説明

FAAH阻害物質の合成、多形体及び医薬製剤

脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の活性を薬学的に阻害すると、脂肪酸アミドのレベルの上昇につながる。
式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103は、FAAH阻害物質である。本明細書において説明されるものは、式(I)の化合物を調製するための方法、FAAH阻害物質の多形体の特徴付け及びその使用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において記載されるものは、FAAH阻害物質KDS−4103の多形体の合成及び医薬製剤のための方法である。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)は、脂肪酸アミド(FAA)ファミリーの内因性シグナル伝達脂質を加水分解する酵素である。FAAの一般的な分類には、N−アシルエタノールアミン(NAE)及び脂肪酸第一アミド(FAPA)が含まれる。NAEの例は、アナンドアミド(AEA)、パルミトイルエタノールアミド(PEA)及びオレオイルエタノールアミド(OEA)を含む。FAAH活性を薬理学的に阻害することにより、これらの脂肪酸アミドのレベルが上昇する。
【発明の概要】
【0003】
脂肪酸アミド加水分解酵素の活性を阻害する化合物の調製方法、この化合物を含む組成物及びこれらの使用方法が提供される。一実施形態において、本明細書において提供されるものは、式(I):
【0004】
【化1】

のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法であり、この方法は、(a)シクロヘキシルイソシアネートを3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドと、適切な非芳香族系溶媒中のアミン塩基の存在下で反応させる段階と、アルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を単離する段階とを包含する。
【0005】
式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を調製するための方法は、適切な非芳香族系溶媒を含む。幾つかの実施形態において、この適切な非芳香族系溶媒は、アセトニトリル及びエタノールから選択される。特定の実施形態において、この適切な非芳香族系溶媒は、アセトニトリルである。
【0006】
式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を調製するための方法は、アミン塩基を含む。幾つかの実施形態において、このアミン塩基は、第三アミン塩基である。他の実施形態において、このアミン塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン及びトリブチルアミンから選択される。幾つかの他の実施形態において、この第三アミン塩基は、トリエチルアミンである。
【0007】
特定の実施形態において、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法は、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを単離することを含む(段階(b))。幾つかの実施形態において、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルの単離は、濾過を含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、式(I)のアリールカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法は、3−ヒドロキシフェニルボロン酸を、不均一系パラジウム触媒、無機塩基、相間移動触媒及び適切な有機溶媒の存在下において、3−ブロモベンズアミドにより処理することを含む方法によって、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製することを含む。
【0009】
特定の実施形態において、この不均一系パラジウム触媒は、PdCl、Pd(OAc)及びPd(OH)から選択される。他の実施形態において、不均一系パラジウム触媒は、PdClである。特定の実施形態において、無機塩基は、LiCO、NaCO、KCO、CsCO及びNaOHから選択される。幾つかの実施形態において、無機塩基は、KCOである。幾つかの実施形態において、相間移動触媒は、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムである。幾つかの他の実施形態において、相間移動触媒は、nBuNBrである。
【0010】
幾つかの実施形態において、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製するための方法は、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及び水から選択される適切な有機溶媒を含む。幾つかの他の実施形態において、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製するための方法は、エタノールを含む。
【0011】
一実施形態において、本明細書において提供されるものは、化合物KDS−4103
【0012】
【化2】

の結晶形であり、図1に図示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる。別の実施形態において、本明細書において提供されるものは、化合物KDS−4103の結晶形であり、図2に図示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる。
【0013】
経口投与を目的として処方された、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる化合物KDS−4103を含む医薬組成物も提供される。他の実施形態において、本明細書において提供されるものは、経口投与を目的として処方された、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる化合物KDS−4103を含む医薬組成物である。
【0014】
特定の実施形態において、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる化合物KDS−4103を含む医薬組成物は、水溶液状経口投与形態、固形経口投与形態、制御放出製剤、即溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、多粒子(multiparticulate)製剤及び即放型・制御放出型混合製剤から成る群から選択された投与形態に処方される。他の実施形態において、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる化合物KDS−4103を含む医薬組成物は、水溶液状経口投与形態、固形経口投与形態、制御放出製剤、即溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤及び即放型・制御放出型混合製剤から成る群から選択された投与形態に処方される。
【0015】
一実施形態において、本明細書において提供されるものは、哺乳動物におけるKDS−4103のバイオアベイラビリティを改善するための方法であり、この方法は、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の結晶形を哺乳動物に投与することを含む。別の実施形態において、本明細書において提供されるものは、哺乳動物におけるKDS−4103のバイオアベイラビリティを改善するための方法であり、この方法は、哺乳動物に、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の結晶形を投与することを含む。
【0016】
更に本明細書において提供されるものは、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)を阻害することを目的とした経口送達の薬剤を処方するための、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の結晶形の使用である。幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるものは、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)を阻害することを目的とした経口送達の薬剤を処方するための、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の結晶形の使用である。
【0017】
図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の結晶形を含む製品も開示される。一実施形態において、本明細書において提供されるものは、包装材料と、この包装材料内の、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられ、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の活性の阻害に効果的なKDS−4103の結晶形と、この組成物若しくは薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−酸化物、薬学的に活性である代謝産物、薬学的に許容されるプロドラッグ又はこれらの薬学的に許容される溶媒和物が、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の活性を阻害するために使用されていることを示すラベルとを含む製品である。
【0018】
他の実施形態において、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の結晶形を含む製品が開示される。他の実施形態において、本明細書において提供されるものは、包装材料と、この包装材料内の、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられ、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の活性の阻害に効果的なKDS−4103の結晶形と、この化合物若しくは組成物若しくは薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるN−酸化物、薬学的に活性である代謝産物、薬学的に許容されるプロドラッグ又はこれらの薬学的に許容される溶媒和物が、脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)の活性を阻害するために使用されていることを示すラベルとを含む製品である。
【0019】
別の実施形態において、本明細書において提供されるものは、本明細書に記載の方法によって調製された化合物KDS−4103
【0020】
【化3】

