説明

ICタグ付き機械部品のICタグ利用方法

【課題】 機械部品に取付けられたICタグを、固定識別や製造履歴の管理の以外に、組立工程における機械部品の判別に利用できる方法を提供する。例えば、表裏判別や、左右の取付位置の判別、厚さ選別、マッチング、多品種同ライン生産等に利用する。
【解決手段】 表裏の区別があるシール5において、非接触交信型のICタグ6を、表側からの交信と裏側からの交信とで交信状態に差が生じるように取付ける。ICタグ6への交信により、シール6の表裏判別を行う。左右のシール5が、互いに異なるものである場合は、左右のシール5の判別にICタグ6を利用しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械部品の固体識別や製造履歴等の管理目的以外に、その機械部品を使用した機器の組立工程などで、機械部品に取付けられているICタグを利用するICタグ付き機械部品のICタグ利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で交信が可能なRFID技術を用いたICタグは、物流関係で広く使用されようとしているが、小型化が進み、近年のトレーサビリティの要求、つまり考慮の対象になっているものの履歴、適用、または所在を追求できるという要求の高まりから、機械部品にICタグを取付けることも提案されている(例えば特許文献)。これは、歯車等の機械部品について、ICタグを取付け、IDコードやこれに関連つけた各種の情報を記憶させて管理しようとするものである。
【0003】
機械部品を使用する機器の組立工程等において、表裏判別や取付箇所の判別を行う場合に、表裏の区別がつきにくい物や、寸法等が目で見てわからないときは、刻印やレーザーマーキング等を利用して作業者による判別に利用している。
【特許文献1】特開2002−049900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械部品にICタグを取付けた各提案例は、いずれも機械部品の固体識別や製造履歴を記録する目的で使用されている。しかし、機械部品に取付けられたICタグを、このような管理目的だけで利用するには不経済である。
機械部品に取付けられたICタグを、他の用途に利用できれば、機械部品にICタグを取付ける経済的な効果が高まると考えられる。
例えば、機械部品の組立工程において、表裏判別や取付箇所の判別を行う場合、従来は刻印やレーザーマーキングを利用しているが、これら刻印等では注視する必要があり、作業者が判別するときに、瞬時の判別が行えない。また組立の自動化等も図り難い。このため、機械部品の組立過程では、種々の改善が求められている。
【0005】
この発明の目的は、機械部品に取付けられたICタグを、固定識別や製造履歴の管理以外に、組立工程における機械部品の判別に利用できるICタグ付き機械部品のICタグ利用方法を提供することである。
この発明の具体的目的の一つは、表裏判別が容易に行えるICタグ付き機械部品のICタグ利用方法を提供することである。
この発明の具体的目的の他の一つは、互いに異なる箇所に取付けられる一対の機械部品の区別を容易に行えるようにすることである。
この発明の具体的目的のさらに他の一つは、隙間に介在させたり、寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品について、その厚さ寸法の判別が容易に行えるようにすることである。
この発明の具体的目的のさらに他の一つは、寸法公差内に製造された2種以上の機械部品を組み合わせるマッチング処理が容易に行えるようにすることである。
この発明の具体的目的のさらに他の一つは、多品種が同じ生産ラインで混在して加工される機械部品について、その加工後の選別を容易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における第1のICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、表裏の区別がある機械部品において、非接触交信型のICタグを、表側からの交信と裏側からの交信とで交信状態に差が生じるように取付け、前記ICタグへの交信により前記機械部品の表裏判別を行うことを特徴とする。
この方法によると、ICタグと交信することにより表裏判別を行うため、容易に表裏判別が行える。例えば、瞬時に表裏判別が行える。そのため、機械部品を表裏逆に組付ける組立誤りが防止できる。また、機械部品が表裏入り混じって供給される場合に、これを表裏区別して組み立てる自動組立にも応用できる。
【0007】
第1の利用方法において、前記機械部品が転がり軸受のシールであって、芯金とこの芯金に一体に固着された弾性体とを有するものであり、前記芯金に対する表裏いずれか片方に前記ICタグを取付けたものであっても良い。
