説明

RIM成形品の製造方法

【課題】フロンガスを使用せずに、フロンガスを使用した場合と同じ品質の表皮層と発泡内部層を形成した成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】常圧下の金型キャビティ内に表皮層形成用の発泡剤を配合しないポリウレタン成形材料4を注入し、直ちにそのポリウレタン成形材料内部に、発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料を金型キャビティ内に完全に充填するまで注入し、成形することを特徴とするRIM成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のフロンガスに依存しないで、また簡易な装置を用いてフロンガスを発泡剤として使用した場合と同品質の緻密な表皮層と発泡内部層を有する成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RIM成形において、表皮層を持ったポリウレタン成形品を製造する技術としては、発泡剤にフロンやペンタンなどの炭化水素を用いてインテグラルスキン層を形成する方法があるが、地球環境保全あるいは発火性の問題が懸念される。また、発泡剤に水などを用い炭酸ガスを反応により発生して表皮層を形成することも可能であるが、その表皮層は緻密でなく、泡が多く含まれるためピンホールが見られるなど外観が悪化するので、この欠陥を繕うため表皮層の上を更に革巻きしたりあるいはインモールドコートするなどの手当が必要となる。
【0003】
前記のように、ポリウレタン原料の発泡反応で表皮層を形成する他に、あらかじめRIM成形工程の前に、表皮層を金型キャビティ面に塗装などの方法で形成したり、表皮材をインサートしておいてその後にRIM成形にて内部層を形成する方法や、あらかじめ内部層を形成しておいてこれをキャビティ内にインサートして、表皮層をRIM成形する方法もある。
【0004】
また、特許文献1に記載されているように、金型を減圧下に保持し、はじめに表皮層を形成するポリウレタン成形材料を少量注入し、金型キャビティ内の減圧による材料飛散で金型キャビティ内に薄膜状に表皮層を形成し、その後、内部用のポリウレタン成形材料を注入して発泡、硬化し表皮層を有する成形品を得る方法もあるが、金型全体を減圧状態にするための構造が必要で、減圧設備の導入も必要となり、工数の増加や減圧の制御が必要となる。
【特許文献1】特許第2746024号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来までの技術が抱えていた問題点を解決し、発泡剤として、フロンを使用せずに、緻密な表皮層と発泡した内部層を有する成形品を、減圧設備などを有しない簡易な装置を用いて、低コストで製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、金型キャビティ内に2段階でポリウレタン成形材料を注入すること、1段目は表皮層を形成するための成形材料を、次いでその成形材料の内部に発泡内部層を形成するための成形材料を注入して、RIM成形することが有効であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
(1)常圧下の金型キャビティ内に表皮層形成用の発泡剤を配合しないポリウレタン成形材料を注入し、次いでこのポリウレタン成形材料内部に、発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料を金型キャビティ内を完全に充填するまで注入して成形するRIM成形品の製造方法、
(2)表皮層形成用ポリウレタン成形材料の粘度と発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料の粘度を調整して表皮層の厚みをコントロールする前記(1)記載のRIM成形品の製造方法、
(3)発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料は、ミキシングヘッドおよび/またはミキシングヘッドに通じる配管中で気体を吹き込まれる前記(1)または(2)記載のRIM成形品の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明の方法によれば、フロンガスを使用することなく、フロンガスを使用した場合に劣らない緻密な表皮層と内部の発泡内部層を有する見栄えのよい成形品を製造することができる。また、その表皮層の厚みを使用する成形材料の粘度を調整することにより容易にコントロールすることができる。