説明

車体前部構造

【課題】ラジエータが傾斜して取付けられる車種においても十分な剛性を確保してラジエータを支持することを可能にする。
【解決手段】フロントバルクヘッド16の枠内に前傾姿勢で支持されるラジエータ52を備えた車体前部構造において、左右のサイドステー33,33を、下端がサイドフレーム14の上面14aに連結される上側サイドステー35と、上端がサイドフレーム14の下面14bに連結される下側サイドステー36とから上下に2分割して構成し、上側サイドステー35よりも車体前後方向に関して後方に下側サイドステー36が位置するように、上側サイドステー35と下側サイドステー36とを車体前後方向にオフセットさせ、上側サイドステー35にアッパメンバ31を連結するとともに、下側サイドステー36にロアメンバ32を連結し、アッパメンバ31にラジエータ52の上部を取付けるとともに、ロアメンバ32にラジエータ52の下部を支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関し、特に、大きなラジエータなどの熱交換器を搭載する必要性のある車両における車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、車体の前部に、エンジン冷却のためのラジエータや車室内空調のためのコンデンサなどを搭載したものが知られている。
この種の車体前部構造は、車体の前部のフロントバルクヘッドにブラケットなどを介して支持されるものであった。
【0003】
このような車体前部構造として、車体の前端が傾斜したスラントノーズの車両に採用されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3551461号公報
【0004】
特許文献1の車体前部構造は、低いC値(空気抵抗係数)を有するスラントノーズの車体に収納するために、ラジエータやコンデンサなどの熱交換器を車体に前傾斜させて搭載したものである。
【0005】
車体に前傾斜させた熱交換器を支持する車体前部構造では、熱交換器の上下に所定の大きさのブラケットを設けて車体側に支持するのが、一般的であった。
しかし、熱交換器であるラジエータが、一般の車種に比べて大きく且つ重い場合には、ブラケットで車体側に傾斜させて支持することに限界があった。
そこで、ラジエータが大きく且つ重く、且つラジエータを傾斜させて取付ける必要のある車種に最適な車体前部構造が望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ラジエータが大きく且つ重く、且つラジエータを傾斜させて取付ける必要のある車種においても十分な剛性を確保してラジエータを支持することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車幅方向に互いが離間して左右一対となるように車両前後方向に延ばしたサイドフレームと、左右のサイドステー、アッパメンバ及びロアメンバから構成される正面視で枠形状をなすフロントバルクヘッドと、このフロントバルクヘッドの枠内に前傾姿勢で支持されるラジエータとからなる車体前部構造において、左右のサイドステーを、下端がサイドフレームの上面に連結される上側サイドステーと、上端がサイドフレームの下面に連結される下側サイドステーとから上下に2分割して構成し、上側サイドステーよりも車体前後方向に関して後方に下側サイドステーが位置するように、上側サイドステーと下側サイドステーとを車体前後方向にオフセットさせ、上側サイドステーにアッパメンバを連結するとともに、下側サイドステーにロアメンバを連結し、アッパメンバにラジエータの上部を取付けるとともに、ロアメンバにラジエータの下部を支持したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、サイドフレームが、略矩形の閉断面形状を呈する部材であり、上側サイドステーの下端からサイドフレームの左右の側面の一方に接合される上側延出片が延出され、下側サイドステーの上端から左右の側面の他方に接合される下側延出片が延出され、これらの上側・下側延出片は、左右の側面に車体前後方向にオフセットして接合されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、サイドフレームに、閉断面形状の内部を上下で二つの室に分割にする中間壁を備え、下側延出片が、中間壁と同等の高さ位置まで延出されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、上側延出片及び下側延出片が、車幅方向に突出するフランジ部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、ラジエータに、下部に設けられた座部と、この座部から突出された脚部とを備え、ロアメンバに、脚部及び座部を支持するラジエータ下部支持部を備え、ラジエータ下部支持部は、アルミニウムの押出材で略円筒状に形成されたマウントブラケットと、マウントブラケットの略円筒内部