CMP用研磨パッド
【課題】 摩擦特性が良く耐久性に優れ、半導体ウェハの被削面に欠陥やスクラッチが生じない低コストのCMP用研磨パッドを提供すること。
【解決手段】 基材と基材上に設けられた研磨層とを有し、上記研磨層が、規則的に複数配置された所定形状の立体要素で構成された立体構造を有し、上記研磨層が、構成成分としてCVD法により製造されたアドバンストアルミナ砥粒と結合剤とを含む研磨コンポジットで成る、CMP用研磨パッド。
【解決手段】 基材と基材上に設けられた研磨層とを有し、上記研磨層が、規則的に複数配置された所定形状の立体要素で構成された立体構造を有し、上記研磨層が、構成成分としてCVD法により製造されたアドバンストアルミナ砥粒と結合剤とを含む研磨コンポジットで成る、CMP用研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、その研磨層が立体構造を有する研磨パッドに関し、特に、化学・機械的研磨(Chemical and Mechanical Polishing : CMP)プロセスにより半導体ウェハを平坦化するために用いる、研磨層が立体構造を有する研磨パッドに関する。
【0002】
【従来の技術】CMPプロセスは、デバイスの高集積化、多層配線化に伴い、半導体ウェハを平坦化するための標準的なプロセスとして認知されている。CMPシステムの基本構造は、加工と洗浄の2つのユニットからなる。加工ユニットでは、一般的には、半導体ウェハを維持しながら回転加圧を与えるヘッド部及びその駆動機構、それに対面する形式でパッドが添付されるプラテン及びその駆動機構が基本となる。その他、研磨パッドのコンディショニング(ドレッシング)機構、ウェハチャック面等の洗浄機構、作業液供給機構等が具備されている。
【0003】研磨パッドの構造や特性は加工による研磨特性に大きな影響を与えるため、CMPプロセスを支えるキーの技術として更に改良が望まれている。研磨パッドの構造には、ミクロ的な側面とマクロ的な側面とがあり、それぞれ研磨特性に影響する。ミクロ的な構造とは砥粒やバインダーの種類、発泡状態、表面状態等である。マクロ的な構造とは穴、溝、突起等の表面の形状である。
【0004】特表平11−512874号公報には、その研磨層が規則的な立体構造を有する半導体ウェハ用研磨パッドが記載されている。この研磨パッドはCMPプロセスに使用できる。研磨層が立体構造化されているとローディングが生じ難いため、この研磨パッドは研磨が安定し、耐久性に優れる。
【0005】しかし、研磨層が立体構造化されている研磨パッドは砥粒の性能が研磨特性に影響し易い特性がある。そのため、汎用のα−アルミナ砥粒を用いると被削面の仕上がりを充分に高めることが困難であるという問題がある。特にCMPプロセスでは半導体ウェハ表面は高い平坦度を確保したうえで、表面粗さ1〜2nmRy(最大高さ、JIS B 0601)、OSF(Oxidation-induced StackingFault)フリー、マイクロスクラッチフリー、ヘイズフリーにすることが要求される。
【0006】ところが、従来の一般的な製造方法により得られるα−アルミナ砥粒を立体構造化研磨材料に使用すると、研磨時の摩擦力が高く、被削面に欠陥やスクラッチが生じ易い。他方、ダイヤモンド等の高価な砥粒を用いると研磨パッドの製造コストが高くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、摩擦特性が良く耐久性に優れ、半導体ウェハの被削面に欠陥やスクラッチが生じない低コストのCMP用研磨パッドを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、基材と基材上に設けられた研磨層とを有し、上記研磨層が、規則的に配置された所定形状の立体要素を複数含む立体構造を有し、上記研磨層が、構成成分としてCVD法により製造されたアドバンストアルミナ砥粒と結合剤とを含む研磨コンポジットで成る、CMP用研磨パッドを提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】研磨層の代表的な例を図1、2、3および4に例示する。
【0010】好ましい研磨層は規則的に形作られても(上記の発明の開示に定義する)または不規則に形作られてもよく、規則的に形作られた研磨層が好ましい。
【0011】個々の立体要素の形状は種々の幾何学的な固体の任意の形態を有してもよい。一般に、基材に接触する立体要素の基面は末端部より面積が大きい。立体要素の形状は、立方体、円筒、プリズム、切頭プリズム、ストライプ、矩形、ピラミッド、切頭ピラミッド、4面体、切頭4面体、円錐、切頭円錐、半球、切頭半球、十文字または円心端を有する柱様断面などの数多くの幾何学的固体から選択することができる。
【0012】立体要素のピラミッドは4面、5面または6面を有してもよい。立体要素は異なる形状の混合物を有してもよい。立体要素は列、渦巻き、らせんまたは格子状に配列されてもよく、または無作為に配置されてもよい。
【0013】立体要素を形成する側面は基材に対して垂直であっても、基材に対して傾斜していても、または末端部の方に幅が狭くなりながら傾斜していてもよい。側面が傾斜している場合には、成形型すなわち製造用具の型穴から立体要素を取り出すことはより容易である。傾斜角は約1〜75度、好ましくは約2〜50度、さらに好ましくは約3〜35度、最も好ましくは約5〜15度の範囲であってよい。
【0014】角度がより小さいと、立体要素が摩耗するとき、見かけ上接触面積が一定となるので、より小さい角度が好ましい。従って、一般に、傾斜角は、成形型すなわち製造用具からの取り出しを容易にするほど十分に大きい角度と、均一な断面積を形成するほど十分に小さい角度との妥協点である。基面より末端部の方がより大きい断面を有する立体要素を使用することもできるが、その製造には、簡単な成形法以上の工夫を必要する。
【0015】各立体要素の高さは好ましくは同じであるが、研磨層の立体構造の中に高さが異なるものがあってもよい。立体要素の高さは、基材の表面を基準にして、一般に約2000マイクロメーターより小さく、さらに好ましくは約25〜200マイクロメーターの範囲である。
【0016】立体要素の基面は互いに接してもよいが、または隣り合う立体要素の基面はある規定の距離で互いに離れていてもよい。いくつかの実施態様において、隣り合う立体要素の物理的な接触量は各々接触する立体要素の垂直高さ寸法の33%を越えない。さらに好ましくは、隣り合う立体要素間の物理的接触量は各々接触している立体要素の垂直高さの1〜25%の範囲内である。
【0017】この「接する」の定義は、隣り合う立体要素が共通の立体要素窪地を共有する配置や、立体要素の向き合う側壁の間がつながれ、延長されている橋状構造も含む。好ましくは、窪地構造は各隣接する立体要素の垂直高さ寸法の33%を越えない高さを有する。立体要素間の窪地は立体要素を形成するために使用する同じスラリーから形成される。立体要素の中心間に引かれる真っ直ぐな仮想線上に介在する立体要素が配置されていないという意味において、立体要素は「隣り合っている」。立体要素の少なくとも一部は、立体要素の隆起した部分の間に窪んだ部分を提供するように、互いに離れていることが好ましい。
【0018】立体要素の一方向の間隔は、1cmあたり約1つの立体要素〜1cmあたり約100個の立体要素の範囲であってもよい。立体要素の一方向の間隔は、立体要素の密度がある位置では別の位置より大きいように変化してもよい。例えば、密度は研磨パッドの中心で最も大きくてもよい。立体要素の面積密度は約1〜10,000個の立体要素/cm2の範囲である。
【0019】基材の面が露出されている、すなわち研磨被覆が基材の表面領域全体を覆っていない配置も可能である。この種の配列は米国特許第5,014,468号(ラビパチ(Ravipati)ら)に記載されている。
【0020】立体要素は、好ましくは、所定のパターンで基材に配置され、または所定の位置の基材に配置される。例えば、基材と型穴を有する製造用具との間にスラリーを提供することによって製造される研磨物品では、立体要素の所定のパターンは、製造用具の型穴のパターンに対応する。従って、パターンは物品ごとに再現される。
【0021】所定のパターンの一実施態様では、立体要素は配列した状態で存在する。これは立体要素は横列と縦列が配列されたもの、または横列と縦列が交互に食い違って配列されたものなどの規則的な配列で存在することを意味する。望ましい場合には、立体要素の1つの横列を立体要素の2番目の横列の前に直接配置することができる。好ましくは、立体要素の1つの横列は立体要素の2番目の横列と互い違いであってもよい。
