顔向き検知装置
【課題】 スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供する。
【解決手段】 スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対する前記スリット光の投光角度を可変とする投光手段と、前記ドライバの顔に投光された前記スリット光の画像を撮影する撮影手段と、前記投光手段に対し投光指令をおよび投光角度指令を出力し、かつ前記撮影手段に前記画像の撮影タイミング指令を出力する制御手段とを備え、前記制御手段は、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数の前記スリット光画像を比較し、前記ドライバの顔向きを算出する画像処理手段を有することとした。
【解決手段】 スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対する前記スリット光の投光角度を可変とする投光手段と、前記ドライバの顔に投光された前記スリット光の画像を撮影する撮影手段と、前記投光手段に対し投光指令をおよび投光角度指令を出力し、かつ前記撮影手段に前記画像の撮影タイミング指令を出力する制御手段とを備え、前記制御手段は、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数の前記スリット光画像を比較し、前記ドライバの顔向きを算出する画像処理手段を有することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるドライバの顔向き検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるドライバの顔向き検知装置にあっては、レーザによるスリット光を被検出物体に投光し、カメラによって撮影された反射光の画像を処理することで被検出物体を識別している。この技術にあっては、太陽など環境光の変動による誤差を低減するため、スリット光の投光時における画像と非投光時における画像の差分値をとることにより、環境光の影響を低減している。
【特許文献1】特開平6−174443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来技術にあっては、スリット光投光時の画像と非投光時の画像を交互に撮影するため、スリット投光画像はカメラの撮影回数の半分しか得られない。したがって被検出物体の処理精度が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明では、スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対する前記スリット光の投光角度を可変とする投光手段と、前記ドライバの顔に投光された前記スリット光の画像を撮影する撮影手段と、前記投光手段に対し投光指令をおよび投光角度指令を出力し、かつ前記撮影手段に前記画像の撮影タイミング指令を出力する制御手段とを備え、前記制御手段は、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数の前記スリット光画像を比較し、前記ドライバの顔向きを算出する画像処理手段を有することとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の顔向き検知装置の実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
[システム構成]
実施例1につき説明する。図1は本願顔向き検知装置1のシステム構成図、図2はスリット光源20(投光手段)からのスリット投光をカメラ10によって撮影するメカニズム、図3はスリット光源20によるドライバの顔への投光を可変とするメカニズムである。スリット光源20はドライバの顔へのスリット光投光角度を可変可能に設けられている。
【0009】
顔向き検知装置1は車両に搭載され、ドライバ検知カメラ10に接続する。顔向き検知装置1内にはコントロールユニットCUが設けられ、カメラ10の撮影タイミング、スリット光源20の投光指令および投光角度指令を出力する。
【0010】
ドライバ検知カメラ10は車室内のインパネ2の上部に設けられ、ドライバの顔面全体を撮影する。ドライバ検知カメラ10をインパネ2の上部に設けることで、ステアリングホイール3によって遮られることなくドライバの顔面全体を撮影可能となっている。
【0011】
スリット光源20は光源21および可動ミラー22から構成される。光源21はコントロールユニットCUからの指令に基づき1本のスリット光を出力し、可動ミラー22はコントロールユニットCUからの指令に基づき回転して、ドライバの顔へのスリット光投光角度を制御する。
【0012】
光源21は内部にスリットを備え、スリットの透過光を可動ミラー22に照射し、照射されたスリット光を可動ミラー22が適宜角度を調整してドライバの顔に投光する。投光されたスリット光をカメラ10によって撮影し、顔向き検知装置1内のコントロールユニットCUにおいて画像処理を行う。
