説明

NO産生抑制作用を有する化合物、抗アレルギー剤及びNO産生抑制作用を有する化合物の製造方法

【課題】 天然物質より得られる化合物であって、NO産生抑制作用にもとづく抗アレルギー作用を示す新規なNO産生抑制活性物質、このNO産生抑制活性物質をベースとし、安全かつ高性能の抗アレルギー剤、及び天然物質より、このNO産生抑制活性物質を得る製造方法を提供する。
【解決手段】 下記の構造式(1)、又は類似の構造式で表されることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物、このNO産生抑制活性物質を含有する抗アレルギー剤、及び天然物質より、このNO産生抑制活性物質を得る製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショウガ科(Zingiberaceae)に属する天然植物から抽出することができるNO産生抑制作用を有する化合物、この化合物をベースとして含有する抗アレルギー剤(天然医薬品)、及びこの化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物質に由来する天然医薬品は、安全でありかつ手軽に飲食用として供することができる医薬品と考えられている。そこで、化学合成品に由来しない新しい天然医薬品を開発すべく、世界の種々の伝承医学において使用されている生薬が広く注目されている。例えば、ヒドロコーチゾン等のNO産生を抑制する薬剤は、抗アレルギー薬に分類される医療用の医薬品において、アトピーをはじめとする種々のアレルギー疾患の治療薬として使われているが、このような抗アレルギー薬についても、生薬等より得られる天然医薬品の開発が常に求められている。
【0003】
本発明者は、天然医薬品の開発という方向のもとで、特に抗I型アレルギー剤の開発を行ってきた。この中で、本発明者は、広く東南アジアから中国まで分布しており、その根茎が健胃や駆風、皮膚疾患の治療などに用いられているアルピニアガランガ(Alpinia galanga)に着目し、その抽出物が、NO産生抑制作用にもとづく抗アレルギー作用を示すことを突き止めている(特開2004−189669号公報)。
【0004】
さらに本発明者は、前記抽出物中の、抗アレルギー作用を発現する活性本体(活性物質)を見出し、下記の構造式(5)(1'S-1'-acetoxychavicol acetate)で表わされる公知化合物を得ている。
【0005】
【化1】


(式中、Acはアセチル基を表わす。)
【特許文献1】特開2004−189669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、天然物質より得られる化合物であって、前記構造式(5)の化合物と同様に、NO産生抑制作用にもとづく抗アレルギー作用を示す新規な化合物(NO産生抑制活性物質)を提供することを課題とする。本発明は、又、このNO産生抑制活性物質をベースとし、安全かつ高性能の抗アレルギー剤を提供することを課題とする。本発明は、さらに、天然物質より、このNO産生抑制活性物質を得る製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ショウガ科の植物中に含有される活性本体についてさらに検討を加えた結果、アルピニアガランガの抽出物より、前記構造式(5)の化合物の他にも、NO産生抑制作用を有する化合物が得られること、さらにその化合物が従来は知られていない構造を有することを見出し、この知見をベースに本発明を完成した。
【0008】
本発明の第一の態様は、下記の構造式(1)、(2)、(3)若しくは(4)で表されることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物、又は下記の構造式(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物の鏡像体(鏡像異性体)であることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物を提供するものである。
【0009】
【化2】


(請求項1)
【0010】
【化3】


(請求項2)
【0011】
【化4】


(請求項3)
【0012】
【化5】


(請求項4)
【0013】
なお、以下の説明に於いて、構造式(1)で示される化合物をガランガナール(galanganal)といい、構造式(2)で示される化合物、この化合物の鏡像体及びこれらの混合物をガランガノールA(galanganol A)、構造式(3)で示される化合物、この化合物の鏡像体及びこれらの混合物をガランガノールB(galanganol B)、及び、構造式(4)で示される化合物、この化合物の鏡像体及びこれらの混合物をガランガノールC(galanganol C)ということがある。
【0014】
ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCは、アルピニアガランガをベースにして、抽出分画法を適用して得ることができる。より具体的には、アルピニアガランガの根茎を、アセトン、アセトンと水の混合溶媒、低級アルコール、低級アルコールと水との混合溶媒等の抽出剤により抽出し、抽出物をクロマトグラフィーにより分画処理して得られる。抽出剤としてはアセトン又は低級アルコールを、濃度15重量%以上を含む水溶液が好ましい。
