説明

COF封止用樹脂組成物およびその製造方法

【課題】高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF型の半導体装置の20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(ライン/スペース(L/S)=10〜15/10〜15μm程度)の封止に用いられるCOF封止用樹脂組成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、および、無機充填剤を含むCOF封止用樹脂組成物の成分を配合した後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過することを特徴とするCOF封止用樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップオンフィルム(COF)封止用樹脂組成物、およびその製造方法に関する。より具体的には、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF型の半導体装置の20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(ライン/スペース(以下、「L/S」と記載する。)=10〜15/10〜15μm程度)の封止に用いられるCOF封止用樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムのような、柔軟性を有するフィルム材料製の基板(以下、「フレキシブル基板」という。)上に、半導体チップ(素子)を搭載したCOF(チップオンフィルム)型の半導体装置が知られている。なお、COF型の半導体装置とは、配線を有するフレキシブル基板上に半導体チップなどが搭載されている構造を有する半導体装置と定義される。以下、本明細書において、COF型の半導体装置のことを単に「COF」という。
近年実装回路の高集積化に伴い、配線パターンの微細化に優れるCOFの実装が多くなっている(特許文献1、2参照)。
【0003】
COFは、フリップチップ型の半導体装置の一態様である。フリップチップ型の半導体装置では、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体チップとが接続される。
基板がエポキシ樹脂のような剛直な材料製の従来のフリップチップ型の半導体装置では、サーマルサイクルが加わった際に、半導体チップ(素子)と、基板と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するためにアンダーフィルと呼ばれる封止剤を用いて半導体チップ(素子)と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。
【0004】
高い信頼性を要求される用途に適用される半導体装置において、COFを使用する場合には、使用時にサーマルサイクルが加わることも多く、半導体チップ(素子)とフレキシブル基板との間のギャップをアンダーフィルで封止して両者を互いに固定することとなる。ピッチが広い従来のCOF(30〜40μm程度。L/S=15〜20/15〜20μm程度。)では、サーマルサイクルに伴ってアンダーフィルが伸縮しても、基板が柔軟性を有するためアンダーフィルの伸縮に追従することができることから、アンダーフィルの剥離・クラック等の問題は生じにくかった。
しかしながら近年の狭ピッチ化(20〜30μm程度。L/S=10〜15/10〜15μm程度))に伴い、サーマルサイクルに伴うアンダーフィルの伸縮に基板が追従し得る移動量が減少し、アンダーフィルの剥離・クラック等の問題が生じやすくなってきた。
したがって、COF封止用のアンダーフィル、特に、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF封止用のアンダーフィルの場合、アンダーフィルがサーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能を有することが求められる。
【0005】
また、高い信頼性を要求される用途に適用される半導体装置は、使用時に高温環境下に放置されることから、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF封止用のアンダーフィルは耐熱性に優れることが求められ、また、放熱性の観点から熱伝導性に優れることが求められる。
また、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF封止用のアンダーフィルは、耐湿性も要求されることから、PCT(プレッシャー・クッカー・テスト)耐性にも優れることが求められる。
【0006】
さらにまた、半導体チップ(素子)の狭ギャップ化、狭ピッチ化に伴い、COF封止用のアンダーフィルには、20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)を封止した際のTHB信頼性(耐湿絶縁信頼性)にも優れることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−255178号公報
