説明

NMF産生促進剤

【課題】本発明は、表皮細胞におけるNMF産生を促進し、角質層の保湿機能を高めるものであり、肌の乾燥やカユミを改善するNMF産生促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの中から選ばれる一種又は二種以上の抽出物を含有することを特徴とするNMF産生促進剤を提供する。
【効果】食品、化粧品、医薬部外品または医薬品等に配合して表皮細胞におけるNMF産生を促進することにより角質層の保湿機能を高め、肌の乾燥やカユミの改善にその有効性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なNMF産生促進剤に関し、特に表皮顆粒層に存在する表皮細胞におけるNMFの産生を促進することにより角質層の保湿機能を改善し、乾燥に由来するカユミ、小ジワ、肌荒れ等を改善する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
角質層の保湿性に重要な役割を果たしているのがNMFであることは古くから知られており、これまでNMF成分は保湿剤の開発に応用されてきた。角質層におけるNMFの減少は、その保湿性を低下させ乾燥を招く。その結果として乾燥性のカユミが引き起こされる。近年、NMFの主体をなすアミノ酸は、ケラトヒアリン顆粒の主成分であるフィラグリンというタンパク質の分解により産生されることが明らかとなった(非特許文献1)。すなわち、表皮顆粒層において合成されたプロフィラグリンはケラトヒアリン顆粒に蓄積された後、顆粒層上層から角質層に至る過程で脱リン酸、加水分解を経てフィラグリンに分解される。さらにフィラグリンは角質層上層に至る過程でアミノ酸に分解されNMFの主体となる。一方、乾燥肌を呈する病態とフィラグリンに関する研究が進められ、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎などの角質層中ではアミノ酸が減少していることが知られているが、それらの皮膚ではフィラグリンの発現が低下していることが明らかにされている(非特許文献2、3)。したがって、角質層の保湿性維持の目的でNMFの産生を高めるためにはケラチノサイトにおけるフィラグリンあるいはプロフィラグリンの生成促進が重要であると考えられるようになり、特許文献1〜3などの植物成分を用いたフィラグリンあるいはプロフィラグリンの生成促進剤が報告されている。一方、メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの抽出物のNMF産生促進効果、角質層保湿機能改善効果、肌の保水能力改善効果およびカユミ改善効果については知られていない。
【非特許文献1】Scott I.R.,Biochim.Biophys.Acta.,719,110−117(1982)
【非特許文献2】Tezuka T.,Dermatology,188,21−24(1994)
【非特許文献3】Seguchi T.,Arch.Dermatol.Res.,288,442−446(1996)
【特許文献1】特開2001−261568
【特許文献2】特開2002−201125
【特許文献3】特開2002−363054
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のようにフィラグリンあるいはプロフィラグリンの生成を促進し、角質層中のNMF量を上昇させ保湿能を高める植物成分が提案されているが、NMFの産生を促進することで健康な皮膚状態を維持する作用を持つ他の物質または化合物の提供は依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記実情に鑑み、本発明者らは、表皮ケラチノサイトのNMF産生を促進するNMF産生促進剤を見出すべく誠意研究を行った結果、メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの抽出物がその目的に合致することを見出し、さらには、角質層保湿機能改善効果、肌の保水能力改善効果およびカユミ改善効果についても見出すことによって本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
すなわち、本発明は、メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲから選ばれる一種または二種以上の抽出物を含有することを特徴とするNMF産生促進剤、角質層保湿機能改善剤、保水能力改善用皮膚外用剤およびカユミ改善用皮膚外用剤に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で用いられるメハジキ(学名:Leonurus sibiricus L.)は、シソ科メハジキ属に属する草本で、本州、四国、九州、朝鮮及び中国から東南アジアにかけて山野の日当りの良い場所に自生する。メハジキの地上部の全草は益母草(ヤクモソウ)の名称で、また、成熟果実がじゅう蔚子(ジュウイシ)の名称として流通しているので使用できる。
【0007】
本発明で用いられるアンズは、バラ科に属するホンアンズ(学名:Prunus armeniaca L)、アンズ(学名:Prunus armeniaca L.var.ansu Maximowicz)又はその他近縁植物で、中国、日本に広く分布する。種子を乾燥したもの(生薬名:杏仁)などを利用することができる。
【0008】
本発明で用いられるスイカズラは、スイカズラ科に属するスイカズラ(学名:Lonicera japonica Thinberg)又はその他同属植物であり、日本や中国などに自生するツル性の植物である。枝ごと摘み刻むか、または葉だけを摘み取り乾燥したもの(生薬名:忍冬)や花部を乾燥したもの(生薬名:金銀花)などを利用することができる。
【0009】
本発明で用いられるサイシンは、ウマノスズクサ科に属するケイリンサイシン(学名:Asiasarum heterotropoides F.)またはウスバサイシン(学名:Asiasarum sieboldi F.)であり、根茎および根、または根つき全草を乾燥したもの(細辛)などを利用することができる。
【0010】
本発明で用いられるトウキは、セリ科に属するカラトウキ(学名:Angelica sinensis Diels)、トウキ(学名:Angelica acutioba Kitagawa)又はその他同属植物であり、根を乾燥したもの(生薬名:当帰)などを利用することができる。
【0011】
本発明で用いられるハトムギ(学名:Coix lacryma−jobi Linne var. ma−yuen Stapf)は、イネ科に属する草本であり、種皮を除いた成熟種子を乾燥したもの(生薬名:ヨクイニン)などを利用することができる。