【0022】別の実施態様では、立体要素は「無作為な」配列またはパターンで配置されてもよい。これは、立体要素が上記のような横列と縦列の規則的な配列状態にないことを意味する。例えば、立体要素は1995年3月23日に公開された国際公開広報PCT95/07797号(フープマン(Hoopman)ら)および1995年8月24日に公開された国際公開広報PCT95/22436号(フープマン(Hoopman)ら)に記載されているような方法で配置されてもよい。しかし、この「無作為」な配列は、研磨物品上の立体要素の位置が所定で、研磨物品を製造するために使用した製造用具の型穴の位置に対応するという点では所定のパターンである。
【0023】三次元的な組織状の研磨物品は研磨剤被覆組成が異なってもよい。例えば、研磨ディスクの中心は、研磨ディスクの外側領域と異なる(例えば、柔らかさ、堅さ、または多少の受食性)研磨剤被覆を含有してもよい。
【0024】図1の研磨物品10は、基材12に固定または接着されたピラミッド状の立体要素11を有する。隣接する立体要素間には窪みまたは谷13が存在する。第1の横列から違い違いに第2の横列のピラミッド状の立体要素も存在する。ピラミッド状立体要素の最外点すなわち末端部は工程中にウェハ表面と接触する。
【0025】図2の研磨物品20は不規則な形状のピラミッド状立体要素を有する。この特定の例示では、立体要素はピラミッド型の形状を有する。ピラミッドを形成する境界は不規則な形状である。不完全な形状は、結合剤前駆体がかなり硬化または固化する前に、スラリーが流動し、最初の形状が歪んだ結果であり得る。不規則な形状は、真っ直ぐでない、きれいでない、再現性のない、正確でないまたは完璧でない平面または形状の境界が特徴である。
【0026】図3の研磨物品30は、切頭ピラミッド状の立体要素31を有する。
【0027】図4の研磨物品40は、「十字」形状41と「x」の形状42の立体要素を有する。立体要素は、横並びのパターンで配置される。種々の横並び中のカンマ立体要素は互いに食い違い、隣接する横並びの立体要素と直接並ばない。さらに、立体要素の横並びは空間または谷によって分離されている。谷または空間はごく少量(高さによって測定したとき)の立体要素を含有してもよく、または立体要素を含有しなくてもよい。
【0028】別の配列または構成の立体要素は、各々の交互の横並びが「十字」形状を有する立体要素または「x」形状を有する立体要素のどちらかを含む以外は、図3と同様である。この配列では、奇数列の立体要素は偶数列の立体要素と互い違いになっている。上記の配列の十字形状または「x」形状の立体要素では、十字またはx形状のどちらかを形成する1本の線の長さは約750マイクロメーターで、十字またはx形状のどちらかを形成する1本の線の幅は約50マイクロメーターであることが好ましい。
【0029】図5は、本発明の一例であるCMP用研磨パッドの研磨面の斜視図である。研磨層の立体構造が表示されている。研磨層の立体構造は複数の立体要素で構成されている。立体要素の形状は円筒形であり、複数の円筒形が規則的に配置されている。
【0030】図6は、上記CMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。立体要素の配置態様の一例を示したものである。複数の立体要素が同一間隔で横方向に並べられて行A、B、・・・が形成され、これらの行は、立体要素が互い違いになるようにずらして縦方向に並べられている。
【0031】図6中、符号dは立体要素である円筒の直径を示す。dは、例えば、10〜5000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは100〜300μmとされる。符号eは同一行内で隣接する立体要素間の距離を示す。符号fは隣の行で隣接する立体要素間の距離を示す。e及びfは同一寸法でも異なる寸法でもよく、例えば、10〜10000μm、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは100〜300μmとされる。一般にeとfとは同一寸法とされる。
【0032】図7は図6に示すCMP用研磨パッドをXX’面で切った断面図である。図7において、研磨パッド1は、基材2と基材の表面上に設けられた研磨層3とを有する。研磨層3は立体構造を有している。
【0033】基材は厚さが均一であることを要する。基材の厚さが十分に均一でない場合には、半導体ウェハの被削面およびウェハ厚さにばらつきが生じることがある。可撓性基材および比較的強固な基材を含む、種々の基材材料のいかなるものも本発明の目的に好適である。
【0034】基材に好ましい材料には、ポリマーフィルム、紙、布、金属フィルム、バルカンファイバー、不織基材、これらの組み合わせおよびこれらの処理品が含まれる。基材の1つの好ましい種類は、ポリマーフィルムである。このようなフィルムの例には、ポリエステルおよびコポリエステルフィルム、微小間隙ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。ポリマーフィルム基材の厚さは、一般に約20〜1000μm、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは60〜200μmの範囲である。例えば、基材はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであってよい。
【0035】ポリマーフィルム基材と研摩コーティングとの接着性は良好でなければならない。多くの場合において、ポリマーフィルム基材のコーティング面が下塗りされて、接着性が改良される。例えば、ポリマーフィルムは、研磨コンポジットの基材に対する接着を促進するためにポリエチレンアクリル酸のような材料で下塗りしてもよい。
【0036】研磨層3は結合剤のマトリックスとその中に分散させた砥粒4とを含む研磨コンポジットで成っている。
【0037】研磨コンポジットは、未硬化または未ゲル化状態の結合剤中に分散された複数の砥粒を含有するスラリーから形成される。硬化またはゲル化において、研磨コンポジットは固形化、すなわち予め定められた形状および予め定められた構造に固定される。
【0038】本発明に適する砥粒の種類はα−アルミナ粒子である。α−アルミナ粒子はアルミニウム原料精練からファインセラミックス原料まで幅広い用途で使用されている汎用的な酸化物材料である。
【0039】従来、工業用のα−アルミナ粒子は、バイヤー法、微細水酸化アルミニウムやミョウバンを熱分解する方法、及び電融法等により製造されてきた。これらの方法では、アルミナ原料を高温で焼成したり溶融してアルミナブロックを形成し、その後、粉砕、精製及びふるい分けして粒度が調整される。そのため、かかるα−アルミナ粒子は形状が不均一な多結晶体で、凝集粒子を多く含み、粒度分布が広い、また用途によってはアルミナ純度が低い等の問題がある。
【0040】本発明で用いるα−アルミナ粒子はアドバンストアルミナ砥粒であることが好ましい。アドバンストアルミナ粒子とは、インサイツ・ケミカル・ベイパー・デポジション法(以下、CVD法と称する。)により製造されたα−アルミナ粒子をいう。アドバンストアルミナ粒子は上述のような焼成粉砕したものと比べて粒子径分布やアルミナ粒子の結晶系の均一性に優れる。
【0041】アドバンストアルミナ砥粒は結晶成長した粒子から構成される均質な単結晶粒子であり、球状に近い性質を有する。また結晶の成長サイズを制御することができるため粒度分布がシャープとなる。アドバンストアルミナ砥粒の特徴及び用途については、毛利正英(Masahide Mohri)、田中紳一郎(Shin-ichiro Tanaka)、内田義男(Yoshio Uchida)、「アドバンストアルミナの開発(Development of Advanced Alumina)」、機能材料、1996年12月号、第16巻、第12号、第18〜27頁に説明されている。
【0042】本発明で用いるのに特に好ましいアドバンストアルミナ砥粒は特開平6−191836号公報に記載されている。すなわち、均質で内部に結晶種を有さず、8面以上の多面体形状を有し、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.5以上3.0以下であるα−アルミナ単結晶粒子からなり、ナトリウム含有量がNa2Oに換算して0.05重量%未満であり、アルミナ純度が99.90重量%以上である粉末状のα−アルミナである。
【0043】砥粒の寸法は研磨される半導体ウェハの種類や要求される被削面の仕上がりに依存して変化する。例えば、その平均粒径は、0.1〜50μm、好ましくは0.3〜5μmさらに好ましくは0.4〜2μmである。このようなアドバンストアルミナ砥粒は住友化学工業株式会社より商品名「スミコランダム」として市販されている。
【0044】研磨層が立体構造化されたCMP用研磨パッドの砥粒としてアドバンストアルミナ粒子を使用すると、CMPプロセスにおいて、研磨時の摩擦力が低くなって研磨が安定し、被削面に欠陥やスクラッチが生じ難くなる。
【0045】結合剤は硬化またはゲル化することにより研磨層を形成する。本発明に好ましい結合剤の例には、フェノール樹脂、レゾール−フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂およびこれらの混合物が含まれる。結合剤は熱可塑性樹脂でもよい。
