説明

高分子駆動器を含む微小バルブ構造体及びラボオンチップモジュール

【課題】高分子駆動器を含む微小バルブ構造体及びラボオンチップモジュールを提供する。
【解決手段】微小バルブ構造体は基板10上に配置される柔軟構造物20及び柔軟構造物20内に挿入される高分子駆動器40を含むことができる。この時、柔軟構造物20は微小流路35を定義するバルブ部25を有し、高分子駆動器40は柔軟構造物20によって微小流路35から分離される。さらに、高分子駆動器40はバルブ部25の変位を制御することによって、微小流路35の幅を変化させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小流路制御技術に係り、より具体的には、高分子駆動器を含む微小バルブ構造体及びラボオンチップモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、バイオセンサー技術及び半導体技術の発達と共に、微小流体の流量または方向を制御する微小流体制御技術の開発及び応用が加速化されている。このような微小流体制御技術によって、血液のような生物学的流体(biological fluid)に含まれた微量の特定成分を定量的、または定性的に検出できるようになった。これによって、この技術はバイオチップまたはラボオンチップ(Lab−On−A−Chip;LOC)技術分野での核心技術として位置づけている。
【0003】
微小流体の制御のためには、微小流路を所望する形態に形成することができるパターニング技術及び微小流路の開閉を制御することができるスイッチング技術が確保されなければならない。前記微小流路のパターニング技術は半導体製造技術または微小電子機械システム(micro electro mechanical system;MEMS)技術の発展によって可能になった。前記微小流路のスイッチング技術は圧電素子を利用する微小駆動器(micro actuator)を通じて実現可能である。圧電素子を利用したこのような微小駆動器は大量生産に適するだけでなく、高い信頼性を提供するが、大きい消耗電力及び小型化での制限によって、ポイントオブケアテスティング(point−of−care testing;POCT)器機または携帯用器機などでは使われ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許登録第0748181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、低消費電力、小さい体積及び強化された耐久性を提供することができる微小バルブ構造体を提供することにある。
【0006】
本発明の課題は、低消費電力、小さい体積及び強化された耐久性を提供することができる微小バルブ構造体を含むラボオンチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
バルブの開閉が高分子駆動器によって直接制御される微小バルブ構造体を提供する。該微小バルブ構造体は、基板と、前記基板上に配置される柔軟構造物(flexible structure)と、前記柔軟構造物内に挿入される高分子駆動器(polymer actuator)と、を含むことができる。この時、前記柔軟構造物は微小流路(micro channel)を定義するバルブ部(valve portion)を有し、前記高分子駆動器は前記柔軟構造物により前記微小流路から分離することができる。これに加えて、前記高分子駆動器は前記バルブ部の変位を機械的に直接制御することによって、前記微小流路の幅を変化させるように構成することができる。
一実施形態によれば、前記高分子駆動器は一対の電極及びこれらの間に介在されるイオン伝導性高分子合成物(ionic polymer metal composite)を含むことができる。前記イオン伝導性高分子合成物はスルホン酸化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体−共重合体(sulfonated tetrafluoroethylene based fluoropolymer−copolymers)のうちの1つになることができる。
【0008】
一実施形態によれば、前記微小流路は互いに離隔された第1流路及び第2流路を含むことができ、前記柔軟構造物のバルブ部は前記第1及び第2流路の間に介在され、前記高分子駆動器は前記バルブ部内に挿入された部分を有することができる。また、前記高分子駆動器は前記第1及び第2流路、そして前記バルブ部の幅の和より大きい幅を有することができ、長方形の上部面及び下部面を有する直方体形になることができる。
【0009】
一実施形態によれば、前記微小流路は外部から流体が供給される流入口(inlet)及び前記流体が排出される流出口(outlet)を有することができる。また、前記基板は前記微小流路として使われるリセス領域を有し、前記柔軟構造物のバルブ部を前記リセス領域に挿入することができる。
