説明

OCT観察器具、固定器具、及び、OCTシステム

【課題】 管腔の所望の位置にその先端を安定した状態で固定させる。
【解決手段】 該断層からの反射光を取得するOCTプローブと、OCTプローブが挿通される挿通路を有した枠体と、枠体の周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、任意の流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段とを備えたOCT観察器具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管腔内の観察対象の断層像を取得するためのOCT(Optical Coherence Tomography)観察器具、固定器具、及び、該OCT観察器具を備えたOCTシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体腔内を観察するための機器として、内視鏡(ファイバースコープ)システムや電子内視鏡(電子スコープ)システムが広く知られ実用に供されている。内視鏡システムを用いた場合、照明光により観察対象(例えば患者の体腔内にある生体組織)が照明されて、その反射光(すなわち生体組織の光学像)が光ファイバにより伝送される。術者は、伝送された光学像を直接見ることにより体腔内を観察することができる。また、電子内視鏡システムを用いた場合、照明光により生体組織が照明されて、その反射光が撮像素子により受光される。受光された反射光は光電変換されて信号となり、当該信号は所定の処理が施されてモニタに出力される。術者は、体腔内の様相をモニタで観察することができる。これらのシステムを用いた場合、術者は、生体組織の表面部だけを観察することができる。従って病変部が例えば生体組織内部に存在している場合、それを的確に発見することは、術者にとって極めて困難なことであった。
【0003】
近年、生体組織内部を観察するためのOCTプローブを備えたOCTシステムが種々提案されている。OCTシステムは、マイケルソン干渉計に基づいて考案された体腔内観察用のシステムであり、低コヒーレント光を利用することにより生体組織内部の観察を可能にさせている。術者は、OCTシステムを用いることにより生体組織内部の様相をモニタで観察することができる。
【0004】
例えば下記特許文献1には、OCTプローブ先端にバルーンを配置することにより生体組織における反射光の効率を高めて、それにより、高S/N比の信号を取得して高画質の断層画像を生成することができるOCTシステムが記載されている。
【特許文献1】特開2000−329534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたOCTプローブは通常、内視鏡のチャンネルに挿通された状態で使用される。観察対象が存在する管腔の径が比較的太い場合、OCTプローブは、上記チャンネルから僅かに突出された状態で使用される。このため術者は、内視鏡に設置された鉗子起上台や内視鏡先端のアングルを操作することにより、OCTプロープ先端をある程度所望の位置に置くことができる。しかし生体組織は常に脈動している。測定光が観察対象を走査している間、上記脈動によってOCTプローブと生体組織とが相対的にずれてしまうと、OCTプローブが取得し得る断層像にぶれ等の乱れが発生してしまう。
【0006】
また、観察対象が存在する管腔の径が比較的細い(例えば総胆管や主膵管等である)場合、当該管腔に内視鏡を挿入できない。このため、OCTプローブ先端を内視鏡のチャンネルから大きく突出させて、OCTプローブのみを管腔に挿入して観察を行う必要がある。この場合、鉗子起上台等のアングルを変更する機構を利用できないため、OCTプローブ先端を所望の位置に置くことが困難であった。また、生体組織の脈動の影響も非常に受け易かった。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、管腔の所望の位置にその先端を安定した状態で固定させることができるOCT観察器具、固定器具、及び、該OCT観察器具を備えたOCTシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係るOCT観察器具は、管腔内の観察対象の断層像を取得するためのものであり、該断層からの反射光を取得するOCTプローブと、OCTプローブが挿通される挿通路を有した枠体と、枠体の周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、任意の流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
なお、上記流動体供給手段は、流動体を供給すべき流動体封入手段を選択する選択手段と、選択された流動体封入手段に供給される流動体の量を調整する調整手段とを有したものであっても良い。