シールが芯金付きである場合、その表裏いずれか片方に前記ICタグを取付けることにより、表側から交信したときと、裏側から交信したときとで、交信状態に差が生じる。例えば、ICタグの非取付側の面から交信した場合、交信不能であったり、交信可能であっても伝送状況が悪くなる。そのため、この交信状況の違いから表裏判別が行える。シールの表裏判別が容易に行えると、シールの表裏逆組みが防止される。シールの表裏逆組は、シール機能の低下を招くため、後の検査過程で取り除く必要があり、このような検査の手間が簡略化できる。
【0008】
この発明における第2のICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、被取付体に対して互いに異なる箇所に取付けられる一対の機械部品であって、かつ互いに類似品である機械部品において、両方又はいずれか片方の機械部品のみに非接触交信型のICタグを取付け、このICタグへの交信により、上記互いに異なる箇所のどちらに取付ける機械部品であるかを判別する方法である。上記類似品は、例えば外径寸法が同じで、一部に差のある部品等である。上記の互いに異なる箇所は、例えば、左右、前後、上下等の対称位置であっても良い。
この方法によると、ICタグと交信することにより、どちらに取付ける機械部品であるかを判別するため、瞬時に判別が行える。そのため、左右,前後、上下の逆組み等が防止される。
【0009】
第2の利用方法において、前記被取付体が転がり軸受の軌道輪であり、前記一対の機械部品がシールであっても良い。
転がり軸受において、軸受空間の両側を密封するシールは、形状や寸法が互いに似ていても異なっている形式のものがある。このような両側のシールの区別がICタグとの交信で行えると、作業効率が向上し、また左右の逆組が防止される。
【0010】
この発明における第3のICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、隙間に介在させるか、または寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品であって、非接触交信型のICタグを取付け、このICタグに上記機械部品の厚さ寸法を記憶させ、前記ICタグに交信して機械部品の選別、または厚さの適応判別を行う方法である。上記偏平形状の機械部品は、例えばシムやスラストワッシャー等である。
隙間に介在させる偏平形状の機械部品や寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品は、目視で判別できない程度の厚さの差を持つものが多種類準備され、使用箇所に応じた厚さのものを選択して使用する。この場合に、ICタグと交信することで厚さ寸法を調べるため、選択の処理が容易で、正確、かつ迅速に行える。
【0011】
この発明における第4のICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、互いに組み合わせる2種以上の機械部品であって、寸法公差内に製造された各種類の機械部品につき、個々の実測寸法のものを選んで組み合わせるマッチングの処理を行う機械部品において、個々の機械部品に非接触交信型のICタグを取付け、このICタグにこのICタグが取付けられた機械部品の実測寸法を記憶させ、前記ICタグに交信して実測寸法を認識することで、前記マッチングの処理を行うことを特徴とする。
この方法によると、機械部品に取付けられたICタグに実測寸法を記憶させ、ICタグに交信して実測寸法を認識するため、マッチング処理に際する機械部品の実測寸方の認識が容易に行える。また、実測寸法が電子データとして得られるため、マッチングにおける組合せの計算処理が容易に行える。
【0012】
この発明のICタグ付き機械部品は、上記のように互いに組み合わせる2種以上の機械部品であって、寸法公差内に製造された各種類の機械部品につき、個々の実測寸法のものを選んで組み合わせるマッチングの処理を行う機械部品において、非接触交信型のICタグを取付け、このICタグにその部品のマッチング処理のための実測寸法を記憶させたものである。
この構成のICタグ付き機械部品によると、この発明の上記の方法でマッチング処理が容易に行える。
【0013】
前記ICタグ付き機械部品における機械部品は、転がり軸受の内輪または外輪であっても良い。転がり軸受において、比較的大型のものや、高精度が要求されるものでは、マッチング処理が行われる場合がある。この場合、マッチング処理が、上記構成のICタグ付き機械部品であると容易に行える。
上記ICタグ付き機械部品は、この他に等速自在継手の一対の継手部材となる内輪または外輪であっても良い。
