説明

静電荷像現像用トナーおよびその製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置

【課題】記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像を形成すること。
【解決手段】有色トナーと透明トナーとが混合されてなり、前記有色トナーの含有率を(a)、透明トナーの含有率を(b)としたときの混合比率(質量比)[(a)/{(a)+(b)}]×100が、10質量%以上25質量%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーおよびその製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、並びに画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一定電位のドットが像保持体の表面に集まって静電荷像を形成し、画像形成領域における高濃度部と低濃度部とでは、ドット密度を変えることによって表現されていた。しかし、この方法では、高濃度部と低濃度部の光沢性に差が生じる要因となっていた。
【0003】
これを改善する目的で、高濃度部は濃い色のトナー(濃色トナー)、低濃度部はそれより濃度の薄いトナー(淡色トナー)を用いて画像を形成する方法が試されている。また、透明トナー層を有色トナー像と像保持体の間に形成することによって、記録媒体または中間転写体への転写性を向上させたり、記録媒体上で有色トナーの上に透明トナー層を形成して定着後の光沢性を向上さる技術が試されている。
【0004】
例えば、複数の有色トナー層を画像として転写体上に定着する過程を有する多色画像形成方法において、画像部および非画像部に透明トナー層を定着する過程を更に有する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、像保持体上に透明トナー像と有色トナー像とをこの順に重ね合わせて形成した後、一括して転写材上または中間転写体上に転写する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−175022号公報
【特許文献2】特開2003−173060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、
有色トナーと透明トナーとが混合されてなり、
前記有色トナーの含有率を(a)、透明トナーの含有率を(b)としたときの混合比率(質量比)[(a)/{(a)+(b)}]×100が、10質量%以上25質量%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記透明トナーが、核と、前記核の表面を覆い且つ透明トナーの粒径に対する厚みの比率が5%以上9%以下である被覆層と、を有することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0008】
請求項3に係る発明は、
少なくとも、樹脂粒子と離型剤粒子とを混合しヘテロ凝集させて核を形成する核形成工程と、
前記核形成工程の後に樹脂粒子を更に追添加し、前記核の表面に追添加された前記樹脂粒子を付着させ、追添加された前記樹脂粒子のガラス転移点以上の温度で合一融合させて被覆層を形成する被覆層形成工程と、を経て透明トナーを形成し、
前記透明トナーと有色トナーとを混合することによって製造すること特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
少なくとも請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーが含有されたことを特徴とする静電荷像現像剤である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
少なくとも請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーが収容されたことを特徴とするトナーカートリッジである。
【0011】
請求項6に係る発明は、
現像剤保持体を少なくとも備えると共に、請求項4に記載の静電荷像現像剤が収容されたことを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
該像保持体表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に画像情報に応じた静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を、濃色トナーを含む現像剤により現像し、更に該濃色トナーと同系色の淡色トナーであって、請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤により現像することにより現像像を形成する現像像形成手段と、
前記像保持体表面に形成された現像像を記録媒体表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体表面に転写された転写像を定着する定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、有色トナーと透明トナーとの混合比率を考慮しない場合に比べ、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像が形成される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、透明トナーにおける被覆層の厚みを考慮しない場合に比べ、有色トナーと透明トナーとの帯電挙動差が小さくなる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ光沢性に優れた画像が形成される静電荷像現像用トナーが容易に製造される。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像が形成される。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像が形成される静電荷像現像用トナーの供給を容易にし、上記特性の維持性が高められる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像が形成される静電荷像現像剤の取り扱いを容易にし、種々の構成の画像形成装置への適応性が高められる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像形成領域の低濃度部においても、記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、好ましい実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態:静電荷像現像用トナー>
第1実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「第1実施形態に係るトナー」と称す場合がある)は、有色トナーと透明トナーとが混合されてなり、前記有色トナーの含有率を(a)、透明トナーの含有率を(b)としたときの混合比率(質量比)[(a)/{(a)+(b)}]×100が、10質量%以上25質量%以下であることを特徴とする。
【0021】
(有色トナーと透明トナーとの混合比率)
従来においては、画像を形成する際の画像形成領域における低濃度部では、トナー自体の(面積あたりの)載り量を少なくする方法が用いられていた。しかし、トナーの密度が低いためにトナー載り量にむらが生じやすく、記録媒体(紙等)の隠蔽性を良好に保つことができずに光沢性が損なわれるという問題があった。これに対し、光沢性を改善する観点から、(1)高濃度部に濃色トナーを用いると共に低濃度部に同系色の淡色トナーを用いる方法や、(2)有色トナーにて形成した画像上に透明トナー層を形成し転写定着させる方法等が知られている。しかし、上記(2)の方法では、透明トナーの消費量が増えコストの面で好ましくない。また、上記(1)の方法では、光沢性の改善との観点で更なる向上が求められていた。
【0022】
