより照射する。
【0179】
半導体レーザ3はレーザ制御部2より供給されたレーザ駆動信号SDに基づいて発散光でなる所定光量の光ビームを出射し、コリメータレンズ38へ入射させる。コリメータレンズ38は光ビームを発散光から平行光に変換し、ビームスプリッタ39へ入射させる。
【0180】
ビームスプリッタ39は、上記コリメータレンズ38から入射された光ビームを透過するとともに、当該光ビームがレジスト層102により反射されてなる反射光ビームを反射させることにより、レジスト層102への往路側の光ビームの光路と、復路側の光ビームの光路とを分離する。
【0181】
対物レンズ40は、上記ビームスプリッタ39から入射された光ビームを集光し、レジスト層102へ照射する。また、対物レンズ40はレジスト層102からの反射光ビームを発散光から平行光に変換し、ビームスプリッタ39へ入射させる。
【0182】
集光レンズ41は、ビームスプリッタ39にて反射された、レジスト層102からの反射光ビームを収束させ、フォトディテクタ36へ照射する。
【0183】
露光制御部30は、当該反射光ビームをフォトディテクタ36を介して検出し、反射光量信号及びフォーカスエラー信号等よりなる検出信号S0を得る。
【0184】
また露光制御部30は、検出信号S0及び所望の記録信号を表すデータ信号S1を用いて所定の演算処理を行う。露光制御部30は当該演算処理に基づき、回転駆動信号S2、送り機構駆動信号S3、レーザ制御信号S4及びフォーカス駆動信号S5を生成し、これらをそれぞれ、回転駆動部31、送り機構駆動部34、レーザ制御部2及びフォーカス駆動部37へ供給する。
【0185】
続いて露光制御部30は、検出信号S0及びデータ信号S1に基づいて生成したフォーカス駆動信号S5を供給することによりアクチュエータ42を駆動し、対物レンズ40を光軸方向の適切な位置にフォーカシングさせる。
【0186】
上述したように照射閾値Pth未満のレーザ光LLを用いてフォーカシングをかけた後、送り機構駆動部34は、露光制御部30から供給された送り機構駆動信号S3に基づいて送り機構35を駆動し、ターンテーブル33をレジスト基板103の半径方向へ移動させる。これにより送り機構駆動部34は、レジスト基板103の半径方向に関する所望の露光位置を、レーザ光LLの照射位置に合わせることができる。
【0187】
そして露光制御部30は、データ信号S1及び予めROMに格納されたライトストラテジに基づいて、レーザ制御部2へレーザ制御信号S4を供給することにより、半導体レーザ3から照射閾値Pth以上のレーザ光となる特異出力光LEを出射させる。それと同時に露光制御部30は、ターンテーブル33を回転させレジスト層102に対して露光を行う。
【0188】
ここで露光制御部30は、例えば図28(A)に示す情報データの信号を記録させる場合、上述したライトストラテジに基づいて、図28(B)に示す信号を生成する。すなわち露光制御部30は、ハイレベルとローレベルの矩形状のパルス信号を、上記記録する信号がハイレベルの期間一定周期繰り返し、また上記記録する信号がローレベルの期間はレーザ光の出力を停止するような、レーザ制御信号S4をレーザ制御部2へ供給する。
【0189】
これに応じてレーザ制御部2は、レーザ制御信号S4を所定の増幅率で増幅して図28(C)に示すレーザ駆動信号SDを生成し、これを半導体レーザ3へ供給することにより、半導体レーザ3から特異出力光LEを出射させる。
【0190】
また回転駆動部31は、露光制御部30から供給された回転駆動信号S2に基づいてスピンドルモータ32を駆動し、ターンテーブル33を適切な回転速度で回転させる。これにより回転駆動部31は、レジスト基板103の回転方向に関する所望の露光位置をレーザ光LLの照射位置に合わせることができる。
【0191】
露光制御部30は、ターンテーブル33を回転させながら、レジスト基板103の半径方向にターンテーブル33を連続的に僅かな距離ずつ移動させることによって、微細凹凸の潜像を得る。
【0192】
このように、露光制御部30が送り機構駆動部34及び回転駆動部31を介して送り機構35及びターンテーブル33を制御し、ターンテーブル33に載置したレジスト基板103の半径方向及び回転方向の露光位置を精度よく変化させる。これにより、露光制御部30はレジスト基板103の所望の位置にレーザ光LLの焦点を合わせるよう照射位置を制御する。
【0193】
また露光制御部30は、フォーカス駆動部37を介してアクチュエータ42を制御し対物レンズ40のフォーカシングを行う。
【0194】
さらに露光制御部30は、データ信号S1及びライトストラテジに基づいたレーザ駆動信号S4をレーザ制御部2へ供給し、半導体レーザ3の照射を制御しながら特異出力光LEを出力させ、露光を行う。
【0195】