【0014】
この発明における第5のICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、類似品である複数品種が同じ生産ラインで混在して加工される機械部品であって、非接触交信型のICタグを取付け、かつその機械部品の品種識別情報を前記ICタグに記録し、前記生産ラインで生産されて来る各機械部品の品種を、前記ICタグに交信することにより選別する方法である。
この方法によると、同じ生産ラインで混在して生産されている機械部品につき、ICタグに交信することにより選別を行うため、容易に選別が行える。
【0015】
第5の利用方法において、前記類似品である複数品種の機械部品が転がり軸受の軌道輪であって、外径または内径が同一であり、複数品種間の相違部分が、局部的な加工部分の有無、または局部的な加工部分の形状,寸法の相違であっても良い。
転がり軸受における外輪等の軌道輪は、外径寸法等が同じであっても、シール取付溝を有するものや、シール接触用の凹部が形成されるものなど、僅かな違いのものは、同じラインで研削されることがある。このように同じラインで加工された軌道輪は、通常、別々に分けて処理するが、ICタグと交信することにより、この別々に作業することが廃止でき自動選別が行なえる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、機械部品に取付けられたICタグを、固定識別や製造履歴の管理の以外に、組立工程における機械部品の判別に利用でき、ICタグの他用途への利用により、経済的にICタグを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この実施形態は、この発明における前記第1の利用方法に対応する。このICタグ付き機械部品のICタグ利用方法は、ICタグ付き機械部品が、転がり軸受1のシール5である場合の例である。転がり軸受1は、シール付きの針状ころ軸受であり、外輪2と、複数のころ3と、これら複数のころ2を保持した保持器4と、両側のシール5とでなる。この転がり軸受1は、軸受設置機器の軸(図示せず)の外径面を転走面としてころ2が転走するものであり、専用の内輪は有していない。外輪2は、例えばシェル型のものであり、両側に鍔2a有している。
【0018】
シール5は、外輪2の内径面の両端に、鍔2aに接して取付けられる。シール5は、芯金5aとこの芯金5aに一体に固着されたゴム等の弾性体5bとを有し、弾性体5bは先端が前記軸(図示せず)の外径面に接するリップ5baを有している。
このシール5における芯金5aよりも軸受外側の部分で、弾性体5b内に非接触交信型のICタグ6が埋め込み状態に取付けられている。
【0019】
図3に示すように、前記ICタグ6は、ICチップ(集積回路のチップ)25とアンテナ26を有し、非接触で交信して情報の記録および読取りが自在なものである。ICタグ6は、読み書き両方型のものに限らず、用途によっては、一度書き込んだ後は、消去や上書きが不能のものを用いても良い。このICタグ6に対する情報の書込みおよび読出しはタグリーダ20によって行われる。タグリーダ20は、書き込み機能を有するタグリーダ/ライタであっても、読み出し専用のものであっても良い。タグリーダ20は、軽量コンパクトなものがあり、ICタグ6に対する情報の書込みおよび読出しを容易に行うことができる。ICタグリーダ20は、ICタグ6に対向させるアンテナ21を有している。ICタグ6への情報の書込みの場合は、データベース(図示せず)から端末15を介して行っても良い。ICタグ6のICチップ25とアンテナ26とは、例えば樹脂(図示せず)で一体に包装される。
【0020】
ICタグ6としては、例えばRFID(無線周波数認識:Radio Frequency Identification)技術を応用したRFIDタグが利用できる。RFID形式のICタグは、伝送方式として静電結合、電磁結合、電磁誘導、マイクロ波、光などを用いる形式のものがあり、このうちいずれの形式のものを用いても良い。
図4は、ICタグ6の具体的回路例を示す。このICタグ6のICチップ25は、中央処理装置(CPU)27、メモリ28、送受信回路29、および電源回路30を有しており、電源回路30はアンテナ26から電源を得るものとされている。メモリ28は情報の記憶に電源が不要なものが用いられる。
【0021】
図1,図2において、この実施形態のICタグ利用方法は、外輪1へ両側のシール5を取付けるときに、シール5に取付けられたICタグ6への交信により、シール5の表裏判別を行う方法である。シール5の表面は、軸受外側を向く面である。