これに対し本発明者らは、有色トナーと透明トナーとが混合されてなる静電荷像現像用トナーにおいて、有色トナーの含有率を制御することにより、画像形成領域における低濃度部であっても記録媒体(紙等)の隠蔽性を高めることができ、光沢性に優れた画像が形成されることを見出した。具体的には、まず、透明トナーと有色トナーとを混合することによって簡易に淡色トナーが製造される。該淡色トナーを低濃度部の形成用トナーとして用いることにより、有色トナーの粒子と共に透明トナーの粒子が層を形成するためトナー載り量を多くすることができ、記録媒体(紙等)の隠蔽性が向上し、光沢性に優れた画像が形成される。
【0023】
前述の通り、有色トナーの含有率を(a)、透明トナーの含有率を(b)としたときの混合比率(質量比)[(a)/{(a)+(b)}]×100は、10質量%以上25質量%以下に制御される。上記混合比率が10質量%より小さい場合、画像濃度に対するトナー載り量が多くなることで記録媒体(紙等)の隠蔽性は向上するものの、トナー厚みの増大により、トナーの溶融にむらが生じ、これが光沢度のむらとなって現れる。一方、上記混合比率が25質量%より大きい場合、画像濃度に対するトナー載り量が小さくなるため、低濃度部においては記録媒体(紙等)の隠蔽性が保たれず、高濃度部の光沢に差が生じてしまう。
【0024】
尚、上記混合比率は、更に14質量%以上23質量%以下であることが好ましく、18質量%以上21質量%以下であることが特に好ましい。
【0025】
ここで、完成品である第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーから、有色トナーの含有率(a)および透明トナーの含有率(b)を測定するには、以下の方法によって行うことができ、本明細書に記載の数値は以下の方法により求めたものである。
具体的な手法としては、第1実施形態に係るトナー粒子を溶解しないオイル等に分散させてスライドグラス上に塗布し、光学顕微鏡から画像解析装置(LUZEXIII:(株)ニレコ社製)に画像を取り込み、画像解析された該画像を用いて有色トナーと透明トナーとのそれぞれの個数を数えることにより、有色トナーの含有率(a)および透明トナーの含有率(b)が求められる。
【0026】
(透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率)
また、第1実施形態に係るトナーにおいては、前記透明トナーが、核(コア)と、前記核の表面を覆う被覆層(シェル)とを有し、且つ透明トナーの粒径に対する被覆層の厚みの比率が5%以上9%以下であることが好ましい。尚、ここでいう「透明トナーの粒径に対する被覆層の厚みの比率」とは、透明トナーの断面において、透明トナーの粒径の内被覆層の厚さが占める割合(即ち、「被覆層の膜厚×2」/「透明トナーの粒径」)をいう。
【0027】
また本発明者らの検討により、有色トナーと透明トナーとを混合して静電荷像現像用トナーを製造した場合に、両者の帯電の挙動に差が生じて、静電荷像現像用トナーとしての帯電性の制御が難しくなることが見出された。これに対し、透明トナーの被覆層(シェル)の厚みを前記範囲にすることにより、有色トナーと透明トナーとの帯電性の差が抑制され、静電荷像現像用トナーとしての帯電性の制御が容易になることを発見した。
【0028】
透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率が5%以上であることにより、核(コア)に内添されている離型剤の表面露出を低減することができるため、透明トナーの帯電量低下により過剰な現像によって生じる光沢むらが抑制される。一方9%以下であることにより、定着の際に、離型剤の溶出不足によって定着画像中に残留する離型剤による光沢むらが抑制される。
【0029】
尚、上記透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は、更に5%以上8%以下であることが好ましく、6%以上8%以下であることが特に好ましい。
【0030】
ここで、上記透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は、透過型電子顕微鏡にて得られた透明トナーの断面画像から測定することができる。1つの透明トナーの断面を観察した場合に該透明トナーの粒径(幅)が最大の箇所について測定を行い、20個の透明トナーについて測定した平均値を採用する。本明細書に記載の数値は、当該方法によって測定されたものである。
【0031】
また第1実施形態に係るトナーにおいては、更に、有色トナーと透明トナーとの帯電性の差を抑制し、静電荷像現像用トナーとしての帯電性の制御を容易にする観点から、下記の要件を備えることが好ましい。
透明トナーの被覆層の厚みは、核に内添されている離型剤の表面露出を抑制しつつ、該被覆層の厚みを薄くすることによって、透明トナーと有色トナーとの帯電挙動差を小さくすることができる。また、有色トナーの樹脂種を変更することによって核に内添されている着色剤、離型剤の影響を抑制し、透明トナーと有色トナーとの帯電挙動差を小さくすることができる。
【0032】
ここでいう透明トナーとは、可視光を吸収する度合いが小さいトナーを表し、具体的には、着色剤を含有していない粒子を指し、透明トナーのみで定着した場合の画像濃度が0.2以下(トナー載り量0.5g/m)であるトナーを表す。一方、有色トナーとは、上記透明トナー以外のトナーを表す。
尚、上記画像濃度は、反射計X−Rite(X−Rite社製404)により測定され、本明細書に記載の数値は当該方法によって測定されたものである。
【0033】
また、前記濃色トナーおよび淡色トナーとは、記録媒体上のトナー量が同じ場合の画像濃度が高いトナーが濃色トナー、画像濃度が低いトナーが淡色トナーである。
具体的な濃色トナーとしては、記録媒体としてJ紙(FujiXerox社製)を用いた場合に、記録媒体上のトナー量が0.5g/mの場合の画像濃度が1.2以上であるトナーが好ましく、画像濃度が1.5以上が更に好ましい。
一方、淡色トナーとしては、記録媒体としてJ紙(FujiXerox社製)を用いた場合に、記録媒体上のトナー量が0.5g/mの場合の画像濃度が1.0未満が好ましく、0.8未満が更に好ましい。
尚、上記濃色トナーおよび淡色トナーにおける画像濃度の測定は、前述の透明トナーおよび有色トナーにおける画像濃度の測定方法として記載されてた方法が適用できる。
【0034】
また、ここでいう同系色とは物体色の3原色(イエロー、マジェンタ、シアン)や黒色のトナーを用いて色空間を表現する場合の、イエロー系統の色、マジェンタ系統の色、シアン系統の色、黒色系統の色を意味しており、厳密な色表現数値(例えばCIElab表現系の場合のLの値、XYZ表色系のXYZの値)が同一であることに限定されない。
【0035】
(トナーの組成)
以下、第1実施形態に係るトナーの組成等に関しより詳細に説明する。
第1実施形態に係るトナーは有色トナーと透明トナーとを混合してなり、更には、前述の通り、透明トナーにおいてはその被覆層(シェル)の厚みを前述の範囲に制御することが好ましい。
尚、有色トナーとしては着色剤を含有したトナーを用いることが好ましく、一方、透明トナーとしては着色剤を含有しないトナーを用いることが好ましい。
【0036】
上記有色トナーおよび透明トナーの構成としては、公知のトナーを用いることができる。これらのトナーの組成としては例えば、結着樹脂を用いることが好ましく、更に有色トナーには着色剤を含有することが好ましい。
【0037】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に代表的な結着樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン等が挙げられる。
【0038】
また結晶性の結着樹脂を用いることができ、該結着樹脂としては、結晶性を持つ樹脂であれば特に制限はなく、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂が挙げられるが、定着時の紙への接着性や帯電性、及び好ましい範囲での融点調整の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。また、適度な融点をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0039】
