説明

駆動回路、発光装置、電子機器およびデータ線駆動方法

【課題】 発光特性を改善する。
【解決手段】 単位駆動回路U1は、駆動電流Idataを生成する駆動電流生成部Uaと付加電流Iadを生成する付加電流生成部Ubを備える。付加電流生成部Ubは、第2制御信号CTL2のデータ値に応じた付加電流Iadをデジタル的に生成する。駆動電流Idataと付加電流Iadは接続点Zで合成され、スイッチSWaを介して容量を有するデータ線に供給される。付加電流Iadはデータ線の容量によって定まる時定数で変化し、当該容量の充電電流を補償するように定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量を有するデータ線を駆動する駆動回路、これを用いた発光装置、電子機器およびデータ線駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下適宜「OLED素子」と略称する)素子が注目されている。このOLED素子を用いたパネルは、OLED素子が自発光型であるために視野角依存性が少なく、また、バックライトや反射光が不要であるために低消費電力化や薄型化に向いている。
【0003】
ここで、OLED素子は、液晶素子のように電圧保持性を有さず、電流が途絶えると、発光状態が維持できなくなる電流型の被駆動素子である。OLED素子を用いた発光装置には、パッシブ型と呼ばれるものがある。パッシブ型の発光装置は、各OLED素子が接続される複数のデータ線とこれを駆動するデータ線駆動回路とを備える。
データ線は容量を有するため、駆動電流の一部は容量を充電することになる。このため、実際のOLED素子に供給される電流波形は、矩形波を積分した波形となる。OLED素子の発光輝度は電流に比例するので、発光輝度と同じように変化する。表示装置において瞬時輝度を時間積分した値は視覚特性を定める重要なパラメータであるところ、発光輝度の立ち上がりが緩やかな場合、このパラメータの制御性が悪くなる。
【0004】
そこで、駆動電流を制御する技術として、特許文献1にはデータ線駆動回路から出力する電流を過渡的に変化させる技術が開示されている。また、特許文献2には、駆動電流を大電流→発光電流といったように2段階で変化させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−40988号公報
【特許文献1】特開2002−55654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、OLED素子の接合容量へ流れる電流と略同じ電流をアナログ回路で加算して出力電流を生成するものであった。このため、データ線の容量は考慮されていなかった。また、アナログ回路を用いると、その時定数によって加算電流の波形が一意に定まってしまうため、データ線の容量が異なるパネルに適用することができず、汎用性に乏しいといった欠点があった。
また、特許文献2に記載の技術は、駆動電流の制御が2段階であるため、容量に充電される電流を正確に補償することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、データ線の容量に充電される電流をデジタル的に補償することが可能な駆動回路、これを用いた発光装置、電子機器およびデータ線駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る駆動回路は、容量を有するデータ線を介して駆動対象に電流を供給するものであって、前記駆動対象を駆動するための駆動電流を生成する駆動電流生成手段と、前記容量の値で定まる時定数でデータ値が変化する制御データに基づいて、前記容量を充電するために付加電流をデジタル的に生成する付加電流生成手段と、前記駆動電流と前記付加電流とを合成して出力電流を生成し、当該出力電流を前記データ線に供給する電流供給手段と、を備える。
【0008】
この発明によれば、駆動電流と付加電流とを合成して出力電流を生成するが、付加電流はデータ線の容量を充電するために用いられるので、駆動電流を駆動対象に供給することが可能となる。換言すれば、出力電流を容量で消費されてしまう電流と駆動に寄与する電流に分けて生成することによって、駆動対象を所望の電流波形で駆動することが可能となる。さらに、付加電流を制御データに基づいてデジタル的に生成するので、汎用性を飛躍的に高めることができる。仮に、付加電流に時定数を持たせるため、アナログ素子で構成される時定数回路を駆動回路に組み込むと、各種の仕様によってデータ線の長さや幅が変更になった場合、駆動回路を適用することができなくなってしまうが、本発明によれば、付加電流を制御データに基づいて生成するので、仕様変更に柔軟に対応することが可能となる。加えて、アナログ素子のバラツキ等の影響を受けないので、正確に付加電流を生成することが可能となる。
【0009】
ここで、付加電流生成手段の具体的な態様としては以下のものがある。第1の態様は、前記制御データによって制御される電流加算型のDA変換回路で構成するものである。第2の態様は、前記制御データに応じた所定電圧を生成する電圧生成回路と、前記所定電圧に応じた前記付加電流を出力する定電流回路とを備えるものである。いずれの場合もデジタル的に付加電流を生成することが可能である。
【0010】