【0012】
本発明で用いられるモモは、バラ科に属するモモ(学名:Prumus persica Batsch)、ノモモ(学名:Prumus persica Batsch var davidana Maximowicz)又はその他同属植物である。成熟した種子を乾燥したもの(生薬名:桃仁)などを利用することができる。
【0013】
本発明で用いられるテンチャ(学名:Rubus suavissimus Shugan Lee)は、バラ科に属し、中国南西部の山岳地帯にのみ産し、開胃茶とも呼ばれ、食欲増進、去痰、咳止めとして用いられている。葉を乾燥したもの(生薬名:甜茶)などを利用することができる。
【0014】
本発明で用いられるシロキクラゲ(学名:Tremella fuciformis B.)は、シロキクラゲ科に属するキノコで、子実体、菌体などを利用することができる。
【0015】
また、本発明で使用するメハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの抽出物は、例えば、植物を抽出溶媒と共に浸漬または加熱した後、濾過し、必要ならば濃縮して得られる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)、炭化水素(ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、アセトニトリル等があげられる。これらの溶媒は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水あるいは水溶性溶媒(水と任意の割合で混合可能な溶媒。例えば、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等)のうち1種または2種以上の溶媒を用いるのがよい。抽出物はそのまま用いてもよいし、溶媒を一部、または全部留去して用いてもよい。
【0016】
本発明に関わるNMF産生促進剤を上記の目的で用いるには、通常全身的または局所的に投与される。投与方法としては、経口投与または経皮投与などが挙げられる。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間などにより異なるが、通常成人1人当たり1回に1mg〜1g、好ましくは20mg〜200mgの範囲で1日1回から数回投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0017】
本発明のNMF産生促進剤には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、希釈剤を用いることもできる。希釈剤としては固体、液体、半固体でも良く、例えば、次のものが挙げられる。すなわち、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤などである。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロースまたはその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、ラウリン脂、ワセリン、パラフィン、高級アルコールなどである。
【0018】
本発明に用いるNMF産生促進剤は、食品、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、錠菓、飲料、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤などを含む)等が挙げられる。
【0019】
本発明に用いるメハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの抽出物の配合量は特に限定されないが、乾燥物として0.0001〜75重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.001〜30重量%である。0.0001重量%以下では効果が低く、また75重量%を超えても効果に大きな増強はみられにくく、効率的でない。また、添加の方法については、予め加えておいても製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0020】
本発明のメハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの抽出物はNMF産生促進効果に優れていた。また、これらの抽出物を1種又は2種以上含有する皮膚外用剤は、安全で肌の乾燥やカユミの改善効果に優れていた。
【0021】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。
【実施例1】
【0022】
製造例1 メハジキのエタノール抽出物
益母草100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、メハジキのエタノール抽出物を7.5g得た。
【0023】
製造例2 アンズのエタノール抽出物
杏仁100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、アンズのエタノール抽出物を5.3g得た。
【0024】
製造例3 スイカズラのエタノール抽出物
金銀花100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、スイカズラのエタノール抽出物を5.6g得た。
【0025】
製造例4 サイシンのエタノール抽出物
細辛100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、サイシンのエタノール抽出物を4.9g得た。
【0026】
製造例5 トウキのエタノール抽出物
当帰100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、トウキのエタノール抽出物を5.5g得た。
【0027】
製造例6 ハトムギのエタノール抽出物
ヨクイニン100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、ハトムギのエタノール抽出物を5.7g得た。
【0028】
製造例7 モモのエタノール抽出物
桃仁100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、モモのエタノール抽出物を6.5g得た。
【0029】
製造例8 テンチャのエタノール抽出物
甜茶100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、テンチャのエタノール抽出物を4.5g得た。