【0010】
上記選択手段には、少なくとも三つの流動体封入手段の各々を識別するための識別情報が付されていても良い。
【0011】
また、上記調整手段は少なくとも三つの流動体封入手段の各々の内圧を検出する内圧検出手段を含んだものであっても良く、その検出結果に基づいて流動体の量を調整することができる。
【0012】
また、上記OCT観察器具は、該低コヒーレント光に対して高い透過率を有する材料で枠体が形成されたものであっても良い。
【0013】
また、上記OCT観察器具は、枠体に、少なくとも三つの流動体封入手段の各々に流動体を導く複数の流動体伝送路を形成したものであっても良い。
【0014】
なお、上記複数の流動体伝送路の各々は、その長手方向に直交する横断面形状がそれぞれ異なったものであり得る。
【0015】
また、上記OCT観察器具は枠体先端が面取りされたものであっても良い。
【0016】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係るOCT観察器具は、管腔内の観察対象の断層像を取得するためのものであり、低コヒーレント光を伝送する光ファイバと、光ファイバから出射された光を該観察対象で結像させる対物光学系と、光ファイバ及び対物光学系を覆ったシースと、シースの周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、任意の流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る固定器具は、管腔内の所望の位置に処置具を固定させるものであり、処置具が挿通される挿通路を有した枠体と、枠体の周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、任意の流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係るOCTシステムは、管腔内の観察対象の断層像を取得して画像化するものであり、上記OCT観察器具と、OCTプローブが取得した反射光を処理して所定の信号に変換する信号処理手段と、該所定の信号に基づいて該断層画像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のOCT観察器具、固定器具、及び、OCTシステムを採用すると、管腔の所望の位置にOCT観察器具先端を安定した状態で固定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態のOCTシステムについて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態のOCTシステム10の構成を示したブロック図である。OCTシステム10は、OCT観察器具100、回転駆動装置200、プロセッサ300、及び、モニタ400を有している。
【0022】
OCT観察器具100は、観察対象(例えば患者の管腔内にある生体組織)の断層画像を得るために患者の体腔内に挿入されるカテーテルである。例えばカニュレーション(造影剤注入等)後、内視鏡(不図示)の鉗子チャンネルに挿通され、その先端が当該チャンネル端部から突出された状態で使用される。回転駆動装置200は、OCT観察器具100から出射される測定光(後述)を観察対象上で走査させるための機器である。プロセッサ300は、主たる構成として、生体組織に照射されるべき光を出射する光源、及び、上記測定光に基づいて当該生体組織の断層像を画像化するための信号処理部を有している。モニタ400は、プロセッサ300で処理された信号により生体組織の断層画像を表示する。
【0023】
プロセッサ300は、制御部310、低コヒーレント光源312、フォトカップラ314、参照光用ファイバ316、参照光用レンズ318、参照ミラー320、ミラー駆動部322、測定光用ファイバ324、コネクタ部326、回転駆動部328、フォトディテクタ330、画像信号処理部332、及び、入力部334を有している。制御部310は、プロセッサ300全体の制御を統括して実行するものであり、例えば低コヒーレント光源312、ミラー駆動部322、回転駆動部328、フォトディテクタ330、及び、画像信号処理部332等を制御する。
【0024】
低コヒーレント光源312は、例えばSLD(Super Luminescence Diode)である。入力部334に設けられた光源用のスイッチ(不図示)がオンされると、低コヒーレント光源312は、制御部310の制御下で(例えば制御部310から発信される駆動パルスに応じて)、低コヒーレント光を出射する。低コヒーレント光源312から出射される低コヒーレント光はその可干渉距離が極めて短いものであり、その距離は例えば数十〜数百μm程度となっている。
