説明

高粘性媒体から揮発性物質を除去する方法および装置

粘性媒体を処理するための蒸発装置(1)およびポリマー溶液またはポリマー溶融物から揮発成分を蒸発させる方法を開示する。蒸発装置(1)は、少なくとも、多孔板(3)を有する供給チャンバー(2)、該供給チャンバーに接続されていて、垂直に配置されたチューブ(8)を有するチューブバンドル熱交換器(4)、該チューブバンドル式熱交換器に接続されていて、生成物の排出ユニット(6)を有する揮発成分除去チャンバー(5)、および揮発性成分を除去する蒸気枝管(7)から成り、熱交換器(4)のチューブ(8)は、その長手方向のディメンションの最大部分において長方形の断面を有する。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、フラットなチャンネル(または通路)および長さにわたって変わる断面を有するコンパクトに集めたチューブならびに下流の分離器から成るチューブバンドル式熱交換器を用いて、ポリマー溶液もしくはポリマー溶融物、特に熱可塑性ポリマーを特に緩やかに加熱または濃縮する連続方法、ならびに該方法を実施する装置に関する。
【0002】
産業界で評されているチューブバンドル式熱交換器は、流体の加熱または冷却、および粘性媒体からの揮発性物質の蒸発に用いられる。これらは、通常は、円形の断面を有するチューブから成り、揮発成分が除去される(もしくは脱揮される)または加熱される媒体が該チューブを通って流れ、そして、チューブの外側周囲には加熱媒体が流れる。チューブバンドル式熱交換器の利用分野は、例えば、ポリマーの濃縮プラント、空気調節設備または冷蔵庫等である。
【0003】
いくらかの特殊な使用の場合、非円形断面を有するチューブが記載されている。欧州特許公開公報(EP−A1)第0772017号には、チューブバンドル式熱交換器、好ましくは燃料ガスを冷却するコンデンシングボイラに用いられる熱交換器チューブが記載されている。チューブは、その端ではほぼ円形の断面、その間に位置するチューブ部分では長円形または長方形の断面を有し、これらの断面は一定または可変であり得る。チューブの内側には、ビーズ、溝またはへこみが備えられており、乱流境界層を発生させ、熱移動を促進させる。しかしながら、層流を示す高粘性ポリマー溶融物の場合には、へこみ等による乱流の発生は機能しない。
【0004】
欧州特許公開公報(EP−A1)第0218104号に記載されているチューブバンドル式熱交換装置は、直交向流の原理によって低い圧力範囲で作動し、気/気系および気/液系、特に、多量のガスおよび高い排ガス温度を用いる燃焼プロセスならびに溶媒が循環するプロセスで用いられる。該装置は、その端では六角形の断面プロフィール、その中間部分(チューブ長さの約90%)では長円形または円形の断面を有するチューブから成る。六角形のプロフィールの利点は、予め穴を開けた端部トレイを必要とせずに、チューブの端を互いに直接つなぐことができ、これにより、チューブ間に密接したキャビティを形成することである。しかしながら、この設計は、熱交換器のジャケットの側壁に、連結(または継ぎ目のある)チューブを接続する場合には不利である。互いに連結するチューブの外形をまねて前もって打ち込まれた金属板に溶接する必要がある。
【0005】
ドイツ特許公開公報(DE−A1)第3212727号に記載されている、高粘性、特に構造的に粘性かつ流動性を有する物質の冷却または加熱を目的とする熱交換器は、互いに平行の面に90°の角度をなして配置されている、平行のチューブの列から成る。加熱または冷却媒体はチューブに流れ込み、加熱または冷却される流体は、チューブの外側を、チューブ列の面に対して垂直に流れる。チューブは、円形またはフラットチューブの形を成す。この配置の欠点は、交差するチューブの間に多くの「デッドスペース」が存在することであり、該デッドスペースに加熱または冷却される媒体が集まって熱分解を受ける。更に、この設計は非常に複雑であり、より大きな生産プラントへの拡大が困難である。
【0006】
Schrader Verfahrenstechnik GmbHのパンフレットには、フラットチューブ式熱交換器が開示されている。フラットチューブ式熱交換器は、蒸気を凝縮するために、または濃縮プラントでの加熱要素として用いられる。記載されている装置は、列を成して配置されたフラットチューブが存在する熱交換器ジャケットから成る、チューブバンドル式熱交換器である。円形チューブに比べて改善された熱移動および少ない汚れが利点として言及されている。