【0046】特に好ましいものは、照射硬化性結合剤である。照射硬化性結合剤は照射エネルギーにより少なくとも部分的に硬化されるか、または少なくとも部分的に重合されうるいずれかの結合剤である。用いられる結合剤に依存して、熱、赤外線、電子線、紫外線照射または可視光照射のようなエネルギー源が用いられる。
【0047】典型的には、これらの結合剤はフリーラジカル機構により重合される。好ましくは、これらは、エチレン性不飽和モノマー及びオリゴマーのようなエチレン性不飽和化合物、アクリル化ウレタン、アクリル化エポキシ、α,β-不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト誘導体、エチレン性不飽和基を有するイソシアヌレート誘導体、エチレン性不飽和基を有するイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】エチレン性不飽和化合物は一官能性、二官能性、三官能性、四官能性またはさらに高官能性であってもよく、アクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマーを共に含んでもよい。エチレン性不飽和化合物は炭素原子、水素原子および酸素原子、並びに場合に応じて窒素原子およびハロゲン原子を含有するモノマー化合物およびポリマー化合物を共に含む。
【0049】酸素原子もしくは窒素原子、または両者は一般に、エーテル基、エステル基、ウレタン基、アミド基および尿素基中に含有される。好適なエチレン性不飽和化合物は、好ましくは、分子量が約4000より小さく、好ましくは、脂肪族モノヒドロキシ基または脂肪族ポリヒドロキシ基を有する化合物と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等などの不飽和カルボン酸との反応から製造されるエステルである。
【0050】エチレン性不飽和モノマーの代表的な例には、エチルメタクリレート、スチレンジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ビニルトルエン、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびペンタエリトリトールテトラメタクリレートが挙げられる。
【0051】他の、エチレン性不飽和材料には、ジアリルフタレート、ジアリルアジペートおよびN,N−ジアリルアジパミドなどのモノアリル、ポリアリルおよびポリメタアリルエステルおよびカルボン酸アミドが挙げられる。さらに他の含窒素化合物には、トリス(2−アクリル−オキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリ(2−メタアクリルオキシエチル)−s−トリアジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル−アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−ピロリドンおよびN−ビニル−ピペリドンが挙げられる。
【0052】二または三官能性アクリレートおよびメタクリレートモノマーと組み合わせて、またはフェノール樹脂もしくはエポキシ樹脂とともに使用され得る好適な一官能性アクリレートおよびメタクリレートの例には、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートおよびポリプロピレングリコールモノアクリレートが挙げられる。
【0053】結合剤が紫外線照射により硬化される場合は、フリーラジカル重合を開始させるために光開始剤を必要とする。この目的に好ましい光開始剤の例には、有機パーオキシド、アゾ化合物、キノン、ベンゾフェノン、ニトロソ化合物、アクリルハライド、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、トリアクリルイミダゾール、ビスイミダゾール、クロロアルキルトリアジン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントンおよびアセトフェノン誘導体が含まれる。好ましい光開始剤は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−エタノンである。
【0054】結合剤が可視照射で硬化される場合は、光開始剤はフリーラジカル重合を開始させることが必要とされる。この目的のために好ましい光開始剤の例は、ここに参照として挙げる米国特許第4,735,632号、第3欄、第25行から第4欄第10行、第5欄第1〜7行、第6欄第1〜35行に記載されている。
【0055】研磨コンポジット中に含まれる砥粒の濃度は10〜90重量%、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは60〜75重量%である。この割合は砥粒のサイズおよび用いる結合剤の種類や要求される被削面の仕上がり等に依存して変化する。
【0056】研磨コンポジットは砥粒および結合剤以外の材料を含んでよい。例えば、カップリング剤、湿潤剤、染料、顔料、可塑剤、フィラー、剥離剤、研磨補助剤およびこれらの混合物のような通常の添加剤である。
【0057】研磨コンポジットはカップリング剤を含むことができる。カップリング剤を添加することにより、研磨コンポジットを形成するために用いるスラリーの被覆粘度を著しく低下させうる。本発明に好ましいこのようなカップリング剤の例には、有機シラン、ジルコアルミネートおよびチタネートが含まれる。カップリング剤の量は、一般に、結合剤の5重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
【0058】研磨層3は、規則的に配置された一定形状の立体要素5を複数含む立体構造を有する。この立体要素5は円筒形状である。円筒の高さhは10〜500μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜65μmとされる。
【0059】砥粒4は立体要素の形状の表面を越えて突出しない。つまり、立体要素5は平滑な平面で構成される。例えば、立体要素5を構成する面は表面粗度Ryが2μm以下、好ましくは1μm以下である。
【0060】図8は、本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。この例では、立体要素は稜線が頂上の点で接続されている4面体形である。その場合、2本の稜線で挟まれた頂角αは通常30〜150゜、好ましくは45〜140゜とされる。立体要素はピラミッド形状としてもよい。その場合、2本の稜線で挟まれた頂角は通常30〜150゜、好ましくは45〜140゜とされる。この立体要素の高さは、例えば、2〜300μm、好ましくは5〜150μmとされる。
【0061】図8中、符号oは立体要素の底辺長さを示す。符号pは立体要素の頂上間距離を示す。oは、例えば、5〜1000μm、好ましくは10〜500μmとされる。pは、例えば、5〜1000μm、好ましくは10〜500μmとされる。
【0062】尚、この立体要素は頂上を所定の高さにカットして上面が平坦な4面体形としてもよい。その場合、立体要素の高さは頂上をカットする前の立体要素の高さの5〜95%、好ましくは10〜90%とされる。
【0063】図9は、本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。この例では、立体要素は頂上が所定の高さカットされた上面が平坦なピラミッド形である。この立体要素の高さは図8に示した4面体形と同様である。
【0064】図9中、符号oは立体要素の底辺長さを示す。符号uは立体要素の底辺間距離を示す。符号yは上面の一辺の長さを示す。oは、例えば、5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmとされる。uは、例えば、0〜1000μm、好ましくは2〜500μmとされる。yは、例えば、0.5〜1800μm、好ましくは1〜900μmとされる。
【0065】図10は、本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。この例では、立体要素は三角柱を横向きにしたプリズム形であり、プリズム形の立体要素の端部を下から鋭角を付けて切り、四方に斜面が出た寄せ棟形としたものである。プリズムを、長さ方向と垂直な面で切った三角形の頂角は通常30〜150゜、好ましくは45〜140゜とされる。この立体要素の高さは、例えば、2〜600μm、好ましくは4〜300μmとされる。
【0066】尚、プリズム形の立体要素の長さは研磨パッドのほぼ全域に亘って伸長されてよい。又は、図10に示しているように適当な長さで中断してもよい。その端部は揃えても揃えなくてもよい。また、その頂上をカットして上面が平坦なプリズム形としてもよい。その場合、立体要素の高さは頂上をカットする前の立体要素の高さの5〜95%、好ましくは10〜90%とされる。
