説明

2周波用とした表面実装用の水晶デバイス

【課題】発振用とした主たる振動周波数の周波数安定度を高めた2周波用の表面実装デバイスを提供する。
【解決手段】両主面の励振電極から外周部2箇所に引出電極3を延出して面対向した第1及び第2水晶片1(ab)と、これらを収容する凹状とした容器本体4とを備え、第1水晶片1aの引出電極の延出した外周部2箇所は第2水晶片1bの外周部に設けた第1導通端子9に導電接合材6によって固着し、第1導通端子は第2水晶片の他主面の第2導通端子10と電気的に接続し、第2水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所と、第2導通端子の外周部2箇所との計4箇所は、前記容器本体の内表面に導電接合材によって固着し、第1水晶片の固着位置を結ぶ直線と、前記第2水晶片の固着位置を結ぶ直線及び前記第2導通端子の固着位置を結ぶ直線とは同一直線上から外れた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2周波用とした表面実装用の水晶デバイス(以下、表面実装水晶デバイスとする)を技術分野とし、特に主たる水晶片の膨張係数差による応力歪みを解消した表面実装水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装実装水晶デバイスは周波数制御及び選択素子として周知され、例えば通信機器に組み込まれる発振回路やフィルタを構成する。このようなものの一つに、例えば応力感度特性や熱衝撃特性に優れたSCカットの水晶振動子がある。そして、例えばCモードを発振用、Bモードを温度検出用(温度センサ用)として、電圧制御される温度補償型の水晶発振器が提案されている(特許文献1)。
【0003】
(従来技術の一例)
第7図及び第8図は一従来例を説明する図で、第7図(a)はSCカットの切断方位図、同図(b)は水晶片の平面図、第8図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)はカバーを除く同平面図である。
【0004】
水晶振動子はSCカットの水晶片1からなり、結晶軸(XYZ)のX軸及びZ軸を中心としてα°(約33°)及びβ°(約22°)回転した新たな軸(X′Y″Z′)のY″軸に主面が直交する。要するに、Y軸に直交した主面(Y面)をX軸及びY軸を中心としてα°及びβ°回転した二回回転Yカット板からなる。
【0005】
水晶片1は例えば円板状として両主面には励振電極2(ab)が形成され、直線上とした両端部に例えば反対面に折り返した引出電極3(ab)を延出する。引出電極3(ab)は振動特性や耐衝撃性等を考慮して任意の外周部に延出されるが、ここでは、応力に対して周波数変化が最小となる応力感度零軸の両端部に延出する。
【0006】
SCカットでの応力感度軸はZ′軸から8°(Z′+8°)回転した軸(特許文献1)及びこれと直交するZ′から98°(Z′+98°)回転した軸となる。そして、少なくとも引出電極3(ab)の延出した両端外周部が例えば凹状として表面実装用とした容器本体4の内底面に設けられた水晶保持端子5に導電性接着剤6によって固着され、カバー7を被せて密閉封入する。
【0007】
この例では、引出電極3(ab)の延出した両端部のみならずこれに直交して他方の応力感度軸となる直線上の両端部をも導電性接着剤6によって固着する。これにより、固着強度を高めて水晶片1を安定に保持する。容器本体4は積層セラミックからなり、外底面には水晶保持端子5やカバー7と電気的に接続したアース端子等の外部端子8を有する。
【0008】
このようなものでは、主振動として適用するCモード(厚みすべり振動姿態)fc以外に、これより共振周波数が高いBモード(厚み捻れ振動姿態)fb及びAモード(厚み縦振動姿態)faが発生する「第9図(a)」。そして、これらの振動モードのうち、CモードとBモードの周波数温度特性は、第9図(b)に示した曲線となる。
【0009】
すなわち、Cモードの周波数温度特性は、第8図(b)に示したように、約95℃に変曲点を有する3次曲線となり、例えば常温(25℃)を中心とした規格温度(例えば−30〜70℃)では傾斜の小さい一次曲線状となる(曲線イ)。また、Bモードは常温を中心として傾斜が大きい一次曲線状となる(曲線ロ)。
【0010】
