説明

III族窒化物発光素子を製造する方法、及びIII族窒化物発光素子

【課題】500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位により発光強度の低下を避けることが可能な、III族窒化物発光素子を製造する方法を提供する。
【解決手段】InGaNの成長に先立って障壁層25の主面25aの表面25bにAlN領域27を形成するので、InGaN29aは、AlN領域27に覆われていない表面25cに成長される。このInGaNはAlN領域の表面を覆うように成長されて、井戸層の成長途中ではInGaN29cを形成する。これと同様に、AlN領域におけるいくつかの開口27aから複数のInGaN29a、29bが成長し、これらのInGaN同士が転位を生成することなく繋がってInGaN29cが形成される。InGaN成長を進めると、障壁層25の主面25aの全体上に平坦に成長されたInGaN29dが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物発光素子を製造する方法、及びIII族窒化物発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高輝度および高出力の窒化物半導体発光素子の製造方法が記載されている。この方法では、少なくともインジウムを含む窒化物半導体よりなる活性層を用いている。n型窒化物半導体層がAlGaN層を含み、このAlGaN層が活性層に接するように形成されている。p型窒化物半導体層がInGaNまたはGaNの層を含み、この層(InGaN層またはGaN層)が活性層に接するように形成されており、また該層の外側にAlGaN層が形成される。
【0003】
特許文献2には、高出力化を実現する窒化物半導体レーザが記載されている。窒化物半導体素子では、活性層は、少なくともInを含む窒化物半導体からなる井戸層と障壁層とを有する。この活性層が、障壁層のバンドギャップエネルギと同一又はそれよりも大きく井戸層と障壁層との間の全体に設けられた窒化物半導体層を含む。
【特許文献1】特開平11−243227号公報
【特許文献2】特開2004−104088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長波長の光を発生するIII族窒化物発光素子では、短波長の光を発生する活性層に比べて、活性層のインジウム組成を大きくすることが必要である。発明者の実験によれば、GaN基板といったIII族窒化物基板上に、0.18以上のインジウム組成を有するInGaNを活性層のために成長するとき、InGaNとGaNとの格子不整合に起因して生成された貫通転位が観察された。
【0005】
発明者の実験では、0.18以上のインジウム組成を有するInGaNを成長するとき、その成長の初期において、サファイア基板上に設けられた下地の窒化ガリウム系半導体層とInGaNとの格子不整合に起因して、InGaNが島状に成長されることが促進される。この成長では、島状のInGaN層の結合により新たな貫通転位が発生する可能性がある。
【0006】
この結果は、サファイア基板を用いた実験から得られたものであり、サファイア基板上の窒化ガリウム系半導体は、本来的に大きな貫通転位密度(例えば1×10+8cm−2程度以上)を有するので、高インジウムのInGaN成長における上記の現象は、明らかにされていなかった。しかしながら、高インジウムのInGaN成長を低転位の窒化ガリウム基板(例えば、転位密度1×10+7cm−2程度以下)上に行うとき、InGaN層の成長において貫通転位の発生が明らかになってきた。
【0007】
InGaNに替えて、構成元素としてAlを添加してInAlGaNを用いることによって、格子不整合度を少し低減させることができる。しかしながら、InAlGaNの採用により発光波長が短波長にシフトする。故に、波長のシフトを避けるために、井戸層の材料としてInAlGaNを用いることができない。したがって、InGaN成長に伴う貫通転位の生成を防ぐことが求められている。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位により発光強度の低下を避けることが可能な、III族窒化物発光素子を製造する方法を提供することを目的とし、また500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位による発光強度低下を回避可能なIII族窒化物発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、500nmよりも長波長の光を発生するIII族窒化物発光素子を作製する方法である。この方法は、(a)窒化ガリウム半導体基板の主面上に、窒化ガリウム系半導体からなり活性層のための障壁層を成長する工程と、(b)前記障壁層の主面を部分的に覆うアルミニウム窒化物領域を形成する工程と、(c)前記障壁層の主面及び前記アルミニウム窒化物領域を覆うInGaN井戸層を成長する工程とを備える。前記窒化ガリウム半導体基板は1×10+7cm−2以下の貫通転位密度の領域を有しており、前記アルミニウム窒化物領域の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄い。
【0010】
この方法によれば、InGaNの成長に先立って障壁層の主面を部分的に覆うアルミニウム窒化物領域を形成するので、InGaNは、アルミニウム窒化物領域に覆われていない表面に成長される。このInGaNの成長はアルミニウム窒化物領域の表面を覆うように進む。これと同様にして、アルミニウム窒化物領域におけるいくつかの開口から複数のInGaNが成長する。これらのInGaN同士は、アルミニウム窒化物領域が薄いので、転位を生成することなく繋がる。この成長により、500nmよりも長波長の光を発生するためのInGaN層が成長される。
【0011】
本発明に係る方法では、前記障壁層の主面を覆う前記アルミニウム窒化物領域の被覆率は、0.1以上であり、0.9以下であることが好ましい。この方法では、小さすぎる被覆率は島状成長による結晶品質の低下が顕著になる。大きすぎる被覆率は、アルミニウム窒化物領域上を十分にInGaN井戸層で覆えなくなる。
【0012】
