説明

静電容量式デバイスの製造方法および静電容量式デバイス

【課題】デバイス特性に影響を与えてしまうのを抑制することのできる静電容量式デバイスの製造方法および静電容量式デバイスを得る。
【解決手段】固定側基板2aの両面に露出するようにシリコンを貫通させて形成した貫通シリコン23a、23b、24a、24bを固定電極20a、20b、21a、21bとし、貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面に金属膜25を成膜するとともに、固定側基板2aの表面における貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面以外の部位に金属膜25と離間するように金属膜26を成膜する。そして、可動体基板1と固定側基板2aとを陽極接合する際に、金属膜25,26を用いて、固定側基板2aと可動体基板1との間に電位差を設ける一方、貫通シリコン23a、23b、24a、24bと可動体基板1とが同電位となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式デバイスの製造方法および静電容量式デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式デバイスとして、可動電極の中央部をビームによって支持するとともに、当該ビームで支持された中央部を境に可動電極の両端側の重心位置を非対称とすることで、加速度が入力された際に可動電極を揺動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、可動電極を可動体基板となるシリコン基板に形成する一方、可動電極に対向する固定電極を固定側基板となるガラス基板に形成し、両基板を陽極接合により接合している。
【0004】
ところで、両基板を陽極接合により接合する際、シリコン基板に設けられた圧接電極とガラス基板に形成された固定電極から延設された端子電極とを踏み潰して導通させることで、シリコン基板と固定電極とが同電位となるようにするのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−210419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術のように、電極同士を踏み潰すことでシリコン基板と固定電極とが同電位となるように導通させる方法では、踏み潰しを行う接合面に酸化膜などが形成されて導通不良が生じてしまうおそれがあった。また、このような踏み潰し構造を用いると、踏み潰し部分が応力の発生起点となって構造体に応力が作用し、デバイス特性に影響を与えてしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、デバイス特性に影響を与えてしまうのを抑制することのできる静電容量式デバイスの製造方法および静電容量式デバイスを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にあっては、可動電極が形成された可動体基板と、前記可動電極に対向する固定電極が形成され、前記可動体基板に陽極接合される固定側基板と、を備える静電容量式デバイスの製造方法であって、前記固定側基板の両面に露出するようにシリコンを貫通させて形成した貫通シリコンを前記固定電極とするとともに、前記可動体基板の少なくとも前記固定側基板に陽極接合される部位をシリコンで形成し、前記貫通シリコンの外側露出面に第1の金属膜を成膜するとともに、前記固定側基板の表面における前記貫通シリコンの外側露出面以外の部位に、前記第1の金属膜と離間するように第2の金属膜を成膜し、前記可動体基板と前記固定側基板とを陽極接合する際に、前記第1の金属膜および第2の金属膜を用いて、前記固定側基板と前記可動体基板との間に電位差を設ける一方、前記貫通シリコンと前記可動体基板とが同電位となるようにしたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定側基板と可動体基板との間に電位差を設けるとともに、貫通シリコンと可動体基板とを同電位にした状態で、可動体基板と固定側基板との陽極接合を行っている。そのため、踏み潰し構造を用いることなく陽極接合を行うことが可能となる。その結果、接合部分に酸化膜が形成されて導通不良が生じてしまうのを抑制することができる上、踏み潰し部分に応力が作用してデバイス特性に影響を与えてしまうのを抑制することができる。
【0010】
また、金属膜を用いて、固定側基板と可動体基板との間に電位差を設ける一方、貫通シリコンと可動体基板とが同電位となるようにしたため、電圧の印加や同電位化をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる静電容量式デバイスを示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す静電容量式デバイスの可動体基板を示し、(a)は可動体基板の平面図、(b)は可動体基板の底面図である。
【図3】図3は、図1に示す静電容量式デバイスの模式的な断面図である。
【図4】図4は、図1に示す静電容量式デバイスの製造途中を示すウエハの平面図である。
【図5】図5は、図4中I部の拡大図である。
