説明

音叉型振動片の製造方法

【課題】本発明は、振動周波数の調整範囲を拡大することを目的としている。
【解決手段】基部16及び基部16から基部16の厚み方向に交差する方向に並んで延びる複数の腕部18を含む基材10であって、それぞれの腕部18は、隣の腕部18に対向する第1の側面13及び第1の側面13とは反対側を向く第2の側面15を有し、第1及び第2の側面13,15の少なくとも一方が露出している露出領域30を有する基材10を用意する。露出領域30をエッチングする。エッチングによって腕部18の幅を減らして、複数の腕部18の幅方向に関する曲げ剛性を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型振動片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発振器などに使用される振動片の振動周波数を調整するために、レーザービームによって振動腕の金属膜の一部を除去することが知られている(特許文献1)。詳しくは、金属膜の一部を除去することで、その重さが減少して、振動周波数が調整される。しかしながら、重さによる調整では調整量が小さいために調整範囲に限界があった。
【特許文献1】特開2002−252546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、振動周波数の調整範囲を拡大することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る音叉型振動片の製造方法は、
基部及び前記基部から前記基部の厚み方向に交差する方向に並んで延びる複数の腕部を含む基材であって、それぞれの前記腕部は、隣の前記腕部に対向する第1の側面及び前記第1の側面とは反対側を向く第2の側面を有し、前記第1及び第2の側面の少なくとも一方が露出している露出領域を有する基材を用意し、
前記露出領域をエッチングする工程を含み、
前記エッチングによって前記腕部の幅を減らして、前記複数の腕部の前記幅方向に関する曲げ剛性を低くする。本適用例によれば、腕部の幅を調整し、曲げ剛性を調整することによって振動周波数を調整することができる。腕部の幅による周波数調整は重さによる調整よりも調整量が大きいので、振動周波数の調整範囲を拡大することができる。
[適用例2]本適用例に係る音叉型振動片の製造方法は、
基部及び前記基部から前記基部の厚み方向に交叉する方向に並んで延びる複数の腕部を含む基材であって、それぞれの前記腕部は、隣の前記腕部に対向する第1の側面及び前記第1の側面とは反対側を向く第2の側面を有する基材を用意し、
前記第1又は第2の側面に補強膜を形成する工程を含み、
前記補強膜によって、前記複数の腕部の前記幅方向に関する曲げ剛性を高くする。本適用例によれば、腕部の幅を調整し、曲げ剛性を調整することによって振動周波数を調整することができる。腕部の幅による周波数調整は重さによる調整よりも調整量が大きいので、振動周波数の調整範囲を拡大することができる。
[適用例3]本適用例に係る音叉型振動片の製造方法において、
前記複数の腕部の厚みを定義し相互に反対方向を向く第1及び第2の表面の少なくとも一方の表面に、下部電極膜を形成する工程と、圧電膜を形成する工程と、上部電極膜を形成する工程と、をさらに有し、前記下部電極膜と前記上部電極膜とに前記圧電膜が挟まれた第1及び第2の圧電積層体が形成され、前記第1の圧電積層体の前記下部電極膜と前記第2の圧電積層体の前記上部電極膜とが接続され、前記第1の圧電積層体の前記上部電極膜と前記第2の圧電積層体の前記下部電極膜とが接続される。
[適用例4]本適用例に係る音叉型振動片の製造方法は、基部及び前記基部から前記基部の厚み方向に交差する方向に並んで延びる複数の腕部を含み、かつ、圧電性を有する基材であって、それぞれの前記腕部は、隣の前記腕部に対向する第1の側面及び前記第1の側面とは反対側を向く第2の側面を有する基材を用意し、前記第1及び第2の側面と、前記複数の腕部の厚みを定義し相互に反対方向を向く第1及び第2の表面と、表面電極膜を形成する工程と、前記第1及び第2の側面に補強膜を形成する工程と、を有する。
[適用例5]本適用例に係る音叉型振動片の製造方法は、さらに、前記第1及び第2の側面に形成された前記補強膜をエッチングすることにより、前記複数の腕部の前記幅方向に関する曲げ剛性を調整する工程を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(第1の実施の形態)