また、上述した駆動回路において、前記付加電流生成手段は、電流を吐き出す方向を正方向、電流を吸い込む方向を負方向としたとき、前記制御データに基づいて前記正方向の前記付加電流を生成する正方向電流生成手段と、前記制御データに基づいて前記負方向の前記付加電流を生成する負方向電流生成手段と、前記正方向の前記付加電流と前記負方向の前記付加電流とを合成して、前記電流供給手段に出力する合成手段とを、備えることが好ましい。この発明によれば、付加電流を吐き出すことも吸い込むこともできるので、例えば、データ線のインダクタンス成分を無視できず電流波形にリンギングが発生する場合、あるいは、既にデータ線に充電されている電荷を抜き出す場合に好適である。
【0011】
また、上述した駆動回路において、前記駆動電流生成手段は、パルス幅を調整した前記駆動電流を生成し、前記付加電流生成手段は、前記駆動電流のパルスが有効化されたタイミングから前記付加電流を出力することが好ましい。この場合には、パルス幅変調法で駆動対象を駆動することができる。
【0012】
また、上述した駆動回路において、前記駆動電流生成手段は、電流値を調整した前記駆動電流を生成し、前記付加電流生成手段は、前記駆動電流の電流値に応じて前記付加電流の電流値を調整することが好ましい。この場合には、パルス振幅変調法で駆動対象を駆動することができる。
【0013】
次に、本発明に係る発光装置は、各々が容量を有する複数のデータ線と、前記容量の値で定まる時定数でデータ値が変化する制御データを生成する制御手段と、上述した駆動回路を前記複数のデータ線の各々に対応して備え、前記制御データに基づいて前記出力電流を生成して前記各データ線に出力するデータ線駆動回路と、前記複数のデータ線を介して供給される前記出力電流によって駆動される複数の発光素子と、を備える。この場合、発光素子が駆動対象となる。出力電流をデータ線に供給すると、付加電流が容量に充電され、残りの駆動電流が発光素子に供給される。駆動電流と付加電流は独立して設定されるので、駆動電流を急峻に立ち上げれば、発光素子を急峻に立ち上がる電流で駆動することが可能となる。
【0014】
上述した発光装置において、前記制御手段は、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、一定時間ごとに前記制御データのデータ値を更新することが好ましい。また、前記制御手段は、前記制御データのデータ値を一定値ごとに更新し、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、前記データ値の更新間隔を制御してもよい。この場合には、時間間隔を制御することによって付加電流の大きさを制御するので、駆動回路の構成を簡易にできる。例えば、ビット数の少ない制御データを用いることによって駆動回路に組み込む電流DACの構成を簡略化することが可能となる。
【0015】
次に、本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備える。そのような電子機器としては、プリンタや複写機等の画像形成装置、表示装置、これを用いたパーソナルコンピュータ、携帯電話機、電子カメラ等が該当する。
【0016】
次に、本発明に係るデータ線駆動方法は、容量を有するデータ線を介して駆動対象を駆動するものであって、前記駆動対象を駆動するための駆動電流を生成し、前記容量の値で定まる時定数でデータ値が変化する制御データを生成し、前記制御データに基づいて、前記容量を充電するための付加電流をデジタル的に生成し、前記駆動電流と前記付加電流とを合成して出力電流を生成し、当該出力電流を前記データ線に供給する、ことを特徴とする。この発明によれば、出力電流をデータ線に供給すると、付加電流が容量に充電され、残りの駆動電流が駆動対象に供給される。駆動電流と付加電流は独立して設定されるので、駆動電流を急峻に立ち上げれば、急峻に立ち上がる電流で駆動対象を駆動することが可能となる。
【0017】
ここで、前記制御データを生成する工程は、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、一定時間ごとに前記制御データのデータ値を更新してもよい。あるいは、前記制御データを生成する工程は、前記制御データのデータ値を一定値ごとに更新し、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、前記データ値の更新間隔を制御してもよい。この場合には、時間間隔を制御することによって付加電流の大きさを制御するので、正確に付加電流を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。この発光装置10は、画像形成装置としてのプリンタのヘッド部として用いられる。発光装置10はライン型の光ヘッドであり、データ線駆動回路100、制御回路200、n本のデータ線L、およびn個のOLED素子ELを備える。各データ線LはOLED素子ELの陽極に接続されている。また、各データ線Lは、その幅と長さ等に応じた容量と抵抗を有している。
【0019】
データ線駆動回路100は、各データ線Lに電流を供給するn個の単位駆動回路U1〜Unを備え、制御回路200から供給される各種の制御信号に基づいて制御される。
図2に単位駆動回路U1の回路図を示す。なお、他の単位駆動回路Un+1〜Unも単位駆動回路U1と同様に構成されている。単位駆動回路U1には、図示せぬ電源回路から基準電圧Vrefと高電位電圧VELが供給され、制御回路200から第1制御信号CTL1および第2制御信号CTL2が供給される。この単位駆動回路U1は、パルス幅によってOLED素子ELの発光輝度を制御する。第1制御信号CTL1は階調に応じた期間だけアクティブとなる信号である。