前記結晶性ビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。尚、本明細書において、”(メタ)アクリル”なる記述は、”アクリル”および”メタクリル”のいずれをも含むことを意味するものである。
【0040】
一方前記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、本明細書において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。本明細書において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0041】
・酸由来構成成分
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。直鎖型のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。中でも、炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジカルボン酸を、酸構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
【0042】
その他のモノマーとしては、特に限定は無く、例えば、高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているモノマー成分である、従来公知の2価又のカルボン酸と、2価のアルコールがある。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれていても良い。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、トナー母粒子を粒子に作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸の含有量は0.1から2.0mol%であることが好ましく、0.2から1.0mol%であることが好ましい。尚、本明細書において「構成mol%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)をそれぞれ1単位(mol)したときの百分率を指す。
【0044】
・アルコール由来構成成分
アルコール構成成分としては脂肪族ジアルコールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられ、中でも炭素数6から10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジアルコールを、アルコール構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
【0045】
その他の2価のジアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド又は(及び)プロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールや、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど3価のアルコールも使用することができる。
【0047】
前記ポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分の中から任意の組合せで、例えば、重縮合(化学同人)、高分子実験学(重縮合と重付加:共立出版)やポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社編)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は組み合せて用いることができる。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のmol比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、直接重縮合の場合は通常1/1程度、エステル交換法の場合は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど真空下で脱留可能なモノマー過剰に用いる場合が多い。前記ポリエステル樹脂の製造は、通常、重合温度180℃以上250℃以下でおこなわれ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と供に重縮合させるとよい。
【0048】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。この中で、帯電性の観点からスズ系触媒、チタン系触媒が好ましく、中でも、ジブチルスズオキシドが好ましく用いられる。
【0049】
第1実施形態に係るトナーにおける結晶性ポリエステル樹脂の融点は50℃以上120℃以下であることが好ましく、更には60℃以上110℃以下がより好ましい。
尚、第1実施形態に係るトナーにおいて、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温(20℃)から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。尚、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、最大のピークをもって融点とみなす。
【0050】
−着色剤−
前述の通り、有色トナーには着色剤を含有させることが好ましい。
着色剤としては、特に制限はないが例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デユポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0051】
前記有色トナーにおける含有量は、着色剤の種類によって異なるが、3.0質量%以上10質量%以下が好ましい。。
【0052】
−その他の添加剤−
第1実施形態に係るトナーには、必要に応じて離型剤を含有してもよい。離型剤としては、例えば、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン等のパラフィンワックス;シリコーン樹脂;ロジン類;ライスワックス;カルナウバワックス;等が挙げられる。これらの離型剤の融点は50℃以上100℃以下が望ましく、60℃以上95℃以下がより望ましい。離型剤のトナー中の含有量は0.5質量%以上15質量%以下が望ましく、1.0質量%以上12質量%以下がより望ましい。
【0053】
第1実施形態に係るトナーには、上記成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)、有機粒子等の種々の成分を添加することができる。
内添剤としては有色トナーに、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、またはこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
【0054】
無機粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ粒子が好ましく用いられる。また、シリカ粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0055】
(静電荷像現像用トナーの製造方法)
第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、有色トナーと透明トナーとをそれぞれ製造した後、混合することによって製造することができる。
尚、有色トナーは、従来公知の乾式製法や湿式製法によって製造することでき、湿式製法として、乳化凝集法、溶融懸濁法、溶解懸濁法等が挙げられる。この中でも、乳化凝集法が望ましい。
【0056】
また、透明トナーも、従来公知の乾式製法や湿式製法によって製造することできるが、湿式製法として、乳化凝集法、溶融懸濁法、溶解懸濁法等が好ましく、乳化凝集法が特に望ましい。また、透明トナーにおいては、核と前記核の表面を覆う被覆層とを有し、且つ透明トナーの粒径に対する被覆層の厚みの比率が5%以上9%以下となるよう製造することが好ましい。