【0007】
ポリマーまたはポリマー溶融物への用途は知られていない。
【0008】
フラットな、楕円形または長円形の断面を有する熱交換器チューブおよびその製造が従来技術に記載されている。例えば、ドイツ特許公開公報(DE−A1)第805785号に、広い長方形断面を有するプレート型の加熱要素が開示されている。しかしながら、プレート型の加熱要素は、金属板の2つの側面を折り曲げ、更なる金属ストリップに溶接して側面を硬化させることによって製造する。この装置は、1つの金属ストリップを折り曲げて熱交換器チューブを製造し、そして、支持フランジを完成させる、ドイツ特許公開公報(DE−A1)第2506434号を基礎にして得られる。次いで、重複している端を溶接する。同様のフラットチューブはドイツ特許公開公報(DE−A1)第19857510号に記載されているが、ここでは、支持フランジは、2つのチャンバーを形成するためにチューブ表面からチューブ内側へ曲げられて再び曲げ返された金属ストリップのエッジから成る。ドイツ公報第7827359号には、フラットな熱交換器チューブが記載されており、上述のチューブとは対照的に、チューブの全使用期間にわたって、重複領域において強固かつ液密な接続が保証される。
【0009】
言及した全ての設計の不利点は、チューブの複雑化された製造であり、少なくとも1つの形成プロセスおよび1つの連結プロセスを必要とする。本発明の目的は、唯一の形成プロセスを必要とする小型チューブを用いることである。更に、溶融物の流れに不利な変化をもたらし得る、接合部の継ぎ目をなしで済ませることを目的とする。
【0010】
本発明の目的は、特に緩やかな条件下、即ち、できるだけ低い熱負荷(温度かつ滞留時間)および狭い滞留時間分布によって、高粘性ポリマー溶液から揮発性物質を除去すること、ならびに既知の熱交換器の不利点を有さない適切な装置を提供することである。
【0011】
本発明に従って、小型チューブから成るチューブバンドル式熱交換器にポリマー溶液を連続的に通し、該溶液を揮発性物質の沸点よりも高い温度まで加熱することによって、目的を達成する。次いで、揮発性物質を下流の分離器(揮発成分除去チャンバー)においてポリマー溶融物から分離し、揮発成分が除去されたポリマー溶融物を、例えばギアポンプ(例えば造粒用)等の排出装置を介して更に輸送する。
【0012】
本発明は、粘性媒体を処理するための蒸発装置に関し、該装置は、少なくとも、穴の開いたトレイを有する供給(feed)チャンバー、供給チャンバーに接続されていて、垂直に配置されたチューブおよび穴の開いた板(下方の穴あきトレイ)を有するチューブバンドル式熱交換器、ならびに、熱交換器に接続されていて、生成物の排出ユニットおよび揮発成分を除去する蒸気出口(take-off)を有する揮発成分除去(または脱揮)チャンバーから成り、熱交換器のチューブが、その縦の寸法(または長手方向のディメンション)の一部分において、とりわけ、その長手方向のディメンションの大部分において、長方形または長円形の断面を有することを特徴とする。
【0013】
本発明において、用語「長方形断面」は、長方形および丸いエッジ形状ならびにいわゆる「長円」を有する長方形断面(即ち、2つの平行で真っ直ぐな側面が、円弧によって一体的に連結されている)を含む。断面の好ましい形状は、長円のもの、丸くされたエッジまたは長円形の断面を有する長方形のものがあり、長円が特に好ましい。
【0014】
熱交換器のチューブは、その長手方向のディメンションの70〜98%において長方形または長円形の断面を好ましくは有する。
【0015】
長方形または長円形断面の領域において、チューブ内側の最大厚D(即ち、断面の短軸に沿った、チューブ断面の広がり)は、好ましくは1〜50mm、特に好ましくは1〜20mmである。
【0016】
長方形または長円形断面の領域において、チューブ内側の最大幅B(即ち、断面の長軸に沿った、チューブ断面の広がり)は、特に5〜500mm、好ましくは7〜100mm、特に好ましくは7〜50mmである。
【0017】
最大厚Dに対する最大幅Bの比は、特に2:1〜30:1、特に好ましくは4:1〜10:1である。
【0018】
チューブは、100mm〜10m、好ましくは200mm〜3m、特に好ましくは500mm〜1mの長さを好ましくは有する。