【0010】
一実施形態によれば、前記高分子駆動器はそれの最も広い表面が前記基板の上部面に実質的に平行に配置することができる。他の実施形態によれば、前記高分子駆動器はそれの最も広い表面が前記基板の上部面に実質的に垂直に配置することができる。
【0011】
高分子駆動器を具備する微小バルブ構造体を提供する。該微小バルブ構造体は互いに離隔された第1及び第2流路の間に介在されるバルブ部を含みながら基板上に配置される柔軟構造物、そして前記柔軟構造物内に挿入されて前記バルブ部の変位を制御するように構成される高分子駆動器を含むことができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記高分子駆動器は前記柔軟構造物によって前記第1及び第2流路から離隔することができる。前記高分子駆動器は一対の電極及びこれらの間に介在されるイオン伝導性高分子合成物(ionic polymer metal composite)を含むことができる。この時、前記高分子駆動器は前記柔軟構造物によって囲まれることによって、前記高分子駆動器の電極は外部大気または前記第1及び第2流路によって露出しないこともできる。前記イオン伝導性高分子合成物はスルホン酸化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体−共重合体(sulfonated tetrafluoroethylene based fluoropolymer−copolymersz)のうちの1つになることができる。
【0013】
高分子駆動器を具備するラボオンチップモジュールを提供する。該モジュールは柔軟構造物と、前記柔軟構造物内に挿入される複数の高分子駆動器と、前記高分子駆動器の各々を独立的に制御する制御器とを具備することができる。この時、前記柔軟構造物は第1流路、複数の第2流路及び前記第2流路を前記第1流路から空間的に分離させる複数のバルブ部を含むことができ、前記高分子駆動器の各々は前記バルブ部の各々の変位を制御するように構成することができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記制御器は、前記高分子駆動器のうちの少なくとも2つを所定の時間の間隔を置いて互いに異なる時間に駆動させるように構成することができる。
【0015】
一実施形態によれば、前記第1流路は生体分子を含む流体が通過するように構成し、前記第2流路の各々には、前記生体分子と反応する反応物質を形成することができる。前記第2流路に形成される前記反応物質は同一であり得る。前記高分子駆動器の全部は互いに異なる時間に駆動されるように構成することができる。
【0016】
これに加えて、前記第2流路上には、前記流体と前記反応物質との間の反応をモニタリングする少なくとも1つの反応検出装置をさらに配置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、印加される電圧に相応して機械的変位(mechanical displacement)を生成する高分子駆動器を微小バルブ構造体またはラボオンチップのために用いる。これによって、圧電素子などを利用する方式に比較して、微小バルブ構造体またはラボオンチップは小型化可能であるだけでなく、低消費電力の特性を実現することができる。これによって、本発明に係るラボオンチップはポイントオブケアテスティング(point−of−care testing;POCT)器機または携帯用機器として製品化することができる。
【0018】
さらに、本発明の一実施形態によれば、前記高分子駆動器は柔軟構造物によって微小流路から離隔される。すなわち、前記高分子駆動器は前記微小流路内の流体と直接接触しないように構成される。これによって、前記高分子駆動器が前記流体との直接的な接触によって劣化される技術的困難を予防することができる。すなわち、本発明に係る微小バルブ構造体またはラボオンチップは改善された耐久性及び信頼性を有することができる。
【0019】
一方、本発明の一実施形態によれば、前記微小バルブの開閉動作(例えば、前記流路の幅の制御)を制御するバルブ部が前記高分子駆動器に機械的に直接連結される。これによって、前記開閉動作のための前記高分子駆動器の駆動力を前記バルブ部に直接伝達することができる。このような駆動力の直接的な伝達によって、本発明に係る微小バルブ構造体またはラボオンチップは増加された動作速度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るラボオンチップを例示的に示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るラボオンチップを例示的に示す断面図である。
