説明

鱗片材、成形材、成形方法及び鱗片材塗布方法

【課題】鱗片材4bを混合することによる層状の固まりから生じるチューブの空隙(巣)
及び空気漏れの通路を防止することのできる鱗片材、成形材、成形方法及び鱗片材塗布方
法を提供する。
【解決手段】
所定の熱又は圧力又は溶解液の破損処理で破損して内容物を放出する被覆部材4aで被覆
して成ることを特徴とする鱗片材4bを提供する。鱗片材4bを被覆部材4aで被覆する
ことで鱗片材4bが互いに被着し合うことを防ぐことにより、鱗片材4bが互いに被着す
ることで生じる空隙の発生を減少させ、鱗片材4bを分布させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鱗片材、成形材、成形方法及び鱗片材塗布方法に関するもので、例えば、プ
リンタ装置においてインクカートリッジから記録ヘッドにインクを供給するために用いる
樹脂成形品を成形する際に用いられる鱗片材、成形材、成形方法及び鱗片材塗布方法に関
する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクプリンタ装置のインク流路とか自動車エンジン系のガソリン流路とか電
装ハーネス被覆材等の液体、気体輸送用の管材等の樹脂製品は、PP(ポリプロピレン)
、ゴム材等の素材を主体として成形されている。上記インク流路としてプリンタ装置等に
用いられる例えばインクチューブは、PP、PE(ポリエチレン)、オレフィン系のTP
E(可塑性エラストマー)、スチレン系のTPE、ポリアミド系のTPE、及びウレタン
系のTPE等を混合したりして用いられ、弾力性、可撓性、気密性に富むものとなってい
る。
【0003】
インクチューブを成形するには、例えば押出し成形方法が用いられる。この方法は素材
としての樹脂を押出し成形機のホッパからシリンダ内に投入し、加熱,溶融しながら押出
し成形機のスクリューにより押出ヘッドの吐出口から吐出させて押出すようにし、図9(
a),(b)に示す長手状のチューブ1を得て、その後冷却、カッティングするようにし
ている。この場合、一例として図9(a),(b)に示すように中空孔3を4個横並びさ
せた4連のチューブ1を構成している。このチューブ1としては、中空孔3の数に応じて
単管、2連、3連、5連、6連等、種々の連数のものがある。
【0004】
従来のインクチューブは以上のとおりの樹脂素材を基本として押出し成形するので、製
造短期間では問題なく流路として適するものの、長年月経過すると疲労の為、微細ピンホ
ールが生じることもあり、インク内の水分蒸気が外部に徐々にチューブ肉厚を介して漏れ
るおそれもあることから、インクの乾燥状態を引起すので、インク粘性が劣化し、インク
の噴射に支障をきたす欠点を有していた。かかる問題は他の樹脂製品でも同様であった(
例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−168357号公報
【0005】
そこで、上記ホッパに、樹脂と共に鱗片材4bを混合したものを投入し、この鱗片材4
bが図9(a),(b)に示す如くチューブ1の内部,外面,内面に一体化されるように
して内部から外に出ようとする水蒸気をこの鱗片材4bでブロックするようにしたものが
考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これによれば、樹脂と鱗片材を混ぜ合わせるときに、図10に示すよう
に鱗片材は薄板形状となっているので、互いに表面同士が静電気等で被着し合って層状の
固まりとなることがあり、混ぜ合わせても、この層状の固まりが容易に剥離しないので、
固まりのままチューブ1内に一体化され、チューブ1にこの重なりにより空隙(巣)を発
生させて、チューブ1の中で、図10に示すような、巣の外周に微細な空気漏れの通路1
mが発生し、製品劣化の原因となる欠点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、上記課題の解決を目的として、所定の熱又は圧力又は溶解液の破損処
理で破損して内容物を放出する被覆部材で被覆して成ることを特徴とする鱗片材を提供す
