説明

PLL回路、PLL回路の動作方法およびシステム

【課題】 回路規模を増加することなく、PLL回路の精度を向上する。
【解決手段】 時間計測回路は、基準クロックの遷移エッジが現れてから、出力クロックの遷移エッジが2回現れるまでの時間間隔をカウント値として計測する。位相差正規化回路は、計測された時間間隔を出力クロックのクロック数で表される微少位相差に正規化する。また、位相差正規化回路は、PLL回路のロック後に、”1”または”2”を示す微少位相差が連続して現れるときに、”1”と”2”がランダムに現れるまで正規化係数を徐々にずらす。演算回路は、出力クロックの積算値から微少位相差の値を引いた値を、周波数制御語の積算値から差し引いて、基準クロックと出力クロックの位相差を示す位相差信号を生成する。発振回路は、基準クロックと出力クロックの位相を合わせるために、位相差信号に基づいて出力クロック信号の周波数を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL回路およびPLL回路の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の素子構造の微細化に伴い、アナログ回路において、消費電流の増加、回路面積の増加、あるいは特性のばらつきが問題になってきている。これに伴い、アナログ回路からデジタル回路への置換が求められている。例えば、ADC(Analog to Digital Converter)のダイナミックレンジは、微細化により半導体集積回路の動作電圧が低くなることで小さくなる。そこで、電圧を離散化するADCに代えて、時間を離散化するTDC(Time to Digital Converter)の開発が進んでいる。また、TDC回路を利用したADPLL回路(All Digital Phase-Locked Loop)が提案されている。(例えば、特許文献1−2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−76886号公報
【特許文献2】特開2009−268047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ADPLL回路の動作精度を向上するためには、ADPLL回路に入力される基準クロックとADPLL回路から出力される出力クロックとの位相差を極力小さく必要がある。この際、回路規模を増加することなく、正しい正規化係数を求め、ADPLL回路の精度を向上することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態では、PLL回路は、周波数制御語の値を基準クロックに応答して積算し、第1カウント値を生成する第1カウンターと、出力クロックのクロック数を積算し、第2カウント値を生成する第2カウンターと、基準クロックの遷移エッジが現れてから、出力クロックのクロックサイクルを示す遷移エッジが2回現れるまでの時間間隔を計測し、第3カウント値として出力する時間計測回路と、第3カウント値に正規化係数を乗じ、計測された時間間隔を出力クロックのクロック数で表される微少位相差に正規化する位相差正規化回路と、第2カウント値から微少位相差の値を引いた値を、第1カウント値から差し引いて、基準クロックと出力クロックの位相差を示す位相差信号を生成する演算回路と、位相差信号を受けるループフィルターと、基準クロックと出力クロックの位相を合わせるために、ループフィルターを介して供給される位相差信号に基づいて出力クロックの周波数を変更する発振回路とを備え、位相差正規化回路は、PLL回路のロック後に、”1”を示す微少位相差が連続して現れるとき、または”2”を示す微少位相差が連続して現れるときに、”1”を示す微少位相差と”2”を示す微少位相差とがランダムに現れるまで正規化係数を徐々にずらすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
簡易な回路構成で正しい正規化係数を求めることができ、基準クロックと出力クロックの位相差を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態における整数逓倍機能を有するPLL回路の例を示している。
【図2】図1に示したアキュムレーターの動作の例を示している。
【図3】図1に示したTDC回路の例を示している。
【図4】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック状態の例を示している。
【図5】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック状態の別の例を示している。
【図6】図1に示した位相差正規化回路内の論理回路の動作の例を示している。
【図7】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック後で、正規化係数が補正される前の動作の例を示している。
【図8】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック後で、正規化係数が補正される前の動作の別の例を示している。
【図9】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路において、正規化係数が補正された後の動作の例を示している。
【図10】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路において、正規化係数が補正された後の動作の別の例を示している。
【図11】図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路がロックする前の位相差正規化回路の論理回路の動作の例を示している。
【図12】図11に示した動作を実施する位相差正規化回路を有するPLL回路のシミュレーション波形の例を示している。
【図13】別の実施形態における分数逓倍機能を有するPLL回路の例を示している。
【図14】図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差の変化の例を示している。
【図15】図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差の変化の別の例を示している。
【図16】図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差の変化の別の例を示している。
【図17】図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差の変化の別の例を示している。
【図18】図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路における位相差正規化回路内の論理回路の動作の例を示している。