しかも、本発明の方法は成形を常圧下に行うので、従来のように金型に減圧装置を要することなく、簡易な装置を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においては、最初に常圧下の金型キャビティ内に発泡剤を含まない表皮層形成用ポリウレタン成形材料を注入してキャビティ内部の一部を満たし、この成形材料が硬化完了する前に、直ちにこの成形材料の内部に発泡内部層形成用の成形材料を注入して金型キャビティ内に完全に充填させてRIM成形することが重要である。この場合において、表皮層形成用ポリウレタン成形材料の注入の後期では、その成形材料の注入が完了する前に発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料も同時に注入することもできる。要は、発泡剤を含まない緻密な表皮層とその内部の発泡内部層とが一体化した成形品を形成できるようなタイミングで、発泡内部層成型用材料を注入することが好ましい。
また、その発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料にはあらかじめ加圧下に気体を混合しておくことも重要である。発泡内部層形成用の成形材料を表皮層形成用の成形材料の内部に充填するには、ゲート部を金型キャビティの下側に配設したキャビティ内の下部に表皮層形成用の成形材料を充填してそのキャビティ領域を満たし、硬化完了前の表皮層形成用成形材料の中に発泡内部層成形材料を充填することによって、容易に行うことができる。
【0009】
発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料がキャビティ内に注入された時、その中にあらかじめ加圧下に混合され、成形材料中に溶解、あるいは分散されていた気体が瞬時に発泡し、成形材料をクリーム状態にする。このクリーム状態のコア材料が最初にキャビティ内に充填されていた表皮層形成用ポリウレタン成形材料の内部に入り、表皮層形成材料を押し上げながら、キャビティ内を満たしていくのである。こうしてRIM成形を行うことにより緻密な表皮層とその内部の発泡内部層からなる成形品を製造することができる。本発明による成形品は、その表面にボイドやピンホールの発生は見られず、優れた外観を持つ緻密な表皮層とクッション性のよい発泡内部層からなる。
【0010】
本発明に使用するポリウレタン成形材料自体は、特に制限はなく、一般的にRIM成形に使用されるポリウレタン成形材料を使用することができる。
本発明において、表皮層のウレタン材を注入した後、内部層の瞬時に発泡するウレタン材に切り替えて金型キャビディー内に注入する方法、あるいは表皮層形成用ポリウレタン成形材料を注入し、この成形材料と同時に内部層の瞬時に発泡するウレタン材を金型キャビティー内に注入する方法としては、とくに制限するものではないが、好ましい方法について述べると次のような方法がある。
【0011】
(1)三成分ミキシングヘッドを使用し、ひとつの成分は発泡剤を配合しないポリオール成分とし、二つ目の成分を炭酸ガス、窒素ガスなどをローディングしたポリオール成分とし、三つ目の成分をイソシアネート成分とする。そこで、まず一つ目のポリオール成分と三つ目の成分をミキシングヘッドから吐出し、二つ目の成分は吐出しないようにポンプを止め、バルブを閉めておく。その後直ちに二つ目の成分のポンプを作動しバルブを開けて三成分を同時に吐出する。この場合、各成分のポンプの吐出能力が異なることや最初に吐出する表皮層と後で吐出する内部層ウレタン材のポリオールとイソシアネートの配合比率を変化できるように三つ目の成分のイソシアネートのポンプは、切り替えスイッチによりポンプインバーターを2段階に切り替えられるようにする。又、吐出時間もその切り替えスイッチと連動して2つのタイマー設定ができるようにする。
【0012】
(2)多成分ミキシングヘッドを使う場合は、ポリオール成分を2系統とし、イソシアネート成分を2系統とし、任意に配合比率と注入時間を変更することで容易に表皮層と内部層のウレタン材を吐出することが可能となる。
(3)イソシアネートを1系統しか持たない多成分ミキシングヘッドにおいては、あらかじめイソシアネート成分と各ポリオール成分をそれぞれ2成分ずつ吐出するようにすることで、容易に表皮層と内部層のウレタン材を吐出することが可能となる。
一般に、上記(1)〜(3)の場合には、内部層ウレタン材に発泡剤である二酸化炭素、窒素、空気などの気体をあらかじめ内部層形成用ポリウレタン成形材料ポリオールとタンク内で混合しておくことが可能である。このように加圧タンクを使用する場合においては、注入ガスを安定化することができる。
更に、ミキシングヘッドもしくはミキシングヘッドに原料が流れる配管の途中で炭酸ガスなどの発泡ガスを配合するような場合では、次のような方法を採用すれば可能となる。なお、このガス混合法によるときは、注入ガス量を容易にコントロールすることができる。
【0013】