図1〜図2は、本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。本実施の形態では、基材10を用意する。基材10は、水晶などの圧電材料(例えば、Zカット板、ATカット板、Xカット板)から構成してもよいし、シリコンから構成してもよい。基材10は、相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面12,14を有する。基材10は、基部16と、基部16からその厚み方向に直交して並んで延びる複数(一対)の腕部18を含む。この形状は、板材をエッチング(ウエットエッチング及びドライエッチングの少なくとも一方)することによって得ることができる。腕部18は、隣の腕部18に対向する第1の側面13と、第1の側面13とは反対を向く第2の側面15を有する。第1及び第2の側面13,15の間隔が腕部18の幅である。基材10は、第1及び第2の側面13,15の少なくとも一方が露出領域30(電極膜などで覆われていない領域)を有する。
【0006】
腕部18の第1及び第2の側面13,15を除く面(第1又は第2の表面12,14)には下部電極膜20が形成されている。図示は省略するが、下部電極膜20は、基部16上に至るように形成されている。下部電極膜20の形成は、スパッタリングや蒸着によって導電膜を形成し、その後、導電膜をエッチングによってパターニングするプロセスを含んでもよい。あるいは、パターニングされたマスクを基材10に形成してから、基材10のマスクに覆われていない領域に導電膜を形成してもよい。下部電極膜20上には圧電膜22が形成されている。圧電膜22は、ZnO、AlN、PZTなどの、水晶よりも圧電性の高い材料からなる。圧電膜22は、腕部18に形成される。圧電膜22の形成には、材料を除いて、下部電極膜20を形成する技術の他、CVD法、PVD法、ゾルゲル法などを適用することができる。圧電膜22上には上部電極膜24が形成されている。上部電極膜24の形成には、下部電極膜20を形成する技術を適用することができる。上部電極膜24も、基部16上に至るように形成されている。
【0007】
下部電極膜20と、上部電極膜24とに挟まれた圧電膜22から圧電積層体26が構成される。1つの腕部18には、第1及び第2の表面12,14のそれぞれに、一対の圧電積層体26が設けられている。一対の圧電積層体26は、それぞれ、腕部18の長さ方向に沿って延び、腕部18の幅方向に隣り合っている。また、一対の圧電積層体26は基部16まで延長して形成されても良いが、基部16の領域の基部圧電積層体26が腕部18を励振する効果は小さい。一対の圧電積層体26は、腕部18の幅方向の両端部に位置しており、一方の圧電積層体26の圧電膜22が伸びるときに他方の圧電積層体26の圧電膜22が縮むように駆動される。
【0008】
図1に示すように、腕部18の第1及び第2の表面12,14の少なくとも一方には錘金属膜28を形成する。錘金属膜28は、腕部18の、基部16とは反対側の先端部に形成する。
【0009】
図2に示すように、第1及び第2の側面13,15の露出領域30をエッチングする。エッチングには、CF、Cなどのプラズマガスを使用したドライエッチングを適用することができる。露出領域30をエッチングするときに、第1及び第2の表面12,14がエッチングされてもよい。
【0010】
本実施の形態によれば、露出領域30をエッチングするので、腕部18の幅が減り、腕部18を幅方向に曲がりやすくすることができる。そして、複数の腕部18の幅を調整することによって、腕部18の幅方向の曲がりやすさを調整し、振動周波数を調整することができる。複数の腕部18の幅による周波数調整は、重さによる調整よりも調整量が大きいので、振動周波数の調整範囲を拡大することができる。
【0011】
腕部18の曲がりにくさ・曲がりやすさの指標として、幅方向に関する曲げ剛性EIを用いる。図12に示すように、腕部18(広義には、梁)に曲げモーメントM(Sは中立面を指す。)が加わった際に、腕部18が曲率1/ρ(=dθ/dx)で静的に撓んでいる場合は、
1/ρ=M/EI
の関係を有する。曲げ剛性EIが高いほど曲がりにくい。
【0012】
なお、Eは材料固有のヤング率、Iは断面2次モーメントである。
