説明

高性能構造形状体を製造するための連続的プルトルージョン法

本発明は、構造形状体を製造するための連続的プルトルージョン法において、a)1枚以上の織物シートに、(i)三又は四官能性エポキシ樹脂である少なくとも一種類のエポキシ樹脂、及び(ii)異なった反応性を有する少なくとも二種類の反応性基を含む硬化剤系、の組合せを含む樹脂組成物を含浸させ、b)前記含浸させた織物シートを熱に掛けて前記少なくとも一種類のエポキシ樹脂と前記硬化剤系とを部分的に反応させ、その結果前記樹脂組成物の粘度を増大し、そしてc)前記部分的に反応させた含浸樹脂組成物を、熱及び(又は)圧力を用いてゲル化する、連続的プルトルージョン法を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修正されたプルトルージョン(pultrusion)法を用いて高性能な構造形状体(structural profile)を製造するための新規な方法に関する。この新規な方法は、優れた性質、特に曲げモジュラス及び強度のような優れた機械的性質、特に開口孔及び充填孔及び平面圧縮強度のような大きな圧縮強度、及び特に航空機用途で適切な構造形状体を与える優れたベアリング性を有する構造形状体を製造する連続的方法である。
【背景技術】
【0002】
繊維補強プラスチック材料は、益々重要になってきている。そのような材料は、重量に左右され易い用途、特に航空機工業では最初に選択される非常に小さい重量と優れた強度とを兼ね備えている。繊維補強プラスチック材料は、原理的には通常樹脂であるプラスチック材料により一緒に積層された幾つかの繊維又は繊維シートからなる。しかし、高性能用途、特に航空機工業で適切であるためには、樹脂補強繊維は優れた強度を持たなければならない。航空機工業で用いるために材料を補強するのに重要な必要条件は圧縮性であり、その中で、例えばASTM D6484−99基準に記載されているような平面圧縮、開口孔圧縮、及び充填孔圧縮強度が決定的に重要な設計基準を定めている。
【0003】
複合構造体を製造するための多くの方法が存在し、それらには重合体マトリックスの熱成形及びオートクレーブ処理が含まれているが、それらに限定されるものではない。しかし、全て労力を要するか、純粋な金属材料を用いるよりもコストが高くなり、中程度から大きな体積の用途には適用できないか、或は構造的効率の高い構造体を与える結果にはならない。従来の方法は、オートクレーブ硬化構造体に用いられているもののように、一般にバッチ式に向いている。
【0004】
複雑な構造形状体の製造は、典型的には、平面状材料を非平面的幾何学的形状に適合させ易くするため、補強材を切断し、ドレープ(drape)することからなる労力を必要とする方法である。得られる構造体のコストは大きく、製造するのにかなりの時間を必要とし、その過程は誤差を生じ易い。最新の短繊維配置のような当分野で知られている自動材料配置システムを用いても、構造体を生ずるのに必要な時間、コスト、及び潜在的に部品の品質は、最適に達しない。
【0005】
熱硬化され、プルトルード(pultrude)された複合構造体を、中程度から高度の製造速度で製造することができる当分野で既知のプルトルージョン処理方法が存在する。しかし、一般にプルトルージョン法の限界は、そのプルトルージョン法が均一な断面を有する直線的に長い部品を製造する場合にしか適合しないことである。このことは、一つには、その方法自身の性質によるものであり、一つには最も頻繁に用いられる熱硬化樹脂によるものである。その方法は長い連続的補強繊維を種々の単位装置操作により引張ることによりその機能を果たすため、当然、補強繊維がプルトルージョンの方向に配列した長い複合体を形成する。一度び硬化された熱硬化樹脂は、後で熱成形することはできず、或はどのような他のやり方にしろ成形することはできず、従って、繊維を一緒に結合し、希望の断面形状を生じさせるためには、熱硬化樹脂を型で硬化することが必要である。
【0006】
通常、これらの処理方法では、構造的性能は犠牲になるが迅速に処理できる樹脂系を用いる。従って、従来のプルトルードされた構造体は、それらの構造的性能が最適状態よりも低いため、主要な構造的用途には一般に不適切である。構造的性能が低くなるのは、織物中の繊維の配向が最適でなく、構造的性能が最適にならない速硬性樹脂を用いる必要性があることによる。
【0007】
補強用織物は、時々、織物、織物シート、織物補強材、補強材等、又は単に織物とも言及されている。本質的には補強用織物を意味するこれらの用語全てが、当分野で同義語として用いられており、本出願でも用いられている。
【0008】
これら及び他の問題が当分野で知られており、例えば、US−A6,033,511に論じられている。これらの問題を解決するため、US−A6,033,511は、多層の織物からなる前成形体(preform)を、液体マトリックス材料の浴に通して引張り、前成形体中にマトリックス材料を均一に分散させ、マトリックス材料から熱を除去することにより固化し、その固化したマトリックス材料を有する前成形体を切断し、好ましくは電子ビーム硬化を用いることにより硬化する。この方法はむしろ依然として複雑であり、電子ビーム硬化機を必要とし、従来の方法及び製品の問題が充分には解決されていない。
【0009】
更に、プルトルージョン法にかけられたシートは強い引張り力を受け、そのことがこの方法で用いられる織物の数及び種類を制限し、もし多数のシートを用いようとする場合には多量のステッチ(stitching)を必要とする。
【0010】
一方、プルトルージョンは、比較的低いコストで繊維補強プラスチック材料を与える連続的方法なので、大きな利点を有する。プルトルージョン法に関する非常に多数の文献が存在し、例えば、US−A6,048,427、US−A5,716,487、US−A6,033,510、及びメイヤー(Meyer)R.W.「プルトルージョン技術便覧」(Handbook of Pultrusion Technology)(チャップマン及びホール(Chapman and Hall)、ニューヨーク州、ニューヨーク1985)を挙げることができる。
【0011】
US−A5,098,496には、繊維補強熱硬化性重合体の物品を製造するプルトルージョン法が記載されており、この場合、引張り速度及びそのプルトルージョン装置の型の加熱及び冷却段階の温度を、その型を通して引張る間、物品が重要な形態を維持するように重合体組成物をゲル化するように制御する。重合体組成物の粘度及び硬化反応速度及び物品の重要な断面形状に応じて、その制御が行われる。
【0012】
熱硬化可能な熱硬化重合性液体組成物の適切な成分として、標準的低粘度の材料を記述するが、全体的材料技術は、一般に従来のプルトルージョン法で用いられている二官能性エポキシに基づいている。従って、US−A5,098,496には、熱硬化重合性組成物を種々のやり方で補強用繊維に適用できることが言及されているが、熱硬化重合性樹脂組成物を適用する好ましい方法は、繊維を浴に通す(浴中で浸漬被覆する)ことによる。そのような方法は、繊維を良好な含浸に到達させようとするならば、室温でその熱硬化重合性液体組成物の粘度が低い必要があり、従って、US−A5,098,496の方法では樹脂の粘度を低下させるため、反応性単量体を用いなければならない。
【0013】
US−A5,098,496の方法で繊維を含浸させるのに用いられる低粘度樹脂組成物を用いて、航空宇宙用途に適した高性能材料を製造することは不可能である。なぜなら、これらの材料は、それらの用途に必要なTg、圧縮性等に適合しないからである。更に、この方法で必要になる大きな引張り力のため、多軸繊維のような高性能織物をこの方法では用いることができず、US−A5,098,496の方法で用いられている繊維は、通常、材料の移動方向に平行に配列しており、そのことは、全ての繊維が標準的プルトルージョン法に典型的な0°になっていることを意味する。
【0014】
樹脂トランスファー成形(RTM)法は、航空機工業で必要されているような高性能材料を製造するためによく知られている。RTM法は、上で論じた古典的プルトルージョン法よりも、二次元シートから三次元補強物品への処理に一層適しており、一般に炭素繊維のシート又はアラミド繊維又はガラス繊維のような他の材料のシートを型の中又はマンドレルの周りに成形し、圧力によりそれらに一致させる。それらの層を型中で形成したならば、樹脂をその型の中へ注入し、シートを一緒に結合する。古典的RTM法での補強用材料の初期シートは樹脂を含まず、従って乾燥しており、容易に屈曲する。次に型を加熱して樹脂を硬化させる。RTM法の典型的な例は、例えば、ベックウィズ(Beckwith)S.W.、ハイランド(Hyland)C.R.、「樹脂トランスファー成形」(Resin Transfer Molding)、SAMPE MonographNo.3〔コビナ(Covina), Ca (1999)〕に記載されている。典型的なRTM法は、通常非連続的であるか、部分的にだけ連続的な方法である。
【0015】