【0020】
単位駆動回路U1は、駆動電流生成部Uaと付加電流生成部Ubとを備える。駆動電流生成部Uaはゲート電極に基準電圧Vrefが供給される駆動トランジスタTrDを備え、駆動電流Idataを生成する。駆動電流Idataの大きさは駆動トランジスタTrDのサイズと基準電圧Vrefによって定まる。また、付加電流生成部UbはトランジスタTr1〜Tr4とスイッチSW1〜SW4を備える。この例においてトランジスタTr1、Tr2、Tr3、およびTr4のサイズは1:2:4:8となるように設定されている。また、スイッチSW1〜SW4の一方の端子は各トランジスタTr1〜Tr4と接続され、他方の端子は接続点Zに接続される。接続点Zにおいては、駆動電流Idataと付加電流Iadが合成され、合成された電流が出力電流IoutとしてスイッチSWaに供給される。
【0021】
スイッチSW1〜SW4のオン・オフは4ビットの第2制御信号CTL2によって制御される。これにより、付加電流Iadの値が16段階に定まる。一方、スイッチSWaは第1制御信号CTL1によって制御される。この例では、第1制御信号CTL1がアクティブになるとスイッチSWaがオン状態になる一方、第1制御信号CTL1が非アクティブになるとスイッチSWaがオフ状態になる。
【0022】
ところで、上述したようにデータ線Lは容量を有する負荷である。従って、図3に示すように、出力電流Ioutとして時刻t0において「0」から「Iint」にステップ状に変化する電流をデータ線Lに供給したとすると、出力電流Ioutの一部はデータ線Lの容量を充電するために用いられる。この電流を充電電流Icと呼び、OLED素子ELに流れる電流を注入電流Ioledと呼ぶことにする。図3に示すように充電電流Icは時刻t0においてIintに等しく時間が経過するにつれ次第に減少しやがて「0」に漸近する。一方、注入電流Ioledは、時刻t0において「0」であり時間が経過するにつれ次第に大きくなりやがてIintに漸近する。
【0023】
本実施形態において駆動電流Idataの値はIintに設定されており、付加電流Iadの値は充電電流Icとなるように設定される。従って、出力電流Ioutは、図4に示すように変化する。ここで、制御回路200は、時刻t0において第1制御信号CTL1をアクティブにするのと同時に、第2制御信号CTL2のデータ値を充電電流Icに応じて時間間隔ΔT毎に変化させる。換言すれば、第2制御信号CTL2のデータ値は、データ線Lの容量の値で定まる時定数で変化する。これにより、OLED素子ELには、ステップ状に変化する駆動電流Idataが供給される。
【0024】
このように付加電流Iadをデジタル的に生成することによって、データ線駆動回路100に汎用性を持たせることができる。即ち、データ線Lの幅と長さは、ヘッド部の仕様によって区々である。このため、アナログ素子によって何らかの時定数回路を単位駆動回路に組み込むと、仕様が異なるものに適用することができない。これに対して、本実施形態の単位駆動回路U1〜Unは、第2制御信号CTL2によって、付加電流Iadの変化を定めることができるので、データ線Lの幅や長さが異なるものにも、第2制御信号CTL2の値を調整することによって適用することができる。この結果、データ線駆動回路100の汎用性を飛躍的に高めることができる。
【0025】
<2.第2実施形態>
第2実施形態に係る発光装置は、第2制御信号CTL2の制御方法を除いて、図1に示す第1実施形態の発光装置と同様である。第1実施形態の制御回路200は、一定の時間間隔Δt毎に第2制御信号CTL2のデータ値を変化させたが、第2実施形態の制御回路200はデータ値の変化幅を固定とし、データ値を更新する時間間隔を変化させて充電電流Icとなるように付加電流Iadを生成する。
【0026】
図5に出力電流Ioutの波形を示す。この図に示すように駆動電流Idataは時刻t0において「0」からIintにステップ状に変化する。また、付加電流Iadは、時刻t0から時間T1、T2、…、T7が各々経過すると、電流値がΔIだけ減少するように変化する。この場合には、付加電流生成部Ubから出力される付加電流IadがΔI刻みで変化する線形の特性を有するものであっても、時間の刻みを変化させることにより、非線形な付加電流Iadを生成することができる。
【0027】
時間の刻みは制御回路200において、周波数の高いクロック信号を計数することによって容易に可変することができる。一方、電流の刻みは付加電流生成部Ubに構成によって定まる。即ち、電流の刻みを小さくする場合には、電流DACのビット数を増加させる必要があり、構成が複雑となる。第2実施形態によれば、電流の刻みを一定として、時間の刻みを変化させたので、付加電流生成部Ubの構成を簡易すると共に、付加電流Iadの精度を向上させることが可能となる。
【0028】
<3.第3実施形態>
上述した第1および第2実施形態においては、データ線Lが容量成分と抵抗成分とを有するものとして説明したが、実際のデータ線Lはインダクタンス成分を含む。この容量成分とインダクタンス成分によって等価的に共振回路が構成される。出力電流Ioutをステップ状に変化させると電流波形にリンギングが発生する。この場合、図6に示すように注入電流Ioledと充電電流Icの電流波形が波打つ。第3実施形態に係る発光装置は、注入電流Ioledのリンギングを防止するものである。
【0029】