【図5】本発明の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図6】本発明の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図7】本発明の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図8】本発明の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図11】本発明の他の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図12】本発明の他の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るラボオンチップを例示的に示す断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係るラボオンチップを例示的に示す断面図である。
【図15】本発明に係るラボオンチップの使用を例示的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は添付の図面と係わる以下の望ましい実施形態を通じて容易に理解することができる。しかし、本発明はここで説明する実施形態に限定されず、他の形態への具体化も可能である。さらに、ここで紹介する実施形態は開示された内容が徹底且つ完全になれるように、そして当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供されるものである。
【0022】
本明細書において、ある層のような要素が異なる要素の「上部」にあると記載された場合、前記ある要素は、前記他の要素の上部に直接存在しても、それらの間に第3の要素が介在しても良い。 また、図面で、膜及び領域の厚さは、明細書の明確性のために、誇張されたものである。
【0023】
多様な領域、膜などを記述するために、用語第1、第2、第3などを使用できるが、それらの領域、膜は、それらの用語に限定されると解釈されてはならない。それらの用語は、1つの領域、膜を他の領域、膜と区別するために用いられるだけである。
【0024】
したがって、ある実施形態での第1膜として言及された膜が他の実施形態では第2膜として言及されうる。ここに説明及び例示される実施形態はそれの相補的な実施形態も含む。 図1及び図2は本発明の一実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための図である。
【0025】
図1及び図2を参照すれば、基板10上に柔軟構造物20を配置し、前記柔軟構造物20内には高分子駆動器40を挿入する。
【0026】
前記基板10及び前記柔軟構造物20は少なくとも1つの流路30を定義するように配置することができる。例えば、前記流路30は前記柔軟構造物20の底面と前記基板10の上部面と間に形成することができる。より具体的に、図1に示したように、前記流路30の側壁は前記柔軟構造物20により定義することができる。すなわち、前記柔軟構造物20の底面は上方にリセスされた前記流路30の側壁を定義することができる。しかし、他の実施形態によれば、図5〜図7に示したように、前記基板10の上部面が下方にリセスされた前記流路30の側壁を定義することができる。
【0027】
前記基板10はガラスからなることができる。しかし、本発明の技術的思想はこれに限定されない。例えば、前記基板10は前記流路30を流れる流体または前記流体に含まれた物質と反応しない物質のうちで選択される少なくとも1つで形成することができる。
【0028】
前記柔軟構造物20は弾性を有する高分子化合物のうちの1つからなることができる。より具体的に、前記柔軟構造物20は、エラストマー(elastomer)として知られた高分子化合物のうちで、前記流路30を流れる流体または前記流体に含まれた物質と反応しない物質からなることができる。例えば、前記柔軟構造物20はポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane;PDMS)で形成することができる。
【0029】
前記流路30を有する前記柔軟構造物20はソフトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。例えば、前記流路30はμCP(Micro Contact Printing)、REM(replica molding)、μTM(micro transfer molding)、MIMIC(micro molding in capillaries)または SAMIM(solvent−assisted micro molding)技術のうちの1つを用いて前記柔軟構造物20の一表面に形成することができる。前記柔軟構造物20は酸素プラズマ処理のような接着工程を通じて前記基板10上に付着することができる。