【0019】
好ましい態様では、チューブは、0.5mm〜5mm、好ましくは1〜4mmの壁厚を有する。
【0020】
チューブは、例えば、圧延またはプレスによって、例えば、円形断面を有するチューブから形成することによって得ることができる。
【0021】
特に好ましくは、揮発成分除去チャンバーにおいて、熱交換器のチューブの端に、垂直のワイヤー、チェーン、ワイヤーループまたはワイヤーブレードを取り付ける。
【0022】
これらは、例えば、揮発成分が除去されるポリマーとガス空間との間の、界面の大きさを増やす手段として役立ち、蒸気排除プロセスを加速する。
【0023】
ワイヤー、ワイヤーループまたはワイヤーブレードの適当なアレンジメントは、例えば、ドイツ特許公開公報(DE−A1)第10144233号に記載されており、その内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0024】
本発明では、生成物にとって死角となり得る鋭角を回避する。長円形のチューブでは、フラットなチューブに比べて、生成物流れが不均一な分布となる危険がより少ない。
【0025】
チューブは、通常の方法で、その端を円形に作ることができ、その結果、チューブバンドル式熱交換器のプレートにおいて常套の締結が可能である。更に、これにより、生成物の入口および出口を通常通りに設計することができる。円形から長円形または長方形の断面への移行を、好ましくは、鋭角を伴わずに行う。
【0026】
本発明の特に好ましい変形例においては、チューブは、異なる断面積を有する複数の領域を有し得る。2またはそれより多くの段階でフラットにすることができる。
【0027】
更に、チューブの内部の圧力を、チューブの端の圧力と同じレベルに維持することを目的として、チューブの端の領域に追加のオリフィスプレートを導入することができる。これにより、並んで配置されている蒸発器チューブにおける不均一な蒸発挙動を防ぐ。結果的に、偏在が防止される。
【0028】
チューブ(8)の上方入口領域において、具体的には、チューブ(8)の長さの半分を越えず、好ましくは3分の1を越えず、特に好ましくは4分の1を越えず、また、具体的には、チューブ(8)の長さの少なくとも200分の1、好ましくは少なくとも100分の1、特に好ましくは少なくとも50分の1を超えて、断面が狭くなっている箇所が存在する、別の形の装置も好ましい(例えば図5を参照)。
【0029】
この断面が狭くなっている箇所の長さは、少なくともその内径に相当すること、特に好ましくは少なくとも2倍の長さであることを特徴とする装置が特に好ましい。
【0030】
開口(aperture)に比べて、突然の圧力降下およびいずれかの溶媒の突然の蒸発を防止する。開口のアレンジメントに比べて比較的大きな直径は、狭くなっている領域における閉塞の危険を防止する。
【0031】
そのようなアレンジメントの更なる利点は、供給チャンバーにおいて改善された流入圧力を確立することができ、それ故に、様々な熱交換器チューブにおいてポリマーの均一な分布が可能であることである。
【0032】
断面狭窄部がチューブ内の挿入スリーブによって形成されていることを特徴とするタイプの装置が、特に非常に好ましい。
【0033】
チューブの入口領域にある、そのような挿入スリーブの間でのより悪い熱移動を利用して、入ってくる生成物ストリームとスリーブ内面との間の温度差を、挿入スリーブ無しの装置の動作中に生ずる温度差よりも小さい状態を保つことが有利であり得る。この効果は、チューブよりも比較的低い熱伝導率を有する材料を挿入スリーブに用いること、および熱交換器チューブと挿入スリーブとの間に開いたギャップを残すこと、または挿入スリーブの壁厚を増加させることによって高めることができる。
【0034】
本発明は、ポリマー溶液または溶融物から揮発成分を除去するための、本発明の蒸発装置の使用にも関する。
【0035】