図7に第3実施形態の単位駆動回路U1の回路図を示す。第3実施形態に係る発光装置は、単位駆動回路U1〜Unの詳細な構成を除いて、図1に示す第1実施形態の発光装置と同様に構成されている。尚、他の単位駆動回路U2〜Unについても単位駆動回路U1と同様に構成されている。この単位駆動回路U1において、付加電流生成部Ubは、電流を吐き出す方向を正方向とし、電流を吸い込む方向を負方向としたとき、正方向の付加電流(以下、正方向付加電流Iad1と称する)を生成する正方向電流生成部Ub1と負方向の付加電流(以下、負方向付加電流Iad2と称する)を生成する負方向電流生成部Ub2とを備える。
【0030】
第3実施形態の正方向付加電流生成部Ub1は第1実施形態の付加電流生成部Ubと同様に構成されている。正方向付加電流生成部Ub1のトランジスタTr1〜Tr4はpチャネル型で構成されているので、正方向付加電流Iad1の方向はデータ線Lへ吐き出す方向となる。一方、負方向付加電流生成部Ub2は,nチャネル型のトランジスタTr1’〜Tr4’とスイッチSW1’〜SW4’とを備える。そして、トランジスタとスイッチの組がオン状態になるとデータ線Lから電流を吸い込む方向に負方向付加電流Iad2が流れる。正方向付加電流Iad1の値は正方向第2制御信号CTL2によって制御され、負方向付加電流Iad2の値は負方向第1制御信号CTL2’によって制御される。これらの信号は、制御回路200から供給される。
【0031】
接続点Zにおいては、駆動電流Idata、正方向付加電流Iad1、および負方向付加電流Iad2が合成されるので、出力電流Ioutは、Iout=Idata+Iad1-Iad2となり、駆動電流Idataを基準として正負方向の電流を供給することが可能となる。
図8に、出力電流Ioutの波形を示す。同図に示す正方向付加電流Iad1と負方向付加電流Iad2とは、図6に示す充電電流Icと等しくなるように設定されている。これによって、電流のオーバーシュートを付加電流Iad(=Iad1-Iad2)によって補償することができ、OLED素子ELにステップ状に変化する駆動電流Idataを供給することが可能となる。なお、この例では、第1実施形態と同様に一定の時間間隔毎に正方向付加電流Iad1および負方向付加電流Iad2の値を変化させたが、第2実施形態のように付加電流Iadの変化幅を固定として、時間間隔を変化させてもよい。
【0032】
<4.単位駆動回路の変形例>
上述した第1乃至第3実施形態において、付加電流生成部Ubは電流加算型DACで構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2制御信号に応じた所定電圧を生成し、所定電圧に応じた付加電流を生成してもよい。
例えば、第1実施形態の単位駆動回路U1〜Unの替わりに図9に示す単位駆動回路Uを用いることができる。この単位駆動回路Uは付加電流生成部Ub1の詳細な構成を除いて図2に示す第1実施形態の単位駆動回路U1と同様に構成されている。付加電流生成部Uc1は、pチャネル型のトランジスタTrpで構成される定電流源、並びに、選択回路110およびラダー抵抗120で構成される可変電圧源を備える。選択回路110は、第2制御信号CTL2に基づいて、抵抗分割された電圧をトランジスタTrpのゲート電極に供給する。従って、第2制御信号CTL2に応じた所定電圧がトランジスタTrpのゲート電極に印加される。トランジスタTrpはゲート・ソース間電圧に応じた電流を吐き出す定電流源として機能するので、第2制御信号CTL2のデータ値に応じた付加電流Iadを生成することができる。
【0033】
また、第3実施形態の単位駆動回路U1〜Unの替わりに図10に示す単位駆動回路U’を用いることができる。この単位駆動回路U’は付加電流生成部として正方向付加電流生成部Uc1の他に負方向付加電流生成部Uc2を備える。負方向負荷電流生成部Uc2は、nチャネル型のトランジスタTrnで構成される定電流源、並びに、選択回路130およびラダー抵抗140で構成される可変電圧源を備える。選択回路130は、第2制御信号CTL2’に基づいて、抵抗分割された電圧をトランジスタTrpのゲート電極に供給する。これにより、第2制御信号CTL2’のデータ値に応じた負方向付加電流Iad2を生成することができる。
【0034】
<5.画像形成装置>
図11は、上述した発光装置10をヘッド部に用いた画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。この画像形成装置は、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K、10C、10M、10Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K、110C、110M、110Yの露光位置にそれぞれ配置したものであり、タンデム方式の画像形成装置として構成されている。有機ELアレイ露光ヘッド10K、10C、10M、10Yは上述したヘッド部10によって構成されている。
【0035】
図11に示すように、この画像形成装置は、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、図示矢印方向へ循環駆動される中間転写ベルト120を備えている。この中間転写ベルト120に対して所定間隔で配置された4個の像担持体としての外周面に感光層を有する感光体110K、110C、110M、110Yが配置される。前記符号の後に付加されたK、C、M、Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示す。他の部材についても同様である。感光体110K、110C、110M、110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0036】
