説明

魚類水槽水の処理装置及び魚類水槽水の処理方法

【課題】魚類水槽への返送水を魚類にダメージを与えることが無いように十分に浄化し且つ魚類水槽での藻類の繁殖を防止し美観を高める。
【解決手段】第一浄化部2に魚類水槽からの水槽水を導入し、該水槽水及び表面に光触媒9を有する複数の粒状吸着材6を、散気装置7により流動させながら紫外線照射ランプ8により照射することで、粒状吸着材6の表面に紫外線を満遍なく受光させ、光触媒反応を高効率で進行させOHラジカルを効果的に生じさせ、該OHラジカルにより、粒状吸着材6に吸着した有機汚濁物質を酸化分解すると共に粒状吸着材6を再生し、且つ、NHを酸化して硝酸・亜硝酸とし、この処理水を第二浄化部3に導入し複数の微生物担体10より成る濾過床11に通すことで、ごみ等を捕捉除去し且つ硝酸・亜硝酸を微生物担体10に担持した微生物により生物脱窒し、濾過床11で浄化した処理水を排出部5を介して魚類水槽に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類水槽水の処理装置及び魚類水槽水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類水槽水の浄化装置として、槽内の底部に、光触媒を透明状にコーティングして成る透明ガラス球を、光触媒層として敷き詰めると共に、当該光触媒層中に紫外線を照射する紫外線蛍光灯を埋設し、この光触媒層上に、活性炭や砂等から成る濾過層を積層し、この濾過層の上方に魚類水槽水を散水する散水装置を設け、散水装置から魚類水槽水を散水することで、魚類水槽水を先ず濾過層で濾過し、これにより、SS、NH等を除去し、次いで、この濾過水を光触媒層に通し、この際に、光触媒をコーティングした透明ガラス球に紫外線を照射することで、光触媒反応を生じさせ、殺菌、濾過層で吸着できなかった成分の分解、藻類の死滅化を行い、この浄化水を魚類水槽に戻すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−316148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記装置にあっては、実際には、魚類に対して猛毒なNHは濾過層を通過して光触媒層に至り、この光触媒層の光触媒反応により酸化されて硝酸・亜硝酸に分解され、この硝酸・亜硝酸を含む浄化水が魚類水槽に戻される。この魚類水槽に戻される亜硝酸は、魚類に対して微毒性を有し、魚類にダメージを与えてしまい、最悪死に至り、また、硝酸はpH低下の原因となり、これも魚類にダメージを与えてしまい、病気を誘発してしまう。
【0004】
また、光触媒層では、透明ガラス球であっても紫外線蛍光灯から遠い位置の透明ガラス球には紫外線が届き難く、従って、濾過層からの濾過水全体には光触媒反応を十分に及ぼし難く、浄化が不十分となるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、魚類水槽への返送水を魚類にダメージを与えることが無いように十分に浄化できる魚類水槽水の処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による魚類水槽水の処理装置は、魚類水槽からの魚類水槽水を導入し浄化するための処理槽を具備し、槽は、第一浄化部及び第二浄化部を備え、第一浄化部は、魚類水槽水及び表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を流動させるための散気装置と、粒状吸着材に紫外線を照射するための紫外線照射ランプと、を有し、第二浄化部は、複数の微生物担体により形成され、第一浄化部で処理された処理水を浄化するための濾過床と、この濾過床で浄化された処理水を魚類水槽に戻すための排出部と、を有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明による魚類水槽水の処理方法は、第一浄化部及び第二浄化部を備えた処理槽の第一浄化部に、魚類水槽からの魚類水槽水を導入し、当該魚類水槽水及び表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を、散気装置により流動させながら、紫外線照射ランプにより粒状吸着材を照射する第一処理工程と、この第一処理工程で処理された処理水を第二浄化部に導入し、複数の微生物担体により形成された濾過床に通して浄化する第二処理工程と、この第二処理工程で浄化された処理水を排出部を介して魚類水槽に戻す第三処理工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
このような魚類水槽水の処理装置及び処理方法によれば、第一浄化部に、魚類水槽からの魚類水槽水が導入され、当該魚類水槽水及び表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材が、散気装置により流動しながら、紫外線照射ランプにより紫外線照射されるため、粒状吸着材の表面は紫外線を満遍なく受光し、光触媒反応が高効率で進行してOHラジカルが効果的に生じ、このOHラジカルにより、粒状吸着材に吸着された有機汚濁物質が酸化分解されると共に当該粒状吸着材が再生され、且つ、NHは酸化されて硝酸・亜硝酸とされ、この第一浄化部の処理水は第二浄化部に導入され、複数の微生物担体により形成された濾過床に通され、ごみ、残餌、糞等が濾過床で捕捉されて除去され、且つ、硝酸・亜硝酸は微生物担体に担持された微生物の働きにより生物脱窒されて魚類水槽へ戻されることが防止され、この濾過床で浄化された処理水が排出部を介して魚類水槽に戻されるようになる。従って、魚類水槽への返送水が、魚類にダメージを与えることが無いように十分に浄化され、加えて、この返送水により魚類水槽での藻類の繁殖が防止され美観が高められる。
