説明

面取り加工装置及び面取り加工方法

【課題】
ダミーウェーハを使用せずに加工用砥石とウェーハまたはツルアーとの相対的位置または加工砥石直径を決定し、短時間で無駄なく面取り形状精度を向上させる面取り加工装置及び面取り加工方法を提供すること。
【解決手段】
ウェーハWまたはツルアーTに供給される加工補助液Lを介して設けられたセンサ3によりウェーハWまたはツルアーTと加工用砥石との接触を検知し、接触した座標位置から相対的座標位置または加工用砥石直径を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体インゴットから切断された半導体装置や電子部品等の材料となるウェーハの面取りを行なう面取り加工方法及び面取り加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や電子部品等の素材となるシリコン等のウェーハは、インゴットの状態から内周刃やワイヤーソー等のスライシング装置でスライスされた後、その周縁の割れや欠け等を防止するために外周部に面取り加工が施される。面取り加工に使用される面取り装置は、ウェーハ外周部を研削する外周部用砥石や、方位の基準位置となるV字状のノッチ部を研削するノッチ部用砥石等の各種加工用砥石が複数取り付けられ、これらの砥石をスピンドルにより高速に回転させて加工を行なう。加工の際には、ウェーハを回転するウェーハテーブル上に吸着載置し、Xガイド、Yガイド、及びZガイドの各ガイド軸によりウェーハと砥石とを相対的に移動させ、砥石に形成された面取り用の溝へウェーハ外周部を当てることにより面取り加工を行う。
【0003】
図6に面取り加工装置の従来例を示す。図6は従来の面取り加工装置の正面図である。面取り加工装置10は、ウェーハ送りユニット20、砥石回転ユニット50、図示しないウェーハ供給/収納部、ウェーハ洗浄/乾燥部、ウェーハ搬送手段、及び面取り加工装置各部の動作を制御するコントローラ等から構成されている。
【0004】
ウェーハ送りユニット20は、本体ベース11上に載置されたX軸ベース21、2本のX軸ガイドレール22、22、4個のX軸リニアガイド23、23、…、ボールスクリュー及びサーボモータから成るX軸駆動手段25によって図のX方向に移動されるXテーブル24を有している。
【0005】
Xテーブル24には、2本のY軸ガイドレール26、26、4個のY軸リニアガイド27、27、…、図示しないボールスクリュー及びサーボモータから成るY軸駆動手段によって図のY方向に移動されるYテーブル28が組込まれている。
【0006】
Yテーブル28には、2本のZ軸ガイドレール29、29と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るZ軸駆動手段30によって図のZ方向に移動されるZテーブル31が組込まれている。
【0007】
Zテーブル31には、θ軸モータ32、θスピンドル33が組込まれ、θスピンドル33にはウェーハWを吸着載置するウェーハテーブル34が取り付けられており、ウェーハテーブル34はウェーハテーブル回転軸心CWを中心として図のθ方向に回転される。ウェーハテーブル34の上面は、図示しない真空源と連通する吸着面になっており、面取り加工されるウェーハW、または面取り加工を行う砥石をツルーイングするツルーイング砥石T(以下、ツルアーと称する)が載置されて吸着固定される。
【0008】
このウェーハ送りユニット20によって、ウェーハW及びツルアーは図のθ方向に回転されるとともに、X、Y、及びZ方向に移動される。
【0009】
砥石回転ユニット50は、複数の外周粗研削用溝が形成された加工用砥石としての外周加工砥石52が取り付けられ、図示しない外周砥石モータによって軸心CHを中心に回転駆動される外周砥石スピンドル51、外周加工砥石52の上方に取付けられた外周精研スピンドル54及び外周精研モータ56、ノッチ粗研スピンドル60及びノッチ粗研エアタービン62、ノッチ精研スピンドル57及びノッチ精研モータ59を有している。
【0010】
外周精研スピンドル54にはウェーハWの外周を仕上げ研削する面取り用砥石であるか加工用砥石としての外周精研削砥石55が取付けられている。ノッチ粗研スピンドル60にはノッチ粗研削砥石61が、またノッチ精研スピンドル57には、ノッチ部を仕上げ研削する面取り砥石であるノッチ精研削砥石58が取付けられている。
【0011】
外周精研削砥石55、ノッチ粗研削砥石61、及びノッチ精研削砥石58は、ウェーハテーブル34と相対的に移動されることにより、それぞれ加工位置に位置づけられる。
