説明

非水電解液二次電池パック

【課題】電動工具用電源として屋外での使用を鑑みた構造を有した非水電解液二次電池パックを提供する。
【解決手段】電池電圧や電池温度を測定する測定部3と、前記測定部3の測定結果に基づいて充放電を制御する制御部4とを有し、蓋面および底面に正負極の端子を設けた円筒型非水電解液二次電池1を電池収納容器2に複数個収納し、電池収納容器2内において全ての円筒型非水電解液二次電池1を側面どうしを向き合って並べた上で電気的に接続させ、さらにはこの円筒型非水電解液二次電池1の直径をA、電池の側面どうしの距離をBとした場合に、B/Aを0.02〜0.2とさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液二次電池パックの構造に関し、より詳しくは接続された複数の電池の特性向上を鑑みた配列に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、他の蓄電池と比べてエネルギー密度が高いことから、ポータブル機器電源などの民生用途に加え、電動工具電源などのパワーツール用途へと市場が拡大しつつある。
【0003】
電池系にかかわらず、電動工具用二次電池は、出力特性を高めるために電極面積を大きくするので、構成が容易な円筒型として設計される。電動工具用途に先駆けて実用化されたハイブリッド電気自動車用途においては、円筒型電池の蓋面と底面とを接続して細長いモジュールを構成し、このモジュールを自動車のシャーシに横並べ・横積みする形で直列接続する構成が一般的である(例えば、特許文献1)。この構造は高率充放電時に各電池から発生するジュール熱が蓄熱しやすいので、電池パックの放熱性を高めるため、各モジュール間に一定の隙間を設けて、外部からの冷却風を利用しやすい構造としている。
【特許文献1】特開2001−155789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド電気自動車用非水電解液二次電池の場合、スタートや加速の時に瞬時に大電流を取り出すことができれば、その後は内燃機関により自動車を駆動させることが可能である。しかしながら電動工具用非水電解液二次電池の場合、駆動源が電池のみであり、単純にパックの放熱性を高める構造を採った場合、例えば寒冷な条件下で電池反応の抵抗が大きな場合、電動工具を連続的に駆動させるのは困難である。
【0005】
本発明は上記の課題に基づいてなされたものであり、電動工具用電源として屋外での使用を鑑みた構造を有した非水電解液二次電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の非水電解液二次電池パックは、蓋面および底面に正負極の端子を設けた円筒型非水電解液二次電池と、この非水電解液二次電池を複数個収納するための電池収納容器と、電池電圧や電池温度を測定する測定部と、前記測定部の測定結果に基づいて充放電を制御する制御部とを有し、電池収納容器内において全ての円筒型非水電解液二次電池が側面どうしを向き合って並べられた上で電気的に接続されており、さらにはこの円筒型非水電解液二次電池の直径をA、電池の側面どうしの距離をBとした場合、B/Aが0.02〜0.2の関係を有することを特徴とする。
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、電池パック構造として適度な蓄熱性がある方が、寒冷環境下において連続高率放電に適していることを見出した。具体的には、複数の電池の側面どうしを向き合わせつつその距離を適正化することにより、高温下では適度な放熱性を発揮しつつ、寒冷環境下では高率放電時に発生するジュール熱を活用して電池温度自身を上昇させ、電池反応抵抗を低減することにより連続放電を可能にしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パック内の蓄熱および放熱のバランスが向上するので、電動工具に適した電源として、如何なる環境下においても十分な高率放電特性を示す、高性能な非水電解液二次電池パックを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図を用いて説明する。
【0010】