既知のRTM法についての問題は、乾燥補強層を型中へ装填するのに時間と人力がかかり、それがこの方法をむしろ価格の高いものにしている。従って、既に希望の形態を有し、補強用紐で層を一緒に結ぶか、又は層を一緒に保持するための接着剤として粘稠な液体又は固体樹脂を用いることにより製造される前成形体を用いるRTM法が開発されてきた。US−A5,071,711には、前成形体を製造する方法が記載されており、この場合、一つ以上の未含浸基体材料層の各々の表面上に、熱可塑性固体樹脂状化合物のための架橋剤として働く化合物は実質的に含まない一種類以上の熱可塑性のような非焼結性樹脂状化合物を適用する。樹脂状化合物は、約500μmより小さい粒径を有し、DSCにより決定して、約50℃〜約70℃の融点を有する粉末の形になっている。次に、熱可塑性のような樹脂状化合物の粉末を基体材料の表面上で溶融してフイルムにし、その樹脂状材料を冷却し、このようにして処理した基体材料の一つ以上の層を組合せ、希望の形態に形成する。それら処理済み基体材料の成形層を、次に樹脂状化合物を溶融するのに充分な温度にかけ、そして樹脂状化合物の融点より低い温度へ冷却した後、補強用材料として成形過程で用いるための予め成形した前成形体が得られる。その前成形体は、次に保存し、最終的にRTM法で用いることができる。
【0016】
しかし、上で論じたような航空宇宙工業の高度の必要条件に適合する高性能構造形状体をRTM法で得ることは困難である。RTM法で用いられる樹脂の粘度は、(多層)シート全体に亙って樹脂を確実に均一に分布させるために低くなければならず、そのことが最終製品の機械的性質を屡々不充分なものにする結果になっている。
【0017】
プロトルージョン及びRTM技術の多くの問題は、プレプレグ技術を用いることにより回避することができる。プレプレグ技術は、ステッチを少なくするか又は完全に無くすことさえできる利点を有し、得られる複合体材料の衝撃抵抗を増大するため、プレプレグ樹脂中にエラストマー又は熱可塑性物のような添加剤を用いることができる。熱硬化性樹脂中に簡単に溶解するか又は粒状で添加することができるそのような添加剤は、RTM技術で用いることができない。なぜなら、それらは粘度を余りにも大きく増大するか、或は粒子の場合、それらは含浸工程中濾過で除外されることになるであろうからである。
【0018】
プレプレグ法の一つの例は、US−A5,043,126に記載されている。US−A5,043,126には、繊維補強プラスチック材料を、間歇的に強く加圧し、熱硬化性の場合には加熱することにより成形し、圧力解放期間中に少しづつ供給する方法が開示されている。その方法では、シートの中に熱硬化性樹脂を含浸させた、予め含浸した炭素繊維、アラミド又はガラス繊維のシートを、繊維補強プラスチック材料の基礎材料として用い、炭素繊維、アラミド又はガラス繊維は、織った繊維シート又は一方向性繊維シートの形で用いる。最終的製品の形により、重ねられる材料シートの間にロービング(roving)を介在させる。
【0019】
US−A5,043,128の方法では、シート中へ樹脂を連続的に注入することはできない。なぜなら、補強用シートの搬送を、圧力及び熱を適用する間停止しなければならないからである。このように、US−A5,043,129の方法は、プレプレグを使用することに限定されている。
【0020】
プレプレグ技術は、多くの利点を有し、特に優れた機械的性質を有する構造形状体を得ることはできるが、プレプレグの場合、非常に労力を要するか又は設備を要する方法により織物のシート又は積層を達成しなければならないのが典型的であり、そのことが製品を高価にする欠点になっている。更に、予め含浸したシート(プレプレグ)は、通常冷却して保存しなければならず、そのことも不経済になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、繊維補強プラスチック材料である高性能構造形状体を製造するための経済的な方法、及び従来法の問題を解決し、航空宇宙工業で要求される条件を満足する、平面又は開口孔圧縮強度のような特に優れた非常に大きな圧縮強度を持つ高性能構造形状体を製造することができるその方法を遂行するための装置を与えることにある。この方法は、最高の性能を持つ織物補強材を用いることを可能にし、そのことが今度は織物補強材が最小限の量の縮れしか持たないことを意味する。本発明の更に別な目的は、新規な高性能構造形状体を与えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、高性能構造形状体のような構造形状体を製造するための連続的プルトルージョン法により達成され、この場合、
a) 1枚以上の織物シートを、
(i)三又は四官能性エポキシ樹脂である少なくとも一種類のエポキシ樹脂、及び
(ii)異なった反応性を有する少なくとも二種類の反応性基を含む硬化剤系、
の組合せを含む樹脂組成物で含浸させ、
b) 前記含浸させた織物シートを熱にかけ、前記少なくとも一種類のエポキシ樹脂と前記硬化剤系との部分的反応を起こさせ、前記樹脂組成物の粘度を増大し、そして
c) 前記部分的に反応させた含浸樹脂組成物を、熱及び(又は)圧力を用いてゲル化する。
【0023】
本発明は、本発明の好ましい方法を遂行するために用いることができる装置、及び本発明の方法により得ることができる、航空宇宙工業で用いることができる新規な構造形状体、特に高性能構造形状体も与える。
【0024】
本発明の方法は、適用される引張り力を非常に小さくすることができる。例えば、US−A5,098,496の実施例で用いられている形状体の幾何学的形態に関連した引張り力は、本発明の方法で典型的に用いられる引張り力よりも10倍大きい(積層体表面を比較する)。従って、本発明の方法は、どのような種類の繊維配向でも用いることができ、非常に繊細な高性能織物を本発明の方法で用いることができるのに対し、例えば、US−A5,098,496に記載されているような慣用的プルトルージョン法では、材料の移動方向に通常平行に配列した繊細を用いなければならない。
【0025】
本発明の方法では、できるだけ多くの織物補強シートを用いるのが好ましく、それは、慣用的織り方、編み方、又はステッチ法の典型的な手段によっては作られていない。
【0026】
本発明の方法によれば、最小限の縮れしか持たない織物補強材を用いることができ、換言すれば、これらの補強材では繊細は高度の配列性を示している。例えば、所謂縮れのない織物のようなステッチ結合多軸織物を用いる場合、本発明の方法で用いるのに最小限の量のステッチ量で充分である。例えば、3重量%以下、一層好ましくは2重量%以下、特に1重量%以下のステッチヤーンがありさえすればよく、或は全くステッチヤーンの無い織物シートを用いることができる。それら%は、結合剤を含まない出発織物シートの全重量に基づいている。上で言及したステッチは、特に樹脂マトリックス中へ溶解又は溶融しないステッチヤーンを有するステッチである。
【0027】
本発明の方法の重要な利点は、形状体/機械の引張り方向に織物シートが配列されており、糸の波動を減少し、そのことが最終的に、製造された構造形状体の圧縮強度を増大するのに役立っていることである。
【0028】
典型的には、出発材料としてプレプレグを用いる方法によってしか達成することができない性能特性を満足する高性能構造形状体を、もし織物を含浸するために或る樹脂組成物を用いるならば、プルトルージョン法で、特に注入(injection)プルトルージョン法で乾燥未含浸織物を用いることにより得ることができることが思いがけなく発見された。
【0029】
本発明の特別な利点は、この方法をあらゆる種類の織物を用いて遂行することができることである。新規な樹脂組成物は、プルトルージョン法で適用される引張り力を非常に小さくすることができ、従って、本発明のプルトルージョン法では、従来法のプルトルージョン法では用いることができなかった織物を用いることができる。従来法のプルトルージョン法は織った織物、不織布(ベール/フェルト型)、縮れの無い織物、又は織るか又はステッチされたUD織物を必要としていた。勿論そのような織物も本発明の方法で用いることができるが、織物を安定化する手段として織ることも、ステッチ(溶解しないもの)も全くしてない一方向のテープ(UDテープ)を用いることもでき、それらUDテープは、マトリックス本体中に溶解するステッチヤーンの形で通常適用される接着剤により一緒に保持されている。後者の織物は、UDテープのために用いられているものと同様な接着剤(即ち、熱可塑性か又は熱硬化性接着剤)を用いて一緒に結合されているUD層組立体により得ることができる。本発明で用いることができる低い引張り力により、±45°二軸織物のような非常に引張りに敏感な織物を処理することができる。従って、本発明の方法では、文字通りどのような積層順序でも得るか又は処理することができ、設計の自由性を与え、重量を減少することができる。
【0030】
本発明の織物は、溶解又は溶融しないステッチヤーンを用いたステッチは全く含まないか又は最小限でしか含まないので、繊維/トウ(tow)は非常に僅かなレベルの縮れしか示さず、通常プルトルージョンの適用で用いられているような溶解しないステッチ糸でステッチされた織物又は織った織物の場合よりも縮れは遥かに少ない。平面内圧縮強度のような優れた面内特性が与えられる。
【0031】