る。鱗片材を被覆部材で被覆することで鱗片材が互いに被着し合うことを防ぐことにより
、鱗片材が互いに被着することで生じる空隙の発生を減少させ、鱗片材を分布させること
ができる。また、被覆部材は所定の熱又は圧力又は溶解液で破損するため、鱗片材が一様
に分布した後に、被覆部材を破損させることで、鱗片材を一様に分布させることができ、
鱗片材の性質を被覆部材で妨げることを減少させることができる。
【0008】
また、他の発明によると、前記鱗片材を被覆する被覆部材は密閉化されて成ることを特
徴とする。鱗片材を被覆部材で密閉化して被覆することにより、鱗片材が互いに接触する
ことがなくなる。これにより、鱗片材が互いに被着するのを確実に防ぎ、鱗片材の水蒸気
漏れを阻止するという機能を発揮させ得る。
【0009】
また、他の発明によると、前記鱗片材を成形素材と混合して、被覆部材で被覆したもの
から成ることを特徴とする成形材を提供する。これにより、鱗片材が被着するのを抑え、
鱗片材が互いに被着するために生じる空隙が増えるのを防ぐことができる。
【0010】
また、他の発明によると、前記鱗片材を、成形素材に混合した後、一定の熱又は圧力又
は溶解液で被覆部材を破損処理して、押出し成形機又はインジェクション成形機で樹脂成
形品として成形したことを特徴とする成形方法を提供する。これにより、樹脂成形品が押
出し成形又はインジェクション成形により成形される製造工程において、樹脂成形品への
鱗片材の成形は、成形素材に予め鱗片材を混合することにより、容易な製造工程で樹脂成
形品に鱗片材を一様に分布させて含ませることができる。
【0011】
また、他の発明によると、前記成形方法において、被覆部材を、成形素材と同一又はこ
の成形素材を含む素材より成形して、被覆部材が樹脂成形品の一部を成すことを特徴とす
る。被覆部材が熱又は圧力又は溶解液で破損した後、成形素材に留まっていても、成形素
材と同一又は成形素材を含む素材により被覆部材が形成されているため、被覆部材は成形
素材に影響を与えることがない。これにより、成形された樹脂成形品は被覆部材の素材性
質に影響されず、樹脂成形品の成形素材の性質を保つので、高い品質の樹脂成形品を得る
ことができる。
【0012】
また、他の発明によると、前記鱗片材を、接着剤に混合した後、一定の熱又は圧力又は
溶解液で被覆部材を破損処理して成形品に塗布したことを特徴とする鱗片材塗布方法を提
供する。接着剤に混合した鱗片材は一定の熱又は圧力又は溶解液により、被覆部材が破損
され、内容物を接着剤に放出する。これにより、鱗片材は接着剤を介して成形品に塗布さ
れることで容易に加工され、成形品は鱗片材による遮断性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
最良の形態1
以下、発明の実施の形態を用いて本発明を説明する。
図1は樹脂成形部材の製造工程を示す工程図であり、図2は鱗片材4bの断面図である

【0014】
図1に示す樹脂成形品としてのチューブ1の製造工程において、チューブ1は、チュー
ブ1を成形する押出し成形機10により成形する樹脂成形工程、チューブ1が成形された
後冷却される冷却機20を有する冷却工程、成形されたチューブ1を引取る引取機30を
有する引取工程により成る。チューブ1を構成する樹脂材2の素材としては、ポリプロピ
レン(PP)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系の可塑性エラストマー(TPE)、
スチレン系のTPE、ポリアミド系のTPE、あるいは、ウレタン系のTPEなどの、固
化後に可撓性を有する樹脂が用いられる。
【0015】
金型押出し成形機にあたる押出し成形機10による樹脂成形工程では、上記樹脂材2と
図2に示す熱溶融性の被覆部材4aで被覆された鱗片材4bとを互に混合して押出し成形
機10のホッパ11からシリンダ12に投入する。投入された樹脂材2と被覆部材4aで
被覆された鱗片材4bはシリンダ12により一定温度で加熱・溶融・攪拌され、スクリュ
ー13によってシリンダ12の先端に取付けられた押出ヘッド14の方向に押出される。
押出ヘッド14にはヘッドダイ15が取付けられる。ヘッドダイ15の樹脂吐出口側の面