【0015】
請求項5は、この好ましい態様に該当し、前記の請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のNO産生抑制作用を有する化合物(すなわちガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールC)であって、アルピニアガランガの根茎を、アセトンまたは低級アルコールを濃度15重量%以上含む水溶液により抽出し、抽出物を、クロマトグラフィーにより分画処理して得られたことを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物を提供するものである。
【0016】
ここで、低級アルコールとは、炭素数6以下のアルコールであって、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールが例示される。抽出は室温又は抽出剤の沸点未満の温度で加熱して行うことができるが、室温で抽出する場合は、1〜3昼夜かけて抽出を行い、好ましくはこの抽出を数回繰り返す。加熱することにより、1回の抽出時間を1〜4時間程度まで短縮することができる。
【0017】
ここで、アルピニアガランガとは、別名をナンキョーソウといい、タイではカーと呼ばれているショウガ科に属する植物であり、タイでは香辛料として使用されているが、前記のようにその根茎が健胃や駆風、皮膚疾患の治療などに用いられている。
【0018】
前記の抽出分画法により、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCが、単なる抽出物に比べてはるかに高純度で得られる。後述する抗アレルギー剤等の医薬品として用いる場合の製剤の容易さ等の観点から、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCであって純度、すなわちその含有率が10重量%以上、より好ましくは90重量%以上のものが好ましいが、前記の抽出及び分画処理により、90重量%以上の高純度の化合物を容易に得ることができる。
【0019】
本発明の第二の態様は、前記構造式(1)、(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物、又は前記構造式(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物の鏡像体(鏡像異性体)(NO産生抑制活性物質、すなわちガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールC)を含有することを特徴とする抗アレルギー剤(請求項6)に関するものである。この抗アレルギー剤は、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCのNO産生抑制作用を利用したものである。この抗アレルギー剤中の、この化合物の含有割合は特に限定されないが、製剤の容易さや投与しやすさ等の観点から、抗アレルギー剤中に5重量%以上含有することが好ましい。この抗アレルギー剤は、前記構造式(1)、(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物、又は前記構造式(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物の鏡像体(鏡像異性体)をそれぞれ1種類で含有してもよいし、これらから選ばれる2種類以上の混合物を含有してもよい。通常、前記構造式(2)、(3)又は(4)で表される化合物については、その鏡像体との混合物として、本発明の抗アレルギー剤中に含有される。
【0020】
前記ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCは、脂溶性が高い。そこで、抗アレルギー剤等として用いられるときは、適当な賦形剤あるいは乳糖やデンプン等を混合して錠剤の形態とし、又は顆粒の形態等にして使用に供することができる。又、これらの化合物は、ガムやチョコレート、あるいは脂質の多いバター、マーガリン、または菓子類などに対し、極微量を添加する添加剤として使用することができ、この場合でも抗アレルギー作用を発揮する。
【0021】
本発明の第三の態様は、前記ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCの製造方法に関するものであり、アルピニアガランガの根茎を、アセトンまたは低級アルコールを15重量%以上含む水溶液により抽出し、抽出物を、クロマトグラフィーにより分画処理する工程を有することを特徴とする前記構造式(1)、(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物、又は前記構造式(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物の鏡像体(NO産生抑制活性物質、すなわちガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールC)の製造方法(請求項7)を提供するものである。
【0022】