の結晶形であり、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる。他の実施形態において、本明細書において提供されるものは、本明細書に記載の方法によって調製された化合物KDS−4103の結晶形であり、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる。
【0021】
特定の実施形態において、本明細書において提供されるものは、図1に示されるようなXRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の多形体であり、約5μm〜約36μmに亘る有効粒径分布を有し、有効粒径は約14μmである。他の実施形態において、本明細書において提供されるものは、図2に示されるようなXRPDパターンによって特徴付けられるKDS−4103の多形体であり、約2μm〜約12μmに亘る有効粒径分布を有し、有効粒径は約6μmである。
【0022】
本明細書に記載の方法及び組成物の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、当業者には、この詳細な説明から本開示の精神及び範囲内における様々な変更及び改変が明らかであることから、詳細な説明及び具体例は、具体的な実施形態を示すものではあるが、説明のために挙げられたにすぎないことを理解すべきである。特許、特許出願及び出版物を含め、本明細書において引用される参考文献は全て、参照により全て本願に組み込まれる。
【0023】
新規の特徴は、特に、付随する請求項に記載されている。本開示の特徴及び利点は、本明細書に記載の原理が利用された説明のための実施形態について述べている以下の詳細な説明並びに添付の図面を参照することにより、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】エタノールから結晶化させたKDS−4103の結晶形のX線粉末回折パターンである。
【図2】アセトニトリルから結晶化させたKDS−4103の結晶形のX線粉末回折パターンである。
【図3】エタノールから結晶化させたKDS−4103の結晶形の粒径分布である。
【図4】アセトニトリルから結晶化させたKDS−4103の結晶形の粒径分布である。
【図5】エタノール及びアセトニトリルから結晶化させたKDS−4103の2つの多形体の、ラットにおける経口バイオアベイラビリティを比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)は、脂肪酸アミド(FAA)ファミリーの内因性シグナル伝達脂質を加水分解する酵素である。FAAの一般的な分類には、N−アシルエタノールアミン(NAE)及び脂肪酸第一アミド(FAPA)が含まれる。NAEの例は、アナンドアミド(AEA)、パルミトイルエタノールアミド(PEA)及びオレオイルエタノールアミド(OEA)を含む。FAPAの例は、9−Z−オクタデセンアミド又はオレアミドを含む(McKinney MK, Cravatt BF. 2005. Annu Rev Biochem 74:411‐32)。
FAAH酵素活性の阻害により効果が得られ得る疾患、障害、症候群及び/又は病的状態は、例えば、アルツハイマー病、統合失調症、欝、アルコール依存症、依存症、自殺、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、嘔吐、流産、胚着床、内毒素ショック、肝硬変、アテローム性動脈硬化症、癌、外傷性頭部損傷、緑内障及び骨セメント注入症候群(bone cement implantation syndrome)を含む。FAAH活性の阻害により効果が得られ得る他の疾患、障害、症候群及び/又は病的状態は、例えば、多発性硬化症、網膜炎、筋萎縮性側索硬化症、免疫不全ウィルス誘発性脳炎(immunodeficiency virus−induced encephalitis)、注意欠陥多動性障害、疼痛、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、非炎症性疼痛、有痛性出血性膀胱炎、肥満、脂質異常症、代謝性疾患、摂食及び絶食、食欲の変化、ストレス、記憶、加齢、高血圧、敗血症、心原性ショック、腸炎及び腸運動、過敏性腸症候群、大腸炎、下痢、回腸炎、虚血、脳虚血、肝虚血、心筋梗塞、脳興奮毒性、発作、熱性痙攣、神経毒性、神経障害、睡眠、睡眠誘発、過眠、不眠並びに炎症性疾患を含む。
【0026】
カルバミン酸エステルは、選択的FAAH阻害物質として有望であることが判明している(Kathuria et al., Nat. Med. 2003, 9:76−81)。特に、例えば、本明細書において開示される式(I)の化合物等の一連のアルキルカルバミン酸アリールエステルは、FAAH活性に対して強力で選択的な阻害物質であると判明している。Morら(J. Med. Chem. 2004, 47:4998−5008;参照により組み込まれる)及びPiomelliら(International Patent Publication No. WO2004/033422。参照により組み込まれる)は、FAAH活性の強力な阻害物質である式(I)の代表的なアルキルカルバミン酸アリールエステルを開示したが、この物質は、選択されたセリン加水分解酵素又はカンナビノイド受容体とはそれほど相互作用しない。開示された式(I)のアルキルカルバミン酸エステルの中でも、化合物シクロヘキシルカルバミン酸3´−カルバモイルビフェニル−3−イルエステル(5´−カルバモイルビフェニル−3−イルシクロヘキシルカルバメート、UCM597及びURB597としても知られる。本明細書においては化合物KDS−4103として言及される)は、FAAH活性の強力で選択的な阻害物質として確認された。
【0027】
KDS−4103は、以下の構造:
【0028】
【化4】