は所定の断面形状を有する形態に成形されており、ヘッドダイ15から押出された樹脂は
、チューブ1の形態に成形される。この場合、被覆部材4aは例えば180度程度のシリ
ンダ12のヘッドダイ15側の温度で溶融するので、スクリュー13で樹脂材2と混練さ
れつつ、シリンダ12内を送られる過程で溶融されるので、破損した後、樹脂材2と一体
化され、チューブ1の一部分を形成することになり、チューブ1に何等の障害を与えない

【0016】
冷却工程では、水を冷却装置22で循環させ常に一定温度に保たれた水が収容された冷
却槽21により成る冷却機20により、押出し成形機10で成形されたチューブ1を常温
近傍まで冷却する。引取工程では引取機30により、押出し成形機10で成形されたチュ
ーブ1を所定の張力で引取る。
【0017】
チューブの種別、例えば単管、2管、3管等、形状の異なるチューブを成形する場合に
おいては、ヘッドダイ15を交換し、各チューブの長手方向と直交するチューブ断面を形
成することで、押出し成形機10によって各チューブの成形が可能となる。
【0018】
上記鱗片材4bは図2で示すように、鱗片材4bの周囲を被覆部材4aで被覆すること
で形成される。鱗片材4bは板状結晶であるため、被覆部材4aで被覆されない状態にあ
ると、図10に示すように、鱗片材4bの表面が互いに静電気等で被着し積層状態の固ま
りを形成する。積層状態の固まりは鱗片材4bの表面が互いに被着しない部分に空隙を作
る。本実施形態では、鱗片材4bの周りに上記被覆部材4aを形成し、被覆部材4aによ
り、鱗片材4bが互いに被着して積層するのを防ぐ。これにより、チューブ1の中で、鱗
片材4bが互いに被着することにより生じる微細な空気漏れを防ぐことができる。よって
、鱗片材4bは被覆部材4aにより、上記樹脂材2へ一様に分布され、被覆部材4aが破
損することで、鱗片材4bの素材性質を被覆部材4aで妨げることを少なくすることがで
きる。
また、鱗片材4bを被覆部材4aで密閉化することにより、鱗片材4bが互いに被着す
る表面積を無くすことができる。鱗片材4bの表面を常に被覆部材4aで覆うため、鱗片
材4bが互いに触れる部分がなくなる。これにより、鱗片材4bが互いに被着するのを確
実に防ぎ、鱗片材4bが互いに被着する数を減らすことができる。
【0019】
上記鱗片材4bの素材としては、粉末状の高分子化合物を使用する。鱗片材4bの素材
は、モンモリロナイト又はガラス片又は炭素材又は雲母などの1nm(ナノメーター)程
度の厚さの極微小の粒子であり、粒子は高アスペクト比の板状結晶を持つ。また、板状結
晶は水分を透過しない性質を持つので、板状結晶の集合体である粒子もまた、水分を遮断
する性質を持つ。例えば、これ等モンモリロナイト等は厚さが約1nm以下で、対角線長
Fが50μm乃至80μm程度の極薄い板状結晶である。
なお、鱗片材4bの形状は四角形に限らず、三角形,円形,ひし形等であっても、ある
いは形状の定まらない異形であってもよい。要は薄形のものであれば、いかなる形状であ
ってもよい。
【0020】
上記被覆部材4aの素材としては、ポリアミド系樹脂の高分子化合物を用いる。例えば
、ナイロンフィルムなどである。ナイロンフィルムは、約180度乃至190度の熱で融
解し破損するので、シリンダ12を通過する際溶融し破損して、チューブ1の一部分とな
る。
【0021】
被覆部材4aの素材はチューブ1を成形する成形素材と同一又は成形素材を含む素材で
もよい。例えば、PP(ポリプロピレン)などの素材を用いる。被覆部材4aが樹脂成形
品の一部を成すことで、被覆部材4aが樹脂成形工程で破損した後、チューブ1の成形素
材に混入したとしても、被覆部材4aの素材がチューブ1の成形素材と同一又は成形素材
を含む素材であるため、チューブ1の成形に何等影響を与えない。これにより、成形され
た樹脂成形品は被覆部材4aの素材性質に影響されず、樹脂成形品の成形素材の性質を保
つので、高い品質の樹脂成形品を得ることができる。
【0022】
図1のチューブ1の製造工程において、チューブ1の成形は、ホッパ11に上記樹脂材
2と鱗片材4bとを適当に混合したものを同時に投入する。鱗片材4bの樹脂材2への混
