説明

風力発電機主軸支持構造

【課題】主軸と内輪との間に生じるフレッティング摩耗を防止する円錐ころ軸受を使用することにより、メンテナンス周期を延伸した風力発電機主軸支持構造を提供する。
【解決手段】風力発電機支持構造は、主軸26と、主軸26を支持する円錐ころ軸受31とを備える。この円錐ころ軸受31の内側軌道面32a,32bのうち、一方側の内側軌道面32aは主軸26上に設けられており、他方側の内側軌道面32bは主軸26に固定された内輪32上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、片持ち梁に対して大きなラジアル荷重が負荷される風力発電機主軸支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の風力発電機1は、例えば、特開2005−207517号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されている風力発電機1は、図3に示すように、支持台2と、支持台2上に旋回座軸2aを介して水平旋回自在に配置される主要部品を格納するナセル2と、軸受ハウジング4に固定された軸受5によって回転自在に支持される主軸6と、主軸6の一方端側にブレード7と、主軸6の他方端側に増速機8および発電機9とを備える。
【0003】
上記構成の風力発電機1は、風を受けて回転するブレード7に伴って主軸6が回転し、増速機8によって主軸6の回転が増速され、発電機9で電力に変換される。この風力発電機1の主軸6は、ブレード7が風を受けることによって生じるアキシアル荷重の他に、ブレード7の自重によって生じるラジアル荷重を受ける。
【0004】
このため、主軸6を支持する軸受5には、ラジアル荷重とアキシアル荷重とが同時に負荷される環境で使用可能な自動調心ころ軸受や円錐ころ軸受が使用される。主軸6を支持する軸受の一例として、図4に示す円錐ころ軸受11は、中央に間座12cを挟んだ分割内輪12a,12bを含む内輪12と、外輪13と、内輪12および外輪13の間に複列に配置された複数の円錐ころ14と、円錐ころ14を収容するポケットを有する保持器(図示せず)とを備える。
【0005】
この円錐ころ軸受11を主軸6に組込む手順としては、まず、ポケットに円錐ころ14を収容した保持器を分割内輪12a,12bそれぞれに組込む。次に、内径面に締代を設けた分割内輪12aに熱を加えて、内輪12aの内径寸法が主軸6の外径寸法より大きくなるまで膨張させて主軸6に組込む(以下、この組込み方法を「焼き嵌め」という)。そして、間座12cおよび外輪13を挿入後、分割内輪12bを分割内輪12aと同様に焼き嵌めする。最後に、分割内輪12bの端面に当接して円錐ころ軸受11を固定する固定リング15をボルト16によって主軸6に固定する。
【特許文献1】特開2005−207517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の風力発電機1において、図5に示すように、ブレード7側に負荷されるラジアル荷重によって主軸6が傾くと、主軸6と分割内輪12aの大鍔側内径面との間に隙間を生じる。ラジアル荷重が断続的に負荷されると、主軸6と分割内輪12aとの間でフレッティング摩耗を生じ、この摩耗粉が軸受内部に混入することによる軸受寿命の低下等の問題を生じる恐れがある。
【0007】
一方で、風力発電機1の主軸6は高所に設置されることから、メンテナンスには多大な時間、コスト、および危険が伴う。そのため、風力発電機1のメンテナンス周期を延伸するために、各部品には高い耐久性が求められる。
【0008】
そこで、この問題を解決する方法としては、内輪12の締代を大きくすることが考えられるが、締代を大きくすると、焼き嵌め時に所定寸法まで膨張させるのに、より高い温度まで加熱する必要が生じる。
【0009】
しかし、内輪12をあまり高い温度まで加熱すると組織が変化する恐れがある。また、締代を大きくしすぎると、主軸6および内輪12の双方に大きな残留応力が生じ、寿命低下の原因となる。
【0010】
また、近年では、ブレード7の大型化や風力発電機1をより風の強い場所に設置する等、発電効率の向上を目的とした取り組みがなされており、これに伴って、主軸6に負荷されるラジアル荷重も大きくなっていることから、この問題に対する解決策が望まれている。
【0011】
そこで、この発明の目的は、主軸と内輪との間に生じるフレッティング摩耗を防止する円錐ころ軸受を使用することにより、メンテナンス周期を延伸した風力発電機主軸支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る風力発電機主軸支持構造は、風力発電機の主軸と、主軸を支持する複列円錐ころ軸受とを備える。そして、複列円錐ころ軸受の一方側の内側軌道面は主軸に設けられ、他方側の内側軌道面は主軸に固定された内輪に設けられている。
【0013】
上記構成の風力発電機主軸支持構造において、一方側の内側軌道面を主軸に設けることにより、主軸にラジアル荷重が負荷されてもフレッティング摩耗を防止することができる。その結果、耐久性および信頼性に優れた風力発電機主軸支持構造を得ることができる。なお、本明細書中「内側軌道面」とは、円錐ころの公転軌道の内側の軌道面を指すものとする。
【0014】
好ましくは、主軸は、その一端に風を受けて回転するブレードをさらに備え、主軸に設けられた内側軌道面は、ブレードに近い側に配置される。風力発電機の主軸を支持する円錐ころ軸受には、ブレードに近い側により大きなラジアル荷重が負荷される。そこで、ブレードに近い側の内側軌道面を主軸に形成することにより、この発明の効果をさらに高めることができる。