ここで、光ディスク用原盤製造装置20で製造される光ディスク用原盤104が記録用ディスク用の原盤である場合、露光制御部30はターンテーブル33を一定の線速度となるよう回転させる。それとともに露光制御部30は、特異出力光LEをレジスト層102へ照射し、レジスト基板103の半径方向にターンテーブル33を所望の距離だけ往復移動させながら、半径方向の一方向に連続的に僅かな距離ずつ移動させる。これにより露光制御部30は、現像することで半径方向に蛇行する螺旋状の案内溝となる、凹凸の潜像を形成するようレジスト層102を露光する。
【0196】
また、光ディスク用原盤製造装置20で製造される光ディスク用原盤104が再生用ディスク用の原盤である場合、露光制御部30はターンテーブル33を一定の線速度となるよう回転させる。それとともに露光制御部30は、特異出力光LEのレジスト層102への照射、非照射を情報データに合わせて繰り返し、レジスト基板103の半径方向の一方向にターンテーブル33を連続的に僅かな距離ずつ移動させる。これにより露光制御部30は、現像することで螺旋状の凹凸ピットとなる、情報データを表す凹凸の潜像を形成するようレジスト層102を露光する。
【0197】
以上により露光部26は、レジスト層102に所望の形状を生成し露光する。
【0198】
[2−2−4.レジスト層現像工程]
次に、レジスト層露光工程によりパターンが露光されたレジスト基板103を現像することにより、原盤104を得る工程について説明する。
【0199】
現像処理としては、酸又はアルカリ等の液体によるウェットプロセスによって選択比を得ることが可能であり、使用目的、用途、装置設備等によって適宜使い分けることが可能である。
【0200】
ウェットプロセスに用いられるアルカリ現像液としては水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、KOH、NaOH、NaCO等の無機アルカリ水溶液等を用いることができ、酸現像液としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等を用いることができる。
【0201】
また、ウェットプロセスの他、プラズマ又は反応性イオンエッチングRIE(Reactive Ion Etching)と呼ばれるドライプロセスによっても、ガス種及び複数のガスの混合比を調整することにより現像が可能である。
【0202】
ここで、露光感度の調整方法について説明する。例えば化学式WOで表される遷移金属の酸化物を組成割合Wに換算した場合、xは0.1<x<0.75の範囲内で良好な露光感度が得られる。
【0203】
このとき、x=0.1は、露光工程における大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりするなどの不都合が発生する臨界値である。また、xを0.4<x<0.7程度とすることで最も高い露光感度が得られる。
【0204】
また、化学式MoOで表される遷移金属の酸化物を組成割合MoOに換算した場合、xは0.1<x<0.75の範囲内で良好な露光感度が得られる。このとき、x=0.1は、露光工程における大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりするなどの不都合が発生する臨界値である。また、xを0.4<x<0.7程度とすることで最も高い露光感度が得られる。
【0205】
また、化学式MoOで表される遷移金属の酸化物を組成割合MoOに換算した場合、xは0.1<x<0.5の範囲内で良好な露光感度が得られる。このとき、x=0.1は、露光工程における大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりするなどの不都合が発生する臨界値である。
【0206】
レジスト材料の露光感度が高い程、露光時の照射パワーを低減できる他、パルス幅又は線速度に対応する露光時間を短くできるなどの利点を有する。しかし逆に感度が高すぎるとフォーカス設定時に不要な露光を生じる、又はプロセス室照明環境により悪影響を受けるといった不都合が生じるため、用途によって最適な露光感度を適宜選択する。
【0207】
本発明のレジスト材料の露光感度の調整には、酸素含有量を増減することの他に、遷移金属の不完全酸化物に第2の遷移金属を添加することが有効である。例えば、WにMoを添加することにより、露光感度を約30%程度改善することができる。
【0208】
また、露光感度の調整は、レジスト材料の組成を変化させる他に、基板材料を選択することや、基板に露光前処理を施すことによっても可能である。実際上、石英、シリコン、ガラス、及びプラスチック(ポリカーボネート)を基板100として用いた場合の、基板種類の違いによる露光感度の違いを調べたところ、基板の種類により露光感度が異なり、具体的にはシリコン、石英、ガラス、プラスチックの順に感度が高いことが確認された。この順序は、熱伝導率の順に対応しており、熱伝導率が小さい基板ほど露光感度が良好となる結果であった。これは、熱伝導率が小さい基板ほど、露光時の温度上昇が著しいため、温度上昇に伴ってレジスト材料の化学的性質が大きく変化するためと考えられる。