【0067】図10中、符号lは立体要素の長底辺長さを示す。符号vは立体要素の鋭角を付けて切り取られた距離を示す。符号xは立体要素の短底辺間距離を示す。符号wは立体要素の短底辺の長さ(立体要素の幅)を示す。符号pは立体要素の頂上間距離を示す。符号uは立体要素の長底辺間距離を示す。lは、例えば、5〜10000μm、好ましくは10〜5000μmとされる。vは、例えば、0〜2000μm、好ましくは1〜1000μmとされる。xは、例えば、0〜2000μm、好ましくは0〜1000μmとされる。wは、例えば、2〜2000μm、好ましくは4〜1000μmとされる。pは、例えば、2〜4000μm、好ましくは4〜2000μmとされる。uは、例えば、0〜2000μm、好ましくは0〜1000μmとされる。
【0068】本発明のCMP用研磨パッドは以下に説明する方法により製造することが好ましい。
【0069】まず、砥粒と結合剤とを含む研磨材塗布液を調製する。ここで用いる研磨材塗布液は、研磨コンポジットを構成するのに十分な量の結合剤、砥粒、要すれば光開始剤等の添加剤を含有し、この混合物に流動性を付与するのに十分な量の揮発性溶剤をさらに含有し得る組成物である。
【0070】次いで、規則的に複数配置された複数の凹部を有する鋳型シートを調製する。凹部の形状は形成する立体要素を反転させた形状であればよい。鋳型シートの材料は、たとえば、ニッケルのような金属、ポリプロピレンのようなプラスチック等を用いてよい。例えば、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂は金属用具上でその溶融温度においてエンボス可能であるため、所定形状の凹部を容易に形成でき、好ましい。また、結合剤が照射硬化性樹脂である場合は、紫外線や可視光線を透過する材料を用いることが好ましい。
【0071】鋳型シートに研磨材塗布液を充填する。充填は研磨材塗布液をロールコーター等の被覆装置で鋳型シートに塗布することにより行うことができる。
【0072】鋳型シートに基材を重ね研磨材塗布液を基材に接着させる。接着は、例えば、ロールで加圧、ラミネートする方法により行う。
【0073】結合剤を硬化させる。ここで用いられる「硬化」と言う用語は固体状態に重合させることを意味する。硬化の後は研磨層の特定形状は変化しない。
【0074】結合剤は、熱、赤外線照射または、電子線照射、紫外線照射または可視光照射のような他の照射エネルギーにより硬化される。照射エネルギーの印加量は用いる結合剤の種類および照射エネルギー源により異なる。通常、当業者であれば照射エネルギーの印加量を適宜決定することができる。硬化に要する時間は結合剤の厚さ、密度、温度および組成物の特性等に依存して変化する。
【0075】例えば、透明基材の上から紫外線(UV)を照射して結合剤を硬化させてよい。
【0076】鋳型シートを除去することにより、基材と立体構造を有する研磨層とから成る研磨パッドが得られる。鋳型シートを除去した後に結合剤を硬化させてもよい。得られた研磨パッドは、平坦な硬質支持体上に接着する等通常の方法により構成を変更してもよい。
【0077】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に断らない限り、実施例中「部」は重量基準である。
【0078】実施例表1に示す成分を配合することにより研磨材塗布液を調製した。
【0079】
【表1】
【0080】図5〜7に示す円筒形立体要素を反転させた形状の凹部を有するポリプロピレン製鋳型シートを準備した。隣接する立体要素間の距離は半導体ウェハに対する全体の接触面積は18%となるように調節した。各寸法を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】ポリプロピレン製の鋳型シートに研磨材塗布液をロールコーターにより塗布した。この上に厚さ100μmの透明PETフィルムを重ね、ロールで圧力をかけてラミネートした。紫外線を照射して結合剤を硬化させた。
【0083】鋳型シートを除去し、室温まで冷却して研磨パッドを得た。この研磨パッドは、研磨層が図5に示される立体構造を有し、寸法は幅1.27cm×長さ10cmのテープ状である。この研磨パッドの研磨性能を試験した。
【0084】摩擦力図11に研磨パッドの摩擦力の試験方法を模式的に表している。被削体としては直径10mmのガラス管を用いた。被削体であるガラス管11はモーター(非表示)の軸に取り付けた。研磨パッド12をガラス管11に研磨面を内側にして掛け、一方の端を歪みゲージ13に固定し、他方の端に200gの重り14を付けた。
【0085】モーターを始動してガラス管を矢印方向に回転させた。回転速度は240rpmとした。歪みゲージ13に表示される摩擦力(g)を読み取り、経時的に記録した。結果を図12のグラフに示す。
【0086】本発明の研磨パッドは摩擦力が低く、研磨時間が経過しても摩擦力の上昇傾向が現れず、摩擦特性が良好であった。
【0087】被削面の仕上がり上述の方法で4分間研磨したガラス管の被削面の表面の仕上がりを光学顕微鏡で測定した(倍率50倍)。
【0088】本発明の研磨パッドで研磨した被削面は欠陥やスクラッチが無く平坦度が高いものであった。
【0089】比較例CVD製法アルミナ砥粒の代わりに湿式製法アルミナ(Transelco社製「TIZOX8109」、粒径約0.15μm)を用いること以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、その研磨性能を試験した。結果を図12のグラフに示す。
【0090】比較例の研磨パッドは摩擦力が高く、研磨時間が経過すると摩擦力の上昇傾向が現れ、摩擦特性が不良であった。また、比較例の研磨パッドで研磨した被削面は欠陥やスクラッチが有り、平坦度が低いものであった。
【0091】
【発明の効果】摩擦特性が良く耐久性に優れ、半導体ウェハの被削面に欠陥やスクラッチが生じない低コストのCMP用研磨パッドが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の研磨層の構造の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の研磨層の構造の一例を示す断面図である。
【図3】 本発明の研磨層の構造の一例を示す断面図である。
【図4】 本発明の研磨層の一例を示す平面図である。
【図5】 本発明の一例であるCMP用研磨パッドの研磨面の拡大写真である。
【図6】 本発明の一例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図7】 本発明の一例であるCMP用研磨パッドの断面図である。
【図8】 本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図9】 本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図10】 本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図11】 研磨パッドの摩擦力の試験方法を表した模式図である。
【図12】 研磨工程で発生する摩擦力の変化を経時的にプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1…研磨パッド、
2…基材、
3…研磨層、
4…砥粒、
5…立体要素。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、その研磨層が立体構造を有する研磨パッドに関し、特に、化学・機械的研磨(Chemical and Mechanical Polishing : CMP)プロセスにより半導体ウェハを平坦化するために用いる、研磨層が立体構造を有する研磨パッドに関する。
【0002】
【従来の技術】CMPプロセスは、デバイスの高集積化、多層配線化に伴い、半導体ウェハを平坦化するための標準的なプロセスとして認知されている。CMPシステムの基本構造は、加工と洗浄の2つのユニットからなる。加工ユニットでは、一般的には、半導体ウェハを維持しながら回転加圧を与えるヘッド部及びその駆動機構、それに対面する形式でパッドが添付されるプラテン及びその駆動機構が基本となる。その他、研磨パッドのコンディショニング(ドレッシング)機構、ウェハチャック面等の洗浄機構、作業液供給機構等が具備されている。
【0003】研磨パッドの構造や特性は加工による研磨特性に大きな影響を与えるため、CMPプロセスを支えるキーの技術として更に改良が望まれている。研磨パッドの構造には、ミクロ的な側面とマクロ的な側面とがあり、それぞれ研磨特性に影響する。ミクロ的な構造とは砥粒やバインダーの種類、発泡状態、表面状態等である。マクロ的な構造とは穴、溝、突起等の表面の形状である。