本発明に係る方法では、前記井戸層及び障壁層の成長は有機金属気相成長法で行われることができる。
【0013】
本発明に係る方法では、前記アルミニウム窒化物領域を形成する工程では、インジウム原料及びガリウム原料を成長炉に供給すること無くアルミニウム原料及び窒素原料を成長炉に供給して、前記アルミニウム窒化物領域が成長される。この方法では、アルミニウム原料及び窒素原料を同時に供給してアルミニウム窒化物領域を成長する。好ましくは、アルミニウム原料は誘起アルミニウム原料であり、窒素原料は、アンモニア及びアミン類である。
【0014】
本発明に係る方法では、前記障壁層を成長した後に、前記アルミニウム窒化物領域を成長するに先立って、前記障壁層の成長の第1の成長温度から前記井戸層の成長の第2の成長温度に基板温度を変更する工程を更に備えることができる。前記アルミニウム窒化物領域を成長する工程は前記基板温度を変更した後に行われ、前記第2の成長温度は前記第1の成長温度よりも低いことが好ましい。
【0015】
この方法によれば、井戸層の成長がアルミニウム窒化物領域の成長に引き続き行われるので、アルミニウム窒化物領域の成長後に井戸層の成長温度に温度を変更することなく、井戸層の成長が開始される。
【0016】
本発明に係る方法では、前記基板温度を変更する前記工程では、前記障壁層の成長における第1の圧力から前記井戸層の成長における第2の圧力に成長炉の圧力が変更される。この方法によれば、アルミニウム窒化物領域の成長は、減圧成長の条件で行われる。
【0017】
本発明に係る方法は、前記障壁層を成長した後に、前記アルミニウム窒化物領域を成長するに先立って、前記障壁層の成長における第1の圧力から前記井戸層の成長における第2の圧力に成長炉の圧力を変更する工程を更に備えることができる。前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも低いことが好ましい。
【0018】
本発明に係る方法では、前記井戸層の厚さは20nm以下であることが好ましい。また、本発明に係る方法では、前記井戸層の厚さは0.5nm以上であることができる。
【0019】
本発明に係る方法では、前記InGaN井戸層のInGa1−XNにおけるインジウム組成Xは、0.18以上であることができる。この方法では、インジウム組成Xが0.18以上であれば、長波長の発光が提供される。本発明に係る方法では、前記インジウム組成Xは0.30以下であることができる。この方法では、大きすぎるインジウム組成は井戸層に大きな歪みを与える。
【0020】
本発明に係る方法では、前記窒化ガリウム基板の前記主面は半極性面であり、 前記窒化ガリウム基板の前記主面は、前記窒化ガリウム基板の六方晶窒化ガリウムのc面から90度未満の角度で傾斜していることができる。この方法によれば、半極性により、ピエゾ電界によるブルーシフトが低減される。本発明に係る方法では、前記窒化ガリウム基板の前記主面は極性面であることができる。この方法によれば、低転位密度の大口径基板を用いて、III族窒化物発光素子を作製できる。また、窒化ガリウム基板の主面が比較的小さい傾斜の半極性面であれば、非極性表面を用いることに比べて、低転位密度の大口径基板を用いて、III族窒化物発光素子を作製できる。
【0021】
本発明に係る方法では、前記窒化ガリウム基板の前記主面は非極性面であることができる。この方法によれば、非極性面を用いて、貫通転位による発光強度の低下を回避可能なIII族窒化物発光素子が作製される。
【0022】
本発明の別の側面は、500nmよりも長波長の光を発生するIII族窒化物発光素子である。このIII族窒化物発光素子は、(a)1×10+7cm−2以下の貫通転位密度の領域を有する窒化ガリウム支持基体と、(b)前記窒化ガリウム支持基体上に設けられ活性層とを備える。前記活性層は、窒化ガリウム系半導体からなる障壁層と、前記障壁層の主面を部分的に覆うアルミニウム窒化物領域と、前記障壁層の主面及び前記アルミニウム窒化物領域を覆うInGaN井戸層とを含み、前記アルミニウム窒化物領域の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄く、前記障壁層の前記主面は、前記アルミニウム窒化物領域に覆われていない第1のエリアと前記アルミニウム窒化物領域に覆われた第2のエリアとを含み、前記InGaN井戸層は、前記第1のエリアに設けられたエピタキシャル成長部と、該エピタキシャル成長部から前記アルミニウム窒化物領域の表面に沿って延びる延在部とを含む。
【0023】
このIII族窒化物発光素子によれば、障壁層の主面を部分的にアルミニウム窒化物領域で覆われており、また、高インジウム組成のInGaN井戸層がエピタキシャル成長部及び延在部を含む。アルミニウム窒化物領域上の延在部は障壁層に接していないので、障壁層とInGaNとの格子不整に関係なく、エピタキシャル成長部の結晶性を引き継ぐ。故に、InGaN井戸層の全体にわたって、その結晶品質が良好になる。したがって、III族窒化物発光素子は、500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位により発光強度の低下を避けることが可能である。
【0024】
本発明に係るIII族窒化物発光素子では、前記障壁層の主面を覆う前記アルミニウム窒化物領域の被覆率は、0.1以上であり、0.9以下であることが好ましい。このIII族窒化物発光素子では、小さすぎる被覆率は島状成長による結晶品質の低下が顕著になり、良質なエピタキシャル成長部が得られない。大きすぎる被覆率は、アルミニウム窒化物領域上を十分に延在部で覆えなくなる。
【0025】
本発明に係るIII族窒化物発光素子では、前記井戸層の厚さは20nm以下であることが好ましい。また、前記井戸層の厚さは0.5nm以上であることができる。本発明に係る方法では、前記InGaN井戸層のインジウム組成Xは、0.18以上であることができる。このIII族窒化物発光素子では、InGaN井戸層のインジウム組成Xが0.18以上であれば、長波長の発光が提供される。本発明に係るIII族窒化物発光素子では、前記InGaN井戸層のインジウム組成Xは0.30以下であることができる。このIII族窒化物発光素子では、大きすぎるインジウム組成は井戸層に大きな歪みを与える。
【0026】