を有している。
【0029】
KDS−4103は、分子量338.4を有し、室温では白色の結晶状の固形物である。
【0030】
Morら及びPiomelliらは、例えばKDS−4103等の式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法を開示しており、この方法は、例えばトルエン等の毒性溶媒を利用し、例えば、均一系ホスフィン含有パラジウム触媒等の空気に敏感な試薬を利用し、例えばカラムクロマトグラフィ及び再結晶等の広範に亘る精製プロトコルを必要とし及び所望のアルキルカルバミン酸アリールエステル生成物の収率は低い(〜30%)。Morら及びPiomelliらが開示の方法において利用される均一系パラジウム触媒の使用により、最終的な活性治療用化合物がパラジウム種及び/又はホスフィン種によって汚染されることが懸念事項である。Morら及びPiomelliらによって記載の方法は、生成物が汚染される可能性、有害な溶媒の使用、カラムクロマトグラフィの必要性、反応効率の低さ及び合成方法の全体としての収率の低さから、工業規模には適用できない。
【0031】
ヒト等の哺乳類に投与できる治療薬は、以下の厳格な規制ガイドラインによって調製されなくてはならない。このような政府によって規制されたガイドラインは、医薬品適正製造基準(Good Manufacturing Practice:GMP)と称されている。GMPガイドラインは、例えば最終生成物における残留溶媒の量等の、活性治療薬の許容される汚染レベルの概要を示している。好ましい溶媒は、GMP設備内における使用に適し及び工業的安全性に対しての懸念に相反しないものである。溶媒のカテゴリは、例えば、日米EU医薬品規制調和国際会議(the International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use: ICH)の“不純物:残留溶媒についてのガイドライン(Impurities:Guidelines for Residual Solvents)”Q3C(R3)(2005年11月)において定義されている。
【0032】
溶媒は、3つのクラスに分類される。クラス1溶媒は毒性であり、使用が回避されるべきである。クラス2溶媒は、治療薬の製造中の使用が制限されるべき溶媒である。クラス3溶媒は、低毒性の溶媒である。
【0033】
使用が回避されるべきクラス1溶媒は、ベンゼン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン及び1,1,1−トリクロロエタンを含む。
【0034】
クラス2溶媒の例は、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2−メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N−メチルピロリジン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2−トリクロロエテン及びキシレンを含む。
【0035】
低毒性を有するクラス3溶媒は、酢酸、アセトン、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアセテート、tert−ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3−メチル−1−ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピル及びテトラヒドロフランを含む。
【0036】
Morら及びPiomelliらによって開示の方法は、アルキルカルバミン酸アリールエステルの調製の最終段階において、トルエン(ヒトに使用する医薬品を調製するための合成法の最終段階において望ましくないクラス2溶媒)を用いている。その上、Morら及びPiomelliらによって記載の方法は、アルキルカルバミン酸アリールエステルを低収率にて提供する。例えば、KDS−4103は、Morら及びPiomelliらによって開示の方法によって、収率約30%にて調製された。トルエンが溶媒として使用され、化合物KDS−4103を高純度で得るためにカラムクロマトグラフィが必要とされた。
【0037】
式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステル(例えば、KDS−4103等)の治療的な重要性により、有毒な溶媒、副生成物及び/又は試薬による最終生成物の汚染を回避し、方法全体の効率を上昇させ、それゆえに工業規模での治療薬及び/又は組成物の調製が可能な合成方法が求められている。
【0038】
本明細書において説明されるものは、有害な溶媒の使用を回避し、有毒な溶媒、副生成物及び/又は試薬による最終生成物の汚染を最小限に抑える、式(I)のKDS−4103を調製するための方法である。本明細書において説明されるものは、高い収率にて式(I)のKDS−4103を調製するための方法であり、カラムクロマトグラフィ等の時間がかかり高コストの精製方法の必要性を回避している。本明細書において説明されるものは、高い収率にてKDS−4103を調製するための方法であり、この方法は、有害な溶媒の使用を回避しており、無酸素反応条件を必要とせず、副生成物の生成及び/又は汚染物質を最小限に抑え又は排除し及びこのクラスの治療用化合物の調製に利用される合成方法全体の効率を上昇させる。KDS−4103を調製するための、本明細書において説明される方法は、カラムクロマトグラフィを必要とせず、従来の合成プロトコルよりも経口バイオアベイラビリティを上昇させる化合物の結晶形を提供する。本明細書において開示される方法は、操作が簡単であり、費用効果があり、再結晶化又はカラムクロマトグラフィによる反応生成物の精製を必要とせず及び最終生成物の収率を改善する。
【0039】
本明細書において説明されるものは、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルであるKDS−4103を、工業規模(数キログラム規模等)で調製するための方法である。本明細書において説明されるものは、KDS−4103多形体を工業規模で調製するための方法である。本明細書において説明されるものは、改良された経口バイオアベイラビリティを有するKDS−4103多形体を高い収率にて調製するための方法である。本明細書において説明されるものは、狭い有効粒径分布にてKDS−4103を調製するための方法である。一実施形態において、本明細書において開示される方法は、改善された有効粒径分布にてKDS−4103を調製することを含む。本明細書において説明されるものは、KDS−4103の有効平均粒径分布を改善するための方法である。本明細書において説明されるものは、式(I)の化合物であるKDS−4103の経口バイオアベイラビリティを上昇させるための方法である。本明細書において開示されるようなKDS−4103の多形体を含む組成物も提供される。本明細書において開示されるような方法によって調製された式(I)の化合物KDS−4103を含む組成物も提供される。上昇した経口バイオアベイラビリティを有する化合物KDS−4103の多形体も提供される。
【0040】
開示された方法により、カルバメート誘導体KDS−4103をより高い収率で調製することが可能になり、反応生成物を精製する必要性が排除される。この方法により、式(I)のシクロアルキルカルバメート誘導体KDS−4103を、より高い収率、穏やかな反応条件下、より低コスト、より少ない副生成物にて調製することが可能になる。本明細書において開示される方法は、治療用の医薬品の大規模な化学的生産に特に適用できる。
【0041】
本明細書に記載されるものは、式(I)
【0042】
【化5】

のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法であり、(a)シクロヘキシルイソシアネートを3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドと、適切な非芳香族系溶媒中のアミン塩基の存在下で反応させる段階と、(b)式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを単離する段階を含む。
【0043】
式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を調製するための方法は、適切な非芳香族系溶媒を含む。幾つかの実施形態において、この適切な非芳香族系溶媒は、アセトニトリル及びエタノールから選択される。幾つかの他の実施形態において、この適切な非芳香族系溶媒は、エタノールである。特定の実施形態において、この適切な非芳香族系溶媒は、アセトニトリルである。
【0044】
式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステル、例えばKDS−4103を調製するための方法は、アミン塩基を含む。幾つかの実施形態において、このアミン塩基は、第三アミン塩基である。他の実施形態において、このアミン塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン及びトリブチルアミンから選択される。幾つかの他の実施形態において、このアミン塩基は、トリエチルアミンである。幾つかの他の実施形態において、この第三アミン塩基は、トリエチルアミンである。
【0045】
特定の実施形態において、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法は、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを単離することを含む(段階(b))。幾つかの実施形態において、化合物KDS−4103の単離は、濾過を含む。
【0046】
一実施形態において、KDS−4103は、反応式Iにおいて概要がまとめられている方法によって調製される。
【0047】
【化6】