従って、本発明で用いられる織物は、上で定義したような一方向性テープ(UDテープ)及び多軸織物であり、好ましくはそのような一方向性テープと多軸織物との組合せである。一方向性テープは、好ましくはステッチされていない非巻縮型の接着剤溶融性ヤーンで安定化された一方向性テープ、非巻縮型溶融性/溶解性ステッチ糸でステッチされた一方向性テープ、又は縦糸方向が繊維重量の90重量%より多い織られた種類の一方向性テープである。多軸織物は、非巻縮型のものであるのが好ましく、マトリックス中に溶解/溶融するステッチ糸か又はステッチ含有量が低いか又は全くない平坦な麻繊維で織った織物又は非巻縮型織物である。最も好ましいのは、そのような多軸織物、特に二軸又は三軸織物と、一方向(UD)テープとの組合せである。UDテープは、接着剤(又は後で記載するように、結合剤と呼ぶもの)を用いるか、又はマトリックス中に溶解/溶融することができるステッチ用糸を用いて多軸織物に固定されているのが好ましい。
【0032】
機械的性質は、ステッチが減少した場合、特に樹脂マトリックス中に溶解又は溶融しないヤーンを用いたステッチが減少した場合に増大する。通常、二軸織物を用いて、三軸織物を用いた場合よりも大きな圧縮値を達成することができる。このことは、繊維の配向を用いて説明することができる。ステッチは、繊維の縮れを起こす。力の方向からのこの逸脱は、圧縮強度を減少する。三軸織物は、二軸織物の、例えば2枚の+/−(方向)シートの他に、第三の方向を有する。この場合、第三の方向は、機械方向に対し0°になっており、成分が最も荷重を受ける方向である。もしこの0°シートのステッチを回避することができるならば、綴れは減少し、そのことが今度は一層大きな圧縮強度をもたらすことができる。
【0033】
全くステッチ(溶解又は溶融しないヤーンを用いたもの)を含まず、織物シートを結合して織物シート積層体にするのに大きな融通性を与えることができる純粋なUD織物シートを用いて最高の性能を達成することができる。
【0034】
従って、本発明の方法では、数枚の織物シートを用いるのが好ましく、例えば、積層体に形成されており、夫々の積層体が一本以上のUDテープ及び/又は一枚以上の多軸織物を含む4枚以上の織物シートを用いるのが好ましい。
【0035】
織物シート積層体は別々の処理工程で製造することができ、そのようにして製造した織物シート積層体を、次に本発明のプルトルージョン法で用いることができる。
【0036】
異なった織物シートを、結合剤を用いて結合し、積層体にするのが好ましい。結合剤は定義により、織るか又はステッチするような慣用的織物手段に依存せずに、織物シートを安定化することができる材料である。結合剤は本質的に織物シート間の接着剤として働く。結合剤は、熱可塑性重合体又は熱硬化性重合体から作られているのが典型的であり、熱可塑性重合体から作られているのが好ましい。結合剤は異なった形態で配合/適用されてもよい。
【0037】
a) 溶媒和法
結合剤を適当な溶媒に溶解し、次に結合剤溶液中に織物を浸漬/含浸させるか、又は結合剤溶液を織物に噴霧することにより溶媒結合剤を適用する。続いて、適当な抽出法を用いて溶媒を結合剤から抽出する。
【0038】
b) 粉末ホットメルト法
結合剤を、粒状で織物に適用する。加熱により、結合剤は織物上で溶融し、それに接着する。このホットメルト法の後で、織物を冷却することができる。
【0039】
c) 不織/ホットメルト法
不織(織物)シート材料の形態の織物上且つ/又はその中に、結合剤を適用/配合する。これらの不織シートは、部分的に又は完全に結合剤材料から作られた覆い、ウエブ、又は紙状材料であってもよい。結合剤材料は、連続的又は不連続的単繊維の形態をしており、熱可塑性重合体、或は無定形又は半結晶質又は結晶質重合体から作られている。これらの結合剤単繊維は、半結晶質重合体から作られているのが好ましい。不織材料は、ポリアミド又は共ポリアミド又はそれらの混合物のような半結晶質重合体から作られているのが好ましい。これらの不織材料の面積平均重量は、むしろ小さいのが良く、例えば、3〜30g/m、好ましくは5〜10g/mであるのが好ましい。不織材料は、熱及び圧力を用いて、例えばカレンダー掛け型設備で、不織材料を織物へ熱結合することができる温度で適用する。これは、溶融温度より高いか又は低くてもよく、覆いの重合体主要部の溶融温度より低いのが好ましい。粉末ホットメルト法と同様に、不織材料を熱結合してから、織物を冷却することができる。
【0040】
d) 熱溶融性ヤーン・ホットメルト法
c)で記載したような結合剤材料から作られた不織材料を用いる代わりに、ここで熱溶融性ヤーンと呼ぶ、結合剤材料から作られた単繊維又はヤーンを、夫々織物を安定化するために用いることができる。c)で述べたのと同じ重合体から作ることができるか、又はポリスルホン/ポリエーテルスルホンのような含浸でエポキシ樹脂に溶解する重合体から作ることができる(後者が好ましい)これらの熱溶融性ヤーンは、殆どどのようなやり方で織物の中に及び/又はその上へ配合してもよい。好ましい例として、それらヤーンは、織物を製造する主要な繊維と混紡するか又は別の方法で織物に導入/適用するか、又は織る過程中に導入することができる。熱溶融性ヤーン及び織物を適当な結合温度へ加熱することにより、熱溶融性ヤーンは周囲の繊維/織物に結合し始め、a)〜c)で述べたような安定化した織物構造体を同じく与える。
【0041】
方法c)及びd)は、本発明による織物材料の積層体を形成するのに好ましい。不織材料を用いて種々の織物シートを一緒に結合する方法が最も好ましい。
【0042】
本発明により、織物シートを、本発明のプルトルージョン法とは別に織物シート積層体に結合することができ、既知の方法の何れかにより製造されたか、又は市販されている織物シート及び織物シート積層体を用いることができる。しかし、好ましい態様として、本発明のプルトルージョン法は、上に記載したように織物シート積層体を形成する工程を含む。従って、好ましい方法として、第一処理工程では、上で論じたように結合剤、好ましくは不織材料を用いて織物シート積層体を製造し、次にそれらの結合した織物シート積層体をその場でプルトルージョン法で用いる。
【0043】
織物シート積層体を製造する場合、結合剤が余りにも多く織物シート中へ浸透し、それが織物シート積層体の含浸に悪影響を及ぼすことがないように注意を払うべきである。織物シート積層体は、結合剤が繊維の表面に維持され、織物シート積層体中の別々の織物シート間に確実に距離が保たれるように選択した温度及び圧力を用いて製造するのが好ましい。織物シート積層体の含浸は、それにより改良することができる(含浸のために用いた樹脂組成物が織物シートの間で流動することができる)。
【0044】
本明細書中、織物シートに対する言及は、特に別のことが言及されていないかぎり、又は文脈から明らかな場合、織物シート積層体を含む。
【0045】
織物シートの材料は、特に限定されておらず、従来法で用いられている織物材料は、全て用いることができる。最も好ましくは、シートの少なくとも一つ、一層好ましくは二つ以上が炭素繊維からなるが、アラミド繊維又はガラス繊維のような他の繊維単独、又は互いに組合せるか、又は炭素繊維と組合せたシートを用いることもできる。もし必要ならば或は有利であると考えられるならば、シートの間にロービングを与えることができる。
【0046】
本発明の好ましい態様として、織物シート又は一緒に結合された織物シート積層体を、それらを樹脂組成物で含浸させる前に予め形成(preform)する。予め形成した後の織物シートは、直接含浸機中へ引き入れ、圧密(compact;圧縮、成形)しないのが好ましい。しかし、予備的に形成した織物シートを、プレス、加熱ローラー、又は加熱ベルトのような圧密機で圧密し、固体の予備的形成品(solid preform)を得ることもできる。この固体/安定化予備的形成品を、次に、本発明の続く含浸及びゲル化処理にかける。圧密工程(compaction step)は、予備的形成品の安定性を著しく増大する。もし予備的形成品の圧密を行なうならば、通常の温度は80℃〜200℃、好ましくは160℃〜190℃にすることができ、圧力は、0.1〜3バール、好ましくは0.5〜3バールの範囲で適用することができる。これらの温度では、結合剤は軟化し、冷却すると固体の予備的形成品が得られる。しかし、圧密工程により、予備的形成品の含浸性を保持するように注意を払わなければならない。このことは、圧力及びその圧力を適用する時間及び圧力が適用される時の温度を最適にすることにより達成することができる。
【0047】
経済的理由から、本発明の方法では、固体前成形体は用いないが、予め成形した織物シート又は織物シート積層体を、従来の成形を行なわずに、予め形成した後に直接含浸する。含浸処理前の付加的成形工程は、もし特別に敏感な織物を用い、非常に薄い形状断面を実現する必要があるならば、役に立つ。
【0048】
織物シート又は織物シート積層体が含浸機に入る前に、縁及び芯領域にロービングを追加し、空洞を均一なやり方で充填するのが有利なことがある。これは、漏洩を最小にし、均質な製品を製造し易くする。
【0049】