本発明に係るIII族窒化物発光素子は、前記GaN支持基体と前記活性層との間に設けられたInGaN緩衝層を更に備えることができる。前記InGaN緩衝層のInGa1−YNにおけるインジウム組成Yは、前記InGaN井戸層のインジウム組成よりも小さい。このIII族窒化物発光素子によれば、高インジウム組成のInGaNの歪みを低減できる。
【0027】
本発明に係るIII族窒化物発光素子では、前記窒化ガリウム支持基体の前記主面は極性面であることができる。このIII族窒化物発光素子によれば、低転位密度の窒化ガリウム支持基体が提供される。
【0028】
本発明に係るIII族窒化物発光素子では、前記窒化ガリウム支持基体の前記主面は半極性面であり、前記窒化ガリウム支持基体の前記主面は、前記窒化ガリウム基板の六方晶窒化ガリウムのc面から90度以下の角度で傾斜している。このIII族窒化物発光素子によれば、ピエゾ電界によるブルーシフトが小さい。また、低転位密度の窒化ガリウム支持基体を利用できる。
【0029】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位により発光強度の低下を避けることが可能な、III族窒化物発光素子を製造する方法が提供される。また本発明の別の側面によれば、500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位により発光強度の低下を回避可能なIII族窒化物発光素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明のIII族窒化物発光素子を製造する方法、III族窒化物発光素子のためのエピタキシャルウエハを製造する方法及びIII族窒化物発光素子に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0032】
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物発光素子を製造する方法及びエピタキシャルウエハを製造する方法の主要な工程を示す図面である。図1を参照すると、フローチャート100が示されている。図2及び図3は、III族窒化物発光素子を製造する方法及びエピタキシャルウエハを製造する方法の主要な工程を示す図面である。本実施の形態では、500nmよりも長波長の光を発生するIII族窒化物発光素子を作製する方法を説明する。
【0033】
工程S101において、図2(a)に示されるような窒化ガリウム半導体基板(以下、「GaN基板」として参照する)13を準備する。GaN基板13は、六方晶系窒化ガリウムからなる。GaN基板は、1×10+7cm−2以下の貫通転位密度の領域を有している。この転位密度の条件を満たす入手可能なGaN基板は、例えば、大きな貫通転位密度を有する高転位領域と小さな貫通転位密度を有する低転位領域とを含み、これらが交互に配置されている。GaN基板13は主面13a及び裏面13bを有する。GaN基板13において、エッジ13c上に2点間の最大距離Dは例えば径45mm以上であることができ、例えば2インチサイズのGaN基板がこれに該当する。
【0034】
図2(a)を参照すると、ベクトルVがc軸の方向を示しており、ベクトルVが主面13aの法線を示している。これらのベクトルは、角度θを成している。GaN基板13の主面13aは、例えば、角度θが実質的にゼロである極性面であることができる。極性面によれば、低転位密度の大口径基板を用いて、III族窒化物発光素子を作製できる。或いは、GaN基板13の主面13aは、例えば半極性面であることができ、また該六方晶窒化ガリウムのc軸に直交する平面に対して15度以上90度未満の角度θで所定の方向に傾斜している。この傾斜により、ピエゾ電界の影響を低減可能な半導体発光素子を作製できる。また、窒化ガリウム基板の主面が比較的小さい傾斜であれば、非極性表面を用いることに比べて、低転位密度の大口径基板を用いて、III族窒化物発光素子を作製できる。角度θは、例えば(θ+θ1/2によって規定される。角度成分θは六方晶窒化ガリウムのa軸方向に対する傾斜角成分であり、角度成分θは六方晶窒化ガリウムのm軸方向に対する傾斜角成分である。好ましくは、所定の方向は、a軸またはm軸のいずれかの方向であることができる。
【0035】
工程S102では、GaN基板13を反応炉11に設置した後に、図2(b)に示されるように、アンモニア及び水素を用いてGaN基板13の熱処理を行う。反応炉11は、有機金属気相成長炉であることができる。により半導体発光素子を作製するための有機金属気相成長法の原料には、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CPMg)を用いた。
【0036】
工程S102では、また、図2(c)に示されるように、第1導電型窒化ガリウム系半導体領域15をGaN基板13上に成長する。本実施例は、GaN基板13上にn型GaN層17を成長する。次いで、n型GaN層17上にInGaN緩衝層19を成長する。InGaN緩衝層19の成長温度は、例えば摂氏800度以上摂氏900度以下であることができる。
【0037】
InGaN緩衝層19の厚みD19は、例えば20nm以上であることができ、これにより緩衝層としての効果を持たすことができるという利点がある。厚みD19は、例えば300nm以下であることができ、これにより格子不整合による転位の発生を抑制できるという利点がある。InGaN緩衝層19のインジウム組成は、例えば0.02以上であることができ、これにより緩衝層としての効果を持たすことができるという利点がある。このインジウム組成は、例えば0.08以下であることができ、これにより格子不整合による転位の発生を抑制できるという利点がある。活性層の成長に先立って、井戸層のインジウム組成より小さいInGaN緩衝層19を成長することにより、窒化ガリウム基板と量子井戸層との格子不整合に起因した歪みを緩和でき、発光効率を向上できるという利点がある。
【0038】
工程S103では、図3(a)に示されるように、InGaN緩衝層19上に活性層21を成長する。InGaN緩衝層19の主面19aに活性層21が接触している。活性層21は障壁層25及びInGa1−XN(0<X<1)井戸層29を含む。
【0039】