【図6】図6は、図5中II部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、静電容量式デバイスとして、加速度センサを例示する。また、錘部の可動電極が形成される側をシリコン基板の表面側と定義する。そして、シリコン基板の短手方向をX方向、シリコン基板の長手方向をY方向、シリコン基板の厚さ方向をZ方向として説明する。
【0013】
本実施形態にかかる加速度センサSは、可動電極4、5を有する可動体基板としてのシリコン基板1と、このシリコン基板1の表面(図1の上面)に陽極接合されて可動電極4、5に対向する固定電極20a、20b、21a、21bが形成された固定側基板としての上部固定板2aと、シリコン基板1の裏面(図1の下面)に接合されて閉塞板となる下部固定板2bとを備えている。このように、本実施形態にかかる加速度センサSは、上部固定板2aと下部固定板2bとの間にシリコン基板1が挟持されたセンサチップとして構成されている。
【0014】
シリコン基板1は、シリコンSOI基板により形成されており、図1に示すように、2つの矩形枠3a、3bを有するフレーム3と、矩形枠2a、3bの側壁に対して隙間をあけた状態で矩形枠3a、3bに配置された矩形形状の2つの可動電極4、5とを備えている。
【0015】
可動電極4、5は、それぞれの側面の対向する二辺のほぼ中央が、一対のビーム6a、6bおよび7a、7bによって矩形枠3a、3bの側壁に連結されている。すなわち、一方の可動電極4がビーム6a、6bによってフレーム3に対して揺動自在に支持されるとともに、他方の可動電極5がビーム7a、7bによってフレーム3に対して揺動自在に支持されている。なお、本実施形態では、ビーム6a、6bおよびビーム7a、7bは、シリコン基板1のZ方向(厚さ方向)に対して上部固定板2aに対向した表面側(図1の上面側)に偏って配置されている。また、可動電極4、5の表裏面には、可動電極4、5が固定電極20a、20b、21a、21bや後述する付着防止膜28,29に直接衝突するのを防止するための突起部41,51が突設されている。また、シリコン基板1のフレーム3表面には接地電極10が形成されている。
【0016】
また、可動電極4、5は肉厚に形成されており、重りとしての機能も有している。本実施形態では、図2(b)および図3に示すように、可動電極4の裏側における境界線(平面視でビーム6aとビーム6bの中心を結ぶ直線)Mの一方側(図2(b)の下側)に凹部11が形成されており、可動電極4の重心が他方側(図2(b)の上側)に片寄るようにしている。同様に、可動電極5の裏側における可動電極4に凹部11を設けた一方側とは反対となる他方側(図2(b)の上側)に凹部11が形成されており、可動電極5の重心が一方側(図2(b)の下側)に片寄るようにしている。そして、X方向もしくはZ方向に加速度が印加された場合に、X方向およびZ方向に印加される加速度を検出できるようにしている。
【0017】
上部固定板2aは、ガラス基板により形成されており、図3に示すように、可動電極4、5の表面に対して所定間隔をあけて対向配置されている。そして、上部固定板2aの一方の可動電極4と対向する面側には、境界線Mの一方側および他方側にそれぞれ固定電極20a、20bが設けられている。この固定電極20a、20bは、一方の可動電極4の表面4aに対して所定の間隔をあけて対向配置されている。
【0018】
また、上部固定板2aの他方の可動電極5と対向する表面側には、境界線Mの一方側および他方側にそれぞれ固定電極21a、21bが設けられており、この固定電極21a、21bは、他方の可動電極5の表面に対して所定間隔をあけて対向配置されている。
【0019】
さらに、図1に示すように、上部固定板2aの接地電極10と対向する位置には、スルーホール22aが形成されており、このスルーホール22aを介して接地電極10を外部に露出、配線させることで、接地電極10の電位、すなわち、可動電極4,5の電位を外部に取り出せるようにしている。
【0020】
下部固定板2bは、ガラス基板により形成されており、図3に示すように、双方の可動電極4、5の裏面に所定間隔をあけて対向するように配置されている。そして、この下部固定板2bの表面には、可動電極4、5の設置領域に対応した領域に付着防止膜28,29がそれぞれ形成されている(図1参照)。
【0021】
上述した加速度センサSは以下のようにして製造される。
【0022】
まず、図3に示すように、シリコン基板1の表面側および裏面側に、湿式エッチングやドライエッチング等により可動電極4、5が変位するための凹部32a、32bを形成する。また、シリコン基板1の裏面側を更にエッチングすることで、双方の可動電極4、5および凹部11を形成する。
【0023】
その後、下部固定板2bをシリコン基板1の裏面側に陽極接合するとともに、上部固定板2aに、固定電極20a、20b、21a、21bおよびスルーホール22aを形成しておき、この上部固定板2aをシリコン基板1の表面側に陽極接合する。
【0024】
このように構成された加速度センサSは、図3の矢印kで示す加速度が印加されると、双方の可動電極4、5がそれぞれ揺動運動し、可動電極4、5の両端側と固定電極20a、20b、21a、21bとの間のギャップdが変化し、それらのギャップd間の静電容量C1、C2、C3、C4が変化する。
【0025】
このときの静電容量Cは、C=ε×S/dとなることが知られており(ε:誘電率、S:電極面積、d:ギャップ)、この式からギャップdが大きくなると静電容量Cは減少し、ギャップdが小さくなると静電容量Cは増加することになる。
【0026】