【0057】
以上の観点から第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、特に限定されるものではないが、少なくとも、樹脂粒子と離型剤粒子とを混合しヘテロ凝集させて核を形成する核形成工程と、前記核形成工程の後に樹脂粒子を更に追添加し、前記核の表面に追添加された前記樹脂粒子を付着させ、追添加された前記樹脂粒子のガラス転移点以上の温度で合一融合させて被覆層を形成する被覆層形成工程と、を経て透明トナーを形成し、前記透明トナーと有色トナーとを混合することによって製造することが好ましい。
【0058】
以下においては、まずトナーを作製する乳化凝集法について説明する。
乳化凝集法とは、トナーに含まれる成分(結着樹脂、着色剤等)を含む分散液(乳化液、顔料分散液等)をそれぞれ調製し、これらの分散液を混合してトナー成分同士を凝集(ヘテロ凝集)させて凝集粒子を作り、その後凝集粒子を結着樹脂の融点またはガラス転移温度以上に加熱して凝集粒子を熱融合させる方法である。
【0059】
乳化凝集法は、少なくとも、トナーを構成する原料を乳化して樹脂粒子(乳化粒子)を形成する乳化工程と、該樹脂粒子をヘテロ凝集させての凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を融合させる融合工程とを有する。以下、乳化凝集法によるトナーの製造工程の一例について、工程別に説明する。
【0060】
−乳化工程−
前記乳化液の作製法としては転相乳化法、溶融乳化法などが挙げられる。
転相乳化法では、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性の有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(Oil相;O)に塩基を加えて、中和する。その後、水系媒体(Water相;W)を投入することによって、Water in Oil(W/O)の系を、Oil in Water(O/W)の系にすることで、有機連続相に存在した樹脂を不連続相に転相する。これによって、樹脂を、水系媒体中に粒子状に分散安定化し、乳化液を作製することができる。
溶融乳化法では、水系媒体と樹脂とを混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより乳化液を作製することができる。その際、加熱して樹脂成分の粘性を下げることにより、粒子を形成することができる。また分散した樹脂粒子を安定化するため、分散剤を使用することもできる。さらに、樹脂が油性であり、水への溶解度の比較的低いものである場合には、樹脂の溶解する溶剤に解かして水中に分散剤や高分子電解質と共に粒子分散し、その後加熱または減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子を分散した乳化液を作製することができる。
【0061】
前記溶融乳化法による乳化液の分散に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0062】
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられるが、水のみであることが望ましい。
【0063】
また、乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。これらの内、洗浄の容易性や環境適正の観点からアニオン界面活性剤が一般的である。
【0064】
前記乳化工程における乳化液に含まれる樹脂粒子の含有量は、10質量%以上50質量%以下の範囲とすることが望ましく、より望ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲である。前記含有量が10質量%以上あれば、粒度分布が過度に広がらず、トナー特性の悪化を防止することができる。また50質量%以下であれば、ばらつきのない攪拌をすることができ、粒度分布の狭い、特性の揃ったトナーを得ることができる。
【0065】
樹脂粒子の大きさとしては、その平均粒径(体積平均粒径)で0.08μm以上0.8μm以下の範囲が望ましく、0.09μm以上0.6μm以下がより望ましく、0.10μm以上0.5μm以下がさらに望ましい。
【0066】
次に説明する凝集工程に入る前に、結着樹脂以外のトナー成分である離型剤(さらに有色トナーの製造の際には着色剤)等を分散させた分散液も作製しておくとよい。
また、結着樹脂、着色剤等の各成分に対応して分散液を調製する方法だけでなく、例えば、ある成分の乳化液を調製する際、溶媒に他の成分を添加して2以上の成分を共に乳化し、分散粒子中に複数の成分が含まれるようにしてもよい。
【0067】
−凝集工程−
凝集工程においては、前記乳化工程で得た結晶性樹脂粒子や非晶性樹脂粒子等の結着樹脂粒子の分散液、ならびに、離型剤分散液(さらに有色トナーの製造の際には着色剤分散液)等を混合して混合液とし、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する(こうして形成された凝集粒子がコアシェル構造を有する場合の核(コア)に相当する/核形成工程)。凝集粒子の形成は、攪拌下、混合液のpHを酸性にすることによって行う。pHとしては、2以上7以下の範囲が望ましく、2.2以上6以下の範囲がより望ましく、2.4以上5以下の範囲がさらに望ましい。
【0068】
凝集粒子を形成する際に、凝集剤を使用することも有効である。凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に望ましい。
【0069】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0070】
また、前記凝集粒子が所望の粒径になったところで、樹脂粒子分散液を追添加することで、コア凝集粒子の表面を結着樹脂で被覆して被覆層を形成した構成のトナーを作製してもよい(こうして形成された被覆層がコアシェル構造を有する場合の被覆層(シェル)に相当する/被覆層形成工程)。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。
【0071】
−融合工程−
融合工程においては、前記凝集工程に準じた攪拌条件下で、凝集粒子の懸濁液のpHを4以上8以下の範囲に上昇させることにより凝集の進行を止め、結着樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子を融合させる。pHを上昇させるために使用するアルカリ溶液としてはNaOH水溶液が好ましい。
【0072】
前記加熱の時間としては、融合がされる程度に時間をかければよく、0.5時間以上10時間以下が好ましい。凝集粒子の融合後に冷却し、融合粒子を得る。また冷却の工程で、離型剤やポリエステル樹脂の融点付近(融点±10℃の範囲)で冷却速度を上げる、いわゆる急冷をすることで離型剤やポリエステル樹脂の再結晶化を抑制して表面露出を抑制してもよい。
【0073】
以上の工程を経て、融合粒子としてトナーを得ることができる。融合して得た融合粒子(トナー)は、後述するように、ろ過などの固液分離工程を経て洗浄を行うこと好ましい。トナー洗浄後は、固液分離したトナーを、凍結真空乾燥機や棚段乾燥機、熱風乾燥機等で乾燥を行う。乾燥後のトナーの含水率は1.5質量%以下が好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましい。
【0074】
−混合工程−
上記乳化凝集法によって作製した有色トナーと透明トナーとを、有色トナーの含有率を(a)、透明トナーの含有率を(b)としたときの混合比率(質量比)[(a)/{(a)+(b)}]×100が、10質量%以上25質量%以下となるように混合することによって、第1実施形態に係るトナーが製造される。尚、前述の無機粒子等の添加剤は、混合する前の有色トナーおよび透明トナーに添加してもよく、混合した後の有色トナーおよび透明トナーに添加してもよい。
【0075】
(トナーの特性)
