説明

露出制御方法及び装置

【課題】手ブレを防止しつつ、低輝度逆光シーン等のシーンを良好に撮影可能にする。
【解決手段】標準の撮影感度(ISO200)の下に算出された適正な露出値に基づいて絞り値及びシャッタ速度を決定する。このとき、シャッタ速度は、手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度が維持できるように決定する。被写体が暗くなり、絞り値を最小にしてもシャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上を維持できなくなる場合には、撮影感度をアップさせる。このようにして絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する一方、フラッシュを発光させる露出値を設定しておく。そして、算出された適正露出値がフラッシュを発光させる露出値以下になると、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露出制御方法及び装置に係り、特にデジタルカメラ等の撮像装置により低輝度逆光シーンを適正露出で撮影する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5(A)に示すように撮影画面の中央部と周辺部との明るさに基づいて逆光シーンのシーン判定を行い、逆光シーンの場合には、自動的にフラッシュを発光させて撮影する撮像装置が知られている。
【0003】
また、図5(B)に示すように人物の背景にイルミネーション(例えば、照明された観覧車)などがある低輝度逆光シーンは、低輝度であるため逆光とは判定されない。
【0004】
従来なら、このようなシーンは、低輝度フラッシュ発光条件を満たすため、フラッシュ発光して撮影していたため、人物が暗くなるような問題がなかった。
【0005】
しかしながら、近年、暗いシーンでもフラッシュ発光せずに撮影できるように、撮影感度をアップさせるようにしたデジタルカメラが提案されている(特許文献1)。
【0006】
このデジタルカメラは、絞り値が最小(開放絞り)となり、かつシャッタ速度が手ブレ限界値(例えば、1/60秒)以下になる場合には、撮影感度を1段階アップして、シャッタ速度が手ブレ限界値以上を維持できるようにし、撮影感度が上限値に達し、かつシャッタ速度が手ブレ限界値以下になる場合には、シャッタ速度を手ブレ限界値に維持し、フラッシュを発光するようにしている。
【特許文献1】特開2005−20341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のデジタルカメラによる露出制御方法の場合、図5(B)に示したような低輝度逆光シーンでは、撮影感度をアップすることでシャッタ速度を手ブレ限界値以上に維持することができるため、フラッシュ発光は行われず、その結果、図5(B)に示すような低輝度逆光シーンでは、人物が露出アンダーとなるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、手ブレを防止しつつ、低輝度逆光シーン等のシーンを良好に撮影することができる露出制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に係る露出制御方法は、被写体の明るさを求める工程と、前記求めた被写体の明るさから標準の撮影感度における適正な露出値を算出する工程と、前記算出した露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する工程であって、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持するように前記絞り値及びシャッタ速度を決定するとともに、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持できない露出値の場合には撮影感度を上げるように撮影感度を決定する工程と、フラッシュを発光させる露出値を設定する工程と、前記算出した露出値がフラッシュを発光させる露出値以下になると、前記決定されたシャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるように設定する工程と、を含むことを特徴としている。
【0010】
即ち、標準の撮影感度の下に算出された適正な露出値に基づいて絞り値及びシャッタ速度が決定される。このとき、シャッタ速度は、手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度が維持できるように決定する。被写体が暗く(適正露出値が小さく)なり、絞り値を最小(開放絞り)にしてもシャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上を維持できなくなる場合には、撮影感度をアップさせる。
【0011】