活性層21の成長では、工程S104において、InGaN緩衝層19上に障壁層25を成膜温度Tで成長する。障壁層25の厚さDは、例えば6nm以上25nm以下であることができる。障壁層25は、窒化ガリウム系半導体からなり、例えばGaN、InGaN、AlGaN等であることができる。GaNからなる障壁層25の成長温度Tは、例えば摂氏850度以上摂氏950度以下であることができる。
また、InGaNからなる障壁層25の成膜条件として以下のものがある:
成長温度T:摂氏720度以上摂氏900度以下
炉内圧力:40kPa以上101kPa以下
インジウム気相比:0.1以下
成長速度:0.1マイクロメートル/時以上0.8マイクロメートル/時以下
また、AlGaNからなる障壁層25の成膜条件として以下のものがある:
成長温度TB:摂氏880度以上摂氏950度以下
炉内圧力:20kPa以上101kPa以下
アルミニウム気相比:0.1以下
成長速度:0.1マイクロメートル/時以上0.8マイクロメートル/時以下
【0040】
活性層21の成長では、工程S105では、障壁層25の主面25aを部分的に覆うアルミニウム窒化物領域27を形成する。この工程では、インジウム原料及びガリウム原料を成長炉に供給すること無くアルミニウム原料(例えば、有機アルミニウム)及び窒素原料(例えば、NH及び/又はアミン類)を成長炉に供給して、アルミニウム窒化物を堆積する。アルミニウム原料及び窒素原料を同時に供給して、1モノレイヤよりも薄い平均膜厚のアルミニウム窒化物領域27を障壁層25の主面25a上に成長する。アルミニウム窒化物領域27の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄いので、アルミニウム窒化物領域27が、障壁層25の主面25aを部分的にしか覆えない。AlNの1モノレイヤは、例えば0.27nm程度の厚さである。好適な成長条件として以下のものを用いる。
TMAの流量:0.005リットル/分
NHの流量:10リットル/分
成膜温度TAlN:摂氏700度
成膜速度:0.05マイクロメートル/時
厚み:0.5モノレイヤ
成長時間:10秒
炉内圧力:20kPa。
また、アルミニウム窒化物領域27の形成に以下の成膜条件を適用できる:
成長温度TAlN:摂氏900度以上摂氏1100度以下
炉内圧力:20kPa以上60kPa以下
成膜速度:0.01マイクロメートル/時以上0.1マイクロメートル/時以下
【0041】
障壁層25の主面25aを覆うアルミニウム窒化物領域27の被覆率は0.1以上であることが好ましい。小さすぎる被覆率は島状成長による結晶品質の低下が顕著になる。また、被覆率は0.9以下であることが好ましい。この方法では、大きすぎる被覆率は、アルミニウム窒化物領域上を十分にInGaN井戸層で覆えなくなる。
【0042】
活性層21の成長では、工程S106では、障壁層25の主面25a及びアルミニウム窒化物領域27を覆うInGaN井戸層29を成長する。InGaN井戸層29の形成に以下の成膜条件を適用できる:
成長温度T:摂氏730度以上摂氏770度以下
炉内圧力:60kPa以上100kPa以下
インジウム気相比:0.5以上0.8以下
成膜速度:0.1マイクロメートル/時以上0.8マイクロメートル/時以下
【0043】
井戸層29の厚さDは20nm以下であることが好ましい。20nmよりも厚いと結晶性が低下し易いからである。井戸層29の厚さDは0.5nm以上であることができる。0.5nmよりも薄いと、所望の波長を得るためのインジウム組成を高くする必要が生じる。InGaN井戸層29のインジウム組成(InGa1−XNにおけるX)は、0.18以上であることができる。インジウム組成Xが0.18以上であれば、標準的に用いられる井戸層厚みの3nmで500nmを超える波長を得ることができる。InGaN井戸層29のインジウム組成Xは0.30以下であることができる。0.3よりも大きいと、結晶性が低下し易い。
【0044】
次いで、活性層21の成長では、工程S107において、InGaN井戸層29上に障壁層31を成長する。障壁層31は障壁層25と同様の条件で成長できる。
【0045】
工程S108において、所望の量子井戸構造が完成するまで、工程S105、工程S106及び工程S107を繰り返すことができる。
【0046】
図4(a)〜図4(d)は、本実施の形態に係る方法により活性層を形成するときにおける井戸層の成長を模式的に示す図面である。本実施の形態によれば、図4(a)に示されるように、InGaNの成長に先立って障壁層25の主面25aのエリア25bにアルミニウム窒化物領域27を形成する。故に、InGaN29aは、アルミニウム窒化物領域27に覆われていないエリア25cに成長される。このInGaNはアルミニウム窒化物領域27の表面を覆うように成長していき、井戸層の成長途中ではInGaN29cを形成する。これと同様に、アルミニウム窒化物領域におけるいくつかの開口27aから複数のInGaN29a、29bが成長し、これらのInGaN同士が転位を生成することなく繋がってInGaN29cが形成される。一般に、IV族半導体(例えばSiGe/Si基板)やIII−V族化合物半導体(例えばInGaAs/GaAs基板)の格子不整合系エピタキシャル成長では、格子不整合度fが2%よりも大きくなると、島状成長が生じ、それぞれの島と島が合体する際に貫通転位が発生して、結晶性を悪化することがわかっている。InGaNにおいて、In組成0.18のとき、GaNとの格子不整合度は約2%に相当するため、同様のメカニズムで結晶性の悪化が生じる。活性層成長直前の面内の格子定数はGaNの値になるが、格子定数の小さな窒化アルミニウムを面内の被覆率が0.1以上0.9以下で形成すると、InGaN層初期の島状成長が抑制され、貫通転位の発生を抑制できる。このため、窒化アルミニウム層が無い場合に比べて、結晶性を向上でき、発光効率を向上できる。
格子不整合度fは以下のように規定される:
f=100×((エピタキシャル層の格子定数)−(基板の格子定数))/基板の格子定数
GaNのa軸方向の格子定数:0.3189ナノメートル
In組成0.18のInGaNのa軸格子定数:0.3252ナノメートル
InGaN成長を進めると、障壁層25の主面25a及びアルミニウム窒化物領域27の表面の全体に平坦に成長されたInGaN29dが形成される。この成長により、500nmよりも長波長の光を発生する高インジウム組成InGaN層が成長される。