【0209】
露光前処理としては、基板とレジスト材料との間に中間層101、201を形成する処理、熱処理、紫外線照射する処理等がある。特に、単結晶シリコンからなるシリコンウエハのように熱伝導率が大きい基板を用いる場合には、中間層として熱伝導率の比較的低い層を基板上に形成することによって、露光感度を適切に改善することができる。これは、中間層によって露光時のレジスト材料への熱の蓄積が改善されるためである。
【0210】
因みに、上記中間層を構成する熱伝導率の低いものとして、アモルファスシリコン、二酸化ケイ素(SiO)窒化シリコン(SiN)、アルミナ(Al)等が適している。また、その中間層はスパッタリング法やその他の蒸着法によって形成すればよい。
【0211】
また、石英基板上に厚さ5[μm]の紫外線硬化樹脂をスピンコートした後紫外線の照射により液状樹脂を硬化させた基板100では、その露光感度が未処理の石英基板に比べて改善していることが確認された。これも、紫外線硬化樹脂の熱伝導率がプラスチック程度に低いことから説明可能と考えられる。
【0212】
また、熱処理、紫外線照射等の露光前処理によっても露光感度の改善が可能である。これらの露光前処理を施すことによって、不完全ではあるもののある程度本発明のレジスト材料の化学的性質が変化するためと考えられる。
【0213】
以上により、露光されたパターンに応じたピット又は案内溝の微細凹凸が形成されてなる光ディスク用原盤104が得られる。
【0214】
[2−3.動作及び効果]
以上の構成において、光ディスク用原盤製造装置20の制御部21は、基板100の上に、スパッタリング法により遷移金属の不完全酸化物からなる無機系のレジスト材料を用いてレジスト層102を均一に成膜し、レジスト基板103を得る。
【0215】
その後光ディスク用原盤製造装置20の露光部26の露光制御部30は、レジスト層102が露光されない程度のレーザ光LLをレジスト層102へ照射し、所望の位置にターンテーブル33を移動させる。
【0216】
ここで、従来の有機レジストからなるレジスト層102に対する露光工程では、露光に用いる光源自身でレジスト層にフォーカシングをすることは行われなかった。これは、有機レジストの露光に対する化学的性質の変化が連続的であるため、フォーカシングに必要な程度の微弱光であっても、その光の照射によって有機材料からなるレジスト層に不要な露光が行われるためである。
【0217】
このため、有機レジストが感度を有しない波長の光源、例えば波長633[nm]の赤色の光源を別途用意し、その光でフォーカシングを行っていた。このように、従来の有機レジスト用の露光部は、2つの異なる波長の光源を用いるために、波長分離が可能な光学系を設けざるを得なく光学系が非常に複雑となることや、そのコストが増加するなどの欠点を有する。
【0218】
さらに、従来の有機レジスト用の露光部では、対物レンズ40の高さ位置制御に用いられるフォーカスエラー信号の分解能が、検出に用いる光源(例えば波長633[nm])の波長に比例する。このため露光部は、露光に用いる光源により得られるようなフォーカシングエラー信号の分解能が得られず、精度が高く安定したフォーカシングを行えないといった問題を有する。
【0219】
これに対して、遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジストである本発明のレジスト材料は、図29に示すように、露光に対する化学的性質の変化が極めて急峻である。すなわち、露光が開始される照射閾値Pth未満の光強度に対しては、繰り返しの照射に対しても不要な露光が行われないため、照射閾値Pth未満の光強度によって露光光源自身でフォーカシングをかけることが可能となる。
【0220】
これにより、本発明の光ディスク用原盤製造装置では、従来の有機レジスト用の露光部で用いられていたような波長分離を行う光学系が不要となり、露光部の低コスト化を達成するとともに、露光波長に相当する高精度なフォーカシングを実現して正確な微細加工を達成できる。
【0221】
また、無機レジストである本発明のレジスト材料では、照射閾値Pth未満の微弱光では露光されないため、通常の有機レジストを用いるプロセスで必要とされる、室内照明の紫外光のカットも不要となる。
【0222】
上述したようにターンテーブル33を移動させた後、光ディスク用原盤製造装置20の露光部26の露光制御部30は、半導体レーザ3から特異出力光LEを出射させ、レジスト層102に対して露光を行う。
【0223】
これにより、レジスト層102にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑えることができ、従来の熱リソグラフィと比して、露光される部分と露光されない部分の境界部のパターンがより明瞭なものとなり、微細なパターニングを安定して行うことが可能となる。
【0224】