このようにして絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する一方、フラッシュを発光させる露出値を設定しておく。そして、算出された適正露出値がフラッシュを発光させる露出値以下になると、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるように設定する。即ち、フラッシュを発光させるフラッシュ発光開始閾値は、撮影感度が上限のときの手ブレ限界シャッタ速度になるポイントではなく、予め設定し露出値にする。これにより、低輝度逆光シーン等のシーンの場合にフラッシュが発光し、人物などの主要被写体が露出アンダーにならないようにすることができる。
【0012】
請求項2に示すように請求項1に記載の露出制御方法において、選択可能な最小の絞り値、最大の撮影感度、及び手ブレ限界シャッタ速度によって決定される露出値が、前記フラッシュを発光させる露出値よりも大きい場合には、前記算出した露出値が前記決定される露出値以下になると、フラッシュを発光させるように設定することを特徴としている。この場合には、手ブレ限界値よりもフラッシュを発光させる露出値の方が小さくなるため、手ブレ限界シャッタ速度を維持できるようにフラッシュ発光するようにしている。
【0013】
請求項3に示すように請求項1に記載の露出制御方法において、前記フラッシュを発光させる露出値は、撮影感度がISO200の下でEV値が7〜8の範囲内の値であることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の露出制御装置は、被写体の明るさを求める測光手段と、前記求めた被写体の明るさから標準の撮影感度における適正な露出値を算出する露出値算出手段と、前記算出した露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する手段であって、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持するように前記絞り値及びシャッタ速度を決定するとともに、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持できない露出値の場合には撮影感度を上げるように撮影感度を決定する手段と、前記決定した絞り値及びシャッタ速度に基づいて絞り及びシャッタ速度を制御する露出制御手段と、前記決定した撮影感度になるように撮影感度を調整する撮影感度調節手段と、フラッシュ発光手段と、フラッシュを発光させる露出値を設定する手段と、前記記算出した露出値がフラッシュを発光させる露出値以下になると、前記決定されたシャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるように前記フラッシュ発光手段を制御するフラッシュ発光制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上を維持できなくなる露出値の場合には、撮影感度をアップさせることでシャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持し、これにより手ブレを未然に防止することができる。また、被写体が暗くなり、フラッシュを発光させる露出値以下になると、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるようにしたため、低輝度逆光シーン等のシーンを良好に撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下添付図面に従って本発明に係る露出制御方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0017】
[デジタルカメラの全体構成]
図1は本発明が適用されたデジタルカメラの構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態のデジタルカメラ10は、撮影光学系12、CCD等の固体撮像素子からなるメージセンサ14(以下「CCD」という)、タイミングジェネレータ(TG)16、アナログ信号処理部18、A/D変換器20、画像入力コントローラ22、デジタル信号処理部24、エンコーダ28、画像表示部30、圧縮・伸張処理部32、メディアコントローラ34、記憶メディア36、AE検出部38、AF検出部40、中央処理装置(CPU)42、ROM44、RAM46、フラッシュROM48、操作部50、及びフラッシュ発光装置52等で構成されている。
【0018】
デジタルカメラ10の全体の動作は、CPU42によって統括制御されており、CPU42は操作部50からの入力に基づき所定のプログラムに従ってデジタルカメラ10の各部を制御する。
【0019】
ROM44には、このCPU42が実行するプログラムの他、プログラム線図等の各種制御に必要なデータが格納されている。CPU42は、このROM44に格納されたプログラムをRAM46に展開し、RAM46を作業メモリとして使用しながら各種処理を実行する。また、フラッシュROM48には、ユーザ設定情報等のデジタルカメラ10の動作に関する各種設定情報等が格納されている。
【0020】