【図19】図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路のシミュレーション波形の例を示している。
【図20】上述した実施形態におけるPLL回路が搭載されるシステムの例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0009】
図1は、一実施形態における整数逓倍機能を有するPLL(Phase-Locked Loop)回路の例を示している。例えば、PLL回路は、ADPLL(All Digital Phase-Locked Loop)回路である。PLL回路は、フリップフロップ回路FF1、FF2、TDC(Time to Digital Converter)回路、位相差正規化回路NRM、アキュムレーターACCM1、加算器ADD、ループフィルターLPFおよびDCO(Digitally Controlled Oscillator)回路を有している。
【0010】
フリップフロップ回路FF1、FF2は、直列に接続されている。フリップフロップ回路FF1は、入力端子Dで基準クロックREFを受け、クロック端子でPLL回路の出力クロックCLKOUTを受ける。フリップフロップ回路FF2は、入力端子Dでフリップフロップ回路FF1の出力信号Qを受け、クロック端子で出力クロックCLKOUTを受け、出力端子QからクロックCKRを出力する。クロックCKRは、図4および図5に示すように、基準クロックREFの立ち上がりエッジ後、2番目の出力クロックCLKOUTの立ち上がりエッジに同期して立ち上がる。同様に、クロックCKRは、基準クロックREFの立ち下がりエッジ後、2番目の出力クロックCLKOUTの立ち上がりエッジに同期して立ち下がる。この実施形態では、2つのフリップフロップ回路FF1、FF2を直列に接続することで、クロックCKRがメタステーブル状態になることを防止できる。
【0011】
TDC回路は、スタート端子STARTで受ける基準クロックREFの立ち上がりエッジからストップ端子STOPで受けるクロックCKRの立ち上がりエッジまでの時間差(アナログ値)を計測し、カウント値REV(デジタル値)として出力する。すなわち、TDC回路は、基準クロックREFの遷移エッジ(立ち上がりエッジ)が現れてから、出力クロックCLKOUTのクロックサイクルを示す遷移エッジ(立ち上がりエッジ)が2回現れるまでの時間間隔(位相差)を計測し、計測した時間間隔をカウント値REVとして出力する時間計測回路として動作する。また、TDC回路は、カウント値REVの出力とともに終了信号EOCを出力する。
【0012】
位相差正規化回路NRMは、論理回路LOGIC1および乗算器MULを有している。論理回路LOGICは、乗算器MULから出力される正規化された微少位相差REVnormを受け、正規化係数normを生成する。正規化された微少位相差REVnormが論理回路LOGIC1に繰り返しフィードバックされることで、正規化係数normは徐々に正しいに値に調整される。乗算器MULは、カウント値REVに正規化係数normを乗じて微少位相差REVnormを生成する。このように、位相差正規化回路NRMは、カウント値REVに正規化係数normを乗じ、TDC回路により計測された時間間隔を出力クロックCLKOUTのクロック数で表される微少位相差REVnormに正規化する。
【0013】
アキュムレーターACCM1は、カウンターCOUNT1、COUNT2およびフリップフロップ回路FF3を有している。カウンターCOUNT1は、周波数制御語FCW(Frequency Command Word)を、基準クロックREFに応答して生成されるクロックCKRに同期して積算し、カウント値FCWCNTとして出力する。カウント値FCWCNTは、クロックCKRの位相を示す。この実施形態では、周波数制御語FCWは、正の整数であり、PLL回路は整数逓倍回路として動作する。例えば、カウンターCOUNT1が6ビットカウンターであり、周波数制御語FCWが”8”のとき、10進数で”0”、”8”、”16”、”24”、”32”、”40”、”48”、”56”のカウント値FCWCNTが、クロックCKRに同期して巡回的に生成される。
【0014】
カウンターCOUNT2は、出力クロックCLKOUTのクロック数を積算し、カウント値FBCNT0として出力する。すなわち、カウント値FBCNT0は、出力クロックCLKOUTに同期して”1”ずつ増加する。例えば、カウンターCOUNT2がカウンターCOUNT1と同じ6ビットカウンターのとき、10進数で”0”から”63”までのカウント値FBCNT0が出力クロックCLKOUTに同期して巡回的に生成される。フリップフロップ回路FF3は、カウント値FBCNT0をクロック信号CKRに同期して受け、カウント値FBCNTとして出力する。カウント値FBCNTは、クロックCKRに同期する出力クロックCLKOUTの位相を示している。
【0015】
加算器ADDは、カウント値FCWCNTとCLKOUT積分との差を演算し、位相差信号PHASEとして出力する。すなわち、位相差信号PHASEの値は、式(1)により示される。
PHASE=FCWCNT−CLKOUT積分 ‥‥(1)
ここで、CLKOUT積分は、カウント値FBCNTと正規化された微少位相差REVnormの値との差であり、式(2)で示される。式(1)、(2)より、位相差信号PHASEは、式(3)としても示される。
CLKOUT積分=FBCNT−REVnorm ‥‥(2)
PHASE=FCWCNT−FBCNT+REVnorm ‥‥(3)
ループフィルターLPFは、位相差信号PHASEに含まれる高周波成分やノイズを除去する。DCO回路は、ループフィルターLPFからの出力に基づいて出力クロックCLKOUTを生成する。DCO回路は、基準クロックREFと出力クロックCLKOUTの位相を合わせるために、ループフィルターLPFを介して供給される位相差信号PHASEに基づいて出力クロックCLKOUTの周波数を変更する発振回路として動作する。
【0016】
図2は、図1に示したアキュムレーターACCM1の動作の例を示している。例えば、カウンターCOUNT1、COUNT2は16ビットカウンターであり、周波数制御語FCWの値は”8”に設定されている。
【0017】
図1に示したカウンターCOUNT1は、クロックCKRに同期してカウント値FCWCNTを”0”、”8”、”16”、”24”、...と更新する。カウンターCOUNT2は、出力クロックCLKOUTに同期してカウント値FBCNT0を”1”ずつ増加させる。カウント値FBCNT0は、出力クロックCLKOUTに同期して増加するため、出力クロックCLKOUTのクロック数を示す。フリップフロップ回路FF3は、クロックCKRに同期してカウント値FBCNT0をカウント値FBCNTとして出力する。なお、図2では、カウント値FCWCNT、FBCNTの値を揃っている例を示しているが、カウント値FCWCNT、FBCNTの値は、互いにずれていてもよい。