これは、一般に熱ストラテジにおいて、レジスト層102にレーザを照射し発生させる熱によりレジスト材料の科学的性質を変化させるためには、ある程度エネルギーを要する。ここで、図30(A)に示すような従来の熱リソグラフィの光強度では、図30(B)に示す本発明の熱リソグラフィと比べて、上述した必要なエネルギーに達するまでに、より多くの時間が必要となる。このため当該時間を経ている間に熱が拡散してしまい、所望の位置以外の当該位置周辺部の科学的性質までもが変化し、微細加工が困難となるためと推測される。
【0225】
また、露光部26の露光制御部30は、半導体レーザ3から特異出力光LEを出射させる際、データ信号S1及びライトストラテジに基づいて図28(B)に示すレーザ駆動信号S4をレーザ制御部2へ供給する。そしてレーザ制御部2は、供給されたレーザ駆動信号S4を所定の増幅率で増幅してレーザ駆動信号SDを生成し、これを半導体レーザ3へ供給する。
【0226】
ここで従来の熱リソグラフィでは、レジスト層102にパターンを描画する際、徐々に熱がたまっていくため、記録する信号に合わせて単純にレーザ光の照射、非照射を切り替えるだけでは、レーザ光移動方向の先(図28における右方向)に向かうほど、記録されるマークが涙型に歪んでしまう。
【0227】
そのため適切なパターニングができず、例えば図28(A)に示す信号を記録するためには、図28(D)に示すような、いわゆる冷却区間を有するレーザ駆動信号を生成するための複雑なレーザ光の制御を必要とした。
【0228】
これに対して特異出力光LEをレジスト層102に照射する場合、レーザ光をパルス出力するため照射時間が非常に短く、余分な熱のたまりを大幅に抑えることができる。
【0229】
このため露光制御部30は、図28(C)に示したように、記録する信号がハイレベルの期間一定周期のパルス出力を繰り返すようなレーザ駆動信号を生成するのみといった、極めて簡易なレーザ光の制御により、所望の信号を記録することができる。
【0230】
また、露光に用いる光源として特異出力光LEを用いたが、特異出力光LEは、特異ピーク光LEPだけでなく特異スロープ光LESをも含む。ここで図22に示すように、特異スロープ光LESの光強度は特異ピーク光LEPよりも低く、レジスト層102が露光しない程度の光強度に抑えられている。よって特異ピーク光LEPがレジスト層102を露光するに際し、特異スロープ光LESまでもがレジスト層102を露光するなどの影響を与えることはないと考えられる。
【0231】
レジスト層102への露光完了後、光ディスク用原盤製造装置20の露光部26の露光制御部30は、レジスト層102を現像することにより、所定の凹凸パターンが形成された原盤104を得る。
【0232】
その後光ディスク用原盤製造装置20の制御部21は、図示しない電鋳部により電鋳法を用いて原盤104の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させる。
【0233】
さらに光ディスク用原盤製造装置20の制御部21は、図示しない剥離部により原盤104に析出させた金属ニッケル膜を原盤104から剥離させた後に所定の加工を施し、原盤104の凹凸パターンが転写された成型用スタンパ105を得る。
【0234】
以上の構成によれば、光ディスク用原盤製造装置20は遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト材料を基板100上に成膜してレジスト層102を形成し、レジスト基板103を得る。その後光ディスク用原盤製造装置20は、レジスト層102に特異出力光LEを照射し、所望の凹凸パターンと対応した選択的な露光を施し感光させる。その後光ディスク用原盤製造装置20は、当該パターンが露光されたレジスト基板103を現像し光ディスク用原盤を得る。これにより露光部26は、レジスト層102にレーザ光が照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。かくして光ディスク用原盤製造装置20は極めて微細な加工を簡易な制御により行うことができる。
【0235】
<3.第2の実施の形態>
[3−1.ハードディスクのプラッタ用原盤製造装置]
第2の実施の形態では、ハードディスクのプラッタを製造する際に用いられる原盤を製造する製造装置について説明する。このハードディスクのプラッタは、一般的な平面状のプラッタと異なり、記録に不要な部分の磁性材料を溝加工して除去した後に当該溝を非磁性材料で充填することにより、記録トラック間を分離してトラック間の干渉を低減し得るようになされている。
【0236】
図23に示すように、プラッタ用原盤製造装置50は第1の実施の形態における光ディスク用原盤製造装置20と同様に構成されている。
【0237】
[3−2.プラッタ用原盤の製造手順]
図24に示したフローチャートのように、プラッタ用原盤製造装置50によりプラッタ用原盤製造処理を行う際のプラッタ用原盤製造処理手順は、光ディスク用原盤製造処理手順と同様の手順となっている。また、レジスト材料、レジスト層形成工程及びレジスト層現像工程については、第1の実施の形態における光ディスク用原盤製造装置20と同様となっている。