本実施形態では、検出された静電容量C1、C2、C3、C4が、例えば、ASICで構成される演算回路に送られてX方向の加速度およびZ方向の加速度が求められ、当該加速度を示すデータが出力されるようになっている。
【0027】
ところで、本実施形態では、一方の可動電極4を備えた第1の加速度センサ単体Saと、他方の可動電極5を備えた第2の加速度センサ単体Sbとを同一チップ面内に配置するとともに、それぞれの加速度センサ単体Sa、Sbを相対的に180度回転した状態で配置している(図1参照)。このように、第1の加速度センサ単体Saと第2の加速度センサ単体Sbとを、それぞれの可動電極4および可動電極5の重心位置が境界線Mに対して互いに反対側に位置するように配置することで、X方向およびZ方向の加速度を検出できるようにしている。なお、X方向およびZ方向の加速度の向き及び大きさを求める演算処理については従来周知であるため説明を省略する。
【0028】
ここで、本実施形態では、上部固定板(固定側基板)2aとシリコン基板(可動体基板)1との間に電位差を設けるとともに、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1とを同電位にした状態で、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとの陽極接合を行うようにしている。
【0029】
具体的には、以下のようにしてシリコン基板1と上部固定板2aとの陽極接合を行うようにしている。
【0030】
まず、図1および図3に示すように、上部固定板2aの平面視で可動電極4、5と対応する部位、すなわち、上述した固定電極20a、20b、21a、21bが配置される部位に、上部固定板2aの表裏両面に露出するようにシリコンを貫通させて複数の貫通シリコン23a、23b、24a、24bを形成し、この貫通シリコン23a、23b、24a、24bの裏面側が固定電極20a、20b、21a、21bとなるようにする。
【0031】
このようなガラス埋込シリコン基板は、例えば、平坦なシリコン基板の表面に窪みを形成し、平坦なガラス基板にシリコン基板の窪みが形成された面を重ね合わせ、ガラス基板を加熱することでガラス基板の一部をこの窪みの中に埋め込んだ後、ガラス基板を再固化させ、フラット基板の表裏面を研磨してシリコンを除去することで形成することができる。
【0032】
そして、シリコン基板1の少なくとも上部固定板2aに陽極接合される部位をシリコンで形成する。
【0033】
本実施形態では、シリコン基板1の両面周縁部が上部固定板2aおよび下部固定板2bの周縁部にそれぞれ陽極接合されるようになっている。このシリコン基板1として、本実施形態では、Siからなるシリコン活性層1bとSiからなる支持基板1cとの間にSiOからなる埋込絶縁層1aが介在するSOI基板を用いている。
【0034】
このように、シリコン基板1としてSOI基板を用いることで、シリコン基板1の少なくとも上部固定板2aに陽極接合される部位がシリコンで形成されることとなる。
【0035】
そして、貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面に第1の金属膜としてのアルミ膜25を成膜するとともに、上部固定板2aの外側面周縁部(上部固定板2aの表面における貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面以外の部位)に、第2の金属膜としてのアルミ膜26をアルミ膜25と離間するように成膜する。このように、アルミ膜25とアルミ膜26とを互いに接触しないように成膜することで、アルミ膜25とアルミ膜26とが短絡してしまうのを抑制している。
【0036】
そして、貫通シリコン23a、23b、24a、24bをアルミ膜25および金属配線w2を介してアースするとともに、シリコン基板1の周縁部を金属配線w3を介してアースすることで、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板1とが同電位となるようにする。
【0037】
そして、上部固定板2aのシリコン基板1との接合部(周縁部)にアルミ膜26および金属配線w1を介して電圧を印加して、上部固定板(固定側基板)2aとシリコン基板(可動体基板)1との間に電位差を設けることで、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1とを同電位にした状態で、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとの陽極接合を行う。
【0038】
すなわち、本実施形態では、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとを陽極接合する際に、アルミ膜(第1および第2の金属膜)25,26を用いて、上部固定板(固定側基板)2aとシリコン基板(可動体基板)1との間に電位差を設けるとともに、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1とが同電位となるようにしている。
【0039】
このとき、図3に示すように、アルミ膜(上部固定板2aの表面における貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面以外の部位に第1の金属膜としてのアルミ膜25と離間するように成膜した第2の金属膜)26と貫通シリコン23a、23b、24a、24bとの最短距離aを、上部固定板2aの厚さbよりも大きく(a>b)するのが好適である。