【0018】
図3は、図1に示したTDC回路の例を示している。なお、TDC回路は、図3の回路に限定されず、スタート信号STARTとストップ信号STOPの時間差(すなわち、出力クロックCLKOUTのほぼ2周期分)をデジタル値として検出できるものであれば他の回路でもよい。
【0019】
TDC回路は、直列に接続された複数のインバータIVを有するインバータ列IVRと、インバータIVの出力にそれぞれ接続された複数のフリップフロップ回路FFと、遅延検出回路DLYDETとを有している。各インバータIVの遅延時間tSLBは、互いに等しい。TDC回路が検出可能な時間差の分解能は、遅延時間tSLBに等しい。インバータ列IVRは、初段のインバータIVでスタート信号STARTの立ち上がりエッジを受け、後続のインバータIVによりスタート信号STARTの立ち上がりエッジを順次に遅延させ、出力端子Qから遅延信号として出力する。なお、インバータ列IVRの全てのインバータIVによる遅延時間は、スタート信号STARTからストップ信号STOPまでの時間差より大きい。
【0020】
各フリップフロップ回路FFは、対応するインバータIVからの遅延信号の論理レベルをストップ信号STOPの立ち上がりエッジに同期してラッチする。遅延検出回路DLYDETは、ストップ信号STOPの立ち上がりエッジに同期して各フリップフロップ回路FFの出力レベル(Qまたは/Q)を受ける。そして、遅延検出回路DLYDETは、各フリップフロップ回路FFの出力レベルに基づいて、スタート信号STARTの立ち上がりエッジからストップ信号STOPの立ち上がりエッジまでの時間差を計測し、カウント値REVとして出力する。
【0021】
TDC回路の動作前、スタート信号STARTおよびストップ信号STOPは、ともに論理0であり、入力側から奇数番目のインバータIVは論理1を出力し、偶数段目のインバータIVは論理0を出力する。各フリップフロップ回路FFは、出力端子Qまたは/Qから論理0を出力する。スタート信号STARTが論理0から論理1に変化すると、入力側のインバータIVから順に論理レベルが反転し、フリップフロップ回路FFの出力端子Qまたは/Qは、順に論理0から論理1に変化する。
【0022】
例えば、スタート信号STARTとストップ信号STOPの時間差が小さいとき、論理1を出力するフリップフロップ回路FFの数は相対的に少なくなる。これに対して、スタート信号STARTとストップ信号STOPの時間差が大きいとき、論理1を出力するフリップフロップ回路FFの数は相対的に多くなる。換言すれば、論理1を出力するフリップフロップ回路FFと論理0を出力するフリップフロップ回路FFとの境界は、スタート信号STARTとストップ信号STOPの時間差に応じて変化する。
【0023】
遅延検出回路DLYDETは、論理1を出力するフリップフロップFFと論理0を出力するフリップフロップ回路FFの境界を検出することで、スタート信号STARTとストップ信号STOPの時間差を計測し、カウント値REVとして出力する。また、遅延検出回路DLYDETは、ストップ信号STOPに応答して、終了信号EOCを出力する。
【0024】
図4は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック状態の例を示している。図4では、PLL回路がロックした状態で、出力クロックCLKOUTの位相が基準クロックREFの位相より僅かに早い。基準クロックREFの立ち上がりエッジからクロックCKRの立ち上がりエッジまでの時間差を示すカウント値REVは、”2tOSC−Δt”である。カウント値REVは、このままではカウント値FBCNT、FCWCNTと演算できないため、正規化する必要がある。具体的には、カウント値REVは、出力クロックCLKOUTの周期tOSCで除し、出力クロックCLKOUTの1周期に対する比率で表すことで正規化される。すなわち、正規化された微少位相差REVnorm(=REV*norm)は、”(2tOSC−Δt)/tOSC”で表される。符号”*”は、乗算を示している。
【0025】
図4では、クロックCKRの位相は、基準クロックREFの位相に比べて、出力クロックCLKOUTのほぼ2クロックサイクル遅い。このため、図4に示したロック状態において、カウント値FCWCNTが”m”のとき、カウント値FBCNTは”m+2”になる。これより、上述した式(2)のCLKOUT積分は”m+Δt*norm”になり、上述した式(1)の位相差信号PHASEの値は”−Δt*norm”になる。
【0026】
図5は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック状態の別の例を示している。図5では、PLL回路がロックした状態で、出力クロックCLKOUTの位相が基準クロックREFの位相より僅かに遅い。基準クロックREFの立ち上がりエッジからクロックCKRの立ち上がりエッジまでの時間差を示すカウント値REVは、”tOSC+Δt”である。カウント値REVを出力クロックCLKOUTの周期tOSCで割り、正規化すると、微少位相差REVnorm(=REV*norm)は、”(tOSC+Δt)/tOSC”で表される。
【0027】
図5では、クロックCKRの位相は、基準クロックREFの位相に比べて、出力クロックCLKOUTのほぼ1クロックサイクル遅い。このため、図5に示したロック状態において、カウント値FCWCNTが”m”のとき、カウント値FBCNTは”m+1”になる。これより、上述した式(2)のCLKOUT積分は”m−Δt*norm”になり、上述した式(1)の位相差信号PHASEの値は”+Δt*norm”になる。
【0028】
図6は、図1に示した位相差正規化回路NRM内の論理回路LOGIC1の動作の例を示している。なお、図6では、論理回路LOGIC1の動作をフローチャートで示しているが、実際の論理回路LOGIC1では、複数の動作が同時に実施される。例えば、処理P14、P16と処理P18、P20の処理は、互いに別の回路で同時に実施される。処理P10は、PLL回路のロック前に実施される。処理P12からP20は、PLL回路のロック後に実施される。
【0029】
まず、処理P10では、論理回路LOGIC1は、正規化係数normを初期値に設定する。この例では、正規化係数normの初期値は、微少位相差REVnormが”1”より大きく”2”より小さい値になるように設定される。処理P12では、PLL回路の負帰還ループが安定するまでの待ち時間が挿入される。
【0030】