(4)3成分ミキシングヘッドで、1つ目の成分は炭酸ガスなどの発泡ガスを注入できる場合は、2つ目の成分を発泡剤を配合しないポリオール成分とし、3つ目の成分をイソシアネート成分として、まず、1つ目の成分の吐出を閉じて、2つ目の成分と3つ目の成分を吐出し、その後直ちに1つ目の成分の吐出を開き、3成分を同時に吐出することで、容易に表皮層と内部層のウレタン材を吐出することが可能となる。
【0014】
(5)2成分ミキシングヘッドを使う場合、ウレタン材料がミキシングヘッドに流れる配管の途中に、無数の微小のポーラス穴を持った第3成分の混入口を設置し、第3成分に炭酸ガスなどの発泡ガスを液体状で接続できるようにし、まず、第3成分のバルブを閉じ、1つ目の成分の発泡剤を配合しないポリオール成分と2つ目の成分のイソシアネートを吐出し、その後直ちに第3成分のバルブを開けて全ての成分を吐出する。
【0015】
(6)(4)及び(5)においては、2回の吐出で行ったが、1回の吐出で行う場合は、炭酸ガスなどの発泡ガスの混入をタイマーを設置し、バルブの開閉を制御して、ポリオール成分とイソシアネート成分の吐出に対し、時間差をつけてバルブを開くことで、2回の吐出を、1回の吐出の工程の中で行うことができる。
【0016】
本発明の方法によれば、表皮層と内部層を任意に特性を変化させた、ウレタンRIM成形品を、通常のRIM機を使うか、簡単な設備改造により、設備費をかけずに、常圧下で行うことにより、金型の改造もなく、容易に作ることが可能となる。
また、本発明において加圧下にポリウレタン成形材料に混合する気体としては炭酸ガス、窒素ガス、空気などが挙げられる。その加圧は、常圧下の金型内で瞬時に発泡して内部内部層を緻密な表皮層とともに形成できる圧力であれば特に制限はないが、必要設備のコストなどを考慮すると1〜5kg/cmが好ましい。
【0017】
本発明においては、表皮層用ウレタン材料と内部層用ウレタン材料の特性をそれぞれ変化させることが可能である。特に表皮層用ウレタン材の粘度を200CPSから1000CPSの範囲内で、また内部用ウレタン材の粘度は100CPSから600CPSの範囲内で使用することができる。表皮層形成用の成形材料の粘度が200CPSよりも低いと表皮層が薄くなりすぎて、破れが生じたりして満足な表皮層が形成できなかったり、ゲート側が薄く、オーバーフロー側が厚くなり均一な表皮層が形成できない。また、1000CPSを越える粘度では粘性が高すぎて流動性が悪くなり、内部層用ウレタン材料によって表皮層が破れてしまうなどの問題が生じることとなる。好ましい表皮層形成用の成形材料の粘度は400〜600CPSである。内部用ポリウレタン成形材料の粘度が100CPSより低いと内部層に表皮層が混ざってしまい、また600CPSを越えると発泡が不充分となるなどの問題が生じることとなる。好ましい内部用ポリウレタン成形材料の粘度は300〜400CPSである。そして両層の粘度差を調整することにより、成形品の表皮層の厚さを変化させたものを作ることが可能になる。また、表皮層用ウレタン材に塗料などに使われる無黄変タイプのイソシアネートを使うことで、耐久性の良い表皮層を付与した成形品を作ることが可能になる。発泡剤の配合量を変化させ、表皮層と内部層のウレタン材の硬度を変化させることで、感触を変更することも可能になる。
【0018】
表皮層(スキン層)の厚さを制御する方法としては、すでに述べたように、a)表皮層用材料の粘度と内部層(内部層)用材料の粘度とを調整することで表皮層の膜厚を容易に制御できる。
・表皮層の粘度>内部層の粘度とすることで、表皮層を厚くできる。
・表皮層の粘度<内部層の粘度とすることで、表皮層を薄くできる。
また、b)表皮層用材料のキャビティへの注入量を増減する。表皮層用材料の注入量を増やすと表皮層を厚くでき、減らすと表皮層を薄くできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明をステアリングホイールのウレタンRIM成形に具体化した実施例について図1〜図9に基づいて説明する。本発明で使う装置は、常圧下に置かれた成形金型1、ウレタン材料を混合攪拌し吐出するための3成分ミキシングヘッド3、ステアリングホイールの芯金6等から構成されており、3成分ミキシングヘッド3には、ポリオール成分とイソシアネート成分がそれぞれミキシングヘッドに送り込む配管13、14、15がほどこされている。また、常圧下に置かれた金型1には、ミキシングヘッド3から吐出したウレタン材料4を金型3まで流し込むアフターミキサー11とキャビティー2をウレタン材料で過充填したときに金型1内のエアーと過剰のウレタン材を抜くべントホール12がほどこされている。
【0020】
上記製造装置を使用して行う本実施例の表皮層と内部層を形成したウレタンRIM成形方法について工程順に説明する。
1)ゲート側を下側に設置した成形用金型1をコア型とキャビ型に型開きし、離型剤を両型に塗布する。