【0238】
因みにその後制御部51は、ナノインプリントリソグラフィ法によりディスク基板上の樹脂レジストにパターンを転写し、転写された樹脂パターンをマスク材として、ドライエッチング手法でディスク基板表面に溝を加工形成する。
【0239】
さらに制御部51は磁気ヘッドの浮上安定性を確保するために、一旦形成した溝に再び非磁性材料を埋め込み平坦化した後、保護膜、潤滑膜を形成することによりプラッタを得るようになされている。
【0240】
図25に示すように露光部56は、露光制御部60、レジスト基板203が光ディスク用原盤製造装置20の露光部26と異なっているものの、それ以外はほぼ同様に構成されている。
【0241】
またレジスト層露光工程は、第1の実施の形態における光ディスク用原盤製造装置20の露光工程とほぼ同様となっている。
【0242】
ここで、プラッタ用原盤製造装置50で製造される原盤204が、本実施の形態のようなハードディスク等の同心円状のトラックが用いられるディスクを作製する際に用いられるディスク原盤である場合は、以下のように露光を行う。
【0243】
まず露光制御部60は、ターンテーブル33を一定の線速度となるよう回転させる。それとともに露光制御部60は、特異出力光LEをレジスト層202へトラック一周分照射する。そして露光制御部60は特異出力光LEを非照射とし、次のトラックの位置へ、レジスト基板203の半径方向の一方向にターンテーブル33をステップ的に移動させる。その後露光制御部60は再び特異出力光LEをレジスト層202へトラック一周分照射する。上記制御を繰り返すことにより露光制御部60は、現像することで同心円状の溝となる、凹凸の潜像を形成するようレジスト層202を露光する。
【0244】
[3−3.動作及び効果]
以上の構成において、プラッタ用原盤製造装置50の制御部51は、基板200の上に、スパッタリング法により遷移金属の不完全酸化物からなる無機系のレジスト材料を用いてレジスト層202を均一に成膜し、レジスト基板203を得る。
【0245】
その後露光部56の露光制御部60は、レジスト層202が露光されない程度のレーザ光LLをレジスト層202へ照射し、所望の位置にターンテーブル33を移動させる。
【0246】
ターンテーブル33の移動後、露光部56の露光制御部60は、半導体レーザ3から特異出力光LEを出射させ、レジスト層202に対して露光を行う。
【0247】
ここで、従来ハードディスクのプラッタ用原盤製造に用いられる電子線リソグラフィが露光に多くの時間を要することを解決するために、従来のような熱リソグラフィを用いる手法も考えられる。しかしその場合、露光に要する時間は大幅に短縮するが、電子線リソグラフィを用いたパターニングよりも微細に加工できない可能性がある。
【0248】
これに対して本実施の形態の場合、不完全酸化物からなる無機レジスト材料を基板200上に成膜してレジスト層202を形成し、当該レジスト層202に、パターニング速度の速い可視光である特異出力光LEを照射し露光している。
【0249】
これにより本実施の形態のプラッタ用原盤製造装置50は、従来の電子線リソグラフィを用いた手法と同等に微細なパターニングができ、かつ露光に要する時間を大幅に短縮することができる。そのため本実施の形態は、いわゆるディスクリートトラックメディアの原盤の製造にも適用することができる。
【0250】
レジスト層202への露光完了後、プラッタ用原盤製造装置50の露光部56の露光制御部60は、レジスト層202を現像することにより、所定の凹凸パターンが形成された原盤204を得る。
【0251】
その後プラッタ用原盤製造装置50の制御部51は、図示しない電鋳部により電鋳法を用いて原盤204の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させる。
【0252】
さらにプラッタ用原盤製造装置50の制御部51は、図示しない剥離部により原盤204に析出させた金属ニッケル膜を原盤204から剥離させた後に所定の加工を施し、原盤204の凹凸パターンが転写された成型用スタンパ205を得る。
【0253】
その他、プラッタ用原盤製造装置50は、第1の実施の形態における光ディスク用原盤製造装置20とほぼ同様の作用効果を奏し得る。
【0254】
以上の構成によれば、プラッタ用原盤製造装置50は、遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト材料を基板200上に成膜してレジスト層202を形成し、レジスト基板203を得る。その後プラッタ用原盤製造装置50は、レジスト層202に特異出力光LEを照射し、所望の凹凸パターンと対応した選択的な露光を施し感光させる。その後プラッタ用原盤製造装置50は、当該パターンが露光されたレジスト基板203を現像しプラッタ用原盤を得る。これにより露光部56は、レジスト層202にレーザ光を照射し発生させる熱の拡散を抑え、微細なパターンの露光ができる。かくしてプラッタ用原盤製造装置50は、極めて微細な加工を簡易な制御により行うことができる。