【0009】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成としては、具体的には、処理槽は、その下部に第二浄化部を備えると共に、当該第二浄化部の上に第一浄化部を備え、魚類水槽水は、第一浄化部の上部に導入され、排出部は、第二浄化部の底部に設けられる構成が挙げられる。
【0010】
また、第二浄化部は、魚類水槽からの魚類水槽水の一部を導入するための導入部を有していると、第二浄化部を構成する微生物担体に、微生物が効果的に移植されると共に生物脱窒に必要な有機物が効果的に供給され、生物脱窒効果が容易に高められると共に維持される。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、魚類水槽への返送水を、魚類にダメージを与えることが無いように十分に浄化することが可能となり、加えて、魚類水槽の美観を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による魚類水槽水の処理装置、魚類水槽水の処理方法の好適な実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る魚類水槽水の処理装置を魚類水槽と共に示す概略構成図、図2は、図1中の魚類水槽水の処理装置を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の魚類水槽水の処理装置100は、例えば熱帯魚等の観賞魚や料理店等で供される魚類が遊泳する魚類水槽50に付設されるものであり、魚類水槽50の魚類水槽水を浄化して魚類水槽50に戻すためのものである。
【0014】
この処理装置100に対しては、魚類水槽50の魚類水槽水を導入するための導入ラインL1及び当該処理装置100で浄化された処理水を魚類水槽50に戻すための戻しラインL2が各々接続され、魚類水槽50の魚類水槽水は、魚類水槽50内に設置され魚類水槽水に浸漬する水中ポンプPの駆動より、この水中ポンプPに接続された導入ラインL1、処理装置100、戻しラインL2、魚類水槽50を循環する構成とされている。
【0015】
図2に示すように、処理装置100は、導入される魚類水槽水を浄化するための処理槽1を備えている。この処理槽1は、両端が閉じられた円筒状や多角形の筒状に構成され、その上部が第一浄化部2とされると共にその下部が第二浄化部3とされている。これらの第一浄化部2と第二浄化部3は、魚類水槽水を二段階で浄化するものであり、連通状態とされている。
【0016】
第一浄化部2は、その上部に、導入ラインL1に接続され魚類水槽水を当該第一浄化部2に導入するための導入部4を備えると共に、槽内に多数の粒状吸着材6と、槽内を散気する散気装置7と、槽内に紫外線を照射する紫外線照射ランプ8と、を備えている。
【0017】
粒状吸着材6は、魚類水槽水中の有機汚濁物質を吸着するための粒状体であり、例えば、活性炭、ゼオライト、ベントナイト、シリカゲル等が用いられる。ここでは、特に好ましいとして、ヤシ殻活性炭が用いられ、1〜6mm程度のものが用いられている。
【0018】
この粒状吸着材6は、その表面に光触媒9を有している。この光触媒9は、紫外線が照射されると、光触媒反応を生じるもので、ここでは、特に好ましいとして、酸化チタン(TiO)が用いられている。この酸化チタンは、波長387nm以下の紫外線が照射されると、極めて強力な光触媒反応である酸化・還元作用を示す。この光触媒9は、粒状吸着材6の表面に例えばコーティング等により設けられている。
【0019】
散気装置7は、第一浄化部2の底部に配設され、例えば、空気、酸素、オゾン、窒素等の気体が給気されることで散気し、魚類水槽水及び粒状吸着材6を流動させる。
【0020】
紫外線照射ランプ8は、粒状吸着材6に紫外線を照射するためのものであり、第一浄化部2の略中央で散気装置7より上方の位置に、上下方向に延在すると共に魚類水槽水に浸漬するように設けられている。この紫外線照射ランプ8としては、例えば、UVランプ、蛍光灯、ブラックライト等が用いられる。
【0021】
この第一浄化部2の下に設けられる第二浄化部3は、多数の微生物担体10により形成された濾過床11を備えている。この濾過床11は、第一浄化部2で処理された処理水をさらに浄化するものである。この濾過床11を構成する微生物担体10としては、例えば、砂利、多孔質セラミックス、粒状活性炭、プラスチック濾材等が用いられる。
【0022】
また、第二浄化部3の上部には、導入ラインL1から分岐した分岐ラインL3に接続され魚類水槽水の一部を当該第二浄化部3に導入するための導入部12が設けられている。
【0023】
そして、この第二浄化部3の底部には、戻しラインL2に接続され第二浄化部3から処理水を排出するための排出部5が設けられている。
【0024】
このように構成された水処理装置100によれば、魚類水槽50からの魚類水槽水は、導入ラインL1、導入部4を介して第一浄化部2に導入され、第一浄化部2にあっては、散気装置7から散気することにより、魚類水槽水及び粒状吸着材6が流動し、流動する粒状吸着材6に対して紫外線照射ランプ8により紫外線が照射される。
【0025】
この状態にあって、魚類水槽水中の有機汚濁物質は粒状吸着材6に吸着される。この粒状吸着材6は流動しているため、当該粒状吸着材6の表面は紫外線を満遍なく受光し、光触媒反応が高効率で進行する。
【0026】