合は20乃至30重量%程度である。樹脂材2と鱗片材4bとは図外のミキサーにより互
に混ぜ合せて、鱗片材4bを一様に分散させてから投入することにより、鱗片材4bの積
層,固まりが生じるのをより防止できる。シリンダ12の押出ヘッド14の方向にあたる
先端部分の温度は、約180度乃至190度に保たれているが、さらに高温として、鱗片
材4bを溶融し易くしてもよい。鱗片材4bの周囲を被覆している被覆部材4aはこのシ
リンダ12内の熱により融解し破損する。被覆部材4aが融解した鱗片材4bは内容物で
ある鱗片材4bを樹脂材2へ放出した状態になり、ヘッドダイ15からチューブ1の形態
に成形される。チューブ1はチューブ1の成形部分に鱗片材4bを設けた状態になる。こ
れにより、鱗片材4bがチューブ1に分散されることで、鱗片材4bの素材性質からチュ
ーブ1の流路と大気とを遮断する遮断性を持つ。よって、樹脂成形品への鱗片材4bの成
形は、成形素材に予め鱗片材4bを混合することにより、容易な製造工程で樹脂成形品に
鱗片材4bを含ませることができる。
【0023】
最良の形態2
チューブ1へ鱗片材4bを設けるには、上記樹脂成形工程での成形によらず、樹脂成形
工程で樹脂材2のみで成形したチューブ1においても、鱗片材4bと接着剤とを混合した
ものを成形品であるチューブ1に塗布することで、鱗片材4bを設けることができる。
例えば、図1の製造工程において、樹脂成形工程のホッパ11にチューブ1の素材であ
る樹脂材2のみを投入する。樹脂成形工程、冷却工程、引取工程により成形されたチュー
ブ1の成形部分は、鱗片材4bを含まない。
【0024】
上記接着剤は、有機合成エラストマー系の素材を主成分とするものを使用する。例えば
、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、クロロプレンゴムなどの高分子化合物に有機溶剤等を加
えて成るものであり、貼着後、可撓性をもって固化するものである。
【0025】
鱗片材4bと接着剤を混合し、加熱・攪拌したものをコーティング液とする。コーティ
ング液は、接着剤に例えばシンナー等の被覆部材4aの溶解液を混入し、鱗片材4bと混
合することで、混合過程で被覆部材4aを溶融,溶解して破損して鱗片材4bを成形素材
に一様に分布させることができる。コーティング液は鱗片材4bを含んだ接着剤となり、
樹脂材2のみで成形されたチューブ1の表面に塗布される。チューブ1の表面に塗布され
たコーティング液は、接着剤の素材性質よりチューブ1の表面に貼着した後、可撓性をも
って固化する。コーティング液は鱗片材4bを含んでいるため、チューブ1の表面には鱗
片材4bが設けられる。これにより、鱗片材4bの素材性質からチューブ1は、チューブ
1の流路と大気とを遮断する遮断性を持つ。よって、鱗片材4bは接着剤を介して成形品
に塗布されることで容易に加工され、チューブ1は鱗片材4bによる遮断性を確保するこ
とができる。
また、鱗片材4bと接着剤を混合したコーティング液を例えば減圧室に入れ減圧するよ
うにして破損させるか、加圧室に入れ加圧するようにして破損させて内容物である鱗片材
4bを接着剤に放出させてもよい。
なお、チューブ1の表面への上記塗布は、コーティング液をチューブ1の表面に吹き付
けることで貼着させる。また、コーティング液を刷毛などによりチューブ1の表面に塗り
込むなど、他の方法であってもよい。
【0026】
最良の形態3
図3は攪拌機40を加えたチューブ1の製造工程を示す工程図であり、図4は攪拌機4
0の断面図である。
【0027】
図3に示す攪拌機40を加えたチューブ1の製造工程において、チューブ1の成形は、
樹脂材2と鱗片材4bを攪拌する攪拌機40を有する攪拌工程、チューブ1を成形する押
出し成形機10による樹脂成形工程、チューブ1が成形された後冷却される冷却機20を
有する冷却工程、成形されたチューブ1を引取る引取機30を有する引取工程により成る
。図4に示すように、攪拌工程の攪拌機40は、モータ41とモータ41により回転され
る攪拌翼42と、攪拌槽43とにより成る。樹脂材2と鱗片材4bを攪拌槽43に投入し