【特許文献2】特開2008−7577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するため、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能を有し、高温放置特性、熱伝導性、PCT耐性、および、20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)を封止した際のTHB信頼性に優れた、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF型の半導体装置の20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)の封止に用いられるCOF封止用樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、および、無機充填剤を含むCOF封止用樹脂組成物の成分を配合した後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過することを特徴とするCOF封止用樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0010】
本発明のCOF封止用樹脂組成物の製造方法において、前記無機充填剤が、平均粒径が0.1〜0.7μmで、平均粒径±0.2μmの粒度分布が全体の90%以上であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、本発明の製造方法により得られるCOF封止用樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明のCOF封止用樹脂組成物は、COF封止用樹脂組成物全量に対して無機充填剤を10〜30質量%含有することが好ましい。
【0013】
本発明のCOF封止用樹脂組成物において、無機充填剤が非晶質球状シリカであることが好ましい。
【0014】
本発明のCOF封止用樹脂組成物において、硬化剤が酸無水物系硬化剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のCOF封止用樹脂組成物は、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能を有し、高温放置特性、熱伝導性、PCT耐性、および、20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)を封止した際のTHB信頼性に優れているため、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOFの20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)を封止するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)〜(c)は、実施例におけるギャップへのアンダーフィルの注入性評価の手順を示した図である。
【図2】図2は、実施例で使用した無機充填剤Aの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のCOF封止用樹脂組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
<COF封止用樹脂組成物の製造方法>
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、および、無機充填剤を含むCOF封止用樹脂組成物の成分を配合した後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過することを特徴とするCOF封止用樹脂組成物の製造方法を提供する。
以下、COF封止用樹脂組成物の各成分について説明する。
【0019】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであっても、他の液状のエポキシ樹脂又は希釈剤により希釈し、液状を示すようにして用いることができる。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エーテル系又はポリエーテル系エポキシ樹脂、オキシラン環含有ポリブタジエン、シリコーンエポキシコポリマー樹脂等が例示される。
【0020】
特に、液状であるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p−グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4−シクロヘキセン)ジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)5,1−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−m−ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3−ジグリシジル−5−メチル−5−エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。
【0021】
常温で固体ないし超高粘性のエポキシ樹脂を併用することも可能であり、そのようなエポキシ樹脂として、高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が例示される。これらは、常温で液体であるエポキシ樹脂及び/又は希釈剤と組み合わせて、流動性を調節して使用することができる。
【0022】
常温で固体ないし超高粘性であるエポキシ樹脂を用いる場合、低粘度のエポキシ樹脂、例えば、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等と組み合わせることが好ましい。