【0013】
なお、1回のスリット光投光に対するカメラ10の撮影回数は1回である。また、可動ミラー22は揺動することにより投光角度を変更し、可動ミラー22の揺動の1周期でスリット光によるドライバの顔のスキャンが1回行われるものとする。
【0014】
すなわち、可動ミラー22の揺動周期の前半はドライバの顔の上方からスキャンが行われ、揺動周期の後半は顔の下方からスキャンが行われる。したがって、可動ミラー22の揺動1周期に対し、ドライバの顔の同じ位置が2回スキャンされることとなる。
【0015】
[制御ブロック図]
図4は顔向き検知装置1内に設けられたコントロールユニットCUの制御ブロック図である。顔向き検知装置1はスリット投光制御部110、カメラ同期制御部120、スリット検出処理部130、3次元座標変換部140、ドライバ顔向き算出部150を有する。なお、スリット検出処理部130、3次元座標変換部140、ドライバ顔向き算出部150によって画像処理手段CU1を構成する。
【0016】
スリット投光制御部110は光源21に対しスリットのON/OFF指令を出力し、可動ミラー22に対し回転角度指令を出力する。カメラ同期制御部120はカメラ10に対しシャッタータイミングを出力する。
【0017】
スリット検出処理部130はカメラ10からの画像に基づきドライバの顔に投光されたスリット光の座標およびカメラ10の撮影角度を3次元座標変換部140へ出力する。3次元座標変換部140は光切断法によりドライバの3次元顔座標を算出し、ドライバ顔向き算出部150へ出力する。ドライバ顔向き算出部150は、3次元顔座標に基づきドライバの顔向きを出力する。
【0018】
ドライバの顔に投光されたスリット光は干渉フィルタ23(バンドパスフィルタ)を介してカメラ10に撮影される。干渉フィルタ23は光源21から投光と同じ波長のみを透過させるフィルタであり、これにより環境光によるノイズを低減する。
【0019】
(スリット検出処理部)
図5はスリット検出処理部130の制御ブロック図である。スリット検出処理部130は、カメラ10により撮影された画像Aと、画像Aの後に撮影された画像Bに基づきスリット座標およびスリット投光角度を算出する。この画像A,Bは互いに異なる角度からスリット光を投光して得られた画像である。
【0020】
スリット検出処理部103は、処理範囲計算部131、差分値計算部132、スリット座標算出部133を有する。
【0021】
処理範囲計算部131は画像A,Bのスリット投光角度、ドライバの顔までの距離に基づき処理範囲(図6〜図8参照)を計算して出力する。ドライバの顔までの距離は前回制御のスリット光画像に基づき演算され、この距離を用いて処理範囲を限定することによりコントロールユニットCUの演算負荷を低減する。
【0022】
差分値計算部132は各スリット光画像A,Bの画素ごとに輝度の差分値をとる。各スリット光画像A,Bは環境光の影響が反映された輝度となっているため、差分値をとることにより環境光の影響をキャンセルする。
【0023】
スリット光画像A,Bではスリットの投光角度が変化しているため、時刻t1に撮影されたスリット光画像Aでのスリット部分は、スリット光画像Bではスリットから外れた暗部となる。逆に、時刻t2(時刻t1よりも後)に撮影されたスリット光画像Bでのスリット部分は、スリット光画像Aでは暗部となる。スリット光画像AとBにおける同一特定画素の差分値をとることで、スリットの有無の検出を行う(図6〜図8参照)。
【0024】
(スリット光画像Aのスリットが検出される場合)
例えば、スリット光画像Aにおけるスリット部分の特定画素の輝度を10とし、スリット光画像Bにおける同一画素の輝度を1とする(本来は0であるが環境光の影響により輝度1が出ているものとする)。この同一画素における輝度の差分値は10−1=9であり、スリット光画像Aのスリットとして検出される。
【0025】
(スリット光画像Bのスリットが検出される場合)
スリット光画像Bにおけるスリット部分の特定画素の輝度を11とし、スリット光画像Aにおける同一画素の輝度を2とする(本来は0であるが環境光の影響により輝度1が出ているものとする)。この同一画素における輝度の差分値は1−11=−10であり、スリット光画像Bのスリットとして検出される。
【0026】
(いずれの画像においてもスリットが検出されない場合)
いずれの画像の特定画素においてもスリットが存在しない場合、特定画素はいずれも暗部であって環境光による影響の輝度しか検出されない。したがって、特定画素におけるスリット光画像Aの輝度を1、スリット光画像Bの輝度を2とする。この場合、差分値は1−2=−1となる。その際、スリットを検出する輝度の閾値を例えば±4に設定することにより、スリットは検出されない。
【0027】
すなわち、閾値±4よりも差分値が+側に大きい場合、スリット光画像Aにおけるスリットを検出する。逆に−側に大きい場合はスリット光画像Bにおけるスリットを検出する。閾値±4の範囲内の場合は、差分値をゼロとしてスリットを検出しない。
【0028】