【0004】特表平11−512874号公報には、その研磨層が規則的な立体構造を有する半導体ウェハ用研磨パッドが記載されている。この研磨パッドはCMPプロセスに使用できる。研磨層が立体構造化されているとローディングが生じ難いため、この研磨パッドは研磨が安定し、耐久性に優れる。
【0005】しかし、研磨層が立体構造化されている研磨パッドは砥粒の性能が研磨特性に影響し易い特性がある。そのため、汎用のα−アルミナ砥粒を用いると被削面の仕上がりを充分に高めることが困難であるという問題がある。特にCMPプロセスでは半導体ウェハ表面は高い平坦度を確保したうえで、表面粗さ1〜2nmRy(最大高さ、JIS B 0601)、OSF(Oxidation-induced StackingFault)フリー、マイクロスクラッチフリー、ヘイズフリーにすることが要求される。
【0006】ところが、従来の一般的な製造方法により得られるα−アルミナ砥粒を立体構造化研磨材料に使用すると、研磨時の摩擦力が高く、被削面に欠陥やスクラッチが生じ易い。他方、ダイヤモンド等の高価な砥粒を用いると研磨パッドの製造コストが高くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、摩擦特性が良く耐久性に優れ、半導体ウェハの被削面に欠陥やスクラッチが生じない低コストのCMP用研磨パッドを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、基材と基材上に設けられた研磨層とを有し、上記研磨層が、規則的に配置された所定形状の立体要素を複数含む立体構造を有し、上記研磨層が、構成成分としてCVD法により製造されたアドバンストアルミナ砥粒と結合剤とを含む研磨コンポジットで成る、CMP用研磨パッドを提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】研磨層の代表的な例を図1、2、3および4に例示する。
【0010】好ましい研磨層は規則的に形作られても(上記の発明の開示に定義する)または不規則に形作られてもよく、規則的に形作られた研磨層が好ましい。
【0011】個々の立体要素の形状は種々の幾何学的な固体の任意の形態を有してもよい。一般に、基材に接触する立体要素の基面は末端部より面積が大きい。立体要素の形状は、立方体、円筒、プリズム、切頭プリズム、ストライプ、矩形、ピラミッド、切頭ピラミッド、4面体、切頭4面体、円錐、切頭円錐、半球、切頭半球、十文字または円心端を有する柱様断面などの数多くの幾何学的固体から選択することができる。
【0012】立体要素のピラミッドは4面、5面または6面を有してもよい。立体要素は異なる形状の混合物を有してもよい。立体要素は列、渦巻き、らせんまたは格子状に配列されてもよく、または無作為に配置されてもよい。
【0013】立体要素を形成する側面は基材に対して垂直であっても、基材に対して傾斜していても、または末端部の方に幅が狭くなりながら傾斜していてもよい。側面が傾斜している場合には、成形型すなわち製造用具の型穴から立体要素を取り出すことはより容易である。傾斜角は約1〜75度、好ましくは約2〜50度、さらに好ましくは約3〜35度、最も好ましくは約5〜15度の範囲であってよい。
【0014】角度がより小さいと、立体要素が摩耗するとき、見かけ上接触面積が一定となるので、より小さい角度が好ましい。従って、一般に、傾斜角は、成形型すなわち製造用具からの取り出しを容易にするほど十分に大きい角度と、均一な断面積を形成するほど十分に小さい角度との妥協点である。基面より末端部の方がより大きい断面を有する立体要素を使用することもできるが、その製造には、簡単な成形法以上の工夫を必要する。
【0015】各立体要素の高さは好ましくは同じであるが、研磨層の立体構造の中に高さが異なるものがあってもよい。立体要素の高さは、基材の表面を基準にして、一般に約2000マイクロメーターより小さく、さらに好ましくは約25〜200マイクロメーターの範囲である。
【0016】立体要素の基面は互いに接してもよいが、または隣り合う立体要素の基面はある規定の距離で互いに離れていてもよい。いくつかの実施態様において、隣り合う立体要素の物理的な接触量は各々接触する立体要素の垂直高さ寸法の33%を越えない。さらに好ましくは、隣り合う立体要素間の物理的接触量は各々接触している立体要素の垂直高さの1〜25%の範囲内である。
【0017】この「接する」の定義は、隣り合う立体要素が共通の立体要素窪地を共有する配置や、立体要素の向き合う側壁の間がつながれ、延長されている橋状構造も含む。好ましくは、窪地構造は各隣接する立体要素の垂直高さ寸法の33%を越えない高さを有する。立体要素間の窪地は立体要素を形成するために使用する同じスラリーから形成される。立体要素の中心間に引かれる真っ直ぐな仮想線上に介在する立体要素が配置されていないという意味において、立体要素は「隣り合っている」。立体要素の少なくとも一部は、立体要素の隆起した部分の間に窪んだ部分を提供するように、互いに離れていることが好ましい。
【0018】立体要素の一方向の間隔は、1cmあたり約1つの立体要素〜1cmあたり約100個の立体要素の範囲であってもよい。立体要素の一方向の間隔は、立体要素の密度がある位置では別の位置より大きいように変化してもよい。例えば、密度は研磨パッドの中心で最も大きくてもよい。立体要素の面積密度は約1〜10,000個の立体要素/cm2の範囲である。
【0019】基材の面が露出されている、すなわち研磨被覆が基材の表面領域全体を覆っていない配置も可能である。この種の配列は米国特許第5,014,468号(ラビパチ(Ravipati)ら)に記載されている。
【0020】立体要素は、好ましくは、所定のパターンで基材に配置され、または所定の位置の基材に配置される。例えば、基材と型穴を有する製造用具との間にスラリーを提供することによって製造される研磨物品では、立体要素の所定のパターンは、製造用具の型穴のパターンに対応する。従って、パターンは物品ごとに再現される。
【0021】所定のパターンの一実施態様では、立体要素は配列した状態で存在する。これは立体要素は横列と縦列が配列されたもの、または横列と縦列が交互に食い違って配列されたものなどの規則的な配列で存在することを意味する。望ましい場合には、立体要素の1つの横列を立体要素の2番目の横列の前に直接配置することができる。好ましくは、立体要素の1つの横列は立体要素の2番目の横列と互い違いであってもよい。
【0022】別の実施態様では、立体要素は「無作為な」配列またはパターンで配置されてもよい。これは、立体要素が上記のような横列と縦列の規則的な配列状態にないことを意味する。例えば、立体要素は1995年3月23日に公開された国際公開広報PCT95/07797号(フープマン(Hoopman)ら)および1995年8月24日に公開された国際公開広報PCT95/22436号(フープマン(Hoopman)ら)に記載されているような方法で配置されてもよい。しかし、この「無作為」な配列は、研磨物品上の立体要素の位置が所定で、研磨物品を製造するために使用した製造用具の型穴の位置に対応するという点では所定のパターンである。
【0023】三次元的な組織状の研磨物品は研磨剤被覆組成が異なってもよい。例えば、研磨ディスクの中心は、研磨ディスクの外側領域と異なる(例えば、柔らかさ、堅さ、または多少の受食性)研磨剤被覆を含有してもよい。
【0024】図1の研磨物品10は、基材12に固定または接着されたピラミッド状の立体要素11を有する。隣接する立体要素間には窪みまたは谷13が存在する。第1の横列から違い違いに第2の横列のピラミッド状の立体要素も存在する。ピラミッド状立体要素の最外点すなわち末端部は工程中にウェハ表面と接触する。
【0025】図2の研磨物品20は不規則な形状のピラミッド状立体要素を有する。この特定の例示では、立体要素はピラミッド型の形状を有する。ピラミッドを形成する境界は不規則な形状である。不完全な形状は、結合剤前駆体がかなり硬化または固化する前に、スラリーが流動し、最初の形状が歪んだ結果であり得る。不規則な形状は、真っ直ぐでない、きれいでない、再現性のない、正確でないまたは完璧でない平面または形状の境界が特徴である。
【0026】図3の研磨物品30は、切頭ピラミッド状の立体要素31を有する。
【0027】図4の研磨物品40は、「十字」形状41と「x」の形状42の立体要素を有する。立体要素は、横並びのパターンで配置される。種々の横並び中のカンマ立体要素は互いに食い違い、隣接する横並びの立体要素と直接並ばない。さらに、立体要素の横並びは空間または谷によって分離されている。谷または空間はごく少量(高さによって測定したとき)の立体要素を含有してもよく、または立体要素を含有しなくてもよい。
【0028】別の配列または構成の立体要素は、各々の交互の横並びが「十字」形状を有する立体要素または「x」形状を有する立体要素のどちらかを含む以外は、図3と同様である。この配列では、奇数列の立体要素は偶数列の立体要素と互い違いになっている。上記の配列の十字形状または「x」形状の立体要素では、十字またはx形状のどちらかを形成する1本の線の長さは約750マイクロメーターで、十字またはx形状のどちらかを形成する1本の線の幅は約50マイクロメーターであることが好ましい。