【0023】
希釈剤を用いる場合、非反応性希釈剤及び反応性希釈剤のいずれをも使用することができるが、反応性希釈剤が好ましい。本明細書において、反応性希釈剤は、1個のエポキシ基を有する、常温で比較的低粘度の化合物をいうこととし、目的に応じて、エポキシ基以外に、他の重合性官能基、たとえばビニル、アリル等のアルケニル基;又はアクリロイル、メタクリロイル等の不飽和カルボン酸残基を有していてもよい。このような反応性希釈剤としては、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−s−ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、α−ピネンオキシドのようなモノエポキシド化合物;アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジル、1−ビニル−3,4−エポキシシクロヘキサンのような他の官能基を有するモノエポキシド化合物等が例示される。
【0024】
エポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂自体が、常温で液状であることが好ましい。中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂である。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンである。
【0025】
(硬化剤)
硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、フェノール樹脂、酸無水物系硬化剤、芳香族アミン類、イミダゾ−ル類等が挙げられる。
良好な反応性が得られ、またCOF封止用樹脂組成物にしたときに適切な粘度に調整しやすい点から、酸無水物系硬化剤が好ましく、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が例示される。中でも、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、ジエチルグルタル酸無水物から選ばれる酸無水物が好ましい。
硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0026】
COF封止用樹脂組成物におけるエポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、特に限定されないが、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して硬化剤が0.3〜1.5当量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.9当量である。
【0027】
(無機充填剤)
従来、COF封止用のアンダーフィルに要求される機能は主として絶縁性の確保、および、封止する部位への充填性であることから、COF封止用のアンダーフィルには無機充填剤を含有させることは行われていなかった。
しかしながら、高い信頼性を要求される用途に適用されるCOF封止用のアンダーフィルの場合、絶縁性の確保に加えて、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能を有することが求められる。
本願発明者らは、鋭意検討した結果、COF封止用樹脂組成物に無機充填剤を添加して、線膨張係数を下げることで、COF封止用樹脂組成物にサーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能を付与することができることを見出した。
【0028】
無機充填剤は、添加により線膨張係数を下げる効果を有するものである限り特に限定されず、各種無機充填剤を使用することができる。具体的には非晶質シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、チッ化アルミ、チッ化珪素等が挙げられる。
これらの中でも、シリカ、特に、非晶質の球状シリカが、組成物への分散性に優れることから、組成物の低粘度化という観点から望ましい。
なお、ここで言うシリカは、製造原料に由来する有機基、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基を有するものであってもよい。
非晶質の球状シリカとしては、製造容易性の点からコロイダルシリカが好ましい。
また、無機充填剤として用いるシリカとしては、特開2007−197655号公報に記載の製造方法によって得られたシリカ含有組成物を用いてもよい。
【0029】
本発明の製造方法では、COF封止用樹脂組成物の成分を配合した後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過するため、COF封止用樹脂組成物に添加する無機充填剤として、平均粒径が0.1〜0.7μmであり、かつ、粒度分布がきわめてそろったもの、具体的には、平均粒径±0.2μmの粒度分布が全体の90%以上であるものを使用することが、COF封止用樹脂組成物の生産性に優れることから好ましい。
無機充填剤の平均粒径は、0.2〜0.5μmであることが好ましく、0.3μmであることが特に好ましい。
【0030】
無機充填剤は、シランカップリング剤等で表面処理が施されたものであってもよい。表面処理が施された無機充填剤を使用した場合、無機充填剤の凝集を防止する効果が期待される。これにより、PCT耐性や保存安定性といったCOF封止用樹脂組成物の物性の向上が期待される。