第1実施形態に係るトナーの好ましい体積平均粒径(有色トナーと透明トナーとを混合した後における体積平均粒径)は2.0μm以上10.0μm以下であり、更には4.0μm以上7.0μm以下である。
【0076】
ここで、トナーの体積平均粒径は、少なくとも5000個のトナーに対して、Sysmex社製FPIA−2100を用いて、HPFモード(高分解能モード)、希釈倍率1.0倍の条件で測定することにより求める。
Sysmex社製FPIA−2100は、水などに分散させた粒子をフロー式画像解析法によって測定する方式を採用したもので、吸引された粒子懸濁液をフラットシースフローセルに導き、シース液によって偏平な試料流に形成する。その試料流にストロボ光を照射することにより、通過中の粒子は対物レンズを通してCCDカメラで、静止画像として撮像する。撮像された粒子像は、2次元画像処理され、投影面積と周囲長から円相当径を算出する。円相当径は、撮影された各々の粒子に対して、2次元画像の面積から同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。このように撮影した粒子を各々画像解析し、統計処理することによって、体積平均粒径を求めるものである。
【0077】
(第2実施形態:静電荷像現像剤)
前記第1実施形態に係るトナーは、単独で用いてもよく(一成分系の現像剤)、キャリアと共に二成分系の現像剤として用いてもよい。なお、一成分系の現像剤の場合には、磁性金属粒子を含むトナーが用いられる。
例えばキャリアを用いる場合のそのキャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は、30μm以上200μm以下の範囲である。
【0078】
また、上記樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー;などの単独重合体、または2種類以上のモノマーからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲がより好ましい。
【0079】
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用することができ、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用することができる。
静電荷像現像剤における前記第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて選択することができる。
【0080】
(第3実施形態:画像形成装置)
前記第1実施形態に係るトナーは、特に限定されるものではないが、画像形成領域における高濃度部の現像に用いる濃色トナーと、同系色の画像形成領域の低濃度部に用いる淡色トナーと、を用いる画像形成装置における淡色トナーとして、特に好適に用いられる。
【0081】
即ち、第3実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、該像保持体表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記像保持体の表面に画像情報に応じた静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を、濃色トナーを含む現像剤により現像し、更に該濃色トナーと同系色の淡色トナーであって、第1実施形態に係る静電荷像現像用トナーを含む現像剤により現像することにより現像像を形成する現像像形成手段と、前記像保持体表面に形成された現像像を記録媒体表面に転写する転写手段と、前記記録媒体表面に転写された転写像を定着する定着手段と、を有することを特徴とする。
【0082】
尚、前記濃色トナーとしては、公知のトナーを用いることができる。前記濃色トナーおよび淡色トナーは同系色であり、同じ着色剤を用いることが好ましい。但し、既述の同系色の定義を満たせば、前記濃色トナーおよび淡色トナーが異なる着色剤を用いてもよく、その場合の顔料種の組み合わせとしては、トナー中の着色剤含有量が同一、記録媒体上のトナー量が同じ場合には、CIElab表現での式差ΔEが30以下、好ましくは10以下となるように顔料を組み合わせることができる。
【0083】
以下、第3実施形態に係る画像形成装置を図を用いて説明する。
図1は、第3実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略模式図であり、いわゆるタンデム型の画像形成装置について示したものである。
図1中、21は本体ハウジング、22a〜22hは作像エンジン、23はベルトモジュール、24は記録媒体供給カセット、25は記録媒体搬送路、30は各感光体ユニット、31は感光体ドラム(像保持体)、32は帯電装置(帯電手段)、33は各現像ユニット(現像手段)、34はクリーニング装置(クリーニング手段)、35a〜35hはトナーカートリッジ、40は露光ユニット、41はユニットケース、42はポリゴンミラー、51は一次転写装置(転写手段)、52は二次転写装置(転写手段)、53はベルトクリーニング装置、61はフィードロール、62はテイクアウェイロール、63はレジストロール、66は定着装置(定着手段)、67は排出ロール、68は排出部、71は手差し供給装置、72はフィードロール、73は両面記録用ユニット、74は案内ロール、76は搬送路、77は搬送ロール、230は中間転写ベルト、231、232は張架ロール、521は二次転写ロール、531はクリーニングブレードを表す。
【0084】
図1に示すタンデム型画像形成装置は、本体ハウジング21内に八種の現像剤(本例ではブラック、イエロー、マゼンタ、シアンそれぞれについて、同系色の濃色トナー及び淡色トナーを含む現像剤)の作像エンジン(具体的には22a〜22h)を横方向に配列し、その上方には各作像エンジンの配列方向に沿って循環搬送される中間転写ベルト230が含まれるベルトモジュール23を配設する一方、本体ハウジング21の下方には用紙等の記録媒体(図示せず)が収容される記録媒体供給カセット24を配設すると共に、この記録媒体供給カセット24からの記録媒体の搬送路となる記録媒体搬送路25を垂直方向に配置したものである。
【0085】
図1に示すタンデム型画像形成装置において、各作像エンジン(22a〜22h)は、中間転写ベルト230の循環方向上流側から順に、例えばブラック(濃色、淡色)用、イエロ(濃色、淡色)用、マゼンタ(濃色、淡色)用、シアン(濃色、淡色)用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、各感光体ユニット30と、各現像ユニット33と、共通する一つの露光ユニット(静電荷像形成手段)40とを備えている。
ここで、感光体ユニット30は、例えば感光体ドラム(像保持体)31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電装置32と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーニング装置(クリーニング手段)34とを一体的にサブカートリッジ化したものである。
【0086】
また、現像ユニット33は、帯電された感光体ドラム31上に露光ユニット40にて露光形成された静電荷像を対応する色トナー(本実施の形態では例えば負極性)で現像するものであり、例えば感光体ユニット30からなるサブカートリッジと一体化されてプロセスカートリッジ(所謂CRU:Customer Replaceable Unit)を構成している。
尚、感光体ユニット30を現像ユニット33から切り離して単独のCRUとしてもよいことは勿論である。また、図1中、35a〜35hは各現像ユニット33に各色成分トナー(濃色トナーおよび既述の第1実施形態に係る淡色トナー)を補給するためのトナーカートリッジである(トナー補給経路は図示せず)。
【0087】
一方、露光ユニット40は、ユニットケース41内に例えば四つの半導体レーザ(図示せず)、一つのポリゴンミラー42、結像レンズ(図示せず)及び各感光体ユニット30に対応するそれぞれのミラー(図示せず)を格納し、各色成分毎の半導体レーザからの光をポリゴンミラー42で偏向走査し、結像レンズ、ミラーを介して対応する感光体ドラム31上の露光ポイントに光像を導くようにしたものである。
【0088】