本発明は、更に、本発明の蒸発装置を用いて、ポリマー溶液または溶融物から揮発成分を蒸発させる方法に関し、該方法は、ポリマーを150〜250℃、好ましくは160〜240℃の温度まで予熱する工程、該ポリマーを2000〜100000hPa、好ましくは5000〜50000hPaの圧力で供給チャンバーに通す工程、好ましくはポリマーに対して向流で流れる熱交換媒体によって160〜380℃、好ましくは165〜300℃の温度までチューブを加熱しながら、該ポリマーに熱交換器のチューブバンドルを通過させ、1〜5000hPa、好ましくは2〜2500hPa、特に好ましくは5〜1000hPaの揮発成分除去チャンバーの圧力で、揮発成分除去チャンバーの領域、オプションとして付加的にはチューブの下方部分で揮発成分を蒸発させて除去する工程、ならびに該ポリマーを集めて排出する工程を含んで成る。
【0036】
好ましい方法では、揮発成分の蒸発および除去を、チューブの下方4分の1、好ましくは下方8分の1において付加的に行うことを特徴とする。
【0037】
好ましくは、供給チャンバーに入るポリマー材料の粘度は、100mPa・s〜10Pa・s、好ましくは500mPa・s〜10Pa・s、特に好ましくは1Pa・s〜10Pa・sである。
【0038】
特に、ポリマー材料の処理量は、1つのチューブにつき、0.5〜12kg/h、好ましくは1〜9kg/hである。
【0039】
揮発成分の除去を、1またはそれより多くの段階で行うことができ、後者の場合では、複数のチューブ式熱交換器を直列でつなぐこと又はこれらと他の揮発成分除去装置とを組み合わせることができる。
【0040】
チューブバンドル式熱交換器のチューブを、例えば円形チューブから製造する。該円形チューブは、例えばロール等の適当なツールを用いることによって、図1に示す形状に至る。チューブは、長さにわたって変わる断面を有する。その2つの端は、とりわけ始めのチューブの元の(本来の)円形断面を有し、例えば、6mm〜450mm、好ましくは6mm〜50mm、特に10mm〜40mmの範囲の直径を有する。このことは、常套の自動溶接法を用いて常套の穴あきトレイに固定(または締結)することを可能にする。チューブの中間領域の断面は、円形または長円形の側壁を有する、フラットな長方形のチャンネルの断面にほぼ相当する(図2参照)。フラットなチューブは、1つのピースから製造されるため、継ぎ目を有さない。
【0041】
好ましくは、本発明の方法を、溶融物もしくは溶液である熱可塑性ポリマーの加熱または揮発成分の除去に用いる。これらのポリマーは、圧力および温度の影響下で流動性を有する、全てのプラスチックを含む。本明細書では、例として、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)およびこれらのコポリマーまたはオプションとしてポリマーブレンドを挙げることができる。揮発成分が除去される物質および揮発性化合物は、上述のポリマーと好都合に混合することができる全ての溶媒、またはモノマーもしくは低分子量のオリゴマー、例えば、クロロベンゼン、塩化メチレン、ビスフェノールA、カプロラクタム、スチレン、アクリロニトリル、トルエン、エチルベンゼンおよびシクロヘキサンである。
【0042】
チューブ式熱交換器を蒸発器として用いるとき、混合物は単一相でチューブバンドルに入る。チューブ内の圧力勾配によって蒸発が可能になり、装置の端において、混合物は、気/液混合物の形で分離容器(揮発成分除去チャンバー)に入って、ここで、揮発性化合物が気体として除去される。揮発成分が除去された溶融物を、例えばポンプを介して、次の揮発成分除去段階または造粒装置に更に輸送する。
【0043】
小型チューブ式熱交換器を単なる熱交換器として用いるとき、チューブを流れる混合物からの生成物温度が、常圧において最低沸点の揮発性物質の沸点より低い状態を維持するように、チューブの加熱を調節する。
【0044】
加熱媒体は、例えば、50〜350℃の温度を有する。正確な加熱温度は、加熱または濃縮されるポリマー溶液および所望の濃縮結果または所望の生成物温度に依る。
【0045】
チューブの長さによって定まる圧力損失は、多くて100000hPaである。
【0046】
蒸発装置の材料として、ステンレススチール、ニッケル−ベースの合金、チタニウム、アルミニウムおよび他の合金が適当である。低−鉄のステンレススチールを用いるのが好ましい。
【0047】
本発明の方法は、ポリマー溶液からの揮発性物質(例えば溶媒およびモノマー等)の除去ならびにポリマー溶液の加熱に役立ち、本方法は、以下の利点により従来技術と区別される:
−フラットな小型チューブの表面/体積比は、円形チューブのそれよりも大きいため、チューブ式熱交換器において加熱媒体と生成物との間の熱移動がより良いこと
−より良い熱移動のため、熱交換器の長さがより短いこと