【0030】
本発明の実施形態によれば、前記柔軟構造物20は前記流路30の間に介在されるバルブ部25を含むことができ、前記流路30の側壁は前記バルブ部25によって定義することができる。前記バルブ部25の底面は前記基板10の上部面に実質的に接触することができるが、これらは接着しないことができる。これによって、前記バルブ部25と前記基板10との間の距離は、図2に示したように、前記高分子駆動器40によって調節することができる。
【0031】
前記高分子駆動器40は電気的に分離された一対の電極41、42及び電極41、42の間に介在される電気活性化ポリマー(electroactive polymer)45であり得る。前記電極41、42は金属性物質のうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、前記電極41、42は前記電気活性化ポリマー45の向き合う2つの面にコーティングされた白金(platinum)または金(gold)であり得る。一方、本発明の一側面によれば、前記高分子駆動器40の電極41、42は外部大気または前記流路30によって露出しないこともある。このために、前記高分子駆動器40の表面に薄い保護膜(図示せず)をさらに形成することができる。前記保護膜はフレキシブルな特性を有することができる。
【0032】
前記電気活性化ポリマー45は、印加される電圧下で、曲げ駆動現象(bendingactuation)を示す物質であり得る。例えば、前記電気活性化ポリマー45はイオン伝導性高分子合成物(ionic polymer metal composite;IPMC)であり得る。前記電気活性化ポリマー45として前記イオン伝導性高分子合成物が用いられる場合、前記電極41、42の間の電位差(potential difference)は、前記イオン伝導性高分子合成物の内部で発生するイオンマイグレーション(ion migration)及び静電斥力(electrostatic repulsion)によって、上述の曲げ駆動現象及びこれによる前記高分子駆動器40及び前記バルブ部25の変位(displacement)をもたらすことができる。一実施形態によれば、前記イオン伝導性高分子合成物はスルホン酸化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体−共重合体(sulfonated tetrafluoroethylene based fluoropolymer−copolymers)のうちの1つからなることができるが、本発明の技術的思想はここに例示された物質に限定されない。変形された実施形態によれば、前記イオン伝導性高分子合成物は酸化グラフェンまたはグラフェンを追加的に含むことができる。
【0033】
前記高分子駆動器40は、前記柔軟構造物20内で、前記バルブ部25に隣接して形成することができる。この場合、図2に示したように、前記電極41、42の間に電位差(potential difference)を生成すれば、前記高分子駆動器40の曲げ駆動現象によって、前記バルブ部25は前記基板10から離隔することができる。その結果、前記流路30の間を連結する微小通路35を前記バルブ部25と前記基板10との間に形成することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、図1及び図2に示したように、前記バルブ部25を前記高分子駆動器40に機械的に直接連結することができ、これによって、前記高分子駆動器40によって前記バルブ部25を直接駆動することができる。その結果、前記バルブ部25の機械的変位(mechanical displacement)は前記高分子駆動器40によって直接制御できる。このような本発明の構成は、前記バルブ部25が前記高分子駆動器40から離隔される変形された実施形態に比較して、反応速度及び駆動力などにおいて顕著に優れた特性を提供することができる。一方、このような実施形態において、前記高分子駆動器40は前記一対の流路30、そして前記バルブ部25の幅の和より大きい幅を有するように形成することができる。
【0035】
図3及び図4は、本発明の一実施形態に係るラボオンチップを例示的に示す斜視図及び断面図である。図4は、図3の一点鎖線I−I’線に沿って切断した断面図である。説明の便宜のために、図1及び図2を参照して説明した実施形態と重複される技術的特徴に対する説明は省略することができる。
【0036】
