説明

PLL回路

【課題】 従来のPLL回路では、位相雑音の抑圧特性は温度や個体差によってばらつき、更に、広い周波数帯域で安定した抑圧特性を得るのは困難であったが、温度や個体差による位相雑音特性の変動を吸収し、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性を得ることができるPLL回路を提供する。
【解決手段】 位相比較器の後段に、ループ利得を調節する第1のパラメータを格納する第1のレジスタ6と、位相比較器4の出力に第1のパラメータを乗算する第1の乗算器7と、応答特性を調節する第2のパラメータを格納する第2のレジスタ12と、第1の乗算器の出力に第2のパラメータを乗算する第2の乗算器13と、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に基づいて第1及び第2のレジスタに最適なパラメータを設定するCPU20とを備え、ループ利得及び応答特性を最適な値に調整して広い周波数帯で良好な抑圧特性を得るPLL回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数シンセサイザとして用いられるPLL(Phase Locked Loop)回路に係り、特に温度変化や装置の個体差に基づく位相雑音の劣化を防ぎ、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性が得られるPLL回路に関する。
【背景技術】
【0002】
標準信号発生器の一つとしてPLLを応用した周波数シンセサイザ(以下、「PLL回路」とする)がある。
PLL回路は、移動体通信や地上デジタル放送等の基地局に広く用いられており、キャリア配置時の周波数間隔を狭め、隣接するキャリア間での干渉を減らすために、低く、且つ安定した位相雑音特性が要求されている。
【0003】
例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数分割多重)方式では、広帯域信号を互いに直交する多数のサブキャリアで伝送するため、OFDM信号の位相雑音特性が劣化すると、それがそのまま周波数ゆらぎとなってしまい、サブキャリアの直交性が崩れてキャリアの識別ができなくなるおそれがある。
【0004】
従来のPLL回路について図7を使って説明する。図7は、従来のPLL回路の概略構成ブロック図である。
図7に示すように、従来のPLL回路は、制御電圧に応じた周波数を発振するVCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)1と、VCO1からの分岐された出力周波数を1/Nに分周する1/N分周器2と、分周された周波数をA/D(analog/digital)変換するA/D変換器3と、一定の基準周波数を発振する基準発振器5と、A/D変換器3からの出力と基準周波数との位相差を比較する位相比較器4と、積分回路により位相差を時間積分して制御電圧値としてのパルスを出力するループフィルタとしてのデジタルフィルタ10′と、制御電圧値をD/A(digital/analog)変換するD/A変換器8と、信号を平滑化して制御電圧を出力するアナログフィルタ9とから構成されている。
尚、位相比較器4は、通常PLLICによって実現される。また、分周器2は、通常カウンタが使用されている。
【0005】
上記構成のPLL回路では、VCO1から出力された発振周波数は、分岐されて、1/N分周器2で1/Nに分周されて、A/D変換器3でデジタル信号に変換され、位相比較器4で基準発振器5からの基準周波数と位相が比較され、位相差が出力される。
【0006】
そして、検出された位相差は、デジタルフィルタ10′で一定時間積分されて積分値が出力され、D/A変換器8でアナログ信号に変換されて、アナログフィルタ9で平滑化されて制御電圧が生成され、VCO1に与えられる。VCO1は、入力された制御電圧に応じた周波数を発振する。このようにして、上記PLL回路では、VCO1の発振周波数の位相を基準周波数の位相に一致させるフィードバック制御を行うものである。
【0007】
一般的に、PLL回路における自然周波数fNは、fN=(√K0)/2πで得られる。ここでK0はループ利得である。また、位相雑音特性は、ループ利得を最適化することにより所望の抑圧量を得るようになっている。
【0008】
ループ利得に影響を与えるパラメータは、図8の(1)〜(4)に示したパラメータであり、(1)Kp:位相検出変換利得、(2)A(s):ループフィルタ伝達関数、(3)B:D/A変換器8出力におけるビットあたりの重み、(4)Kv:VCO変換利得(VF感度)の4つのパラメータである。
【0009】
各パラメータの値は、以下の式に基づいて算出されるものである。
(1)Kp=(2πA/fs×N)×fs/2π[V/radian]
(2)A(s)=fs/N[V/V]
(3)B:D/A変換器8の出力電圧幅/ビット数
(4)KvはVCOの固有値[Hz/V]
ここで、Aは直交検波したI,Q信号の振幅の2分の1の値、fsはサンプリング周波数、Nは分周器2による分周比、Nは積分する際の分周比である。
【0010】
そして、ループ利得K0は、図8に示した(1)〜(4)の各パラメータを乗算することによって求められる。
つまり、K0=(1)×(2)×(3)×(4)=Kp×A(s)×B×Kv
で算出され、結果としてK0は固定値になってしまい、位相雑音の抑圧量も一定となる。