【0030】
製造例9 シロキクラゲのエタノール抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物100gに900mLの30%エタノールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、シロキクラゲのエタノール抽出物を3.4g得た。
【0031】
製造例10 メハジキの熱水抽出物
益母草20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してメハジキの熱水抽出物を2.2g得た。
【0032】
製造例11 アンズの熱水抽出物
杏仁20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してアンズの熱水抽出物を2.5g得た。
【0033】
製造例12 スイカズラの熱水抽出物
金銀花20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してスイカズラの熱水抽出物を2.0g得た。
【0034】
製造例13 サイシンの熱水抽出物
細辛20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してサイシンの熱水抽出物を1.5g得た。
【0035】
製造例14 トウキの熱水抽出物
当帰20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトウキの熱水抽出物を1.8g得た。
【0036】
製造例15 ハトムギの熱水抽出物
ヨクイニン20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してハトムギの熱水抽出物を2.3g得た。
【0037】
製造例16 モモの熱水抽出物
桃仁20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してモモの熱水抽出物を1.9g得た。
【0038】
製造例17 テンチャの熱水抽出物
甜茶20gに400mLの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してテンチャの熱水抽出物を2.1g得た。
【0039】
製造例18 シロキクラゲの熱水抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物20gに2Lの精製水を加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してシロキクラゲの熱水抽出物を1.5g得た。
【0040】
製造例19 メハジキの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
メハジキの全草の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、メハジキの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0041】
製造例20 アンズの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
杏仁100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、アンズの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0042】
製造例21 スイカズラの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
忍冬100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、スイカズラの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0043】
製造例22 サイシンの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
細辛100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、サイシンの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0044】
製造例23 トウキの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
当帰100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、トウキの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0045】
製造例24 ハトムギの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
ヨクイニン100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、ハトムギの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0046】
製造例25 モモの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
桃仁100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、モモの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0047】
製造例26 テンチャの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
甜茶100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、テンチャの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【0048】
製造例27 シロキクラゲの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物
シロキクラゲの子実体の乾燥物100gに1kgの精製水及び1kgの1,3−ブチレングリコールを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、シロキクラゲの1,3−ブチレングリコール水溶液抽出物を1.9kg得た。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明に係る実施例の処方を示す。