2)コア型に芯金6をセットした後、コア型とキャビ型を型閉めする。図1がその投影図で、図2がその断面図となる。
3)図1及び図2に示すように、配管13から発泡剤を配合していないポリオール成分と配管14からイソシアネート成分をミキシングヘッド3で混合攪拌してそのウレタン材料4を金型1のキャビティー内に任意の量を流し込む(実施例ではキャビティ体積の約1/3の量)。
【0021】
4)その後、直ちに配管15を開きあらかじめ加圧下に(実施例では3kg/cm)炭酸ガスなどを吹き込んだ金型内で瞬時に発泡するポリオール成分をミキシングヘッド3から吐出して、連続して3成分全てのポリウレタン成形材料10を金型キャビティ2の中のポリウレタン成形材料4の中に吐出する。このポリウレタン成形材料10は、図3及び図4の充填完了寸前の状態から、図5及び図6のベントホール12からポリウレタン成形材料がオーバーフローするまで充填する。
【0022】
図7から図9は、金型キャビティ内のゲート側位置8とオーバーフロー側位置9におけるポリウレタン成形材料の充填状態を示す説明図である。図7は、発泡剤を配合していないポリウレタン成形材料4を金型キャビティー2に吐出した状態、図8は、後から瞬時に発泡するポリウレタン成形材料10によりキャビティ内を完全に満たす寸前の状態、図9は、オーバーフローするポリウレタン成形材料7が出るまでポリウレタン成形材料10を吐出した状態のステアリングホイールのグリップ8と9の部分の断面を説明する図であって、各図の左側がオーバーフロー側、右側がゲート側である。
【0023】
図10に示す写真は、本実施例で作製したステアリングホイールの試作品サンプルで、右側が芯金6をセットしないで成型したグリップ9の断面写真、左側が芯金6をセットしたグリップ9の断面写真で、最初に吐出したウレタン材料4は、粘度600CPSで、後から吐出したウレタン材10の粘度は400CPSの条件で試作を行ったものである。断面が白く見える部分が表皮層、内部の黒く見える部分が発泡内部層である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の製造方法の説明図で、金型内に芯金6をセットして型閉め後、ミキシングヘッド3より表皮層形成用成形材料を充填した状態を示す。
【図2】同上説明図で、図1の断面説明図を示す。
【図3】同上説明図で、図1,2に示す状態からミキシングヘッド3より発泡内部層を形成する成形材料を充填した状態(充填完了寸前)を示す。
【図4】同上説明図で、図3の断面説明図を示す。
【図5】同上説明図で、図3の状態から更にベントホール12から成形材料がオーバーフローするまで充填した状態を示す。
【図6】同上説明図で、図5の断面説明図を示す。
【図7】前記図1,2のキャビティ内の状態を示す断面説明図で、左側がオーバーフロー側(9)、右側がゲート側(8)を示す(下記図8,9も同じ)。
【図8】前記図3,4のキャビティ内の状態を示す断面説明図。
【図9】前記図5,6のキャビティ内の状態を示す断面説明図。
【図10】本発明の方法によるサンプルの断面写真で、左側が芯金6をセットして成形したもの、右側がセットしないで成形したものを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧下の金型キャビティ内に、金型キャビティーの一部を満たすように表皮層形成用の発泡剤を含まないポリウレタン成形材料を注入し、次いでこのポリウレタン成形材料内部に、発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料を金型キャビティ内を完全に充填するまで注入して成形するRIM成形品の製造方法。
【請求項2】
表皮層形成用ポリウレタン成形材料の粘度と発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料の粘度を調整して表皮層の厚みをコントロールする請求項1記載のRIM成形品の製造方法。
【請求項3】
発泡内部層形成用ポリウレタン成形材料は、ミキシングヘッドおよび/またはミキシングヘッドに通じる配管中で気体を吹き込まれる請求項1または2記載のRIM成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−112142(P2007−112142A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339326(P2006−339326)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【分割の表示】特願2002−222689(P2002−222689)の分割
【原出願日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】