【0025】
測定光用ファイバ324は、低コヒーレント光源312とコネクタ部326との間で光を伝送するシングルモード光ファイバである。低コヒーレント光は、低コヒーレント光源312出射後、測定光用ファイバ324に入射されてその内部を伝送される。
【0026】
測定光用ファイバ324の光路中にフォトカップラ314が配置されている。測定光用ファイバ324は、フォトカップラ314により参照光用ファイバ316と光学的に結合されている。参照光用ファイバ316は、測定光用ファイバ324とは別個に独立して設置されたシングルモード光ファイバである。従って、低コヒーレント光源312から出射された低コヒーレント光は、フォトカップラ314によって二つの光に分割される。一方の低コヒーレント光は、測定光として測定光用ファイバ324内を伝送される。また、もう一方の低コヒーレント光は、参照光として参照光用ファイバ316内を伝送される。
【0027】
測定光は、測定光用ファイバ324内を伝送されてコネクタ部326に到達する。ここで、回転駆動装置200は、その内部にファイバ(不図示)を有しており、コネクタ部326と光学的に接続されている。このため、測定光はコネクタ部326を介して回転駆動装置200内部のファイバに入射される。また、回転駆動装置200内部のファイバは、OCT観察器具100とも光学的に接続されている。このため、測定光は上記ファイバを伝送された後、OCT観察器具100(より正確には後述のOCTプローブ110)内部に入射される。
【0028】
図2(a)は、本発明の実施の形態のOCT観察器具100の概略構成を示した側断面図である。また、図2(b)はOCT観察器具100の正面図である。図2(a)、(b)では、体腔内に挿入されている状態のOCT観察器具100を示している。OCT観察器具100は、OCTプローブ110、枠体120、送気・送水用チューブ126a〜126c、バルーン128a〜128c、及び、送気・送水装置130を有している。
【0029】
OCTプローブ110は、回転駆動装置200内部のファイバを介して伝送された測定光を観察対象上で結像させる光学プローブであり、シングルモード光ファイバ112、GRIN(Gradient-index lens)レンズ114、直角プリズム116、及び、シース118を有している。
【0030】
枠体120は可撓性を有した円筒状のチューブである。その先端は面取りされており、OCTプローブ110を観察対象に導くためのガイドとして作用する。枠体120の内部にはその長手方向に沿って、プローブ用ルーメン122、及び、送気・送水ルーメン124a〜124cが形成されている。プローブ用ルーメン122は、その中心軸が枠体120の中心軸と一致するよう形成されており、枠体120の先端面及び末端面の双方で開口している。また、送気・送水ルーメン124a〜124cは、枠体120の周方向に沿ってそれぞれが等間隔に位置するよう形成されており、枠体120の先端部近傍の側壁、及び、枠体120の末端面において開口している。以下、上記側壁の開口部分を側壁穴と記す。なお、枠体120は、高い光透過率を有する材料で形成されており、特に、上記低コヒーレント光を高い効率で透過させることができる。
【0031】
OCTプローブ110は、プローブ用ルーメン122内に矢印A方向にスライド可能に挿通されている。観察時においてOCTプローブ110は様々な状態で使用される。例えばその先端がプローブ用ルーメン122(換言すると枠体120の先端面)から突出された状態で使用される。また、その先端がプローブ用ルーメン122に収められた状態で使用される。なお、プローブ用ルーメン122は、OCTプローブ110が挿入されていないとき、管腔に造影剤を注入するための注入路として機能し得る。
【0032】
ここで、シース118とプローブ用ルーメン122内壁とのクリアランスは極めて小さい。従ってプローブ用ルーメン122挿入状態において、OCTプローブ110は、実質的にスラスト方向(矢印A方向)だけにしか動かない。また、シース118とプローブ用ルーメン122内壁との間にある程度の静摩擦が働くため、生体組織が脈動したときの振動等でスラスト方向にずれることはない。OCTプローブ110は、ユーザによってプローブ用ルーメン122内に押し込まれたとき、或いは、プローブ用ルーメン122から引き出されたときのみ、スラスト方向に動く。別の実施形態のOCT観察器具100では、予め、OCTプローブ110と枠体120を例えば図2(a)の状態で相対固定させても良い。
【0033】
OCT観察器具100は、OCTプローブ110のシングルモード光ファイバ112により、回転駆動装置200内部のファイバと光学的に接続されている。従って測定光は、回転駆動装置200内部のファイバを伝送後、端部112aからシングルモード光ファイバ112内部に入射され、その内部を伝送する。次いで、シングルモード光ファイバ112から出射されてGRINレンズ114に入射され、GRINレンズ114によって収束される。GRINレンズ114出射後、直角プリズム116によりその光路を90°折り曲げられる。