−長さがより短く、体積が減るため、チューブ式熱交換器での滞留時間がより短いこと
−高温での滞留時間がより短く、それ故に最終生成物、特にポリマーの質(例えば、機械的特性、色数、加工性)がより良いため、材料の損傷がより少ないこと
−小型設計であるため、資本コストがより低いこと
−概してより幅広で既知のプレート型の蒸発器またはプレート型の熱交換器に比べて、高粘性ポリマー溶液の場合にチューブ断面における分布がより均一であること、あるいは小型チューブを完全に満たすこと。
【0048】
チューブの端は円形の断面であるため、供給チャンバーおよび揮発成分除去チャンバーの領域において、常套の穴の開いたトレイへの接続が可能である。更に、そのような装置では、数による(numbering)簡単なスケールアップが可能である。
【0049】
基礎的な検討により、ポリマー溶融物から緩やかに揮発成分を除去するために、できるだけ低い熱負荷、即ち、低温で長い滞留時間、または高温で短い滞留時間、そして同時に狭い滞留時間分布を必要とすることが分かった。コスト効率に関する理由から、後者が好ましい。本発明の蒸発装置の実験的な検討により、該装置は、これらの要求を十分に満たし、それ故に、プラントの投資コストにおいてかなりの節約が期待されるという結果をもたらした。
【0050】
本発明の装置を、例えば2つの分野で用いる:
−化学反応における揮発性物質の蒸発方法:
−重縮合反応において、例えばエステル、オリゴエステル、ポリエステルまたはポリアミドの調製において、水または他の低分子量物質を分離すること、
−芳香族ビスフェノールを用いたジフェニルカーボネートの縮合においてフェノールを分離し、オリゴマーもしくはポリマーを生成すること、または
−分離可能かつ高い蒸気圧を有する成分を形成する反応(ホスゲンとアルコールとの反応においてHClを除去してジアルキルカーボネートを生成する)、
−熱分解条件下で気化し得る所望の生成物を生成する熱分解反応、例えば、大環状のモノもしくはジラクトンによるポリエステルの分裂、
−熱分解条件下で所望の物質から反応性気体成分を生成して分離する(例えば、ウレタンの熱分解において凝縮物として得られるイソシアネートから、気体アルコールを分離すること)熱分解反応
−化学反応を伴わない蒸発方法:
−コーティング樹脂からの揮発性モノマー(ジイソシアネート)の分離、
−熱感受性物質を含む混合物からの緩やかな溶媒除去(特に精密化学の場合)、ならびに
−ポリマー溶液からの溶媒およびモノマーの分離(特に、ポリカーボネート溶融物からのクロロベンゼンおよび/または塩化メチレン、ポリアミド溶融物からのカプロラクタム、SAN溶融物またはABS溶融物からのスチレン、アクリロニトリルおよびトルエンまたはエチルベンゼン、h−ポリスチレン溶融物からのシクロヘキサン)、
−混合物、例えば蒸留残渣からの所望の揮発性物質の分離、
−アルコール飲料からのエタノールの分離。
【0051】
本発明を、図を参照にして、また、態様を基にして、実施例によって以下により詳細に説明する。
【0052】
蒸発装置1は、以下の構成を有する:
互いに平行に配置されている熱交換器チューブ8(図3参照)は、外側ジャケット10および2つの穴の開いたトレイ3、9(気密集空間が形成されるように、チューブ8が締結されている)から成る熱交換器容器4内に存在する。チューブの端を、穴の開いたトレイ3、9によって終端処理する。加熱媒体は、チューブ8内のポリマー溶液に対して向流的に、チューブ8の外側周囲を流れる。中間領域において、チューブ8(図1参照)は、図2の拡大図に示すように、実質的に長方形の断面形状を有する。しかしながら、チューブ8の短い側のエッジは丸められている。加熱オイルは入口12においてチャンバー4に流入し、出口11において再びチャンバー4から流出する。
【0053】
図4は、蒸発装置の全体の構成を示す。ポリマー供給管13を有する供給(feed)チャンバー2は、上方の穴の開いたトレイ3の上にある;排出ポンプ6および揮発成分の蒸気出口(take-off)7を有する揮発成分除去チャンバー5は、下方の穴の開いたトレイ9(穴の開いた板(ceiling))の下方に取り付けられている。
【実施例】
【0054】
ポリマー溶液からの揮発成分の除去:
