説明

露光装置

【課題】基板載置部の摺動部で発生した塵埃がマスクや基板へ付着するのを低減、或いは防止することのできる露光装置を提供する。
【解決手段】基板を載置する載置台5と、載置台5を搭載するステージ1と、ステージ1上で載置台5を移動するための移動機構2,3,4とを有する露光装置において、ステージ1は、内部がリブで格子状の構造を有し、更に、その上面に複数の吸気口と、その側面に複数の排気口とを有する。これにより、移動機構で発生した塵埃を速やかに排気することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の表示パネル基板へのパターン形成に用いる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどの表示パネル用基板へのパターン形成は、形成したいパターンを有するマスクと、フォトレジストが塗布された表示パネル用ガラス基板とのギャップを1mm以下に近づけ、マスク上のパターンをガラス基板へ転写するプロキシミティ方式が用いられる。プロキシミティ方式を有する露光装置については、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−189074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示用パネルの大型化に伴い、また一巡の露光で生産できる液晶パネルの数を多くして生産性を向上するために露光装置は大型化している。そのサイズは10m(長さ)×5m(幅)×8m(高さ)、重さは100トンにも及ぶ。
【0005】
表示パネル用ガラス基板用の載置台が搭載されるステージの設計の際には、軽量化を図りつつ剛性を持たせるために、ステージ内部の構造はリブで格子状に設計する。これにより、輸送や材料費の削減も図ることができる。
【0006】
このような露光装置において、露光の際にガラス基板やマスクへ塵埃が付着する場合があること、また、塵埃の発生源はステージ上に設けられた基板載置部の摺動部であることが分かった。ガラス基板に塵埃が付着すると、当該付着部分が露光光照射部分の場合、塵埃により露光光が遮られパターン欠陥となる。また、マスクに塵埃が付着すると、当該付着部分が露光光透過部分の場合、塵埃により露光光が遮られ、そのマスクを用いて形成したパターンは全て欠陥となる。そのため、露光装置内は常にクリーンな環境に保つ必要がある。
【0007】
特許文献1には、マスク上部に存在する塵埃発生源からの塵埃付着を防止するために、偏向板を設置して気流が当該塵埃発生源へ直接当たるのを防ぐ技術が開示されている。しかしながら、基板載置部の摺動部で発生した塵埃への対応に関しては何ら記載されていない。
【0008】
本願発明の目的は、基板載置部の摺動部で発生した塵埃がマスクや基板へ付着するのを低減、或いは防止することのできる露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一形態として、基板を載置する載置台と、前記載置台を搭載するステージと、前記ステージ上で前記載置台を移動するための移動機構とを有する露光装置において、前記ステージは、内部がリブで格子状の構造を有し、更に、その上面に複数の吸気口と、その側面に複数の排気口とを有することを特徴とする露光装置とする。
【発明の効果】
【0010】
ステージ上面に吸気口を設けることにより、ステージ上面の摺動部などで発生した塵埃の堆積防止及び塵埃を除去することができるため、塵埃がマスクや基板へ付着するのを低減、或いは防止することのできる露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施例に係る露光装置の基板載置台を含むステージの概略斜視図である。
【図2】第1の実施例に係る露光装置のステージの概略斜視図である。
【図3】第1の実施例に係る露光装置のダクトを備えたステージの概略斜視図である。
【図4】第1の実施例に係る露光装置の概略側面図である。
【図5】第2の実施例に係る露光装置の基板載置台を含むステージの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明者等は、基板載置部の摺動部で発生した塵埃がマスクや基板へ付着するのを低減、或いは防止する方法について検討を行なった。その結果、ステージ内部の空洞を塵埃の排気に利用することができることに気づいた。
【0013】
本願発明は上記知見に基づいて生まれたものである。以下、実施例で詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
第1の実施例について、図1〜図4を用いて説明する。図1は、本実施例に係る露光装置の基板載置台を含むステージの概略斜視図である。
【0015】
ステージ1の上面にはX軸レール2が設置され、前記ステージ1上面にある凹面の側部にリニアモータの固定子が対向して設置されている。X軸レール2の上には、X方向に移動するX軸可動ステージ3が取り付けられており、図示しないリニアモータ可動子によってX軸レール上を移動する。X軸可動ステージ3の上面にはY軸レール31が設置され、Y軸レール31の上にはY方向に移動するY軸可動ステージ4が取り付けられており、図示しないリニアモータまたはボールネジとモータによってY軸レール31上を移動する。Y軸可動ステージ4上には、載置台5が取り付けられており、ガラス基板をこの上に載置し、X軸レールとY軸レールに沿って移動し、露光位置に位置決めされる。
【0016】
図2は図1のステージ1を単体で表したものである。ステージ上面には、上面の空気を吸気する吸気口6があり、側面にはそれを排気するための排気口7が設けてある。吸気口6と排気口7は、ステージ内部の格子形状のリブに抜き穴が四方八方にあいている為各々がつながっている。
【0017】
排気口7にダクトを接続した構成を図3に示す。図3は本実施例に係る露光装置のダクトを備えたステージの概略斜視図である。符号8が排気口に接続されたダクトを示す。これにより、ステージ1上面に浮遊あるいは堆積した塵埃を吸引、排気することが出来る。更に、吸気口の行、列に対応して排気口を設けており、吸気口から入った塵埃は速やかに排気口へ導かれるため塵埃をより効果的に排気することができる。
【0018】