【0034】
シース118は、シングルモード光ファイバ112、GRINレンズ114、及び、直角プリズム116をその内部に保持した可撓性を有するチューブであり、高い光透過率を有する材料で形成されている。特に、上記低コヒーレント光を高い効率で透過させることができる。測定光は、直角プリズム116の作用により、シース118を透過してその側面から外部に出射される。なお、シース118内部には、直角プリズム116とシース118内部の空間との屈折率差を軽減させるため、シリコン系のオイルが充填されている。
【0035】
測定光は、GRINレンズ114のパワーにより生体組織内部で結像する。次いで、当該生体組織内部で反射され、上述と同様の光路を進行して再びフォトカップラ314に入射される。すなわち反射された測定光は、シース118を介して直角プリズム116に入射され、その光路を90°折り曲げられる。次いで、GRINレンズ114、シングルモード光ファイバ112、回転駆動装置200内部のファイバ、コネクタ部326、及び、測定光用ファイバ324を介してフォトカップラ314に入射される。
【0036】
回転駆動装置200は、コネクタ部326を介してプロセッサ300と電気的に接続されており、シングルモード光ファイバ112を、その軸を中心に回転させることができる。GRINレンズ114及び直角プリズム116は、シングルモード光ファイバ112と相対的に固定されている。このため、シングルモード光ファイバ112と共に回転し得る。例えば入力部334に設けられたラジアルスキャン用のスイッチ(不図示)がオンされると、回転駆動部328は、制御部310の制御下で、回転駆動装置200に駆動パルスを出力して駆動制御する。これにより回転駆動装置200は、シングルモード光ファイバ112、GRINレンズ114、及び、直角プリズム116を、OCTプローブ110の他の構成要素及び生体組織に対して回転させる。直角プリズム116がシングルモード光ファイバ112の軸中心に回転することにより、測定光は、OCTプローブ110のラジアル方向に沿って位置する生体組織に向けて出射されて走査(すなわちラジアルスキャン)する。
【0037】
次に、フォトカップラ314により分割されて、参照光として参照光用ファイバ316内に入射された低コヒーレント光について説明する。
【0038】
参照光は、参照光用ファイバ316内を伝送されて出射する。ここで、参照光用ファイバ316の末端部近傍に参照光用レンズ318が設置されている。また、参照光用レンズ318を挟んで上記端部と対向する位置に参照ミラー320が設置されている。参照ミラー320は、参照光用レンズ318の光軸に対して垂直な反射面を有している。従って参照光は、参照光用ファイバ316内を出射後、参照光用レンズ318を介して参照ミラー320に入射され、反射された後、参照光用レンズ318を介して参照光用ファイバ316内に再び入射される。入射された参照光は、参照光用ファイバ316内を伝送されてフォトカップラ314に入射される。
【0039】
生体組織で反射された測定光と、参照ミラー320で反射された参照光は、フォトカップラ314において干渉する。但し、低コヒーレント光の可干渉距離は数十〜数百μm程度である。このため、生体組織の所定の断層からフォトカップラ314までの測定光の光路長と、参照ミラー320からフォトカップラ314までの参照光の光路長との差が、例えばミリオーダーの可干渉距離よりも大きい場合には、この2つの光は干渉しない。すなわち、この測定光と参照光の光路長の差が低コヒーレント光の可干渉距離以下の場合に限り、この2つの光は干渉する。
【0040】
なお、ミラー駆動部322は、例えば板状の圧電素子を複数枚積層して構成されたアクチュエータであり、参照光の光軸と平行な方向に参照ミラー320を移動させることができる。ミラー駆動部322が参照ミラー320を移動させると、参照ミラー320からフォトカップラ314までの参照光の光路長が変化する。参照光の光路長が変化した場合、当該参照光と干渉し得る測定光の光路長も変化する。これは、OCTプローブ110で測定され得る断層の深さの変化を意味する。
【0041】
生体組織で反射された測定光と参照ミラー320で反射された参照光とがフォトカップラ314で干渉してフォトディテクタ330で受光されると、この干渉光は、当該フォトディテクタ330によって光電変換されて検出信号に変換される。
【0042】
変換された検出信号は画像信号処理部332に入力される。画像信号処理部332は、検出信号に所定の処理を施してコンポジットビデオ信号やSビデオ信号に変換し、モニタ400に出力する。これらのビデオ信号がモニタ400に出力されると、当該モニタ400に生体組織の断層画像が表示される。