に設けられた弾性樹脂製のマウント部材とからなり、このマウント部材に、脚部が挿入可能な支持孔と、座部が当接する座部受け部とが設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、アッパメンバが、上面、下面、前面及び後面からなる断面視略四角形状の部材であり、ラジエータが、アッパメンバに向けて車体後方に延出されるラジエータブラケットを上部に備え、このラジエータブラケットは、ラジエータの上部を支持するラジエータ上部支持部と、このラジエータ上部支持部の後方から二股に分岐させアッパメンバへと延ばした第1・第2の延出片と、第1の延出片の端部に設けられ、アッパメンバの上面に取付ける第1の取付部と、第2の延出片の端部に設けられ、アッパメンバの前面に取付ける第2の取付部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、車体前部構造が、車幅方向に互いが離間して左右一対となるように車両前後方向に延ばしたサイドフレームと、左右のサイドステー、アッパメンバ及びロアメンバから構成される正面視で枠形状をなすフロントバルクヘッドと、このフロントバルクヘッドの枠内に前傾姿勢で支持されるラジエータとから構成される。
左右のサイドステーは、下端がサイドフレームの上面に連結される上側サイドステーと、上端がサイドフレームの下面に連結される下側サイドステーとから上下に2分割して構成される。
例えば、スポーツタイプの車両においては、大型で重いラジエータがデザイン上の制約などで、前傾姿勢で配置されることが多い。また、高速走行中に加わるG(加速度)とラジエータ自体の重量とを考慮すると、ラジエータを支持する部分には相当な剛性が必要となる。
そこで、上側サイドステーよりも車体前後方向に関して後方に下側サイドステーが位置するように、上側サイドステーと下側サイドステーとを車体前後方向にオフセットさせ、上側サイドステーにアッパメンバを連結するとともに、下側サイドステーにロアメンバを連結し、アッパメンバにラジエータの上部を取付けるとともに、ロアメンバにラジエータの下部を支持したので、ラジエータの荷重を車体の骨格部材であるロアメンバによって受けることができ、大型で重いラジエータを前傾姿勢で強固に載置することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、サイドフレームは、略矩形の閉断面形状を呈する。上側サイドステーの下端からサイドフレームの左右の側面の一方に接合される上側延出片が延出され、下側サイドステーの上端から左右の側面の他方に接合される下側延出片が延出され、これらの上側・下側延出片は、左右の側面に車体前後方向にオフセットして接合した。
従って、上側・下側サイドステーをサイドフレームに溶接で接合する場合、サイドフレームの左右の側面の熱による変形、及び溶接部分の剛性の変化が左右でバランスがとれ、正面衝突等でサイドフレームが圧壊するときに、サイドフレームを左右でバランスよく変形させることができる。
また、上側・下側サイドステーを、上側・下側延出片を介してサイドフレームの左右の側面に接合することで、コーナ時に発生する車体前部を揺するような荷重を、上側・下側サイドステーをねじるような荷重に変換してサイドフレームに伝達することができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、サイドフレームに、閉断面形状の内部を上下で二つの室に分割にする中間壁を備え、下側延出片が、中間壁と同等の高さ位置まで延出されたので、下側延出片からの荷重を中間壁に伝達することができ、より効率的にサイドフレーム全体に荷重を伝達することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、上側延出片及び下側延出片が、車幅方向に突出するフランジ部を有するので、上側延出片及び下側延出片の剛性を向上することができ、サイドフレームへの荷重の伝達を確実なものとすることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、ラジエータに、下部に設けられた座部と、この座部から突出された脚部とを備え、ロアメンバに、脚部及び座部を支持するラジエータ下部支持部を備える。
ラジエータ下部支持部が、アルミニウムの押出材で略円筒状に形成されたマウントブラケットと、マウントブラケットの略円筒内部に設けられた弾性樹脂製のマウント部材とから構成されたので、ラジエータ下部支持部の成形が容易にできるとともに、ラジエータ下部支持部の深さを任意に調整することができる。また、ラジエータが弾性樹脂製のマウント部材を介して支持されるので、ラジエータへ伝わる振動を低減することができる。
マウント部材に、脚部が挿入可能な支持孔と、座部が当接する座部受け部とが設けられたので、ラジエータの支持性の向上を図ることができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、アッパメンバは、上面、下面、前面及び後面からなる断面視略四角形状の部材とされ、ラジエータは、アッパメンバに向けて車体後方に延出されるラジエータブラケットを上部に備える。