【0011】
尚、PLL回路に関する従来技術としては、平成15年6月13日公開の特開2003−168975「フェイズロックドループ回路及びクロック再生回路」(出願人:日本電気株式会社、発明者:野口栄実)がある(特許文献1参照)。
この従来技術は、位相比較器としてアナログ型のものを使用して、位相差検出出力に基づいて発振制御を行う第一の制御ループと、位相差検出出力の直流近傍の成分を増加させた信号に応じて発振制御され、第一の制御ループより低速制御を行う第二の制御ループとを備えたフェイズロックドループ回路及びクロック再生回路であり、これにより、ロックレンジを拡大しつつ、ジッタをより抑圧して、ジッタ耐力を増加できるものである。
【0012】
また、別の従来技術としては、平成17年2月3日公開の特開2005−33581「フラクショナル−N方式の位相同期ループ形周波数シンセサイザ」(出願人:三菱電機株式会社、発明者:田島賢一)がある(特許文献2参照)。
この従来技術は、電圧制御発振器からの高周波信号より同期信号を生成する帰還回路が、高周波信号を分周して同期信号を出力する複数の可変分周器と、可変分周器に対応して、クロック信号に従って各可変分周器の制御信号を出力する変調回路を備えたフラクショナル−N方式の位相同期ループ形周波数シンセサイザであり、これにより、高速且つ安定な動作を行わせることができるものである。
【0013】
【特許文献1】特開2003−168975号公報(第4−7頁、図1)
【特許文献2】特開2005−33581号公報(第4−7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のPLL回路では、位相雑音の抑圧特性は環境温度によって影響され易く、気温変動の大きい設置場所では安定した抑圧特性が得られないという問題点があった。
【0015】
また、従来のPLL回路では、抑圧特性はPLL回路を構成する各部品の特性ばらつき等によっても影響され、装置毎の個体差が生じてしまうという問題点があった。
【0016】
更に、従来のPLL回路では、広い周波数帯域に亘って安定した抑圧特性を得るのは困難であるという問題点があった。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、温度変化や部品の特性ばらつきによる位相雑音特性の変動を吸収すると共に、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性を得ることができるPLL回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、電圧制御発振器の出力周波数と基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、位相比較器の出力段に、当該回路のループ利得を可変とするループ利得可変手段を備えたことを特徴としている。
【0019】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、電圧制御発振器の出力周波数と基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、位相比較器の出力段に、当該回路の応答特性を可変とする応答特性可変手段を備えたことを特徴としている。
【0020】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、電圧制御発振器の出力周波数と基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、位相比較器の出力段に、当該回路のループ利得の値を可変とするループ利得可変手段と、当該回路の応答特性を可変とする応答特性可変手段とを備えたことを特徴としている。
【0021】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上記PLL回路において、ループ利得可変手段が、第1のパラメータを記憶する第1のレジスタと、位相比較器からの出力に、第1のレジスタから出力される第1のパラメータを乗算する第1の乗算器とで構成され、第1のレジスタに、装置の状態及び使用条件に基づいて第1のパラメータを設定する制御部を備えたことを特徴としている。
【0022】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上記PLL回路において、応答特性可変手段が、第2のパラメータを記憶する第2のレジスタと、位相比較器からの出力に、第2のレジスタから出力される第2のパラメータを乗算する第2の乗算器とで構成され、第2のレジスタに、装置の状態及び使用条件に基づいて第2のパラメータを設定する制御部を備えたことを特徴としている。
【0023】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上記PLL回路において、ループ利得可変手段が、第1のパラメータを記憶する第1のレジスタと、位相比較器からの出力に、第1のレジスタから出力される第1のパラメータを乗算する第1の乗算器とから構成され、応答特性可変手段が、第2のパラメータを記憶する第2のレジスタと、第1の乗算器の出力を分岐して入力し、第1の乗算器からの出力に第2のレジスタから出力される第2のパラメータを乗算する第2の乗算器とで構成され、装置の状態及び使用条件に基づいて、第1のレジスタに、第1のパラメータを設定すると共に、第2のレジスタに、第2のパラメータを設定する制御部を備えたことを特徴としている。