【0048】
反応式1は、高収率、高純度にて、カラムクロマトグラフィを必要とすることなくKDS−4103を調製するための方法の概要をまとめている。アルキルカルバミン酸アリールエステルは、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミド(4)をシクロヘキシルイソシアネート(5)により、適切な溶媒中(アセトニトリル又はエタノール等)のトリエチルアミンの存在下で処理することにより調製される。この反応は、室温にて行われ、化合物KDS−4103は86%を越える収率にて得られる。これらの反応条件下で、アルキルカルバミン酸アリールエステル生成物KDS−4103は、反応過程中に、反応混合物から沈殿する。アルキルカルバミン酸アリールエステルは、濾過により、高収率及び高純度にて、カラムクロマトグラフィを必要とすることなく単離される。この方法により、カラムクロマトグラフィ又は再結晶化を必要とすることなく生成物は結晶形で得られ、この生成物は、例えば有効粒径及び上昇した経口バイオアベイラビリティ等の好適な特性を有している。一実施形態において、アルキルカルバミン酸アリールエステルは、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミド(4)を、シクロヘキシルイソシアネート(5)により、溶媒としてのアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で処理することにより調製される。別の実施形態において、アルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103は、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミド(4)を、シクロヘキシルイソシアネート(5)により、溶媒としてのエタノール中のトリエチルアミンの存在下で処理することにより調製される。一実施形態において、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103は、アセトニトリル又はエタノールから結晶化される。
【0049】
アルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を調製するための本明細書において開示される方法は、アルキルカルバミン酸アリールエステル(例えば、KDS−4103等)の調製に通常用いられる方法とは対照をなす(Morら及びPiomelliらを参照すること)。Morら及びPiomelliらは、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法を開示しており、この方法において、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミド(4)は、シクロヘキシルイソシアネート(5)によって、還流するトルエン中のトリエチルアミンの存在下で処理される。Morら及びPiomelliらによって開示の方法を用いると、低収率のアルキルカルバミン酸アリールエステル生成物が得られる。KDS−4103は、収率約30%で調製され、精製段階においてカラムクロマトグラフィが必要とされる。式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を調製するための本明細書において開示される方法は、この治療用化合物を工業規模及び実験室規模で調製するための、効率的で、費用効率が良く、生産規模の拡大が可能で安全な方法の必要性を満たしている。
【0050】
幾つかの実施形態において、式(I)のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法は、3−ヒドロキシフェニルボロン酸を、3−ブロモベンズアミドにより、不均一系パラジウム触媒、無機塩基、相間移動触媒及び適切な有機溶媒の存在下で処理することを含む方法によって3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製することを含む。
【0051】
特定の実施形態において、この不均一系パラジウム触媒は、PdCl、Pd(OAc)及びPd(OH)から選択される。他の実施形態において、不均一系パラジウム触媒は、PdClである。特定の実施形態において、無機塩基は、LiCO、NaCO、KCO、CsCO及びNaOHから選択される。幾つかの実施形態において、無機塩基は、KCOである。幾つかの実施形態において、相間移動触媒は、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムである。幾つかの他の実施形態において、相間移動触媒は、nBuNBrである。
【0052】
幾つかの実施形態において、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製するための方法は、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及び水から選択される適切な有機溶媒を含む。幾つかの他の実施形態において、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製するための方法は、エタノールを含む。
【0053】
一実施形態において、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドは、反応式2において概要がまとめられている方法によって調製できる。
【0054】
【化7】

【0055】
3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドは、遷移金属クロスカップリング反応を利用することにより調製される。3−ヒドロキシフェニルボロン酸(3)等のフェニルボロン酸を3−ブロモベンズアミド(2)等のハロフェニルと、例えば不均一系パラジウム触媒等の不均一系遷移金属触媒の存在下でカップリングさせると、化合物(4)が86%を越える収率にて得られる。
【0056】
Morら及びPiomelliら(上記を参照のこと)は、混合溶媒系中(トルエン/エタノール)において、無酸素雰囲気下で、フェニルボロン酸、ハロフェニル、均一系パラジウム触媒(テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム)及び塩基水溶液(NaCO)を利用する方法によって3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドを調製することを開示している。所望の3−フェニルフェノール生成物を得るためには、長い反応時間及び高い反応温度が必要とされる。Morら及びPiomelliらによって開示の方法は、3−メトキシフェニルボロン酸をクロスカップリング反応において用いており、メトキシ部分の脱保護及び3−フェニルフェノール生成物の精製の追加工程を加えている。これにより、この方法の全体的な効率が低下する。均一系パラジウム触媒の使用は、重金属触媒のキャリーオーバにつながり、医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredients: API)の調製に容認されない。加えて、均一系パラジウム・ホスフィン触媒を用いた場合によく起こるトリフェニルホスフィンリガンドの解離は、ホスフィン酸化物の生成につながるため、所望の3−フェニルフェノール生成物の単離が困難になり、カラムクロマトグラフィが必要となる。また、均一系パラジウム触媒は、空気安定性が不良であり、厳しい無酸素反応条件の使用を必要とする。
【0057】
本明細書において提供されるものは、加熱を必要とせず、均一系パラジウム触媒の使用を回避し、ホスフィン含有触媒の使用を回避し、無酸素反応条件を必要とせず、高収率の所望の3−フェニルフェノールを提供し及びカラムクロマトグラフィの使用を回避する3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドの調製方法である。3−ブロモベンズアミド(2)の3−ヒドロキシフェニルボロン酸(3)による、エタノール中の不均一系ホスフィン非含有パラジウム触媒(二塩化パラジウム等)、相間移動触媒(ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム等)、無機塩基(炭酸カリウム等)の存在下での処理により、86%を超える高収率にて生成物が得られる。
【0058】
本明細書において開示される方法は、大規模な化学製品製造に適している。不均一系ホスフィン非含有パラジウム触媒の使用により、室温での有機溶媒(アセトニトリル又はエタノール等)中における反応が可能となり、無酸素系の必要性が回避され及び方法が大幅に改善される。パラジウム触媒は不均一系であることから、遷移金属種による3−フェニルフェノール生成物の汚染は、劇的に低減される又は完全になくなる。反応の完了後、反応混合物を濾過し、溶媒を除去すると、カラムクロマトグラフィを必要とすることなく、所望の生成物が高純度で得られる。
【0059】
特定の実施形態において、3−ブロモベンズアミドは、反応式3において概要がまとめられている方法によって調製される。
【0060】
【化8】

【0061】
3−ブロモベンズアミド(2)は、3−ブロモベンゾニトリル(1)のNaBO−4HOによる部分加水分解によって、収率80%にて調製される。或いは、3−ブロモベンズアミド(2)は、3−ブロモベンゾニトリル(1)を、過酸化水素(水中の30%溶液)により、水酸化ナトリウム及び溶媒としてのメタノールの存在下で処理することによって、収率90%にて調製できる。この反応は、規模を拡大することができ、生成物は、高純度及び高収率にて得られ、カラムクロマトグラフィを必要としない。
一実施形態において、本明細書において提供されるものは、化合物KDS−4103の結晶形であり、
【0062】
【化9】