各感光体110(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体110(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)111(K、C、M、Y)と、この帯電手段111(K、C、M、Y)により一様に帯電させられた外周面を感光体110(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の上記のような有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)が設けられている。
また、この有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置114(K、C、M、Y)を有している。
【0037】
ここで、各有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)は、有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)のアレイ方向が感光体ドラム110(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置される。そして、各有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)の発光エナルギーピーク波長と、感光体110(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とは略一致するように設定されている。
【0038】
現像装置114(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラヘ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体110(K、C、M、Y)に接触あるいは押厚させることにより、感光体110(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させることによりトナー像として現像するものである。
【0039】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写され、中間転写ベルト120上で順次重ね合わされてフルカラーとなる。ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送された記録媒体102は、二次転写ローラ126に送られる。中間転写ベルト120上のトナー像は、二次転写ローラ126において用紙等の記録媒体102に二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることで記録媒体102上に定着される。この後、記録媒体102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙トレイ上へ排出される。
このように、図8の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを用いているので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。
【0040】
次に、本発明に係る画像形成装置に係る他の実施の形態について説明する。図12は、画像形成装置の縦断側面図である。図12において、画像形成装置には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、有機ELアレイが設けられている露光ヘッド167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。露光ヘッド167は上述した発光装置10によって構成されている。
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として反時計回り方向に回転する。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。現像ローラ162a〜162dおよびトナー供給ローラ163a〜163は、前記4色の各像形成ユニットに各々配置されている。また、規制フレード164a〜164dによってトナーは所定の厚さに規制される。
【0041】
感光体ドラム165は、帯電器168によって帯電され、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより現像ローラ162aとは逆方向に駆動される。中間転写ベルト169は、従動ローラ170bと駆動ローラ170a間に張架されており、駆動ローラ170aが前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されて、中間転写ベルトに動力を伝達している。当該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆方向に回動される。