スリット座標算出部133は、差分値計算部132によって検出された差分値に基づき、光切断法を用いてスリット座標およびスリット投光角度を算出する。
【0029】
この処理を繰り返すことにより、ドライバの顔全体をスキャンしてドライバの3次元顔形状を算出する。この3次元顔形状に基づき、ドライバの顔向きを算出するものである。
【0030】
[顔向き算出フロー]
図9は顔向き算出フローである。以下、各ステップにつき説明する。
ステップS1ではスリット光源20からスリット光を投光し、ステップS2へ移行する。
【0031】
ステップS2ではカメラ10によりスリット光の画像を撮影し、ステップS3へ移行する。
【0032】
ステップS3では、処理範囲計算部131においてスリット光検出画像A,Bにおける処理範囲を計算し、ステップS4へ移行する。
【0033】
ステップS4では、差分値計算部132においてスリット光検出画像A,Bにおける画素の差分値を演算し、ステップS5へ移行する。
【0034】
ステップS5では、差分値に基づきスリットの有無を検出し、ステップS6へ移行する。
【0035】
ステップS6ではスリット座標算出部133においてスリット座標を出力し、ステップS7へ移行する。また、スリット投光角度も出力する。
【0036】
ステップS7では3次元座標変換部140においてドライバの3次元顔座標を求め、ステップS8へ移行する。
【0037】
ステップS8ではドライバの顔形状を算出し、ステップS9へ移行する。
【0038】
ステップS9ではドライバの顔向きを算出し、制御を終了する。
【0039】
[実施例1の効果]
スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対するスリット光の投光角度を可変とするスリット光源20(投光手段)と、
ドライバの顔に投光されたスリット光の画像を撮影するカメラ10(撮影手段)と、
スリット光源20に対し投光指令および投光角度指令を出力し、かつカメラ10に画像の撮影タイミング指令を出力するコントロールユニットCU(制御手段)を備え、
コントロールユニットCUは、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数のスリット光画像A,Bを比較し、ドライバの顔向きを算出する画像処理手段CU1を有することとした。
【0040】
これにより、スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供することができる。
【0041】
(2)画像処理手段CU1は、複数のスリット光画像A,Bの輝度の差分値に基づき、ドライバの顔向きを算出することとした。これにより、環境光の影響をより効果的にキャンセルすることができる。
【0042】
(3)画像処理手段CU1は、複数のスリット光画像A,Bを比較する範囲を限定することとした。処理範囲を限定することで、制御の演算負荷を低減することができる。
【0043】
また、可動ミラー22の揺動によってスリット光の投光角度を変更するため、スリット光を出力する光源21そのものを動かす必要がない。光源21には電気配線は接続されるため動かすことは耐久性の観点から好ましくないが、電気配線の接続されない可動ミラー22を揺動させることで耐久性を向上させることができる。
【0044】
(他の実施例)
以上、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願は、車両用であるが、その他移動体への利用は容易である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本願顔向き検知装置のシステム構成図である。
【図2】スリット投光をカメラによって撮影するメカニズムである。
【図3】ドライバの顔への投光角度を可変とするメカニズムである。
【図4】コントロールユニットの制御ブロック図である。
【図5】スリット検出処理部の制御ブロック図である。
【図6】スリット光画像Aである。
【図7】スリット光画像Bである。
【図8】差分値の画像である。
【図9】顔向き算出フローである。
【符号の説明】
【0047】
1 顔向き検知装置
10 カメラ(撮影手段)
20 スリット光源(投光手段)
CU コントロールユニット(制御手段)
CU1 画像処理手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるドライバの顔向き検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるドライバの顔向き検知装置にあっては、レーザによるスリット光を被検出物体に投光し、カメラによって撮影された反射光の画像を処理することで被検出物体を識別している。この技術にあっては、太陽など環境光の変動による誤差を低減するため、スリット光の投光時における画像と非投光時における画像の差分値をとることにより、環境光の影響を低減している。