これらのことから、特許文献1等では、図示しない発振回路を設けてBモードの周波数温度特性による常温時と発振時の周波数差から周囲温度を検出して温度センサとする。そして、温度センサによる周波数差を電圧変換して温度補償電圧とし、これをCモード用の発振回路に設けた電圧可変容量素子に印加してCモードの周波数温度特性を補償するとしている。要するに、Bモードによる発振周波数を温度検出用として電圧制御による温度補償発振器を構成する。
【0011】
これによれば、例えば温度センサとしてサーミスタを用いた場合に比較し、水晶振動子(水晶片)の動作温度を直接に検出できるとともに温度に対する周波数変化も大きい。したがって、Bモードによる温度センサをリアルタイム・高感度としてCモードによる周波数温度特性を高精度に補償できる。
【特許文献1】特開2005−236801号公報
【特許文献2】特開2003−69366号公報
【特許文献3】特許第3017746号公報
【特許文献4】特開平9−153740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の恒温型振動子では、SCカットとして単一板からなる水晶振動子のCモードとBモードとをそれぞれの発振回路にて同時に発振させるので、CモードとBモードとを独立して発振させることが困難になる。したがって、発振回路同士が互いに干渉して完全に独立分離した発振周波数を得ることが困難な問題があった。
【0013】
このことから、例えば第10図に示したように、容器本体4の内壁に図示しない段部を設け、発振用(Cモード)と温度検出用(Bモード)の第1及び第2水晶片1b(ab)を面対向して収容する(特許文献2参照)。そして、それぞれの第1及び第2水晶片1b(ab)に例えば外部や内部に設けた個々の発振回路を接続し、両者の干渉を防止することも考えられた。
【0014】
しかし、この場合には、容器本体4に内壁段部を形成するので、高さ寸法を大きくして小型化を阻害する。そして、いずれの場合でも、水晶振動子(Cモードの第1水晶片1a)の長期的に見た周波数安定度を維持できなくなる即ちエージング特性(経時変化特性)が悪化する問題があった。なお、温度補償用としたBモード(第2水晶片1b)は温度における周波数の変化量が大きいために、格別な問題とはならない。
【0015】
すなわち、第1水晶片1a(Cモード)による水晶振動子は、電圧制御による温度補償によって温度に対する周波数変化が抑制されるのに、第1水晶片1aは容器本体4の内壁段部に固着され、容器本体4とは熱膨張係数を異にする。したがって、容器本体4との熱膨張係数差に基づき、第1水晶片1aには応力歪みを生じて振動周波数が変化する。
【0016】
この場合、個々の水晶振動子(第1水晶片1a)毎に温度を変化させて周波数温度特性を測定し、温度補償電圧が決定される。したがって、経時的な初期段階では、熱膨張係数差(応力歪み)による周波数変化分も含めて温度補償される。しかし、長期的には、導電性接着剤6は、容器本体4と水晶片1との熱膨張係数差による相対的な移動によって、その状態も変化する。したがって、第1水晶片1に生ずる応力も変化して、第1水晶片1aの固着状態が変化する。
【0017】
したがって、初期段階で設定された温度補償電圧では、長期的には、周波数温度特性による周波数変化分は補償できても、応力歪みによる周波数変化分は抑制できなくなる。このことから、温度補償発振器の周波数安定度が長期的に維持できず、経時変化特性を悪化する問題があった。
【0018】
(発明の目的)
本発明は、高さ寸法を小さくして発振用とした主たる振動周波数(発振周波数)の周波数安定度を高めた2周波用の表面実装デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、両主面の励振電極から外周部2箇所に引出電極を延出して面対向した少なくとも第1水晶片と第2水晶片と、前記第1水晶片と前記第2水晶片とを内底面に対向して収容する凹状とした容器本体とを備える2周波用とした表面実装用の水晶デバイスにおいて、前記第1水晶片の少なくとも引出電極の延出した外周部2箇所は前記第2水晶片の外周部に設けられた一主面の第1導通端子に導電接合材によって固着し、前記第1導通端子は前記前記第1導通端子とは異なる位置の外周部に設けられた前記第2水晶片の他主面の第2導通端子と電気的に接続し、前記第2水晶片の少なくとも引出電極の延出した外周部2箇所と、前記前記第1導通端子に電気的に接続した他主面の第2導通端子の外周部2箇所との計外周部4箇所は、前記容器本体の内表面に導電接合材によって固着し、前記第1水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の前記第2水晶片に対する固着位置を結ぶ直線と、前記容器本体の内表面に対する前記第2水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の固着位置を結ぶ直線及び前記第2導通端子の形成された固着位置を結ぶ直線とは同一直線上から外れた直線上である構成とする。