約80質量%のABSおよび約20質量%のモノマーまたは溶媒(アクリロニトリル、スチレン、エチルベンゼンおよびメチルエチルケトン)から成る、予め加熱されたポリマー溶液を、穴の開いたトレイ3を有する供給チャンバー2を介して、4つのチューブ8を有する小型チューブ式熱交換器に輸送する。チューブは全長1310mmであり、フラットなチューブ領域は1170mmの長さであって、長方形の領域においては、3mmのスロット厚Dおよび12mmのスロット幅Bを有する(図1参照)。向流方法によってオイルを用いてチューブ8を加熱する。熱交換器4におけるポリマー溶液の入口温度は194.7℃である。ポリマー溶液は、240℃に加熱されたチューブ8を介して6kg/hのポリマー処理量で下方に流れ、225.4℃の温度でチューブ8を離れる。チューブ全長にわたっての圧力損失を52800hPaに設定する。10hPaである揮発成分除去容器5において溶融物から揮発性物質を分離する。
【0055】
同じ長さの円形チューブ(直径:10mm)を有する蒸発器を用いた比較実験において、同じ処理量で、本発明のチューブ式熱交換器を用いて、1.8より上の熱移動係数を実現できることが分かった。更に、小型チューブ式熱交換器を用いて、溶媒の残存量を約33重量%までに減らすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、全長にわたって変動し得るチューブ断面を有する熱交換器チューブ8の側面図である。
【図2】図2は、フラットなチューブ部分の断面である。
【図3】図3は、チューブバンドル式熱交換器の構成である。
【図4】図4は、本発明の蒸発装置の全体の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性媒体を処理するための蒸発装置(1)であって、少なくとも、
穴の開いたトレイ(3)を有する供給チャンバー(2)、
該供給チャンバーに接続されていて、垂直に配置されたチューブ(8)および穴の開いた板(9)を有するチューブバンドル式熱交換器(4)、ならびに、
該チューブバンドル式熱交換器に接続されていて、生成物の排出ユニット(6)および揮発成分を除去する蒸気出口(7)を有する揮発成分除去チャンバー(5)
から成り、熱交換器(4)のチューブ(8)は、その長手方向のディメンションの一部において、とりわけその大部分において、長方形または長円形の断面を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
熱交換器(4)のチューブ(8)は、その長手方向のディメンションの80〜98%において、長方形または長円形の断面を有することを特徴とする、請求項1に記載の蒸発装置。
【請求項3】
長円形または長方形の断面の領域において、チューブ内側の最大厚Dは、1〜50mm、好ましくは1〜20mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の蒸発装置。
【請求項4】
長円形または長方形の断面の領域において、チューブ内側の最大幅Bは、5〜500mm、好ましくは7〜100mm、特に好ましくは7〜50mmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項5】
チューブ(8)は、100mm〜10mの長さ、好ましくは200mm〜3mの長さ、特に好ましくは500mm〜1mの長さを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項6】
チューブ(8)は、0.5〜5mmの壁厚、好ましくは1〜4mmの壁厚を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項7】
生成物と接触する装置部分、特にチューブ(8)は、低鉄材料、特に、スチール、ニッケル合金、アルミニウムまたはチタニウムから成る群から選択されたもの、より特に低鉄スチールから成ることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の蒸発装置。
【請求項8】
揮発成分除去チャンバー(5)において、熱交換器(4)のチューブ(8)の端に、垂直のワイヤー、チェーン、ワイヤーループまたはワイヤーブレードが取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
チューブ(8)は、長方形または長円形の、異なる断面積を有する複数の領域を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