撮影光学系12は、ズームレンズ12z、フォーカスレンズ12f、絞り(たとえば、虹彩絞り)12iを含み、それぞれズームモータ60z、フォーカスモータ60f、アイリスモータ60iに駆動されて作動する。即ち、ズームレンズ12zは、ズームモータ60zに駆動されて撮影光軸上を前後移動し、これにより、焦点距離を変化させる。また、フォーカスレンズ12fは、フォーカスモータ60fに駆動されて撮影光軸上を前後移動し、これにより結像位置を変化させる。また、絞り12iは、アイリスモータ60iに駆動されて開口量が段階的に変化し、これにより絞り値を変化させる。CPU42は、ズームモータドライバ62z、フォーカスモータドライバ62f、アイリスモータドライバ62iを介してズームモータ60z、フォーカスモータ60f、アイリスモータ60iの駆動を制御し、ズームレンズ12z、フォーカスレンズ12f、絞り12iの動作を制御する。
【0021】
CCD14は、所定のカラーフィルタ配列(たとえば、ベイヤ配列)のカラーCCDで構成されている。撮影光学系12を介してCCD14の受光面に入射した光は、その受光面に配列された各フォトダイオードによって入射光量に応じた量の信号電荷に変換される。そして、各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、タイミングジェネレータ(TG)16から加えられるタイミング信号に従って読み出され、電圧信号(画像信号)としてCCD14から順次出力される。
【0022】
尚、このCCD14は、シャッタゲートとシャッタドレインを備えており、シャッタゲートにシャッタゲートパルスを印加することで各フォトダイオードに蓄積された信号電荷をシャッタドレインに掃き出すことができるようにされている。CPU42は、TG16を介してシャッタゲートへのシャッタゲートパルスの印加を制御することにより、各フォトダイオードに蓄積される信号電荷の電荷蓄積時間(シャッタ速度)を制御する(いわゆる電子シャッタ機能)。
【0023】
アナログ信号処理部18は、CDS回路及びアナログアンプを含み、CDS回路は、TG16から加えられるCDSパルスに基づいてCCD出力信号を相関二重サンプリング処理し、アナログアンプは、CPU42から加えられる撮影感度設定用ゲインによってCDS回路から出力される画像信号を増幅する。A/D変換器20は、このアナログ信号処理部18から出力されたアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。
【0024】
画像入力コントローラ22は、所定容量のバッファメモリを内蔵しており、A/D変換器20から出力された画像信号を1コマ分蓄積して、RAM46に格納する。
【0025】
デジタル信号処理部24は、同時化回路、ガンマ補正回路、輪郭補正回路、輝度・色差信号生成回路等を含み、CPU42からの指令に従ってRAM46に格納された画像信号を処理し、輝度信号と色差信号とからなるYUV信号を生成する。
【0026】
画像表示部30にスルー画像を表示させる場合は、CCD14で画像を連続的に撮像し、得られた画像信号を連続的に処理してYUV信号を生成する。生成されたYUV信号は、RAM46を介してエンコーダ28に加えられ、表示用の信号形式に変換されて画像表示部30に出力される。これにより、画像表示部30にスルー画像が表示される。
【0027】
画像を記録する場合は、操作部50からの撮影指令に応じてCCD14で画像を撮像し、得られた画像信号を処理してYUV信号を生成する。生成されたYUV信号は、圧縮・伸張処理部32に加えられ、所定の圧縮画像データ(たとえば、JPEG)とされたのち、メディアコントローラ34を介して記憶メディア36に格納される。
【0028】
記憶メディア36に格納された圧縮画像データは、再生指令に応じて記憶メディア36から読み出され、圧縮・伸張処理部32で非圧縮のYUV信号とされたのち、エンコーダ28を介して画像表示部30に出力される。これにより、記憶メディア36に記録された画像が画像表示部30に再生表示される。
【0029】
AE検出部38は、CPU42からの指令に従い、入力された画像信号からAE制御に必要な物理量を算出する。たとえば、AE制御に必要な物理量として、1画面を複数のエリア(例えば、8×8)に分割し、分割したエリアごとにR、G、Bの画像信号の積算値を算出する。CPU42は、このAE検出部38から得た積算値、及び画像信号取得時の絞り値、シャッタ速度に基づいて被写体の明るさを検出してEV値を求め、求めたEV値に基づいて撮影時の露出を設定する。この露出設定方法については、のちに詳述する。
【0030】
AF検出部40は、CPU42からの指令に従い、入力された画像信号からAF制御に必要な物理量を算出する。本実施の形態のデジタルカメラ10では、画像のコントラストによりAF制御を行うものとし、AF検出部40は、入力された画像信号から画像の鮮鋭度を示す焦点評価値を算出する。CPU42は、このAF検出部40で算出される焦点評価値が極大となるように、フォーカスモータドライバ62fを介してフォーカスモータ60fを駆動し、フォーカスレンズ12fの移動を制御する。
【0031】
本実施の形態のデジタルカメラ10は以上のように構成される。