シール5は芯金5aを有しており、その表側にICタグ6が取付けられているため、裏面側から交信したときは、芯金5aで電波の吸収等が生じて良好な交信が行えない。ICタグ6にシール5の表面側から交信したときは、電波等の障害物がなく、両方な交信が行える。そのため、ICタグ6との交信によって表裏判別が行える。ICタグ6は非接触交信型のものであり、図3のタグリーダ20により容易に読み取りが行える。
【0022】
このように、シール5の表裏判別が容易に行えるため、シール5の表裏逆組みが防止される。この実施形態では、シール5は、図2(A)に示すように、リップ5baが外側を向く姿勢が正しい取付け姿勢である。図2(B)に示すように、リップ5baが内側を向くような誤組み込みを行うと、シール5による密封機能が低下する。このようなシール5の表裏逆組みが生じた場合は、後の検査過程で取り除く必要があるが、この実施形態のようにICタグ5への交信で表裏判別が簡単に行えると、誤組み込みが少なくできる。
なお、軸受1の組立完了後に、シール5のICタグ6には、軸受の識別情報や製造履歴情報等を記録し、履歴管理に用いるようにしても良い。
【0023】
図5,図6は、この発明における第2の利用方法に対応する実施形態を示す。この実施形態は、図1〜図4に示す第1の実施形態において、シール5として、左右で互いに異なる形式のシール5A,5Bを用いた転がり軸受1に適用した例である。左右のシール5A,5Bは、形状,寸法,材質等のいずれが異なるものであっても良いが、この実施形態では、図の右のシール5Aは、リップ5baが1枚とされ、左のシール5Aは2枚のリップ5ba,5bbを有している。また、外輪2は、方向規制用のリング部2bを外周に有している。したがって、左右のシール5A,5Bは、区別して外輪2に取付ける必要がある。
【0024】
この実施形態では、両側のシール5A,5B(図6(A),(B))のうちの片方、例えば図の右側のシール5Aのみに、前記ICタグ6を取付けている(図6(C))。この実施形態では、シール5A,5Bは芯金を有せず、全体がゴム等の弾性体からなるものである。
【0025】
この利用方法では、上記のように片方のシール5AのみにICタグ6を取付け、このICタグ6への交信により、左右のいずれに取付けるべきであるかを判別する。図の右側のシール5AはICタグ6が設けられているため、交信が可能であるが、左側のシール5BはICタグ6が設けられているため、交信が不能である。この交信の可否によって、左右いずれのシール5A,5Bであるかの判別が行える。この実施形態においても、ICタグ6への非接触交信で判別が行えるため、左右いずれのシール5A,5Bであるかの判別が容易に行え、誤組み込みが防止できる。
【0026】
図7は、この発明における第3のICタグ利用方法に対応する実施形態を示す。この例は、機械設備30において、寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品9に、前記非接触交信型のICタグ6を取付け、このICタグ6に機械部品9の厚さ寸法を記憶させ、ICタグ6に交信して機械部品9の選別、または厚さの適応判別を行う方法である。この機械部品9は、図7(B)に示すリング状のシムであり、ICタグ6は、機械部品9の外周面に埋め込み状態に取付ける。
【0027】
図7(A)の機械設備30は、スピンドル装置の一部であり、軸10の外周における一対の軸受11,12の内輪11a,12aの間に、複数の間座13,14と共に介在させてある。片方の軸受内輪11aは軸10の段面10aに係合させる。他方の軸受内輪12aは、他の間座16を介してナット17により前記段面10a側へ締め付けられる。この例では、シムからなる機械部品9の厚さ調整で、軸受11,12の予圧が調整される。
【0028】
機械部品9の厚さ調整は、図7(C)に示すように、種々の厚さの機械部品9を準備しておき、その中から希望の厚さの機械部品9を選択することで行う。機械部品9は、例えば厚さ1mmのものに対して、+0.1mm、+0.2mm、+0.3mm,…−0.1mm,…等のように、わずかに厚さの異なる多品種のものが準備される。機械部品9のICタグ6には、その機械部品9の、このように異なる正確な厚さ寸法を記録しておく。
【0029】
これらの機械部品9は、同じ厚さものもの(例えば、1mm+0.1mmのもの)毎に、グループG1,G2,G3,に分けて保管される。
このように保管された機械部品9の中から、希望の予圧量に対応する機械部品9を選定する。この選定を、機械部品9に取付けられたICタグ6に、タグリーダ20で交信することにより、厚さ寸法を調べて行う。上記のようにグループ分けして保管されていても、別寸法のものが混在している恐れがあり、その寸法確認が行える。タグリーダ20により非接触で厚さ寸法を読み取れるため、機械部品9の選定が容易に行える。また、厚さ寸法は電子データで得られるため、機械部品9を複数枚重ねて使用する場合に、その合計厚さを、端末機等で簡単に演算することができる。