【0012】
外周精研削砥石55とノッチ精研削砥石58とは、ウェーハテーブル34上面に載置されたツルアーTによりツルーイングされ外周精研削用溝が形成される。このような面取り装置としては例えば、特許文献1に記載されるウェーハ面取り装置が提案されている。
【0013】
説明した通り、半導体装置や電子部品等の素材となるウェーハは、インゴットの状態から内周刃やワイヤーソー等のスライシング装置でスライスされ、各種砥石により外周部が面取り加工されて製造される。このとき、加工用溝によりウェーハ端部に形成される面取り形状は、上下の面取り幅が均等に若しくは所定の面取り幅になるように加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−153085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような加工においてウェーハテーブルの平面度、ウェーハ厚さのばらつき、ウェーハの反りなどによりウェーハと加工用砥石の位置にズレが生じるため、面取り加工装置では予めダミーのウェーハを加工することにより加工用砥石とウェーハの位置を決定し、相対的な座標位置の修正を行っている。しかし、これには多くのダミーウェーハを消費するのでコストや段取り時間の増加の原因となっていた。
【0016】
また、加工用砥石のドレッシング及びツルーイングを行う場合においては、ダミーウェーハを加工することにより得られた座標を用いて位置を修正している。このようなドレッシング及びツルーイングにおいて、ツルアー端部の形状と溝の形状が合っていない様な場合、加工用砥石とツルアーの位置関係にズレが生じて加工用砥石とツルアーとの接近時に偏当たりや過度な当たり、または当たり不足が起こり正確なドレッシング、ツルーイングが行われない場合があった。
【0017】
本発明はこのような問題に対して成されたものであり、ダミーウェーハを使用せずに加工用砥石とウェーハまたはツルアーとの相対的位置または加工用砥石直径を決定し、短時間で無駄なく面取り形状精度を向上させる面取り加工装置及び面取り加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は前記目的を達成するために、ウェーハまたはツルーイング砥石を載置するウェーハテーブルと、前記ウェーハの端部を研削する1つ以上の加工用砥石と、前記ウェーハテーブルを前記加工用砥石に対して相対的に移動させる移動手段と、前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石に生じるアコースティックエミッションを前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石の表面に供給される加工補助用の流体を介して検知するセンサと、前記センサを前記ウェーハテーブルに対して垂直に接離移動させる駆動部と、前記センサにより得られるアコースティックエミッションの変化を前記ウェーハまたはツルーイング砥石の座標位置とともに記憶し演算を行う制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は前記発明において、前記センサはアコースティックエミッションセンサであることを特徴としている。
【0020】
本発明によれば、面取り加工装置はウェーハテーブルと、加工用砥石と、移動手段と、センサと、駆動部と、制御部とを備えている。
【0021】
ウェーハテーブルはウェーハまたはツルーイング砥石が吸着載置される。吸着載置されたウェーハまたはツルーイング砥石は回転され、台形形状に加工用溝が形成された回転する加工用砥石に接触させることによりウェーハの端部を面取り加工または加工用砥石のツルーイング加工が行われる。
【0022】
このとき、面取り加工装置にはウェーハまたはツルーイング砥石に生じるアコースティックエミッション(以下、AEと称する)をウェーハまたはツルーイング砥石の表面に供給される加工補助用の流体を介して検知するAEセンサ等のセンサが設けられている。センサは予め測定されたウェーハの厚みのバラつきとウェーハテーブル表面の面振れのデータに基づき、駆動装置によってウェーハテーブルに対して一定の距離を保つように垂直に接離移動される。
【0023】
ウェーハテーブルを砥石に対して相対的に移動させる移動手段によりウェーハテーブルが移動することでウェーハまたはツルーイング砥石が加工用砥石に接触すると、センサによりウェーハまたはツルーイング砥石に生じるAEの変化が検出される。これにより、ウェーハまたはツルーイング砥石と加工用砥石とが接触したことが検知される。接触した座標位置は制御部に記憶される。