図3を参照すれば、基板10上に互いに離隔された第1流路301及び第2流路302を定義する柔軟構造物20を形成する。これに加えて、前記柔軟構造物20は、前記第1及び第2流路301、302の間に、これらから離隔された第3流路303を定義するように形成することができる。前記第1及び第2流路301、302の各々は外部から流体が供給されるように構成される流入口(inlet)36を有することができる。これに加えて、前記第1〜第3流路301、302、303の各々は前記供給された流体を排出するように構成される流出口(outlet)37をさらに有することができる。
【0037】
前記柔軟構造物20は、図4に示したように、前記第1及び第3流路301、303の間に形成される第1バルブ部251と、前記第2及び第3流路302、303の間に形成される第2バルブ部252とを有することができる。また、前記柔軟構造物20内には、前記第1及び第2バルブ部251、252上に配置される第1及び第2高分子駆動器401、402を挿入することができる。図1を参照して説明した実施形態での前記バルブ部25及び前記高分子駆動器40は前記第1バルブ部251及び前記第1高分子駆動器401、そして前記第2バルブ部252及び前記第2高分子駆動器402を実現するために用いることができる。
【0038】
前記第1及び第2流路301、302のうちの少なくとも1つは生体分子を含む流体を供給し、他の1つには前記生体分子と反応する反応物質を供給することができる。これによって、前記第1及び第2高分子駆動器401、402の駆動によって前記第1及び第2バルブ部251、252が前記基板10から離隔されれば、前記生体分子と前記反応物質は前記第3流路303に流入された後に反応することができる。本発明の実施形態によれば、前記生体分子を含む流体は血液になることができるが、ここに限定されず、前記生体分子の種類も限定される理由がない。
【0039】
図5〜図8は、本発明の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。説明の便宜のために、図1〜図4を参照して説明した実施形態と重複される技術的特徴に対する説明は省略することができる。
【0040】
図5〜図8を参照すれば、基板10の所定領域には、周辺より低い上部面を有するリセス領域15を形成することができる。前記リセス領域15は多様な形状で形成することができる。例えば、前記リセス領域15の幅は図5に示したように、上方にテーパード状になるか、図6に示したように実質的に同一であるか、または図7に示したように、下方にテーパード状になることができる。
【0041】
柔軟構造物20は前記リセス領域15に挿入されるバルブ部25を有することができ、前記柔軟構造物20内には前記バルブ部25に隣接した高分子駆動器40を挿入することができる。前記バルブ部25は前記リセス領域15に歯合形状(engaged shape)を有するように形成することができる。例えば、図5に示したように、前記リセス領域15が上方にテーパード状になる場合、前記バルブ部25も上方にテーパード状になることができる。または、図6に示したように、前記リセス領域15及び前記バルブ部25は直方体形を有するように形成するか、または図7に示したように、前記リセス領域15及び前記バルブ部25は下方にテーパード状になることができる。
【0042】
図5〜図7に示したように、この実施形態に係る微小バルブ構造体は正常状態でオープン構造(normally open structure)になることができる。すなわち、電圧が印加されない場合、前記基板10及び前記柔軟構造物20によって定義される流路はオープン状態になることができる。このために、電圧が印加されない場合、前記リセス領域15及び前記バルブ部25は互いに離隔されて前記流路はオープン状態になることができる。これに加えて、前記バルブ部25の幅は前記リセス領域15の幅より狭いことがある。
【0043】
一方、前記高分子駆動器40の両方電極に電圧が印加されれば、前記高分子駆動器40は上方に膨らんで曲がることによって、前記バルブ部25を上方に持ち上げるようになる。この場合、前記バルブ部25は、図8に示したように、前記リセス領域15の側壁に接触することによって、前記流路はクローズ状態になることができる。他の実施形態によれば、電圧が印加される時、前記高分子駆動器40は下方に膨張して曲がることによって、前記バルブ部25は前記リセス領域15の底に接することができる。この場合、図6及び図7に示した実施形態での流路はクローズ状態になることができる。
【0044】
前記微小バルブ構造体が正常状態ではオープン構造になるように、前記柔軟構造物20と前記基板10との間には、前記流路30の厚さを決めるスペーサ(図示せず)をさらに配置することができる。一実施形態によれば、前記スペーサは前記柔軟構造物20または前記基板10の一部として提供することができる。
【0045】