【0030】
なお、図7の実施形態は、スペーサである薄板のシムである場合につき説明したが、この厚さの適応判別方法は、隙間に介在させる偏平形状の機械部品や、寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品一般に適用でき、例えば、トランスミッションや各種の機械に用いられるスラストワッシャにも適用することができる。
【0031】
図8は、この発明における第4のICタグ利用方法に対応する実施形態を示す。この方法は、転がり軸受31における寸法公差内の寸法にそれぞれ製造された多数の内輪32と外輪33とについて、個々の実測寸法のものを選んで組み合わせるマッチングの処理を行う方法である。前記寸法は、例えば転走面の径寸法等である。マッチング処理は、内輪32と外輪33とを組合せた転走面間の寸法が、公差内になるもの、あるいはさらに最適となるものを選び出す処理である。
【0032】
この方法では、個々の内輪32および外輪33に、前記ICタグ6を取付け、このICタグ6に、このICタグ6が取付けられた内輪32または外輪33の実測寸法を記憶させておく。適応する内輪32と外輪33とを組み合わせるマッチング処理の過程では、前記ICタグ6に交信して実測寸法を認識することで、適応する内輪32と外輪33の選択を行う。この選択は、例えばタグリーダ20に接続された情報処理手段におけるマッチング判定手段34により行うようにする。タグリーダ20からは、電子情報で寸法情報が得られるため、マッチング判定のための演算処理が容易である。
【0033】
なお、図8の例は、機械部品が、転がり軸受31の内輪32と外輪33とである場合につき説明したが、前記第4の利用方法は、互いに組み合わせる2種以上の機械部品であって、寸法公差内に製造された各種類の機械部品につき、個々の実測寸法のものを選んで組み合わせるマッチング処理一般に適用することができる。例えば、等速自在継手における一方の継手部材である外輪と他方の継手部材である内輪とのマッチング処理にも適用することができる。
【0034】
図9は、この発明における第5のICタグ利用方法に対応する実施形態を示す。この方法は、類似品である多品種の軸受外輪41を同じ生産ライン40で混在して研削加工する場合に適用される方法である。上記多品種の軸受外輪41には、外径寸法が同じで局部的な加工部分の有無、または局部的な加工部分の形状,寸法に相違するものがあるとする。例えば、標準品41A と、標準品41A に対してシール取付溝42を形成したシール溝付き品41B と、標準品41A に対してシールド用凹部43を設けたシールド用凹部付き品41C とが含まれるとする。
【0035】
この方法では、上記研削加工を行う生産ライン40に入れるまでに、各軸受外輪41に上記ICタグ6を取付け、かつその軸受外輪41の品種識別情報をICタグ6に記録しておく。
このようにICタグ6を取付け、かつ品種識別情報を記録して研削加工を行うことにより、同じ生産ライン40で生産されて来る各軸受外輪41の品種(41A ,41B ,41C )を、ICタグ6に交信することにより選別する。タグリーダ20は、選別処理手段43に接続されている。
【0036】
この方法によると、ICタグ6に交信することで選別できるため、選別処理が容易に、かつ確実に行える。また、ゲージを当てるなどの機械的な種類判定が不要なため、選別処理の自動化が簡単に行える。
なお、上記実施形態は軸受外輪41の場合につき説明したが、この発明における第5の利用方法は、類似品である多品種が同じ生産ラインで混在して加工される機械部品である場合に一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明における第1の実施形態におけるICタグ付き機械部品のICタグ利用方法における転がり軸受、そのシール、およびそのシールのICタグ取付部分をそれぞれ示す断面図である。
【図2】同軸受の適正なシール取付状態およひ反転状態のシール誤取付状態を示す部分断面図である。
【図3】ICタグおよびタグリーダの説明図である。
【図4】同ICタグの回路構成例のブロック図である。
【図5】この発明の第2のICタグ利用方法における転がり軸受の断面図である。
【図6】同利用方法における左右のシールの断面図、および右側のシールの部分拡大断面図である。
【図7】この発明の第3のICタグ利用方法を適用する機械設備の断面図、その機械部品の拡大断面図、およびその利用方法の説明図である。
【図8】この発明の第4のICタグ利用方法の説明図である。