【0013】
断面2次モーメントIは、微小断面要素dAに、曲げた際に引張応力が0である中立軸AXからの距離yの2乗を、掛けた値の総和であり、式で表わすと次のように定義される。
【0014】
I=∫dA
図13のように、中立軸AXに平行な辺の長さ(厚み)t、中立軸AXに垂直な辺の長さ(幅)wの長方形の断面を有する腕部18の断面2次モーメントIは、
=tw/12
となる。したがって、幅方向に関する断面2次モーメントおよび曲げ剛性は、腕部18の幅wの3乗に比例するため、幅を調整することで、幅方向の曲がりやすさを大きく制御することができる。
【0015】
なお、腕部18の幅方向の振動周波数F、腕部18の長さL、腕部18の幅(振動する方向の長さ)wは、
F=k・w/L(k:比例定数)
の関係を有する。腕部18の厚みの変化は、幅方向の振動周波数に影響しない。
【0016】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る方法で製造された音叉型振動片を使用した音叉型振動子の製造方法を説明する図である。本実施の形態では、上述したプロセスによって、第1及び第2の側面13,15の少なくとも一方の露出領域30をエッチングし、エッチングによって腕部18の幅を減らして、腕部18が幅方向に曲がりやすくなった音叉型振動片1を得る。
【0017】
音叉型振動子の製造方法では、パッケージ32を用意する。パッケージ32は、音叉型振動片1を固定するための底部34と、底部34を囲む枠壁部36と、を含む。パッケージ32は、その全体を金属で形成してもよいが、主としてセラミックス等の非金属で形成する場合には、枠壁部36の上端面はメタライズされている。底部34には、真空引きを行うための通気孔38が形成されている。パッケージ32(底部34)の内面には固定電極40が形成されている。パッケージ32(底部34)の外面には外部端子42が形成されている。固定電極40と外部端子42は図示しない配線で電気的に接続されている。外部端子42は、ハンダなどによって回路基板の配線パターン(図示せず)に実装される。パッケージ32の枠壁部36には、ロウ接合によってリング44を固定しておく。
【0018】
そして、音叉型振動片1をパッケージ32の内部に収容する。音叉型振動片1は、第1又は第2の表面12,14を底部34に向けて、上部電極膜24が固定電極40に対向するように配置する。ここで、望ましくは後述する錘金属膜28がパッケージ32の底部34を向くように配置する。音叉型振動片1は、腕部18が基部16から枠壁部36に向かって延びるように固定する。基部16を底部34に固定して、腕部18をパッケージ32から浮かす。底部34は、腕部18の先端部と対向する領域が低くなっており、腕部18が曲がっても底部34に接触し難いようになっている。
【0019】
パッケージ32と音叉型振動片1の固定は接合部材46によって図る。接合部材46は、導電性樹脂材料やハンダ等の金属材料であってもよい。金属材料は加熱してもガスが出ないので好ましい。接合部材46は、基部16とパッケージ32を接合し、腕部18をパッケージ32から浮いた状態に保持する。接合部材46は、基部16にある上部電極膜24と固定電極40を電気的及び機械的に接合する。
【0020】
リング44には、蓋48を固定する。蓋48は、音叉型振動片1が固定されるパッケージ32とオーバーラップしてパッケージ32の開口を塞ぐ。蓋48は、表面及び裏面を貫通する貫通穴50を有する。貫通穴50は、円形の開口形状をなしている。蓋48は、ガラス又は樹脂などの材料からなる光透過性部材52を含む。光透過性部材52は、貫通穴50の内面に密着してなる。
【0021】
パッケージ32の開口を蓋48によって塞いだ後に、パッケージ32に形成された通気孔38を介して、蓋48によって塞がれたパッケージ32内を真空にし、その後、ロウ材54で通気孔38を塞ぐ。
【0022】