【0031】
COF封止用樹脂組成物における無機充填剤の含有量は10〜30質量%であることが好ましい。ここで言う、無機充填剤の含有量とは、エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填剤に加えて、後述する任意の成分(硬化促進剤等)までを含めたCOF封止用樹脂組成物全量に対する質量%である。
無機充填剤の含有量が10質量%未満だと、無機充填剤の添加により線膨張係数を下げる効果が不十分であり、その結果、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する効果が不十分となるおそれがある。
一方、無機充填剤の含有量が30質量%超だと、20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)への注入性に劣るおそれがある。
【0032】
COF封止用樹脂組成物には、エポキシ樹脂、硬化剤、および、無機充填剤以外の成分を含有させてもよい。例えば、適切な硬化性を得るために、硬化促進剤をCOF封止用樹脂組成物に含有させることができる。
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化促進剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤等が挙げられる。
【0033】
アミン系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン等のトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。中でも、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
また、リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
なお、硬化剤として酸無水物系硬化剤を使用する場合には、硬化性、保存安定性の点から、アミン系硬化促進剤を使用することが好ましい。
【0034】
硬化促進剤は、エポキシ樹脂等でアダクトされたアダクト型であっても、マイクロカプセル型であってもよい。但し、本発明の製造方法では、COF封止用樹脂組成物の成分を配合した後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過するため、アダクト型やマイクロカプセル型の硬化促進剤を使用する場合、その粒径が1μm未満のものを用いる必要がある。
【0035】
硬化促進剤の含有量は、COF封止用樹脂組成物の全量中、3質量%以下であることが好ましく、硬化促進剤の添加による効果を効率的に得るためには、例えば、0.5〜2.5質量%とすることができる。
【0036】
COF封止用樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて、着色剤(例えば、カーボンブラック、染料等)、難燃剤、イオントラップ剤、破泡剤、レべリング剤等を含有させてもよい。また、基板への接着性を向上させるために、3−グリシドキシプロプルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等のシランカップリング剤を含有させてもよい。
【0037】
COF封止用樹脂組成物は、粘度(25℃、E型粘度計、回転数10rpm)が、約0.1〜200Pa・sであることが、20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)への注入性に優れることから好ましい。
【0038】
本発明の製造方法では、樹脂組成物の各成分を、所定の配合となるように、流星型攪拌機、ディソルバー、ビーズミル、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合して各成分の配合物を得る。
次に、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過する。
各成分の配合物には、原料由来の異物や他の要因による異物(例えば、大気中からの異物や配合に使用する装置に付着していた異物)が混入する場合がある。このような異物が混入した樹脂組成物を20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)の封止に使用した場合、封止した部位に異物が詰まってTHB信頼性が損なわれる場合がある。本発明の製造方法では、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過することにより、配合物中の異物を除去する。これにより、20μm程度の狭ギャップ、20〜30μm程度の狭ピッチ(L/S=10〜15/10〜15μm程度)を封止した際のTHB信頼性に優れたCOF封止用樹脂組成物が得られる。
【0039】
上記の手順で得られる本発明のCOF封止用樹脂組成物の使用方法は以下の通り。
フレキシブル基板上の所定の位置に半導体チップ(素子)を搭載し、半導体チップと基板とのギャップにディスペンサ等を用いて、本発明のCOF封止用樹脂組成物を注入した後、加熱硬化させることでCOFを封止することができる。
注入は、25〜130℃の温度範囲で行うことができる。