【0024】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上記PLL回路において、装置の個体差を補償するために第1,第2のレジスタに設定されるパラメータとしての、第1のデフォルトパラメータ及び第2のデフォルトパラメータと、第1,第2のデフォルトパラメータを温度に応じて補正する補正値としての第1の温度パラメータ及び第2の温度パラメータを、温度に対応して記憶する温度テーブルとを記憶する補正値メモリと、温度を検出する温度センサとを備え、制御部が、温度センサからの検出温度に応じて、温度テーブルを参照して、第1のデフォルトパラメータと、検出温度に対応する第1の温度パラメータとの和を第1のパラメータとして第1のレジスタに設定し、第2のデフォルトパラメータと、検出温度に対応する第2の温度パラメータとの和を第2のパラメータとして第2のレジスタに設定することを特徴としている。
【0025】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上記PLL回路において、補正値メモリが、複数の使用周波数帯に対応する温度テーブルを備え、制御部が、外部から使用周波数帯が設定されると、設定された使用周波数帯に対応する温度テーブルを参照することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、電圧制御発振器の出力周波数と基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、位相比較器の出力段に、当該回路のループ利得を可変とするループ利得可変手段を備えたPLL回路としているので、ループ利得を調節して、位相雑音の抑圧特性を広い周波数帯域で安定させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、電圧制御発振器の出力周波数と基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、位相比較器の出力段に、当該回路の応答特性を可変とする応答特性可変手段を備えたPLL回路としているので、応答特性を調節して、位相雑音の抑圧特性を広い周波数帯域で安定させることができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、電圧制御発振器の出力周波数と基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、位相比較器の出力段に、当該回路のループ利得の値を可変とするループ利得可変手段と、当該回路の応答特性を可変とする応答特性可変手段とを備えたPLL回路としているので、ループ利得及び応答特性を調節して、位相雑音の抑圧特性を最適化し、位相雑音の抑圧特性を広い周波数範囲で安定させることができる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、ループ利得可変手段が、第1のパラメータを記憶する第1のレジスタと、位相比較器からの出力に、第1のレジスタから出力される第1のパラメータを乗算する第1の乗算器とで構成され、第1のレジスタに、装置の状態及び使用条件に基づいて第1のパラメータを設定する制御部を備えた上記PLL回路としているので、装置の状態及び使用条件に応じてループ利得を調節して、位相雑音の抑圧特性を広い周波数範囲で最適化できる効果がある。
【0030】
また、本発明によれば、応答特性可変手段が、第2のパラメータを記憶する第2のレジスタと、位相比較器からの出力に、第2のレジスタから出力される第2のパラメータを乗算する第2の乗算器とで構成され、第2のレジスタに、装置の状態及び使用条件に基づいて第2のパラメータを設定する制御部を備えた上記PLL回路としているので、装置の状態及び使用条件に応じて応答特性を調節して、位相雑音の抑圧特性を広い周波数範囲で最適化できる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、ループ利得可変手段が、第1のパラメータを記憶する第1のレジスタと、位相比較器からの出力に、第1のレジスタから出力される第1のパラメータを乗算する第1の乗算器とから構成され、応答特性可変手段が、第2のパラメータを記憶する第2のレジスタと、第1の乗算器の出力を分岐して入力し、第1の乗算器からの出力に第2のレジスタから出力される第2のパラメータを乗算する第2の乗算器とで構成され、装置の状態及び使用条件に基づいて、第1のレジスタに、第1のパラメータを設定すると共に、第2のレジスタに、第2のパラメータを設定する制御部を備えた上記PLL回路としているので、装置の状態及び使用条件に応じてループ利得及び応答特性を調節して、位相雑音の抑圧特性を最適化し、広い周波数範囲で安定した抑圧特性を得ることができる効果がある。
【0032】