図1は本発明の非水電解液二次電池パックの概略斜視図であり、図2は図1におけるA−A線に沿った断面図、図3は図1におけるB−B線に沿った断面図、図4は図1におけるC−C線に沿った断面図である。複数の円筒型非水電解液二次電池1は、その蓋面および底面に正負極の端子(図示せず)が設けられており、電池収納容器2の中に、その全てが側面どうしを向き合うように並べられ、電気的に接続されている。この円筒型非水電解液二次電池1には、電池電圧や電池温度を測定する測定部3と、さらには測定部の測定結果に基づいて充放電を制御する制御部4とが隣接して設置されており、本発明の非水電解液二次電池パック5が構成されている。
【0011】
ここで非水電解液二次電池パック5における円筒型非水電解液二次電池1は、その全てが側面どうしを向き合うように並べられている必要がある。仮に円筒型非水電解液二次電池1の蓋面と底面とを接続して特許文献1に示すような細長いモジュールを構成した場合、高温下では適度な放熱性を発揮するものの、寒冷環境下では放熱性が高すぎるため、本発明の骨子である適度な蓄熱性を持たせることができない。
【0012】
ここで放熱性と蓄熱性との両立を図るためには、円筒型非水電解液二次電池1の直径をA、この電池の側面どうしの距離をBとした場合、B/Aが0.02〜0.2の関係となる必要がある。B/Aが0.02以下の場合、各電池が接近しすぎるため、蓄熱性は申し分ないものの、高温環境下での放熱性に劣る。また逆にB/Aが0.2を超える場合、各電池が隔離しすぎるため、放熱性は申し分ないものの、寒冷環境下での蓄熱性に劣る。
【0013】
またB/Aを上述の所定値にするためには、電池収納容器2内に非水電解液二次電池1の側面どうしを隔離するための隔離板6が備えられている方が、使用による振動に端を発した寸法(B/A値)の変化を回避する観点から好ましい。また隔離板6には貫通孔7がある方が、発生するジュール熱を電池パック5内で均一化する観点から好ましい。さらには隔離板6における貫通孔7の面積比(以下、空孔率と称する)が10〜70%であることが、上述した温度の均一化と隔離板6の強度確保を両立させる観点から好ましい。空孔率が10%未満の場合、貫通孔7によって起こる熱対流が不十分なため、電池パック7内の温度の均一性が低下する。逆に空効率が70%を超える場合、熱対流により電池パック5内の温度は均一になりやすいが、隔離板6の強度が低下して機械的強度を確保しづらくなる。ここで隔離板6における貫通孔7は、不定形の切欠き7であってもよく、またこれらを併用しても同様の効果が得られる。
【0014】
本発明における非水電解液二次電池1の直列時の電圧は、満充電状態において12.6〜42Vであることが望ましい。正極活物質にもよるが、一般に非水電解液二次電池は満充電において約4.2Vの閉回路電圧を示すので、上述した最適範囲は電池3〜10個分に相当する。満充電状態における電圧が12.6V未満(電池が2個以下)の場合、ジュール熱が不足するために蓄熱性が低くなり、本発明の効果が発揮されにくい。また満充電状態における電圧が42Vを超える(電池が11個以上の)場合、蓄熱が過剰になるために高温時の放熱性が低下するという課題が生じる。
【0015】
本発明においては、制御部4は円筒型非水電解液二次電池1の表面温度が60〜80℃であると測定部3が検知した時に充放電を停止する監視機能を有していることが望ましい。充放電を停止する温度が60℃未満の場合、僅かな電池温度の上昇でも充放電が停止するという課題が生じる。逆に充放電を停止する温度が80℃を超える場合、過充電等で異常過熱が生じた場合に通電を停止するタイミングが遅れるので、電池パック5自体が過熱するという課題が生じる。
【0016】
本発明に適用した非水電解液二次電池1の負極材料に含有される負極活物質としては、リチウムの吸蔵・放出が可能な炭素材料、結晶質、非結晶質金属酸化物等が用いられる。炭素材料としては、コークスやガラス状炭素等の難黒鉛化性炭素材料、結晶構造が発達した高結晶性炭素材料の黒鉛類等が挙げられ、具体的には、熱分解炭素類、コークス類、(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、及び活性炭等が挙げられる。
【0017】
負極に含有される結着剤としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム等が考えられる。通常この種の電池の負極合剤に用いられている公知の結着剤を用いることができる。また、負極合剤には、必要に応じて公知の添加剤等を添加してもよい。
【0018】