処理P14、P16において、論理回路LOGIC1は、”2”を示す微少位相差REVnormが連続する回数を求め、ほぼ”2”の値が所定回数連続するとき、正規化係数normを値Δだけ小さくする。同様に、処理P18、P20において、論理回路LOGIC1は、”1”を示す微少位相差REVnormが連続する回数を求め、ほぼ”1”の値が所定回数連続するとき、正規化係数normを値Δだけ大きくする。特に限定されないが、検出される連続の所定回数は、例えば16回である。
【0031】
処理P14、P16および処理P18、P20を繰り返し、正規化係数normを調整することにより、”1”と”2”の微少位相差REVnormがランダムに現れるようになる。これは、図4および図5に示した状態がランダムに現れることを示している。すなわち、”1”と”2”の微少位相差REVnormがランダムに現れるとき、位相差正規化回路NRMにより正しい正規化係数normが生成される。このとき、正規化係数normの精度は最も高くなり、PLL回路の動作精度は最も高くなる。
【0032】
図7は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック後で、正規化係数normが補正される前の動作の例を示している。図7では、基準クロックREFとクロックCKRの位相差が、出力クロックCLKOUTの1周期から2周期の間に位置する状態で、PLL回路はロックしている。正規化係数normが、期待値”tLSB/tOSC”より大きいとき、ほぼ”2”を示す微少位相差REVnormが連続して生成される。ここで、tLSBは、図3に示したTDC回路の分解能である。図1に示した論理回路LOGIC1が、図7の状態を連続して検出するとき、図6の処理P16により、正規化係数normは少しずつ小さく変更される。
【0033】
図8は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路のロック後で、正規化係数normが補正される前の動作の別の例を示している。図8においても、基準クロックREFとクロックCKRの位相差が、出力クロックCLKOUTの1周期から2周期の間に位置する状態で、PLL回路はロックしている。正規化係数normが、期待値”tLSB/tOSC”より小さいとき、微少位相差REVnormは、ほぼ”1”を示す微少位相差REVnormが連続して生成される。図1に示した論理回路LOGIC1が、図8の状態を連続して検出するとき、図6の処理P20により正規化係数normは少しずつ大きく変更される。
【0034】
図9は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路において、正規化計数normが補正された後の動作の例を示している。図9では、基準クロックREFとクロックCKRの位相差が、出力クロックCLKOUTのほぼ2周期と等しい状態で、PLL回路はロックしている。正規化係数normは、期待値”tLSB/tOSC”に等しい。出力クロックCLKOUTの位相が基準クロックREFの位相に比べて僅かに早いとき、ほぼ”2”を示す微少位相差REVnormが生成される。
【0035】
図10は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路において、正規化計数normが補正された後の動作の別の例を示している。図10では、基準クロックREFとクロックCKRの位相差が、出力クロックCLKOUTのほぼ1周期と等しい状態で、PLL回路はロックしている。正規化係数normは、期待値”tLSB/tOSC”に等しい。出力クロックCLKOUTの位相が基準クロックREFの位相に比べて僅かに遅いとき、ほぼ”1”を示す微少位相差REVnormが生成される。
【0036】
図6に示した論理回路LOGIC1による正規化係数normの調整により、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSCまで引き込まれると、微少位相差REVnormの値は、”1”と”2”をランダムにとり、図9および図10の状態がランダムに現れる。これは、PLL回路が整数逓倍回路であり、カウント値FCWCNT、FBCNTおよび周波数制御語FCWは整数であるため、ロック状態に収束するためには、微少位相差REVnormも整数になる必要があるためである。
【0037】
図11は、図1に示した整数逓倍機能を有するPLL回路がロックする前の位相差正規化回路NRMの論理回路LOGIC1の動作の例を示している。この例では、PLL回路のロック前に、図6に示した処理P10の代わりに、図11に示す処理P11が実施される。
【0038】
上述した図6では、正規化係数normを正しく調整するために、処理P10において、正規化係数normを初期値に設定している。しかしながら、微少位相差REVnormが”1”より大きく”2”より小さい値になるように、正規化係数normの初期値を予め求めることは容易でないときがある。
【0039】
例えば、正規化係数normの初期値が期待値”tLSB/tOSC”の2倍より大きいとき、”3”以上の微少位相差REVnormが連続して現れることがあり得る。このとき、図6の処理P14、P16、P18、P20では、正規化係数normを正しい値に引き込むことはできない。また、正規化係数normの初期値が期待値”tLSB/tOSC”の半分より小さいとき、微少位相差REVnormが”1”以下になるため、PLL回路の動作が不安定になる。
【0040】
このようなときに、図6の処理P10に代えて図11の処理P11を実施することで、微少位相差REVnormが”1”より大きく”2”より小さい値になるような正規化係数normの初期値を、論理回路LOGIC1自身により自動的に求めることができる。
【0041】
まず、処理P100において、正規化係数normを任意の初期値に設定した後、処理P102において、TDC回路により生成されるカウント値REVに正規化係数normを乗じて微少位相差REVnormを求める。
【0042】
次に、処理P104において、微少位相差REVnormを最大値REVnorm(max)と比較する。特に限定されないが、最大値REVnorm(max)の初期値は”0”である。微少位相差REVnormが最大値REVnorm(max)以下のとき、処理P102に戻り、カウント値REVが更新されたらカウント値REVに正規化係数normを乗じて微少位相差REVnormが再び求められる。微少位相差REVnormが最大値REVnorm(max)より大きいとき、処理P106において、最大値REVnorm(max)を微少位相差REVnormに置き換える。
【0043】
処理P108において、最大値REVnorm(max)が”2”より大きいときに、処理P110において、正規化係数normは半分にされる。図中の符号”>>”は、下位ビット側への1ビットシフト演算を示している。次に、処理P112において、最大値REVnorm(max)は半分にされる。処理P112の後、処理P108が再び実施される。
【0044】