音叉型振動子の製造方法は、腕部18の先端部にある錘金属膜28をトリミングする工程をさらに含んでもよい。この工程は、パッケージ32の開口を蓋48によって塞いだ後(例えばさらに真空引き工程後)に行う。この工程は、光透過性部材52を通して、錘金属膜28に対してレーザービームを照射して行う。こうすることで、錘金属膜28を軽くすることができる。錘金属膜28が形成された腕部18の先端部の重さが重いほど腕部18の振動周波数が低くなり、軽いほど腕部18の振動周波数が高くなる。これを利用して周波数調整を行うことができる。上述した腕部18のエッチングによる周波数調整を粗調といい、錘金属膜28のトリミングによる周波数調整を微調ということができる。なお、錘金属膜28のトリミングは、レーザービームの代わりにイオンビームを使用して行ってもよい。その場合には、音叉型振動片1をパッケージ32に取り付ける前にイオンビーム照射を行うか、或いは、錘金属膜28がパッケージ32の開口を向くように配置して蓋48で開口を塞ぐ前にイオンビーム照射を行う。
【0023】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動子の動作を説明する断面図である。本実施の形態により製造される音叉型振動子は、上記プロセスから自明な構成を含む。
【0024】
本実施の形態では、上部電極膜24と下部電極膜20は、クロス配線によって交流電源に接続され、駆動電圧としての交番電圧が印加されるようになっている。上部電極膜24と下部電極膜20の間の電界の方向によって、圧電膜22が伸びるか縮むかが決まる。一つの腕部18において、第1の側面13に近い端部に位置するように第1及び第2の表面12,14に設けられた一対の圧電積層体26は、第1の表面12側の圧電膜22が延びると、第2の表面14側の圧電膜22も延びるように、それぞれの圧電積層体26の下部電極膜20同士、上部電極膜24同士が電気的に接続されている。第2の側面15に近い端部に位置する圧電積層体26についても同様である。また、一方の圧電積層体26の下部電極膜20と、他方の圧電積層体26の上部電極膜24が電気的に接続されている。このように電気的に接続するのは、圧電膜22が成長方向によって結晶軸方向が決定するため、第1の表面12側と第2の表面14側では、圧電膜22の結晶方位が面対称になるからである。
【0025】
また、一方の腕部18の第1の側面13に近い圧電積層体26と、他方の腕部18の第1の側面13に近い圧電積層体26とは、下部電極膜20同士の電位が同じで、上部電極膜24同士の電位が同じになるように電気的に接続されている。第2の側面15に近い圧電積層体26についても同様である。
【0026】
上部電極膜24と下部電極膜20の間に電圧を印加し、第2の側面15に近い圧電膜22を伸ばし、第1の側面13に近い圧電膜22を縮めることで、基材10の腕部18が互いに接近する向きに屈曲させる。次に第1の側面13に近い圧電膜22を伸ばし、第2の側面15に近い圧電膜22を縮めることで、腕部18は、第1又は第2の側面13,15が離れる方向に屈曲する。圧電膜22の伸縮を繰り返すことで腕部18を屈曲振動させる。基本波モードの固有振動周波数で駆動すると、一対の腕部18は、互いに逆相振動となるように励振されて屈曲振動する。
【0027】
音叉型振動子を使用して、発振器又はセンサを構成することができる。音叉型振動子を含む発振回路で発振器を構成すると、周波数精度の高い交流信号を得ることができる。また、音叉型振動子を使用したセンサは、物理量に応じて音叉型振動片の周波数が変動することを利用してその物理量を検出するセンサである。例えば、温度、加速度によって発生する応力、角速度によって発生するコリオリ力などを検出するセンサが例に挙げられる。
【0028】
(変形例)
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法の変形例を説明する図である。この変形例では、腕部18をエッチングする代わりに、第1又は第2の側面13,15に補強膜60を形成する。例えば、SiO、Au、Cr、Al等で成膜することで補強膜60を形成する。補強膜60によって腕部18の幅を大きくして、複数の腕部18の幅方向に関する曲げ剛性を高くする。その他の構成及びプロセスは、上記実施の形態で説明した内容が該当する。この変形例でも、腕部18の幅を調整し、曲げ剛性を調整することによって振動周波数を調整することができる。さらに、補強膜60をエッチングすることにより、複数の腕部18の幅方向に関する曲げ剛性を調整してもよい。