前記のようにガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCは、アルピニアガランガをベースにして、抽出分画法を適用して得ることができる。本発明者は、検討の結果、これらの化合物の効率的かつ経済的な抽出法を確立することにも成功した。
【0023】
クロマトグラフィーによる分画処理は、吸着クロマトグラフィー又は逆相クロマトグラフィーにより行うことができる。ここで、吸着クロマトグラフィーに用いられるゲルとしては、シリカゲル、アルミナ等が、逆相クロマトグラフィーに用いられるゲルとしては、オクタデシル基(ODS)やオクチル基(C8)を結合したシリカゲル等、通常の吸着及び逆相クロマトグラフィーに用いられるものが使用できる。なお、ここで、吸着及び逆相クロマトグラフィーには、硬質ゲルをステンレス菅等の耐圧菅に詰め、高圧下で移動相を流して高速分離する場合も含まれる。
【0024】
用いられる移動相としては、酢酸エチル、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素、メタノール、水やこれらの混合物が例示される。試料の添加量や、移動相の流速等は特に限定されず、所望の純度で目的とする化合物が得られる条件を、簡易な予備実験により求め、この条件に従って分画処理が行われる。クロマトグラフィーによる溶出物は分画されるが、各分画について、NO産生阻害作用を調べ、NO産生阻害作用を有する分画について、必要によりさらに前記と同様なクロマトグラフィーによる分画処理を行うことにより、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCを得ることができる。なお、この方法により得られるガランガノールA、ガランガノールB及びガランガノールCは、それぞれ、前記構造式(2)で表される化合物及びその鏡像体の混合物、前記構造式(3)で表される化合物及びその鏡像体の混合物、及び前記構造式(4)で表される化合物及びその鏡像体の混合物である。これらの混合物から、通常の光学分割法により、鏡像体の一方のみを得ることができる。
【0025】
なお、抽出物を、予め酢酸エチルやクロロホルムと水に分配し、水溶性の不活性分を除去した後、ゲル濾過クロマトグラフィーによる分画を行ってもよい。
【発明の効果】
【0026】
構造式(1)、(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物、又は前記構造式(2)、(3)若しくは(4)で表される化合物の鏡像体(すなわちガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールC)である本発明の化合物は、NO産生抑制活性を有し、アトピーをはじめとする種々のアレルギー疾患の治療薬(抗アレルギー剤)として使用できるものである。特に、アルピニアガランガより、前記所定条件での抽出、分画により、高純度の化合物が得られ、高性能の抗アレルギー剤として好適に使用される。
【0027】
又、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCは、従来から生薬として利用されてきたアルピニアガランガより得られるものであるので、この化合物を活性成分として含有する本発明の抗アレルギー剤は、安全性に優れた抗アレルギー剤である。
【0028】
本発明の製造方法によれば、アルピニアガランガから抽出分画法により、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールCを、効率的かつ経済的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に本発明を実施するためのより具体的な形態を、実施例により説明する。なお、実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態へ変更することができる。
【実施例】
【0030】
1.ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB又はガランガノールC(NO産生抑制活性物質)の製造
1)アルピニア ガランガの80%含水アセトンエキスの製法(抽出工程)
アルピニアガランガとしては、タイ産の天然品を用いた。このアルピニアガランガの根茎の2.1kgを粉砕したものを、約10重量倍(20L)の80%含水アセトン(ナカライテスク社製の特級アセトンと蒸留水との80:20重量比の混合液)に加え、室温で一昼夜(24時間)冷浸して、抽出した。抽出後、ろ紙(アドバンテック社製No.2ろ紙)にてろ過後、抽出残渣にさらに80%含水アセトン(20L)を加え、室温で一昼夜(24時間)冷浸して、同様にろ過を行った。このような抽出を合計3回行い、その抽出液を合わせた後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下溶媒を留去し、アルピニア ガランガの80%含水アセトン抽出エキス138g(使用したアルピニアガランガに対して
6.6重量%、以下単に抽出エキスと言う。)を得た。
【0031】
2)抽出エキスの分画(分画工程)
イ)抽出エキスのクロマト分離
1)で得た抽出エキス138gを、順相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(富士シリシア社製、BW−200、150−350mesh、3.0kg、移動相:n−ヘキサン:酢酸エチル(10:1→5:1)→メタノール)を使用し、下記の態様で溶離液を流入した後、画分毎に減圧下溶媒を留去し、分画1〜分画13を得た。