【0063】
この化合物KDS−4103の結晶形は、図1に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる。別の実施形態において、本明細書において提供されるものは、化合物KDS−4103の結晶形であり、図2に示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる。
【0064】
医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体(活性化合物を薬学的に使用できる調合物に加工することを促進する賦形剤及び助剤を含む)を用いて、慣用のやり方で処方され得る。適切な製剤設計は、選択された投与経路に依存する。どの周知の技法、担体及び賦形剤も、当該分野において適切とされ及び理解されるように用いられ得る。本明細書において記載される医薬組成物の概要は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.:Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見い出し得、参照により全て本明細書に組み込まれる。
【0065】
本明細書において提供されるものは、KDS−4103及び薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物である。
【0066】
本明細書で用いられている用語“医薬組成物(pharmaceutical composition)”は、KDS−4103と他の化学成分(担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤及び/又は賦形剤等)との混合物について言及している。この医薬組成物は、化合物の生物への投与を促進するものである。本明細書において提供される治療方法又は使用法を実践するにあたり、治療的有効量の本明細書に記載の化合物は、医薬組成物の形で、治療対象である疾患、障害又は病的状態を有する哺乳動物に投与される。好ましくは、この哺乳動物は、ヒトである。治療的有効量は、疾患の重篤度、被験体の年齢及び相対的な健康度、使用される化合物の力価及び他の要因に応じて、非常に広い範囲に亘って異なり得る。化合物は、単体又は混合物の成分としての1つ以上の治療薬と組み合わせて使用できる。
【0067】
医薬組成物は、有効成分としての少なくともKDS−4103を、遊離酸若しくは遊離塩基の形態又は薬学的に許容される塩の形態で含む。
【0068】
本明細書において使用されている、製剤、組成又は成分に関しての用語“許容される(acceptalbe)”は、治療対象の被験体の健康全般に、持続的な悪影響を有していないことを意味している。
【0069】
本明細書において使用されている“薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)”という表現は、化合物の生物活性又は特性を阻害せず、比較的無毒である材料(担体又は希釈剤等)について言及しており、つまり材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく又はその材料が含まれるところの組成物の成分のいずれとも悪影響を与える形で相互作用せずに、個体に投与し得る。
【0070】
“バイオアベイラビリティ”という用語は、研究下にある動物又はヒトの全身循環に送達される、投与された本明細書において開示の化合物(KDS−4103等)の重量の割合について言及している。静脈内投与された場合の薬剤の総曝露量(AUC(0−∞))は、通常、100%バイオアベイラブル(F%)であると定義される。“経口バイオアベイラビリティ”という用語は、静脈注射と比較した場合の、医薬組成物が経口で摂取された際に、本明細書において開示された化合物(KDS−4103等)が全身循環に吸収される程度について言及している。
【0071】
“血漿濃度(Blood plasma concentration)”という用語は、本明細書において開示された化合物(KDS−4103等)の被験体の血液の血漿成分中における濃度について言及している。KDS−4103の血漿濃度は、代謝及び/又は他の治療薬との考えられ得る相互作用に関連した多様性により、被験体間で非常に大きく異なり得ることが理解される。本発明の一態様において、KDS−4103の血漿濃度は、被験体によって異なり得る。同様に、最高血漿濃度(C最高)若しくは最高血漿濃に到達するまでの時間(T最高)又はプラズマ濃度時間曲線下総面積(total area under the plasma concentration time curve)(AUC(0−∞))等の値は、被験体毎に異なり得る。この多様性により、KDS−4103の“治療的有効量”を構成するのに必要な量は、被験体毎に異なり得る。
【0072】
用語“薬剤吸収(drug absorption)”又は“吸収(absorption)”は、通常、薬剤が、薬剤投与部位から障壁を越えて血管又は作用部位に移動する過程について言及しており、例えば、消化管から門脈又はリンパ系内に移動する薬剤である。
【0073】
本明細書において使用されている“有効粒径(effective particle size)”という用語は、当業者に周知の慣用の粒径測定技法によって測定される体積重量平均粒径について言及している及び基づいて求められる。このような技法は、例えば、沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱法、レーザ回折及びディスク遠心分離を含む。本明細書に記載される組成物、製剤及び方法のために、有効粒径は、光散乱法を用いて求められる(例えば、Horiba LA−950)体積質量平均粒径である。例えば、有効粒径5.9μmは、粒子の50%(重量基準)が、5.9μm未満であり、粒子の50%(重量基準)が、5.9μmより大きいことを意味している。
【0074】
本明細書に記載されるKDS−4103を含む製剤は、結晶形態で存在するKDS−4103粒子を含み、KDS−4103粒子は、約17.0μm未満の平均有効粒径、約15.0μm未満の有効平均粒径、約13.0μm未満の有効平均粒径、約11.0μm未満の有効平均粒径、約7.0μm未満の有効平均粒径、約6.0μm未満の有効平均粒径、約5.0μm未満の有効平均粒径又は約4.0μm未満の有効平均粒径を有している。
【0075】
“約6.0μm未満の有効平均粒径”という表現により、KDS−4103粒子の少なくとも50%(重量基準)が、上記又は当該分野において既知の技法によって測定した場合に、約6.0μm未満の粒径を有していることが意味される。他の実施形態において、KDS−4103粒子の少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%(重量基準)は、有効平均粒径より小さい粒径、つまり約6.0μm未満、約5.0μm未満、約4.0μm未満、約3.0μm未満又は約2.0μm未満を有している。一実施形態において、KDS−4103の粒子は、粒子の90%(重量基準)が約2.2μm〜約12.2μmの有効粒径(重量基準)を有している粒径分布を有している。別の実施形態において、KDS−4103の粒子は、粒子の80%(重量基準)が約2.2μm〜約12.2μmの有効粒径(重量基準)を有している粒径分布を有している。
【0076】
本明細書において記載される組成物は、いずれの慣用の手段(経口、非経口(例えば、静脈内、皮下又は筋肉内)、口腔内、鼻腔内、直腸又は経皮投与経路を含むが、これらに限定されない)を介しても、被験体への投与用に処方でき得る。本明細書において使用される“被験体(subject)”という用語は、動物、好ましくは哺乳類(ヒト又はヒト以外を含む)を意味するために用いられている。患者及び被験体という用語は、互換的に使用され得る。
【0077】
更に、KDS−4103を含む本明細書に記載される医薬組成物は、いずれの適切な投与形態にも処方でき得、治療対象の患者による経口摂取の場合は経口分散水溶液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液等、固形経口投与形態、エアロゾル、制御放出製剤、即溶性製剤、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末、丸薬、糖衣錠、カプセル、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤及び即放型・制御放出型混合製剤を含むが、これらに限定されない。
【0078】
多様な実施形態において、KDS−4103の粒子及び1つ以上の賦形剤は、ドライブレンドされ及び経口投与から約30分未満、約35分未満、約40分未満、約45分未満、約50分未満、約55分未満又は約60分未満内に実質的に崩壊して、処方物を胃腸液中に放出する医薬組成物が得られるに十分な硬度を有する塊(錠剤等)に圧縮される。
【0079】
本明細書において提供される組成物は、式(I)の化合物KDS−4103を含む。特定の実施形態において、本明細書において提供される組成物は、図1に図示されるようなXRPDパターン及び約1.1μm〜約89.3μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約13.9μmである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約80%は、図1に図示されるようなXRPDパターン及び約5.0μm〜約35.5μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約13.9μmである。他の実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約60%は、図1に図示されるようなXRPDパターン及び約7.0μm〜約28.2μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約13.9μmである。他の実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約40%は、図1に図示されるようなXRPDパターン及び約10.0μm〜約22.4μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約13.9μmである。他の実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約20%は、図1に図示されるようなXRPDパターン及び約11.2μm〜約17.8μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約13.9μmである。他の実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約10%は、図1に図示されるようなXRPDパターン及び約12.6μm〜約15.8μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約13.9μmである。
【0080】
特定の実施形態において、本明細書において提供される組成物は、図2に図示されるようなXRPDパターン及び約0.5μm〜約31.6μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約5.9μmである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約80%は、図2に図示されるようなXRPDパターン及び約2.5μm〜約12.8μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約5.9μmである。他の実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約60%は、図2に図示されるようなXRPDパターン及び約3.5μm〜約10.0μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約5.9μmである。幾つかの他の実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約40%は、図2に図示されるようなXRPDパターン及び約4.4μm〜約8.9μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約5.9μmである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約20%は、図2に図示されるようなXRPDパターン及び約5.0μm〜約7.0μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約5.9μmである。幾つかの実施形態において、本明細書において提供される組成物中の粒子の約10%は、図2に図示されるようなXRPDパターン及び約5.6μm〜約6.3μmの粒径分布を有するKDS−4103の粒子を含み、有効平均粒径は約5.9μmである。
【0081】
特定の実施形態において、本明細書において提供される組成物は、約10.0μm未満、約9.0μm未満、約8.0μm未満、約7.0μm未満、約6.0μm未満、約5.0μm未満、約4.0μm未満又は約3.0μm未満の有効平均粒径を有するKDS−4103の粒子を含む。
【実施例】
【0082】
当業者は、以下に挙げた説明のための非限定的な実施例を検討することにより、本発明の開示の様々な態様及び利点を更に正しく認識し得る。
【0083】
実施例1:過ホウ酸ナトリウムを用いた3−ブロモベンズアミドの合成
2リットルの丸底フラスコに、3−ブロモベンゾニトリル(138g、0.76mol、1当量)、続いて1,4−ジオキサン(830mL)、水(830mL)及び過ホウ酸ナトリウム四水和物(322g、2.1mol、2.75当量)が加えられた。この反応混合物は、80℃まで16時間に亘って加熱された。透明な溶液は、室温まで冷却され、水(4L)で希釈された。水の添加中に所望の生成物が沈殿し、沈殿物を濾過し、高真空下で乾燥させると、白色の固形物としての生成物(1117.52g、0.59mol)が得られた。濾液は、0℃にまで冷却され、0℃にて一晩保存された。濾過により、2回目の生成物が回収された(12.2g、0.06mol)。3−ブロモベンズアミドは、白色の結晶状固形物として得られた(129.7g、0.65mol、86%)。
【0084】
実施例2:過酸化水素を用いた3−ブロモベンズアミドの合成
5Lの三つ口丸底フラスコに、水(900mL)、次にNaOH(66g、1.65mol、1当量)及びMeOH(900mL)が加えられた。この反応混合物は、約0〜10℃にまで冷却され、3−ブロモベンゾニトリル(300g、1.65mol)が添加された。反応混合物は激しく攪拌され、H(水中において30%、500mL、82.45mol、2.4当量)が添加された。添加速度を調節して、反応温度を25℃未満に維持した。過酸化水素の添加が完了したら、反応混合物を、2時間に亘って10℃にて攪拌した。次に、反応混合物を室温にまで温め、更に16〜18時間に亘って攪拌した。反応混合物を濾過し、濾過ケーキを水(3x500mL)で洗浄した。生成物を真空下で40〜45℃にて乾燥させて、白色の固形物(302.04g、0.151mol、92%)を得た。
【0085】
実施例3:実験室規模での3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドの合成
5Lの三つ口丸底フラスコに、3−ブロモベンズアミド(128.29g、0.64mol)、EtOH(1274mL)、PdCl(0.588g、3.3mmol、0.005当量)、3−ヒドロキシフェニルボロン酸(93g、0.67mol、1.05当量)、KCO(177g、1.28mol、2当量)及びnBuNBr(10.3g、0.032mol、0.05当量)が充填された。この反応混合物は、室温にて約16時間に亘って攪拌された。反応終了後、pHが1〜2に到達するまで、10%HCl水溶液を反応混合物に添加した。反応混合物を、EtOAcで抽出した。有機相を合わせ、セライト(celite)に通して濾過した。次に、有機溶媒を真空下で除去することにより、オレンジ色の固形物を得た。この固形物をアセトン(200〜300mL)に溶解させ、水(1700mL)を添加した。この反応混合物は、1時間に亘って約5〜10℃にて攪拌された。生成物を、濾過により白色の固形物として回収し、真空下で40〜45℃にて乾燥させた(132.9g、0.62mol、98%)。
【0086】
実施例4:工業規模での3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドの合成
50Lの反応装置に、3−ヒドロキシフェニルボロン酸(1.776kg、12.88mol、1.05当量)、3−ブロモベンズアミド(2.453kg、12.26mol、1.0当量)、臭化テトラブチルアンモニウム(0.198kg、0.61mol、0.05当量)、PdCl(0.011kg、0.061mol、0.005当量)及びEtOH(9.689kg)が充填された。20〜25℃のこの反応混合物に、緩やかに攪拌しながら、EtOH(4.84kg)中のKCOのスラリー(3.390kg、24.53mol、2当量)が添加された。KCOの入った容器をEtOH(4.84kg)ですすぎ、すすぎ水を反応容器に流し込んだ。反応混合物は、20〜25℃にて約3〜5時間に亘って攪拌され、薄層クロマトグラフィ(TLC)(ヘキサン:EtOAc=6:4)により監視した。反応が完了したと判断された後、pHが1〜2に到達するまで、10%HCl水溶液が反応混合物に添加された。更に10%HCl水溶液を添加すると、最終pHが1未満となった。この溶液は、約35分に亘って20〜25℃にて振盪された。約12リットルの溶液を抜きとり、取り除いた。残った反応混合物を、EtOAcで希釈し、水で洗浄した(溶液1mLあたり0.17mlのEtOAcが添加された。溶液1mLあたり0.294mLの水)。有機相を合わせて、真空下で濃縮した。有機相の体積が約9Lにまで減少したら、混合物を反応装置に移して、32Lの水を加えた。混合物の温度は0〜5℃に調節され、混合物は、30分に亘って振盪された。この混合物から沈殿した生成物を濾過した。濾過ケーキを、反応装置からの水で洗浄し、周囲温度にて約18時間に亘って乾燥させると、2.212kg(85%)の白色の固形物が得られた。
【0087】
実施例5:実験室規模でのエタノール中におけるKDS−4103の合成
エタノール(1329mL)中の3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミド(132.9g、0.62mol)の攪拌懸濁液に、トリエチルアミン(TEA)(95.6mL、0.69mol、1.1当量)及びシクロヘキシルイソシアネート(79.7ml、0.62mol、1.0当量)が添加された。この反応混合物は、室温にて約16時間に亘って攪拌された。追加のシクロヘキシルイソシアネート(23.9mL、0.18mol、0.2当量)が、この反応混合物に添加された。反応混合物は、更に16時間に亘って攪拌された。生成物は、氷浴による反応混合物の冷却及び濾過により単離された。濾過ケーキは、冷たいEtOH(300mL)で洗浄された。25〜30℃での乾燥後、白色の結晶状固形物が得られた(187.7g、0.55mol、89%)。結晶状の生成物は、X線粉末回折によって特徴付けられ、X線粉末回折XRPDパターンは、図1に示されている。
【0088】
実施例6:実験室規模でのアセトニトリル中におけるKDS−4103の合成
有機溶媒としてEtOHの代わりにアセトニトリルが用いられたということ以外、実施例5に関して述べられた反応条件が用いられた。生成物は、80〜89%の収率にて得られた。結晶状の生成物は、X線粉末回折によって特徴づけられ、X線粉末回折XRPDパターンは、図2に示されている。
【0089】
実施例7:工業規模でのエタノール中におけるKDS−4103の合成
50Lの反応装置に、3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミド(2.202kg、10.33mol、1.0当量)、EtOH(17.45kg)、トリエチルアミン(1.358kg、13.42mol、1.3当量)及びシクロヘキシルイソシアネート(1.68kg、13.42mol、1.3当量)が充填された。この反応内容物は、20〜25℃にて約4時間に亘って、振盪下で攪拌された。生成物は、反応混合物を0〜5℃にまで約1時間に亘って冷却し、濾過することによって単離された。濾過ケーキを、窒素ガスを用いて、周囲温度にて約16時間に亘って乾燥させた。次に、生成物を、EtOH(8.7kg)を用いて0〜5℃にて最低でも10分に亘ってトリチュレート(triturate)し、次に濾過した。固形物は、冷たいEtOH(5.265kg)で洗浄された。生成物を30℃にて約20時間に亘って乾燥させると、2.996kgの白色の固形物(86%)が得られた。
【0090】
実施例8:エタノールからのKDS−4103の再結晶化
KDS−4103は、十分な量のエタノール中に懸濁させられ、溶解するまで加熱された。この溶液を、室温にまでゆっくり冷却し、次に0〜5℃にまで冷却した。白色の沈殿物が濾過され、沈殿物は、冷たいEtOHで洗浄された。生成物を、30℃にて約20時間に亘って乾燥させた。再結晶化されたKDS−4103は、図1に図示されたものと同じXRPDパターンを有していた。
【0091】
実施例9:アセトニトリルからのKDS−4103の再結晶化
KDS−4103は、十分な量のアセトニトリル中に懸濁させられ、溶解するまで加熱された。この溶液を、室温にまでゆっくり冷却し、次に0〜5℃にまで冷却した。白色の沈殿物が濾過され、沈殿物は、冷たいアセトニトリルで洗浄された。生成物を、30℃にて約20時間に亘って乾燥させた。再結晶化されたKDS−4103は、図2に図示されたものと同じXRPDパターンを有していた。
【0092】
実施例10:エタノールから得たKDS−4103のX線粉末回折XRPDパターンの測定
実施例5若しくは実施例7の反応から調製された又はエタノール中におけるKDS−4103の再結晶化により調製されたKDS−4103の結晶形は、X線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられた。このパターンは、本明細書において開示のKDS−4103の多形体の特徴付けにおいて有用である。
【0093】
試料は、深くて大きいアルミニウム製サンプルホルダ内において、通常のフロントパッキング技法によって準備され、50kV/35mAにて作動するシーメンス・D5000・ディフラクトメータシステム(Siemens D5000 Diffractometer System)による分析にかけられた。高出力の線状焦点Cu−Kα−ソースは、ケベックス固体検出装置(solid state Kevex detector)と組み合わせて用いられた。実験データは、2.0°〜35°(2シータ)の範囲内でステップ走査モード(ss:0.02/t:1.8s)で集められた。得られたデータは、ディフラクプラス(商標)・ソフトウェア(DiffracPlusTM Software)によって処理された。XRPDデータは、図1に図示され、表1に一覧表示されている。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例11:アセトニトリルから得たKDS−4103のX線粉末回折XRPDパターンの測定
実施例6の反応から調製された又はアセトニトリル中におけるKDS−4103の再結晶化により調製されたKDS−4103の結晶形は、X線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられた。このパターンは、本明細書において開示のKDS−4103の多形体を特徴付けるにおいて有用である。
【0096】
試料は、深くて大きいアルミニウム製サンプルホルダ内において、通常のフロントパッキング技法によって準備され、50kV/35mAにて作動するシーメンス・D5000・ディフラクトメータシステム(Siemens D5000 Diffractometer System)による分析にかけられた。高出力の線状焦点Cu−Kα−ソースは、ケベックス固体検出装置(solid state Kevex detector)と組み合わせて用いられた。実験データは、2.0°〜35°(2シータ)の範囲内でステップ走査モード(ss:0.02/t:1.8s)で集められた。得られたデータは、ディフラクプラス(商標)・ソフトウェア(DiffracPlusTM Software)によって処理された。XRPDデータは、図2に図示され、表2に一覧表示されている。
【0097】
【表2】