【0029】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。本実施の形態で用意する基材110では、第1の表面112に圧電積層体126が設けられているが、第2の表面114には圧電積層体は設けられていない点で、第1の実施の形態と異なる。本実施の形態でも、第1及び第2の側面113,115の少なくとも一方において、露出領域130をエッチングして、腕部118の幅を調整する。これにより、振動周波数を調整することができる。その他の構造及びプロセスについては、第1の実施の形態で説明した内容が該当する。
【0030】
変形例として、図7に示すように、第1又は第2の側面113,115に補強膜160を形成してもよい。その他の構造及びプロセスについては、第1の実施の形態の変形例で説明した内容が該当する。
【0031】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る音叉型振動子の動作を説明する断面図である。本実施の形態により製造される音叉型振動子は、上記プロセスから自明な構成を含む。
【0032】
本実施の形態でも、上部電極膜124と下部電極膜120は、クロス配線によって交流電源に接続され、駆動電圧としての交番電圧が印加されるようになっている。ただし、第1の実施の形態とは異なり、第1の表面112にのみ圧電積層体126が設けられているので、腕部118の振動は、屈曲のみならず、ねじれ成分を含む。
【0033】
(第3の実施の形態)
図9及び図10は、本発明の第3の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。本実施の形態で用意する基材310では、第1及び第2の表面312,314には表面電極膜320が形成され、第1及び第2の側面313,315に側面電極膜330が形成されている。本実施の形態では、基材310自体が圧電体(例えば水晶)である。
【0034】
そして、第1及び第2の側面313,315(正確には第1及び第2の側面313,315の上方であって側面電極膜330上)に補強膜360を形成する。その詳細は、第1の実施の形態の変形例で説明した通りである。補強膜360は、第1及び第2の表面312,314に付着してもよいが、図10の例では、基材310を、第1の表面312の側からスパッタリング又は蒸着により補強膜360を形成するため、台に対向する第2の表面314には補強膜360が形成されていない。本実施の形態でも、補強膜360をエッチングすることにより腕部318の幅を調整し、曲げ剛性を調整することによって振動周波数を調整することができる。
【0035】
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る音叉型振動子の動作を説明する断面図である。本実施の形態により製造される音叉型振動子は、上記プロセスから自明な構成を含む。
【0036】
本実施の形態では、第1及び第2の表面312,314に形成された表面電極膜320と、第1及び第2の側面313,315に形成された側面電極膜330との間に電圧を印加する。印加電圧によって、図11に矢印で示すように電界が発生する。表面電極膜320及び側面電極膜330は、クロス配線によって交流電源に接続され、駆動電圧としての交番電圧が印加されるようになっている。これにより、腕部318は、互いに逆相振動となるように(腕部318の先端側が互いに接近・離間するように)励振されて屈曲振動する。また、基本モードで振動するように、駆動電圧としての交番電圧が調整されている。
【0037】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る方法で製造された音叉型振動片を使用した音叉型振動子の製造方法を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動子の動作を説明する断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法の変形例を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法の変形例を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る音叉型振動子の動作を説明する断面図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る音叉型振動片の製造方法を説明する図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る音叉型振動子の動作を説明する断面図である。