【0032】
[画分画の収量]
分画1(0.7g)、分画2(2.3g)、分画3(0.5g)、分画4(2.8g)、分画5(23.0g)、分画6(1.7g)、分画7(2.6g)、分画8(3.6g)、分画9(1.9g)、分画10(5.8g)、分画11(5.0g)、分画12(6.3g)、分画13(73.8g)。
【0033】
ロ)分画9の再分画
分画1〜分画13について、リポ多糖で刺激したマウス腹腔マクロファージからのNO産生阻害作用(阻害活性:IC50値)を培養液中に蓄積したNOを指標に調べたところ、分画9が特に強力な阻害作用を示した。又、分画11も阻害作用を示した。そこで、この分画9(1.9g)をさらに逆相カラムクロマトグラフィー(富士シリシア社製、Chromatorex ODS DM1020T、100−200mesh、60g、移動相:メタノール:水(30:70→50:50→70:30、v/v、それぞれ300mL)→メタノールのみ(800mL))にて分離した後、減圧下溶媒を留去し、100mg(0.0048%)の分画a(純度95%以上)を得た。後述するように、分画aは構造式(1)で示される化合物であることが確認された。
【0034】
ハ)分画11の再分画
分画11(5.0g)を、逆相カラムクロマトグラフィー[富士シリシア社製、Chromatorex ODS DM1020T、100−200mesh、150g、移動相:メタノール:水(40:60→50:50→60:40→70:30、v/v、それぞれ700mL)→メタノールのみ(1600mL)]にて分離した後、減圧下溶媒を留去し、7分画[分画11−1(828mg)、分画11−2(696mg)、分画11−3(379mg)、分画11−4(1169mg)、分画11−5(911mg)、分画11−6(351mg)、分画11−7(666mg)]を得た。
【0035】
分画11−2および分画11−4について、高速液体クロマトグラフィー(検出器:島津示唆屈折型検出器RID−6A、ポンプ:島津LC−10A、カラム:YMC社製YMCPack−ODS−A、20mm(内径)×250mm、移動相:分画11−2ではメタノール(関東化学社製HPLC大量分取用特級試薬)/水(50/50)、分画11−4ではメタノール水(60/40)を用いて分離精製した後、減圧下溶媒を留去し、分画11−2より分画b及び分画cを、分画11−4より分画dをそれぞれ24mg(0.0011%)、21mg(0.0010%)および32mg(0.0015%)得た。後述するように、分画bは、構造式(2)で示される化合物であり、分画cは、構造式(3)で示される化合物であり、分画dは、構造式(4)で示される化合物であることが確認された。
【0036】
前記したアルピニアガランガの抽出分画法は、ガランガナール、ガランガンノールA、B及びCの抽出効率、不活性部の除去効率などからみて最良の態様と考えるべきである。しかし、ガランガナール、ガランガンノールA、BおよびCを抽出するためのアルピニアガランガの抽出分画法としては、前記の他にも種々の変形が可能である。例えば、含水アセトンに代えて、他の抽出剤(溶剤)、具体的には含水メタノールや含水エタノール等を用いてもよい。又、予め酢酸エチルやクロロホルムと水に分配し、水溶性の不活性分を除去した後、前記カラムクロマトグラフィーによる分画を行うことができる。
【0037】
2.ガランガナール、ガランガンノールA、BおよびCの構造決定
前記1.で得られた分画A〜Dとして得られた成分ガランガナール、ガランガンノールA、BおよびCについて、質量スペクトル(MS)、紫外線吸収スペクトル(UV)、赤外線吸収スペクトル(IR)、並びにHおよび13C核磁気共鳴スペクトル(NMR)の分析を実施した。これらの結果を以下に示すが、これらの結果より、分画aは、構造式(1)で示される化合物であり、分画bは、構造式(2)で示される化合物とその鏡像体の混合物であり、分画cは、構造式(3)で示される化合物とその鏡像体の混合物であり、分画dは、構造式(4)で示される化合物とその鏡像体の混合物であることが確認された。
【0038】
1)分画aの分析
分画aとして得られた白色粉末についての分析結果を以下に示す。
【0039】
・高分解EI−MS (m/z)
測定値: 280.1094 [C18H16O3 (M+)の計算値: 280.1099]
・UV(MeOH) : λmax (logε) = 263 (4.14), 314 (3.98)
・IR(KBr) : νmax = 3325, 1661, 1653, 1601, 1514, 1447, 1173 cm-1
H−NMR(500 MHz, CD3OD) :
3.31 (1H, m), 3.39 (1H, dd-like), 9'-H2], 6.10 (1H, ddd, J=5.8, 5.8, 5.8 Hz, 8'-H), 6.28 (1H, d, J=15.8 Hz, 7'-H), 6.68, 7.14 (2H each, both d, J=8.6 Hz, 3',5'-H and 2', 6'-H), 6.86, 7.53 (2H each, both d, J=8.8 Hz, 3,5-H and 2,6-H), 7.44 (1H, s, 4-H), 9.52 (1H, s, 9-H).