【0050】
処方例1 クリーム1
処方 配合量(重量%)
1.メハジキのエタノール抽出物(製造例1) 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 8.5
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 67.65
[製造方法]成分2〜9を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0051】
処方例2 クリーム2
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をアンズのエタノール抽出物(製造例2)に置き換えたものをクリーム2とした。
【0052】
処方例3 クリーム3
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をスイカズラのエタノール抽出物(製造例3)に置き換えたものをクリーム3とした。
【0053】
処方例4 クリーム4
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をサイシンのエタノール抽出物(製造例4)に置き換えたものをクリーム4とした。
【0054】
処方例5 クリーム5
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をトウキのエタノール抽出物(製造例5)に置き換えたものをクリーム5とした。
【0055】
処方例6 クリーム6
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をハトムギのエタノール抽出物(製造例6)に置き換えたものをクリーム6とした。
【0056】
処方例7 クリーム7
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をモモのエタノール抽出物(製造例7)に置き換えたものをクリーム7とした。
【0057】
処方例8 クリーム8
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をテンチャのエタノール抽出物(製造例8)に置き換えたものをクリーム8とした。
【0058】
処方例9 クリーム9
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物をシロキクラゲのエタノール抽出物(製造例9)に置き換えたものをクリーム9とした。
【0059】
比較例1 従来のクリーム
処方例1において、メハジキのエタノール抽出物を精製水に置き換えたものを従来のクリームとした。
【0060】
処方例10 化粧水
処方 配合量(重量%)
1.メハジキの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例19) 0.1
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 0.1
11.精製水 84.47
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0061】
処方例11 乳液
処方 配合量(重量%)
1.アンズの熱水抽出物(製造例11) 0.05
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水 73.15
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0062】
処方例12 軟膏
処方 配合量(重量%)
1.スイカズラの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例21) 1.0
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水 65.9
[製造方法]成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6〜8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0063】
処方例13 ファンデーション
処方 配合量(重量%)
1.サイシンの1,3−ブチレン
グリコール水溶液抽出物(製造例22) 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0
(20E.O.)
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
11.ベントナイト 0.5
12.プロピレングリコール 4.0
13.トリエタノールアミン 1.1
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.二酸化チタン 8.0
16.タルク 4.0
17.ベンガラ 1.0
18.黄酸化鉄 2.0
19.香料 0.1
20.精製水 60.0
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分19を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0064】
処方例14 浴用剤
処方 配合量(重量%)
1.トウキの熱水抽出物(製造例14) 5.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 0.05
4.香料 0.25
5.無水硫酸ナトリウム 44.7
[製造方法]成分1〜5を均一に混合し製品とする。
【0065】
処方例15 錠菓
処方 配合量(重量%)
1.ハトムギの熱水抽出物(製造例15) 2.0
2.乾燥コーンスターチ 50.0
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 適量
7.水 適量
[製造方法]成分1〜4及び7を混合し、顆粒成形する。成形した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0066】
処方例16 飲料
処方 配合量(重量%)
1.モモの熱水抽出物(製造例16) 1.0
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.水にて全量を100とする
[製造方法]成分2及び3を少量の水に溶解する。次いで、成分1及び4、5を加えて混合する。
【0067】
処方例17 錠剤
処方 配合量(重量%)
1.シロキクラゲの熱水抽出物(製造例18) 10.0
2.トウモロコシデンプン 10.0
3.精製白糖 20.0
4.カルボキシメチルセルロース 10.0