本発明に適用した非水電解液二次電池1の正極活物質としては、リチウムの吸蔵・放出が可能であり、十分な量のリチウムを含んでいる従来公知の正極材料であれば、何れであっても良い。具体的には、一般式LiMxy(但し、1<x≦2であり、2<y≦4であり、MはCo、Ni、Mn、Fe、Al、V、Tiのうち少なくとも1種類以上を含有する。)で表されるリチウムと遷移金属からなる複合金属酸化物や、リチウムを含んだ層間化合物等を用いることが好ましい。
【0019】
正極に含有される結着剤としては、通常この種の電池の正極合剤に用いられている公知の結着剤を用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム等が考えられる。また、正極合剤には、必要に応じて公知の添加剤等を添加してもよい。具体的にはカーボンブラック等を添加しても良い。
【0020】
非水電解液は、非水溶媒に電解質が溶解されているものである。
【0021】
非水溶媒には、比較的誘電率が高く、負極を構成する黒鉛により分解されにくいエチレンカーボネート(以下、ECと称する)等を主溶媒として用いる。特に、負極に黒鉛材料を用いる場合、主溶媒としては、ECを用いることが好ましいが、ECの水素原子をハロゲン元素で置換した化合物を用いることも可能である。
【0022】
また、プロピレンカーボネート(以下、PCと称する)のように黒鉛材料と反応性があるものを、主溶媒としてのECやECの水素原子をハロゲン元素で置換した化合物等に対して、その一部を第2成分溶媒で置換することにより、より良好な特性が得られる。
【0023】
この第2成分溶媒としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシメタン、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。
【0024】
さらに非水溶媒には低粘度溶媒を併用し、導電率を向上させて電流特性を改善し、リチウム金属との反応性を低下させて安全性を改善することが好ましい。
【0025】
低粘度溶媒としては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の対称あるいは非対称である鎖状炭酸エステルや、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステルや、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル等を使用できる。これらの低粘度溶媒は1種類を単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0026】
電解質としては、非水溶媒に溶解し、イオン伝導性を示すリチウム塩であれば特に限定されることはなく、例えば、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiB(C654、LiCH3SO3、CF3SO3Li、LiCl、LiBr等を使用できる。特に、電解質としてLiPF6を用いることが好ましい。これらの電解質は、1種類を単独で用いても良く、2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0027】
なお本発明に係る非水電解液二次電池1は、上述のようなリチウムイオン二次電池に限定されず、固体電解質やゲル状の電解質を用いた電池系でも同様の効果が得られる。また本発明に係る非水電解液二次電池1の形状は円筒型であればよく、その直径や長さについては限定されない。
【0028】
電池缶の材質としては、Fe、Ni、ステンレス、Al、Ti等を使用できる。この電池缶には、電池の充放電にともなう電気化学的な非水電解液による腐食を防止するために、メッキ等が施されていても良い。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
(i)正極の作製
正極の作製に関して、LiCoO2を正極活物質とした。正極材料は、原材料として炭酸リチウム(Li2CO3)と酸化コバルト(Co34)を所定のモル数で混合し、900℃空気雰囲気下において10時間焼成することで得られた。
【0030】