【0029】図5は、本発明の一例であるCMP用研磨パッドの研磨面の斜視図である。研磨層の立体構造が表示されている。研磨層の立体構造は複数の立体要素で構成されている。立体要素の形状は円筒形であり、複数の円筒形が規則的に配置されている。
【0030】図6は、上記CMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。立体要素の配置態様の一例を示したものである。複数の立体要素が同一間隔で横方向に並べられて行A、B、・・・が形成され、これらの行は、立体要素が互い違いになるようにずらして縦方向に並べられている。
【0031】図6中、符号dは立体要素である円筒の直径を示す。dは、例えば、10〜5000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは100〜300μmとされる。符号eは同一行内で隣接する立体要素間の距離を示す。符号fは隣の行で隣接する立体要素間の距離を示す。e及びfは同一寸法でも異なる寸法でもよく、例えば、10〜10000μm、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは100〜300μmとされる。一般にeとfとは同一寸法とされる。
【0032】図7は図6に示すCMP用研磨パッドをXX’面で切った断面図である。図7において、研磨パッド1は、基材2と基材の表面上に設けられた研磨層3とを有する。研磨層3は立体構造を有している。
【0033】基材は厚さが均一であることを要する。基材の厚さが十分に均一でない場合には、半導体ウェハの被削面およびウェハ厚さにばらつきが生じることがある。可撓性基材および比較的強固な基材を含む、種々の基材材料のいかなるものも本発明の目的に好適である。
【0034】基材に好ましい材料には、ポリマーフィルム、紙、布、金属フィルム、バルカンファイバー、不織基材、これらの組み合わせおよびこれらの処理品が含まれる。基材の1つの好ましい種類は、ポリマーフィルムである。このようなフィルムの例には、ポリエステルおよびコポリエステルフィルム、微小間隙ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。ポリマーフィルム基材の厚さは、一般に約20〜1000μm、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは60〜200μmの範囲である。例えば、基材はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであってよい。
【0035】ポリマーフィルム基材と研摩コーティングとの接着性は良好でなければならない。多くの場合において、ポリマーフィルム基材のコーティング面が下塗りされて、接着性が改良される。例えば、ポリマーフィルムは、研磨コンポジットの基材に対する接着を促進するためにポリエチレンアクリル酸のような材料で下塗りしてもよい。
【0036】研磨層3は結合剤のマトリックスとその中に分散させた砥粒4とを含む研磨コンポジットで成っている。
【0037】研磨コンポジットは、未硬化または未ゲル化状態の結合剤中に分散された複数の砥粒を含有するスラリーから形成される。硬化またはゲル化において、研磨コンポジットは固形化、すなわち予め定められた形状および予め定められた構造に固定される。
【0038】本発明に適する砥粒の種類はα−アルミナ粒子である。α−アルミナ粒子はアルミニウム原料精練からファインセラミックス原料まで幅広い用途で使用されている汎用的な酸化物材料である。
【0039】従来、工業用のα−アルミナ粒子は、バイヤー法、微細水酸化アルミニウムやミョウバンを熱分解する方法、及び電融法等により製造されてきた。これらの方法では、アルミナ原料を高温で焼成したり溶融してアルミナブロックを形成し、その後、粉砕、精製及びふるい分けして粒度が調整される。そのため、かかるα−アルミナ粒子は形状が不均一な多結晶体で、凝集粒子を多く含み、粒度分布が広い、また用途によってはアルミナ純度が低い等の問題がある。
【0040】本発明で用いるα−アルミナ粒子はアドバンストアルミナ砥粒であることが好ましい。アドバンストアルミナ粒子とは、インサイツ・ケミカル・ベイパー・デポジション法(以下、CVD法と称する。)により製造されたα−アルミナ粒子をいう。アドバンストアルミナ粒子は上述のような焼成粉砕したものと比べて粒子径分布やアルミナ粒子の結晶系の均一性に優れる。
【0041】アドバンストアルミナ砥粒は結晶成長した粒子から構成される均質な単結晶粒子であり、球状に近い性質を有する。また結晶の成長サイズを制御することができるため粒度分布がシャープとなる。アドバンストアルミナ砥粒の特徴及び用途については、毛利正英(Masahide Mohri)、田中紳一郎(Shin-ichiro Tanaka)、内田義男(Yoshio Uchida)、「アドバンストアルミナの開発(Development of Advanced Alumina)」、機能材料、1996年12月号、第16巻、第12号、第18〜27頁に説明されている。
【0042】本発明で用いるのに特に好ましいアドバンストアルミナ砥粒は特開平6−191836号公報に記載されている。すなわち、均質で内部に結晶種を有さず、8面以上の多面体形状を有し、六方最密格子であるα−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとしたとき、D/H比が0.5以上3.0以下であるα−アルミナ単結晶粒子からなり、ナトリウム含有量がNa2Oに換算して0.05重量%未満であり、アルミナ純度が99.90重量%以上である粉末状のα−アルミナである。
【0043】砥粒の寸法は研磨される半導体ウェハの種類や要求される被削面の仕上がりに依存して変化する。例えば、その平均粒径は、0.1〜50μm、好ましくは0.3〜5μmさらに好ましくは0.4〜2μmである。このようなアドバンストアルミナ砥粒は住友化学工業株式会社より商品名「スミコランダム」として市販されている。
【0044】研磨層が立体構造化されたCMP用研磨パッドの砥粒としてアドバンストアルミナ粒子を使用すると、CMPプロセスにおいて、研磨時の摩擦力が低くなって研磨が安定し、被削面に欠陥やスクラッチが生じ難くなる。
【0045】結合剤は硬化またはゲル化することにより研磨層を形成する。本発明に好ましい結合剤の例には、フェノール樹脂、レゾール−フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂およびこれらの混合物が含まれる。結合剤は熱可塑性樹脂でもよい。
【0046】特に好ましいものは、照射硬化性結合剤である。照射硬化性結合剤は照射エネルギーにより少なくとも部分的に硬化されるか、または少なくとも部分的に重合されうるいずれかの結合剤である。用いられる結合剤に依存して、熱、赤外線、電子線、紫外線照射または可視光照射のようなエネルギー源が用いられる。
【0047】典型的には、これらの結合剤はフリーラジカル機構により重合される。好ましくは、これらは、エチレン性不飽和モノマー及びオリゴマーのようなエチレン性不飽和化合物、アクリル化ウレタン、アクリル化エポキシ、α,β-不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト誘導体、エチレン性不飽和基を有するイソシアヌレート誘導体、エチレン性不飽和基を有するイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】エチレン性不飽和化合物は一官能性、二官能性、三官能性、四官能性またはさらに高官能性であってもよく、アクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマーを共に含んでもよい。エチレン性不飽和化合物は炭素原子、水素原子および酸素原子、並びに場合に応じて窒素原子およびハロゲン原子を含有するモノマー化合物およびポリマー化合物を共に含む。
【0049】酸素原子もしくは窒素原子、または両者は一般に、エーテル基、エステル基、ウレタン基、アミド基および尿素基中に含有される。好適なエチレン性不飽和化合物は、好ましくは、分子量が約4000より小さく、好ましくは、脂肪族モノヒドロキシ基または脂肪族ポリヒドロキシ基を有する化合物と、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等などの不飽和カルボン酸との反応から製造されるエステルである。