また、本発明によれば、装置の個体差を補償するために第1,第2のレジスタに設定されるパラメータとしての、第1のデフォルトパラメータ及び第2のデフォルトパラメータと、第1,第2のデフォルトパラメータを温度に応じて補正する補正値としての第1の温度パラメータ及び第2の温度パラメータを、温度に対応して記憶する温度テーブルとを記憶する補正値メモリと、温度を検出する温度センサとを備え、制御部が、温度センサからの検出温度に応じて、温度テーブルを参照して、第1のデフォルトパラメータと、検出温度に対応する第1の温度パラメータとの和を第1のパラメータとして第1のレジスタに設定し、第2のデフォルトパラメータと、検出温度に対応する第2の温度パラメータとの和を第2のパラメータとして第2のレジスタに設定する上記PLL回路としているので、装置個体差を補償したデフォルトパラメータを更に温度に応じて補正して第1のレジスタ及び第2のレジスタに設定することができ、個体バラツキや温度変化の影響を軽減し、最適なループ利得及び応答特性を実現して、広い周波数帯域で位相雑音の抑圧特性を安定させることができる効果がある。
【0033】
また、本発明によれば、補正値メモリが、複数の使用周波数帯に対応する温度テーブルを備え、制御部が、外部から使用周波数帯が設定されると、設定された使用周波数帯に対応する温度テーブルを参照する上記PLL回路としているので、使用周波数帯に応じた温度補正を行うことができ、より精度の高い補正を行って、広い周波数帯域で位相雑音の抑圧特性を安定させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係るPLL回路は、位相比較器の後段に、ループ利得を調節する第1のパラメータを格納する第1のレジスタと、位相比較器からの出力に第1のパラメータを乗算する第1の乗算器と、ダンピングファクター(応答特性)を調節する第2のパラメータを格納する第2のレジスタと、第1の乗算器の出力に第2のパラメータを乗算する第2の乗算器と、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に応じて第1及び第2のレジスタに最適なパラメータを設定する制御部とを備えたものであり、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に基づいてループ利得及びダンピングファクターを最適な値に調整して、広い周波数帯において安定した位相雑音の抑圧特性が得られるものである。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態に係るPLL回路の構成ブロック図である。尚、図7と同様の構成をとる部分については同一の符号を付して説明する。
本実施の形態のPLL回路(本装置)は、図1に示すように、図8に示した従来のPLL回路と同様の部分として、VCO1と、1/N分周器2と、A/D変換器3と、位相比較器4と、基準発振器5と、A/D変換器8と、アナログフィルタ9とを備え、本装置の特徴部分として、第1のレジスタ(図では「レジスタ(1)」)6と、第1の乗算器7と、ループフィルタとしてのデジタルフィルタ10と、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)20と、補正値メモリ21と、温度センサ22とを備えている。
更に、デジタルフィルタ10は、積分回路11と、第2のレジスタ(図では「レジスタ(2)」)12と、乗算器13とを備えている。
【0036】
本装置の特徴部分について説明する。
第1のレジスタ6は、位相比較器4からの出力に乗算される第1のパラメータを格納するものである。第1のパラメータは、良好な抑圧特性が得られる周波数帯域を可変とするための周波数補正係数であり、CPU20によって、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に応じて最適な値が設定される。CPU20の動作については後述する。
【0037】
第1の乗算器7は、位相比較器4からの出力である位相差に、第1のレジスタから出力される第1のパラメータを乗算するものである。
【0038】
本装置では、ループ利得を可変とする手段として、第1のレジスタ6及び第1の乗算器7を設け、CPU20から第1のパラメータを適宜設定することにより、第1の乗算器7からの出力を調整し、使用する周波数帯域及び温度に応じてPLLのループ利得を変化させることが可能となり、広い周波数帯域において適正なループ利得に調整して、安定した位相雑音の抑圧特性を得るようにしたものである。
【0039】
第2のレジスタ12は、第1の乗算器7からの出力に乗算される第2のパラメータを格納するものである。第2のパラメータは、ダンピングファクター(応答特性)を調節するものであり、CPU20によって、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に応じて最適な値が設定される。CPU20の動作については後述する。
【0040】
第2の乗算器13は、第1の乗算器7からの出力に、第2のレジスタ12から出力される第2のパラメータを乗算するものである。そして、第2の乗算器における乗算結果は、積分回路11の出力に加算されて、デジタルフィルタ10の出力となる。
【0041】
本装置では、ダンピングファクターを可変とする手段として、第2のレジスタ12及び第2の乗算器13を設け、CPU20から第2のパラメータを適宜設定することにより、ダンピングファクターを変化させることが可能となり、装置の応答時間の個体差を補償して、安定した位相雑音の抑圧特性が得られるようにしている。特に、ループ利得の過多による抑圧特性の盛り上がりを抑えることが可能となるものである。
【0042】
温度センサ22は、定期的に装置周囲の温度を検出してCPU20に出力するものである。