た後、モータ41を攪拌槽43に入れ、モータ41を下降させ、回転させることで、攪拌
翼42が攪拌槽43内で回転し、樹脂材2と鱗片材4bを混練して均一に攪拌する。攪拌
された混合素材6(図3)は樹脂材2と鱗片材4bが均一に配される。
【0028】
樹脂成形工程において、上記混合素材6はホッパ11に投入され、シリンダ12のスク
リュー13により加熱・溶融される。上記鱗片材4bはシリンダ12の先端部分において
、約180度乃至190度の熱で被覆部材4aが融解され、被覆部材4aが破損し、鱗片
材4bを樹脂材2へ放出する。被覆部材4aが融解した混合素材6はスクリュー13によ
ってシリンダ12の先端に取付けられた押出ヘッド14の方向に押出される。ヘッドダイ
15から押出された混合素材6は押出ヘッド14に取り付けられたヘッドダイ15からチ
ューブ1の形態に成形される。これにより、チューブ1の成形素材に鱗片材4bを一様に
分布させて設けることができる。
【0029】
冷却工程では、水を冷却装置22で循環させ常に一定温度に保たれた水が収容された冷
却槽21により成る冷却機20により、押出し成形機10で成形されたチューブ1を常温
近傍まで冷却する。引取工程では引取機30により、押出し成形機10で成形されたチュ
ーブ1を所定の張力で引取る。
【0030】
また、上記攪拌機40において樹脂材2と鱗片材4bを攪拌槽43に投入した後、攪拌
槽43にシンナー等の溶解液を投入する。鱗片材4bの被覆部材4aは溶解液により破損
し、樹脂材2に鱗片材4bを放出する。これにより、攪拌機40で鱗片材4bが樹脂材2
に分布した後において、所定の熱又は圧力によらず、鱗片材4bの被覆部材4aを破損さ
せ、樹脂材2に鱗片材4bを一様に分布して設けることができる。
【0031】
最良の形態4
成形型に樹脂を射出注入成形されるインジェクション成形ではインジェクション成形機
により樹脂成形品を成形する。インジェクション成形機は、樹脂成形品の形と同一の空隙
を持つ成形型に加熱・溶融された樹脂を所定の圧力で流し込み、樹脂成形品を成形する。
インジェクション成形機において、樹脂材2及び鱗片材4bを混合した混合樹脂を成形素
材として用い、混合樹脂を加熱・溶融した後、成形型に流し込む。混合樹脂は、所定の加
熱で成形型に流し込まれる。混合樹脂に含まれる鱗片材4bは前記加熱により被覆部材4
aが破損する。破損した被覆部材4aは内容物である鱗片材4bを樹脂材2に放出する。
よって、インジェクション成形により成形された樹脂成形品は樹脂成形品を構成する樹脂
材2に鱗片材4bを含んだ状態にあり、鱗片材4bの素材性質により、大気との水分を遮
断する遮断性を持つ樹脂成形品となる。
【0032】
最良の形態5
また、上記インジェクション成形機において、被覆部材4aを破損させるには、加熱に
よる破損によらず、圧力又は溶解液により破損させることができる。熱による被覆部材4
aの破損は、上記インジェクション成形機において混合樹脂を加熱・溶融する際の温度を
約180度乃至190度と設定し、熱により被覆部材4aを破損させ、内容物である鱗片
材4bを樹脂材2に放出させる。溶解液による被覆部材4aの破損は、上記インジェクシ
ョン成形機において混合樹脂を成形型に流し込む前において、混合樹脂に例えばシンナー
等の溶解液を混合し、被覆部材4aを破損させ、内容物である鱗片材4bを樹脂材2に放
出させてもよい。圧力による被覆部材4aの破損は、例えば混合樹脂を減圧室に入れ減圧
するようにして破損させるか、加圧室に入れ加圧するようにして破損させて内容物である
鱗片材4bを樹脂材2に放出させてもよい。
【0033】
最良の形態6
図5は長尺状の鱗片材4を示す斜視図であり、図6は切断後の鱗片材4を示す斜視図で
ある。
【0034】
図5に示すように、長尺状の鱗片材4bの周囲を被覆部材4aで被覆する。長尺状の鱗
片材4bは被覆部材4aで被覆された後、長尺状の鱗片材4bの長手方向と直交する方向
に一定長さに切断する。長手状の鱗片材4の切断はナノサイズの切断ができるカッターが
用いられる。図6に示すように、切断された鱗片材4bの周囲は被覆部材4aで被覆され
、一端,他端は開口して被覆部材4aに被覆されていない状態になるが、これによっても