この高効率で生じる光触媒反応により、OHラジカルが効果的に生じ、当該OHラジカルにより、粒状吸着材6に吸着された有機汚濁物質が酸化分解されると共に当該粒状吸着材6が再生され、この有機汚濁物質の吸着、酸化分解、粒状吸着材2の再生が繰り返される。
【0027】
また、魚類水槽水中のNHは、光触媒反応により生じたOHラジカルにより酸化されて硝酸・亜硝酸とされる。
【0028】
この第一浄化部2の処理水は第二浄化部3に導入され、複数の微生物担体10により形成された濾過床11に通されるため、処理水中のごみ、残餌、糞等は濾過床11で捕捉されて除去される。
【0029】
また、濾過床11では、微生物担体10に担持された微生物の働きにより、処理水中の硝酸・亜硝酸が生物脱窒され、Nガスとして放出される。
【0030】
ここで、第二浄化部3にあっては、魚類水槽50からの魚類水槽水の一部が分岐ラインL3、導入部12を介して導入されているため、微生物担体10には、微生物が効果的に移植されると共に生物脱窒に必要な有機物が効果的に供給され、これにより、上記生物脱窒効果が容易に高められると共に維持されている。
【0031】
そして、このようにして、第一、第二浄化部2,3で浄化された処理水は、排出部5、戻しラインL2を介して魚類水槽50に戻される。
【0032】
このように、本実施形態においては、魚類水槽水を第一浄化部2に導入し、魚類水槽水及び表面に光触媒9を有する複数の粒状吸着材6を、散気装置7により流動させながら、紫外線照射ランプ8により紫外線照射することで、有機汚濁物質を効果的に酸化分解すると共にNHを効果的に酸化して硝酸・亜硝酸とし、この第一浄化部2の処理水を第二浄化部3に導入し、複数の微生物担体10により形成された濾過床11に通すことで、ごみ、残餌、糞等を捕捉し除去すると共に硝酸・亜硝酸を生物脱窒して魚類水槽へ戻すのを防止し、この第二浄化部の処理水を魚類水槽50に戻す構成であるため、魚類水槽50への返送水は、魚類にダメージを与えることが無いように十分に浄化されるようになる。加えて、この返送水により魚類水槽50での藻類の繁殖が防止され、美観が高められるようになる。そして、このような処理により、生物学的な深い知識が無くても容易に魚類を飼育等できる。
【0033】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、微生物を効果的に移植すると共に有機物を効果的に供給するとして、第二浄化部3に、分岐ラインL3を介して魚類水槽水の一部を導入するようにしているが、この分岐ラインL3は無くても良い。この場合には、微生物や有機物を別途供給するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る魚類水槽水の処理装置を魚類水槽と共に示す概略構成図である。
【図2】図1中の魚類水槽水の処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1…処理槽、2…第一浄化部、3…第二浄化部、4…第一浄化部の導入部、5…排出部、6…粒状吸着材、7…散気装置、8…紫外線照射ランプ、9…光触媒、10…微生物担体、11…濾過床、12…第二浄化部の導入部、50…魚類水槽、100…魚類水槽水の処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類水槽からの魚類水槽水を導入し浄化するための処理槽を具備し、
前記槽は、第一浄化部及び第二浄化部を備え、
前記第一浄化部は、前記魚類水槽水及び表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を流動させるための散気装置と、
前記粒状吸着材に紫外線を照射するための紫外線照射ランプと、を有し、
前記第二浄化部は、
複数の微生物担体により形成され、前記第一浄化部で処理された処理水を浄化するための濾過床と、
この濾過床で浄化された処理水を前記魚類水槽に戻すための排出部と、を有することを特徴とする魚類水槽水の処理装置。
【請求項2】
前記処理槽は、その下部に前記第二浄化部を備えると共に、当該第二浄化部の上に前記第一浄化部を備え、
前記魚類水槽水は、前記第一浄化部の上部に導入され、
前記排出部は、前記第二浄化部の底部に設けられることを特徴とする請求項1記載の魚類水槽水の処理装置。
【請求項3】
前記第二浄化部は、前記魚類水槽からの前記魚類水槽水の一部を導入するための導入部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の魚類水槽水の処理装置。
【請求項4】
第一浄化部及び第二浄化部を備えた処理槽の前記第一浄化部に、魚類水槽からの魚類水槽水を導入し、当該魚類水槽水及び表面に光触媒を有する複数の粒状吸着材を、散気装置により流動させながら、紫外線照射ランプにより前記粒状吸着材を照射する第一処理工程と、
この第一処理工程で処理された処理水を前記第二浄化部に導入し、複数の微生物担体により形成された濾過床に通して浄化する第二処理工程と、
この第二処理工程で浄化された処理水を排出部を介して前記魚類水槽に戻す第三処理工程と、を有することを特徴とする魚類水槽水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−141986(P2008−141986A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330919(P2006−330919)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(598067603)住重環境エンジニアリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】