加熱硬化の条件は、幅広く変更させることができる。例えば、加熱硬化は、120〜170℃程度の温度で行うことができるが、樹脂組成物が硬化するのであれば、この温度には限られず、より低温(例えば、65℃以上)でもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。表示は、断りのない限り、質量%である。
【0041】
下記表1に示す成分を、三本ロールミルを用いて混合し、均一にした後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過した。その後、真空脱泡機を用いて配合物中の気泡を除くことにより実施例及び比較例のCOF封止用樹脂組成物を得た。なお、比較例2は無機充填剤の平均粒径がフィルタのメッシュサイズよりも大きいため、配合物をろ過することができなかった。
【表1】

エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂
(エポキシ当量:155〜165、粘度:1500〜2500mPa・s)
エポキシ樹脂2:p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂
(エポキシ当量:93、粘度:630mPa・s)
エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂/ビスフェノールF型エポキシ樹脂(=45〜55%/45〜55%)
(エポキシ当量:160(推定値)、粘度:2300mPa・s)
硬化剤:酸無水物系硬化剤(3,4ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸無水物)
硬化促進剤:アミン系硬化促進剤(2−フェニル−4−メチルイミダゾール)
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
無機充填剤A:非晶質球状シリカ(平均粒径0.3μm)
無機充填剤B:非晶質球状シリカ(平均粒径0.6μm)
無機充填剤C:非晶質球状シリカ(平均粒径2.0μm)
なお、表1中、各成分の単位は質量%である。
無機充填剤Aの電子顕微鏡写真を図2に示した。図2から明らかなように、無機充填剤Aは粒径がきわめてそろっており、平均粒径(0.3μm)±0.2μmの粒度分布が全体の90%以上である。図示しないが無機充填剤B,Cも粒径がきわめてそろっており、平均粒径±0.2μmの粒度分布が全体の90%以上である。
【0042】
実施例1〜5及び比較例1のCOF封止用樹脂組成物について、下記の物性評価を実施した(1μmろ過性は比較例2のCOF封止用樹脂組成物についても)。結果を下記表に示す。
[粘度、ゲルタイム、増粘倍率]
粘度は、COF封止用樹脂組成物の調製直後にEMD型粘度計(トキメック社製、機器名:TV−22、回転数10rpm)を用いて25℃で測定した。
増粘倍率は、COF封止用樹脂組成物を密閉容器中にて25℃、湿度50%の環境にて24時間保管した後の粘度を、EMD型粘度計を用いて25℃で測定し、測定値を下記式に代入して求める。
増粘倍率=(24時間経時後の粘度)/(経時前の粘度)
ゲルタイムは、150℃の熱板上に、COF封止用樹脂組成物を5mg±1mgを供給し、攪拌棒によって円を描くようにして攪拌し、供給時から、攪拌しながら攪拌棒を持ち上げて引き離した場合に糸引きが5mm以下となるまでの時間を測定する。
【0043】
[ギャップへの注入性]
図1(a)に示すように、基板10上に20μmのギャップを設けて、半導体素子の代わりにガラス板20を固定した試験片を作製する。但し、基板10としては、フレキシブル基板の代わりにガラス基板を使用する。この試験片を110℃に設定したホットプレート上に置き、図1(b)に示すように、ガラス板20の一端側にCOF封止用樹脂組成物1を塗布し、図1(c)に示すように、ギャップがCOF封止用樹脂組成物1で満たされるまでの時間を測定する。
【0044】
[レべリング性]
ヘモガラスにCOF封止用樹脂組成物を4.5〜5.5mgになるようにポッティングし、室温で5min放置した後、送風乾燥機で150℃×60min硬化させる。ただし、COF封止用樹脂組成物に送風乾燥機の熱風が直接当たらないように覆う。
その後塗膜の直径を測定する。なお、n=3で測定し、平均値を求めた。
【0045】
[電気伝導度]
COF封止用樹脂組成物を150℃、60分で硬化させた試料5mm角程度に粉砕した硬化塗膜2.5gにイオン交換水25mLを加え、PCT(121℃±2℃/湿度100%/2atmの槽)で20Hr置いた後、室温まで冷却して得た抽出液を試験液とする。この試験液の電気伝導率を伝導度計(東亜電波工業(株)製の伝導度計 CM−30G)を用いて測定する。
【0046】
[pH]
上記の手順で得られる電気電導度測定用の抽出液のpHをpHメータ(横河電機製 PH81)で測定する。
【0047】
[不純物イオン(Na+,K+,Cl-)濃度]
上記の手順で得られる電気電導度測定用の抽出液の不純物イオン(Na+,K+,Cl-)濃度を測定する。不純物イオン濃度のうち、Na+濃度およびK+濃度はフレーム原子吸光分光光度計(バリアンテクノロジーズ社製 AA240FS)を用いて測定する。Cl-濃度はイオンクロマトグラフを用いて測定する。
【0048】
[線膨張係数、ガラス転移温度]
COF封止用樹脂組成物を、150℃、60分で5mmφ×3mmHの円柱状に硬化させ、熱機械試験装置(ブルカーAXS(株)製 TMA4000SA)を用いて、圧縮モード(荷重1g、1回測定)で測定し、ガラス転移温度、線膨張係数を求める。
【0049】
[曲げ弾性率、最大曲げ応力]