場合により予め成形した織物シート又は織物シート積層体の含浸は、織物シート又は織物シート積層体を含浸浴に通して引っ張ることにより行なうことができることは当分野で知られている通りであるが、高い温度及び圧力で型中で織物シート又は織物シート積層体中へ、含浸に用いる樹脂組成物を注入する含浸機(そのような含浸機は「注入機」と呼ばれている)を通して織物シート又は織物シート積層体を引っ張るのが好ましい。注入温度は、樹脂組成物に依存するが、好ましい注入温度は80℃〜140℃の範囲、一層好ましくは90℃〜140℃の範囲、特に90℃〜130℃の範囲にある。注入圧力は、1〜10バールの範囲にあるのが好ましく、1〜6バールであるのが好ましい。
【0050】
充分な含浸を達成するため、特に樹脂組成物を注入する時、樹脂組成物の粘度が高すぎないようにしなければならない。一方、樹脂組成物をゲル化した後、形成された構造形状体は必要な機械的性質をもたなければならない。本発明により、少なくとも一種類のエポキシ樹脂で、三又は四官能性エポキシ樹脂と、或る硬化剤系との組合せを含む樹脂組成物は、これらの要件を満たすことが判明している。通常樹脂組成物は、二種類以上のエポキシ樹脂を含む。
【0051】
本発明の樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂は、少なくとも一つのアミノ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。特に好ましいのは、四官能性樹脂であり、それは一層好ましくは少なくとも一つのアミノ基を有し、特にテトラグリシジルアミノジフェニルメタンのようなテトラグリシジルアミンエポキシ樹脂、又は一層好ましくは少なくとも一つのアミノ基を有する三官能性樹脂であり、特にトリグリシジル−p−アミノフェノールのようなトリグリシジルエポキシ樹脂である。特に上で定義したような、テトラグリシジルエポキシ樹脂、又はテトラグリシジルエポキシ樹脂とトリグリシジルエポキシ樹脂との組合せが好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ(Huntsman Advanced Materials)から商標名MY721として入手することができるテトラグリシジルアミノジフェニルメタンであるのが特に好ましいが、他の供給業者から得ることもできる。三官能性エポキシ樹脂は、例えば、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズから商標名MY0510として、他の供給業者からは他の記号で市販されているトリグリシジルアミンエポキシ樹脂、例えば、トリグリシジル−p−アミノフェノールであるのが好ましい。
【0052】
樹脂組成物の全重量に基づく樹脂組成物中の樹脂の量は、25〜90%であるのが好ましく、一層好ましくは30〜80%である。樹脂組成物中の樹脂の重量に基づく組成物中のエポキシ樹脂の量は、好ましくは25〜100%、一層好ましくは50〜100%、最も好ましくは75〜100%である。樹脂組成物中の樹脂の重量に基づく樹脂組成物中のテトラグリシジルアミンエポキシ樹脂の量は、好ましくは25〜100%、一層好ましくは40〜100%である。
【0053】
樹脂組成物は、他の樹脂成分を含んでいてもよく、特にアミン基、又は三官能性又は四官能性エポキシ樹脂を含む他の非アミンを持つ、又は持たない二官能性樹脂、例えば、エラストマー変性二官能性エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0054】
樹脂組成物中には、次のもの:促進剤;熱可塑性物及び芯殻ゴム;難燃剤;湿潤剤;顔料/染料;紫外線吸収剤;殺菌性化合物;靭性化剤粒子;粘度変性剤;液体ゴム;酸化防止剤;無機又は有機充填剤;安定化剤;希釈剤及び可塑剤;のいずれかのような性能向上又は改良剤として更に少量の成分を含有させてもよい。
【0055】
本発明の方法で用いられる樹脂組成物の第二の重要な成分は、異なった反応性の少なくとも二つの反応性基を含む硬化剤系である。即ち、それら反応性基の一つが反応性基の他のものよりも大きな反応性を有する。
【0056】
異なった反応性の反応性基は、エポキシ樹脂の官能基と反応することができるどのような官能基でもよく、好ましくはそれら反応性基の少なくとも一つはアミン基であり、一層好ましくは両方の基がアミン基である。勿論、硬化剤系は3種類以上の反応性基を含むこともできるが、硬化剤系は一つの種類の反応性基を含み、その反応性基が硬化剤系中に同じく存在する第二の種類の反応性基よりも大きな(小さな)反応性を有することが重要である。
【0057】
硬化剤又は硬化剤系に関連して本発明の内容で用いられている用語「反応性」とは、硬化剤(或は一層特別には、その官能基)がエポキシ樹脂(或は一層特別には、その官能基)と反応する能力を指す。以下の記述で、本発明を主に最も好ましい態様、即ち、硬化剤系の少なくとも二つの種類の反応性基が両方共アミン基である場合について更に記述するが、勿論、他の反応性基を用いることも可能である。例えば、一方の種類の反応性基を、反応性ブタジエンアリールニトリルエラストマー(例えば、CTBN、カルボキシル末端ブタジエンアクリルニトリル)によって与え、他方の種類をアミンにすることができる。典型的には、アミン基は、例えば、CTBNよりも速くエポキシ樹脂と反応する。これは、特に第一級アミン基(−NH)について当て嵌まり、それらはエポキシ環の開環反応に関して遥かに一層反応性である。殆どの芳香族アミン硬化剤は、第一級アミン官能性を有する。反応性ブタジエンアリールニトリルエラストマーは、通常(第一級)アミンよりも低い反応性を有し、反応性ブタジエンアクリルニトリルエラストマーは、低い反応性を有する反応性基を与え、(第一級)アミンは、大きな反応性を有する反応性基を与えるであろう。
【0058】
本発明によれば、硬化剤系の反応性基は、もし硬化剤系の他の反応性基よりも速く且つ/又は一層穏やかな条件下で、通常一層低い温度でエポキシ樹脂と反応するならば、それは「大きな(higher)」反応性を有する。従って、本発明の硬化剤系の反応性基は、もし硬化剤系の他の反応性基よりも遅く且つ/又は一層強力な反応条件下で、通常一層高い温度で、エポキシ樹脂と反応するならば、それは「小さな(lower)」反応性を有する。
【0059】
発明者は、理論によって拘束されたくないが、現在、方法の工程a)で樹脂組成物を注入した後、工程b)で、大きな反応性を有する硬化剤系の反応性基と、少なくとも一種類のエポキシ樹脂との反応により起こされる制御された粘度増大が起きると考えられる。大きな反応性を有する官能基の反応は、制御された粘度増大を与える結果になる。好ましくは、本発明の方法の工程b)では、樹脂組成物の粘度は、工程b)の開始時の約10〜500mPa.sの範囲、一層好ましくは約50〜200mPa.sの範囲の値から、工程b)の終了時の一層高い粘度値まで増大する。工程b)の終了時の高い粘度値は、好ましくは約100〜30000mPa.s、一層好ましくは約500〜10000mPa.sの範囲内にある。このように、本発明の工程b)中、樹脂の粘度は好ましくは5〜200倍、一層好ましくは10〜150倍増大する。工程b)の開始時の粘度は、工程b)の開始時の温度で測定し、工程b)の終了時の粘度は、工程b)の終了時の温度で測定されている。粘度測定は、平行板レオメーターを用いて行う。図6は、本発明の典型的な方法の粘度及び温度パターンを示しており、工程b)は、その方法の開始後5分で始まり、その方法の開始後15分で終了する。本明細書中に報告し、示した全ての粘度測定は、ボーリン(Bohlin)CSRレオメーターを用いて行なった。試料は、40mm平行板の幾何学的形態を用いて測定された。
【0060】
工程b)では、通常架橋は起きないか、非常に僅かな量の架橋しか起きず(0%〜10%の硬化度)、工程b)での粘度増大は、主に樹脂組成物中の重合体の重量平均分子量の増大によって主に起こされていると考えられている。この粘度増大は、樹脂含浸織物シートの安定化中に装置の損傷又は樹脂付着の危険を減少しながら、最終的構造形状体で必要な優れた機械的性質を達成するのに重要である。大きな反応性を有するアミノ官能基を有する分子の構造は、主に樹脂重合体の重量平均分子量の増大だけが起き、全く又は殆ど架橋は起きないように選択されている。
【0061】
工程c)中、ゲル化、即ち、架橋が起き、樹脂組成物が硬化する。通常工程c)中、達成される硬化度は、40%以上、好ましくは50%以上、例えば、40%(又は50%)〜90%、好ましくは40%(又は50%)〜85%、特に40%(又は50%)〜75%である。このように、本発明の方法の工程c)中、樹脂組成物はゲル化し、工程c)後、成形された織物シートを貯蔵するか又は輸送した後、後硬化により更に処理することができる。しかし、硬化剤系は依然として幾らかの反応性基を含んでおり、それらは高温下での後硬化工程で反応することができる。工程c)後の成形織物シートは既にゲル化し、充分安定化されているので、この最終的後硬化工程は、加圧下で行う必要はない。本発明の方法は、工程d)として高温下での後硬化工程を含んでいるのが好ましく、この硬化工程中、好ましくは90%以上の硬化度が達成される。しかし、工程c)後で後硬化前に得られる構造形状体は、それ自身有用な製品であり、それらは商業的価値を有する。硬化度は当業者に知られている特徴であり、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。
【0062】