【0040】
上部固定板2aとシリコン基板1との接合部と、貫通シリコン23a、23b、24a、24bの貫通部には共にガラスとシリコンの界面が生じているため、a<bとした場合、上部固定板2aのアルミ膜26に電圧を印加した際に、距離が近い貫通シリコン23a、23b、24a、24bの貫通部で接合反応が起こりやすくなってしまう。しかしながら、a>bとすれば、貫通シリコン23a、23b、24a、24bの貫通部で接合反応が起こってしまうのを抑制することができ、積極的に上部固定板2aとシリコン基板1との接合部で接合反応を起こさせることができるようになる。
【0041】
また、本実施形態では、固定電極となる貫通シリコンを複数(本実施形態では4つ)備えており、それぞれの貫通シリコン23a、23b、24a、24bに成膜したアルミ膜(複数の貫通シリコンの外側露出面に成膜した第1の金属膜)25を金属配線(金属配線27および金属配線w2)によって相互に導通させている(図6参照)。
【0042】
このように、本実施形態では、複数のアルミ膜25を金属配線(金属配線27および金属配線w2)によって相互に導通させることで、図4に示すようなウエハレベルで、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとの陽極接合を行っている。
【0043】
以下、ウエハレベルでの陽極接合について説明する。
【0044】
まず、1枚のウエハWをエッチング等により加工することで、分断した際に上述の加速度センサSが形成されるように可動電極4,5等を複数形成する。
【0045】
次に、固定電極20a、20b、21a、21bとなる貫通シリコン23a、23b、24a、24bが埋め込まれたガラス基板(分断した際に上部固定板2aとなる部材)を貫通シリコン23a、23b、24a、24bが可動電極4,5と対向するように載置する。
【0046】
次に、ガラス基板の表面にアルミ膜(複数の貫通シリコンの外側露出面に成膜した第1の金属膜)25を成膜する。このとき、隣り合う貫通シリコン23a、23bのアルミ膜25の間、および隣り合う貫通シリコン24a、24bのアルミ膜25の間に、双方のアルミ膜25を相互に導通させる金属配線27を設けている。さらに、複数のアルミ膜25を金属配線(金属配線27および金属配線w2)によって相互に導通させるとともに、金属配線w2を介してウエハWの外周の一部に配置されたアース電極Waに導通させている。すなわち、ウエハW全面に亘って固定電極20a、20b、21a、21bとなる貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面に成膜したアルミ膜(第1の金属膜)25どうしが金属配線(金属配線27および金属配線w2)によって相互に導通されている。
【0047】
また、ガラス基板の表面にアルミ膜(上部固定板2aの表面における貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面以外の部位に第1の金属膜としてのアルミ膜25と離間するように成膜した第2の金属膜に相当)26を成膜する。このアルミ膜26は、ガラス基板表面における分断した際に加速度センサSの周縁部となる部位に成膜される。そして、このアルミ膜26は、ウエハWの外周を取り囲むように配置された電圧印加電極Wbに金属配線w1を介して導通されている。
【0048】
なお、アルミ膜25,アルミ膜26,金属配線27,金属配線w1および金属配線w2は、同時に成膜してもよいし、いずれかを先に成膜するようにしてもよい。
【0049】
また、シリコン基板1は、上述したように、金属配線w3を介してアースされている。
【0050】
かかる状態で、上部固定板2aのシリコン基板1との接合部(周縁部)に電圧印加電極Wbを介して電圧を印加して、上部固定板(固定側基板)2aとシリコン基板(可動体基板)1との間に電位差を設けることで、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1とを同電位にした状態で一括して陽極接合を行うことができる。
【0051】
すなわち、複数のアルミ膜25を金属配線(金属配線27および金属配線w2)によって相互に導通させることで、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとの陽極接合をウエハレベルで行うことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、電圧印加電極Wbからアルミ膜26に印加する電圧値を−600Vに設定したものを例示したが、電圧値は陽極接合する際の条件に応じて適宜設定することが可能である。
【0053】
また、下部固定板2b側は固定電極や可動電極が設けられない部分であるため、シリコン基板1と下部固定板2bとの陽極接合は従来の方法で行うことができるが、上部固定板2aと同様の方法で陽極接合を行ってもよい。
【0054】
そして、アルミ膜25、26や金属配線w1、w2、w3および金属配線27のうち、表面に残す部分にパターニングを行ってその他の部分を除去する。
【0055】