【0024】
ウェーハまたはツルーイング砥石と加工用砥石との相対的位置または加工用砥石直径の決定では、まず加工用砥石に形成された溝の台形形状の一方の傾斜面にウェーハまたはツルーイング砥石を接触させて座標位置を記憶させ、続いて他方の傾斜面にウェーハまたはツルーイング砥石を接触させて座標位置を記憶させる。制御部はこのようにして得られた2つの座標位置から溝の中間点の座標位置を算出する。続いて中間点の座標へウェーハまたはツルーイング砥石を合わせ、その位置でウェーハまたはツルーイング砥石を加工用砥石へ接触させることにより溝底部の座標位置を検知する。このようにして得られた一方の傾斜面の座標位置、他方の傾斜面の座標位置、溝底部の座標位置に基づき制御部によってウェーハまたはツルーイング砥石と加工用砥石との相対的座標位置または加工用砥石直径を算出し、算出された相対的座標位置に基づき面取り加工を行う。
【0025】
これにより、ダミーウェーハを多数使用せずに加工用砥石とウェーハまたはツルアーとの相対的位置を決定することが可能となり、ダミーウェーハの搬送、載置などの時間も必要なくなるので短時間で無駄なく面取り形状精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明の面取り加工装置及び面取り加工方法によれば、ウェーハまたはツルーイング砥石に生じるAEを表面に供給される加工補助用の流体を介して検知するセンサにより、ダミーウェーハを多数使用せずにウェーハまたはツルーイング砥石と加工用砥石との相対的位置または加工用砥石直径を決定し、短時間で無駄なく面取り形状精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる面取り加工装置の主要部を示す正面図。
【図2】面取り加工方法が行われるシステム構成図。
【図3】相対的位置座標を算出する様子を示した断面図。
【図4】面取り加工方法の手順を示したフロー図。
【図5】別の実施の形態による面取り加工装置の構成図。
【図6】従来のウェーハ面取り加工装置の主要部を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下添付図面に従って本発明に係る面取り加工装置及び面取り加工方法の好ましい実施の形態について詳説する。はじめに、本発明に係るウェーハ面取り加工装置について説明する。図1は、面取り加工装置の主要部を示す正面図、図2は面取り加工方法が行われるシステム構成図である。
【0029】
面取り加工装置1は、図1に示すようにウェーハ送りユニット20、砥石回転ユニット50、測定部2を備えている。また、面取り加工装置1にはこの他に図示しないウェーハ供給/収納部、ウェーハ洗浄/乾燥部、及び面取り加工装置各部の動作を制御する制御部等を備えている。
【0030】
ウェーハ送りユニット20は、本体ベース11上に載置されたX軸ベース21、2本のX軸ガイドレール22、22、4個のX軸リニアガイド23、23、…、ボールスクリュー及びサーボモータから成るX軸駆動手段25によって図のX方向に移動されるXテーブル24を有している。
【0031】
Xテーブル24には、2本のY軸ガイドレール26、26、4個のY軸リニアガイド27、27、…、図示しないボールスクリュー及びサーボモータから成るY軸駆動手段によって図のY方向に移動されるYテーブル28が組込まれている。
【0032】
Yテーブル28には、2本のZ軸ガイドレール29、29と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールスクリュー及びサーボモータから成るZ軸駆動手段30によって図のZ方向に移動されるZテーブル31が組込まれている。
【0033】
Zテーブル31には、θ軸モータ32、θスピンドル33が組込まれ、θスピンドル33にはウェーハWを吸着載置するウェーハテーブル34が取り付けられており、ウェーハテーブル34はウェーハテーブル回転軸心CWを中心として図のθ方向に回転される。
【0034】
ウェーハテーブル34の上面は、図示しない真空源と連通する吸着面になっており、面取り加工されるウェーハWまたはウェーハWの周縁を仕上げ面取りする砥石のツルーイングに用いるツルアーTが載置されて吸着固定される。
【0035】
このウェーハ送りユニット20によって、ウェーハW及びツルアーTは図1のθ方向に回転されるとともに、X、Y、及びZ方向に移動される。
【0036】