【0255】
<4.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、本発明を光ディスク用原盤製造装置20、ハードディスクのプラッタ用原盤製造装置50に適用した場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、Flashメモリ、CPU、ASIC(Application Specific IC)等の半導体デバイス、磁気ヘッド等の磁気デバイス、液晶、EL(Electro Luminescence)、PDP(Plasma Display Panel)等の表示デバイス、光記録媒体、光変調素子等の光デバイス、パターンドメディア等の種々のデバイスの作製に適用しても良い。この場合、リソグラフィ技術を用いるものであれば良い。
【0256】
また上述した実施の形態においては、レジスト層102又は202を露光するに際し、レジストが露光されない程度の微弱光で所望の位置にターンテーブル33を移動させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば1発の特異出力光LEを照射して、その反射光に基づいて制御しても良い。ここで、1発の特異出力光LEのみでは、レジスト層102又は202に科学的性質の変化を生じさせるほどのエネルギーがなく、レーザ光を照射した位置のレジスト層102又は202の科学的性質が、その後の現像等の工程において問題になるほど変化してしまうことはないと考えられる。これにより、微弱な光を当てるという駆動の制御を行わなくてよく、常に特異出力光LEを出力させればよいため、レーザ光の制御を簡易にできる。
【0257】
さらに上述した実施の形態においては、対物レンズ40等の光学系の位置を固定し、ターンテーブル33を送り機構35により半径方向に移動させることにより、レジスト基板103又は203へのレーザ光照射位置を変化させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えばターンテーブル33を固定して光学系を半径方向に移動させても良い。
【0258】
さらに上述した実施の形態においては、露光部26又は56に組み込まれた短パルス光源部10は、露光制御部30又は60からレーザ制御部2の駆動回路6へ供給されるレーザ制御信号S4を、所定の増幅率で増幅してレーザ駆動信号SDを生成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば露光制御部30又は60から、レーザ制御部2のパルス信号発生器4へレーザ制御信号S4としてデータ信号S1及びライトストラテジを供給することにより、レーザ制御部2がレーザ駆動信号SDを生成しても良い。
【0259】
さらに上述した実施の形態においては、円盤状の基板100又は200に基づいて円盤状の原盤104又は204を作製する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば四角形の基板に基づいて四角形の原盤を作製するなど、種々の形状からなる基板に基づき、種々の形状からなる原盤を作製しても良い。
【0260】
さらに上述した実施の形態においては、光ディスク用原盤製造装置20の制御部21又はハードディスクのプラッタ用原盤製造装置50の制御部51が、予めROMに格納されているプログラムに従い、上述した光ディスク用原盤製造処理手順RT1又はハードディスクのプラッタ用原盤製造処理手順RT1を行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、光ディスク用原盤製造装置20の制御部21又はハードディスクのプラッタ用原盤製造装置50の制御部51が、例えば記録媒体からインストールしたアプリケーションプログラムや、インターネットからダウンロードしたプログラム、その他種々のルートによってインストールしたアプリケーションプログラムに従って、上述した光ディスク用原盤製造処理手順又はハードディスクのプラッタ用原盤製造処理手順を行っても良い。
【0261】
さらに上述した実施の形態においては、露光部26の露光制御部30又は露光部56の露光制御部60が、予めROMに格納されているプログラムに従い、上述した露光工程を行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、露光部26の露光制御部30又は露光部56の露光制御部60が、例えば記録媒体からインストールしたアプリケーションプログラムや、インターネットからダウンロードしたプログラム、その他種々のルートによってインストールしたアプリケーションプログラムに従って、上述した露光工程を行っても良い。
【0262】