この正極活物質100重量部に導電材としてアセチレンブラック3重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンが5重量部になるようにポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリジノン溶液を調整し、撹拌混合してペースト状の正極合剤を得た。次に、厚さ20μmのアルミニウム箔を集電体とし、その両面に前記ペースト状正極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラーで圧延を行い、所定寸法に裁断して正極とした。
【0031】
(ii)負極の作製
負極は以下のように作製した。まず、平均粒径が約20μmになるように粉砕、分級した鱗片状黒鉛100重量部に対し、結着剤のスチレン/ブタジエンゴム3重量部を混合した後、カルボキシメチルセルロ−ス水溶液を固形分が1重量部となるように加え、撹拌混合しペースト状負極合剤とした。厚さ15μmの銅箔を集電体とし、その両面にペースト状の負極合剤を塗布し、乾燥後圧延ローラーを用いて圧延を行い、所定寸法に裁断して負極とした。
【0032】
(iii)非水電解液の作製
非水電解液にはECとエチルメチルカーボネートを30:70の割合で調整した溶媒に1.0mol/lのLiPF6を溶解したものを用いた。
【0033】
(iv)非水電解液二次電池の作製
上記の正極、負極、非水電解液を用いて、直径26mm、高さ65mmの円筒型非水電解液二次電池1を作製した。手順を以下に詳述する。
【0034】
上述した帯状の正負極を、微孔性ポリエチレンフイルムからなるセパレータを介して積層した後、長手方向に多数回巻き回してなる渦巻型の電極体を作製した。次に、底部に絶縁板が挿入され、内側にニッケルメッキが施された鉄製の電池缶に電極体を収納した。続いて銅からなる負極リードの一端を負極に圧着させ、他端を電池缶に溶接することにより、電池缶を負極の外部端子とした。一方、アルミニウムからなる正極リードの一端を正極に取り付け、電池内圧に応じて電流を遮断する電流遮断用薄板を介して、他端を電池蓋と電気的に接続することにより、電池蓋を正極の外部端子とした。
【0035】
この電池缶の中に電解質を非水溶媒に溶解させて調製した非水電解液を注入した後に、ブロンを塗布した絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめ封口した。最後にポリエチレンテレフタレートを主成分とする絶縁チューブを熱収縮させることにより外装缶と一体化し、円筒型非水電解液二次電池1を作製した。
【0036】
(v)非水電解液二次電池パックの作製
上記の非水電解液二次電池1を電池間距離2.6mmの間隔(B/A=0.1)で4セルを横方向に直列配列した。ここでは隔離板は使用せず、電池間の接続に関しては、ニッケル製の連絡板を用い抵抗溶接により接続を行った。またさらに中央に配置された非水電解液二次電池には、充放電中の温度測定を行う目的で、温度監視用の測定部3(熱電対)を非水電解液二次電池1の絶縁チューブ上に密着させ、制御部4については充放電を停止させる温度(以下、監視温度と称する)を60℃に設定した。最後に非水電解液二次電池1の正負極端子を接続し、最後にこの組電池をABS(アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン)樹脂製の外装ケースでカバーし、図1に示すような非水電解液二次電池パックを作製した。これを実施例1の非水電解液二次電池パックとする。
【0037】
(比較例1)
実施例1の非水電解液二次電池パックに対し、非水電解液二次電池1を4セル縦方向に直列配列した以外は、上記実施例1と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これを比較例1の非水電解液二次電池パックとする。
【0038】
(実施例2〜3、比較例2〜3)
実施例1の非水電解液二次電池パックに対し、非水電解液二次電池1どうしの距離を0.26mm(B/A=0.01)、0.52mm(B/A=0.02)、5.2mm(B/A=0.2)および7.8mm(B/A=0.3)とした以外は、実施例1と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これらをそれぞれ比較例2、実施例2〜3、比較例3の非水電解液二次電池パックとする。
【0039】
(vi−a)慣らし充放電