13C−NMR (125 MHz, CD3OD),δc: 28.6、116.3、116.8、123.9、127.5、128.3、130.5、131.8、133.7、138.4、153.7、157.9、161.1、197.2、
・EI−MS: m/z (rel. Int.) = 280 (M+, 100), 251 (M+-CHO, 40), 186 (M+-C6H6O, 17), 173 (M+-C7H7O, 97), 120 (C8H8O+, 28), 107 (C7H7O+, 42)
【0040】
以上の結果、さらにH−H COSYスペクトル、HMBCスペクトル、差NOEスペクトルの結果から、分画aより得られた白色粉末は、構造式(1)で表わされる化合物、ガランガナールであることが明らかになった。
【0041】
2)分画bの分析
分画bとして得られた白色粉末についての分析結果を以下に示す。
【0042】
・[α]D20 ±0° (c0.34, MeOH)
・高分解EI−MS (m/z)
測定値: 300.1366 [C18H20O3 (M+)の計算値: 300.1361]
・UV(MeOH) : λmax (logε) = 262 (4.33)
・IR(KBr) : νmax = 3649, 1653, 1559, 1509, 1458 cm-1
H−NMR(500 MHz, CD3OD):
1.92 (1H, m, 8-H), 2.23, 2.33 (1H each, both m, 9'-H2), [3.40 (1H, dd, J= 5.3, 10.9 Hz), 3.56 (1H, dd, J= 6.0, 10.9 Hz), 9-H2], 4.74 (1H, d, J= 5.9 Hz, 7-H), 6.00 (1H, ddd, J= 6.9, 7.7, 16.0 Hz, 8'-H), 6.28 (1H, d, J= 16.0 Hz, 7'-H), 6.68, 7.14 (2H each, both d, J= 8.6 Hz, 3', 5'-H and 2', 6'-H), 6.76, 7.18 (2H each, both d, J= 8.6 Hz, 3, 5-H and 2, 6-H)
13C−NMR (125 MHz, CD3OD),δc: 30.5、49.5、62.6、74.5、115.7、116.0、126.6、127.9、128.4、130.8、132.2、135.6、157.3
・EI−MS: m/z (rel. Int.) = 300 (M+, 4), 282 (M+-H2O, 14), 252 (44), 158 (27), 145 (62), 131 (50), 120 (C8H8O+, 49), 107 (C7H7O+, 100)
【0043】
以上の結果、又、各種2次元NMR(H−HCOSY、 13C−HCOSY、 HMBCスペクトル)の結果、さらに2,2-dimethoxypropaneを用いて調製した7,8-アセトナイド化誘導体の7,8位の1H-1Hカップリング定数の測定結果から、分画bとして得られた白色粉末は、構造式(2)で表わされる化合物とその鏡像体の混合物、ガランガノールAであることが明らかになった。
【0044】
3)分画cの分析
分画cとして得られた白色粉末についての分析結果を以下に示す。
【0045】
・[α]D22 ±0° (c0.96, MeOH)
・高分解EI−MS (m/z)
測定値: 300.1358 [C18H20O3 (M+)の計算値: 300.1361]
・UV(MeOH) : λmax (logε) = 262 (4.35)
・IR(KBr) : νmax = 3649, 1653, 1559, 1507, 1458 cm-1
H−NMR(500 MHz, CD3OD):
1.92 (1H, m, 8-H), 2.01, 2.10 (1H each, both m, 9'-H2), [3.65 (1H, dd, J= 5.3, 11.1 Hz), 3.78 (1H, dd, J= 4.8, 11.1 Hz), 9-H2], 4.62 (1H, d, J= 7.1 Hz, 7-H), 5.90 (1H, ddd, J= 6.8, 7.2, 15.8 Hz, 8'-H), 6.19 (1H, d, J= 15.8 Hz, 7'-H), 6.68, 7.12 (2H each, both d, J= 8.4 Hz, 3',5'-H and 2', 6'-H), 6.77, 7.18 (2H each, both d, J= 8.4 Hz, 3,5-H and 2,6-H)