また、図1に示すタンデム型画像形成装置において、ベルトモジュール23は、例えば一対の張架ロール(一方が駆動ロール)231,232間に中間転写ベルト230を掛け渡したものであり、各感光体ユニット30の感光体ドラム31に対応した中間転写ベルト230の裏面には一次転写装置(本例では一次転写ロール)51が配設され、この一次転写装置51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像を中間転写ベルト230側に静電的に転写するようになっている。更に、中間転写ベルト230の最下流作像エンジン22hの下流側の張架ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写ベルト230上の一次転写像を記録媒体に二次転写(一括転写)するようになっている。
【0089】
図1に示すタンデム型画像形成装置では、二次転写装置52は、中間転写ベルト230のトナー像保持面側に圧接配置される二次転写ロール521と、中間転写ベルト230の裏面側に配置されて二次転写ロール521の対向電極をなすバックアップロール(図1では張架ロール232を兼用)とを備えている。そして、例えば二次転写ロール521が接地されており、また、バックアップロール(張架ロール232)にはトナーの帯電極性と同極性のバイアスが印加されている。
更にまた、中間転写ベルト230の最上流作像エンジン22aの上流側にはベルトクリーニング装置53が配設されており、中間転写ベルト230上の残留トナーを除去するようになっている。
【0090】
また、記録媒体供給カセット24には記録媒体をピックアップするフィードロール61が設けられ、このフィードロール61の直後には記録媒体を送出するテイクアウェイロール62が配設されると共に、二次転写部位の直前に位置する記録媒体搬送路25には記録媒体を所定のタイミングで二次転写部位へ供給するレジストレーションロール(レジストロール)63が配設されている。一方、二次転写部位の下流側に位置する記録媒体搬送路25には定着装置66が設けられ、この定着装置66の下流側には記録媒体排出用の排出ロール67が設けられており、本体ハウジング21の上部に形成された排出部68に排出記録媒体が収容されるようになっている。
【0091】
更に、図1に示すタンデム型画像形成装置では、本体ハウジング21の側方には手差し供給装置(MSI)71が設けられており、この手差し供給装置71上の記録媒体はフィードロール72及びテイクアウェイロール62にて記録媒体搬送路25に向かって送出されるようになっている。
更にまた、本体ハウジング21には両面記録用ユニット73が付設されており、この両面記録用ユニット73は、記録媒体の両面に画像記録を行う両面モード選択時に、片面記録済みの記録媒体を排出ロール67を逆転させ、かつ、入口手前の案内ロール74にて内部に取り込み、搬送ロール77にて内部の記録媒体戻し搬送路76に沿って記録媒体を搬送し、再度レジストロール63側へと供給するものである。
【0092】
また、第3実施形態に係る画像形成装置は、淡色トナー供給手段を有する。淡色トナー供給手段は後述する淡色トナー供給工程に用いるもので、現像ユニット33が、淡色トナーをトナー像の形成に用いられない場合でも、感光体ドラム31表面に供給することにより、淡色トナー供給手段として機能する。この淡色トナー供給手段を機能させることにより、高いハイライト領域の階調再現性を維持する。
【0093】
次に、図1を用いて、第3実施形態に係る画像形成方法を説明する。
まず、各作像エンジン(22a〜22h)において、感光体ドラム31の回転に伴い、帯電装置32により感光体ドラム31表面を帯電し(帯電工程)、露光ユニット40により帯電された感光体ドラム31表面に各色の画像情報に応じた静電荷像を形成し(静電荷像形成工程)、この静電荷像が形成された感光体ドラム31表面に、前記静電荷像の色情報に応じて現像ユニット33からトナーを供給することによりトナー像を形成(現像)する(現像工程)。
【0094】
次に、感光体ドラム31に形成されたトナー像は、不図示の電源により、一次転写装置51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像が中間転写ベルト230側に静電的に転写される。更に、不図示の電源により、二次転写装置52にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、中間転写ベルト230上の一次転写像を記録媒体に二次転写(一括転写)する(転写工程)。
このようにしてトナー像がその表面に転写された記録媒体は、定着装置66を通過するさいに、トナー像が記録媒体111表面に定着され(定着工程)、画像が形成される。
【0095】
一方、トナー像を中間転写ベルト230に転写した感光体ドラム31の表面は、不図示の除電ランプから光が照射されることにより除電され、さらに前記表面に残留しているトナーは、クリーニング装置34によって除去される(クリーニング工程)。
【0096】
<第4実施形態:トナーカートリッジ>
次に、第4実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。第4実施形態に係るトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収納し、該トナーが第1実施形態に係るトナーを含む。
【0097】
従って、トナーカートリッジの着脱が可能な構成を有する画像形成装置においては、第1実施形態に係るトナーを収納したトナーカートリッジを利用することにより、長期に渡って現像、転写性が良好に安定し、ハイライト領域の高い階調再現性を維持することができる。
【実施例】
【0098】
以下に実施例および比較例をもって説明する。ただし下記の実施例および比較例によって本発明が限定されるものではない。尚、以下の実施例において、特にことわらない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0099】
(トナーの作製)
[樹脂分散液の調製]
−樹脂(1)の作製−
まず、樹脂(1)を作製した。
加熱乾燥した3口フラスコに、1,10−デカンジオール120.0部と、5−スルホイソフタル酸ナトリウムジメチル80.0部と、ジメチルスルホキシド4部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.02部と、を入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスで不活性雰囲気下とし、機械攪拌にて180℃で3時間攪拌を行った。減圧下、ジメチルスルホキシドを留去し、窒素気流下、ドデカンジオイック酸ジメチル23.0部を加え、180℃で1時間攪拌を行った。その後、減圧下にて220℃まで徐々に昇温を行い30分間攪拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、結晶性ポリエステル樹脂を合成した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は20000であった。また樹脂(1)の融点(Tm)を、前述の測定方法により、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は75℃であった。
【0100】
−樹脂分散液(1)の調製−
上記樹脂(1)を用いて、樹脂分散液(1)を調製した。
まず、上記樹脂(1)をハンマーミルで粗粉砕した。攪拌動力を与えるアンカー翼、還流装置、および真空ポンプによる減圧装置の備えられた2Lセパラブルフラスコに、酢酸エチル50部、IPA(イソプロピルアルコール)110部を添加し、Nを0.2L/mの速度で早期し、系内の空気をNで置換した。次いで、系内オイルバス装置により60℃に加熱しながら、粗粉砕された結晶性ポリエステル樹脂(1)200部をゆっくりと添加し攪拌しながら溶解させた。ついで、これに10%アンモニア水20部を添加したのち、定量ポンプを用い、攪拌しながらこれにイオン交換水460部を9.6g/mの速度で投入した。乳化系内が乳白色を呈し、且つ攪拌粘度が低下した時点を乳化終了とした。