鱗片材4bを樹脂素材と混合する場合に、鱗片材4bの重なりを防止できるので、鱗片材
4bを一様に分布できる。
【0035】
最良の形態7
図7は複数の鱗片材4bと成形素材からなる成形材5を示す断面図である。成形材5は
複数の鱗片材4bとチューブ1の成形素材である樹脂材2とを混合し、被覆部材4aで被
覆したものである。このような複数の鱗片材4bと成形素材とを一体に被覆部材4aで被
ったものを、多数個用意し、例えば図1のホッパ11に投入することにより、より簡単に
チューブ1の成形が可能となる。
【0036】
最良の形態8
図8は他の成形材7を示す断面図である。成形材7は被覆部材4aで被われた複数の鱗
片材4bとチューブ1の成形素材である樹脂材2とを混合し、被覆部材4aと同一の素材
の被覆部材4cで被覆したものである。このような複数の鱗片材4bと成形素材とを一体
に被覆部材4cで被ったものを、多数個用意し、例えば図1のホッパ11に投入すること
により、より簡単にチューブ1の成形が可能となる。
【0037】
このように、本発明によれば、鱗片材4bを被覆部材4aで被覆した鱗片材4bを用い
、鱗片材4bと樹脂材2を混合し押出し成形又はインジェクション成形することで、樹脂
成形品に一様に分布させた鱗片材4bを設けることができ、鱗片材4bにより樹脂成形品
は樹脂成形品の内部流路と外気とを遮断する遮断性を持つ。これにより、長年月経過を経
てもインク品質が極度に劣化するのを防ぎ、インク品質を一定に保つことができる。
なお、本発明はプリンタ装置に用いられる樹脂成形品に適用することに限らず、医療用
や他の工業分野等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】樹脂成形部材の製造工程を示す工程図。
【図2】鱗片材の断面図。
【図3】攪拌機を加えたチューブの製造工程を示す工程図。
【図4】攪拌機の断面図。
【図5】長尺状の鱗片材を示す斜視図。
【図6】切断後の鱗片材を示す斜視図。
【図7】複数の鱗片材と成形素材からなる成形材を示す断面図。
【図8】他の成形材を示す断面図。
【図9】チューブの斜視図及び断面図。
【図10】鱗片材の積層状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0039】
1 チューブ、2 樹脂材、4a 被覆部材、4b 鱗片材、6 混合素材、
10 押出し成形機、11 ホッパ、12 シリンダ、13 スクリュー、
14 押出ヘッド、15 ヘッドダイ、20 冷却機、21 冷却槽、
22 冷却装置、30 引取機、40 攪拌機、41 モータ、42 攪拌翼、
43 攪拌槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の熱又は圧力又は溶解液の破損処理で破損して内容物を放出する被覆部材で被覆し
て成ることを特徴とする鱗片材。
【請求項2】
前記被覆部材は密閉化されて成ることを特徴とする請求項1に記載の鱗片材。
【請求項3】
前記請求項1の鱗片材を成形素材と混合して、被覆部材で被覆したものから成ることを
特徴とする成形材。
【請求項4】
前記請求項1の鱗片材を、成形素材に混合した後、一定の熱又は圧力又は溶解液で被覆
部材を破損処理して、押出し成形機又はインジェクション成形機で樹脂成形品として成形
したことを特徴とする成形方法。
【請求項5】
前記請求項1の被覆部材を、成形素材と同一又はこの成形素材を含む素材より成形して
、被覆部材が樹脂成形品の一部を成すことを特徴とする請求項4に記載の成形方法。
【請求項6】
前記請求項1の鱗片材を、接着剤に混合した後、一定の熱又は圧力又は溶解液で被覆部
材を破損処理して成形品に塗布したことを特徴とする鱗片材塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−221276(P2009−221276A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65295(P2008−65295)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】