チューブの上方の入口領域には、チューブの長さの半分を越えず、好ましくは3分の1を越えず、特に好ましくは4分の1を越えず、特に、チューブの長さの少なくとも200分の1、好ましくは少なくとも100分の1、特に好ましくは少なくとも50分の1を超えて延在する断面狭窄部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
断面狭窄部の長さは、少なくともその内径に相当し、好ましくは少なくともその2倍の長さであることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
断面狭窄部は、チューブ(8)への挿入スリーブ(14)によって形成されていることを特徴とする、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
ポリマー溶液またはポリマー溶融物から揮発成分を除去するための、請求項1〜9のいずれかに記載の蒸発装置の使用。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載の蒸発装置を用いて、ポリマー溶液または溶融物から揮発成分を蒸発させる方法であって、150〜250℃、好ましくは160〜240℃の温度までポリマーを予熱する工程、2000〜100000hPa、好ましくは5000〜50000hPaの圧力でポリマーを供給チャンバー(2)に通す工程、好ましくはポリマーに対して向流で流れる熱交換媒体により、160〜380℃、好ましくは165〜300℃の温度までチューブ(8)を加熱しながら、ポリマーに熱交換器(4)のチューブバンドルを通過させ、揮発成分除去チャンバー(5)の領域において、オプションとして付加的にはチューブ(8)の下方部分において、1〜5000hPa、好ましくは2〜2500hPa、特に好ましくは5〜1000hPaの揮発成分除去チャンバー(5)圧力において、揮発成分を蒸発させて除去する工程、ならびに該ポリマーを集めて排出する工程を含んで成る方法。
【請求項15】
揮発成分の蒸発および除去を、チューブ(8)の下方4分の1において、特に下方8分の1において付加的に行うことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ポリマーを、群:ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル樹脂、ポリ(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)、およびこれらのコポリマーまたはオプションとしてのこれらのポリマーのブレンドから選択することを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項17】
揮発成分は、溶媒または用いられるポリマーのモノマーもしくは低分子量オリゴマー、好ましくは、クロロベンゼン、塩化メチレン、ビスフェノールA、カプロラクタム、スチレン、アクリロニトリル、トルエン、エチルベンゼンまたはシクロヘキサンであることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
供給チャンバー(2)に入る際のポリマー材料の粘度は、100mPa・s〜10Pa・s、好ましくは500mPa・s〜10Pa・s、特に好ましくは1Pa・s〜10Pa・sであることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ポリマー材料の処理量は、1本のチューブ(8)につき、0.5〜1.2kg/h、好ましくは1〜9kg/hであることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−533766(P2007−533766A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520725(P2006−520725)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007678
【国際公開番号】WO2005/014667
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】