ついで、これを−700Torrまで減圧し40分攪拌した。更にこれに60℃の純水50部を添加し、20分減圧下攪拌を継続した。還流量が210部に達した際、これを終点とし、加熱をやめ攪拌しながら常温(24℃)まで冷却した。得られた樹脂粒子の粒度をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行ったところ、得られた乳化樹脂粒子の平均粒径は202nmであった。また、この樹脂のKOH滴定による酸価は10mmKOH/gであった。
【0101】
−樹脂(2)の作製−
まず、樹脂(2)を作製した。
加熱乾燥した3口フラスコに、
・ナフタレンジカルボン酸ジメチル 112部
・テレフタル酸ジメチル 97部
・ビスフェノールA−EO付加物 221部
・エチレングリコール 80部
・テトラブトキシチタネート 0.07部
を仕込み170℃以上220℃以下で180分間加熱してエステル交換反応を行った。次いで、220℃において系の圧力を1mmHg以上10mmHg以下として60分間反応を続け、非結晶性ポリエステル樹脂(2)を得た。該樹脂(2)のガラス転移温度は65℃であった。
【0102】
−樹脂分散液(2)の作製−
上記樹脂(2)を用いて、樹脂分散液(2)を調製した。
まず、上記樹脂(2)ハンマーミルで粗粉砕した。攪拌動力を与えるアンカー翼、還流装置、および真空ポンプによる減圧装置の備えられた2Lセパラブルフラスコに、酢酸エチル75部、IPA(イソプロピルアルコール)160部を添加し、Nを0.2L/mの速度で早期し、系内の空気をNで置換した。次いで、系内オイルバス装置により60℃に加熱しながら、粗粉砕された非結晶性ポリエステル樹脂(2)200部をゆっくりと添加し攪拌しながら溶解させた。ついで、これに10%アンモニア水20部を添加したのち、定量ポンプを用い、攪拌しながらこれにイオン交換水460部を9.6g/mの速度で投入した。乳化系内が乳白色を呈し、且つ攪拌粘度が低下した時点を乳化終了とした。
ついで、これを−700Torrまで減圧し40分攪拌した。更にこれに60℃の純水50部を添加し、20分減圧下攪拌を継続した。還流量が210部に達した際、これを終点とし、加熱をやめ攪拌しながら常温(20℃)まで冷却した。得られた樹脂粒子の粒度をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行ったところ、得られた乳化樹脂粒子の平均粒径は151nmであった。また、この樹脂のKOH滴定による酸価は10mmKOH/gであった。
【0103】
−着色剤分散液(1)の調製−
以下の方法により着色剤分散液(1)を調製した。
・シアン顔料(銅フタロシアニンB15:3/大日精化製) 65部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5部
・イオン交換水 200部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により30分間分散し、中心粒径168nm、固形分20%の着色剤分散液(1)を得た。
【0104】
−離型剤分散液(1)の調製−
以下の方法により離型剤分散液(1)を調製した。
・パラフィンワックスFNP92(融点91℃、日本精蝋社製) 80部
・カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5部
・イオン交換水 200部
以上を75℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径170nm、固形分量25%のワックス分散液を得た。
【0105】
−有色トナー(A1)の製造−
・樹脂分散液(1):14部
・樹脂分散液(2):40部
・着色剤分散液(1):6部
・離型剤分散液(1):8部
・ポリ塩化アルミニウム:0.4部
以上の成分352gを丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら46℃まで加熱し、46℃で60分間保持して凝集粒子分散液を調製した。その後、樹脂分散液(1)を32部追加し、30分間保持して、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して系内のpHを5.4に調整した後、攪拌を継続しながら96℃まで加熱して5時間保持した。反応終了後、冷却、濾過しヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これをさらに40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分間450rpmで攪拌した後に固液分離を施し、これをさらに5回繰り返した。次いで真空乾燥を12時間継続して有色トナー(A1)を得た。
有色トナー(A1)の体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布は1.25、円形度は0.964であった。
【0106】
−透明トナー(B1)の製造−
・樹脂分散液(1):20部
・樹脂分散液(2):51部
・離型分散液(1):9部
・ポリ塩化アルミニウム:0.42部
以上の成分288gを丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら45℃まで加熱し、45℃で70分間保持して凝集粒子分散液を調製した。その後、樹脂分散液(2)を20部追加し、30分間保持して、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して系内のpHを6.4に調整した後、攪拌を継続しながら96℃まで加熱して3.5時間保持した。反応終了後、冷却、濾過しヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これをさらに40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分間450rpmで攪拌した後に固液分離を施し、これをさらに5回繰り返した。次いで真空乾燥を11時間継続して透明トナー(B1)を得た。
透明トナー(B1)の体積平均粒径は5.9μm、体積平均粒度分布は1.23、円形度は0.960であった。また、透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は7.2%であった。
【0107】
−透明トナー(B2)の製造−
透明トナー(B1)に使用した材料を用い、凝集粒子分散液を調製した後に、樹脂分散液(2)を12部追加した以外は、透明トナー(B1)に記載の方法により製造し透明トナー(B2)を得た。
得られた透明トナー(B2)の体積平均粒径は6.1μm、体積平均粒度分布は1.24、円形度は0.960であった。また、透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は4%であった。
【0108】
−透明トナー(B3)の製造−
透明トナー(B1)に使用した材料を用い、凝集粒子分散液を調製した後に、樹脂分散液(2)を15部追加した以外は、透明トナー(B1)に記載の方法により製造し透明トナー(B3)を得た。
得られた透明トナー(B3)の体積平均粒径は5.8μm、体積平均粒度分布は1.23、円形度は0.960であった。また、透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は5%であった。
【0109】
−透明トナー(B4)の製造−
透明トナー(B1)に使用した材料を用い、凝集粒子分散液を調製した後に、樹脂分散液(2)を25部追加した以外は、透明トナー(B1)に記載の方法により製造し透明トナー(B4)を得た。
得られた透明トナー(B4)の体積平均粒径は5.9μm、体積平均粒度分布は1.23、円形度は0.962であった。また、透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は9%であった。
【0110】
−透明トナー(B5)の製造−
透明トナー(B1)に使用した材料を用い、凝集粒子分散液を調製した後に、樹脂分散液(2)を29部追加した以外は、透明トナー(B1)に記載の方法により製造し透明トナー(B5)を得た。
得られた透明トナー(B5)の体積平均粒径は6.0μm、体積平均粒度分布は1.23、円形度は0.961であった。また、透明トナーの粒径に対する被覆層(シェル)の厚みの比率は10.8%であった。