【0032】
フラッシュ発光装置52は、CPU42からの発光指令及び発光停止指令によって調光可能なフラッシュを発光する。
【0033】
[露出制御方法]
次に、本実施の形態のデジタルカメラ10における露出設定方法について説明する。上記のように、本実施の形態のデジタルカメラ10では、被写体の明るさを検出してEV値を求め、求めたEV値に基づいて露出を設定する。
【0034】
この際、本実施の形態のデジタルカメラ10では、手ブレ、被写体ブレによる撮影ミスを防止するため、常にシャッタ速度が規定のシャッタ速度(手ブレ限界シャッタ速度)以上に設定され、感度と絞り値が設定限界に達すると、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度よりも遅く設定することが可能になる。
【0035】
手ブレ限界シャッタ速度は、一般に焦点距離(35mmフィルム換算値)に依存し、1/焦点距離[秒]が規定される。例えば、焦点距離が35mmフィルム換算で60mmの場合、1/60秒が手ブレ限界シャッタ速度となる。尚、焦点距離に依存せずに一律に設定してもよい。例えば、一律に1/60秒を手ブレ限界シャッタ速度としてもよい。
【0036】
図2は本実施の形態のデジタルカメラ10で用いるプログラム線図の一例を示す図であり、焦点距離45mm(35mmフィルム換算)の時のプログラム線図を示している。
【0037】
また、自動的にフラッシュを発光させるフラッシュ自動発光モードと、フラッシュ発光禁止モード、フラッシュ強制発光モード等のいずれかのモードを設定できるようになっているが、以下、フラッシュ自動発光モードが設定されている場合について説明する。
【0038】
図2に示すラインL1は、手ブレ限界シャッタ速度を示している。焦点距離が45mmの場合、手ブレ限界シャッタ速度は1/45秒となる。
【0039】
このプログラム線図によれば、フラッシュ自動発光モード時には、シャッタ速度は、手ブレ限界シャッタ速度以上に設定されるようになっている。尚、フラッシュ発光禁止モード(フラッシュOFF)の場合には、シャッタ速度は、手ブレ限界シャッタ速度よりも遅く設定される場合がある。
【0040】
また、本実施の形態のデジタルカメラ10では、撮影感度としてISO200、ISO400、ISO800が設定できるものとし、絞り値としてF2.8、F4、F5.6、F8、F11が設定できるものとすると、フラッシュ自動発光モード時の感度の限界がISO800、絞り値の限界がF2.8となる。したがって、感度ISO800、絞り値F2.8になるまでは、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上に維持される。
【0041】
図2に示すプログラム線図の場合、EV8.5以上の範囲では、感度を一定(ISO200)にして、絞り値を段階的に変えることにより、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持できるようにしている。
【0042】
絞り値はEV8.5で、シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度となり、かつ絞り値が設定限界(F2.8)に達するので、EV8.5以下の範囲では、絞り値を一定(F2.8)にして、感度を段階的に変えることにより、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持する。
【0043】
図2に示すプログラム線図上で、ラインL2は、フラッシュ発光開始閾値である。測光演算によって得られた露出値(EV値)が、この閾値を下回る場合、フラッシュ発光して撮影を行う。このフラッシュ発光開始閾値は、この実施の形態ではEV7.5であり、この値は予めフラッシュROM48に設定値として記憶されている。
【0044】
また、図2に示すプログラム線図上で、ポイントP1は、撮影感度(ISO400)時の手ブレ限界露出値である。測光演算によって得られたEV値が、この手ブレ限界露出値を下回る場合、手ブレが生じる可能性があるため、フラッシュ発光する必要がある。
【0045】
ポイントP2は、最大の撮影感度(ISO800)時の手ブレ限界露出閾値である。測光演算によって得られたEV値が、この手ブレ限界露出閾値を下回る場合、手ブレが生じる可能性があるため、フラッシュ発光する必要がある。
【0046】
ポイントP3は、撮影感度(ISO800)時の低輝度フラッシュ発光開始閾値である。
【0047】
本発明に係る露出制御方法では、測光演算によって得られたEV値が、低輝度フラッシュ発光開始閾値(ポイントP3)以下になると、シャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度に固定し、フラッシュを発光させる。
【0048】
即ち、図3に示すように人物の背景にイルミネーションなどがある低輝度逆光シーンの明るさは、ポイントP1〜P3の間に入るため、ポイントP2にラインL2との差分値を加算して、撮影感度(ISO800)時の低輝度フラッシュ発光開始閾値(ポイントP3)とする。これにより、低輝度逆光シーンでの手前の人物などが露出アンダーにならないようにすることできる。