ラジエータブラケットは、ラジエータの上部を支持するラジエータ上部支持部と、このラジエータ上部支持部の後方から二股に分岐させアッパメンバへと延ばした第1・第2の延出片と、第1の延出片の端部に設けられ、アッパメンバの上面に取付ける第1の取付部と、第2の延出片の端部に設けられ、アッパメンバの前面に取付ける第2の取付部とから構成されたので、ラジエータの倒れ込み方向の引張り荷重を第1・第2の取付部の2箇所で受けることができ、ラジエータの支持剛性を向上することができる。
また、ラジエータブラケットは、アッパメンバの上面に取付ける第1の取付部と、アッパメンバの前面に取付ける第2の取付部とが設けられたので、ラジエータをアッパメンバの異なる面で支持することができ、車体前後方向の荷重と車体高さ方向の荷重とに対して効力を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体前部構造を採用した車体の斜視図である。
車体12は、車幅方向に互いが離間して左右一対となるように車両前後方向に延ばした左右のサイドフレーム14,14と、これらのサイドフレーム14,14の前端廻りに構成されるフロントバルクヘッド16と、このフロントバルクヘッド16から車体後方に延ばされた左右のサイドアッパメンバ25,25と、これらのサイドアッパメンバ25,25の後部と左右のサイドフレーム14,14との間に設けられ、フロントダンパ(不図示)を支持する左右のダンパハウジング24,24とを主要構成としてフロントボディの骨格が形成される。
【0020】
フロントバルクヘッド16は、左右のサイドフレーム14,14に取付けられる左右のサイドステー33,33と、これらの左右のサイドステー33,33の上部に渡されるアッパメンバ31と、左右のサイドステー33,33の下部に渡されるロアメンバ32から構成される。また、フロントバルクヘッド16は、アルミニウム押出材で形成される正面視矩形枠状の枠体(枠部)でもある。
【0021】
図2は本発明に係る車体前部構造の斜視図であり、図3は図2に示される車体前部構造のサイドフレームを外した状態を示す斜視図であり、図4は図2に示される車体前部構造の正面図であり、図5は図2に示される車体前部構造のサイドフレーム及び上側サイドステーを示す側面図であり、図6は図2に示される車体前部構造の底面図である。
【0022】
サイドフレーム14は、図2に示されたように、上面14a、下面14b、左右の側面14c,14dで構成される略矩形の閉断面形状を呈する部材であり、閉断面形状の内部を上下で二つの室に分割にする中間壁41を備える。
【0023】
アッパメンバ31は、図4及び図6に示されるように、上面31a、下面31b、前面31c及び後面31dからなる断面視略四角形状のアルミニウム押出材で形成された部材である。ロアメンバ32は、アルミニウム押出材で形成された部材である。
【0024】
図2及び図3に示されたように、サイドステー33は、下端がサイドフレーム14の上面14aにそれぞれ連結される上側サイドステー35と、上端がサイドフレーム14の下面14bにそれぞれ連結される下側サイドステー36とから上下に2分割して構成される。
【0025】
上側・下側サイドステー35,36の配置構造は、上側サイドステー35よりも車体前後方向に関して後方に下側サイドステー36が位置するように、上側サイドステー35と下側サイドステー36とを車体前後方向に距離S1(後述する図8参照)だけオフセットして配置される。
【0026】
上側サイドステー35は、アッパメンバ31に連結され、下側サイドステー36は、ロアメンバ32に連結される。さらに、後述する図7に示されるように、アッパメンバ31に、ラジエータ52の上部が取付けられ、ロアメンバ32に、ラジエータ52の下部が支持される。
【0027】
上側サイドステー35は、図5に示されるように、下端からサイドフレーム14の左右の側面14c,14dの一方に接合される上側延出片42が延出され、下側サイドステー36は、図2及び図3に示されるように、上端からサイドフレーム14の左右の側面14c,14dの他方に接合される下側延出片43が延出される。
【0028】
さらに、上側・下側延出片42,43は、図2に示されるように、左側面14cに車体前後方向にオフセットして接合される。
上側延出片42は、車幅方向に突出するフランジ部44,44を有する。
下側延出片43は、車幅方向に突出するフランジ部45,45を有するとともに、図4に示されるように、サイドフレーム14の中間壁41と同等の高さ位置まで延出されている。
【0029】
車体前部構造では、上側延出片42及び下側延出片43が、車幅方向に突出するフランジ部44,44及びフランジ部45,45を有するので、上側延出片42及び下側延出片43の剛性を向上することができ、サイドフレーム14への荷重の伝達を確実なものとすることができる。
【0030】