また、処理P108において、最大値REVnorm(max)が”2”以下であり、処理P114において、最大値REVnorm(max)が”1”より小さいときに、処理P116において、正規化係数normは2倍にされる。図中の符号”<<”は、上位ビット側への1ビットシフト演算を示している。また、処理P118において、最大値REVnorm(max)は2倍にされる。処理P118の後、処理P108が再び実施される。
【0045】
最大値REVnorm(max)が”1”より大きく”2”より小さいとき、処理P120において、PLL回路がロックしているか否かが判定される。PLL回路がロックしているとき、図6に示した処理P12以降が実施される。PLL回路がロックしていないとき、処理P102に戻り、カウント値REVに正規化係数normを乗じて微少位相差REVnormが再び求められる。
【0046】
以上の動作により、ロックする前の正規化係数normの初期値が期待値”tLSB/tOSC”の2倍より大きく、あるいは期待値”tLSB/tOSC”の半分より小さいときにも、微少位相差REVnormが”1”から”2”の間になるように、正規化係数normを初期調整できる。そして、図6に示した処理P12から処理P20により正規化係数normを、正しい値である期待値”tLSB/tOSC”に引き込むことができる。
【0047】
図12は、図11に示した動作を実施する位相差正規化回路NRMを有するPLL回路のシミュレーション波形の例を示している。図12では、PLL回路が動作を開始するときに、図11に示した処理P11を実施し、微少位相差REVnormは、”1”より大きく”2”より小さい値に初期設定される(図12(a))。この例では、微少位相差REVnormは、整数値で”1”に初期設定される。これにより、図6に示した処理P14、P16、P18、P20を実施可能になる。
【0048】
微少位相差REVnormは、しばらくの間、ほぼ”1”を示す(図12(b))。このため、図6の処理P18、P20により、論理回路LOGIC1は、正規化係数normを徐々に増やす(図12(c))。そして、”1”と”2”の微少位相差REVnormがランダムに現れるようになったとき、論理回路LOGIC1は、出力クロックCLKOUTと基準クロックREFの位相が一致したと判断し、正規化係数normの更新を停止する(図12(d))。すなわち、正規化係数normは期待値”tLSB/tOSC”に引き込まれ、一定の値になる。
【0049】
以上、この実施形態では、整数逓倍機能を有するPLL回路において、割り算回路や平均化回路などを持たない簡易な論理回路LOGIC1により、カウント値REVを精度よく正規化でき、正規化係数normを正しい値に引き込むことができる。この結果、基準クロックREFの位相と出力クロックCLKOUTとの位相差Δtを最小にでき、PLL回路を高い精度でロックさせることができる。
【0050】
直列に接続されたフリップフロップ回路FF1、FF2により、ロック時の微少位相差REVnormの値は、ほぼ”1”またはほぼ”2”になる。これにより、図6に示したように、正規化係数normを正しい値に引き込むための論理回路LOGIC1の動作を簡易にできる。
【0051】
さらに、PLL回路の動作開始時に、微少位相差REVnormが”1”から”2”の間になるように、正規化係数normを自動的に初期調整することで、微少位相差REVnormの初期値に拘わらず、正規化係数normを常に正しい値に引き込むことができる。この際、回路規模の大きい除算回路や平均化回路を論理回路LOGIC1に追加する必要はない。すなわち、簡易な論理回路LOGIC1により、図6および図11に示した動作を実現でき、PLL回路を高い精度でロックさせることができる。
【0052】
図13は、別の実施形態における分数逓倍機能を有するPLL(Phase-Locked Loop)回路の例を示している。例えば、PLL回路は、ADPLL(All Digital Phase-Locked Loop)回路である。図1と同一の要素については、同一の符号を付し、これ等については、詳細な説明を省略する。
【0053】
PLL回路は、分数逓倍機能を有するため、図1に示した整数逓倍用のアキュムレーターACCM1の代わりに、分数逓倍用のアキュムレーターACCM2を有している。アキュムレーターACCM2は、図1に示したカウンターCOUNT1の代わりに、小数点以下の値を含む周波数制御語FCWをクロックCKRに同期して積算し、カウント値FCWCNTとして出力するカウンターCOUNT3を有している。また、PLL回路は、図1に示した整数逓倍用の論理回路LOGIC1の代わりに、分数逓倍用の論理回路LOGIC2を有している。論理回路LOGIC2は、微少位相差REVnormおよび周波数制御語FCWを受けて動作する。論理回路LOGIC2の動作の例は、図18に示す。PLL回路のその他の構成は、図1と同様である。
【0054】
図14は、図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差REVnormの変化の例を示している。なお、図14は、規格化係数normが期待値”tLSB/tOSC”のときの変化を示している。
【0055】
微少位相差REVnormの値は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”のときに”1”から”2”の範囲しかとれないため、周期的にオーバーフローして折り返すことになる。微少位相差REVnormの変化は、小数部fracが”0.5”以下のときと、小数部fracが”0.5”より大きいときで異なる。このため、図14では、frac=0.25の例と、frac=0.75の例を示している。
【0056】
連続する2つの微少位相差REVnormの差ΔREVnormに着目すると、frac=0.25、0.75のどちらにおいても、微少位相差REVnormの値がオーバーフローして折り返したときの差ΔREVnorm(絶対値)は、”0.75”になる(図14(a、b))。なお、折り返しが、”2”付近と、”1”付近で起こることがあるが、どちらのときにも、折り返したときの差ΔREVnorm(絶対値)は、”0.75”になる(図14(c、d))。折り返しがないものとすると、差ΔREVnormは、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”のとき、常に一定の値(”−0.25”または”0.25”)になる。
【0057】
図15は、図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差REVnormの変化の別の例を示している。図15は、規格化係数normが期待値”tLSB/tOSC”のときのfrac=0.3の例と、frac=0.7の例を示している。
【0058】