砥石回転ユニット50は、複数の外周粗研削用溝が形成された加工用砥石としての外周加工砥石52が取り付けられ、図示しない外周砥石モータによって軸心CHを中心に回転駆動される外周砥石スピンドル51、外周加工砥石52の上方に取付けられた外周精研スピンドル54及び外周精研モータ56、ノッチ粗研スピンドル60及びノッチ粗研エアタービン62、ノッチ精研スピンドル57及びノッチ精研モータ59を有している。
【0037】
外周精研スピンドル54にはウェーハWの外周を仕上げ研削する加工用砥石としての外周精研削砥石55が取付けられている。ノッチ粗研スピンドル60にはノッチ粗研削砥石61が、またノッチ精研スピンドル57には、ノッチ部を仕上げ研削する面取り砥石であるノッチ精研削砥石58が取付けられている。
【0038】
外周加工砥石52は、ダイヤモンド砥粒のメタルボンド砥石で、粒度#800である。外周精研削砥石55は、直径50mmのダイヤモンド砥粒のレジンボンド砥石で、粒度#3000が用いられている。また、ノッチ粗研削砥石61は直径1.8mm〜2.4mmの小径で、ダイヤモンド砥粒のメタルボンド砥石、粒度#800が用いられ、ノッチ精研削砥石58は、直径1.8mm〜2.4mmの小径で、ダイヤモンド砥粒のレジンボンド砥石、粒度#4000が用いられている。
【0039】
外周砥石スピンドル51は、ボールベアリングを用いたビルトインモータ駆動のスピンドルで、回転速度8,000rpmで回転される。また、外周精研スピンドル54はエアーベアリングを用いたビルトインモータ駆動のスピンドルで、回転速度35,000rpmで回転される。
【0040】
ノッチ粗研スピンドル60は、エアーベアリングを用いたエアータービン駆動のスピンドルで、回転速度80,000rpmで回転され、ノッチ精研スピンドル57はエアーベアリングを用いたビルトインモータ駆動のスピンドルで、回転速度150,000rpmで回転される。
【0041】
測定部2はウェーハテーブル34の上部近傍に設けられ、センサ3、センサ3が取り付けられた駆動部4、ウェーハテーブル34またはウェーハWの変位を測定する変位センサ5を備えている。
【0042】
センサ3はAE(acoustic emission)を検出するAEセンサであって、ノズル6よりウェーハテーブル34上のウェーハWまたはツルアーT表面に供給される純水等の加工補助液Lに接触するようにウェーハWまたはツルアーT上に設置される。
【0043】
センサ3は図2に示す制御部7に設けられたコントローラ8を介して記憶演算装置9と接続され、検知したAE信号を記憶演算装置9へ送り、AE信号はウェーハWまたはツルアーTと各加工用砥石との座標位置のデータとともに記憶演算装置9へ記憶される。
【0044】
駆動部4はボールネジやリニアモーター等の直動駆動機構を用いた駆動装置であって、取り付けられたセンサ3をウェーハテーブル34に対して垂直に接離移動させる。センサ3の駆動部4による移動は、レーザーセンサー、静電容量センサ、空気マイクロセンサ等の変位測定センサである変位センサ5により予め測定されて記憶演算装置9に記憶されたウェーハWの厚みのバラつきとウェーハテーブル34表面の面振れのデータに基づいて行われ、センサ3とウェーハWまたはツルアーTとの間隔が常に一定になるようにセンサ3が移動する。
【0045】
面取り加工装置1のその他の構成部分については、一般的によく知られた機構であるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
次に、本発明に係る面取り加工方法について説明する。図3は相対的座標位置を算出する様子を示した側面図、図4は面取り加工方法の手順を示したフロー図である。
【0047】
面取り加工方法では、まず変位測定工程として図1に示す変位センサ5によりウェーハテーブル34表面の面振れが測定され、データが制御部7へ送られて記憶される。ウェーハテーブル34の面振れが測定された後、ウェーハ搬送手段によりウェーハ供給/収納部から搬送されたウェーハWまたはツルアーTがウェーハテーブル34まで搬送されて吸着載置される。吸着載置後、変位センサ5によりウェーハW端部の厚みや反りのバラつきが測定され、データが制御部7へ送られて記憶される(図4に示すステップS1。)。
【0048】
続いて、ウェーハWまたはツルアーTにノズル6より加工補助液Lが供給され、センサ3が加工補助液Lに接触するようにウェーハWまたはツルアーT上に設置される。センサ3が設置された後、第1の傾斜面検知工程として図3(a)に示すように回転するウェーハWまたはツルアーTを回転する加工用砥石の加工用溝12の上部傾斜面12aへ低速で接近させて接触させる(ステップS2。)。
【0049】