図6に示されたように、サイドフレーム14は、フロントバルクヘッド16の後方にエンジン(不図示)やフロントサスペンション(不図示)を組み込んだフロントサブシャーシ47が搭載される。
フロントサブシャーシ47から下側サイドステー36に補助メンバ48が渡されている。従って、補助メンバ48から下側サイドステー36に車体前部を左右に揺らすような荷重が発生する。
【0031】
車体前部構造では、サイドフレーム14に、閉断面形状の内部を上下で二つの室に分割にする中間壁41を備え、下側延出片43が、中間壁41と同等の高さ位置まで延出されたので、下側延出片43からの荷重を中間壁41に伝達することができ、より効率的にサイドフレーム14全体に荷重を伝達することができる。
【0032】
すなわち、車体前部構造は、図1〜図3に示されたように、車幅方向に互いが離間して左右一対となるように車両前後方向に延ばしたサイドフレーム14,14と、左右のサイドステー33,33、アッパメンバ31及びロアメンバ32から構成される正面視で枠形状をなすフロントバルクヘッド16と、このフロントバルクヘッド16の枠内に前傾姿勢で支持されるラジエータ52(図7参照)とから構成される。
【0033】
サイドステー33は、下端がサイドフレーム14の上面14aに連結される上側サイドステー35と、上端がサイドフレーム14の下面14bに連結される下側サイドステー36とから上下に2分割して構成される。
【0034】
例えば、スポーツタイプの車両においては、大型で重いラジエータがデザイン上の制約などで、前傾姿勢で配置されることが多い。また、高速走行中に加わるG(加速度)とラジエータ自体の重量とを考慮すると、ラジエータ52を支持する部分には相当な剛性が必要となる。
【0035】
そこで、上側サイドステー35よりも車体前後方向に関して後方に下側サイドステー36が位置するように、上側サイドステー35と下側サイドステー36とを車体前後方向にオフセットさせ、上側サイドステー35にアッパメンバ31を連結するとともに、下側サイドステー36にロアメンバ32を連結し、アッパメンバ31にラジエータ52の上部を取付けるとともに、ロアメンバ32にラジエータ52の下部を支持したので、ラジエータ52の荷重を車体の骨格部材であるロアメンバ32によって受けることができ、大型で重いラジエータ52を前傾姿勢で強固に載置することができる。
【0036】
車体前部構造では、サイドフレーム14は、略矩形の閉断面形状を呈する。上側サイドステー35の下端からサイドフレーム14の左右の側面14c,14dの一方に接合される上側延出片42が延出され、下側サイドステー36の上端から左右の側面14c,14dの他方に接合される下側延出片43が延出され、これらの上側・下側延出片42,43は、左右の側面14c,14dに車体前後方向にオフセットして接合した。
【0037】
従って、上側・下側サイドステー35,36をサイドフレーム14に溶接で接合する場合、サイドフレーム14の左右の側面14c,14dの熱による変形、及び溶接部分の剛性の変化が左右でバランスがとれ、正面衝突等でサイドフレーム14が圧壊するときに、サイドフレーム14を左右でバランスよく変形させることができる。
【0038】
また、上側・下側サイドステー35,36を、上側・下側延出片42,43を介してサイドフレーム14の左右の側面14c,14dに接合することで、コーナ時に発生する車体前部を揺するような荷重を、上側・下側サイドステー35,36をねじるような荷重に変換してサイドフレーム14に伝達することができる。
【0039】
図7は図2に示される車体前部構造のラジエータを搭載した状態の斜視図であり、図8は図7に示される車体前部構造の側面図である。
図1、図7及び図8に示されるように、車体前部構造では、車幅方向に互いが離間して左右一対となるように車両前後方向に延ばしたサイドフレーム14,14と、左右のサイドステー33,33、アッパメンバ31及びロアメンバ32から構成される正面視で枠形状をなすフロントバルクヘッド16と、このフロントバルクヘッド16の枠内に前傾姿勢で支持される熱交換器51とから構成される。
【0040】
熱交換器51は、エンジン(不図示)を冷却するラジエータ52と、このラジエータ52の前方に載置され空調のためのコンデンサ53と、ラジエータ52の後方に設けられラジエータ52に送風するファンユニット54とを含む(後述する図13も参照)。
【0041】
すなわち、車体前部構造では、上側サイドステー35よりも車体前後方向に関して後方に下側サイドステー36が位置するように、上側サイドステー35と下側サイドステー36とを車体前後方向にオフセットさせ、アッパメンバ31にラジエータ52の上部を取付けるとともに、ロアメンバ32にラジエータ52の下部を支持し、ラジエータ52の荷重を車体の骨格部材であるロアメンバ32によって、大型で重いラジエータ52(熱交換器51)を前傾姿勢で強固に載置することができる。
【0042】
図9は図7に示される車体前部構造のラジエータ上部を示す斜視図である。