【0049】
尚、実際の撮影は次のように行われる。まず、シャッタボタンの半押しで操作部50からCPU42にS1オン信号が入力される。CPU42は、この操作部50から入力されるS1オン信号の入力に応動して、AE、AF処理を実行する。即ち、AE処理として、CCD14から測光用の画像信号を取り込み、AE検出部38に加える。AE検出部38は、入力された画像信号から積算値を算出し、CPU42に出力する。CPU42は、このAE検出部38から得た積算値に基づいてEV値を算出し、上記のプログラム線図に従って絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を設定し、また、フラッシュ発光の有無を決定する。
【0050】
CPU42は、AF処理として、CCD14からAF用の画像信号を取り込み、AF検出部40に加える。AF検出部40は、入力された画像信号から焦点評価値を算出し、CPU42に出力する。CPU42は、このAF検出部40から得た焦点評価値が極大となるように、フォーカスモータ60fの駆動を制御し、主要被写体にピントを合わせる。
【0051】
この後、シャッタボタンが全押しされると、操作部50からCPU42にS2オン信号が入力される。CPU42は、この操作部から入力されるS2オン信号に応動して、撮影動作(露出制御、フラッシュ発光時にはフラッシュ発光装置52の制御)を行い、撮影した画像の記録処理を実行する。即ち、記録用の画像信号をCCD14から取り込み、デジタル信号処理部24に加える。デジタル信号処理部24は、入力された画像信号に所要の信号処理を施してYUV信号を作成する。作成されたYUV信号は、圧縮・伸張処理部32で圧縮処理され、メディアコントローラ34を介して記憶メディア36に記録される。以上一連の工程で画像が、撮影され、記憶メディア36に記録される。
【0052】
図4はシャッタ速度を手ブレ限界シャッタ速度以上に維持し、かつフラッシュ発光ポイントがフラッシュ発光開始閾値以下にならないように設定する方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0053】
この方法では、まず、被写体を測光し、その測光結果によりEV値を求める(ステップS10、S12)。続いて、撮影感度を設定する(ステップS14)。尚、撮影感度の初期値は、標準の撮影感度(ISO200)とする。また、前記EV値は、ISO200の下で算出した値である。
【0054】
次に、EV値から絞り値とシャッタ速度とを決定する(ステップS16)。ここで、シャッタ速度は、手ブレ限界シャッタ速度以上となるように決定するが、EV値が小さくなると、絞り値を最小(F2.8)にしても手ブレ限界シャッタ速度よりも遅くなる。ステップS18では、前記決定したシャッタ速度が、手ブレ限界シャッタ速度よりも遅いか否かを判定する。
【0055】
前記決定したシャッタ速度が、手ブレ限界シャッタ速度よりも遅い場合にはステップS20に移行し、手ブレ限界シャッタ速度より速い場合には、ステップS32に移行する。
ステップS20では、現在設定されている撮影感度が、選択可能な撮影感度のうちの上限値か否かを判別する。現在設定されている撮影感度が上限値でない場合には、撮影感度を1EVだけアップし(ステップS22)、この感度を新たな撮影感度として設定する(ステップS14)。
【0056】
一方、現在設定されている撮影感度が上限値の場合には、フラッシュ発光開始閾値から最大の撮影感度における手ブレ限界露出閾値を減算し、その減算値をaとする(ステップS24)。
【0057】
ステップS24で求めた減算値aが0以上か否かを判別し(ステップS26)、a≧0の場合には、低輝度フラッシュ発光開始閾値として、前記手ブレ限界露出閾値に減算値aを加算した値を設定する(ステップS28)。一方、a<0の場合には、低輝度フラッシュ発光開始閾値として、前記手ブレ限界露出閾値を設定する(ステップS30)。
【0058】
上記のようにして絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を設定して撮影を行うが、撮影EV値が前記低輝度フラッシュ発光開始閾値以下になると、フラッシュ発光して撮影を行う(ステップS32)。
【0059】
その後、撮影した画像の記録処理及び記録処理を行う(ステップS34、S36)。
【0060】
尚、図2に示したブロック線図では、フラッシュ発光開始閾値は、ISO800の手ブレ限界露出閾値よりも大きくなるため、その減算値aはa≧0となり、手ブレ限界露出閾値+aが低輝度フラッシュ発光開始閾値となるが、前述したように手ブレ限界シャッタ速度は、焦点距離(35mmフィルム換算値)に依存するため、フラッシュ発光開始閾値よりもよりISO800の手ブレ限界露出閾値が大きくなる場合がある。また、感度アップできる撮影感度に制限を加えた場合にも、フラッシュ発光開始閾値よりもより、その制限された撮影感度の手ブレ限界露出閾値が大きくなる場合がある。これらの場合には、前記ステップS30で示したように手ブレ限界露出閾値が低輝度フラッシュ発光開始閾値となる。