【発明の効果】
【0020】
このような構成であれば、第1水晶片の固着位置を結ぶ直線と、第2水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の固着位置を結ぶ直線及び第2導通端子の形成された固着位置を結ぶ直線とは同一直線上から外れる。したがって、容器本体の内底面に外周部4箇所が固着される第2水晶片には熱膨張係数差によって固着位置間を結ぶ直線上に基本的に応力歪みを生ずるものの、第1水晶片の固着される直線上での応力歪みは緩和される。
【0021】
これにより、第1水晶片の固着される両端部間では、第2水晶片とともに熱膨張係数を基本的に同一として伸縮する。この場合、両者を接続する導電接合材に与える影響も少なくなって、長期的に見た水晶片の固着状態を安定にする。したがって、水晶デバイスの経時変化特性を良好にして、第1水晶片の周波数安定度を高められる。
【0022】
そして、第2水晶片も励振電極を有して振動子として機能するので、第1水晶片は高安定用として、第2水晶片を例えば周波数規格の緩い用途とした、2周波用の水晶デバイスとして適用できる。また、第1水晶片と第2水晶片とが導電接合材によって直接的に接続するので、高さ寸法を小さくできる。なお、請求項1での「・・容器本体の内表面・・」は例えば容器本体の内底面及び内壁段部の表面を含んで内表面としている。
【0023】
(実施態様項)
本発明の請求項2(第1実施形態に相当)では、請求項1において、前記第2水晶片の引出電極は第1直線上の両端部に延出し、前記第1導通端子は前記第1直線に直交する第2直線との間となる第3直線上の両端部に形成され、前記第2導通端子は前記第1直線に直交する第2直線上の両端部に形成され、前記第1水晶片の引出電極の延出した両端部は前記第3直線上の両端部に固着される。
【0024】
これにより、請求項1での構成を具体的にして、第1水晶片の引出電極の延出した両端部(外周部2箇所)の固着位置を結ぶ直線は、第2水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の固着位置を結ぶ直線及び第2導通端子の形成された固着位置を結ぶ直線から外れた直線上となるので、請求項1での効果を奏する。
【0025】
同請求項3では、請求項2において、前記第1水晶片及び前記第2水晶片は円形状又は正方形状とする。これにより、請求項2での構成をさらに明確にする。
【0026】
同請求項4(第2実施形態に相当)では、請求項1において、前記第1水晶片の引出電極は一端部両側に延出するとともに前記第2水晶片の引出電極は前記一端部両側とは反対方向の他端部両側に延出し、前記第1導通端子と前記第2導通端子は前記第2水晶片の一端部両側の長さ方向での異なる位置に形成され、前記第1水晶片の引出電極の延出した一端部両側は前記第1導通端子に固着される。
【0027】
これにより、第1水晶片の引出電極の延出した両端部(外周部2箇所)の固着位置を結ぶ直線は、請求項2と同様に、第2水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の固着位置を結ぶ直線及び第2導通端子の形成された固着位置を結ぶ直線から外れた直線上となるので、請求項1での構成を具体的にしてその効果を奏する。
【0028】
同請求項5では、請求項4において、前記第1水晶片及び前記第2水晶片は長方形状とする。これにより、請求項4での構成をさらに明確にする。
【0029】
同請求項6では、請求項1において、前記導電接合材はポリイミド系の導電性接着剤、共晶合金又は金属バンプとする。これにより、有機ガスの発生を防止して水晶振動子の振動特性を良好に維持する。
【0030】
同請求項7では、請求項1において、前記第1水晶片は発振用としたSCカットを含む2回回転Yカット又はATカットとし、前記第2水晶片は温度検出用として一次曲線となる周波数温度特性のYカットとして温度補償発振器に適用される。これにより、周囲温度に感応した周波数変化によって温度を検出するので、検出温度をppmオーダとして高精度にする温度補償発振器を得られる。