【0050】エチレン性不飽和モノマーの代表的な例には、エチルメタクリレート、スチレンジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ビニルトルエン、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびペンタエリトリトールテトラメタクリレートが挙げられる。
【0051】他の、エチレン性不飽和材料には、ジアリルフタレート、ジアリルアジペートおよびN,N−ジアリルアジパミドなどのモノアリル、ポリアリルおよびポリメタアリルエステルおよびカルボン酸アミドが挙げられる。さらに他の含窒素化合物には、トリス(2−アクリル−オキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリ(2−メタアクリルオキシエチル)−s−トリアジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル−アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−ピロリドンおよびN−ビニル−ピペリドンが挙げられる。
【0052】二または三官能性アクリレートおよびメタクリレートモノマーと組み合わせて、またはフェノール樹脂もしくはエポキシ樹脂とともに使用され得る好適な一官能性アクリレートおよびメタクリレートの例には、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデシルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートおよびポリプロピレングリコールモノアクリレートが挙げられる。
【0053】結合剤が紫外線照射により硬化される場合は、フリーラジカル重合を開始させるために光開始剤を必要とする。この目的に好ましい光開始剤の例には、有機パーオキシド、アゾ化合物、キノン、ベンゾフェノン、ニトロソ化合物、アクリルハライド、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、トリアクリルイミダゾール、ビスイミダゾール、クロロアルキルトリアジン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、チオキサントンおよびアセトフェノン誘導体が含まれる。好ましい光開始剤は2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−エタノンである。
【0054】結合剤が可視照射で硬化される場合は、光開始剤はフリーラジカル重合を開始させることが必要とされる。この目的のために好ましい光開始剤の例は、ここに参照として挙げる米国特許第4,735,632号、第3欄、第25行から第4欄第10行、第5欄第1〜7行、第6欄第1〜35行に記載されている。
【0055】研磨コンポジット中に含まれる砥粒の濃度は10〜90重量%、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは60〜75重量%である。この割合は砥粒のサイズおよび用いる結合剤の種類や要求される被削面の仕上がり等に依存して変化する。
【0056】研磨コンポジットは砥粒および結合剤以外の材料を含んでよい。例えば、カップリング剤、湿潤剤、染料、顔料、可塑剤、フィラー、剥離剤、研磨補助剤およびこれらの混合物のような通常の添加剤である。
【0057】研磨コンポジットはカップリング剤を含むことができる。カップリング剤を添加することにより、研磨コンポジットを形成するために用いるスラリーの被覆粘度を著しく低下させうる。本発明に好ましいこのようなカップリング剤の例には、有機シラン、ジルコアルミネートおよびチタネートが含まれる。カップリング剤の量は、一般に、結合剤の5重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
【0058】研磨層3は、規則的に配置された一定形状の立体要素5を複数含む立体構造を有する。この立体要素5は円筒形状である。円筒の高さhは10〜500μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜65μmとされる。
【0059】砥粒4は立体要素の形状の表面を越えて突出しない。つまり、立体要素5は平滑な平面で構成される。例えば、立体要素5を構成する面は表面粗度Ryが2μm以下、好ましくは1μm以下である。
【0060】図8は、本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。この例では、立体要素は稜線が頂上の点で接続されている4面体形である。その場合、2本の稜線で挟まれた頂角αは通常30〜150゜、好ましくは45〜140゜とされる。立体要素はピラミッド形状としてもよい。その場合、2本の稜線で挟まれた頂角は通常30〜150゜、好ましくは45〜140゜とされる。この立体要素の高さは、例えば、2〜300μm、好ましくは5〜150μmとされる。
【0061】図8中、符号oは立体要素の底辺長さを示す。符号pは立体要素の頂上間距離を示す。oは、例えば、5〜1000μm、好ましくは10〜500μmとされる。pは、例えば、5〜1000μm、好ましくは10〜500μmとされる。
【0062】尚、この立体要素は頂上を所定の高さにカットして上面が平坦な4面体形としてもよい。その場合、立体要素の高さは頂上をカットする前の立体要素の高さの5〜95%、好ましくは10〜90%とされる。
【0063】図9は、本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。この例では、立体要素は頂上が所定の高さカットされた上面が平坦なピラミッド形である。この立体要素の高さは図8に示した4面体形と同様である。
【0064】図9中、符号oは立体要素の底辺長さを示す。符号uは立体要素の底辺間距離を示す。符号yは上面の一辺の長さを示す。oは、例えば、5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmとされる。uは、例えば、0〜1000μm、好ましくは2〜500μmとされる。yは、例えば、0.5〜1800μm、好ましくは1〜900μmとされる。
【0065】図10は、本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。この例では、立体要素は三角柱を横向きにしたプリズム形であり、プリズム形の立体要素の端部を下から鋭角を付けて切り、四方に斜面が出た寄せ棟形としたものである。プリズムを、長さ方向と垂直な面で切った三角形の頂角は通常30〜150゜、好ましくは45〜140゜とされる。この立体要素の高さは、例えば、2〜600μm、好ましくは4〜300μmとされる。
【0066】尚、プリズム形の立体要素の長さは研磨パッドのほぼ全域に亘って伸長されてよい。又は、図10に示しているように適当な長さで中断してもよい。その端部は揃えても揃えなくてもよい。また、その頂上をカットして上面が平坦なプリズム形としてもよい。その場合、立体要素の高さは頂上をカットする前の立体要素の高さの5〜95%、好ましくは10〜90%とされる。
【0067】図10中、符号lは立体要素の長底辺長さを示す。符号vは立体要素の鋭角を付けて切り取られた距離を示す。符号xは立体要素の短底辺間距離を示す。符号wは立体要素の短底辺の長さ(立体要素の幅)を示す。符号pは立体要素の頂上間距離を示す。符号uは立体要素の長底辺間距離を示す。lは、例えば、5〜10000μm、好ましくは10〜5000μmとされる。vは、例えば、0〜2000μm、好ましくは1〜1000μmとされる。xは、例えば、0〜2000μm、好ましくは0〜1000μmとされる。wは、例えば、2〜2000μm、好ましくは4〜1000μmとされる。pは、例えば、2〜4000μm、好ましくは4〜2000μmとされる。uは、例えば、0〜2000μm、好ましくは0〜1000μmとされる。
【0068】本発明のCMP用研磨パッドは以下に説明する方法により製造することが好ましい。
【0069】まず、砥粒と結合剤とを含む研磨材塗布液を調製する。ここで用いる研磨材塗布液は、研磨コンポジットを構成するのに十分な量の結合剤、砥粒、要すれば光開始剤等の添加剤を含有し、この混合物に流動性を付与するのに十分な量の揮発性溶剤をさらに含有し得る組成物である。
【0070】次いで、規則的に複数配置された複数の凹部を有する鋳型シートを調製する。凹部の形状は形成する立体要素を反転させた形状であればよい。鋳型シートの材料は、たとえば、ニッケルのような金属、ポリプロピレンのようなプラスチック等を用いてよい。例えば、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂は金属用具上でその溶融温度においてエンボス可能であるため、所定形状の凹部を容易に形成でき、好ましい。また、結合剤が照射硬化性樹脂である場合は、紫外線や可視光線を透過する材料を用いることが好ましい。