ラジエータ52の上部は、上部ピン56が形成され、この上部ピン56にラジエータブラケット61の一端が嵌合され、ラジエータブラケット61の他端がアッパメンバ31に取付けられることで支持される。
【0043】
ラジエータブラケット61は、ラジエータ52の上部ピン56に弾性部材で形成されたグロメット62を介して嵌合されるラジエータ上部支持部63と、このラジエータ上部支持部63の後方から二股に分岐させアッパメンバ31へと延ばした第1・第2の延出片64,65と、第1の延出片64の端部に設けられ、アッパメンバ31の上面31aに取付ける第1の取付部66と、第2の延出片65の端部に設けられ、アッパメンバ31の前面31cに取付ける第2の取付部67とが形成される。
【0044】
第1の取付部66は、第1のボルト68でアッパメンバ31の上面31aに取付けられ、第2の取付部67は、第2のボルト69でアッパメンバ31の前面31cに取付けられる。
【0045】
車体前部構造では、アッパメンバ31は、上面31a、下面31b、前面31c及び後面31dからなる断面視略四角形状に形成され、ラジエータ52は、アッパメンバ31に向けて車体後方に延出されるラジエータブラケット61を上部に備える。
【0046】
ラジエータブラケット61は、ラジエータ52の上部を支持するラジエータ上部支持部63と、このラジエータ上部支持部63の後方から二股に分岐させアッパメンバ31へと延ばした第1・第2の延出片64,65と、第1の延出片64の端部に設けられ、アッパメンバ31の上面31aに取付ける第1の取付部66と、第2の延出片65の端部に設けられ、アッパメンバ31の前面31cに取付ける第2の取付部67とから構成されたので、ラジエータ52の倒れ込み方向の引張り荷重を第1・第2の取付部66,67の2箇所で受けることができ、ラジエータ52の支持剛性を向上することができる。
【0047】
また、ラジエータブラケット61は、アッパメンバ31の上面31aに取付ける第1の取付部66と、アッパメンバ31の前面31cに取付ける第2の取付部67とが設けられたので、ラジエータ52をアッパメンバ31の異なる面で支持することができ、車体前後方向の荷重と車体高さ方向の荷重とに対して効力を奏する。
なお、フロントバルクヘッド16のアッパメンバ31が、アルミニウム押出材で形成される図2に示された車体前部構造では、特にその効果を発揮することができる。
【0048】
図10は図7に示される車体前部構造のフロントバルクヘッド下部を示す斜視図であり、図11は図7に示される車体前部構造のラジエータ下部支持部を示す斜視図であり、図12は図7に示される車体前部構造のラジエータの側面図であり、図13は図12の13部拡大図である。
【0049】
ラジエータ52の下部は、図12及び図13に示されたように、前傾斜させた状態で水平となる座部58が形成され、この座部58に車体垂直方向に脚部(下部ピン)57が形成され、フロントバルクヘッド16のロアメンバ32に形成されたラジエータ下部支持部73で支持される。
【0050】
ラジエータ下部支持部73は、図10及び図11に示されたように、アルミニウムの押出材で略円筒状に形成されたマウントブラケット74と、マウントブラケット74の略円筒内部に設けられた弾性樹脂製のマウント部材75とからなる。
マウント部材75に、脚部57が挿入可能な支持孔76と、座部58が当接する座部受け部77とが設けられる。
【0051】
車体前部構造では、ラジエータ下部支持部73が、アルミニウムの押出材で略円筒状に形成されたマウントブラケット74と、マウントブラケット74の略円筒内部に設けられた弾性樹脂製のマウント部材75とから構成されたので、ラジエータ下部支持部73の成形が容易にできるとともに、ラジエータ下部支持部73の深さを任意に調整することができる。また、ラジエータ52が弾性樹脂製のマウント部材75を介して支持されるので、ラジエータ52へ伝わる振動を低減することができる。
【0052】
マウント部材75に、脚部57が挿入可能な支持孔76と、座部58が当接する座部受け部77とが設けられたので、ラジエータ52の支持性の向上を図ることができる。
【0053】
尚、本発明に係る車体前部構造は、図1に示すように、サイドフレーム14やフロントバルクヘッド16がアルミニウム押出材で形成された車体前部構造であったが、これに限るものではなく、板金のプレス部品で構成される車体前部構造に採用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る車体前部構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る車体前部構造を採用した車体の斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造の斜視図である。
【図3】図2に示される車体前部構造のサイドフレームを外した状態を示す斜視図である。
【図4】図2に示される車体前部構造の正面図である。
【図5】図2に示される車体前部構造のサイドフレーム及び上側サイドステーを示す側面図である。
【図6】図2に示される車体前部構造の底面図である。