【特許文献1】特開平6−174443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来技術にあっては、スリット光投光時の画像と非投光時の画像を交互に撮影するため、スリット投光画像はカメラの撮影回数の半分しか得られない。したがって被検出物体の処理精度が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明では、スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対する前記スリット光の投光角度を可変とする投光手段と、前記ドライバの顔に投光された前記スリット光の画像を撮影する撮影手段と、前記投光手段に対し投光指令をおよび投光角度指令を出力し、かつ前記撮影手段に前記画像の撮影タイミング指令を出力する制御手段とを備え、前記制御手段は、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数の前記スリット光画像を比較し、前記ドライバの顔向きを算出する画像処理手段を有することとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の顔向き検知装置の実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
[システム構成]
実施例1につき説明する。図1は本願顔向き検知装置1のシステム構成図、図2はスリット光源20(投光手段)からのスリット投光をカメラ10によって撮影するメカニズム、図3はスリット光源20によるドライバの顔への投光を可変とするメカニズムである。スリット光源20はドライバの顔へのスリット光投光角度を可変可能に設けられている。
【0009】
顔向き検知装置1は車両に搭載され、ドライバ検知カメラ10に接続する。顔向き検知装置1内にはコントロールユニットCUが設けられ、カメラ10の撮影タイミング、スリット光源20の投光指令および投光角度指令を出力する。
【0010】
ドライバ検知カメラ10は車室内のインパネ2の上部に設けられ、ドライバの顔面全体を撮影する。ドライバ検知カメラ10をインパネ2の上部に設けることで、ステアリングホイール3によって遮られることなくドライバの顔面全体を撮影可能となっている。
【0011】
スリット光源20は光源21および可動ミラー22から構成される。光源21はコントロールユニットCUからの指令に基づき1本のスリット光を出力し、可動ミラー22はコントロールユニットCUからの指令に基づき回転して、ドライバの顔へのスリット光投光角度を制御する。
【0012】
光源21は内部にスリットを備え、スリットの透過光を可動ミラー22に照射し、照射されたスリット光を可動ミラー22が適宜角度を調整してドライバの顔に投光する。投光されたスリット光をカメラ10によって撮影し、顔向き検知装置1内のコントロールユニットCUにおいて画像処理を行う。
【0013】
なお、1回のスリット光投光に対するカメラ10の撮影回数は1回である。また、可動ミラー22は揺動することにより投光角度を変更し、可動ミラー22の揺動の1周期でスリット光によるドライバの顔のスキャンが1回行われるものとする。
【0014】
すなわち、可動ミラー22の揺動周期の前半はドライバの顔の上方からスキャンが行われ、揺動周期の後半は顔の下方からスキャンが行われる。したがって、可動ミラー22の揺動1周期に対し、ドライバの顔の同じ位置が2回スキャンされることとなる。
【0015】
[制御ブロック図]
図4は顔向き検知装置1内に設けられたコントロールユニットCUの制御ブロック図である。顔向き検知装置1はスリット投光制御部110、カメラ同期制御部120、スリット検出処理部130、3次元座標変換部140、ドライバ顔向き算出部150を有する。なお、スリット検出処理部130、3次元座標変換部140、ドライバ顔向き算出部150によって画像処理手段CU1を構成する。
【0016】
スリット投光制御部110は光源21に対しスリットのON/OFF指令を出力し、可動ミラー22に対し回転角度指令を出力する。カメラ同期制御部120はカメラ10に対しシャッタータイミングを出力する。
【0017】
スリット検出処理部130はカメラ10からの画像に基づきドライバの顔に投光されたスリット光の座標およびカメラ10の撮影角度を3次元座標変換部140へ出力する。3次元座標変換部140は光切断法によりドライバの3次元顔座標を算出し、ドライバ顔向き算出部150へ出力する。ドライバ顔向き算出部150は、3次元顔座標に基づきドライバの顔向きを出力する。
【0018】
ドライバの顔に投光されたスリット光は干渉フィルタ23(バンドパスフィルタ)を介してカメラ10に撮影される。干渉フィルタ23は光源21から投光と同じ波長のみを透過させるフィルタであり、これにより環境光によるノイズを低減する。
【0019】
(スリット検出処理部)
図5はスリット検出処理部130の制御ブロック図である。スリット検出処理部130は、カメラ10により撮影された画像Aと、画像Aの後に撮影された画像Bに基づきスリット座標およびスリット投光角度を算出する。この画像A,Bは互いに異なる角度からスリット光を投光して得られた画像である。