以上の各非水電解液二次電池パックに対し、25℃環境下において単電池ごとに充電電圧を制御し、単電池の中で最も早く4.2Vに達するまでは充電電流2Aで定電流充電を行い、その後は充電電流が200mAに減少するまで定電圧充電を行なった。20分休止後、電流値25Aで2.5Vまで放電を行った。
【0040】
慣らし充放電後の各非水電解液二次電池パックに対し、以下の評価を行った。
【0041】
(低温放電試験)
上記慣らし充放電と同一条件にて充電を行った後、各非水電解液二次電池パックを0℃環境下に5時間放置し、引き続き0℃環境下において電流値25Aで2.5Vまで放電した。放電容量を表1に示す。
【0042】
(高温充電試験)
環境温度を40℃とした以外は、上記慣らし充放電と同一条件にて充電を行い、電池温度が監視温度に達した時点で充電を停止した。充電容量を表1に示す。
【0043】
(振動安定性試験)
各非水電解液二次電池パックを25℃の環境下において、振動数10から30Hz、振動幅3mmで30分振動させた。この振動を、非水電解液二次電池パックの縦及び横方向に対し、各3回繰り返した。その後電池パックを分解し、振動試験前後での電池間距離の変化を確認した。目視上の変化があったものを「移動大」、目視上変化が認められないがノギス測定にて0.1mm以上の変化があったものを「移動小」、変化が0.1mm未満のものを「移動なし」として表1に示す。
【0044】
【表1】

比較例1より、非水電解液二次電池1を縦配列することにより、低温放電容量が大きく低下することがわかる。この構造は放熱性が高いものの、寒冷環境下での蓄熱性に劣るため、このような結果に至ったと考えられる。これと同様に、非水電解液二次電池1を横配列したにもかかわらず、電池間距離を広げすぎた比較例3についても、比較例1ほどではないが低温放電特性が低下している。
【0045】
これら比較例に対し、非水電解液二次電池1を横配列し、かつ電池間距離を適正化した各実施例は、優れた低温放電特性を示している。ただし比較例2のように電池間距離を狭めすぎると、蓄熱性が過剰となり、早期に監視温度に達するため、高温充電容量が低下する傾向がある。よって本発明の効果をもたらすためには、電池収納容器内において円筒型非水電解液二次電池1を横配列し、さらには円筒型非水電解液二次電池1の直径をA、電池の側面どうしの距離をBとした場合、B/Aが0.02〜0.2の関係を有する必要があることが分かり、中でもB/Aが0.1の関係にある場合が低温放電容量、高温充電容量ともに高い値を得ることが分かる。
【0046】
(実施例4)
上記の実施例の内、良好な結果を得ることができた実施例1の非水電解液二次電池パックに対し、電池間距離2.6mm(B/A=0.1)を保持するためにABS樹脂製の隔離板6を配置した以外は、上記実施例1と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これを実施例4の非水電解液二次電池パックとする。
【0047】
(実施例5〜9)
実施例4の非水電解液二次電池パックに対し、隔離板6に空孔率が5、10、40、70、80%となるように貫通孔7を穿った以外は、上記実施例4と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これらをそれぞれ実施例5〜9の非水電解液二次電池パックとする。
【0048】
(実施例10)
実施例4の非水電解液二次電池パックに対し、隔離板6に空孔率が40%となるように切欠きを設けた以外は、上記実施例4と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これを実施例10の非水電解液二次電池パックとする。
【0049】
(実施例11〜14)
実施例7の非水電解液二次電池パックに対し、2、3、10、12セルを横方向に直列配列した以外は、上記実施例7と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これらをそれぞれ実施例11〜14の非水電解液二次電池パックとする。
【0050】
(実施例15〜18)
実施例7の非水電解液二次電池パックに対し、充放電を停止させる温度を50、70、80、85℃に設定した以外は、上記実施例7と同様に非水電解液二次電池パックを作製した。これらをそれぞれ実施例15〜18の非水電解液二次電池パックとする。
【0051】
(vi−b)慣らし充放電