図9及び図10は、本発明の他の実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための断面図及び斜視図であり、図11及び図12は、本発明の他の変形された実施形態に係る微小バルブ構造体及びその動作方法を例示的に説明するための斜視図である。説明の便宜のために、図1〜図8を参照して説明した実施形態と重複される技術的特徴に対する説明は省略することができる。
【0046】
図9及び図10を参照すれば、基板10上に互いに離隔された流路30を定義する柔軟構造物20が配置されている。前記柔軟構造物20は前記流路30の間に介在されるバルブ部25を有することができ、前記柔軟構造物20内には前記バルブ部25に挿入される少なくとも1つの高分子駆動器40が配置されている。
【0047】
一実施形態によれば、前記高分子駆動器40はそれの長軸MAが前記基板10の上部面に対して実質的に垂直に置かれるように配置することができる。例えば、図10に示したように、前記高分子駆動器40は、長方形の上部面及び下部面を有する薄い厚さの薄い直方体であり、高分子駆動器40で最も広い面積を有する表面(例えば、前記上部面及び下部面)は前記基板10の上部面に垂直である。これによって、前記高分子駆動器40の変位は前記流路30を横切る方向に沿って発生(occur)することができ、前記高分子駆動器40の横的変位(traverse displacement)は前記流路30の幅を変化させる前記バルブ部25の横的変位を誘発する。
【0048】
一実施形態によれば、前記柔軟構造物20は前記流路30の上部に配置されるギャップ領域29を含むことができる。前記ギャップ領域29は常圧の気体で満たすことができる。前記高分子駆動器40は前記ギャップ領域29を貫通して前記柔軟構造物20のバルブ部25に挿入することができる。前記ギャップ領域29によって、前記高分子駆動器40の駆動力に対する反作用または抵抗力が減少するので、前記高分子駆動器40の駆動力は前記バルブ部25にさらによく伝達される。このような構成によれば、前記高分子駆動器40に印加される電圧を低めることができる。
【0049】
前記流路30の底面は図9に示したように、前記基板10の上部面によって定義することができるが、図10に示したように前記柔軟構造物20によって定義することができる。すなわち、図10の実施形態によれば、前記流路30は前記基板10の上部面から離隔されて前記柔軟構造物20の内部に形成することができる。
【0050】
図10及び図11に示したように、前記柔軟構造物20内には複数の高分子駆動器40を挿入することができる。この時、前記高分子駆動器40のうちの一部は前記流路30のうちの1つに向ける駆動力を生成するように構成し、残りは前記流路30のうちの他の1つに向ける駆動力を生成するように構成することができる。例えば、前記流路30がxy平面に平行に形成され、これらの長軸が実質的にy方向の場合、一部高分子駆動器40はx方向の変位を生成し、残りの高分子駆動器40は−x方向の変位を生成するように構成することができる。この場合、前記流路30のうちの1つを選択的に閉める動作だけではなく、前記流路30の全部を閉める動作も可能になる。
【0051】
一方、前記流路30の形状は図11及び図12に示したように多様に変形することができる。例えば、図11に示したように、前記流路30はジグザグ形状に形成するか、図12に示したように、交互に配置される少なくとも1つの狭い領域30n及び少なくとも1つの広い領域30wを有するように形成することができる。さらに、図12に示したように、前記流路30は、心臓の弁膜のように、前記狭い領域30nと前記広い領域30wの境界領域が前記広い領域30wに向けてテーパード状を有するように形成することができる。
【0052】
図13及び図14は、本発明の他の実施形態に係るラボオンチップを例示的に示す断面図である。図15は、本発明に係るラボオンチップの使用を例示的に説明するための図である。説明の便宜のために、図1〜図12を参照して説明した実施形態と重複される技術的特徴に対する説明は省略することができる。
【0053】
図13及び図14を参照すれば、ラボオンチップは基板10上に配置されて流路31、32を定義する柔軟構造物20を含むことができる。前記流路31、32は流入口36及び流出口37を連結する第1流路31及び前記第1流路31から離隔されて形成される複数の第2流路32を含むことができる。
【0054】
前記柔軟構造物20は前記第2流路32を前記第1流路31から分離させるバルブ部を含むことができる。また、前記柔軟構造物20内には複数の高分子駆動器40を挿入することができ、前記高分子駆動器40の各々は前記バルブ部の各々に隣接して配置することができる。一実施形態によれば、前記バルブ部及び前記高分子駆動器40の形状及び配置は図1を参照して説明した実施形態と同一であり得る。しかし、他の実施形態によれば、前記バルブ部及び前記高分子駆動器40の形状及び配置は図5〜図12を参照して説明した実施形態またはそれの変形であり得る。