【0043】
ここで、上述したように、管腔の所望の位置にその先端を安定した状態で固定させることができるOCT観察器具、及び、OCTシステムが要求されている。本出願人は、以下に説明される構成及び作用により上記要求に満たすことができるOCT観察器具100及びOCTシステム10を提案している。
【0044】
図3(a)、(b)は、管腔挿入時におけるOCT観察器具100の正面図である。図3(a)、(b)に示されているように、本実施形態では、バルーン128a〜128cの各々の大きさを変化させることによりOCT観察器具100と管腔との相対位置を変化させている。
【0045】
バルーン128a、128b、128cは、流動体(例えば精製水や空気等)が封入され得るものであり、それぞれが送気・送水ルーメン124a、124b、124cの側壁穴に覆い被さった状態で枠体120の側壁に取り付けられている。また、これらは例えばシリコンゴムで形成され、伸縮自在である。枠体120の周方向に沿って、送気・送水ルーメン124a、124b、124cがそれぞれ等間隔に位置するよう形成されていることから、これに伴ってバルーン128a、128b、128cも同様に等間隔に位置する。
【0046】
図2に示すように、送気・送水ルーメン124a、124b、124cの末端部はそれぞれ、送気・送水用チューブ126a、126b、126cの一端に結合されている。送気・送水用チューブ126a、126b、126cの他端はそれぞれ、送気・送水装置130が有する送気・送水路132a、132b、132cに結合されている。
【0047】
送気・送水装置130は、送気・送水路132a〜132cに加えて、スイッチ機構134a〜134c、及び、シリンジ136を有している。シリンジ136はその内部に流動体が充填されており、当該流動体を周知の機構により外部に吐き出したり、内部に吸入したりすることができる。なお、シリンジ136には、最大で、三つのバルーン128a〜128c全てを同時に且つ十分に膨らませることができる量の流動体を蓄積可能である。シリンジ136と結合した一本の送気・送水路が送気・送水路132a、132b、132cに分岐して、それぞれ送気・送水用チューブ126a、126b、126cに結合している。なお、送気・送水路132a〜132cの各経路中には防止弁(不図示)が設置されている。送気・送水装置130が操作されていないとき、上記防止弁は塞がっているため、シリンジ136からバルーン128a〜128cに流動体が流入することがない。
【0048】
スイッチ機構134a〜134cにはそれぞれ異なる機能が割り当てられている。例えばスイッチ機構134aには、バルーン128aに流動体を送気・送水、又は、吸気・吸水するための機能が割り当てられている。スイッチ機構134aが押下されると、周知の機構により送気・送水路132a内の防止弁が開放される。なお、各防止弁はスイッチ機構押下中のみ開放される。このとき術者がシリンジ136の操作部136aをシリンジ136内部に押し込むよう操作すると、その内部の流動体が押し出されて送気・送水用チューブ126a、送気・送水ルーメン124aを流れていき、バルーン128aに流入される。また、術者がシリンジ136の操作部136aをシリンジ136内部から引き出すよう操作すると、バルーン128a内部、送気・送水用チューブ126a内部等の流動体がシリンジ136に向かって流れていく。説明を加えると、バルーン128aに封入された流動体が吸い上げられて送気・送水ルーメン124a、送気・送水用チューブ126aを流れていき、シリンジ136内部に再び貯められる。なお、流動体の送気・送水量、及び、吸気・吸水量は、各スイッチ機構の押下時間やシリンジ136の操作部136aの操作量や操作時間等で調整することができる。
【0049】
また、スイッチ機構134bには、バルーン128bに流動体を送気・送水、又は、吸気・吸水するための機能が割り当てられている。スイッチ機構134bが押下されると、周知の機構により送気・送水路132b内の防止弁が開放される。このとき術者がシリンジ136の操作部136aをシリンジ136内部に押し込むよう操作すると、その内部の流動体が押し出されて送気・送水用チューブ126b、送気・送水ルーメン124bを流れていき、バルーン128bに流入される。また、術者がシリンジ136の操作部136aをシリンジ136内部から引き出すよう操作すると、バルーン128bに封入された流動体が吸い上げられて送気・送水ルーメン124b、送気・送水用チューブ126bを流れていき、シリンジ136内部に再び貯められる。
【0050】