【0047】
図4(e)〜図4(g)は、障壁層上のアルミニウム窒化物領域を用いることなく活性層を形成するときにおける井戸層の成長を模式的に示す図面である。InGaN成長の初期では、障壁層25の表面25a上に、分離された島状のInGaN26a、26bが成長される。さらにInGaN成長を進めると、島状のInGaN26c、26dが成長されて、InGaN26c、26dが互いに繋がるようになる。引き続きInGaN成長を行うと、InGaN26cとInGaN26dとの接続面に転位24が生成される。
【0048】
本実施の形態の方法によれば、高インジウム組成のInGaN層の成長に際しても、転位の生成が抑制される。
【0049】
好適な形態では、工程S103は、障壁層25を成長した後に、アルミニウム窒化物領域27を成長するに先立って、障壁層25の成長における圧力P(例えば40kPa〜101kPa)から井戸層29の成長における圧力P(例えば40kPa〜101kPa)に成長炉11の圧力を変更する工程を更に備えることができる。井戸層29の成膜における圧力Pは障壁層25の成膜における圧力Pよりも低いことが好ましい。この方法によれば、アルミニウム窒化物領域27の成長は、減圧成長の条件で行われる。トリメチルアルミニウムは、アンモニアと気相反応し易いため、常圧101kPaに近い成長圧力では、成長速度が得られず、好適でない。
【0050】
また、好適な形態では、工程S103は、障壁層25を成長した後に、アルミニウム窒化物領域27を成長するに先立って、障壁層25の成長温度Tから井戸層29の成長温度Tに基板温度を変更する工程を備えることが好ましい。アルミニウム窒化物領域27の成長は、上記の基板温度を変更した後に行われる。障壁層25の成長温度Tは井戸層29の成長温度Tよりも低い。この方法によれば、井戸層29の成長がアルミニウム窒化物領域27の成長に引き続き行われるので、アルミニウム窒化物領域27の成長後に井戸層29の成長温度に温度を変更することなく、井戸層29の成長が開始される。なお、基板温度を変更する工程では、障壁層25の成長における圧力Pから井戸層29の成長における圧力Pに成長炉11の圧力を変更できる。
【0051】
活性層21の成長の後に、図3(b)に示されるように、第2導電型窒化ガリウム系半導体領域33を成長する。本実施例は、活性層21上に電子ブロック層35を成長する。電子ブロック層35は活性層21上に接触している。電子ブロック層35は、例えばAlGaN、GaN等からなることができる。電子ブロック層35の成長温度は、例えば摂氏950度以上摂氏1100度以下であることができる。電子ブロック層35の厚みは、例えば5nm以上50nm以下であることができる。次いで、電子ブロック層35上にp型コンタクト層37を成長する。p型コンタクト層37は、例えばp型GaN、p型InGaN等からなることができる。
【0052】
工程S110において、p型コンタクト層37上にアノード電極を形成すると共に、GaN基板13の裏面13b上にカソード電極を形成する。
【0053】
図5は、本実施の形態に係るIII族窒化物発光素子の構造を概略的に示す模式図である。III族窒化物発光素子41は、500nmよりも長波長の光を発生するである。III族窒化物発光素子41としては、例えば発光ダイオード、半導体レーザ等である。III族窒化物発光素子41は、1×10+7cm−2以下の貫通転位密度の領域を有する窒化ガリウム支持基体43と、窒化ガリウム支持基体43上に設けられ活性層45とを備える。活性層45は、障壁層47と、アルミニウム窒化物領域49と、InGaN井戸層51とを含む。障壁層47は、窒化ガリウム系半導体からなり、例えばアンドープGaN、アンドープInGaN等からなることができる。アルミニウム窒化物領域49は、障壁層47の主面47aを部分的に覆う。図5に示されるように、アルミニウム窒化物領域49の形状は、障壁層毎に異なっている。アルミニウム窒化物領域49の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄い。InGaN井戸層51は、障壁層47の主面47a及びアルミニウム窒化物領域49を覆う。障壁層47の主面47aは、第1のエリア49b及び第2のエリア49cを含む。第1のエリア49bは、アルミニウム窒化物領域49に覆われておらず、第2のエリア49cは、アルミニウム窒化物領域49に覆われている。InGaN井戸層51は、第1のエリア49bに設けられたエピタキシャル成長部51bと、該エピタキシャル成長部51bからアルミニウム窒化物領域49の表面に沿って延びる延在部51cとを含む。
【0054】
このIII族窒化物発光素子41によれば、障壁層47の主面47aを部分的にアルミニウム窒化物領域49で覆われており、また、高インジウム組成のInGaN井戸層51がエピタキシャル成長部51b及び延在部51cを含む。アルミニウム窒化物領域上の延在部51cは障壁層47に接していないので、障壁層47とInGaNとの格子不整に関係なく、エピタキシャル成長部51bの結晶性を引き継ぐ。故に、InGaN井戸層51の全体にわたって、その結晶品質が良好になる。したがって、III族窒化物発光素子41は、500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位による発光強度の低下を避けることが可能になるが提供される。故に、InGaN井戸層の全体にわたって、その結晶品質が良好になる。したがって、III族窒化物発光素子は、500nmよりも長波長の光を発生可能であると共に、貫通転位により発光強度の低下を避けることが可能である。
【0055】
エピタキシャル成長部51bは、アルミニウム窒化物領域49の開口に現れる障壁層47上に設けられるので、障壁層と同様に良好な結晶品質を有する。延在部51cには、アルミニウム窒化物領域47の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄いので、エピタキシャル成長部51bからのラテラル成長による延在部51cは、エピタキシャル成長部51bの結晶品質と同等の結晶品質を引き継ぐことができる。
【0056】