また、補正値メモリ21は、CPU20によって、第1のレジスタ6及び第2のレジスタ12に設定される第1及び第2のパラメータを生成する際に用いられる各種データが記憶されている。記憶されているデータとしては、個体差を補償したデフォルトパラメータ、使用される周波数帯の情報、及び使用周波数帯に応じた温度補正値がある。
【0043】
補正値メモリ21に記憶されているデータについて具体的に説明する前に、本装置における第1,第2のパラメータの算出方法と、そこで用いられるパラメータの種類について簡単に説明する。
まず、本装置では、標準的な使用条件で最適な位相雑音特性が得られるよう、第1,第2のレジスタに設定されるパラメータとして、個体差補償を行ったデフォルトパラメータC1,C2を補正値メモリ21に記憶しておく。
【0044】
デフォルトパラメータC1,C2を補正するパラメータとしては、温度に応じた補正をするための温度パラメータp1,p2があり、それぞれ使用周波数に応じて細分化された周波数毎のテーブルを持つ。
【0045】
補正値メモリ21に記憶されているパラメータについて具体的に説明する。
まず、補正値メモリ21には、第1のレジスタ6に設定する第1のパラメータのデフォルト値として、第1のデフォルトパラメータC1と、第2のレジスタ12に設定する第2のパラメータのデフォルト値として、第2のデフォルトパラメータC2とが記憶されている。
デフォルトパラメータは、常温時、本装置が通常最もよく使用される周波数帯域の中心周波数において、最適な位相雑音特性が得られる値として実験的に求められ、装置の構成部品の特性のばらつき等に起因する装置の個体差を補償するように決定された値であって、予め補正値メモリ21に書き込まれている。
【0046】
すなわち、平均的な動作特性を備えた本装置を、デフォルトパラメータが決定された装置条件(周波数、温度)で運用する場合には、第1のレジスタ6に設定される第1のパラメータは、第1のデフォルトパラメータC1となり、第2のレジスタ12に設定される第2のパラメータは、第2のデフォルトパラメータC2となる。
【0047】
そして、補正値メモリ21は、実際に使用される周波数帯及び温度に応じて、更にデフォルトパラメータC1,C2を補正するための係数を記憶する温度テーブルを備えている。
ここで、温度テーブルについて図2を用いて説明する。図2は、補正値メモリ21に記憶されている温度テーブルの説明図である。
図2に示すように、温度テーブルは、測定温度(t)に対応して、第1のレジスタ6に設定されるデフォルトパラメータC1を補正する温度パラメータp1を格納すると共に、第2のレジスタ12に設定されるデフォルトパラメータC2を補正する温度パラメータp2を格納している。温度パラメータp1及びp2は、予め実験的に求められて、補正値メモリ21に書き込まれているものである。
【0048】
本装置の特徴として、温度テーブルは、低周波数帯域(Low ch)用、中間周波数帯域(Middle ch)用、高周波数帯域(High ch)用の3種類の温度テーブルが設けられている。図2の例では、いずれか1つの周波数帯域に対応する温度テーブルの例が示されている。そして、CPU20が、設定部から使用される周波数帯域が設定されると、それに対応する温度テーブルを選択して読み出し、以下の処理を当該選択された温度テーブルを参照して行うようになっている。
周波数帯域毎に温度テーブルを設けたことにより、使用周波数帯域に応じてより精度の高い温度補正を行うことができるものである。また、周波数帯域が広い場合は、周波数に応じて温度テーブルを増やすことで対応可能である。
【0049】
温度テーブルは、−30℃〜70℃の温度範囲について、20度の温度幅毎に対応する温度パラメータを格納している。例えば、測定温度(t)が25℃の場合、対応する温度パラメータp1は1.0、p2は0.7が記憶されており、測定温度(t)が0℃の場合、p1は0.9、p2は0.8が記憶されている。温度幅の段階分けは、装置の特性に応じてもっと細かい段階に分けてもよいし、もっと少なくても構わない。
尚、測定温度が別途設定される適正温度範囲外となった場合には、CPU20は、温度アラームを検出(出力)するようになっている。
【0050】
そして、CPU20が、使用周波数に対応する温度テーブルを読み込んでおき、温度センサ22からの測定温度(t)を定期的に読み取って、当該温度テーブルを参照して測定温度に対応する温度パラメータを読み取って、デフォルトパラメータC1又はC2に温度パラメータp1又はp2を加算して、第1のパラメータ及び第2のパラメータを生成し、第1のレジスタ6及び第2のレジスタ12に書き込むようになっている。
具体的には、第1のレジスタに設定される第1のパラメータは、C1+p1となり、第2のレジスタに設定される第2のパラメータは、C2+p2となる。
【0051】
次に、CPU20について説明する。
CPU20は、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に応じて、第1のレジスタ6に最適な第1のパラメータを、第2のレジスタ12に最適な第2のパラメータを設定するものである。
【0052】
図示は省略するが、CPU20には、外部から操作者が操作する設定部が接続されており、設定部から、装置が使用される周波数帯域が入力される。周波数帯域としては、低周波数帯域(Low ch)、中間周波数帯域(Middle ch)、高周波数帯域(High ch)があり、その内のいずれか1つが設定部から設定されるようになっている。