また、スイッチ機構134cには、バルーン128cに流動体を送気・送水、又は、吸気・吸水するための機能が割り当てられている。スイッチ機構134cが押下されると、周知の機構により送気・送水路132c内の防止弁が開放される。このとき術者がシリンジ136の操作部136aをシリンジ136内部に押し込むよう操作すると、その内部の流動体が押し出されて送気・送水用チューブ126c、送気・送水ルーメン124cを流れていき、バルーン128cに流入される。また、術者がシリンジ136の操作部136aをシリンジ136内部から引き出すよう操作すると、バルーン128cに封入された流動体が吸い上げられて送気・送水ルーメン124c、送気・送水用チューブ126cを流れていき、シリンジ136内部に再び貯められる。
【0051】
OCT観察器具100(より正確には、OCT観察器具100が鉗子チャンネルに挿通された内視鏡)を患者の体腔内に挿入し始めた段階では、バルーン128a〜128cには流動体が封入されていない。OCTプローブ110先端が観察対象に到達したときに初めて流動体が封入される。
【0052】
例えば所望の観察対象が組織P(図3(a)参照)である場合、術者は、スイッチ機構134a及びシリンジ136を操作することにより、OCT観察器具100(又はOCTプローブ110)先端を組織Pに近接させた状態で固定させることができる。具体的には、術者が、先ず、OCT観察器具100を管腔に挿入してその先端を例えば目測(例えば電子内視鏡によって取得されたOCT観察器具100先端の画像をモニタで観察しながら)で組織P付近にまで移動させる。次いで、スイッチ機構134aを押下して且つ流動体を送気・送水させるようシリンジ136を操作すると、バルーン128a内部に流動体が封入されて膨らんでいく。ここではスイッチ機構134b及び134cを押下しない。すなわちバルーン128b及び128cには流動体を封入しない。流動体の封入によってバルーン128aのみが膨らんでいき、当該バルーン128aの一部が管腔壁を押圧した状態で密着する。このときバルーン128aが管腔壁から力の反作用を受ける。この反作用により、OCT観察器具100先端は、図3(a)に示されるように、その中心軸を挟んでバルーン128aと対向する箇所において組織P近傍の管腔壁に当接する。また、このときOCT観察器具100先端は、バルーン128a及び前記の箇所の双方における管腔壁からの力の反作用により、管腔に対して相対的に固定された状態となる。従って生体組織が脈動した場合であっても、OCTプローブ110先端が組織Pに近接した状態で固定され、OCTプローブ110は、当該組織Pの断層像をぶれ等の乱れがない状態で確実に取得することができる。
【0053】
また、例えば所望の観察対象が組織P(図3(b)参照)である場合、術者は、スイッチ機構134b、134c、及び、シリンジ136を操作することにより、OCT観察器具100先端を組織Pに近接させた状態で固定させることができる。具体的には、術者が、先ず、OCT観察器具100を管腔に挿入してその先端を例えば目測で組織P付近にまで移動させる。次いで、スイッチ機構134b及び134cを押下して且つ流動体を送気・送水させるようシリンジ136を操作すると、バルーン128b及び128c内部に流動体が封入されて膨らんでいく。ここではスイッチ機構134aを押下しない。すなわちバルーン128aには流動体を封入しない。流動体の封入によってバルーン128b及び128cのみが膨らんでいき、当該バルーン128b及び128cの一部が管腔壁を押圧した状態で密着する。このときバルーン128b及び128cが管腔壁から力の反作用を受ける。この反作用により、OCT観察器具100先端は、図3(b)に示されるように、バルーン128aが取り付けられている箇所付近において組織P近傍の管腔壁に当接する。また、このときOCT観察器具100先端は、バルーン128b、128c及び前記の箇所における管腔壁からの力の反作用により、管腔に対して相対的に固定された状態となる。従って生体組織が脈動した場合であっても、OCTプローブ110先端が組織Pに近接した状態で固定され、OCTプローブ110は、当該組織Pの断層像をぶれ等の乱れがない状態で確実に取得することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、OCTプローブ110先端と観察対象との間に例えば上記特許文献1に示されたバルーンを配置していないが、実際にはOCTプローブ110先端と観察対象とを近接させているため、OCTプローブ110先端と観察対象との距離(換言すると、測定光が大きく減衰し得る光路)が短くなり、測定光の減衰を抑えることができる。従って生体組織内部における反射光を高い強度で得ることができる。このため、プロセッサ300は、S/N比の高い検出信号を取得することができ、所望の組織(ここでは組織PやP)の断層画像をモニタ400に高画質で表示させることができる。
【0055】