5.微結晶セルロース 35.0
6.ポリビニルピロリドン 5.0
7.タルク 10.0
[製造方法]成分1〜5を混合し、次いで成分6の水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化した。これに滑沢剤として成分7を加えて配合した後、1錠100mgの錠剤に打錠した。
【0068】
処方例18 散剤
処方 配合量(重量%)
1.テンチャの熱水抽出物(製造例17) 10.0
2.トウモロコシデンプン 40.0
3.微結晶セルロース 50.0
[製造方法]上記成分を混合し、常法により散剤とした。
【0069】
処方例19 注射剤
処方 配合量(重量%)
1.メハジキの熱水抽出物(製造例10) 1.0
2.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 3.7
3.ゴマ油 0.2
4.塩化ナトリウム 0.9
5.プロピレングリコール 4.0
6.リン酸緩衝液(0.1M、pH6.0) 10.0
7.蒸留水 80.2
[製造方法]成分2、3及び成分5の半量を混合して約80℃で加温溶解し、これに成分1と4〜6を予め溶解した成分7を約80℃に加温して加え全量を1000mLの水溶液とした。この水溶液を1mLのアンプルに分注して熔閉した後、加熱滅菌した。
【実施例3】
【0070】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例をあげる。
【0071】
実験例1 ケラチノサイトのNMF産生促進試験
培養ケラチノサイトのNMF産生の指標となるプロフィラグリンmRNA発現量を下記の条件にて測定した。
【0072】
プロフィラグリンmRNA発現に及ぼす影響の評価法
マウスケラチノサイト由来Pam212細胞を10% FCSを含むEagle’s MEM培地にて37℃、5%CO条件下で培養した。コンフルエントな状態なったところで0.01mg/ml濃度の試料を添加したEagle’s MEM培地にてさらに24時間培養した後、総RNAの抽出を行った(n=3)。総RNAの抽出にはISOGEN(ニッポンジーン)を用いた。Pam212細胞から抽出した総RNAを基にRT−PCR法によりプロフィラグリンmRNA発現量の測定を行った。RT−PCR法にはTaKaRa RNA PCR Kit (AMV) Ver.2.1を用い、プロフィラグリン用のprimerとしては5’GAATCCATATTTACAGCAAAGCACCTTG 3’および5’GGTATGTCCAATGTGATTGCACGATTG3’を用いた。また、内部標準としてはGAPDHを用いた。その他の操作は定められた方法にしたがい、PCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、プロフィラグリンおよびGAPDHのmRNA発現をバンドとして確認した。これらのバンドをポラロイドカメラにて撮影してデンシトメーターを用いて定量化し、プロフィラグリンmRNAの発現量を内部標準であるGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。

NMF産生率(%)=B/A×100

A:抽出物未添加の場合のプロフィラグリン/GAPDH mRNA発現量
B:抽出物添加の場合のプロフィラグリン/GAPDH mRNA発現量
【0073】
これらの試験結果を表1に示した。その結果、メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲの抽出物には優れたNMF産生促進作用が認められた。また、製造例10〜27の抽出物の試験を行ったところ、いずれも優れたNMF産生促進作用を示した。
【0074】
【表1】

【0075】
実験例2 使用試験
処方例1〜9のクリーム及び比較例1の従来のクリームを用いて、各々肌の乾燥やカユミに悩む女性30人(30〜45才)を対象に2ヶ月間の使用試験を行った。使用後、肌の乾燥およびカユミの改善効果についてのアンケート調査を行った。アンケートの評価基準は、有効なものを「優」、やや有効なものを「良」、わずかに有効なものを「可」、無効なものを「不可」として評価した。
【0076】
これらの結果を表2に示した。処方例1〜9のNMF産生促進剤を含む皮膚外用剤は優れた肌の乾燥やカユミの改善効果を示した。なお、試験期間中皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。
【0077】
【表2】

【0078】
処方例10〜18の化粧水、乳液、軟膏、ファンデーション、浴用剤、錠菓、飲料、錠剤および散剤の使用試験を行ったところ、いずれも安全で優れた肌の乾燥やカユミの改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の活用例として、食品、化粧品、医薬部外品または医薬品のいずれにも用いることができる。その剤型としては、錠菓、飲料、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、散剤、丸剤、錠剤、注射剤、坐剤、乳剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤(チンキ剤、流エキス剤、酒精剤、懸濁剤、リモナーデ剤などを含む)等が挙げられ、表皮細胞におけるNMFの産生促進により角質層の保湿機能を高め、肌の乾燥やカユミの改善効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲから選ばれる一種または二種以上の抽出物を含有することを特徴とするNMF産生促進剤。
【請求項2】
メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲから選ばれる一種または二種以上の抽出物を含有することを特徴とする角質層保湿機能改善剤。
【請求項3】
メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲから選ばれる一種または二種以上の抽出物を含有することを特徴とする保水能力改善用皮膚外用剤。
【請求項4】
メハジキ、アンズ、スイカズラ、サイシン、トウキ、ハトムギ、モモ、テンチャおよびシロキクラゲから選ばれる一種または二種以上の抽出物を含有することを特徴とするカユミ改善用皮膚外用剤。


【公開番号】特開2006−124350(P2006−124350A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317529(P2004−317529)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】