【0020】
スリット検出処理部103は、処理範囲計算部131、差分値計算部132、スリット座標算出部133を有する。
【0021】
処理範囲計算部131は画像A,Bのスリット投光角度、ドライバの顔までの距離に基づき処理範囲(図6〜図8参照)を計算して出力する。ドライバの顔までの距離は前回制御のスリット光画像に基づき演算され、この距離を用いて処理範囲を限定することによりコントロールユニットCUの演算負荷を低減する。
【0022】
差分値計算部132は各スリット光画像A,Bの画素ごとに輝度の差分値をとる。各スリット光画像A,Bは環境光の影響が反映された輝度となっているため、差分値をとることにより環境光の影響をキャンセルする。
【0023】
スリット光画像A,Bではスリットの投光角度が変化しているため、時刻t1に撮影されたスリット光画像Aでのスリット部分は、スリット光画像Bではスリットから外れた暗部となる。逆に、時刻t2(時刻t1よりも後)に撮影されたスリット光画像Bでのスリット部分は、スリット光画像Aでは暗部となる。スリット光画像AとBにおける同一特定画素の差分値をとることで、スリットの有無の検出を行う(図6〜図8参照)。
【0024】
(スリット光画像Aのスリットが検出される場合)
例えば、スリット光画像Aにおけるスリット部分の特定画素の輝度を10とし、スリット光画像Bにおける同一画素の輝度を1とする(本来は0であるが環境光の影響により輝度1が出ているものとする)。この同一画素における輝度の差分値は10−1=9であり、スリット光画像Aのスリットとして検出される。
【0025】
(スリット光画像Bのスリットが検出される場合)
スリット光画像Bにおけるスリット部分の特定画素の輝度を11とし、スリット光画像Aにおける同一画素の輝度を2とする(本来は0であるが環境光の影響により輝度1が出ているものとする)。この同一画素における輝度の差分値は1−11=−10であり、スリット光画像Bのスリットとして検出される。
【0026】
(いずれの画像においてもスリットが検出されない場合)
いずれの画像の特定画素においてもスリットが存在しない場合、特定画素はいずれも暗部であって環境光による影響の輝度しか検出されない。したがって、特定画素におけるスリット光画像Aの輝度を1、スリット光画像Bの輝度を2とする。この場合、差分値は1−2=−1となる。その際、スリットを検出する輝度の閾値を例えば±4に設定することにより、スリットは検出されない。
【0027】
すなわち、閾値±4よりも差分値が+側に大きい場合、スリット光画像Aにおけるスリットを検出する。逆に−側に大きい場合はスリット光画像Bにおけるスリットを検出する。閾値±4の範囲内の場合は、差分値をゼロとしてスリットを検出しない。
【0028】
スリット座標算出部133は、差分値計算部132によって検出された差分値に基づき、光切断法を用いてスリット座標およびスリット投光角度を算出する。
【0029】
この処理を繰り返すことにより、ドライバの顔全体をスキャンしてドライバの3次元顔形状を算出する。この3次元顔形状に基づき、ドライバの顔向きを算出するものである。
【0030】
[顔向き算出フロー]
図9は顔向き算出フローである。以下、各ステップにつき説明する。
ステップS1ではスリット光源20からスリット光を投光し、ステップS2へ移行する。
【0031】
ステップS2ではカメラ10によりスリット光の画像を撮影し、ステップS3へ移行する。
【0032】
ステップS3では、処理範囲計算部131においてスリット光検出画像A,Bにおける処理範囲を計算し、ステップS4へ移行する。
【0033】
ステップS4では、差分値計算部132においてスリット光検出画像A,Bにおける画素の差分値を演算し、ステップS5へ移行する。
【0034】
ステップS5では、差分値に基づきスリットの有無を検出し、ステップS6へ移行する。
【0035】
ステップS6ではスリット座標算出部133においてスリット座標を出力し、ステップS7へ移行する。また、スリット投光角度も出力する。
【0036】
ステップS7では3次元座標変換部140においてドライバの3次元顔座標を求め、ステップS8へ移行する。
【0037】
ステップS8ではドライバの顔形状を算出し、ステップS9へ移行する。
【0038】
ステップS9ではドライバの顔向きを算出し、制御を終了する。
【0039】
[実施例1の効果]
スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対するスリット光の投光角度を可変とするスリット光源20(投光手段)と、
ドライバの顔に投光されたスリット光の画像を撮影するカメラ10(撮影手段)と、
スリット光源20に対し投光指令および投光角度指令を出力し、かつカメラ10に画像の撮影タイミング指令を出力するコントロールユニットCU(制御手段)を備え、
コントロールユニットCUは、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数のスリット光画像A,Bを比較し、ドライバの顔向きを算出する画像処理手段CU1を有することとした。