以上が本発明の実施形態である。本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。
【0056】
例えば本実施形態ではスイッチ機構の押下時間等で流動体の送気・送水量を調整しているが、別の実施形態では各バルーンの内圧を検出する手段(センサ)を設置し、それらによって検出された内圧値に応じて送気・送水量を調整するようにしても良い。例えば内圧値が所定値に達するまで流動体を供給(換言すると、内圧値が所定値に達した時点で流動体の供給を停止)するよう送気・送水装置130を構成することが想定される。この場合、上記手段により検出値が所定値に達したときに、押下中のスイッチ機構が強制的にオフされて防止弁が閉じられる。このため、バルーンへの流動体の供給が停止される。このような構成においては、術者が流動体の封入量を調整する必要がなくなる。従って術者の作業負担が軽減される。なお、上記所定値とは、OCTプローブ110と生体組織とを相対的に固定させる程度の押圧力を当該生体組織に与え得るバルーンの内圧値であって、当該生体組織を過度に圧迫しない程度の内圧値に相当する値である。
【0057】
また、枠体120をOCT観察器具100から排除して、枠体120と同様の形状及び機能をシース118に代替的に与えても良い。すなわちこの場合、OCTプローブ110先端に三つのバルーンが取り付けられ、且つ、その内部に各バルーンに対応した送気・送水ルーメンが形成される。
【0058】
また、更に別の実施の形態では各送気・送水ルーメンの形状をそれぞれ異なったものに形成することにより、管腔内におけるOCT観察器具100の位置・向きをモニタ400上において術者に確認させることが可能となる。
【0059】
図4(a)に、更に別の実施の形態のOCT観察器具100の概略構成の側断面図を示す。また、図4(b)に、更に別の実施の形態においてモニタ400に表示される画像を示す。なお、更に別の実施の形態において本実施形態のOCTシステム10と同一の構成には同一の符号を付してここでの詳細な説明は省略する。
【0060】
更に別の実施の形態の枠体120には、本実施形態の送気・送水ルーメン124a、124b、124cの代替として、送気・送水ルーメン524a、及び、その他二つの送気・送水ルーメン(すなわち計三つ)が形成されている。送気・送水ルーメン524aは、OCT観察器具100の長手方向に直交した横断面形状が真円となるよう形成されている。また、残りの送気・送水ルーメンの一方は上記横断面形状が楕円となるよう形成されている。また、残りの送気・送水ルーメンのもう一方は上記横断面形状が三角形となるよう形成されている。従ってOCT観察器具100が図4(a)の状態にあるときにラジアルスキャンすると、OCT観察器具100周囲(例えば枠体120等)及び管腔壁の像がプロセッサ300により形成されて、モニタ400には図4(b)に示された画像が表示される。具体的にはモニタ400上において枠体120は枠体像120’、送気・送水ルーメン524aは真円像624a、残りの送気・送水ルーメンの一方は楕円像624b、残りの送気・送水ルーメンのもう一方は三角形像624cとして表示される。また、各バルーン128a〜128cはそれぞれ、バルーン像628a、628b、628cとして表示される。
【0061】
ここで、送気・送水装置130の各スイッチ機構134a〜134cのボタン上にはそれぞれ、各バルーン128a〜128cを識別するための識別情報534a、534b、534cが付されている。識別情報534a、534b、534cはそれぞれ真円、楕円、三角形を示すマークである。スイッチ機構134aを押下して且つ流動体を送気・送水させるようシリンジ136を操作すると、送気・送水ルーメン524a(すなわち上記横断面形状が真円のルーメン)を介してバルーン128a内部に流動体が封入されて膨らんでいく。また、スイッチ機構134bを押下して且つ流動体を送気・送水させるようシリンジ136を操作すると、上記横断面形状が楕円のルーメンを介してバルーン128b内部に流動体が封入されて膨らんでいく。また、スイッチ機構134cを押下して且つ流動体を送気・送水させるようシリンジ136を操作すると、上記横断面形状が三角形のルーメンを介してバルーン128c内部に流動体が封入されて膨らんでいく。
【0062】
術者は図4(b)に示されたモニタ400の画像と各識別情報534a〜534cとをそれぞれ確認しながら操作することにより、何れのバルーンを膨らませればOCT観察器具100が管腔に対してどの位置・向きになるかをより正確に把握することができる。従って更に別の実施の形態を採用すると、OCT観察器具100をより正確且つ迅速に観察対象に近接させることが可能となる。なお、送気・送水ルーメンの横断面形状は上記したものに限定されず、例えば四角形以上の多角形や菱形等のあらゆる形状が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態のOCTシステムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のOCT観察器具の構成を示した概略図である。