【0111】
〔実施例1〕
−静電荷現像用トナー(1)の製造−
上記有色トナー(A1)および透明トナー(B1)をそれぞれ下記表1に記載の割合で混合した。その後、該混合物50gに対して外添剤として疎水性シリカ(キャボット製、TS720)1.5gを添加し、サンプルミルにて10分間/12000rpmで混合した。さらに超音波振動篩(ダルトン社製)にかけてトナー(1)を得た。
【0112】
(現像剤の作製)
以下の方法によりキャリアを製造した。
フェライト粒子(パウダーテック社製、体積平均粒径:50μm)100部とスチ
レン−メタクリル酸メチル共重合樹脂(三菱レイヨン社製:BR−52、分子量:850
00)2.4部とを、トルエン400部と共に加圧式ニーダーに入れ、常温(28℃)で15分間攪拌混合した後、減圧混合しながら70℃まで昇温し、トルエンを留去した後冷却し、105μmの篩を用いて分粒することにより、フェライトキャリア(樹脂被覆キャリア)を作製した。
【0113】
前記トナー(1)と上記キャリアとを各々混合し、トナー濃度が5質量%となるように秤量し、ボールミルで5分間混合し、その後、孔径106μmのメッシュで篩分して実施例1の現像剤を作製した。
【0114】
〔実施例2〜5〕
実施例1において、有色トナー(A1)および透明トナー(B1、B3、B4)の混合割合を下記表1に記載の割合に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりトナーおよび現像剤を得た。
【0115】
〔比較例1〜2〕
実施例1において、有色トナー(A1)および透明トナー(B1)混合割合を下記表1に記載の割合に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりトナーおよび現像剤を得た。
【0116】
〔実施例6〜7〕
実施例1において、有色トナー(A1)および透明トナー(B2、B5)混合割合を下記表1に記載の割合に変更した以外は、実施例1に記載の方法によりトナーおよび現像剤を得た。
【0117】
【表1】

【0118】
[トナーの評価]
上記より得たトナーをカラー複写機DocuCentreColor400(富士ゼロックス社製)改造機(有色トナーA1を含む現像剤と、透明トナーおよび有色トナーA1を含む現像剤(即ち、前記各実施例および比較例にて得られた現像剤)と、をそれぞれ現像機に入れ、一方で他の現像機には現像剤を入れなくても画像の出力が可能なようにし、また低濃度部と高濃度部とを認識し低濃度部には前記透明トナーおよび有色トナーA1を含む現像剤で現像するように改造)に装填した。
【0119】
・画像均一性の評価(光沢度差)
電子写真学会テストチャートNo.6G 1995を出力し、濃度0.1部分と濃度1.72部分の光沢度差を比較した。10%以下を許容範囲とし、小さいものほど良好である。結果を表2に示す。
【0120】
・画像均一性の評価(光沢むら)
また、濃度0.1部分について、Gloss Meter GM-26D(村上色彩技術研究所)を用いて10点測定し、最大値と最大値の差をもって光沢むらを評価した。光沢むらは6%以下を許容範囲とし、小さいものほど良好である。結果を表2に示す。
【0121】
・帯電性の評価(帯電挙動差)
上記、現像剤の作製に用いたトナー各2.0gと、上記フェライトキャリア(樹脂被覆キャリア)40gとをフタ付きのガラス瓶に秤量し、低温低湿下(温度10℃、湿度15%)で24時間シーズニングした後、ターブラミキサーで10分間、および3時間攪拌震盪させ、得られたトナーの帯電量(μC/g)をブローオフ帯電量測定装置(TB−200東芝社製)にて測定し、10分後と3時間後の帯電量差を評価した。帯電量差は、5%以下を許容範囲とし、小さいものほど良好である。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第3実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略模式図である。
【符号の説明】
【0124】
21 本体ハウジング
22a〜22d 作像エンジン
23 ベルトモジュール
24 記録媒体供給カセット
25 記録媒体搬送路
30 感光体ユニット
31 感光体ドラム
32 帯電装置
33 現像ユニット
34 クリーニング装置
35a〜35d トナーカートリッジ
40 露光ユニット
41 ユニットケース
42 ポリゴンミラー
51 一次転写装置
52 二次転写装置
53 ベルトクリーニング装置
61 フィードロール
62 テイクアウェイロール
63 レジストロール
66 定着装置
67 排出ロール
68 排出部
71 手差し供給装置
72 フィードロール
73 両面記録用ユニット
74 案内ロール
76 搬送路
77 搬送ロール
230 中間転写ベルト
231、232 張架ロール
521 二次転写ロール
531 クリーニングブレード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色トナーと透明トナーとが混合されてなり、
前記有色トナーの含有率を(a)、透明トナーの含有率を(b)としたときの混合比率(質量比)[(a)/{(a)+(b)}]×100が、10質量%以上25質量%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記透明トナーが、核と、前記核の表面を覆い且つ透明トナーの粒径に対する厚みの比率が5%以上9%以下である被覆層と、を有することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
少なくとも、樹脂粒子と離型剤粒子とを混合しヘテロ凝集させて核を形成する核形成工程と、
前記核形成工程の後に樹脂粒子を更に追添加し、前記核の表面に追添加された前記樹脂粒子を付着させ、追添加された前記樹脂粒子のガラス転移点以上の温度で合一融合させて被覆層を形成する被覆層形成工程と、を経て透明トナーを形成し、
前記透明トナーと有色トナーとを混合することによって製造すること特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
少なくとも請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーが含有されたことを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項5】
少なくとも請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーが収容されたことを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項6】
現像剤保持体を少なくとも備えると共に、請求項4に記載の静電荷像現像剤が収容されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、
該像保持体表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記像保持体の表面に画像情報に応じた静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記静電荷像を、濃色トナーを含む現像剤により現像し、更に該濃色トナーと同系色の淡色トナーであって、請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナーを含む現像剤により現像することにより現像像を形成する現像像形成手段と、
前記像保持体表面に形成された現像像を記録媒体表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体表面に転写された転写像を定着する定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−79084(P2010−79084A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249137(P2008−249137)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】