図15では、図14と同様に、frac=0.3、0.7のどちらにおいても、微少位相差REVnormの値がオーバーフローして折り返したときの差ΔREVnorm(絶対値)は、”0.7”になる(図15(a、b))。折り返しがないものとすると、差ΔREVnormは、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”のとき、常に一定の値(”−0.3”または”0.3”)になる。
【0059】
図16は、図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差REVnormの変化の別の例を示している。この例では、規格化係数normは、期待値”tLSB/tOSC”より小さく、例えば、期待値”tLSB/tOSC”の0.8倍である。小数部fracが”0.25”のとき、差ΔREVnormは、周期的に”1−frac”より小さい値(この例では、”0.6”)になる。折り返しがないものとすると、差ΔREVnormの最大値は”−0.4”になり、差ΔREVnormの平均値は、”−0.25”になる。
【0060】
小数部fracが”0.75”のとき、差ΔREVnormの絶対値は、周期的に小数部fracより小さい値(この例では”0.6”)になる。折り返しがないものとすると、差ΔREVnormの最大値は”0.4”になり、差ΔREVnormの平均値は、”0.25”になる。
【0061】
図17は、図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路の微少位相差REVnormの変化の別の例を示している。規格化係数normは、期待値”tLSB/tOSC”より大きく、例えば、期待値”tLSB/tOSC”の1.2倍である。小数部fracが”0.25”のとき、差ΔREVnormは、周期的に”1−frac”より大きい値(この例では、”0.9”)になる。小数部fracが”0.75”のとき、差ΔREVnormの絶対値は、周期的に小数部fracより大きい値(この例では”0.9”)になる。
【0062】
図18は、図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路における位相差正規化回路NRM内の論理回路LOGIC2の動作の例を示している。まず、論理回路LOGIC2は、図11と同じ処理P11を実施し、微少位相差REVnormが”1”より大きく”2”より小さい値になるように、正規化係数normの初期値を調整する。次に、処理P202において、論理回路LOGIC2は、PLL回路の外部から供給される周波数制御語FCWを整数部intと小数部fracに分解する。
【0063】
次に、処理P204において、論理回路LOGIC2は、連続する2つの微少位相差REVnormの差ΔREVnormを測定する。ここで、処理P204から処理P222までの動作は、PLL回路のロック後に実施される。処理P206において、小数部fracが”0.5”より大きいとき、処理はP208に移行され、小数部fracが”0.5”以下のとき、処理はP218に移行される。
【0064】
処理P208において、差ΔREVnormが”0”より小さいとき、すなわち負の値を示すとき、処理はP210に移行される。また、処理P208において、差ΔREVnormが”0”以上のとき、論理回路LOGIC2は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”か否かを判定できないため、処理を再びP204に移行する。
【0065】
処理P210において、差ΔREVnormの絶対値が小数部fracより大きいとき(例えば、図17の下側の特性のΔREVnorm=−0.9)、処理はP214に移行される。処理P210において、差ΔREVnormの絶対値が小数部frac以下のとき(例えば、図16の下側の特性のΔREVnorm=−0.6)、処理はP212に移行される。
【0066】
処理P212において、差ΔREVnormの絶対値が小数部fracと等しいとき、論理回路LOGIC2は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”に引き込まれたと判断し、処理P204に戻る。差ΔREVnormの絶対値が小数部fracと等しくないとき、論理回路LOGIC2は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”まで引き込まれていないと判断し、処理P216に移行する。
【0067】
処理P214において、論理回路LOGIC2は、正規化係数normを値Δだけ小さくする。処理P216において、論理回路LOGIC2は、正規化係数normを値Δだけ大きくする。ここで、値Δは、正規化係数normに比べて十分に小さい値である。処理214、処理216の後、処理はP208に移行される。
【0068】
一方、処理P218において、差ΔREVnormが”0”より大きいとき、すなわち正の値を示すとき、処理はP220に移行される。また、処理P218において、差ΔREVnormが”0”以下のとき、論理回路LOGIC2は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”か否かを判定できないため、処理を再びP204に移行する。
【0069】
処理P220において、差ΔREVnormが”1−frac”より大きいとき(例えば、図17の上側の特性のΔREVnorm=0.9)、処理はP224に移行される。処理P220において、差ΔREVnormが”1−frac”以下のとき(例えば、図16の上側の特性のΔREVnorm=0.6)、処理はP222に移行される。
【0070】
処理P222において、差ΔREVnormが”1−frac”と等しいとき、論理回路LOGIC2は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”に引き込まれたと判断し、処理P204に戻る。差ΔREVnormが”1−frac”と等しくないとき、論理回路LOGIC2は、正規化係数normが期待値”tLSB/tOSC”まで引き込まれていないと判断し、処理P226に移行する。
【0071】
処理P224において、論理回路LOGIC2は、正規化係数normを値Δだけ小さくする。処理P226において、論理回路LOGIC2は、正規化係数normを値Δだけ大きくする。
【0072】
このように、連続する2つの微少位相差REVnormの差ΔREVnormを求め、差ΔREVnormに応じて正規化係数normを調整することで、正規化係数normを正しい値(すなわち、期待値であるtLSB/tOSC)に引き込むことができる。換言すれば、正規化係数normが正しい値に引き込まれているとき、微少位相差REVnormは、図14および図15に示したように、折り返し時に”frac”だけ減少し(frac>0.5のとき)、あるいは、折り返し時に”1−frac”だけ増加する(frac<0.5のとき)。