要約すると、本発明の方法で、工程b)では、大きな反応性を有する官能基の反応により制御された仕方で樹脂組成物の粘度が増大し、工程c)では、小さな反応性を有する官能基の反応によりゲル化が起きる。
【0063】
本発明の方法で用いられる硬化剤系は、異なった反応性を有する少なくとも二つの異なった種類の反応性基を含む。本発明の好ましい態様として、両方の反応性基がアミノ基であり、例えば、第一級アミノ基が第二級アミノ基よりも大きな反応性を有する事実を利用する。更に、反応性基は、立体的効果、特に嵩張った側鎖基によりそれらの反応性に立体障害を与えることができる。非芳香族炭水化物に結合したアミノ基は、通常芳香族炭化水素に結合したアミノ基よりも大きな反応性を有する。
【0064】
両方の反応性基が、同一の硬化剤に存在することも可能である。第一級アミノ基と第二級アミノ基の両方を含む好ましい硬化剤は、4−アミノジフェニルアミン(DPDA)である。
【0065】
【化1】

【0066】
この分子中、第二級アミノ基の反応性は、嵩張ったフェニル基の存在により更に減少している。もし異なった反応性を有する二種類の反応性基を有する硬化剤系として4−アミノジフェニルアミンを用いるならば、恐らく第一級アミノ基とエポキシ樹脂との反応により制御された粘度増大が達成される。この反応工程中の反応条件は立体障害を持つ第二級アミノ基の反応を起こすには不充分な条件である(温度が不充分な高さであるか、又は加熱時間が不充分な長さである)。この反応工程の最終生成物は、幾らか安定化した成形生成物であり、それは工程c)で直ぐにゲル化に掛けるのが好ましく、そこでは第二級アミノ基とエポキシ樹脂との反応を行わせるのに充分な時間高い温度を適用し(もし必要ならば、残余の第一級アミノ基とエポキシ樹脂との反応を完了させ)、ゲル化が行われる。
【0067】
本発明の更に好ましい態様として、硬化剤系は異なった硬化剤を含む。この場合、小さな反応性を有する反応性基及び大きな反応性を有する反応性基は、異なった硬化剤に結合し、本発明の方法で用いられる硬化剤系が、これらの異なった硬化剤を含む。比較的低い反応性を有する硬化剤は、例えば、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)のようなモノ芳香族ジアミン、又はジアミノジフェニルスルホン(DDS)のような芳香族スルホンである。比較的低い反応性を有するそのような硬化剤は、p−アミノシクロヘキシルメタン(PACM)のような環式非芳香族アミンのような大きな反応性を有する硬化剤と一緒にするのが有利である。上で説明したように、本発明の方法で制御した粘度増大中、PACM中のアミン官能基のような大きな反応性を有するアミン官能基はエポキシドと反応し、工程c)中、小さな反応性を有するアミン官能基、例えば、DDS及び/又はDETDAのアミン官能基がゲル化を起こす。
【0068】
本発明の次の態様は、特に好ましい:
a) 硬化剤系は、PACMのような比較的大きな反応性を有する一種類の硬化剤及びDETDA及び/又はDDSのような比較的小さな反応性を有する一種類以上の硬化剤を含む。
b) 硬化剤系は、比較的大きな反応性の官能基及びDPDAのような比較的小さな反応性の官能基を有する一種類の硬化剤、及びPACMのような比較的大きな反応性を有する一種類以上の硬化剤を含む。
c) 硬化剤系は、DPDAのような比較的大きな反応性及び小さな反応性を有する官能基を有する一種類の硬化剤及びDETDA及び/又はDDSのような小さな反応性を有する官能基を有する一種類以上の硬化剤を含む。
【0069】
本発明の方法は、硬化剤系中の硬化剤の反応性に大きな差が得られるように硬化剤系を適切に選択し、硬化剤系中の硬化剤の量を調節することにより、容易に制御することができる。適切な硬化剤系は、本明細書に与える実施例、公表された硬化剤の反応性、及びもし必要ならば、幾らかの簡単な日常的実験に基づき当業者によって見出すことができる。
【0070】
小さな反応性を有する硬化剤系の反応性基及び大きな反応性を有する硬化剤系の反応性基をエポキシド樹脂と反応させる温度は、好ましくは5℃以上、一層好ましくは10℃以上、更に一層好ましくは20℃以上異なる。このように、与えられた温度で、大きな反応性を有する官能基は、小さな反応性を有する官能基よりも速くエポキシド樹脂と反応する。
【0071】
樹脂組成物中の硬化剤系の量は特別には限定されておらず、樹脂組成物の全重量に基づき、好ましくは10〜75重量%、一層好ましくは20〜70%の範囲にある。もし硬化剤系が大きな反応性を有する一種類以上の硬化剤と、低い反応性を有する一種類以上の硬化剤とを含むならば、樹脂組成物中の硬化剤の全量に基づく大きな反応性(低い温度で反応する)硬化剤の量は、好ましくは10〜90重量%、一層好ましくは20〜80重量%であり、樹脂組成物中の硬化剤の全量に基づく小さな反応性を有する硬化剤の量は10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。
【0072】
硬化剤系中に、小さな反応性を有する官能基と大きな反応性を有する官能基との両方を与える一種類の硬化剤が存在するならば、それは、一部は大きな反応性を有する硬化剤として考え、一部は小さな反応性を有する硬化剤として考えられる。
【0073】
もし大きな反応性を有する硬化剤が環式非芳香族アミン、特にp−アミノシクロヘキシルメタンであるならば、この硬化剤の、樹脂組成物中の硬化剤の全重量に基づく量は、好ましくは5〜50重量%、一層好ましくは10〜40重量%である。この場合、小さな反応性を有する硬化剤、例えば、一種類以上の芳香族アミン、特にジエチルトルエンジアミン及び/又はジアミノジフェニルスルホンの、樹脂組成物中の硬化剤の全量に基づく量は、50〜95重量%、一層好ましくは60〜90重量%である。
【0074】
もし4−アミノジフェニルアミンのような大きな反応性を有する官能基及び小さな反応性を有する官能基を有する硬化剤が存在するならば、大きな反応性を有する硬化剤の量は0〜70%、一層好ましくは0〜60%であり、小さい反応性を有する硬化剤の量は、好ましくは0〜80%、一層好ましくは0〜70%であり、両方の官能性を有する硬化剤の量は、好ましくは20〜100%、一層好ましくは30〜100%である。
【0075】
例えば、本発明の一つの態様として、硬化剤系は、4−アミノジフェニルアミンのような両方の官能性を有する硬化剤、及びジアミノジフェニルスルホンのような小さな反応性を有する硬化剤、及びp−アミノシクロヘキシルメタンのような大きな反応性を有する硬化剤を含む。そのような系では、樹脂組成物中の硬化剤系の全量に基づき、ジアミノジフェニルスルホンの量は、好ましくは10〜50重量%、一層好ましくは20〜40重量%であり、4−アミノジフェニルアミンの量は、好ましくは20〜60重量%、一層好ましくは30〜50重量%であり、p−アミノシクロヘキシルメタンの量は硬化剤系の残余を占める。
【0076】
硬化剤系の硬化剤の量は、それら硬化剤の全量が100%を越えないように選択しなければならないことは言うまでもない。全ての%は、別のことが述べられていないならば、重量による。
【0077】
従来法のプルトルージョン法は、低い粘度を有する含浸用樹脂組成物を与えるため、比較的潜在的な硬化剤が用いられている。そのような比較的潜在的な硬化剤は、例えば、US−A5,098,496に記載されているようなプルトルージョン法で用いられている。そのような比較的潜在的な硬化剤を使用する場合、触媒として働く適当なアミン硬化促進剤を同時に使用することが屡々必要になる。US−A5,098,496では、そのようなアミン硬化促進剤として求核性が低いアニオンを含むトリアルキルスルホニウム塩を用いる。それとは対照的に、本発明の方法では、含浸用樹脂組成物が一般に比較的大きな粘度を有するように、特に含浸が注入により行われるならば、潜在性の低いアミン硬化剤を用いるのが好ましい。従って、本発明の方法では、触媒(又はアミン硬化促進剤)は用いないのが好ましく、本発明の含浸用樹脂組成物は触媒を含まないのが好ましい。
【0078】
本発明による硬化剤の組合せを用いることにより、工程c)でゲル化する前に、粘度の増大を慎重に制御することができ、特に樹脂を注入により織物シート又は織物シート積層体に適用する本発明の好ましい態様では、ゲル化が起きる点から注入点を分離することができる。例えば、注入機の開始時(注入機の最初の2/3)では、織物シート又は織物シート積層体を樹脂組成物で含浸し、粘度を増大し〔その方法の工程a)及びb)〕、注入機の最後の部分(例えば、最後の1/3部分)では、熱及び/又は圧力を適用してゲル化を行う。例えば、粘度の増大は110〜120℃の温度で5〜15分間かかり、次に125〜195℃の温度で、特定の樹脂系により充分な時間ゲル化が行われる。
【0079】