既に説明したように、障壁層47の主面47aを覆うアルミニウム窒化物領域49の被覆率は0.1以上0.9以下であることが好ましい。小さすぎる被覆率は島状成長による結晶品質の低下が顕著になり、良質なエピタキシャル成長部51bが得られない。大きすぎる被覆率は、アルミニウム窒化物領域上を十分に延在部51cで覆えなくなる。また、より好ましくは、被覆率は0.3以上0.7以下である。また、アルミニウム窒化物領域49の厚さはモノレイヤでるので、量子井戸構造における電気的性質に与える影響は小さい。
【0057】
井戸層51の厚さは20nm以下0.5nm以上であることができる。InGaN井戸層51のインジウム組成Xが0.18以上であれば、長波長の発光が提供される。InGaN井戸層51のインジウム組成Xが0.30以下であることができる。大きすぎるインジウム組成は井戸層51に大きな歪みを与える。また、III族窒化物発光素子41は、500nm以上550nm以下の波長範囲の光を発生可能である
【0058】
III族窒化物発光素子41では、n型窒化ガリウム系半導体領域53とp型窒化ガリウム系半導体領域55との間に設けられている。
【0059】
n型窒化ガリウム系半導体領域53は、GaN支持基体43と活性層45との間に設けられたn型InGaN緩衝層57を更に備えることができる。InGaN緩衝層57のInGa1−YNにおけるインジウム組成Yは、InGaN井戸層51のインジウム組成よりも小さい。これによれば、高インジウム組成のInGaNの歪みを低減できる。また、n型窒化ガリウム系半導体領域53は、GaN支持基体43とInGaN緩衝層57との間に設けられたn型GaN層59を更に備えることができる。
【0060】
p型窒化ガリウム系半導体領域55は、p型電子ブロック層61及びp型コンタクト層63を含むことができる。
【0061】
窒化ガリウム支持基体43の主面43aは極性面であることができる。これによれば、低転位密度の窒化ガリウム支持基体が提供される。また、窒化ガリウム支持基体43の主面43aは半極性面であることができる。これによればピエゾ電界によるブルーシフトが小さい。また、いずれの場合も、低転位密度で大口径の窒化ガリウム支持基体を利用できる。
【0062】
図6は、井戸層と障壁層との界面近傍の結晶格子を模式的に示す図面である。図6(a)を参照すると、AlNの部分被覆を利用した活性層が示されている。障壁層Bの表面をAlNが部分的に覆っており、高インジウム組成の井戸層Wが、障壁層及びAlN領域を覆って成長されている。一方、図6(b)を参照すると、AlNの部分被覆を利用されていない活性層が示されている。高インジウム組成の井戸層Wが、障壁層Bの全表面を直接に覆って成長されている。
【0063】
図6(c)は、図6(a)及び図6(b)に示された量子井戸構造における応力分布を障壁層を基準にして示す図面である。図6(c)には、図6(a)に示された構造の応力特性線Sと図6(b)に示された構造の応力特性線Sとが示されている。井戸層Wのインジウム組成が多いので、格子不整が存在する。しかしながら、AlN部分被覆の作用により、図6(c)に示されるように、障壁層と井戸層の界面付近における応力の分布は変更される。AlN部分被覆により障壁層と井戸層との接触面積が小さくされるので、応力の最大値が小さくなっており、臨界歪みを越えていない。
【0064】
井戸層の表面を覆うAlNを用いることによって、Alを構成元素として含む井戸層を用いること必要がない。格子不整合を低減することを目的とし、例えば被覆率50%(0.5モノレイヤー)となるように井戸層成長の直前にAlNを成長する。井戸層の局所応力に最大値を低減可能であると共に、InGaN成長の島状成長の合体に伴う貫通転位密度が低減される。
【0065】
なお、該六方晶窒化ガリウムのc軸に直交する平面に対して15度以上90度以下の角度θで所定の方向に傾斜している。また、窒化ガリウム基板の主面は非極性面であることができる。この非極性面を用いて、貫通転位による発光強度低下を回避可能なIII族窒化物発光素子が作製される。
【0066】
(実施例)
以下の通り有機金属気相成長法により、単一量子井戸(SQW)構造を作製した。発光波長は約510nmである。原料には、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH)、シラン(SiH)を用いた。基板には、以下の2インチのn型自立GaN基板を用いた:
[11−20]方向オフ角、[1−100]方向オフ角、転位密度(cm−2
16.3〜16.8度、 0.20〜0.35度、 5×10+5〜7×10+6
以下に手順により成長を行った。まず、炉内圧力を101kPaに制御しながら炉内にNHとHを供給して、摂氏1050度の基板温度で10分間のクリーニングを行った。その後、TMG、NH、SiHを成長炉に供給しながら、厚さ2000nmのn型GaNバッファ層を成長した。次いで、NH以外の原料の供給を停止すると共に摂氏750度まで降温した後に、厚さ50nmのIn0.04Ga0.96N緩衝層を成長した。
【0067】
基板温度を摂氏880度まで昇温した後に、圧力101kPa、厚さ15nmのGaN障壁層を成長した。
【0068】
次に、NH以外の原料の供給を停止し、成長温度を摂氏700度まで下げると共に、炉内圧力を20kPaまで減圧にした後に、トリメチルアルミニウムを成長炉に供給を供給して、0.05μm/hの成長速度でAlN初期層を10秒間成長した。AlN初期層の厚さは、0.5モノレイヤであった。
【0069】
引き続き、TMGaとTMInを成長炉に供給して、厚さ3nmのIn0.18Ga0.82N井戸層を成長した。
【0070】
その後、基板温度を再び摂氏880度まで昇温した後に、厚さ10nmのGaN障壁層を成長した。この後に、炉内圧力を101kPaに戻した。
【0071】
基板温度を降温して成長炉からエピタキシャルウエハを取り出した。こうして、図7(a)に示されるSQW構造を作製した。比較のため、AlN初期層MLの無いエピタキシャルウエハも作製した。エピタキシャルウエハ表面を走査型電子顕微鏡にて、2万倍の倍率で観察した。AlN初期層MLの無いエピタキシャルウエハ表面では、図7(b)に示されるように、表面に貫通転位に起因のVピット(V状欠陥)が高密度で観察された。Vピット密度VPDは、例えば8×10+8cm−2程度であった。一方、AlN初期層MLが有るエピタキシャルウエハ表面には、図7(c)に示されるように、Vピットはほとんど存在せず、元々のGaN基板の貫通転位密度と同等であった。Vピット密度VPDは、例えば1×10+6cm−2未満であった。これらの結果は、井戸層で転位が発生したことが示された。