本来、アルミ膜25、26や金属配線w1、w2、w3および金属配線27は、陽極接合した後に除去されるものであるが、本実施形態では、アルミ膜25を残して、後ほど施行されるワイヤボンディングのパッドとして用いるようにしている。さらに、上部固定板2aの表面に、金属配線(金属配線27および金属配線w2)を残し、隣り合う貫通シリコン23a、23bのアルミ膜25の間、および隣り合う貫通シリコン24a、24bのアルミ膜25の間に、金属配線(金属配線27および金属配線w2)が形成されるようにしている。
【0056】
そして、ウエハレベルでの陽極接合を行った後に、個々のチップに分断することで複数の加速度センサSが製造される。
【0057】
こうして、可動電極4,5が形成されたシリコン基板(可動体基板)1と、可動電極4,5と対向する部位に両面が露出するようにシリコンを貫通させて形成した複数の貫通シリコン23a、23b、24a、24bを固定電極20a、20b、21a、21bとした上部固定板(固定側基板)2aと、貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面に成膜したアルミ膜(金属膜)25と、を備え、隣り合うアルミ膜25の間に金属配線(金属配線27および金属配線w2)が形成されている加速度センサ(静電容量式デバイス)Sが形成される。
【0058】
なお、残されたアルミ膜25をワイヤーボンディングパッドとして活用することで、固定電極20a、20bおよび固定電極21a、21bの電位を外部に取り出せるようになる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態では、上部固定板(固定側基板)2aとシリコン基板(可動体基板)1との間に電位差を設けるとともに、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1とを同電位にした状態で、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとの陽極接合を行っている。そのため、踏み潰し構造を用いることなく陽極接合を行うことが可能となる。その結果、接合部分に酸化膜が形成されて導通不良が生じてしまうのを抑制することができる上、踏み潰し部分に応力が作用してデバイス特性に影響を与えてしまうのを抑制することができる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、デバイス特性に影響を与えてしまうのを抑制することのできる加速度センサ(静電容量式デバイス)Sを得ることができる。
【0061】
また、アルミ膜(第1および第2の金属膜)25、26を用いて、上部固定板(固定側基板)2aとシリコン基板(可動体基板)1との間に電位差を設ける一方、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1とが同電位となるようにしたため、電圧の印加や同電位化をより確実に行うことができる。また、スパッタリングや蒸着法等MEMSデバイスに適した方法で成膜やパターニングを容易に行うことができるようになる。
【0062】
このとき、第1および第2の金属膜の材料としてアルミを用いれば、材料的にも安価なためコスト低減を達成することができる。このようなアルミ膜25、26によるパターニングは、ウエットエッチングおよびドライエッチング共に技術が確立されているため、加工がし易いという利点もある。特に、数μm程度の微細なMEMSデバイスパターン形成の際にアルミを用いるとより効果的である。
【0063】
また、本実施形態によれば、アルミ膜26、すなわち、上部固定板2aの表面における貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面以外の部位に第1の金属膜としてのアルミ膜25と離間するように成膜した第2の金属膜と、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとの最短距離aを、上部固定板2aの厚さbよりも大きくしている。
【0064】
そのため、上部固定板2aのアルミ膜26に電圧を印加した際に、貫通シリコン23a、23b、24a、24bの貫通部で接合反応が起こってしまうのが抑制され、積極的に上部固定板2aとシリコン基板1との接合部で接合反応を起こさせることができるようになる。すなわち、シリコン基板1と上部固定板2aの接合させたい部位における接合反応をより確実に起こすことができるようになる。
【0065】
また、本実施形態によれば、ウエハレベルで、シリコン基板(可動体基板)1と上部固定板(固定側基板)2aとの陽極接合を行っており、ウエハW全面に亘って固定電極20a、20b、21a、21bとなる貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面に成膜したアルミ膜(第1の金属膜)25どうしを金属配線(金属配線27および金属配線w2)によって相互に導通している。このように、複数の加速度センサSの陽極接合をウエハ上で一括して行うことで、デバイス特性に影響を与えてしまうのを抑制することのできる加速度センサSの生産性をより一層向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態にかかる加速度センサSは、アルミ膜(シリコン基板1と上部固定板2aとを陽極接合する際に、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板1とを同電位化するために貫通シリコン23a、23b、24a、24bの外側露出面に成膜した金属膜)25を備えている。すなわち、貫通シリコン23a、23b、24a、24bとシリコン基板(可動体基板)1との同電位化のために成膜したアルミ膜25をワイヤーボンディングパッドとして活用できるようにしている。