【0061】
この実施の形態のデジタルカメラ10では、CCD14から得た画像信号に基づいてEV値を求めているが、EV値を求める方法については、これに限定されるものではなく、他の測光センサ等を用いてEV値を求めるようにしてもよい。
【0062】
また、本発明は、図2に示したプログラム線図に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1はデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】図2はプログラム線図の一例を示す図である。
【図3】図3は人物の背景にイルミネーションなどがある低輝度逆光シーンを撮影した場合の改善後の撮影画面の一例を示す図である。
【図4】図4は本発明に係る露出設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は人物の背景にイルミネーションなどがある低輝度逆光シーンを撮影した場合の従来の問題点を説明するために用いた撮影画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10…デジタルカメラ、12…撮影光学系、14…CCD、16…タイミングジェネレータ(TG)、18…アナログ信号処理部、20…A/D変換器、22…画像入力コントローラ、24…デジタル信号処理部、28…エンコーダ、30…画像表示部、32…圧縮・伸張処理部、34…メディアコントローラ、36…記憶メディア、38…AE検出部、40…AF検出部、42…中央処理装置(CPU)、44…ROM、46…RAM、48…フラッシュROM、50…操作部、52…フラッシュ発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の明るさを求める工程と、
前記求めた被写体の明るさから標準の撮影感度における適正な露出値を算出する工程と、
前記算出した露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する工程であって、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持するように前記絞り値及びシャッタ速度を決定するとともに、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持できない露出値の場合には撮影感度を上げるように撮影感度を決定する工程と、
フラッシュを発光させる露出値を設定する工程と、
前記算出した露出値がフラッシュを発光させる露出値以下になると、前記決定されたシャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるように設定する工程と、
を含むことを特徴とする露出制御方法。
【請求項2】
選択可能な最大の絞り値、最大の撮影感度、及び手ブレ限界シャッタ速度によって決定される露出値が、前記フラッシュを発光させる露出値よりも大きい場合には、前記算出した露出値が前記決定される露出値以下になると、フラッシュを発光させるように設定することを特徴とする請求項1に記載の露出制御方法。
【請求項3】
前記フラッシュを発光させる露出値は、撮影感度がISO200の下でEV値が7〜8の範囲内の値であることを特徴とする請求項1に記載の露出制御方法。
【請求項4】
被写体の明るさを求める測光手段と、
前記求めた被写体の明るさから標準の撮影感度における適正な露出値を算出する露出値算出手段と、
前記算出した露出値に基づいて絞り値、シャッタ速度及び撮影感度を決定する手段であって、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持するように前記絞り値及びシャッタ速度を決定するとともに、前記シャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上の所定のシャッタ速度を維持できない露出値の場合には撮影感度を上げるように撮影感度を決定する手段と、
前記決定した絞り値及びシャッタ速度に基づいて絞り及びシャッタ速度を制御する露出制御手段と、
前記決定した撮影感度になるように撮影感度を調整する撮影感度調節手段と、
フラッシュ発光手段と、
フラッシュを発光させる露出値を設定する手段と、
前記記算出した露出値がフラッシュを発光させる露出値以下になると、前記決定されたシャッタ速度が手ブレ限界シャッタ速度以上であってもフラッシュを発光させるように前記フラッシュ発光手段を制御するフラッシュ発光制御手段と、
を備えたことを特徴とする露出制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−28187(P2007−28187A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207214(P2005−207214)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】