【0031】
同請求項8では、請求項1において、前記容器本体には前記第1水晶片及び第2水晶片とともに少なくとも発振回路素子が収容されて水晶発振器を形成する。これにより、付加価値を高めた水晶デバイスを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(第1実施形態)
第1図は本発明の第1実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は模式的な組立分解図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0033】
水晶振動子は前述したように凹状とした容器本体4に第1及び第2水晶片1(ab)を面対向して収容し、カバー7を被せて密閉封入する。第1及び第2水晶片1(ab)は例えばいずれも円形状とする。第1水晶片1aは二回回転YカットとしたSCカットし、Cモードで動作する発振用とする。第2水晶片1bは主面がY軸に直交したYカットとして温度検出用とする。
【0034】
第1水晶片1aはSCカットのCモードとすることから、周波数温度特性は常温25℃を中心とした温度規格範囲(例えば-30〜75℃)では傾斜の小さい一次曲線となる。第2水晶片1bはYカットとして厚みすべり振動となり、周波数温度特性はSCカットのBモードと同様の傾斜の大きい一次曲線となる「前第8図(b)参照」。第1及び第2水晶片1(ab)はいずれも両主面の励振電極2(ab)から直線上の両端部に、反対面に折り返された引出電極3(ab)を延出する。
【0035】
第1水晶片1aは応力感度零軸(例えばZ′+8°)の両端部に引出電極3(ab)を延出する。第2水晶片1bは引出電極3(ab)の延出した第1直線A−Aに対して、例えば45°傾斜した第2直線B−B上となる一主面の両端部に第1導通端子9(ab)を有する。第1導通端子9(ab)は、他主面の第2導通端子10(ab)と図示しない配線路によって電気的に接続する。第2導通端子10(ab)は引出電極3(ab)の延出した第1直線A−Aと直交する第3直線C−C上の両端部に設けられる。
【0036】
そして、第1水晶片1aは引出電極3(ab)の延出した両端部が第2水晶片1bの一主面に設けた第1直線(A−A)上の第1導通端子9(ab)に固着する。第2水晶片1bは引出電極3(ab)の延出した第1直線(A−A)上の両端部が、及びこれと直交する第3直線(C−C)上の両端部となる第2導通端子10(ab)が容器本体4の内底面に設けられた回路端子11に固着される。
【0037】
この場合、第1水晶片1aの引出電極3(ab)の延出した外周部2箇所の前記第2水晶片1bに対する固着位置を結ぶ第2直線B−Bと、容器本体4の内表面に対する第2水晶片1bの引出電極3(ab)の延出した外周部2箇所の固着位置を結ぶ第1直線A−A及び第2導通端子10(ab)の形成された固着位置を結ぶ第1直線A−Aとは同一直線上から外れた直線上となる(請求項1での構成)。
【0038】
ここでは、第2水晶片1bを容器本体4に固着した後、第2水晶片1bの一主面の励振電極2aに例えばイオンビームを照射して振動周波数を低い方から高い方に調整する。次に、第1水晶片1aの一端部両側を第2水晶片1bに固着した後、同様にして振動周波数を調整する。
【0039】
なお、第1及び第2水晶片1(ab)は、いずれも、有機ガスの発生の少ないポリイミド系の導電性接着剤6によって固着される。但し、AuGe等の共晶合金やAu等の金属バンプでもよく、要は、有機ガスの発生の少ない導電接合材であればよい。
【0040】
そして、発振用とした第1水晶片1a及び温度検出用した第2水晶片1bにはそれぞれ図示しない別個の発振回路を接続する。これにより、第2水晶片1b(温度検出用)による発振周波数の変化に基づいた温度補償電圧を、第1水晶片1a(発振用)による発振回路の電圧可変容量素子に印加して図示しない温度補償発振器を構成する。
【0041】
このようなものでは、第2水晶片1bと容器本体4との熱膨張係数差によって、第2水晶片1bには伸縮による応力歪みを生じる。この場合、応力歪みは、基本的に、第2水晶片1bの互いに直交する第1直線(A−A)及び第3直線(C−C)上の各両端部間と、外周部4箇所の隣接する固着部間となる。
【0042】