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙を搬送する。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写される。二次転写ローラ171は、クラッチにより中間転写ベルト169に離当接され、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接されて用紙に画像が転写される。
【0042】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢視F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢視G方向に進行する。用紙は、給紙トレイ178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出されるようになっている。
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータは、例えば低速のブラシレスモークが用いられる。また、中間転写ベルト169は色ずれ補正などが必要となるのでステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略している制御手段からの信号により制御される。
【0043】
図の状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ128aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが90度回転する。
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次にシアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0044】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後に更に回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
【0045】
<6.変形例>
また、上述した発光装置10を、パッシブ型、アクティブ型の表示装置に適用することができる。この場合には、複数の走査線と複数のデータ線と、それらの交差に対応して複数のOLED素子を配置すればよい。また、データ線の駆動上述したパルス幅変調法(PWM)の他に、パルス振幅変調法(PAM)を用いることができる。
【0046】
また、パルス幅変調法を用いる場合には、駆動電流Idataの値が固定値Iintで与えられるため、付加電流Iadの電流値を駆動電流Idataに応じて制御する必要がない。これに対して、パルス振幅変調法を用いる場合は、駆動電流Idataの電流値に応じて付加電流Iadの電流値を調整することが好ましい。この場合、制御回路200において駆動電流Idataの大きさに応じた第2制御信号CTL2を生成し、付加電流生成部Ubにおいて第2制御信号CTL2に基づいて付加電流Iadを生成すればよい。あるいは、付加電流生成部Ubにおいて駆動電流Idataの大きさを検知し、検知結果に基づいて付加電流Iadの大きさを調整すればよい。いずれの場合であっても、付加電流生成部Ubにおいて駆動電流Idataの電流値に応じて付加電流Iadの電流値を調整することが好ましい。但し、パルス振幅変調法において、付加電流Iadの電流値を駆動電流Idataの電流値に連動して変化させなくとも一定の効果を得ることができるので、構成を簡略化する観点から付加電流Iadの電流値を連動させなくてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態においては、電流駆動素子としてOLED素子を一例として説明したが、無機EL素子や発光ダイオードであってもよい。更に、駆動対象は、フィールドエミッション素子(FED)、表面伝導型エミッション素子(SED)、弾道電子表出素子(BSD)などの自発光素子であってもよい。
【0048】
なお、表示装置を用いた電子機器としては、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、デジタルスチルカメラ、テレビジョンモニタ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した表示装置が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同装置の単位駆動回路の構成を示す回路図である。
【図3】出力電流Iout、充電電流Icおよび注入電流Ioledの関係を示す説明図である。
【図4】同装置の出力電流Ioutの波形図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る発光装置における出力電流Ioutの波形図である。
【図6】データ線Lがインダクタンス成分を含む場合における出力電流Iout、充電電流Icおよび注入電流Ioledの関係を示す説明図である。
【図7】第3実施形態の単位駆動回路U1の構成を示す回路図である。
【図8】同装置における出力電流Ioutの波形図である。
【図9】変形例に係る単位駆動回路の構成例を示す回路図である。
【図10】変形例に係る単位駆動回路の他の構成例を示す回路図である。
【図11】発光装置を用いた画像形成装置の構造を示す断面図である。