本発明の上記態様では、注入機の第二部分でのゲル化は、注入機の終端部で構造形状体が大体硬化する(例えば、40〜75%の硬化度になる)ような程度まで行い、含浸機はゲル化機でもある。この態様では、樹脂系の二反応速度的挙動のために、幾らか時間がかかり、その間に粘度が増大し、樹脂が可撓性で柔らかいままになっており、含浸/ゲル化機を通って移動する間、漏洩及び樹脂分離の危険を減少する。二反応速度的系は、ゲル化が含浸/ゲル化機の最後の部分でのみ起き、ゲル化が起きた後は、そのゲル化材料が直ちに含浸/ゲル化機を離れ、工程c)の後では、その(部分的に)ゲル化した樹脂系には最早圧力及び温度が適用されないようにする。本発明のこの態様の欠点は、樹脂系の二反応速度的性質が、含浸/ゲル化機の熱、圧力、搬送速度、及び大きさに関し慎重に調節されなければならないことである。この態様では、大きな反応性を有する硬化剤は、p−アミノシクロヘキシルメタンのような環式非芳香族アミンであるのが好ましい。なぜなら、そのような硬化剤を用いると反応性に大きな差を得るのが容易であり、特に小さな反応性を有する硬化剤がジエチルトルエンジアミン及び/又はDDSのようなモノ芳香族ジアミンであるならばそうである。この態様では、別のゲル化機で構造形状体を圧力及び温度を用いて付加的硬化工程に掛ける必要はない。高い温度及び長い硬化時間を用いて炉の中で90%以上の架橋を達成する後硬化だけが通常行われる。
【0080】
本発明の最も好ましい態様では、注入機の終端部で構造形状体が本発明の方法の注入機を出る時〔本発明の方法の工程b)の終端部で〕、形状体は依然として可撓性であるが、樹脂の粘度はそれが形状体として留まり、例えば、落下により流出したりしないように充分高くなるような程度まで粘度増大が行われる。この態様では、注入機を出た後、樹脂組成物は、好ましくは温度と圧力との組合せを用いて更にゲル化させる工程〔本発明の方法の工程c)〕にかける。注入機後、続くゲル化機を汚染から保護する被覆層及び/又はフイルムが形状体の上に配置されているのが好ましい。本方法が終わった時に、それらフイルムを構造形状体から除去することができる。
【0081】
上で論じたように、ゲル化中及びその後で、含浸した織物シートに圧力を適用する場合、プルトルージョン法で問題が起きることがある。樹脂組成物は堅くなっており、その堅い材料を圧力を与える装置に対して移動させた場合、それら堅くなった織物シートが破損するか、又は幾らかの樹脂材料が補強用シートから分離し、ゲル化機に蓄積する危険がある。一方、圧力を適用しながら織物シートの搬送が中断されると、その方法は実際には連続的方法ではなくなり、本明細書の最初の部分で論じた問題が起きる。
【0082】
従って、本発明の最も好ましい態様では、含浸機で粘度増大だけが起き、そのことが、含浸機を出た後の構造形状体から樹脂組成物が落下するのを防ぐ。含浸織物シートに熱及び圧力を加えることができる別のゲル化機で、部分的ゲル化が実現される。本発明の方法では異なった反応性の少なくとも二つの反応性基を有する特定の樹脂系が用いられているために、この順序を達成することができる。含浸機は固定されているが、ゲル化機は移動出来るのが好ましい。熱及び圧力下でゲル化が起きる時間、ゲル化機は樹脂含浸織物シートと同じ方向に同じ速度で移動し、織物シートとゲル化機との間に相対的動きが起きないようにする。織物シートとゲル化機との間に相対的運動が存在しないので、上で論じたような問題は起きるはずがない。
【0083】
ゲル化機は、樹脂含浸織物シートが装置を通って移動するのと同じ速度で回転しながら樹脂含浸織物シートに熱及び圧力を適用する、例えば2本のロールの形をしていてもよい。しかし、そのような機器では、充分な硬化を達成することは難しい。更に、(部分的に)ゲル化した生成物で一定した厚さを達成するのが困難である。ゲル化機は、樹脂含浸織物シートと共に移動するサイクルプレスであるのが好ましい。好ましくは予め形成された織物シートに、上昇させた温度で樹脂組成物を注入するが、樹脂系の粘度は、その樹脂系が完全に織物シートを含浸することができるように圧力下で充分低くなるようにする。含浸工程後、上で論じたように粘度が上昇する〔工程b)〕。従って、樹脂含浸織物シートが含浸機を出る時、樹脂は織物シート中に留まるように充分な粘稠性になっている。樹脂含浸織物シートが含浸機を出た後、それらは×1点でサイクルプレスに入り、そのサイクルプレスが樹脂含浸織物シートと同じ方向に同じ速度で移動しながら、そのサイクルプレスは樹脂含浸織物シートに熱及び圧力を適用する。サイクルプレスの温度は、樹脂組成物のゲル化を起こすのに充分な温度である。予め定められた点×2で予め定められた時間t1後に、サイクルプレスを含浸織物シートから除き、×1点へ戻るように移動させる。サイクルプレスが熱を適用する間に、樹脂含浸織物シート中でゲル化が起き、適用した圧力により、得られる構造形状体の厚さが確実に均一になる。サイクルプレスは、1回のサイクルで適用される熱が希望のゲル化を達成するのに充分になるように調節することができ(この場合、×1と×2との間の距離は、本質的にサイクルプレスの長さに相当する)、希望の量のゲル化が数回のサイクル後、例えば、2サイクル後、又は3サイクル後、又は4サイクル後等に達成されるようにサイクルプレスを調節するのが好ましい。従って、樹脂含浸織物シートの各点がサイクルプレスの数回のサイクル中に加熱され、プレスされるように、×1と×2との間の距離はサイクルプレスより短いのが好ましい。この操作方式により、厚さに特に良好な一定性が与えられ、構造形状体の剥離の発生が回避される。
【0084】
サイクルプレスを操作することにより、サイクルプレスの稼働時間が、圧力が構造形状体に適用されている間の時間と比較して出来るだけ短くなるようにするのが好ましい。稼働時間を短くすることにより多孔性及び層剥離が回避される。従って、サイクルプレスを×2点で開始した場合、出来るだけ迅速にそれを×1点へ再び戻るように移動させ、終了する。
【0085】
サイクルプレスのサイクル時間は特別には限定されていないが、各サイクルは好ましくは2〜120秒、一層好ましくは10〜120秒、一層好ましくは20〜60秒、特に10〜30秒である。図4は、その処理とサイクルプレスの連続性を示している。
【0086】
そのようなサイクルプレスを用いることにより、装置を通る織物シートの連続的搬送及び含浸用樹脂の織物シート中への連続的注入が、熱及び圧力を加えながら、織物シートとゲル化機とが相対的に移動しないようにしながら、可能になる。
【0087】
本発明の方法のこの態様は特に好ましい。なぜなら、粘度が増大する工程が空間的に分離されており、ゲル化工程が処理の安全性を一層良くし、樹脂系について要求される条件が、特に硬化剤系の官能基の反応性の差についての必要条件が、含浸機中でゲル化が起きる態様の場合程、厳しくないからである。本発明のこの態様では、DPDAのような大きな反応性を有する官能基に加えて、小さな反応性を有する官能基を有する少なくとも一種類の硬化剤を含む硬化剤系を用いるのが好ましい。
【0088】
ゲル化機で用いられる温度及び圧力は、用いる樹脂及び補強用シートが装置を通って運ばれる速度に依存する。夫々の特定の樹脂系についての最もよい値は、過度の実験をしなくても当業者によって見出すことができる。
【0089】
ゲル化機では、熱及び圧力の下でゲル化する間、補強用樹脂の架橋が全てではないが殆ど起き、通常それがゲル化機を出た後に構造形状体を加熱することにより硬化を完了させる(後硬化する)ことが依然として必要であるが、後硬化前の構造形状体は、保存し、搬送し、市場へ出すことができる有用な中間的製品である。ゲル化機では、通常、架橋の50%〜90%、例えば、50〜75%が起きる。
【0090】
本発明で用いられる特に有利な樹脂の化学性により、架橋をプルトルージョン法で非常に正確に制御することができ、最終的製品の硬化度を調節することができ、形状体のコンシステンシー(consistency)を消費者の要求及び構造形状体を更に処理するための方法に適合させることができる。例えば、10〜40%の架橋(又は硬化)度では、一種の「網状プレプレグ」を得ることができる。そのような形状体は適当な温度で柔らかくなり、それ自身売り買いすることができる製品であり、最終的ユーザーによってあらゆる種類の構造体へ成形することができる。そのような網状プレプレグを用いると、湾曲した形状体及び高度に統合された構造体を得ることができる。
【0091】
本発明の方法を用いて、Tgが低下した半硬化形状体を製造することもできる。そのような半硬化形状体は、40〜75%の架橋度を有する。そのような半硬化形状体は、結合操作中又はその後でそれらの歪みを減少させることができる利点を有し、それらは、後で成形することができる形状体を製造するのに用いることができ、好ましい。形状体を成形するためには、ガラス転移温度(Tg)より高い温度まで加熱する必要があり、その時、形状体は希望の形状に近くなるまで成形されなければならない。次にそのような希望の形状に近い形の形状体を後硬化することにより、完全な硬化が達成される。
【0092】
後硬化(post-curing)は架橋量を増大するのに用いられ、後硬化により好ましくは90%以上の架橋量に到達することができる。後硬化は、120℃〜200℃の範囲、好ましくは160℃〜200℃の範囲の高い温度の炉を用いてプルトルージョン処理する従来技術でよく知られているように実施される。後硬化は、通常1〜4時間、例えば、約2時間行われる。
【0093】
本発明により、一定の断面を有するあらゆる種類の構造形状体、例えば、I型梁、T型梁、Ω型梁、床梁、湾曲梁等を製造することができる。
【0094】