13C−NMR (125 MHz, CD3OD),δc: 32.3、 48.8、 63.1、 76.3、 115.8、 116.0、 126.1、 127.9、 128.9、130.6、132.3、 135.5、 157.3、 157.6
・EI−MS: m/z (rel. Int.) = 300 (M+, 1), 282 (M+-H2O, 6), 252 (84), 158 (46), 145 (95), 131 (49), 120 (C8H8O+, 24), 107 (C7H7O+, 100)
【0046】
以上の結果、又、H−HCOSY、HMBCスペクトル、NOESYスペクトル等の結果、さらに2,2-dimethoxypropaneを用いて調製した7,8-アセトナイド化誘導体の7,8位の1H-1Hカップリング定数の測定結果から、分画cより得られた白色粉末は、構造式(3)で表わされる化合物とその鏡像体の混合物、ガランガノールBであることが明らかになった。
【0047】
4)分画dの分析
分画dとして得られた白色粉末についての分析結果を以下に示す。
【0048】
・[α]D28 ±0° (c0.18, MeOH)
・高分解EI−MS (m/z)
測定値: 432.1934 [C18H20O3 (M+)の計算値: 432.1937]
・UV(MeOH) : λmax (logε) = 263 (4.31)
・IR(KBr) : νmax = 3650, 3260, 1654, 1609, 1516, 1456, 1229, 1171, 1043 cm-1
H−NMR(500 MHz, pyridine-d5):
1.45 (1H, ddd, J= 4.9, 13.4, 13.7 Hz, 9ax-H), 1.82 (1H, ddd, J= 7.5, 7.6, 14.0 Hz), 1.89 (1H, br dd, J= ca. 3, 14 Hz, 9eq-H), 2.14 (1H, m), 9'-H2], 2.14 (1H, m, 8''-H), 2.30 (1H, m, 8-H), 3.86 (1H, dd, J= 2.5, 11.3 Hz, 9''ax-H), 4.19 (1H, d, J= 9.7 Hz, 7-H), 5.04 (1H, br d, J= ca. 11 Hz, 9''eq-H), 5.51 (1H, d, J= 10.4 Hz, 7''-H), 5.89 (1H, ddd, J= 7.3, 7.6, 15.9 Hz, 8'-H), 6.26 (1H, d, J= 15.9 Hz, 7'-H), 7.15, 7.32 (2H each, both d, J= 8.6 Hz, 3',5'-H and 2',6'-H), 7.20, 7.61 (2H each, both d, J= 8.6 Hz, 3'',5''-H and 2'',6''-H), 7.24, 7.56 (2H each, both d, J= 8.6 Hz, 3,5-H and 2,6-H)
13C−NMR (125 MHz, pyridine-d5),δc: 31.8、 35.9、 38.8、 43.4、 69.1、 72.4、 85.7、 116.0、 116.4、 123.8、 125.4、127.9、 128.7、 129.5、 129.8、 131.5、 133.3、 136.6、 158.2、 158.6
・EI−MS: m/z (rel. Int.) = 432 (M+, 1), 414 (M+-H2O, 2), 107 (C7H7O+, 23), 94 (C6H6O+, 100)
【0049】
以上の結果、さらに、H−HCOSY、HMBCスペクトル、NOESYスペクトル等の測定結果から、分画dより得られた白色粉末は、構造式(4)で表わされる化合物とその鏡像体の混合物、ガランガノールDであることが明らかになった。
【0050】
3.抗アレルギー性の検討
前記で得られたガランガナール、ガランガンノールA、B及びC、並びにL-NMMA (NG-monomethyl-L-arginine、NO合成阻害作用物質であり、比較対照薬として用いた。)について、下記の方法により、マウス腹腔マクロファージからのNO産生抑制作用を検討した。その結果を表1に示す。
【0051】
[NO産生抑制作用の測定方法]