【0098】
実施例12:EtOHから得たKDS−4103多形体の粒径測定
KDS−4103の多形体の粒径測定は、マルバーン・マスターサイザー2000・ハイドロ・エス・システム(Malvern Mastersizer2000 Hydro S system)を用いて行われた。KDS−4103は、ヘキサン中に分散させられ、1分の超音波処理(47kHz)、掃引10000回が行われた。エタノールから結晶化させられたKDS−4103は、図3に図示されるような粒子分布を有していた。エタノールから得たKDS−4103の結晶状粒子は、約1.1μm〜約89.3μmの粒子分布を有しており、平均有効平均粒径は約13.9μmであった。
【0099】
実施例13:アセトニトリルから得たKDS−4103多形体の粒径測定
KDS−4103の多形体の粒径測定は、マルバーン・マスターサイザー2000・ハイドロ・エス・システム(Malvern Mastersizer2000 Hydro S system)を用いて行われた。KDS−4103は、ヘキサン中に分散させられ、1分の超音波処理(47kHz)、掃引10000回が行われた。アセトニトリルから結晶化させられたKDS−4103は、図4に図示されるような粒子分布を有していた。アセトニトリルから得たKDS−4103の結晶状粒子は、約0.5μm〜約31.6μmの粒子分布を有しており、平均有効平均粒径は約5.9μmであった。
【0100】
実施例14:KDS−4103多形体の経口バイオアベイラビリティ測定
KDS−4103の薬物動態特性は、懸濁液としての経口投与に続いてラットで評価された。アセトニトリル及びエタノールから得たKDS−4103多形体(上記の実施例を参照のこと)の経口バイオアベイラビリティを試験するために、KDS−4103多形体の懸濁液が、経口投与のために調製された。アセトニトリル及びエタノールから得たKDS−4103の2種類の多形体は、水中の0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム、0.5%シメチコン及び0.4%ポリソルベート80(w/v)における100mg/mL懸濁液として別個に調製された。KDS−4103の懸濁液は、2つの別々のグループのラットに、KDS−4103の投与量1ml/kgにて経口強制給餌された。各グループにおいて、ラットは、投与から30分後、60分後及び90分後に殺処分された。KEDTAの回収は、心臓穿刺により達成された。試料は、KDS−4103濃度について分析された。結果は、図5及び表3に示されている。アセトニトリルから得たKDS−4103の多形体で処理されたラットは、EtOHから得たKDS−4103の多形体で処理されたラットよりも、循環している化合物のレベルが高かった。より小さい有効平均粒径分布を有する、アセトニトリルから得たKDS−4103の多形体を含有している懸濁液は、より高いバイオアベイラビリティを有していた。
【0101】
【表3】