【0040】
これにより、スリットの検出回数を低下させることなく、あるいはカメラの撮影回数を増やすことなく環境光の影響を低減させ、被検出物体の処理精度を向上させた顔向き検知装置を提供することができる。
【0041】
(2)画像処理手段CU1は、複数のスリット光画像A,Bの輝度の差分値に基づき、ドライバの顔向きを算出することとした。これにより、環境光の影響をより効果的にキャンセルすることができる。
【0042】
(3)画像処理手段CU1は、複数のスリット光画像A,Bを比較する範囲を限定することとした。処理範囲を限定することで、制御の演算負荷を低減することができる。
【0043】
また、可動ミラー22の揺動によってスリット光の投光角度を変更するため、スリット光を出力する光源21そのものを動かす必要がない。光源21には電気配線は接続されるため動かすことは耐久性の観点から好ましくないが、電気配線の接続されない可動ミラー22を揺動させることで耐久性を向上させることができる。
【0044】
(他の実施例)
以上、実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願は、車両用であるが、その他移動体への利用は容易である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本願顔向き検知装置のシステム構成図である。
【図2】スリット投光をカメラによって撮影するメカニズムである。
【図3】ドライバの顔への投光角度を可変とするメカニズムである。
【図4】コントロールユニットの制御ブロック図である。
【図5】スリット検出処理部の制御ブロック図である。
【図6】スリット光画像Aである。
【図7】スリット光画像Bである。
【図8】差分値の画像である。
【図9】顔向き算出フローである。
【符号の説明】
【0047】
1 顔向き検知装置
10 カメラ(撮影手段)
20 スリット光源(投光手段)
CU コントロールユニット(制御手段)
CU1 画像処理手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対する前記スリット光の投光角度を可変とする投光手段と、
前記ドライバの顔に投光された前記スリット光の画像を撮影する撮影手段と、
前記投光手段に対し投光指令をおよび投光角度指令を出力し、かつ前記撮影手段に前記画像の撮影タイミング指令を出力する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数の前記スリット光画像を比較し、前記ドライバの顔向きを算出する画像処理手段を有すること
を特徴とする顔向き検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の顔向き検知装置において、
前記画像処理手段は、複数の前記スリット光画像の輝度の差分値に基づき、前記ドライバの顔向きを算出すること
を特徴とする顔向き検知装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の顔向き検知装置において、
前記画像処理手段は、複数の前記スリット光画像を比較する範囲を限定すること
を特徴とする顔向き検知装置。
【請求項1】
スリット光をドライバの顔に投光するとともに、このドライバの顔に対する前記スリット光の投光角度を可変とする投光手段と、
前記ドライバの顔に投光された前記スリット光の画像を撮影する撮影手段と、
前記投光手段に対し投光指令をおよび投光角度指令を出力し、かつ前記撮影手段に前記画像の撮影タイミング指令を出力する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、異なる時間に撮影され、かつ異なる投光角度で撮影された複数の前記スリット光画像を比較し、前記ドライバの顔向きを算出する画像処理手段を有すること
を特徴とする顔向き検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の顔向き検知装置において、
前記画像処理手段は、複数の前記スリット光画像の輝度の差分値に基づき、前記ドライバの顔向きを算出すること
を特徴とする顔向き検知装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の顔向き検知装置において、
前記画像処理手段は、複数の前記スリット光画像を比較する範囲を限定すること
を特徴とする顔向き検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2010−133790(P2010−133790A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308786(P2008−308786)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】
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