【0053】
そして、CPU20は、設定された周波数帯域をCPU20内部の記憶部(図示せず)に保持し、上述したように、装置の運用開始前に、設定された周波数帯域に応じて、補正値メモリ21から対応する温度テーブルを読み込んでおく。
また、CPU20は、運用開始前に、個体差を補償するためのデフォルトパラメータC1,C2を補正値メモリ21から読み込んで保持しておく。
【0054】
そして、運用開始後は、定期的に、温度センサ22からの測定温度を入力して、温度テーブルに基づいて個体差補正済みパラメータに温度パラメータを乗じて、第1、第2のパラメータを算出し、第1のレジスタ6及び第2のレジスタ12に更新設定する処理(温度監視処理)を行うようになっている。
【0055】
CPU20における処理について、図3を用いて説明する。図3は、CPU20における処理を示すフローチャート図である。
図3に示すように、運用前にまず、PLLを構成する各部品の特性のばらつきを吸収するために、常温時、使用周波数帯域の中心周波数において特性のチェックに基づいて個別調整が行われ(S1)、補正値メモリ21に個体差を補償するデフォルトパラメータC1,C2が書き込まれる(S2)。
そして、CPU20は、補正値メモリに記憶されている第1,第2のデフォルトパラメータC1,C2を読み込んで、内部に保持しておく。
【0056】
そして、CPU20は、設定部から設定された使用周波数帯域が、低周波数帯域(Low ch)、中間周波数帯域(Middle ch)、高周波数帯域(High ch)のいずれであるかを判断し(S4)、使用周波数帯域が低周波数帯域(Low ch)であれば、補正値メモリ21から、低周波数帯域用の温度テーブルを読み込んで保持しておく(S5)。そして、CPU20は、温度に応じて第1及び第2のパラメータを算出する温度監視処理を行う(S6)。温度監視処理については後述する。
【0057】
また、使用周波数帯域が中間周波数帯域(Middle ch)であれば、CPU20は、補正値メモリ21から、中間周波数帯域用の温度テーブルを読み込んで保持しておき(S7)、温度に応じ第1及び第2のパラメータを算出する温度監視処理を行う(S8)。
【0058】
同様に、使用周波数帯域が高周波数帯域(High ch)であれば、CPU20は、補正値メモリ21から、高周波数帯域用の温度テーブルを読み込んで保持しておき(S9)、温度に応じ第1及び第2のパラメータを算出する温度監視処理を行う(S10)。
このようにして、CPU20における処理が行われるものである。
【0059】
次に、図3のS6,S8,S10に示した温度監視処理について図4を用いて説明する。図4は、CPU20における温度監視処理のフローチャート図である。
図4に示すように、温度監視処理が開始されると、CPU20は、温度センサ22によって測定された温度を定期的に読み取り(S11)、測定温度が装置が適正に動作可能な適正温度範囲内であるか(適切か)否かを判断する(S12)。
【0060】
そして、測定温度が適正温度範囲内であれば、CPU20は、温度テーブルから測定温度に対応する温度パラメータp1,p2を読み込み、内部に保持している第1のデフォルトパラメータC1にp1を加算して第1のパラメータとし、第2のデフォルトパラメータC2にp2を加算して第2のパラメータとし、第1のパラメータを第1のレジスタ6に書き込むと共に、第2のパラメータを第2のレジスタ12に書き込んで(S13)、S11に移行する。
【0061】
また、S12で測定温度が適正温度範囲外であった場合は、CPU20は、温度アラームを検出(出力)する(S14)。
このようにしてCPU20の温度監視処理が行われる。
【0062】
図3及び図4に示した処理により、本装置では、個体差によるばらつきが補償されたデフォルトパラメータC1及びC2を元に、使用周波数に応じた最適な補正パラメータが記憶された温度テーブルを参照して、温度センサ22で定期的に測定される温度に対応する温度パラメータによって、デフォルトパラメータを補正して、第1及び第2のパラメータを算出して第1のレジスタ6と、第2のレジスタ12に設定することにより、周波数帯・温度・装置の個体差に応じて第1のレジスタ6及び第2のレジスタ12に常に最適なパラメータを設定して、ループ利得及びダンピングファクターを変化させることができ、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性を得るPLL回路とすることができるものである。
【0063】
次に、第1のレジスタ6及び第1の乗算器7を設けたことによる効果について図5を用いて説明する。図5は、第1のレジスタ6及び第1の乗算器7を設けたことによる効果を示す説明図である。
図5に示すように、離調周波数と位相雑音抑圧のグラフにおいて、適切な位相雑音の抑圧特性が得られるループ抑圧帯域幅は、グラフの変曲点として表される。図5の例では、第1のレジスタ6及び第1の乗算器7を設けない標準の場合の位相雑音特性を実線で示し、第1のレジスタ6及び第1の乗算器7を設けて、第1のレジスタ6に設定するパラメータの値を変えた場合の例を破線と一点破線で示している。
【0064】
そして、図5の例では、破線で示した曲線は、標準の場合に比べてピークが低周波数側にシフトした位相雑音特性を示し、一点破線で示した曲線は、標準の場合に比べてピークが高周波数側にシフトした位相雑音特性を示しており、パラメータの値によってループ抑圧帯域幅を変化させることができるものである。