上部傾斜面12aに接触することにより発生したAEはセンサ3により検知され制御部7の記憶演算装置9へ送られ、接触した位置の座標データと共に記憶される。
【0050】
続いて、第2の傾斜面検知工程として図3(b)に示すように回転するウェーハWまたはツルアーTを回転する加工用砥石の加工用溝12の下部傾斜面12bへ低速で接近させて接触させる(ステップS3。)。
【0051】
下部傾斜面12bに接触することにより発生したAEはセンサ3により検知され制御部7の記憶演算装置9へ送られ、接触した位置の座標データと共に記憶される。
【0052】
続いて、第1の傾斜面検知工程と第2の傾斜面検知工程とにより得られた上部傾斜面12aと下部傾斜面12bとの位置座標より中間点の座標を記憶演算装置9により算出する(ステップS4。)。
【0053】
算出された上部傾斜面12aと下部傾斜面12bとの中間点は加工用溝12の中央であって、ウェーハWの外周面を加工する位置となる。
【0054】
続いて、図3(c)に示すようにウェーハWまたはツルアーTを算出された中間点に合うように移動させ、その状態で回転するウェーハWまたはツルアーTを回転する加工用砥石の加工用溝12の加工用溝底部12cへ低速で接近させて接触させる(ステップS5。)。
【0055】
加工用溝底部12cに接触することにより発生したAEはセンサ3により検知され制御部7の記憶演算装置9へ送られ、接触した位置の座標データと共に記憶される。これにより加工用溝12中央の径方向の終点となる座標が検知される。
【0056】
このようにして得られたウェーハWまたはツルアーTと加工用溝12の上部傾斜面12a、下部傾斜面12b、加工用溝底部12cとが接触する位置座標に基づき、ウェーハWまたはツルアーTと加工用砥石との相対的座標位置が記憶演算装置9により算出される。面取り加工装置1は、算出された相対的座標位置に基づきウェーハWまたはツルアーTと加工用砥石との位置を調整し、ウェーハWの面取り加工及び加工用砥石のツルーイングを行う。
【0057】
これにより、ダミーウェーハを使用せずに加工用砥石とウェーハWまたはツルアーTとの相対的位置または加工用砥石直径を決定することが可能となり、ダミーウェーハの搬送、載置などの時間も必要なくなるので短時間で無駄なく面取り形状精度を向上させることが可能となる。
【0058】
なお本実施の形態の面取り加工装置1では、水平に回転するウェーハWまたはツルアーTを水平に回転する加工用砥石により面取り加工を行うが、本発明はこれに限らず図5に示すようにウェーハテーブル34の回転軸に対して直交するように配置されたスピンドルに取り付けられた砥石13により面取り加工を行う方法(コンタリング研削と称する)においても好適に実施可能である。
【0059】
コンタリング研削により面取り加工を行う面取り加工装置においては、図5に示されるようにウェーハWまたはツルアーTを円筒形状砥石13の外周端部の任意3点以上の場所へ低速で接近させて接触させる。接触することにより発生した振動はセンサ3により検知され制御部7の記憶演算装置9へ送られ、接触した位置の座標データと共に記憶される。このようにして得られた3点の位置座標を最小二乗法で演算処理を行うことにより円筒形状の砥石13の回転軸の中心座標と砥石13の直径が算出される。
【0060】
以上、説明したように、本発明に係わる面取り加工装置及び面取り加工方法によれば、ウェーハまたはツルーイング砥石が加工用砥石に接触する際の振動を、ウェーハまたはツルーイング砥石表面に供給される加工補助用の流体を介して検知するAEセンサ等のセンサにより検知することでウェーハまたはツルーイング砥石と加工用砥石との相対的座標位置または加工用砥石直径を決定することが可能となる。これにより、ダミーウェーハを使用せずに短時間で無駄なく面取り形状精度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1、10…面取り加工装置,2…測定部,3…センサ,4…駆動部,5…変位センサ,6…ノズル,7…制御部,8…コントローラ,9…記憶演算装置,12…加工用溝,12a…上部傾斜面,12b…下部傾斜面,12c…加工用溝底部,13…砥石,20…ウェーハ送りユニット,24…Xテーブル,28…Yテーブル,33…θスピンドル,34…ウェーハテーブル,52…外周加工砥石,54…外周精研スピンドル,55…外周精研削砥石(面取り用砥石),58…ノッチ精研削砥石,61…ノッチ粗研削砥石,L…加工補助液,W…ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハまたはツルーイング砥石を載置するウェーハテーブルと、