【図3】管腔挿入時における本発明の実施の形態のOCT観察器具の正面図である。
【図4】更に別の実施の形態のOCTシステムについて示した図である。
【符号の説明】
【0064】
10 OCTシステム
100 OCT観察器具
110 OCTプローブ
120 枠体
122 プローブ用ルーメン
128a〜128c バルーン
130 送気・送水装置
300 プロセッサ
400 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内の観察対象の断層像を取得するためのOCT観察器具において、
該断層からの反射光を取得するOCTプローブと、
前記OCTプローブが挿通される挿通路を有した枠体と、
前記枠体の周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、
任意の前記流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段と、を備えたこと、を特徴とするOCT観察器具。
【請求項2】
前記流動体供給手段は、流動体を供給すべき前記流動体封入手段を選択する選択手段と、選択された前記流動体封入手段に供給される流動体の量を調整する調整手段と、を有したこと、を特徴とする請求項1に記載のOCT観察器具。
【請求項3】
前記選択手段には、前記少なくとも三つの流動体封入手段の各々を識別するための識別情報が付されていること、を特徴とする請求項2に記載のOCT観察器具。
【請求項4】
前記調整手段は前記少なくとも三つの流動体封入手段の各々の内圧を検出する内圧検出手段を含み、その検出結果に基づいて流動体の量を調整すること、を特徴とする請求項3に記載のOCT観察器具。
【請求項5】
前記枠体を、該低コヒーレント光に対して高い透過率を有する材料で形成したこと、を特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のOCT観察器具。
【請求項6】
前記枠体に、前記少なくとも三つの流動体封入手段の各々に流動体を導く複数の流動体伝送路を形成したこと、を特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のOCT観察器具。
【請求項7】
前記複数の流動体伝送路の各々は、その長手方向に直交する横断面形状がそれぞれ異なること、を特徴とする請求項6に記載のOCT観察器具。
【請求項8】
前記枠体先端が面取りされていること、を特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のOCT観察器具。
【請求項9】
管腔内の観察対象の断層像を取得するためのOCT観察器具において、
低コヒーレント光を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバから出射された光を該観察対象で結像させる対物光学系と、
前記光ファイバ及び前記対物光学系を覆ったシースと、
前記シースの周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、
任意の前記流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段と、を備えたこと、を特徴とするOCT観察器具。
【請求項10】
管腔内の所望の位置に処置具を固定させる固定器具であって、
処置具が挿通される挿通路を有した枠体と、
前記枠体の周方向に沿って所定の間隔で取り付けられ、その内部に流動体が封入され得る少なくとも三つの流動体封入手段と、
任意の前記流動体封入手段に流動体を供給可能な流動体供給手段と、を備えたこと、を特徴とする固定器具。
【請求項11】
管腔内の観察対象の断層像を取得して画像化するOCTシステムにおいて、
請求項1から請求項8の何れかに記載のOCT観察器具と、
前記OCTプローブが取得した反射光を処理して所定の信号に変換する信号処理手段と、
該所定の信号に基づいて該断層画像を表示する表示手段と、を備えたこと、を特徴とするOCTシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−75403(P2007−75403A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268036(P2005−268036)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】