さらに上述した第1の実施の形態においては、半導体レーザとしての半導体レーザ3と、位置制御部としての露光制御部30、回転駆動部31及び送り機構駆動部34と、照射制御部としての露光制御部30及びレーザ制御部2とによって露光装置としての露光部26を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる半導体レーザと、位置制御部と、照射制御部とによって露光装置を構成しても良い。
【0263】
さらに上述した第2の実施の形態においては、半導体レーザとしての半導体レーザ3と、位置制御部としての露光制御部60、回転駆動部31及び送り機構駆動部34と、照射制御部としての露光制御部60及びレーザ制御部2とによって露光装置としての露光部56を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる半導体レーザと、位置制御部と、照射制御部とによって露光装置を構成しても良い。
【0264】
さらに上述した第1の実施の形態においては、半導体レーザとしての半導体レーザ3と、レジスト層形成部としてのスパッタリング部25と、露光部としての露光部26と、現像部としての現像部27とによって微細加工装置としての光ディスク用原盤製造装置20を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる半導体レーザと、レジスト層形成部と、露光部と、現像部とによって微細加工装置を構成しても良い。
【0265】
さらに上述した第2の実施の形態においては、半導体レーザとしての半導体レーザ3と、レジスト層形成部としてのスパッタリング部55と、露光部としての露光部56と、現像部としての現像部57とによって微細加工装置としてのハードディスクのプラッタ用原盤製造装置50を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる半導体レーザと、レジスト層形成部と、露光部と、現像部とによって微細加工装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0266】
本発明は、微細加工装置等で利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0267】
【図1】短パルス光源装置の構成を示す略線図である。
【図2】パルス信号及びレーザ駆動信号を示す略線図である。
【図3】注入キャリア密度と光子密度との関係(1)の説明に供する略線図である。
【図4】注入キャリア密度とキャリア密度との関係の説明に供する略線図である。
【図5】注入キャリア密度と光子密度との関係(2)の説明に供する略線図である。
【図6】PT1における光子密度の説明に供する略線図である。
【図7】PT2における光子密度の説明に供する略線図である。
【図8】PT3における光子密度の説明に供する略線図である。
【図9】実際の発光波形を示す略線図である。
【図10】駆動信号と光強度との関係を示す略線図である。
【図11】光測定装置の構成を示す略線図である。
【図12】各パルスの形状を示す略線図である。
【図13】パルス信号と駆動パルスとの関係を示す略線図である。
【図14】駆動パルスの電圧を変化させたときの光強度特性を示す略線図である。
【図15】駆動パルスの電圧が8.8[V]のときにおける波長特性及び光強度特性を示す略線図である。
【図16】駆動パルスの電圧が13.2[V]のときにおける波長特性及び光強度特性を示す略線図である。
【図17】駆動パルスの電圧が15.6[V]のときにおける波長特性及び光強度特性を示す略線図である。
【図18】駆動パルスの電圧が17.8[V]のときにおける波長特性及び光強度特性を示す略線図である。
【図19】駆動パルスの電圧が38.4[V]のときにおける波長特性及び光強度特性を示す略線図である。
【図20】BPFの有無による光強度特性の相違を示す略線図である。
【図21】BPFの有無による波長特性の相違を示す略線図である。
【図22】特異出力光の光強度特性を示す略線図である。
【図23】光ディスク用原盤製造装置、ハードディスクのプラッタ用原盤製造装置の構成を示す略線図である。
【図24】光ディスク用原盤、ハードディスクのプラッタ用原盤の製造手順を示すフローチャートである。
【図25】露光部の全体構成を示す略線図である。
【図26】光ディスク用原盤、ハードディスクのプラッタ用原盤の製造工程を示す略線図である。
【図27】光ディスクの製造工程を示す略線図である。
【図28】ライトストラテジを示す略線図である。
【図29】光源の光強度とエッチング速度との関係を示す略線図である。
【図30】従来の熱リソグラフィと本発明の熱リソグラフィでのレジスト層における熱拡散を示す略線図である。
【図31】光スポット内の光強度分布及び熱分布による描画サイズを示す略線図である。
【符号の説明】
【0268】