次に、本実施例に係る露光装置について説明する。図4は本実施例に係る露光装置の概略側面図である。ダクト8は露光装置を覆うチャンバーの天井に設置してあるフィルタ付ファン10に接続されている。露光装置はチャンバー壁9で覆われている。
【0019】
本露光装置を用いて露光する手順を説明する。先ず、基板の受渡し場所に移動していた載置台5上に基板搬送ユニット(図示せず)により基板(図示せず)を載置する。次に、露光装置に取り付けられていたマスク(図示せず)の下まで基板を移動し、マスクと基板との間隔を1mm以下の所定の距離に調整する。次に、露光を行なう。マスクよりも基板が大きく、露光領域が複数ある基板には、次の露光領域がマスクの下となるように載置台5を移動する。所定の領域の露光が終わるまで載置台を移動する。当該基板の露光が終了すると基板の受渡し場所まで載置台は移動する。基板は基板搬送ユニットにより載置台から取りはずされる。
【0020】
上記露光処理の間、ステージ1内部はダクト8にてフィルタ付ファン10と接続されているため、陰圧になっている。したがって、載置台5が移動することにより基板載置部の摺動部で塵埃が発生しても、塵埃は吸気口から吸引されて排気口から排気される。排気されたエアはフィルタ付ファンを通過することで清浄化(クリーン化)される。フィルタ付ファン10を通過して排気されたダウンフローのクリーンエアは載置台5の上面を通り、吸気口6に流れ込むことで、チャンバー内の塵埃をダウンフローの流れに逆らわず回収することが可能となる。
【0021】
なお、ステージに吸引口と排気口とを設ける構成は、近接露光装置に限らず、大きな基板(一辺が1m以上)を載置する可動式の載置台が搭載されるステージを備えた露光装置にも適用することができる。
【0022】
また、本実施例では排気口毎にダクトを取り付けたが、ステージに設けられた複数の排気口を辺毎に覆い、辺毎に一箇所又は数箇所からダクトで排気する構成としてもよい。これにより、ダクトの数を低減することが出来、構成が簡略化される。
【0023】
本実施例によれば、基板載置部の摺動部で発生した塵埃がマスクや基板へ付着するのを低減、或いは防止することのできる露光装置を提供することができる。また、吸気口の行、列に対応して排気口を設けているため塵埃を効果的に排気することができる。
【実施例2】
【0024】
第2の実施例について、図5を用いて説明する。なお、実施例1に記載され、本実施例に未記載の事項は実施例1と同様である。
【0025】
図5は、本実施例に係る露光装置の基板載置台を含むステージの概略上面図である。本実施例においては、ステージの上面に設けた吸気口の行列の位置と排気口の位置とをずらして、均等に配置されている。本構成においても塵埃を吸引、排気することができる。さらに、排気口がステージの側面に均等な距離を隔てて配置されているので、ステージ内部における空気の停滞部を低減でき、ステージの内部を均一に排気することができる。
【0026】
本実施例によれば、基板載置部の摺動部で発生した塵埃がマスクや基板へ付着するのを低減、或いは防止することのできる露光装置を提供することができる。また、本実施例によれば、排気口がステージの側面に均等な距離を隔てて配置されているので、ステージの内部を均一に排気することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…ステージ、2…X軸レール、3…X軸可動ステージ、4…Y軸可動ステージ、5…載置台、6…吸気口、7…排気口、8…ダクト、9…チャンバー壁、10…フィルタ付ファン、31…Y軸レール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する載置台と、前記載置台を搭載するステージと、前記ステージ上で前記載置台を移動するための移動機構とを有する露光装置において、
前記ステージは、
内部がリブで格子状の構造を有し、更に、
その上面に複数の吸気口と、その側面に複数の排気口とを有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
請求項1記載の露光装置において、
前記吸気口は、前記ステージの行方向及び列方向に配置され、
前記排気口は、前記ステージの行方向及び列方向に配置された前記吸気口の位置にそれぞれ対応するように配置されていることを特徴とする露光装置。
【請求項3】
請求項1記載の露光装置において、
前記吸気口は、前記ステージの行方向及び列方向に配置され、
前記排気口は、前記ステージの各辺で均等な距離を隔てて配置されていることを特徴とする露光装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露光装置において、
前記載置台を移動するための移動機構は、前記載置台を水平方向に移動する移動機構であることを特徴とする露光装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置において、
複数の前記排気口はそれぞれダクトに接続されていることを特徴とする露光装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置において、
前記排気口は辺毎に覆われ、辺毎に1つ又は複数のダクトに接続されていることを特徴とする露光装置。
【請求項7】
チャンバーと、前記チャンバーの上部に配置されたフィルタと、前記フィルタ下部の前記チャンバー内に配置され、基板を載置するための載置台と、基板を載置する載置台と、前記載置台を搭載するステージと、前記ステージ上で前記載置台を移動するための移動機構とを有する露光装置において、
前記ステージは、内部がリブで格子状の構造を有すると共に、その上面に複数の吸気口と、その側面に複数の排気口とを備え、
前記排気口は、ダクトを介して前記フィルタに接続されていることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項7記載の露光装置において、
前記排気口から排気されたエアは前記フィルタで清浄化された後、前記チャンバー内へ送り込まれることを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81049(P2011−81049A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231154(P2009−231154)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】