【0065】
このように、第1のレジスタ6に設定するパラメータの値に幅をもたせ、広い範囲の値を設定可能となるよう補正値を調節することにより、一層抑圧帯域の可変幅を広げることができるものである。
【0066】
次に、第2のレジスタ12及び第2の乗算器13を設けたことによる効果について図6を用いて説明する。図6は、第2のレジスタ12及び第2の乗算器13を設けたことによる効果を示す説明図である。
図6の例では、第2のレジスタ12及び第2の乗算器13を設けない場合の位相雑音特性を実線で示し、第2のレジスタ12及び第2の乗算器13を設けて、第2のレジスタ12に設定するパラメータの値を変えた場合の例を破線と一点破線で示している。
【0067】
図6に示すように、第2のレジスタ12に設定するパラメータの値を変えることにより、ダンピングファクターを変化させて応答の速さを変えることができ、位相雑音のピーク位置を変えずに、ピークの高さが異なる位相雑音特性を得ることができる。このことを利用して、第2のパラメータの値を、所望の特性が得られるように設定することが可能となる。
【0068】
更に、第2のレジスタ12に設定するパラメータの値に幅をもたせ、広い範囲の値を設定可能となるよう補正値を調節することにより、一層ダンピングファクターの可変幅を広げることができるものである。
【0069】
すなわち、本PLL回路では、図5及び図6に示したように、第1のレジスタ6及び第2のレジスタ12に設定するパラメータを調節して、ループ利得及びダンピングファクターを可変とすることができ、所望の位相雑音特性を得ることができるものである。
【0070】
本発明の実施の形態に係るPLL回路(本装置)によれば、位相比較器の後段に、ループ利得を調節するための第1のパラメータを格納する第1のレジスタ6と、位相比較器4からの出力に第1のパラメータを乗算する第1の乗算器7と、ダンピングファクターを調節するための第2のパラメータを格納する第2のレジスタ12と、第1の乗算器の出力に第2のパラメータを乗算する第2の乗算器13と、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に応じて第1及び第2のレジスタに最適なパラメータを設定するCPU20とを備えているので、CPU20が、使用周波数帯・周囲の温度・装置の個体差に基づいてループ利得及びダンピングファクターを最適な値に調整することができ、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性が得られる効果がある。
【0071】
また、本装置によれば、第1のパラメータ及び第2のパラメータを算出する際に用いるパラメータを記憶する補正値メモリ21と、装置周囲の温度を測定する温度センサ22とを備え、補正値メモリ21に、予め標準的な使用条件において個体差を補償するよう実験的に求めたデフォルトパラメータC1,C2と、温度に応じてデフォルトパラメータを補正する温度パラメータp1,p2とを格納しておき、CPU20が、装置の運用開始前にデフォルトパラメータC1、C2を読み込んで内部に保持しておき、運用が開始されると、温度センサ22にて検出された測定温度に対応する温度パラメータp1,p2をC1、C2に加算して、第1及び第2のパラメータを算出し、それぞれ第1のレジスタ6、第2のレジスタ12に設定するようにしているので、運用開始前に装置の個体差に基づいてデフォルトパラメータを設定し、運用開始後には温度環境に応じて対応する温度パラメータでデフォルトパラメータを更に補正して、第1及び第2のレジスタに、装置の個体差と温度に対する補正を施した適切なパラメータを設定することができ、ループ利得及びダンピングファクターを最適な値に調整して、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性が得られる効果がある。
【0072】
更に、本装置によれば、温度パラメータとして、使用周波数帯に応じて異なる温度パラメータを記憶した温度テーブルを補正値メモリ21に記憶しているので、CPU20は、使用される周波数帯が設定されると、補正値メモリ21から当該周波数帯に対応する温度テーブルを読み込んで、当該温度テーブルを参照して温度補正を行うことができ、周波数に応じてきめ細かい温度補正を施した最適なパラメータを第1のレジスタ及び第2のレジスタに設定することができ、ループ利得及びダンピングファクターを最適な値に調整して、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性が得られる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、温度変化や装置の個体差に基づく位相雑音の劣化を防ぎ、広い周波数帯域で安定した位相雑音の抑圧特性が得られるPLL回路に適している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係るPLL回路の構成ブロック図である。
【図2】補正値メモリ21に記憶されている温度テーブルの説明図である。
【図3】CPU20における処理を示すフローチャート図である。
【図4】CPU20における温度監視処理のフローチャート図である。
【図5】第1のレジスタ6及び第1の乗算器7を設けたことによる効果を示す説明図である。