【図9】この発明の第5のICタグ利用方法の説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1…転がり軸受
2…外輪
3…ころ
5…シール(機械部品)
5A,5B…シール
6…ICタグ
9…機械部品
32…内輪(機械部品)
33…外輪(機械部品)
40…生産ライン
41…軸受外輪(機械部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の区別がある機械部品において、非接触交信型のICタグを、表側からの交信と裏側からの交信とで交信状態に差が生じるように取付け、前記ICタグへの交信により前記機械部品の表裏判別を行うことを特徴とするICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項2】
請求項1において、前記機械部品が転がり軸受のシールであって、芯金とこの芯金に一体に固着された弾性体とを有するものであり、前記芯金に対する表裏いずれか片方に前記ICタグを取付けたものであるICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項3】
被取付体に対して互いに異なる箇所に取付けられる一対の機械部品であって、かつ互いに類似品である機械部品において、両方又はいずれか片方の機械部品のみに非接触交信型のICタグを取付け、このICタグへの交信により、上記互いに異なる箇所のどちらに取付ける機械部品であるかを判別するICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項4】
請求項3において、前記被取付体が転がり軸受の軌道輪であり、前記一対の機械部品がシールであるICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項5】
隙間に介在させるか、または寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品であって、非接触交信型のICタグを取付け、このICタグに前記機械部品の厚さ寸法を記憶させ、前記ICタグに交信して機械部品の選別、または厚さの適応判別を行うICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項6】
隙間に介在させる偏平形状の機械部品または寸法調整に用いられる偏平形状の機械部品であって、非接触交信型のICタグを取付け、このICタグに前記機械部品の厚さ寸法を記憶させたことを特徴とするICタグ付き機械部品。
【請求項7】
互いに組み合わせる2種以上の機械部品であって、寸法公差内に製造された各種類の機械部品につき、個々の実測寸法のものを選んで組み合わせるマッチングの処理を行う機械部品において、個々の機械部品に非接触交信型のICタグを取付け、このICタグにこのICタグが取付けられた機械部品の実測寸法を記憶させ、前記ICタグに交信して実測寸法を認識することで、前記マッチングの処理を行うことを特徴とするICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項8】
互いに組み合わせる2種以上の機械部品であって、寸法公差内に製造された各種類の機械部品につき、個々の実測寸法のものを選んで組み合わせるマッチングの処理を行う機械部品において、非接触交信型のICタグを取付け、このICタグにその部品のマッチング処理のための実測寸法を記憶させたICタグ付き機械部品。
【請求項9】
請求項8において、前記機械部品が転がり軸受の内輪または外輪であるICタグ付き機械部品。
【請求項10】
類似品である複数品種が同じ生産ラインで混在して加工される機械部品であって、非接触交信型のICタグを取付け、かつその機械部品の品種識別情報を前記ICタグに記録し、前記生産ラインで生産されて来る各機械部品の品種を、前記ICタグに交信することにより選別するICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。
【請求項11】
請求項10において、前記類似品である複数品種の機械部品が転がり軸受の軌道輪であって、外径または内径が同一であり、複数品種間の相違部分が、局部的な加工部分の有無、または局部的な加工部分の形状,寸法の相違であるICタグ付き機械部品のICタグ利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−53702(P2006−53702A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234042(P2004−234042)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】