ddY 系雄性マウス(体重約30g)に4%チオグリコール培地(日水製薬)2mlを腹腔内に投与し、3日後に腹部の体皮を剥離し、氷冷したCa2+、Mg2+不含リン酸緩衝化生理食塩水[PBS(−)]の7mLで腹腔内を洗浄し、洗浄液を回収した。回収した洗浄液を遠心分離(1,000 rpm, 10 min, 4 ℃)し、PBS(−)で2回洗浄した後に、5%ウシ胎仔血清(FCS)、100 units/mLペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有RPMI-1640 培地 (Sigma 社) に懸濁した。
【0052】
次に96 ウェル平底マイクロプレートに 5.0×10 cells (100μL medium/well)づつ播種し、1 時間前培養 (5% CO2, 37℃) し、PBS(−)で非接着性細胞を洗浄除去した後に、表1に示す量の被験物質および 10μg/mL LPS (Salmonella enteritidis 由来、Sigma 社) を含む培地 (200μL/well)で 20 時間培養した。培養上清中に蓄積した NO2- をGriess 法により定量しNO産生量とした。すなわち、培養上清に同量の Griess 試薬 (1% スルファニルアミド / 0.1% N-1-ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩 / 2.5% リン酸) を加えて混和し、10分間室温で放置した後に、マイクロプレートリーダー (model 550、BIO-RAD 社) にて吸光度 (測定波長 ; 570 nm、参照波長 ; 655 nm)を測定し、培地で希釈したNaNOをスタンダードとして培養上清に蓄積したNOを定量した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示す結果より明らかなように、ガランガナール、ガランガノールA、ガランガノールB及びガランガノールCには、NO産生抑制活性が見出され、抗アレルギー性があることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式(1)で表されることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物。
【化1】

【請求項2】
下記の構造式(2)で表される化合物、又はその鏡像体であることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物。
【化2】

【請求項3】
下記の構造式(3)で表される化合物、又はその鏡像体であることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物。
【化3】

【請求項4】
下記の構造式(4)で表される化合物、又はその鏡像体であることを特徴とするNO産生抑制作用を有する化合物。
【化4】

【請求項5】
アルピニアガランガ(Alpinia galanga)の根茎を、アセトンまたは低級アルコールを15重量%以上含む水溶液により抽出し、抽出物を、クロマトグラフィーにより分画処理して得られたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のNO産生抑制作用を有する化合物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のNO産生抑制作用を有する化合物を含有することを特徴とする抗アレルギー剤。
【請求項7】
アルピニアガランガ(Alpinia galanga)の根茎を、アセトンまたは低級アルコールを15重量%以上含む水溶液により抽出し、抽出物を、クロマトグラフィーにより分画処理する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のNO産生抑制作用を有する化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−290847(P2006−290847A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117581(P2005−117581)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年10月23日 日本薬学会近畿支部発行の「第54回 日本薬学会近畿支部総会・大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(304026180)株式会社ダイアベティム (12)
【Fターム(参考)】