【図7】図2に示される車体前部構造のラジエータを搭載した状態の斜視図である。
【図8】図7に示される車体前部構造の側面図である。
【図9】図7に示される車体前部構造のラジエータ上部を示す斜視図である。
【図10】図7に示される車体前部構造のフロントバルクヘッド下部を示す斜視図である。
【図11】図7に示される車体前部構造のラジエータ下部支持部を示す斜視図である。
【図12】図7に示される車体前部構造のラジエータの側面図である。
【図13】図12の13部拡大図である。
【符号の説明】
【0056】
14…サイドフレーム、14a…上面、14b…下面、14c,14d…左右の側面、16…フロントバルクヘッド、31…アッパメンバ、31a…上面、31b…下面、31c…前面、31d…後面、32…ロアメンバ、35,36…上側・下側サイドステー、41…中間壁、42,43…上側・下側延出片、44,45…フランジ部、52…ラジエータ、57…脚部、58…座部、61…ラジエータブラケット、63…ラジエータ上部支持部、64,65…第1・第2の延出片、66,67…第1・第2の取付部、73…ラジエータ下部支持部、74…マウントブラケット、75…マウント部材、76…支持孔、77…座部受け部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に互いが離間して左右一対となるように車両前後方向に延ばしたサイドフレームと、左右のサイドステー、アッパメンバ及びロアメンバから構成される正面視で枠形状をなすフロントバルクヘッドと、このフロントバルクヘッドの枠内に前傾姿勢で支持されるラジエータとからなる車体前部構造において、
前記左右のサイドステーを、下端が前記サイドフレームの上面に連結される上側サイドステーと、上端が前記サイドフレームの下面に連結される下側サイドステーとから上下に2分割して構成し、
前記上側サイドステーよりも車体前後方向に関して後方に前記下側サイドステーが位置するように、上側サイドステーと下側サイドステーとを車体前後方向にオフセットさせ、前記上側サイドステーにアッパメンバを連結するとともに、前記下側サイドステーにロアメンバを連結し、
前記アッパメンバに前記ラジエータの上部を取付けるとともに、前記ロアメンバに前記ラジエータの下部を支持したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記サイドフレームは、略矩形の閉断面形状を呈する部材であり、
前記上側サイドステーの下端から前記サイドフレームの左右の側面の一方に接合される上側延出片が延出され、前記下側サイドステーの上端から前記左右の側面の他方に接合される下側延出片が延出され、
これらの上側・下側延出片は、前記左右の側面に車体前後方向にオフセットして接合されることを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記サイドフレームは、前記閉断面形状の内部を上下で二つの室に分割にする中間壁を備え、
前記下側延出片は、前記中間壁と同等の高さ位置まで延出されたことを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記上側延出片及び前記下側延出片は、車幅方向に突出するフランジ部を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記ラジエータは、下部に設けられた座部と、この座部から突出された脚部とを備え、 前記ロアメンバは、前記脚部及び座部を支持するラジエータ下部支持部を備え、
前記ラジエータ下部支持部は、アルミニウムの押出材で略円筒状に形成されたマウントブラケットと、前記マウントブラケットの略円筒内部に設けられた弾性樹脂製のマウント部材とからなり、このマウント部材に、前記脚部が挿入可能な支持孔と、前記座部が当接する座部受け部とが設けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記アッパメンバは、上面、下面、前面及び後面からなる断面視略四角形状の部材であり、前記ラジエータは、前記アッパメンバに向けて車体後方に延出されるラジエータブラケットを上部に備え、
このラジエータブラケットは、前記ラジエータの上部を支持するラジエータ上部支持部と、このラジエータ上部支持部の後方から二股に分岐させ前記アッパメンバへと延ばした第1・第2の延出片と、前記第1の延出片の端部に設けられ、前記アッパメンバの上面に取付ける第1の取付部と、前記第2の延出片の端部に設けられ、前記アッパメンバの前面に取付ける第2の取付部とを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−58584(P2010−58584A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224659(P2008−224659)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】