【図6】第2のレジスタ12及び第2の乗算器13を設けたことによる効果を示す説明図である。
【図7】従来のPLL回路の概略構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0075】
1…VCO、 2…1/N分周器、 3…A/D変換器、 4…位相比較器、 5…基準発振器、 6…第1のレジスタ、 7…第1の乗算器、 8…D/A変換器、 9…アナログフィルタ、 10…デジタルフィルタ、 11…積分回路、 12…第2のレジスタ、 13…第2の乗算器、 20…CPU、 21…補正値メモリ、 22…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、前記電圧制御発振器の出力周波数と前記基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、前記位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、
前記位相比較器の出力段に、当該回路のループ利得を可変とするループ利得可変手段を備えたことを特徴とするPLL回路。
【請求項2】
制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、前記電圧制御発振器の出力周波数と前記基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、前記位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、
前記位相比較器の出力段に、当該回路の応答特性を可変とする応答特性可変手段を備えたことを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
制御電圧に応じた周波数を発振する電圧制御発振器と、一定の周波数を発振する基準周波数発振器と、前記電圧制御発振器の出力周波数と前記基準周波数発振器の出力周波数とを比較して位相差を出力する位相比較器と、前記位相差に基づいて制御電圧を生成するループフィルタとから構成されるPLL回路であって、
前記位相比較器の出力段に、当該回路のループ利得の値を可変とするループ利得可変手段と、当該回路の応答特性を可変とする応答特性可変手段とを備えたことを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
ループ利得可変手段が、第1のパラメータを記憶する第1のレジスタと、
位相比較器からの出力に、前記第1のレジスタから出力される前記第1のパラメータを乗算する第1の乗算器とで構成され、
前記第1のレジスタに、装置の状態及び使用条件に基づいて第1のパラメータを設定する制御部を備えたことを特徴とする請求項1記載のPLL回路。
【請求項5】
応答特性可変手段が、第2のパラメータを記憶する第2のレジスタと、
位相比較器からの出力に、前記第2のレジスタから出力される前記第2のパラメータを乗算する第2の乗算器とで構成され、
前記第2のレジスタに、装置の状態及び使用条件に基づいて第2のパラメータを設定する制御部を備えたことを特徴とする請求項2記載のPLL回路。
【請求項6】
ループ利得可変手段が、第1のパラメータを記憶する第1のレジスタと、位相比較器からの出力に、前記第1のレジスタから出力される前記第1のパラメータを乗算する第1の乗算器とから構成され、
応答特性可変手段が、第2のパラメータを記憶する第2のレジスタと、前記第1の乗算器の出力を分岐して入力し、前記第1の乗算器からの出力に前記第2のレジスタから出力される前記第2のパラメータを乗算する第2の乗算器とで構成され、
装置の状態及び使用条件に基づいて、前記第1のレジスタに、第1のパラメータを設定すると共に、前記第2のレジスタに、第2のパラメータを設定する制御部を備えたことを特徴とする請求項3記載のPLL回路。
【請求項7】
装置の個体差を補償するために第1,第2のレジスタに設定されるパラメータとしての、第1のデフォルトパラメータ及び第2のデフォルトパラメータと、前記第1,第2のデフォルトパラメータを温度に応じて補正する補正値としての第1の温度パラメータ及び第2の温度パラメータを、温度に対応して記憶する温度テーブルとを記憶する補正値メモリと、
温度を検出する温度センサとを備え、
制御部が、前記温度センサからの検出温度に応じて、前記温度テーブルを参照して、第1のデフォルトパラメータと、前記検出温度に対応する第1の温度パラメータとの和を第1のパラメータとして第1のレジスタに設定し、第2のデフォルトパラメータと、前記検出温度に対応する第2の温度パラメータとの和を第2のパラメータとして第2のレジスタに設定することを特徴とする請求項6記載のPLL回路。
【請求項8】
補正値メモリが、複数の使用周波数帯に対応する温度テーブルを備え、
制御部が、外部から使用周波数帯が設定されると、前記設定された使用周波数帯に対応する温度テーブルを参照することを特徴とする請求項7記載のPLL回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−259431(P2007−259431A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43789(P2007−43789)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】