【0015】
好ましくは、風力発電機主軸支持構造は、内輪の端面に当接して内輪を固定する固定部材をさらに備える。複列円錐ころ軸受では、主軸への組込みの観点から両方の内側軌道面を主軸に形成することはできない。そこで、主軸に嵌合する内輪を軸方向から加圧して固定することにより、主軸と内輪との間に生じるフレッティング摩耗を有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、一方側の内側軌道面を主軸に形成することにより、主軸と内輪との間に生じるフレッティング摩耗を抑制し、メンテナンス周期を延伸した風力発電機主軸支持構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態に係る風力発電機21を説明する。
【0018】
図2に示すような風力発電機21は、高所に配置された主要部品を格納するナセル22と、軸受ハウジング24に固定された軸受25によって回転自在に支持される主軸26と、主軸26の一方端側にブレード27と、主軸26の他方端側に増速機28および発電機29とを備える。この風力発電機21は、風を受けて回転するブレード27に伴って主軸26が回転し、増速機28によって主軸26の回転が増速され、発電機29で電力に変換される。
【0019】
そして、この風力発電機21の主軸26を支持する軸受25としては、例えば、図1に示すような円錐ころ軸受31がある。この円錐ころ軸受31は、ブレード27に近い側の内側軌道面32aが主軸26上に、他方側の内側軌道面32bが主軸26に固定された内輪32上にそれぞれ設けられており、内側軌道面32aと外輪33との間、および内側軌道面32bと外輪33との間にそれぞれ円錐ころ34が配置される。また、各列の円錐ころ34は、保持器(図示せず)によって保持され、内輪32は、主軸26にボルト36で固定された固定部材35が、端面を軸方向に加圧することによって固定されている。
【0020】
風力発電機31は、ブレード27の自重等によって、軸受25のブレード27に近い側に大きなラジアル荷重が負荷される。そこで、ブレード27に近い側の内側軌道面を主軸26に形成することにより、軸受内輪と主軸26とのフレッティング摩耗を防止することができる。これにより、摩耗粉の混入等による軸受寿命の低下を抑制して、メンテナンス周期を延伸した風力発電機支持構造を得ることができる。
【0021】
次に、図1に示す円錐ころ軸受31を主軸26に組込む方法を説明する。まず、2つの保持器の各ポケットに円錐ころ34を組み込み、一方を主軸26の内側軌道面32aに沿うように配置し、他方を内輪32の内側軌道面32bに沿うように配置する。次に、外輪33、保持器を組込んだ内輪32、および固定部材35の順に組込む。なお、内輪32の内径面には締代を設け、焼き嵌めして主軸26に固定する。
【0022】
このように、円錐ころ軸受31は、組込みの観点から両方の内側軌道面32a,32bを主軸26上に形成することができないので、内側軌道面32bは、主軸26に嵌合する内輪32上に形成する。そこで、リング状の固定部材35で内輪32を軸方向に加圧することにより、内輪32を確実に主軸26上に固定することが可能となる。
【0023】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、風力発電機の主軸を支持する円錐ころ軸受に有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態に係る風力発電機主軸支持構造を示す図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る風力発電機の斜視図である。
【図3】従来の風力発電機の概略図である。
【図4】従来の風力発電機主軸支持構造を示す図である。
【図5】図4の主軸にラジアル荷重を負荷した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1,21 風力発電機、2 支持台、2a 旋回座軸、3,23 ナセル、4,24 軸受ハウジング、5,25 軸受、6,26 主軸、7,27 ブレード、8,28 増速機、9,29 発電機、11,31 円錐ころ軸受、12,32 内輪、12a,12b,32a,32b 内側軌道面、12c 間座、13,33 外輪、14,34 円錐ころ、15,35 固定部材、16,36 ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電機の主軸と、
前記主軸を支持する複列円錐ころ軸受とを備える風力発電機主軸支持構造であって、
前記複列円錐ころ軸受の一方側の内側軌道面は前記主軸に設けられ、他方側の内側軌道面は前記主軸に固定された内輪に設けられている、風力発電機主軸支持構造。
【請求項2】
前記主軸は、その一端に風を受けて回転するブレードをさらに備え、
前記主軸に設けられた内側軌道面は、前記ブレードに近い側に配置される、請求項1に記載の風力発電機主軸支持構造。
【請求項3】
前記風力発電機主軸支持構造は、前記内輪の端面に当接して前記内輪を固定する固定部材をさらに備える、請求項1または2に記載の風力発電機主軸支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−132418(P2007−132418A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325213(P2005−325213)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】