【0102】
実施例15:医薬組成物
実施例15a:非経口投与用組成物
注射による投与に適した非経口投与用の医薬組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物100mgを、DMSOに溶解させ、次に、10mLの0.9%無菌生理食塩水と混合する。この混合物を、注射による投与に適した投与単位形態に組み込む。
【0103】
実施例15b:経口投与用組成物
経口で送達するための医薬組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物100mgを、750mgのデンプンと混合する。この混合物を、経口投与に適した経口投与単位(ハードゼラチンカプセル等)に組み込む。
【0104】
実施例15c:舌下投与用組成物(硬質ロゼンジ剤)
口腔内投与のための医薬組成物を調製するために(硬質ロゼンジ剤等)、本明細書に記載の化合物100mgを、1.6mLのライトコーンシロップと混合された420mgの粉砂糖、2.4mLの蒸留水及び0.42mLのミント抽出物と混合する。この混合物を静かに混ぜ合わせ、金型に注ぎ、口腔内投与に適したロゼンジ剤を形成する。
【0105】
実施例15d:吸入用組成物
吸入送達のための医薬組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物20mgを、50mgの無水クエン酸及び100mLの0.9%塩化ナトリウム溶液と混合する。この混合物を、吸入投与に適した、ネブライザ等の吸入送達ユニットに組み込む。
【0106】
実施例15e:直腸投与用ゲル組成物
直腸送達のための医薬組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物100mgを、2.5gのメチルセルロース(1500mPa)、100mgのメチルパラペン、5gのグリセリン及び100mLの精製水と混合する。次に、得られたゲル混合物を、直腸投与に適した、注射器等の直腸送達ユニットに組み込む。
【0107】
実施例15f:局所投与用ゲル組成物
局所投与用のゲル状医薬組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物100mgを、1.75gのヒドロキシプロピルセルロース、10mLのプロピレングリコール、10mLのミリスチン酸イソプロピル及び100mLの精製アルコールUSPと混合する。次に、得られたゲル混合物を、局所投与に適した、チューブ等の容器に組み込む。
【0108】
実施例15g:点眼液組成物
医薬点眼液組成物を調製するために、本明細書に記載の化合物100mgを、100mLの精製水中の0.9gのNaClと混合し、0.2ミクロンのフィルタを用いて濾過する。次に、得られた等張溶液を、点眼投与に適した、点眼剤容器等の点眼送達ユニットに組み込む。
【0109】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、説明を目的にしたものに過ぎず、当業者に示唆される様々な改変又は変更は、本願の精神及び視野内並びに付随する請求項の範囲内に含まれるべきである。本明細書において引用された出版物、特許及び特許出願は全て、参照により全ての目的で本願に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化10】