【0055】
これに加えて、前記ラボオンチップは前記高分子駆動器40を駆動させる制御器90及び前記制御器90と前記高分子駆動器40とを電気的に連結する制御配線構造体71をさらに含むことができる。一実施形態によれば、前記制御器90は前記ラボオンチップの内在的部品(internal component)として提供することができる。例えば、前記制御器90は前記基板10の一表面に付着することができる。しかし、他の実施形態によれば、前記制御器90は前記ラボオンチップの外在的部品(external component)として提供することができる。例えば、前記制御配線構造体71はフレキシブルな配線で構成することによって、前記制御器90と前記基板10との間の相対的位置及び距離は可変可能である。
【0056】
前記制御配線構造体71は前記高分子駆動器40に共通接続する第1制御配線71a及び前記高分子駆動器40の各々に接続する第2制御配線71bを含むことができる。図1を参照して説明したように、前記高分子駆動器40は第1電極41、第2電極42、及びこれらの間に介在される前記電気活性化ポリマー45を含むことができる。この場合、前記第1制御配線71aは前記高分子駆動器40の第1電極41に接続し、前記第2制御配線71bの各々は前記高分子駆動器40の第2電極42の各々に接続することができる。すなわち、前記第2制御配線71bの個数は前記高分子駆動器40の個数と同一であり得る。
【0057】
前記第1流路31は生体分子を含む流体がそれを経由するように構成することができる。例えば、前記流体は血液であり得る。前記第1流路31は血管の迂路として提供することができる。より具体的に、本発明に係るラボオンチップLOCは図15に示したように人体(例えば、上腕)に付着することができ、前記第1流路31の流入口36及び流出口37は人体の血管中の1つに連結することができる。
【0058】
前記第2流路32には前記生体分子と反応する反応物質を形成することができる。この場合、前記高分子駆動器40の駆動を通じて前記生体分子を含む流体が前記第2流路32に流入される場合、前記生体分子と前記反応物質との間の反応結果物99が前記第2流路32に形成され得る。
【0059】
前記ラボオンチップは前記反応結果物99が生成されるか否かをモニタリングする反応検出器80をさらに含むことができる。例えば、図13及び図14に示したように、前記反応検出器80の各々は前記第2流路32の各々の上部に配置することができる。本発明の技術的思想は前記反応結果物99を検出する方法に限定されないが、一実施形態によれば、前記反応検出器80は光学的または電気的方法を利用して前記反応結果物99が生成されたか否かを測定するように構成することができる。前記反応検出器80の動作制御または測定データの伝送などは、図13に示したように、前記反応検出器80と前記制御器90とを連結する検出配線構造体72を通じて実現することができる。しかし、他の実施形態によれば、前記制御配線構造体71は図14に示したように前記反応検出器80と前記制御器90とを連結する検出配線構造体として機能することもできる。
【0060】
一方、互いに異なる前記第2制御配線71bが前記高分子駆動器40に接続する場合、前記高分子駆動器40は独立的に駆動することができる。例えば、前記高分子駆動器40は前記制御器90からの制御信号に応答して順次に駆動することができ、この場合、前記第2流路32は順次に前記第1流路31に連結され、前記第1流路31の流体F1は開かれた第2流路32に流入F2される。すなわち、前記制御器90は、所定の時間の間隔を置いて互いに異なる時間に前記高分子駆動器40を駆動させるように構成することができる。このような順次駆動は生命体の生化学的状態を周期的にモニタリングすることを可能にするので、心臓麻痺または脳卒中のような致命的な問題を予防することができる。このような実施形態によれば、前記第2流路32には同一の反応物質を形成することができる。
【0061】
しかし、変形された実施形態によれば、前記第2流路32に形成される反応物質は少なくとも2つになることができる。この場合、互いに異なる2つの危険要因または疾病を前記ラボオンチップを通じてモニタリングすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される柔軟構造物と、
前記柔軟構造物内に挿入される高分子駆動器とを含み、
前記柔軟構造物は微小流路を定義するバルブ部を有し、前記高分子駆動器は前記柔軟構造物によって前記微小流路から分離し、
前記高分子駆動器は前記バルブ部の変位を機械的に直接制御することによって、前記微小流路の幅を変化させるように構成されることを特徴とする微小バルブ構造体。
【請求項2】