【図12】腕部の曲げモーメントとたわみを表わす図である。
【図13】断面2次モーメントを説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
1…音叉型振動片、 10…基材、 12…第1の表面、 13…第1の側面、 14…第2の表面、 15…第2の側面、 16…基部、 18…腕部、 20…下部電極膜、 22…圧電膜、 24…上部電極膜、 26…圧電積層体、 28…錘金属膜、 30…露出領域、 32…パッケージ、 34…底部、 36…枠壁部、 38…通気孔、 40…固定電極、 42…外部端子、 44…リング、 46…接合部材、 48…蓋、 50…貫通穴、 52…光透過性部材、 54…ロウ材、 60…補強膜、 110…基材、 112…第1の表面、 113…第1の側面、 114…第2の表面、 115…第2の側面、 118…腕部、 120…下部電極膜、 124…上部電極膜、 126…圧電積層体、 130…露出領域、 160…補強膜、 310…基材、 312…第1の表面、 313…第1の側面、 314…第2の表面、 315…第2の側面、 318…腕部、 320…表面電極膜、 330…側面電極膜、 360…補強膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部及び前記基部から前記基部の厚み方向に交差する方向に並んで延びる複数の腕部を含む基材であって、それぞれの前記腕部は、隣の前記腕部に対向する第1の側面及び前記第1の側面とは反対側を向く第2の側面を有し、前記第1及び第2の側面の少なくとも一方が露出している露出領域を有する基材を用意し、
前記露出領域をエッチングする工程を含み、
前記エッチングによって前記腕部の幅を減らして、前記複数の腕部の前記幅方向に関する曲げ剛性を低くする音叉型振動片の製造方法。
【請求項2】
基部及び前記基部から前記基部の厚み方向に交差する方向に並んで延びる複数の腕部を含む基材であって、それぞれの前記腕部は、隣の前記腕部に対向する第1の側面及び前記第1の側面とは反対側を向く第2の側面を有する基材を用意し、
前記第1又は第2の側面に補強膜を形成する工程を含み、
前記補強膜によって、前記複数の腕部の前記幅方向に関する曲げ剛性を高くする音叉型振動片の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された音叉型振動片の製造方法において、
前記複数の腕部の厚みを定義し相互に反対方向を向く第1及び第2の表面の少なくとも一方の表面に、
下部電極膜を形成する工程と、
圧電膜を形成する工程と、
上部電極膜を形成する工程と、
をさらに有し、
前記下部電極膜と前記上部電極膜とに前記圧電膜が挟まれた第1及び第2の圧電積層体が形成され、前記第1の圧電積層体の前記下部電極膜と前記第2の圧電積層体の前記上部電極膜とが接続され、前記第1の圧電積層体の前記上部電極膜と前記第2の圧電積層体の前記下部電極膜とが接続される音叉型振動片の製造方法。
【請求項4】
基部及び前記基部から前記基部の厚み方向に交差する方向に並んで延びる複数の腕部を含み、かつ、圧電性を有する基材であって、それぞれの前記腕部は、隣の前記腕部に対向する第1の側面及び前記第1の側面とは反対側を向く第2の側面を有する基材を用意し、
前記第1及び第2の側面と、前記複数の腕部の厚みを定義し相互に反対方向を向く第1及び第2の表面と、表面電極膜を形成する工程と、
前記第1及び第2の側面に補強膜を形成する工程と、
を有する音叉型振動片の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された音叉型振動片の製造方法において、
前記第1及び第2の側面に形成された前記補強膜をエッチングすることにより、前記複数の腕部の前記幅方向に関する曲げ剛性を調整する工程を有する音叉型振動片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−239859(P2009−239859A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86872(P2008−86872)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】