のアルキルカルバミン酸アリールエステルを調製するための方法であり、
(a)シクロヘキシルイソシアネートを3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドと、適切な非芳香族系溶媒中のアミン塩基の存在下で反応させる段階と、
(b)前記アルキルカルバミン酸アリールエステルKDS−4103を単離する段階とを包含する方法。
【請求項2】
前記適切な非芳香族系溶媒は、アセトニトリル又はエタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適切な非芳香族系溶媒は、アセトニトリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アミン塩基は、第三アミン塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第三アミン塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン及びトリブチルアミンから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アミン塩基は、トリエチルアミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記3´−ヒドロキシビフェニル−3−カルボキサミドは、3−ヒドロキシフェニルボロン酸を、不均一系パラジウム触媒、無機塩基、相間移動触媒及び適切な有機溶媒の存在下で、3−ブロモベンズアミドにより処理することを包含する方法によって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記不均一系パラジウム触媒は、PdCl、Pd(OAc)及びPd(OH)から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記不均一系触媒は、PdClである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記無機塩基は、LiCO、NaCO、KCO、CsCO及びNaOHから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記無機塩基は、KCOである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記相間移動触媒は、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記相間移動触媒は、nBuNBrである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記適切な有機溶媒は、メタノール、エタノール、ベンゼン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン及び水から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記適切な有機溶媒は、エタノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
図2に図示されるような固体X線粉末回折XRPDパターンによって特徴付けられる、
【化11】

化合物KDS−4103の結晶形。
【請求項17】
経口で投与するために処方された、請求項16に記載の化合物KDS−4103を包含する医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物におけるKDS−4103のバイオアベイラビリティを改善するための方法であり、請求項16に記載のKDS−4103の結晶形を前記哺乳動物に投与することを包含する方法。
【請求項19】
脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)を阻害することを目的とした経口送達の薬剤を処方するための、請求項16に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−507568(P2010−507568A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525038(P2009−525038)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058589
【国際公開番号】WO2008/022976
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】