【0073】
図18の動作を実現する論理回路LOGIC2は、回路規模の大きい除算回路や平均化回路を用いることなく実現できる。すなわち、簡易な論理回路LOGIC2により、図18に示した動作を実現できる。なお、処理P210、P220において、差ΔREVnormと比較される”frac”または”1−frac”は、どちらも”0.5”より大きい。このため、小数部fracが”0.5”より大きいときも、”0.5”より小さいときも、差ΔREVnormの大小関係を容易に検出できる。
【0074】
図19は、図13に示した分数逓倍機能を有するPLL回路のシミュレーション波形の例を示している。図19では、PLL回路が動作を開始するときに、図11に示した処理P11を実施し、微少位相差REVnormを”1”より大きく”2”より小さい値に初期設定する(図19(a))。一例ではあるが、図19では、図18に示した処理P216またはP226を繰り返し実施することにより、正規化係数normの値は徐々に増やされる(図19(b))。正規化係数normが期待値に近づくのにしたがい、位相差信号PHASEの振幅は徐々に小さくなる(図19(c))。図16および図17に示した周期的に突出する差ΔREVnormの値は、位相差信号PHASEの振幅が小さくなるにつれて徐々に小さくなり、小数部の値”frac”または”1−frac”に近づいていく。これに伴い、位相差信号PHASEに発生する周期的なノイズSpurも小さくなる。そして、微少位相差REVnormの変化は、例えば、図16または図17の特性から図14の特性になる。すなわち、正規化係数normは期待値”tLSB/tOSC”まで引き込まれ、一定の値になる。
【0075】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、分数逓倍機能を有するPLL回路において、簡易な論理回路LOGIC2により、カウント値REVを精度よく正規化でき、正規化係数normを正しい値に引き込むことができる。この結果、基準クロックREFの位相と出力クロックCLKOUTとの位相差Δtを最小にでき、PLL回路を高い精度でロックさせることができる。
【0076】
図20は、上述した実施形態におけるPLL回路が搭載されるシステムSYSの例を示している。システムSYSは、例えば、携帯機器等のマイクロコンピュータ応用機器であり、基板に接続されたチップ状態の半導体集積回路LSI、他の複数の半導体チップ、入力装置INおよび出力装置OUT等を有している。
【0077】
半導体集積回路LSIは、クロック生成回路CLKGEN、制御回路CNTL、上述した実施形態のいずれかのPLL回路およびドライバ回路DRVを有している。クロック生成回路CLKGENは、水晶発振器等からの発振信号OSCを受け、システムSYSを動作させるための基本クロックCLKおよびPLL回路に供給するための基準クロックREFを生成する。制御回路CNTLは、例えば、システムSYSを動作させるためのプログラムを実行するCPUを有している。制御回路CNTLは、ドライバ回路DRV等の半導体集積回路LSI内部の回路を制御するとともに、システムSYSの動作状態に応じて周波数制御語FCWを変更する。
【0078】
ドライバ回路DRVは、出力装置OUTおよび入力装置IN等の動作を制御するために基本クロックCLKに同期して動作する。特に限定されないが、出力装置OUTは、液晶ディスプレイ等であり、入力装置INは、電源スイッチおよび液晶ディスプレイの表面に設けられたタッチパネル等である。例えば、出力装置OUTは、画像や文字を表示するために、出力クロックCLKOUTを水平同期信号として受ける。同期信号の周波数は、システムSYSの動作状態(出力装置OUTの動作モード)に応じて、CPUが周波数制御語FCWの値を切り換えることにより変更される。
【0079】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0080】
ACCM1、ACCM2‥アキュムレーター;ADD‥加算器;AND1、AND2‥アンド回路;CKR‥クロック;CLK‥基本クロック;CLKGEN‥クロック生成回路;CLKOUT‥出力クロック;CNTL‥制御回路;COUNT1、COUNT2‥カウンター;DLYDET‥遅延検出回路;DRV‥ドライバ回路;EOC‥終了信号;FBCNT、FBCNT0‥カウント値;FCW‥周波数制御語;FCWCNT‥カウント値;FF、FF1、FF2、FF3‥フリップフロップ回路;FFR1、FFR2‥フリップフロップ列;IN‥入力装置;IV‥インバータ;IVR‥インバータ列;LOGIC1、LOGIC2‥論理回路;LPF‥ループフィルター;LSI‥半導体集積回路;MUL‥乗算器;norm‥正規化係数;normADJ‥正規化調整回路;NRM‥位相差正規化回路;OSC‥発振信号;OUT‥出力装置;PHASE‥位相差信号;REF‥基準クロック;REV‥カウント値;REVDEC‥デコーダ;REVnorm‥微少位相差;SYS‥システム;tLSB‥分解能;tOSC‥周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数制御語の値を基準クロックに応答して積算し、第1カウント値を生成する第1カウンターと、
出力クロックのクロック数を積算し、第2カウント値を生成する第2カウンターと、
前記基準クロックの遷移エッジが現れてから、前記出力クロックのクロックサイクルを示す遷移エッジが2回現れるまでの時間間隔を計測し、第3カウント値として出力する時間計測回路と、
前記第3カウント値に正規化係数を乗じ、計測された時間間隔を前記出力クロックのクロック数で表される微少位相差に正規化する位相差正規化回路と、
前記第2カウント値から前記微少位相差の値を引いた値を、前記第1カウント値から差し引いて、前記基準クロックと前記出力クロックの位相差を示す位相差信号を生成する演算回路と、
前記位相差信号を受けるループフィルタと、
前記基準クロックと前記出力クロックの位相を合わせるために、前記ループフィルタを介して供給される前記位相差信号に基づいて前記出力クロックの周波数を変更する発振回路と
を備え、
前記位相差正規化回路は、PLL回路のロック後に、”1”を示す前記微少位相差が連続して現れるとき、または”2”を示す前記微少位相差が連続して現れるときに、”1”を示す前記微少位相差と”2”を示す前記微少位相差とがランダムに現れるまで正規化係数を徐々にずらすこと
を特徴とするPLL回路。
【請求項2】
前記位相差正規化回路は、”1”を示す前記微少位相差が連続して現れるとき、正規化係数を大きくし、”2”を示す前記微少位相差が連続して現れるとき、正規化係数を小さくすること
を特徴とする請求項1記載のPLL回路。
【請求項3】