【0072】
室温フォトルミネッセンス(PL)法を用いて活性層の光学特性を評価した。波長325nmのHe−Cdレーザを用い、スポット径200μm、レーザパワー1mWを用いた。図7(d)に示されるように、PLスペクトルのピーク波長はそれぞれ約510nmであった。AlN初期層の有るエピタキシャルウエハは、AlN初期層の無いエピタキシャルウエハと比較して、約2倍のPL強度が得られた。半値全幅は、AlN層有するエピタキシャルウエハでは50nmであり、Al層無しのエピタキシャルウエハで63nmであった。AlN層無いエピタキシャルウエハの半値全幅が大きくなった原因として、転位の生成による歪み不均一化の影響があると考えられる。
【0073】
(実施例2)
発光ダイオード(LED)を以下の通り有機金属気相成長法によりを作製した。基板には、以下の2インチの自立GaN基板を用いた:
[11−20]方向オフ角、[1−100]方向オフ角、転位密度(cm−2
16.2〜16.5度、 0.15〜0.32度、 5×10+5〜6×10+6
【0074】
以下の手順で成長した。まず、成長炉内の圧力を101kPaに調整しながら成長炉内にNHとHを供給しながら、摂氏1050度の基板温度で10分間クリーニングを行った。その後、TMG、NH、SiHを導入して、厚さ2000nmのn型GaNバッファ層を成長した。NH以外の原料の供給を停止し、摂氏750度まで降温した後に、厚さ50nmのIn0.04Ga0.96N緩衝層を成長した。
【0075】
次いで、基板温度を摂氏880度まで昇温した後に、厚さ15nmのGaN障壁層を成長した。
【0076】
次に、NH以外の原料の供給を停止し、成長温度を摂氏700度まで下げ、成長炉内圧力を20kPaまで減圧にした。この後に、トリメチルアルミニウムを成長炉に供給を供給して、AlN初期層を0.5モノレイヤの膜厚を成長した。成長速度は、0.05μm/hであった。
【0077】
その後すぐに、TMGaとTMInを導入して、厚さ3nmのIn0.18Ga0.82N井戸層を成長した。
【0078】
その後、基板温度を再び摂氏880度まで昇温し、厚さ15nmのGaN障壁層を成長した。AlN初期層、井戸層及び障壁層の成長を3回繰り返し、三重量子井戸構造を作製した。
【0079】
その後、成長炉内圧力を101kPaに戻すと共に、摂氏1000度に基板温度を昇温した後に、厚さ20nmのMgドープAl0.08Ga0.92N層を成長した。引き続き、厚さ50nmのp型GaNを成長した。降温した後に、LED構造のエピタキシャルウエハを成長炉から取り出した。比較のため、AlN初期層の無いエピタキシャルウエハも同様に作製した。
【0080】
引き続き、以下の順にデバイスプロセスを行った。エピタキシャルウエハ上に半透明p電極を形成した。この後に、素子分離のためのメサをエピタキシャルウエハに形成した。GaN基板の裏面にn電極を形成した。電極アニール及びpパッド電極の形成を行って基板生産物を作製した。電極材の堆積には、例えば蒸着法を用い、メサのパターン形成にはフォトリソグラフィー法を用い、メサの形成には反応性イオンエッチング法を用いた。
【0081】
半導体チップのサイズは400μm×400μmであるように、発光ダイオードが基板生産物に配列されている。基板生産物を分離して複数の半導体チップを形成した。基板生産物上のいくつかの発光ダイオードに通電を行って、エレクトロルミネッセンス強度を測定した。発光波長は約510nmであった。印加電流20mAでの光出力値は以下の通りであった。
AlN層有り 0.9mW
AlN層無し 0.4mW。
このことから、AlN層有りのもので、出力が向上することがわかった。
【0082】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物発光素子を製造する方法及びエピタキシャルウエハを製造する方法の主要な工程を示す図面である。
【図2】図2は、III族窒化物発光素子を製造する方法及びエピタキシャルウエハを製造する方法の主要な工程を示す図面である。
【図3】図3は、III族窒化物発光素子を製造する方法及びエピタキシャルウエハを製造する方法の主要な工程を示す図面である。
【図4】図4(a)〜図4(d)は、本実施の形態に係る方法により活性層を形成するときにおける井戸層の成長を模式的に示す図面である。図4(e)〜図4(g)は、障壁層上のアルミニウム窒化物領域を用いることなく活性層を形成するときにおける井戸層の成長を模式的に示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係るIII族窒化物発光素子の構造を概略的に示す模式図である。
【図6】図6は、井戸層と障壁層との界面近傍を模式的に示す図面である。
【図7】図7は、発光ダイオード構造のエピタキシャルウエハに関する実施例を示す図面である。
【符号の説明】
【0084】
13…窒化ガリウム半導体基板(GaN基板)、13a…GaN基板主面、13b…GaN基板裏面、13c…エッジ、15…第1導電型窒化ガリウム系半導体領域、17…n型GaN層、19…InGaN緩衝層、21…活性層、25…障壁層、27…アルミニウム窒化物領域、29…InGa1−XN(0<X<1)井戸層、33…第2導電型窒化ガリウム系半導体領域、35…電子ブロック層、
37…p型コンタクト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nmよりも長波長の光を発生するIII族窒化物発光素子を作製する方法であって、
窒化ガリウム半導体基板の主面上に、窒化ガリウム系半導体からなり活性層のための障壁層を成長する工程と、
前記障壁層の主面を部分的に覆うアルミニウム窒化物領域を形成する工程と、
前記障壁層の主面及び前記アルミニウム窒化物領域を覆うようにInGaN井戸層を成長する工程と
を備え、
前記窒化ガリウム半導体基板は、1×10+7cm−2以下の貫通転位密度の領域を有しており、