したがって、第1水晶片1aが固着される第2直線(B−B)上の両端部は、第1直線(A−A)及び第3直線(C−C)上の両端部間となる。これにより、第2水晶片1bにおける第2直線(B−B)上の両端部間での応力歪みは緩和される。そして、第1水晶片1a(SCカット)と第2水晶片1b(Yカット)とはいずれも水晶とするので、熱膨張係数を基本的に同一(ほぼ同じ)とする。これにより、第1水晶片1aの固着される第2直線(B−B)上の両端部間では、第1水晶片1aは第2水晶片1bとともに同一の熱膨張係数として伸縮する。したがって、第1水晶片1aには同方向(B−B方向)での応力歪みは生じない。
【0043】
また、第1水晶片1aが固着される両端部は、第1直線A−A及び第3直線C−C上の間となる第2直線(B−B)上の両端部にそれぞれ点的に固着される。したがって、第1
水晶片1aの両端部を挟んで隣接する外周部2箇所間で第2水晶片1bに応力歪みがあっても、第1水晶片1aに与えるその影響は基本的に無視できる。要するに、第1水晶片1aと容器本体4との間に熱膨張係数差があっても、第2水晶片1bによる温度変化に対しての言わば緩衝作用によって第1水晶片1aには応力歪みを生じない。
【0044】
これらのことから、基本的には、発振用の第1水晶片1a(SCカット)と温度検出用の第2水晶片1b(Yカット)とを別個にして、それぞれの発振回路を構成するので、発振回路同士間の干渉を防止できる。そして、第1水晶片1aと第2水晶片1bとを導電性接着剤6によって直接的に接続するので、高さ寸法を小さくできる。
【0045】
さらには、第1水晶片1aと第2水晶片1bとは温度変化があっても、両者の固着部間では熱膨張係数を同一として伸縮するので、導電性接着剤6への影響も少なくして固着状態の変化を抑制できる。したがって、温度検出用の第2水晶片1bによって周波数温度特性を補償するともに熱膨張係数差(応力歪み)による周波数変化を抑制し、長期的に見た発振周波数を高精度に維持して経時変化特性を良好にする温度補償発振器を得られる。
【0046】
なお、Yカットとした第2水晶片1bは容器本体4との熱膨張係数差によって応力歪みを生じて振動周波数が変化する。しかし、この場合は、Yカットの周波数温度特性の変化量が極めて大きいために無視できることから、格別の問題とはならない。
【0047】
また、例えば第2図に示したように、第1水晶片1aの引出電極3(ab)の延出した両端部のみならず、これと直交する他方の応力感度軸(Z′+98°)となる両端部を4点保持とし、固着強度を高めて安定に保持してもよい。この場合、第4直線上の両端部ではなくいずれかの一端部として3点保持としても同様である。これらは、耐衝撃性等の観点から選定され、引出電極3(ab)の延出した少なくとも両端外周部が保持されれば適用できる。
【0048】
また、第1及び第2水晶片1bは円形状としたが、例えば第3図に示したように正方形状とした場合も同様に適用できる。ここでは、第1水晶片1aは例えば応力感度零軸となる一組の対角部に引出電極3(ab)を延出する。第2水晶片1bは一組の対向辺の中央部に引出電極3(ab)延出し、他組の対向辺の中央部に第1及び第2導通端子10(ab)を延出する。そして、これらに対応した内底面の回路端子11に固着する。
【0049】
(第2実施形態)
第4図は本発明の第2実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は模式的な組立分解図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0050】
第2実施形態では、例えば第1及び第2水晶片1(ab)はいずれも一方向に長い矩形状とする。第1水晶片1aは前述のようにSCカット(Cモード)として発振用とし、周波数温度特性は常温25℃を中心とした規格温度範囲(-30〜70℃)で傾斜の緩やか一次曲線状とする。第2水晶片1bはYカットとして温度センサ用とし、周波数温度特性を傾斜の大きい一次曲線状とする。
【0051】
第1及び第2水晶片1(ab)は両主面に励振電極2(ab)を有し、第1水晶片1aは長さ方向の一端部両側に、第2水晶片1bは他端部両側に引出電極3(ab)を他主面に折り返して延出する。第2水晶片1bは一主面の一端部両側に第1導通端子9(ab)を有し、他主面の第2導通端子10(ab)に電気的に接続する。第2導通端子10(ab)は一端部両側から中央寄りの両側とする。これにより、第1導通端子9(ab)と第2導通端子10(ab)とは両主面間では重畳せず、長さ方向の一端部領域となる外周部での位置を平面的に見て異にする。
【0052】