本発明の方法を実施するための装置は、原理的には従来法でよく知られている通常のプルトルージョン装置であり、それは本発明の方法を実施するのに必要な修正を含んでいる。そのような装置を模式的に図1に示す。装置は(通常)織物シート又は織物シート積層体を支持するロールのクリール1、その前成形装置2(この装置は、場合により前成形体を安定化するためのプレスを含んでいる)、織物シートを含浸させ、本発明の方法により要求される順序の加熱を適用するのに適合する含浸/ゲル化機3、場合により後硬化するための付加的加熱器(図示されていない)、及び装置を通って補強用シートを搬送するプルトルーダーの引き具4を含む。図1に示した装置では、粘度の増大が行われる機器である含浸機及びゲル化機は同じであり、含浸、粘度増大、及びゲル化を同じ機器で行う。
【0095】
構造形状体の形状は、樹脂組成物の粘度が増大する機器とゲル化機との構成を定める。それら機器は、加熱することができる中空内部を有し、構造形状体、例えば、I型梁、T型梁等と同じ形状及び大きさを有する。含浸後、液体樹脂組成物は装置の中空内部の外側壁により閉じ込められ、粘度が増大した後、樹脂組成物の大きな粘度によりこの形状が維持される。粘度増大及びゲル化するための機器の長さ及び外側の大きさは、構造形状体の特定の形状、樹脂組成物、使用される温度、予測される生産量等により、当業者により容易に見出され、採用することができる。注入機、サイクルプレス等は市販されており、本発明の方法を実施するのに当業者により容易に採用することができる。
【0096】
本発明の方法により得られる構造形状体は、例えば、使用される材料の種類のため、従来法の形状体とは異なっている。
【0097】
本発明の方法により得ることができる高性能構造形状体は、優れた性質を有し、特に優れた圧縮強度、特にASTM D6484−99基準に従って測定して、開口孔圧縮強度(open hole compression strength)を有する。例えば、準等方的合板(quasi-isotropic lay-up)では、開口孔圧縮強度は、好ましくは270MPa以上、最も好ましくは300MPaより大きい。繊維の55%が配向0°、22.5%が+45°、22.5%が−45°、そして0%が0°であることを意味する{55/22.5/22.5/0}のような方向性合板のOHC性能は、好ましくは450MPaより高く、最も好ましくは470MPaより高い。繊維の60%が配向0°、15%が+45°、15%が−45°、10%が9′0°であることを意味する{60/15/15/10}のような方向性合板のOHC性能は、好ましくは500MPaより大きく、最も好ましくは520MPaより大きい。これによりそれらは宇宙空間用途で特に有用なものにされている。
【0098】
特に別のことが述べられていない限り、本明細書中で言及されている%は、重量基準による。
【0099】
本発明を、次に図に関連して一層詳細に説明する。
【0100】
図1において、織物シートがロール1上に与えられている。この例では12本のロールが存在し、これらの各々が織物シート又は織物シート積層体を与えることができ、それらを一緒に重ね、次に前成形機2へ送る。前成形機2では、一緒にした織物シートを予め定められた形状に成形し、場合により任意のプレスにより固化する。次にその前成形体を含浸機3へ送り、そこで織物シート中へ樹脂を注入する。図1では、織物シートはプルトルーダーの引き具4により全装置を通って一定に引かれ、引き具4の動きは矢印により示されている。
【0101】
図2は、本発明の好ましい態様を模式的に示しており、この場合、熱及び圧力下でゲル化が含浸機内で行われる。
【0102】
前成形体5は、含浸とゲル化併用機器に入り、この機器の位置6で織物シートに樹脂組成物を含浸する。位置6と7の間では余り架橋は起きず、粘度が増大するだけである。樹脂組成物は織物シート全体に均一に分布する。次に位置7と8との間でゲル化が起き、その結果ゲル化直後に、ゲル化物品が8の所で含浸/ゲル化併用機器を出、その機器内での破損又は樹脂の付着の危険が著しく減少するようになっている。位置6と7との間では、架橋は起きないか、又は起きる架橋量は少ないが、構造体は安定化しており、位置7と8との間で起きる架橋は50%〜75%の程度であるのが好ましい。含浸/ゲル化併用機器の内壁は、構造形状体に圧力を及ぼし、それにより構造形状体の形態及び一定の厚さを確実に与える。位置8の所で含浸/ゲル化機器を出るゲル化材料は、必要な均一な厚さの形態を有し、次に、上で説明したように、温度を適用することにより後硬化することができる。
【0103】
図3は、本発明の最も好ましい態様を模式的に示しており、この場合、含浸機はゲル化機とは別になっており、ゲル化機はサイクルプレスの形をしている。前成形体10(これは固化されていないのが好ましい)は、含浸機に入り、位置11の所で樹脂組成物を注入する。含浸機では架橋は起きないか、又はほんの僅かな量の架橋しか起きないが、樹脂組成物の粘度は増大する。従って、材料が位置12の所で含浸機を出た時、樹脂組成物は織物シート中に留まるのに充分な粘稠性をもち、落下することはない。位置13で、材料はサイクルプレスに入り、熱及び圧力が矢印で示されたように適用される。熱の適用で架橋が起き、樹脂組成物はゲル化する。圧力は得られる構造形状体の厚さを確実に一定にする。樹脂組成物のゲル化中、織物シートと同じ速度及び同じ方向にサイクルプレスは移動し、位置13aの所でサイクルプレスが開始することになり、その結果サイクルプレスと樹脂含浸織物シートとの間の相対的運動はない。位置13aの所でサイクルプレスが開始された場合、次に部分的にゲル化した樹脂組成物からサイクルプレスが除去され、出来るだけ迅速に位置13へ移動して戻り、そこで再び織物シートに適用され、それらが繰り返される。この最も好ましい操作方式により、構造形状体の各部分が、充分なゲル化が起きるまで数回熱及び圧力に掛けられる。全処理中、織物シートは矢印14の方向に連続的に搬送される。この方法は、特に一定した厚さを有し、弱い点のない構造形状体を与える。
【0104】
次の例は、例示するためだでけのものである。それらは上に記載したような{55/22.5/22.5/0}合板を用いて織物構成の効果及び樹脂組成物の効果と共に、ゲル化/硬化手順の差を例示する。
【0105】
次の省略記号が用いられている。
DETDA ジエチルトルエンジアミン
PACM p−アミノシクロヘキシルメタン
DPDA 4−アミノジフェニルアミン
DDS ジアミノジフェニルスルホン
MY0510 トリグリシジル−p−アミノフェノール→
三官能性エポキシ樹脂
MY721 テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン→
四官能性樹脂
ハイポックス(Hypox)
RA95 エラストマー変性二官能性エポキシ樹脂
【0106】
これらの例で用いられた樹脂組成物及び織物は、それ自体知られているやり方で製造された。
【0107】
例3はサイクルプレスを用いて製造され、例1及び2は含浸機が終わった時にゲル化を行うことにより製造した。引張り力は、例1と2では1〜2tの範囲にあり、例3では0.3〜0.6tの範囲にあった。構造形状体はI型梁の形をしていた。注入機での粘度増加は、線速度により10〜20分であった。サイクルプレスでの構造形状体の各々の部分の全時間は約6分(例3のみ)であった。この時間中サイクル数は≒12〜15であった。
【0108】
例1及び2の樹脂配合物は同じであり、一種類の多官能性エポキシ、一種類のシクロ芳香族アミン、及び一種類の芳香族アミンから構造されていた。両方の硬化剤は非常に異なった反応性を示し、従って、前に記載したように、ゲル化が注入機で起きる場合に有用である。例1では、{55/22.5/22.5/0}合板を達成するため一方向性テープ(UDテープ)と組合せて二軸織物を用い、一方の例2では、同じ{55/22.5/22.5/0}合板を達成するため一方向性テープ(UDテープ)と組み合わせて三軸織物を用いた。両方の合板は18枚の基本層から構成されており、夫々の層は270gsmの炭素繊維単位面積重量を持っていた。例18では基本層をポリエステル・ステッチヤーンを用いて一緒にし、それは4枚の二軸織物シートの積層部分であったが、例2では、12枚の基本層をポリエステル・ステッチヤーンを用いて一緒にした。従って、例2のステッチ含有量は一層大きかった。表1に示したようなOHC強度の差は、このステッチ含有量の差に起因する。
【0109】
例3では、例2と同じ織物を用いたが、樹脂配合物は例2と比較して変化させ、ゲル化は上で述べたように異なったやり方で行なった。一層高度のOHC性能は、例3の配合物の一層よい圧縮性に起因していた。
【0110】
このことは、5枚のハーネスサテン編み織物及び異なった樹脂から構成された直交[0/90°]3s積層体の圧縮強度試験によっても確認された。織物はヘキセル(Hexcel)により製造された(商標名)G926であり、370gsmの単位面積重量を持ち、テナックス(Tenax)6kHTA5131炭素繊維で作られていた。例3の構造形状体を、航空宇宙用途のための標準プレプレグ〔ヘキセル・コンポジッツ(Hexcel Composites)の航空宇宙用プレプレグ樹脂6376及びヘキセル・コンポジッツの航空宇宙用RTM樹脂RTM6〕を用いて慣用的RTM技術により作られた構造形状体に対して試験した。積層体は、表2に示したように、EN2850Bに従って試験した。圧縮試験は例3については808MPaを与えた。同じ織物から構成されたヘキセル・コンポジッツからのプレプレグ系6376の圧縮試験は、約800MPaを与え、RTM6樹脂のものは、797MPaを与えた。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、本発明の方法を実施するのに好ましい装置を模式的に表した図である。