前記アルミニウム窒化物領域の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄い、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記障壁層の主面を覆う前記アルミニウム窒化物領域の被覆率は、0.1以上であり、0.9以下である、ことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記井戸層及び障壁層の成長は有機金属気相成長法で行われる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記アルミニウム窒化物領域を形成する工程では、インジウム原料及びガリウム原料を成長炉に供給すること無くアルミニウム原料及び窒素原料を成長炉に供給して、前記アルミニウム窒化物領域が成長される、ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記障壁層を成長した後に、前記アルミニウム窒化物領域を成長するに先立って、前記障壁層の成長における第1の成長温度から前記井戸層の成長における第2の成長温度に基板温度を変更する工程を更に備え、
前記アルミニウム窒化物領域の成長は、前記基板温度を変更した後に行われ、
前記第2の成長温度は前記第1の成長温度よりも低い、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された方法。
【請求項6】
前記基板温度を変更する前記工程では、前記障壁層の成長における第1の圧力から前記井戸層の成長における第2の圧力に成長炉の圧力が変更される、ことを特徴とする請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記障壁層を成長した後に、前記アルミニウム窒化物領域を成長するに先立って、前記障壁層の成長における第1の圧力から前記井戸層の成長における第2の圧力に成長炉の圧力を変更する工程を更に備え、
前記第2の圧力は前記第1の圧力よりも低い、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された方法。
【請求項8】
前記井戸層の厚さは20nm以下である、ことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載された方法。
【請求項9】
前記InGaN井戸層のInGa1−XNにおけるインジウム組成Xは、0.18以上である、ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された方法。
【請求項10】
前記窒化ガリウム基板の前記主面は半極性面であり、
前記窒化ガリウム基板の前記主面は、前記窒化ガリウム基板の六方晶窒化ガリウムのc面から90度未満の角度で傾斜している、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された方法。
【請求項11】
前記窒化ガリウム基板の前記主面は非極性面である、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された方法。

【請求項12】
前記窒化ガリウム基板の前記主面は極性面である、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載された方法。
【請求項13】
500nmよりも長波長の光を発生するIII族窒化物発光素子であって、
1×10+7cm−2以下の貫通転位密度の領域を有する窒化ガリウム支持基体と、
前記窒化ガリウム支持基体上に設けられ活性層と
を備え、
前記活性層は、窒化ガリウム系半導体からなる障壁層と、前記障壁層の主面を部分的に覆うアルミニウム窒化物領域と、前記障壁層の主面及び前記アルミニウム窒化物領域を覆うInGaN井戸層とを含み、
前記アルミニウム窒化物領域の平均膜厚が1モノレイヤよりも薄く、
前記障壁層の前記主面は、前記アルミニウム窒化物領域に覆われていない第1のエリアと前記アルミニウム窒化物領域に覆われた第2のエリアとを含み、
前記InGaN井戸層は、前記第1のエリアに設けられたエピタキシャル成長部と、該エピタキシャル成長部から前記アルミニウム窒化物領域の表面に沿って設けられた延在部とを含む、ことを特徴とするIII族窒化物発光素子。
【請求項14】
前記障壁層の主面を覆う前記アルミニウム窒化物領域の被覆率は、0.1以上であり、0.9以下である、ことを特徴とする請求項13に記載されたIII族窒化物発光素子。
【請求項15】
前記井戸層の厚さは20nm以下である、ことを特徴とする請求項12または請求項14に記載されたIII族窒化物発光素子。
【請求項16】
前記InGaN井戸層のInGa1−XNにおけるインジウム組成Xは0.18以上である、ことを特徴とする請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載されたIII族窒化物発光素子。
【請求項17】
前記インジウム組成Xは0.30以下である、ことを特徴とする請求項16に記載されたIII族窒化物発光素子。
【請求項18】
前記GaN支持基体と前記活性層との間に設けられたInGaN緩衝層を更に備え、
前記InGaN緩衝層のInGa1−YNにおけるインジウム組成Yは、前記InGaN井戸層のインジウム組成よりも小さい、ことを特徴とする請求項13〜請求項17のいずれか一項に記載されたIII族窒化物発光素子。
【請求項19】
前記窒化ガリウム支持基体の前記主面は、前記窒化ガリウム基板の六方晶窒化ガリウムのc面から90度以下の角度で傾斜している、ことを特徴とする請求項13〜請求項18のいずれか一項に記載されたIII族窒化物発光素子。
【請求項20】
前記窒化ガリウム支持基体の前記主面は極性面である、ことを特徴とする請求項13〜請求項18のいずれか一項に記載されたIII族窒化物発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−21360(P2010−21360A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180451(P2008−180451)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】