第1水晶片1aは引出電極3(ab)の延出した一端部両側が導電性接着剤6によって、第2水晶片1bのこれに対応した第1導通端子9(ab)に固着される。第2水晶片1bは引出電極3(ab)の延出した他端部両側及び第2導通端子10(ab)の形成された一端部両側が、これに対応して容器本体4の内底面に形成された回路端子11に導電性接着剤6によって固着される。
【0053】
この場合でも、第1実施形態と同様に、第1水晶片1aの引出電極3(ab)の延出した外周部2箇所(一端部両側)の前記第2水晶片1bに対する固着位置を結ぶ第2直線B−Bと、容器本体4の内表面に対する第2水晶片1bの引出電極3(ab)の延出した外周部2箇所(他端部両側)の固着位置を結ぶ第1直線A−A及び第2導通端子10(ab)の形成された固着位置を結ぶ第1直線A−Aとは同一直線上から外れた直線上となる(請求項1での構成)。
【0054】
このような構成であれば、第1水晶片1aの引出電極3(ab)の延出した一端部両側の第2水晶片1b(第1導通端子9)に対する固着位置と、容器本体4の内底面に対する第2水晶片1b(第2導通端子10)の固着位置とを、長さ方向の一端部領域となる外周部で平面的に見て異にする。
【0055】
したがって、容器本体4の内底面に固着される第2水晶片1bの中央寄りの両側間(幅方向間)で熱膨張係数差による応力歪みが生じても、これより離間した一端部両側間での応力歪みは緩和される。これにより、第2水晶片1bの一端部両側に固着した第1水晶片1aは、膨張係数をほぼ同じとした第2水晶片1bとともに幅方向に伸縮するので、第1水晶片1aには同方向での応力歪みを生じない。なお、第1水晶片1aの一端部両側が固着されるので、長さ方向での応力歪みは生じない。
【0056】
これらのことから、第1実施形態と同様に、長期的に見ても、第1水晶片1aと第2水晶片1bとは熱膨張係数を同じにして伸縮するので、導電性接着剤6による固着状態の変化を防止する。したがって、温度検出用の第2水晶片2bによって周波数温度特性を補償するともに熱膨張係数差(応力歪み)による周波数変化を抑制する。これらから、発振周波数を高精度に維持して経時変化特性を良好にできる。
【0057】
そして、発振用の第1水晶片1a(SCカット)と温度検出用の第2水晶片1b(Yカット)として別個にするので、各発振回路同士間の干渉を防止できる。また、第1水晶片1aと第2水晶片1bとを導電性接着剤6によって直接的に接続するので、高さ寸法を小さくできる。
【0058】
なお、第5図に示したように、第1水晶片1aの一端部両側が固着される第2水晶片1bの他端部両側の第1導通端子9(ab)を中央寄りとして、第2導通端子10(ab)を他端部両側としても、第1水晶片1aの第2水晶片1bに対する固着位置と第2水晶片1bの内底面に対する固着位置が長さ方向にて異なるので、同様の効果を奏する。
【0059】
(他の事項)
上記実施形態では、また、発振用としての第1水晶片1aはSCカットとしたが、これに限らず例えばATカットやBTカット等であっても適用できる。そして、第2水晶片1bは温度検出用(温度センサ)としたが、周波数安定度の緩い発振用とすることもできる。さらに、第1水晶片1aは発振用として、第1水晶片1aを特許文献4に示されるような共振子(フィルタ)として使用することもできる。要は、2周波用の水晶振動子として適用できる。
【0060】
また、表面実装水晶デバイスは水晶振動子として説明したが、例えば第6図に示したように容器本体4に内壁段部を設けて第2水晶片1bの外周部を保持して、内底面に少なくとも発振用の回路素子12を収容する「同図(a)」。又は、容器本体4の他主面にも凹部を設けて回路素子12を収容する。さらには、回路素子12を収容した図示しない実装基板を水晶振動子の底面に接合して水晶発振器を構成できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は模式的な組立分解図である。
【図2】本発明の第1実施形態の他例を説明する水晶振動子の模式的な組立分解図である。
【図3】本発明の第1実施形態のさらに他例を説明する水晶振動子の模式的な組立分解図である。
【図4】本発明の第2実施形態を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は模式的な組立分解図である。
【図5】本発明の第2実施形態の他例を説明する図で、同図(a)は水晶振動子の断面図、同図(b)は模式的な組立分解図である。
【図6】本発明の他の例を説明する図で、同図(b)ともに2周波用とした水晶発振器の断面図である。