周波数制御語の値を基準クロックに応答して積算し、第1カウント値を生成する第1カウンターと、
出力クロックのクロック数を積算し、第2カウント値を生成する第2カウンターと、
前記基準クロックの遷移エッジが現れてから、前記出力クロックのクロックサイクルを示す遷移エッジが2回現れるまでの時間間隔を計測し、第3カウント値として出力する時間計測回路と、
前記第3カウント値に正規化係数を乗じ、計測された時間間隔を前記出力クロックのクロック数で表される微少位相差に正規化する位相差正規化回路と、
前記第2カウント値から前記微少位相差の値を引いた値を、前記第1カウント値から差し引いて、前記基準クロックと前記出力クロックの位相差を示す位相差信号を生成する演算回路と、
前記位相差信号を受けるループフィルタと、
前記基準クロックと前記出力クロックの位相を合わせるために、前記ループフィルタを介して供給される前記位相差信号に基づいて前記出力クロックの周波数を変更する発振回路と
を備え、
前記位相差正規化回路は、
前記周波数制御語により示される逓倍率の分数部の値が”0.5”より大きく、PLL回路のロック後に連続する2つの前記微少位相差の差を示す差分値が負の値を示すときに、前記差分値の絶対値が分数部の値より大きいときに正規化係数を小さくし、前記差分値の絶対値が分数部の値以下のときに正規化係数を大きくし、
前記逓倍率の分数部の値が”0.5”以下で、PLL回路のロック後に前記差分値が正の値を示すときに、”1”から分数部の値を引いた値より前記差分値が大きいときに正規化係数を小さくし、”1”から分数部の値を引いた値より前記差分値が小さいときに正規化係数を大きくすること
を特徴とするPLL回路。
【請求項4】
前記位相差正規化回路は、
PLL回路のロック前に、前記微少位相差が”2”より大きいときに、前記微少位相差を小さくするために前記正規化係数を小さくする処理と、前記微少位相差が”1”より小さいときに、前記微少位相差を大きくするために前記正規化係数を大きくする処理とを、前記微少位相差が”1”より大きく”2”より小さくなるまで繰り返すこと
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載のPLL回路。
【請求項5】
前記基準クロックを前記出力クロックに同期してラッチする第1フリップフロップ回路と、
前記第1フリップフロップ回路の出力信号を前記出力クロックに同期してラッチする第2フリップフロップ回路と
を備え、
前記時間計測回路は、前記基準クロックの遷移エッジから前記第2フリップフロップ回路の出力信号の遷移エッジまでの時間間隔を計測すること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のPLL回路。
【請求項6】
周波数制御語の値を基準クロックに応答して積算し、第1カウント値を生成し、
前記出力クロックのクロック数を積算し、第2カウント値を生成し、
前記基準クロックの遷移エッジが現れてから、前記出力クロックのクロックサイクルを示す遷移エッジが2回現れるまでの時間間隔を計測し、第3カウント値として出力し、
前記第3カウント値に正規化係数を乗じ、計測された時間間隔を前記出力クロックのクロック数で表される微少位相差に正規化し、
前記第2カウント値から前記微少位相差の値を引いた値を、前記第1カウント値から差し引いて、前記基準クロックと前記出力クロックの位相差を示す位相差信号を生成し、
前記基準クロックと前記出力クロックの位相を合わせるために、前記位相差信号に基づいて前記出力クロックの周波数を変更し、
PLL回路のロック後に、”1”を示す前記微少位相差が連続して現れるとき、または”2”を示す前記微少位相差が連続して現れるときに、”1”を示す前記微少位相差と”2”を示す前記微少位相差とがランダムに現れるまで正規化係数を徐々にずらすこと
を特徴とするPLL回路の動作方法。
【請求項7】
”1”を示す前記微少位相差が連続して現れるとき、正規化係数を大きくし、”2”を示す前記微少位相差が連続して現れるとき、正規化係数を小さくすること
を特徴とする請求項6記載のPLL回路の動作方法。
【請求項8】
周波数制御語の値を基準クロックに応答して積算し、第1カウント値を生成し、
前記出力クロックのクロック数を積算し、第2カウント値を生成し、
前記基準クロックの遷移エッジが現れてから、前記出力クロックのクロックサイクルを示す遷移エッジが2回現れるまでの時間間隔を計測し、第3カウント値として出力し、
前記第3カウント値に正規化係数を乗じ、計測された時間間隔を前記出力クロックのクロック数で表される微少位相差に正規化し、
前記第2カウント値から前記微少位相差の値を引いた値を、前記第1カウント値から差し引いて、前記基準クロックと前記出力クロックの位相差を示す位相差信号を生成し、
前記基準クロックと前記出力クロックの位相を合わせるために、前記位相差信号に基づいて前記出力クロックの周波数を変更し、
前記周波数制御語により示される逓倍率の分数部の値が”0.5”より大きく、PLL回路のロック後に連続する2つの前記微少位相差の差を示す差分値が負の値を示すときに、前記差分値の絶対値が分数部の値より大きいときに正規化係数を小さくし、前記差分値の絶対値が分数部の値以下のときに正規化係数を大きくし、
前記逓倍率の分数部の値が”0.5”以下で、PLL回路のロック後に前記差分値が正の値を示すときに、”1”から分数部の値を引いた値より前記差分値が大きいときに正規化係数を小さくし、”1”から分数部の値を引いた値より前記差分値が小さいときに正規化係数を大きくすること
を特徴とするPLL回路の動作方法。
【請求項9】
PLL回路のロック前に、前記微少位相差が”2”より大きいときに、前記微少位相差を小さくするために前記正規化係数を小さくする処理と、前記微少位相差が”1”より小さいときに、前記微少位相差を大きくするために前記正規化係数を大きくする処理とを、前記微少位相差が”1”より大きく”2”より小さくなるまで繰り返すこと
を特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項記載のPLL回路の動作方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のPLL回路と、
前記周波数制御語を生成する制御回路と、
前記PLL回路により生成される出力クロックに同期して動作するクロック同期回路と
を備えていることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−34029(P2012−34029A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169554(P2010−169554)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】