【図2】図2は、ゲル化機と含浸機が同じ機器であり、ゲル化機中に蓄積する樹脂を減少させるために強い二反応速度挙動を有する樹脂系が用いられた本発明の一つの態様を示す図である。
【図3】図3は、含浸機とゲル化機とが空間的に分かれており、ゲル化機がサイクルプレスである、本発明の最も好ましい態様を示す図である。
【図4】図4は、例えば、I型梁(本発明の好ましい態様)を製造するのに有用な上方板又は下方板及び横板により圧力を加えることができるサイクルプレスを用いたその処理とプレスサイクルとの連続性を示す図表である。
【図5】図5は、本発明の特に好ましい方法、用いた材料、及びその方法により得られる製品についての概観を与える工程図表である。
【図6】図6は、本発明の好ましい方法について、工程b)及びc)の開始及び終了を示す処理時間に亙るその処理の温度プロファイル及び樹脂系の粘度プロファイルを示す図であり、粘度は夫々の温度で平行板レオメーターを用いて測定し、その処理は本文中に記載したようにサイクルプレスを用いて行われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造形状体を製造するための連続的プルトルージョン法において、
a) 1枚以上の織物シートに、
(i)三又は四官能性エポキシ樹脂である少なくとも一種類のエポキシ樹脂、及び
(ii)異なった反応性を有する少なくとも二種類の反応性基を含む硬化剤系、
の組合せを含む樹脂組成物を含浸させ、
b) 前記含浸させた織物シートを熱に掛けて前記少なくとも一種類のエポキシ樹脂と前記硬化剤系とを部分的に反応させ、その結果前記樹脂組成物の粘度を増大し、そして
c) 前記部分的に反応させた含浸樹脂組成物を、熱及び(又は)圧力を用いてゲル化する、
連続的プルトルージョン法。
【請求項2】
少なくとも一種類のエポキシ樹脂が、少なくとも一種類のアミン基を有する、請求項1に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項3】
少なくとも一種類のエポキシ樹脂がテトラグリシジルアミンエポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項4】
硬化剤系が、異なった反応性を有する少なくとも二種類の硬化剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項5】
異なった反応性を有する少なくとも二種類の硬化剤が、アミン硬化剤である、請求項4に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項6】
異なった反応性を有する硬化剤の大きな反応性を有する硬化剤が環式非芳香族アミンであり、異なった反応性を有する硬化剤の小さな反応性を有する硬化剤が芳香族アミンである、請求項5に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項7】
環式非芳香族アミンがp−アミノシクロヘキシルメタンである、請求項6に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項8】
異なった反応性を有する硬化剤の小さな反応性を有する硬化剤がモノ芳香族ジアミンである、請求項6又は7に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項9】
異なった反応性の少なくとも二つの反応性基を含む硬化剤系が、同じ分子中に異なった反応性を有する少なくとも二つの反応性基を有する硬化剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項10】
同じ分子中に異なった反応性を有する少なくとも二つの反応性基を有する硬化剤が、少なくとも一つの第一級アミン官能基及び少なくとも一つの第二級官能基を有する芳香族アミンである、請求項9に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項11】
芳香族アミンが4−アミノジフェニルアミンである、請求項10に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項12】
工程b)での部分的反応を、1000〜10000mPa.sの範囲の粘度を達成するまで行う、請求項1〜11のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項13】
ゲル化工程c)を、40%〜75%の硬化度まで行う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項14】
ゲル化工程c)を、10%〜40%の硬化度まで行う、請求項1〜12のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項15】
少なくとも1枚以上の織物シートに樹脂組成物を含浸させる前に、当該織物シートを予備的に形成する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項16】
予備的形成品を圧密することにより安定化する、請求項15に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項17】
工程c)でのゲル化を、熱及び圧力を適用することにより行う、請求項1〜16のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項18】
熱が120℃〜200℃であり、圧力が1〜20バールであり、熱と圧力とを3〜20分の時間適用する、請求項17に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項19】
熱及び圧力をサイクルプレスにより適用する、請求項17又は18に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項20】
工程a)での含浸を、注入法により実現する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項21】
1枚以上の織物シートを、一方向性テープ及び(又は)多軸織物から選択する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項22】
1枚以上の織物シートが、一つ以上の一方向性テープと、一つ以上の多軸織物との組合せである、請求項21に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項23】
工程c)のゲル化生成物を更に工程d)にかけ、熱により90%以上の架橋度まで硬化する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項24】
構造形状体が、航空宇宙工業で用いられる高性能構造形状体である、請求項23に記載の連続的プルトルージョン法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法により得られる構造形状体。
【請求項26】
高性能構造形状体、網状プレプレグ、又は半硬化形状体である、請求項25に記載の構造形状体。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の連続的プルトルージョン法を実施するための装置であって、
a) 場合により2枚以上の織物シートを予備的に形成して予備的形成品を得るための機器、
b) 場合により予め形成した1枚以上の織物シートに樹脂組成物を含浸させるための注入機、
c) 前記織物シートに熱を適用して部分的反応により樹脂組成物の粘度を増大するための機器、
d) 部分的に反応させた樹脂組成物をゲル化するための機器、及び
e) 上記装置を通って織物シートを一定に引張るための機器、
を含む、上記装置。
【請求項28】
含浸した樹脂組成物をゲル化するための機器がサイクルプレスである、請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−508113(P2008−508113A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523001(P2007−523001)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008114
【国際公開番号】WO2006/010592
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(507028387)ヘクセル コンポジッツ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】