実施例4〜18の電池パックに対し、25℃環境下において、単電池ごとに充電電圧を制御し、単電池の中で最も早く4.2Vに達するまでは充電電流2Aで定電流充電を行い、その後は充電電流が200mAに減少するまで定電圧充電を行なった。20分休止後、電流値25Aで2.5Vまで放電を行った。
【0052】
慣らし充放電後の各非水電解液二次電池パックに対し、以下の評価を行った。
【0053】
(低温放電試験)
上記慣らし充放電と同一条件にて充電を行った後、各非水電解液二次電池パックを0℃環境下に5時間放置し、引き続き0℃環境下において電流値25Aで2.5Vまで放電した。放電容量を表2に示す。
【0054】
(高温充電試験)
環境温度を40℃とした以外は、上記慣らし充放電と同一条件にて充電を行い、電池温度が監視温度に達した時点で充電を停止した。充電容量を表2に示す。
【0055】
(振動安定性試験)
各非水電解液二次電池パックを25℃の環境下において、振動数10から30Hz、振動幅3mmで30分振動させた。この振動を、非水電解液二次電池パックの縦及び横方向に対し、各3回繰り返した。その後各非水電解液二次電池パックを分解し、振動試験前後での電池間距離の変化を確認した。目視上の変化があったものを「移動大」、目視上変化が認められないがノギス測定にて0.1mm以上の変化があったものを「移動小」、変化が0.1mm未満のものを「移動なし」として表2に示す。
【0056】
(過充電安定性試験)
実施例5〜9、および15〜18の非水電解液二次電池パックに対し、25℃環境下で8Aの充電試験を行い、各非水電解液二次電池パックごとに設定した充放電停止温度に達した時点で充電を停止させた。測定部3が示した停止後の最高到達温度を表2に示す。
【0057】
【表2】

隔離板6の有無に関しては、電池間距離が同じ場合でも、実施例1と比較して実施例4は優れた耐振動性を示している。よって本発明の非水電解液二次電池パックを搭載する機器に耐振動性が求められる場合、電池収納容器2に電池の側面どうしを隔離するための隔離板6が備えられているのが好ましい。またこの隔離板6に、実施例5〜9のような貫通孔7や、実施例10のような切欠き7(図5(a)参照)が設けられている場合、低温放電特性が向上している。この理由として、隔離板6に貫通孔7や切欠き7を設けることにより、発生するジュール熱を電池収納容器2内で均一化しやすくなることが考えられる。ただし空効率が5%である実施例5は、上述した効果が余り高くない。また空効率が80%である実施例9は、機械的強度が低下するために耐振動性が余り高くない。よって各電池間に隔離板6を設け、隔離板6に貫通孔7および/または切欠き7を設け、さらには空効率を10〜70%とすることが好ましいのが分かる。
【0058】
直列する電池の数に関しては、非水電解液二次電池1の本数を2本にした実施例11では放熱性が過剰となり、低温放電特性がやや低下する傾向がある。一方、非水電解液二次電池1の本数を12本にした実施例14では蓄熱性が過剰となり、高温充電容量がやや低下する傾向がある。よって本発明の効果を顕著化させるためには、非水電解液二次電池1の直列時の電圧が満充電状態において12.6〜42V(電池本数が3〜10本)とするのが好ましいのが分かる。
【0059】
リチウムイオン電池の充電時にはジュール熱の発生に伴い電池温度が上昇するが、90℃を超えると正極活物質の構造破壊によって異常な過熱が生じる。そこで、電池温度としては異常である90℃を超えずに、正常な昇温は無視できる範囲で充電を行なう必要があることから、実施例5〜9および15〜18の電池パックに対し過充電安定性試験を実施した。監視温度を85℃に設定した実施例18では最高到達温度が97℃となり過充電安定性が低下した。その逆に、監視温度を50℃に設定した実施例15では、充電停止後の最高到達温度が52℃となることから過充電安定性は高いが、満充電を迎える前のわずかな昇温によって充電が停止することから、高温充電容量が低下した。これらのことから、本発明の非水電解液二次電池パックにおける監視温度としては、60〜80℃が好ましいことが分かる。
【0060】
以上の結果より、機械的強度、低温放電特性、高温充電特性、過充電安定性の全てを満足させるものは、空孔率10〜70%の隔離板6を有し、監視温度が60〜80℃に設定され、電池本数が3〜10本のものであることが分かったが、その中でも良好な結果を得ることができたものは実施例7の構成であった。
【0061】
(実施例7A〜7F)