【0067】
そして、隣り合うアルミ膜25の間に金属配線(金属配線27および金属配線w2)が形成されるようにしている。
【0068】
その結果、ワイヤーボンディングのために再度金属膜などを成膜する必要がなくなり、パターニングやエッチング工程を省略することができ、工程の簡略化を図ることができる。
【0069】
この金属膜の材料としてアルミを用いれば、スパッタリングや蒸着法等MEMSデバイスに適した方法で成膜やパターニングを容易に行うことができる上、材料的にも安価なためコスト低減を達成することができる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、X方向とZ方向の2方向の加速度を検出する加速度センサを例示したが、錘部の1つをXY平面内で90度回転させて配置し、Y方向を加えた3方向の加速度を検出する加速度センサとしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、静電容量式デバイスとして加速度センサを例示したが、これに限ることなく、その他の静電容量式デバイスであっても本発明を適用することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、スルーホールを介して接地電極を外部に露出、配線させることで、接地電極の電位(可動電極の電位)を外部に取り出せるようにしたものを例示したが、スルーホールに貫通シリコンを形成し、当該貫通シリコンから接地電極の電位(可動電極の電位)を外部に取り出すようにしてもよい。こうすれば、ガラス埋込シリコン基板の製造が容易になる。
【0074】
また、可動電極や固定電極その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 シリコン基板(可動体基板)
2a 上部固定板(固定側基板)
4、5 可動電極
20a、20b、21a、21b 固定電極
23a、23b、24a、24b 貫通シリコン
25 アルミ膜(第1の金属膜:金属膜)
26 アルミ膜(第2の金属膜)
27 金属配線
S 加速度センサ(静電容量式デバイス)
a 金属膜と貫通シリコンとの最短距離
b 固体側基板の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極が形成された可動体基板と、前記可動電極に対向する固定電極が形成され、前記可動体基板に陽極接合される固定側基板と、を備える静電容量式デバイスの製造方法であって、
前記固定側基板の両面に露出するようにシリコンを貫通させて形成した貫通シリコンを前記固定電極とするとともに、前記可動体基板の少なくとも前記固定側基板に陽極接合される部位をシリコンで形成し、
前記貫通シリコンの外側露出面に第1の金属膜を成膜するとともに、前記固定側基板の表面における前記貫通シリコンの外側露出面以外の部位に、前記第1の金属膜と離間するように第2の金属膜を成膜し、
前記可動体基板と前記固定側基板とを陽極接合する際に、前記第1の金属膜および第2の金属膜を用いて、前記固定側基板と前記可動体基板との間に電位差を設ける一方、前記貫通シリコンと前記可動体基板とが同電位となるようにしたことを特徴とする静電容量式デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第2の金属膜と前記貫通シリコンとの最短距離を、前記固定側基板の厚さよりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の静電容量式デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属膜および第2の金属膜の材料がアルミであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電容量式デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記可動体基板と前記固定側基板との陽極接合はウエハレベルで行われ、
ウエハ全面に亘って前記固定電極となる貫通シリコンの外側露出面に成膜した第1の金属膜どうしが金属配線によって相互に導通されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の静電容量式デバイスの製造方法。
【請求項5】
可動電極が形成された可動体基板と、
前記可動電極と対向する部位に両面が露出するようにシリコンを貫通させて形成した複数の貫通シリコンを固定電極とした固定側基板と、
前記貫通シリコンの外側露出面に成膜した金属膜と、
を備える静電容量式デバイスであって、
隣り合う前記金属膜の間に金属配線が形成されていることを特徴とする静電容量式デバイス。
【請求項6】
前記金属膜の材料がアルミであることを特徴とする請求項5に記載の静電容量式デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156401(P2012−156401A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15796(P2011−15796)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】