【0071】鋳型シートに研磨材塗布液を充填する。充填は研磨材塗布液をロールコーター等の被覆装置で鋳型シートに塗布することにより行うことができる。
【0072】鋳型シートに基材を重ね研磨材塗布液を基材に接着させる。接着は、例えば、ロールで加圧、ラミネートする方法により行う。
【0073】結合剤を硬化させる。ここで用いられる「硬化」と言う用語は固体状態に重合させることを意味する。硬化の後は研磨層の特定形状は変化しない。
【0074】結合剤は、熱、赤外線照射または、電子線照射、紫外線照射または可視光照射のような他の照射エネルギーにより硬化される。照射エネルギーの印加量は用いる結合剤の種類および照射エネルギー源により異なる。通常、当業者であれば照射エネルギーの印加量を適宜決定することができる。硬化に要する時間は結合剤の厚さ、密度、温度および組成物の特性等に依存して変化する。
【0075】例えば、透明基材の上から紫外線(UV)を照射して結合剤を硬化させてよい。
【0076】鋳型シートを除去することにより、基材と立体構造を有する研磨層とから成る研磨パッドが得られる。鋳型シートを除去した後に結合剤を硬化させてもよい。得られた研磨パッドは、平坦な硬質支持体上に接着する等通常の方法により構成を変更してもよい。
【0077】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に断らない限り、実施例中「部」は重量基準である。
【0078】実施例表1に示す成分を配合することにより研磨材塗布液を調製した。
【0079】
【表1】
【0080】図5〜7に示す円筒形立体要素を反転させた形状の凹部を有するポリプロピレン製鋳型シートを準備した。隣接する立体要素間の距離は半導体ウェハに対する全体の接触面積は18%となるように調節した。各寸法を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】ポリプロピレン製の鋳型シートに研磨材塗布液をロールコーターにより塗布した。この上に厚さ100μmの透明PETフィルムを重ね、ロールで圧力をかけてラミネートした。紫外線を照射して結合剤を硬化させた。
【0083】鋳型シートを除去し、室温まで冷却して研磨パッドを得た。この研磨パッドは、研磨層が図5に示される立体構造を有し、寸法は幅1.27cm×長さ10cmのテープ状である。この研磨パッドの研磨性能を試験した。
【0084】摩擦力図11に研磨パッドの摩擦力の試験方法を模式的に表している。被削体としては直径10mmのガラス管を用いた。被削体であるガラス管11はモーター(非表示)の軸に取り付けた。研磨パッド12をガラス管11に研磨面を内側にして掛け、一方の端を歪みゲージ13に固定し、他方の端に200gの重り14を付けた。
【0085】モーターを始動してガラス管を矢印方向に回転させた。回転速度は240rpmとした。歪みゲージ13に表示される摩擦力(g)を読み取り、経時的に記録した。結果を図12のグラフに示す。
【0086】本発明の研磨パッドは摩擦力が低く、研磨時間が経過しても摩擦力の上昇傾向が現れず、摩擦特性が良好であった。
【0087】被削面の仕上がり上述の方法で4分間研磨したガラス管の被削面の表面の仕上がりを光学顕微鏡で測定した(倍率50倍)。
【0088】本発明の研磨パッドで研磨した被削面は欠陥やスクラッチが無く平坦度が高いものであった。
【0089】比較例CVD製法アルミナ砥粒の代わりに湿式製法アルミナ(Transelco社製「TIZOX8109」、粒径約0.15μm)を用いること以外は実施例1と同様にして研磨パッドを作製し、その研磨性能を試験した。結果を図12のグラフに示す。
【0090】比較例の研磨パッドは摩擦力が高く、研磨時間が経過すると摩擦力の上昇傾向が現れ、摩擦特性が不良であった。また、比較例の研磨パッドで研磨した被削面は欠陥やスクラッチが有り、平坦度が低いものであった。
【0091】
【発明の効果】摩擦特性が良く耐久性に優れ、半導体ウェハの被削面に欠陥やスクラッチが生じない低コストのCMP用研磨パッドが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の研磨層の構造の一例を示す断面図である。
【図2】 本発明の研磨層の構造の一例を示す断面図である。
【図3】 本発明の研磨層の構造の一例を示す断面図である。
【図4】 本発明の研磨層の一例を示す平面図である。
【図5】 本発明の一例であるCMP用研磨パッドの研磨面の拡大写真である。
【図6】 本発明の一例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図7】 本発明の一例であるCMP用研磨パッドの断面図である。
【図8】 本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図9】 本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図10】 本発明の他の例であるCMP用研磨パッドの研磨面の平面図である。
【図11】 研磨パッドの摩擦力の試験方法を表した模式図である。
【図12】 研磨工程で発生する摩擦力の変化を経時的にプロットしたグラフである。
【符号の説明】
1…研磨パッド、
2…基材、
3…研磨層、
4…砥粒、
5…立体要素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材と基材上に設けられた研磨層とを有し、該研磨層が、規則的に配置された所定形状の立体要素を複数含む立体構造を有し、該研磨層が、構成成分としてCVD法により製造されたアドバンストアルミナ砥粒と結合剤とを含む研磨コンポジットで成る、CMP用研磨パッド。
【請求項2】 前記立体要素の形状が、円筒形、円錐形、4面体形、ピラミッド形、上面が平坦な4面体形又はピラミッド形、プリズム形、上面が平坦なプリズム形、及びストライプ形からなる群から選択される請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項3】 前記アドバンストアルミナ砥粒の平均粒径が0.01〜20μmである請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項4】 研磨コンポジット中に含まれる砥粒の濃度が10〜90重量%である請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項5】 前記結合剤が、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂、グルーおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項1】 基材と基材上に設けられた研磨層とを有し、該研磨層が、規則的に配置された所定形状の立体要素を複数含む立体構造を有し、該研磨層が、構成成分としてCVD法により製造されたアドバンストアルミナ砥粒と結合剤とを含む研磨コンポジットで成る、CMP用研磨パッド。
【請求項2】 前記立体要素の形状が、円筒形、円錐形、4面体形、ピラミッド形、上面が平坦な4面体形又はピラミッド形、プリズム形、上面が平坦なプリズム形、及びストライプ形からなる群から選択される請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項3】 前記アドバンストアルミナ砥粒の平均粒径が0.01〜20μmである請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項4】 研磨コンポジット中に含まれる砥粒の濃度が10〜90重量%である請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【請求項5】 前記結合剤が、フェノール樹脂、アミノプラスト樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリル化イソシアヌレート樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、イソシアヌレート樹脂、アクリル化ウレタン樹脂、アクリル化エポキシ樹脂、グルーおよびこれらの混合物からなる群から選択される請求項1記載のCMP用研磨パッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2002−57130(P2002−57130A)
【公開日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−245793(P2000−245793)
【出願日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年8月14日(2000.8.14)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】
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