そこで、実施例7の非水電解液二次電池パックに対し、隔離板6に空効率が、25、30、35、45、50、55%となるように貫通孔7を穿った以外は、上記実施例7と同様に非水電解液二次電池パックを作成した。これらをそれぞれ実施例7A〜7Fの非水電解液二次電池パックとする。
【0062】
(実施例7G〜7J)
実施例7の非水電解液二次電池パックに対し、非水電解液二次電池1の直径Aと非水電解液二次電池1どうしの距離BとからなるB/Aが0.02、0.05、0.15、0.2となるように構成した以外は、実施例7と同様に非水電解液二次電池パックを作成した。これらをそれぞれ実施例7G〜7Jの非水電解液二次電池パックとする。
【0063】
(実施例7K〜7L)
実施例7の非水電解液二次電池パックに対し、隔離板6の材質をユニレート(ポリエチレンテレフタレートとガラス繊維とマイカの混合物、株式会社キョードーの商品名)やPPO(ポリフェニレンオキサイド)とした以外は、実施例7と同様に非水電解液二次電池パックを作成した。これらをそれぞれ実施例7K〜7Lの非水電解液二次電池パックとする。
【0064】
(vi−c)慣らし充放電
実施例7A〜7Lの非水電解液二次電池パックに対し、25℃環境下において、単電池ごとに充電電圧を制御し、単電池の中で最も早く4.2Vに達するまでは充電電流2Aで定電流充電を行い、その後は充電電流が200mAに減少するまで定電圧充電を行なった。20分休止後、電流値25Aで2.5Vまで放電を行った。
【0065】
慣らし充放電後の各非水電解液二次電池パックに対し、以下の評価を行った。
【0066】
(低温放電試験)
上記慣らし充放電と同一条件にて充電を行った後、各非水電解液二次電池パックを0℃環境下に5時間放置し、引き続き0℃環境下において電流値25Aで2.5Vまで放電した。放電容量を表3に示す。
【0067】
(高温充電試験)
環境温度を40℃とした以外は、上記慣らし充放電と同一条件にて充電を行い、電池温度が監視温度に達した時点で充電を停止した。充電容量を表3に示す。
【0068】
(振動安定性試験)
各非水電解液二次電池パックを25℃の環境下において、振動数10から30Hz、振動幅3mmで30分振動させた。この振動を、非水電解液二次電池パックの縦及び横方向に対し、各3回繰り返した。その後各非水電解液二次電池パックを分解し、振動試験前後での電池間距離の変化を確認した。目視上の変化があったものを「移動大」、目視上変化が認められないがノギス測定にて0.1mm以上の変化があったものを「移動小」、変化が0.1mm未満のものを「移動なし」として表3に示す。
【0069】
(過充電安定性試験)
実施例7A〜7Fの非水電解液二次電池パックに対し、25℃環境下で8Aの充電試験を行い、各非水電解液二次電池パックごとに設定した充放電停止温度に達した時点で充電を停止させた。測定部3が示した停止後の最高到達温度を表3に示す。
【0070】
【表3】

実施例7A〜7Fより、隔離板6における貫通孔7の面積比を25〜55%としても低温放電容量、高温充電容量ともに実施例7と比べて大差のない結果が得られた。ただし、空孔率55%とした実施例7Fにあっては、機械的強度が若干低下することから、実施例7A〜7Eのものに比べて振動安定性があまり良くない。このことから、空孔率を25〜50%とすることがより好ましいことが分かる。
【0071】
実施例7G〜7Jより、円筒型非水電解液二次電池1の直径をA、電池の側面どうしの距離をBとした場合のB/Aの関係を0.02〜0.2としても低温放電容量、高温充電容量ともに実施例7と比べて大差のない結果が得られた。ただし、電池間距離をやや広げてB/Aを0.15とした実施例7H及びB/Aを0.2とした実施例7Iにおいては低温放電容量に若干の低下がみられ、また、電池間距離をやや狭めてB/Aを0.02とした実施例7G及びB/Aを0.05とした実施例7Hにおいては高温充電容量に若干の低下がみられる。このことから、円筒型非水電解液二次電池の直径をA、電池の側面どうしの距離をBとした場合のB/Aの関係は、0.1とすることがより好ましいことが分かる。
【0072】