前記ウェーハの端部を研削する1つ以上の加工用砥石と、
前記ウェーハテーブルを前記加工用砥石に対して相対的に移動させる移動手段と、
前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石に生じるアコースティックエミッションを前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石の表面に供給される加工補助用の流体を介して検知するセンサと、
前記センサを前記ウェーハテーブルに対して垂直に接離移動させる駆動部と、
前記センサにより得られるアコースティックエミッションの変化を前記ウェーハまたはツルーイング砥石の座標位置とともに記憶し演算を行う制御部と、を備えたことを特徴とする面取り加工装置。
【請求項2】
前記センサはアコースティックエミッションセンサであることを特徴とする請求項1に記載の面取り加工装置。
【請求項3】
ウェーハまたはツルーイング砥石をウェーハテーブル上に載置して回転させ、台形形状に加工用溝が形成された回転する加工用砥石に接触させることにより前記ウェーハの端部を面取り加工するまたは前記加工用砥石のツルーイング加工を行う面取り加工方法において、
前記ウェーハの厚みのバラつきと前記ウェーハテーブル表面の面振れを測定する変位測定工程と、
前記加工用溝の台形形状の一方の傾斜面に前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石を接触させるとともに、前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石に表面に供給される加工補助用の流体を介して前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石に生じるアコースティックエミッションの変化をセンサにより検知し、アコースティックエミッションの変化が検知された前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石と前記加工用砥石との座標位置を記録する第1の傾斜面検知工程と、
前記加工用溝の台形形状の他方の傾斜面に前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石を接触させるとともに、前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石に生じるアコースティックエミッションの変化を前記センサにより検知し、アコースティックエミッションの変化が検知された前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石と前記加工用砥石との座標位置を記録する第2の傾斜面検知工程と、
前記第1の傾斜面検知工程と前記第2の傾斜面検知工程とにより記録された座標より前記一方の傾斜面と前記他方の傾斜面との中間点の座標を算出する中間点算出工程と、
前記中間点算出工程で算出された中間点の座標へ前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石を合わせ、前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石を前記加工用砥石へ接触させるとともに、前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石に生じるアコースティックエミッションの変化を前記センサにより検知し、アコースティックエミッションの変化が検知された前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石と前記加工用砥石との座標位置を記録する溝底部検知工程と、により前記ウェーハまたは前記ツルーイング砥石と前記加工用砥石との相対的座標位置または加工用砥石直径を算出し、算出された相対的座標位置または加工用砥石直径に基づき面取り加工を行うことを特徴とする面取り加工方法。
【請求項4】
前記センサはAEセンサであることを特徴とする請求項3に記載の面取り加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−207984(P2010−207984A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58165(P2009−58165)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】