【図12】発光装置を用いた他の画像形成装置の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10…発光装置、L…データ線、OLED素子…EL、Ua…駆動電流生成部、Ub…付加電流生成部、Ub1…正方向付加電流生成部、Ub2…負方向付加電流生成部、Idata…駆動電流、Iad…付加電流、Iad1…正方向付加電流、Iad2…負方向付加電流、Iout…出力電流、Trp,Trn…トランジスタ(定電流源)、110,130…選択回路、120,140…ラダー抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量を有するデータ線を介して駆動対象に電流を供給する駆動回路であって、
前記駆動対象を駆動するための駆動電流を生成する駆動電流生成手段と、
前記容量の値で定まる時定数でデータ値が変化する制御データに基づいて、前記容量を充電するために付加電流をデジタル的に生成する付加電流生成手段と、
前記駆動電流と前記付加電流とを合成して出力電流を生成し、当該出力電流を前記データ線に供給する電流供給手段と、
を備えた駆動回路。
【請求項2】
前記付加電流生成手段は、前記制御データによって制御される電流加算型のDA変換回路で構成されることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記付加電流生成手段は、
前記制御データに応じた所定電圧を生成する電圧生成回路と、
前記所定電圧に応じた前記付加電流を出力する定電流回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記付加電流生成手段は、電流を吐き出す方向を正方向、電流を吸い込む方向を負方向としたとき、
前記制御データに基づいて前記正方向の前記付加電流を生成する正方向電流生成手段と、
前記制御データに基づいて前記負方向の前記付加電流を生成する負方向電流生成手段と、
前記正方向の前記付加電流と前記負方向の前記付加電流とを合成して、前記電流供給手段に出力する合成手段とを、
備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記駆動電流生成手段は、パルス幅を調整した前記駆動電流を生成し、
前記付加電流生成手段は、前記駆動電流のパルスが有効化されたタイミングから前記付加電流を出力することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記駆動電流生成手段は、電流値を調整した前記駆動電流を生成し、
前記付加電流生成手段は、前記駆動電流の電流値に応じて前記付加電流の電流値を調整することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の駆動回路。
【請求項7】
各々が容量を有する複数のデータ線と、
前記容量の値で定まる時定数でデータ値が変化する制御データを生成する制御手段と、
請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の駆動回路を前記複数のデータ線の各々に対応して備え、前記制御データに基づいて前記出力電流を生成して前記各データ線に出力するデータ線駆動回路と、
前記複数のデータ線を介して供給される前記出力電流によって駆動される複数の発光素子と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、一定時間ごとに前記制御データのデータ値を更新することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記制御データのデータ値を一定値ごとに更新し、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、前記データ値の更新間隔を制御することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のうちいずれか1項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
容量を有するデータ線を介して駆動対象を駆動するデータ線駆動方法であって、
前記駆動対象を駆動するための駆動電流を生成し、
前記容量の値で定まる時定数でデータ値が変化する制御データを生成し、
前記制御データに基づいて、前記容量を充電するための付加電流をデジタル的に生成し、
前記駆動電流と前記付加電流とを合成して出力電流を生成し、当該出力電流を前記データ線に供給する、
ことを特徴とするデータ線駆動方法。
【請求項12】
前記制御データを生成する工程は、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、一定時間ごとに前記制御データのデータ値を更新することを特徴とする請求項11に記載のデータ線駆動方法。
【請求項13】
前記制御データを生成する工程は、前記制御データのデータ値を一定値ごとに更新し、前記容量の値で定まる時定数で前記データ値が変化するように、前記データ値の更新間隔を制御することを特徴とすることを特徴とする請求項11に記載のデータ線駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−208752(P2006−208752A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20833(P2005−20833)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】