上記の実施例においてはABS樹脂製の電池収納容器2を使用し、隔離板6にあっても同様にABS樹脂製のものを使用したが、電池収納容器2内におけるジュール熱を均一化させつつ必要以上のジュール熱を電池収納容器2の外に逃がさないためには、隔離板6の材質を電池収納容器2の材質に比して熱伝導率の高いものとすることが好ましい。ABS樹脂の熱伝導率が0.1〜0.18W/mKであることに対して、実施例7Kにおける隔離板6の材質であるユニレート及び実施例7Lにおける隔離板6の材質であるPPOの熱伝導率は0.25W/mK以上であることから、実施例7K〜7Lにおいては電池収納容器2内でのジュール熱の均一化に優れているために、実施例7のものと比べて低温放電容量が若干高い。このことから、隔離板6の素材を、ユニレートやPPOとすることが更に好ましいことが分かる。
【0073】
また、実施例7A〜7Fの非水電解液二次電池パックに対し過充電安定性試験を実施したところ、何れの電池パックにおいても充電停止後の最高到達温度が90℃を超えることがなく、高い過充電安定性を得ることができた。
【0074】
なお、隔離板6としては図3に示すような円形の貫通孔7を多数設けた隔離板6に代えて、図5(a)〜図5(c)に示すような、電池収納容器2内においてジュール熱を均一化し易い空効率を有する多種多様な形状の切欠き7を備えた隔離板6を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明にかかる非水電解液二次電池パックは冷却経路の削減により体積効率が高い上、蓄熱および放熱のバランスが良好なので、環境を問わず屋外で使用する機器、例えば電動工具、アシスト自転車、電動スクーター、ロボット等の電源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例にかかる非水電解液二次電池パックの概略斜視図
【図2】図1におけるA−A線に沿った概略断面図
【図3】図1におけるB−B線に沿った概略断面図
【図4】図1におけるC−C線に沿った概略断面図
【図5】隔離板に設ける切欠きの形状の例を示す図
【符号の説明】
【0077】
1 非水電解液二次電池
2 電池収納容器
3 測定部
4 制御部
5 非水電解液二次電池パック
6 隔離板
7 貫通孔(切欠き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋面および底面に正負極の端子を設けた円筒型非水電解液二次電池と、前記非水電解液二次電池を複数個収納するための電池収納容器と、電池電圧や電池温度を測定する測定部と、前記測定部の測定結果に基づいて充放電を制御する制御部とを有する非水電解液二次電池パックであって、
前記円筒型非水電解液二次電池は、前記電池収納容器内において全てが側面どうしを向き合って並べられた上で、電気的に接続されており、
前記円筒型非水電解液二次電池の直径をA、この電池の側面どうしの距離をBとした場合、B/Aが0.02〜0.2の関係を有することを特徴とする、非水電解液二次電池パック。
【請求項2】
前記電池収納容器には、前記非水電解液二次電池の側面どうしを隔離するための隔離板が備えられていることを特徴とする、請求項1記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項3】
前記隔離板には、貫通孔および/または切欠きがあることを特徴とする、請求項2記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項4】
前記隔離板における貫通孔および/または切欠きの面積比が10〜70%であることを特徴とする、請求項3記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項5】
前記非水電解液二次電池の直列時の電圧が満充電状態において12.6〜42Vであることを特徴とする、請求項1〜4記載の非水電解液二次電池パック。
【請求項6】
前記制御部は、非水電解液二次電池の表面において前記測定部が所定温度に達したときに充放電を停止する監視機能を有しており、前記所定温度は60〜80℃の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜5記載の非水電解液二次電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−222066(P2006−222066A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286448(P2005−286448)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】