2……レーザ制御部、3……半導体レーザ、10……短パルス光源部、30、60……露光制御部、37……フォーカス駆動部、31……回転駆動部、34……送り機構駆動部、S0……検出信号、S1……データ信号、S2……回転駆動信号、S3……送り機構駆動信号、S4……レーザ制御信号、S5……フォーカス駆動信号、100、200……基板、101、201……中間層、102、202……レジスト層、103、203……レジスト基板、104、204……原盤、105、205……成型用スタンパ、106……樹脂製ディスク、107……反射膜、108……保護膜、109……光ディスク、LE……特異出力光、LEP……特異ピーク光、LES……特異スロープ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際、パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として出射する半導体レーザと、
遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層の所望の位置に上記レーザ光を照射するよう、上記半導体レーザの焦点を移動させる位置制御部と、
上記レジスト層に所望の形状を生成し露光するよう上記半導体レーザの照射を制御する照射制御部と
を有する露光装置。
【請求項2】
上記位置制御部は、上記所望の形状に対応させて上記半導体レーザの焦点を連続的に螺旋状に移動させる
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
上記照射制御部は、情報データに応じて上記レーザ光を照射する
請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
上記位置制御部は、上記所望の形状に対応させて所望の距離だけ螺旋における半径方向に往復移動させながら、上記半導体レーザの焦点を連続的に螺旋状に移動させる
請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
上記位置制御部は、上記所望の形状に対応させて上記半導体レーザの焦点を同心円状に移動させ、
上記照射制御部は、上記所望の形状に対応させて上記レーザ光を照射する
請求項1に記載の露光装置。
【請求項6】
上記照射制御部は、上記所望の形状に対応させて上記レーザ光を所定周期でなる複数のパルス状に出力させ、又は当該レーザ光の出力を停止させる
請求項1に記載の露光装置。
【請求項7】
上記照射制御部は、情報データに応じて上記レーザ光を所定周期でなる複数のパルス状に出力させ、又は当該レーザ光の出力を停止させる
請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際、パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として半導体レーザより出射する出射ステップと、
遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層の所望の位置に上記レーザ光を照射するよう、上記半導体レーザの焦点を移動させる位置制御ステップと、
上記レジスト層に所望の形状を生成し露光するよう上記半導体レーザの照射を制御する照射制御ステップと
を有する露光方法。
【請求項9】
パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際、パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として出射する半導体レーザと、
遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層を基板上に成膜するレジスト層形成部と、
上記レジスト層に上記レーザ光を照射し所望の凹凸パターンと対応する形状を露光する露光部と、
上記露光部により露光された上記レジスト層を現像し所望の凹凸パターンを形成する現像部と
を有する微細加工装置。
【請求項10】
遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より少ない酸素を含有する、遷移金属の不完全酸化物を含むレジスト材料よりなるレジスト層を基板上に成膜するレジスト層形成ステップと、
上記レジスト層に所望の凹凸パターンと対応する形状を生成するよう、パルス状でなり所定の特異電圧でなる駆動パルスが供給された際、パルス状の光強度特性を有する特異ピーク光をレーザ光として照射し露光する露光ステップと、
上記露光部により露光された上記レジスト層を現像し所望の凹凸パターンを形成する現像ステップと
を有する微細加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2010−122305(P2010−122305A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293549(P2008−293549)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】