前記高分子駆動器は一対の電極及びこれらの間に介在されるイオン伝導性高分子合成物 を含むことを特徴とする請求項1に記載の微小バルブ構造体。
【請求項3】
前記イオン伝導性高分子合成物はスルホン酸化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体−共重合体のうちの1つであることを特徴とする請求項2に記載の微小バルブ構造体。
【請求項4】
前記微小流路は互いに離隔された第1流路及び第2流路を含み、
前記柔軟構造物のバルブ部は前記第1及び第2流路の間に介在され、
前記高分子駆動器は前記バルブ部内に挿入された部分を有することを特徴とする請求項1に記載の微小バルブ構造体。
【請求項5】
前記高分子駆動器は前記第1及び第2流路、そして前記バルブ部の幅の和より大きい幅を有することを特徴とする請求項4に記載の微小バルブ構造体。
【請求項6】
前記高分子駆動器は長方形の上部面及び下部面を有する直方体形であることを特徴とする請求項4に記載の微小バルブ構造体。
【請求項7】
前記微小流路は外部から流体が供給される流入口及び前記流体が排出される流出口を有することを特徴とする請求項1に記載の微小バルブ構造体。
【請求項8】
前記基板は前記微小流路として用いられるリセス領域を有し、前記柔軟構造物のバルブ部は前記リセス領域に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の微小バルブ構造体。
【請求項9】
前記高分子駆動器はそれの最も広い表面が前記基板の上部面に実質的に平行になるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の微小バルブ構造体。
【請求項10】
前記高分子駆動器はそれの最も広い表面が前記基板の上部面に実質的に垂直になるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の微小バルブ構造体。
【請求項11】
基板と、
互いに離隔された第1及び第2流路の間のバルブ部を含みながら、前記基板上に配置される柔軟構造物と、
前記柔軟構造物内に挿入されて前記バルブ部の変位を制御するように構成される高分子駆動器とを含むことを特徴とする微小バルブ構造体。
【請求項12】
前記高分子駆動器は前記柔軟構造物によって前記第1及び第2流路から離隔されることを特徴とする請求項11に記載の微小バルブ構造体。
【請求項13】
前記高分子駆動器は一対の電極及びこれらの間に介在されるイオン伝導性高分子合成物 を含むことを特徴とする請求項11に記載の微小バルブ構造体。
【請求項14】
前記高分子駆動器は前記柔軟構造物によって囲まれることによって、前記高分子駆動器の電極は外部大気または前記第1及び第2流路によって露出されないことを特徴とする請求項13に記載の微小バルブ構造体。
【請求項15】
前記イオン伝導性高分子合成物はスルホン酸化テトラフルオロエチレン系フッ素重合体−共重合体のうちの1つであることを特徴とする請求項13に記載の微小バルブ構造体。
【請求項16】
基板と、
第1流路、複数の第2流路及び前記第2流路を前記第1流路から空間的に分離させる複数のバルブ部を含む柔軟構造物と、
前記柔軟構造物内に挿入され、該各々は前記バルブ部の各々の変位を制御するように構成される複数の高分子駆動器と、
前記高分子駆動器の各々を独立的に制御する制御器とを具備することを特徴とするラボオンチップモジュール。
【請求項17】
前記制御器は、前記高分子駆動器のうちの少なくとも2つを所定の時間の間隔を置いて互いに異なる時間に駆動させるように構成されることを特徴とする請求項16に記載のラボオンチップモジュール。
【請求項18】
前記第1流路は生体分子を含む流体が通過するように構成され、
前記第2流路の各々には前記生体分子と反応する反応物質が形成されることを特徴とする請求項16に記載のラボオンチップモジュール。
【請求項19】
前記第2流路に形成される前記反応物質は同一であり、前記高分子駆動器の全部は互いに異なる時間に駆動されることを特徴とする請求項18に記載のラボオンチップモジュール。
【請求項20】
前記第2流路上に配置され、前記流体と前記反応物質との間の反応をモニタリングする少なくとも1つの反応検出装置をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のラボオンチップモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−237032(P2011−237032A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103437(P2011−103437)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】