離型剤を塗布したガラス板とガラス板との間にCOF封止用樹脂組成物を挟み、150℃、60分で350μmのシート状に硬化させ、万能試験機((株)島津製作所製 AG−I)を用いて室温での曲げ弾性率、最大曲げ応力を求める。
なお、n=3で測定し、平均値を検査値とする。
また、試験片の膜厚及び幅は、5点測定し、平均値を計算値に用いる。
(測定温度:15〜30℃)
【0050】
[シェア強度]
FR−4上にCOF封止用樹脂組成物を約0.5mgポッティングし、この上に2mm□シリコンチップを載せ、レベリング性評価に記載したのとの同じ硬化条件で硬化させる。このようにして得られた試験片について、初期シェア強度、および、PCT(120℃/湿度100%/2atmの槽)で20Hrに置いた後、室温で30min放置した後のシェア強度を、卓上型強度測定機(アイコーエンジニアリング(株)製 1605HTP)を用いて測定する。
なお、n=5で測定し、平均値を検査値とする。
【0051】
[サーマルサイクル試験]
サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能を確認するため、下記手順でサーマルサイクル試験(−55〜125℃サーマルサイクル)を実施した。
COF型の半導体装置(基板:ポリイミドフィルム、ギャップ:20μm、L/S:15/15μm)のギャップに、ディスペンサを用いてCOF封止用樹脂組成物を120℃で注入した後、150℃で60分加熱硬化させた樹脂封止型半導体装置を−55〜125℃、各30分のヒートサイクルで1000サイクル処理し、顕微鏡を用いて基板越しに基板とCOF封止用樹脂組成物の硬化物との界面における剥離の個数をカウントする。
【0052】
[PCT耐性]
上記の手順で得られた樹脂封止型半導体装置を120℃/湿度100%/2atmの槽に100時間放置した後、顕微鏡を用いて基板越しに基板とCOF封止用樹脂組成物の硬化物との界面における剥離の有無を確認する。剥離が1つも無い場合は(○)とし、剥離が有る場合は(×)とする。
【0053】
[THB信頼性]
基板(ポリイミドフィルム)上に形成された櫛歯型電極(材質:銅の上にスズめっき、パターンピッチ:30μm、L/S=15μm/15μm)の上にCOF封止用樹脂組成物を塗布し、150℃で60分間加熱硬化したものを試験片とする。加熱後の試験片を85℃、湿度85%の槽(エスペック(株)製 SH641)へ入れ、電極間に60Vの直流電圧を印加して,電極間の抵抗を測定する。抵抗が1×108Ω以上で500時間以上持続した場合を、絶縁性良好と見て合格(○)とし、500時間未満の場合を絶縁不良として(×)とする。そして、絶縁性が合格の場合を実使用に支障が無い絶縁性保持特性であると判定する。
【0054】
[1μmろ過性]
目開き1μmのナイロンメッシュ(直径3cm)を用いて吸引ろ過(2000Pa)し、各成分の配合物が50g通過する時間を計測する。120秒以内で通過した場合を(○)とし、120秒以上600秒未満で通過した場合を(△)とし、600秒経過しても通過しない場合を(×)として評価する。
【0055】
【表2】

表中の数値は、剥離箇所の数を示している。
【0056】
【表3】

【0057】
表から明らかなように、COF封止用樹脂組成物全量に対して無機充填剤を10質量%以上含有させることにより、線熱膨張係数が下がり、耐サーマルサイクル性が向上することが確認された。この結果は、COF封止用樹脂組成物全量に対して無機充填剤を10質量%以上含有させることにより、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する機能が発揮されたことを示している。
但し、COF封止用樹脂組成物全量に対して無機充填剤を40質量%含有させた実施例4では、初期から粘度が高く、また増粘倍率も4倍以上となる。また、ギャップへの注入性も90秒以上と著しく悪化していた。
また、比較例2は無機充填剤の平均粒径がフィルタのメッシュサイズよりも大きいため、配合物をろ過することができなかった。
【符号の説明】
【0058】
1:COF封止用樹脂組成物
10:基板
20:ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、および、無機充填剤を含むCOF封止用樹脂組成物の成分を配合した後、メッシュサイズ1μmのフィルタを用いて配合物をろ過することを特徴とするCOF封止用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記無機充填剤が、平均粒径が0.1〜0.7μmで、平均粒径±0.2μmの粒度分布が全体の90%以上である請求項1に記載のCOF封止用樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により得られるCOF封止用樹脂組成物。
【請求項4】
COF封止用樹脂組成物全量に対して無機充填剤を10〜30質量%含有する請求項3に記載のCOF封止用樹脂組成物。
【請求項5】
無機充填剤が非晶質球状シリカである請求項3または4に記載のCOF封止用樹脂組成物。
【請求項6】
硬化剤が酸無水物系硬化剤である請求項3〜5のいずれかに記載のCOF封止用樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−265358(P2010−265358A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116666(P2009−116666)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】