【図7】一従来例を説明する図で、同図(a)はSCカットの切断方位図、同図(b)は水晶片(SCカット)の平面図である。
【図8】一従来例を説明する表面実装用とした水晶振動子の図で、同図(a)は断面図、同図(b)はカバーを除く平面図である。
【図9】一従来例を説明する図で、同図(a)はSCカットのリアクタンス特性図、同図(b)はCモード及びBモードの周波数温度特性図である。
【図10】一従来例を説明する表面実装用とした水晶振動子の断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 水晶片1、2 励振電極2(ab)、3 引出電極3(ab)、4 容器本体、5 水晶保持端子、6 導電性接着剤、7 カバー、8 外部端子、9 第1導通端子、10 第2導通端子、11 回路端子、12 回路素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両主面の励振電極から外周部2箇所に引出電極を延出して面対向した少なくとも第1水晶片と第2水晶片と、前記第1水晶片と前記第2水晶片とを内底面に対向して収容する凹状とした容器本体とを備える2周波用とした表面実装用の水晶デバイスにおいて、
前記第1水晶片の少なくとも引出電極の延出した外周部2箇所は前記第2水晶片の外周部に設けられた一主面の第1導通端子に導電接合材によって固着し、前記第1導通端子は前記前記第1導通端子とは異なる位置の外周部に設けられた前記第2水晶片の他主面の第2導通端子と電気的に接続し、
前記第2水晶片の少なくとも引出電極の延出した外周部2箇所と、前記第1導通端子に電気的に接続して第2導通端子の形成された外周部2箇所との計外周部4箇所は、前記容器本体の内表面に導電接合材によって固着し、
前記第1水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の前記第2水晶片に対する固着位置を結ぶ直線と、前記容器本体の内表面に対する前記第2水晶片の引出電極の延出した外周部2箇所の固着位置を結ぶ直線及び前記第2導通端子の形成された固着位置を結ぶ直線とは同一直線上から外れた直線上であることを特徴とする2周波用とした表面実装用の水晶デバイス。
【請求項2】
請求項1において、前記第2水晶片の引出電極は第1直線上の両端部に延出し、前記第1導通端子は前記第1直線に直交する第2直線との間となる第3直線上の両端部に形成され、前記第2導通端子は前記第1直線に直交する第2直線上の両端部に形成され、前記第1水晶片の引出電極の延出した両端部は前記第3直線上の両端部に固着された2周波用とした表面実装実装用の水晶デバイス。
【請求項3】
請求項2において、前記第1水晶片及び前記第2水晶片は円形状又は正方形状である表面実装用の水晶デバイス。
【請求項4】
請求項1において、前記第1水晶片の引出電極は一端部両側に延出するとともに前記第2水晶片の引出電極は前記一端部両側とは反対方向の他端部両側に延出し、前記第1導通端子と前記第2導通端子は前記第2水晶片の一端部両側の長さ方向での異なる位置に形成され、前記第1水晶片の引出電極の延出した一端部両側は前記第1導通端子に固着された2周波用とした表面実装用の水晶デバイス。
【請求項5】
請求項4において、前記第1水晶片及び前記第2水晶片は長方形状である2周波用とした表面実装用の水晶デバイス。
【請求項6】
請求項1において、前記導電接合材はポリイミド系の導電性接着剤、共晶合金又は金属バンプである2周波用とした表面実装用の水晶デバイス。
【請求項7】
請求項1において、前記第1水晶片は発振用としたSCカットを含む2回回転Yカット又はATカットとし、前記第2水晶片は温度検出用として一次曲線となる周波数温度特性のYカットとして温度補償発振器に適用される2周波用とした表面実装用の水晶デバイス。
【請求項8】
請求項1において、前記容器本体には前記第1水晶片及び第2水晶片とともに少なくとも発振回路素子が収容されて水晶発振器を形成する2周波用とした表面実装用の水晶デバイス。

【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−11369(P2010−11369A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171252(P2008−171252)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】