説明

配線欠陥検査方法および配線欠陥検査装置

【課題】欠陥予備軍であっても発熱検査によって特定することができる配線欠陥検査方法および装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る配線欠陥検査装置100は、半導体基板の配線経路に電圧を印加して、短絡欠陥に至っていない短絡予備軍を短絡させた後、電圧無印加状態を所定時間維持した後で、該半導体基板に印加して該短絡欠陥を含む配線もしくは配線間を発熱させ温度上昇させた後、該半導体基板を赤外線カメラで撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルや太陽電池パネル等の半導体基板に形成された配線の欠陥検出に好適な配線の欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(例えば液晶パネル)の製造プロセスは、アレイ(TFT)工程、セル(液晶)工程、およびモジュール工程に大別される。このうち、アレイ工程においては、透明基板上に、ゲート電極、半導体膜、ソース・ドレイン電極、保護膜、および透明電極が形成された後にアレイ検査がおこなわれ、電極または配線等の配線の短絡の有無が検査される。
【0003】
通常、アレイ検査においては、このような欠陥を、配線の端部にプローブを接触させ、配線両端における電気抵抗または隣接する配線間の電気抵抗および電気容量を測定することにより特定している。しかしながら、アレイ検査において、配線部の欠陥の有無を検出できたとしても、その欠陥の位置を特定するのは容易ではなかった。
【0004】
例えば、上記の問題を改善し、欠陥の位置を特定する方法として、リーク欠陥基板に電圧を印加させて発熱させ、赤外線カメラによりリーク欠陥基板表面温度を撮像したものを用いて欠陥位置を特定する赤外線検査がある。
【0005】
特許文献1は赤外線画像により基板の短絡欠陥を検出する赤外線検査に関するものであり、電圧を印加する前後の基板の赤外線画像の差画像を用いることにより、発熱している配線を検出し、欠陥位置を特定することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−207914号公報(公開日:平成6年7月26日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の検出方法では、短絡しかかっているが完全には短絡していない欠陥予備軍を見逃す虞があり、後工程に欠陥が流出することがある。なぜなら、短絡しかかっているが完全には短絡していない欠陥予備軍は、発熱検査のための電圧印加時に欠陥予備軍が真欠陥に成長することがあり、真欠陥に成長した欠陥は、真欠陥になってから発熱を開始するため、所定の電圧印加時間内に十分発熱しない場合があるからである。すなわち、特許文献1のように電圧印加するかどうかを抵抗検査結果により決定する場合、欠陥予備軍のみの基板は「良品」(つまり欠陥無し)という検査結果に終わる虞が高く、欠陥予備軍が後工程で真欠陥に成長する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、欠陥予備軍であっても発熱検査によって特定することができる配線欠陥検査方法および装置を提供することにある。
【0009】
そこで、上記の課題を解決するために、本発明に係る配線欠陥検査方法は、
半導体基板に設けられた配線に電圧を印加して配線短絡部を含む短絡経路を発熱させて、発熱した短絡経路を、赤外線カメラで撮影して、該撮影の情報に基づいて配線短絡部の位置を特定する判定工程を含み、
上記判定工程よりも先に、
上記配線に電圧を印加して、当該印加後には電圧無印加状態を所定時間維持する前処理工程を含む、ことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、電圧を印加すれば配線短絡部となる、配線短絡部の前段階である短絡予備部を、上記前処理工程による電圧印加によって、配線短絡部に成長させることができる。このため、上記前処理工程をおこなわないで上記判定工程のみをおこなう場合では、上記短絡予備部を含む配線が「配線短絡部有り」と判定されるほど発熱せずに「配線短絡部無し」と誤って判定され、後工程で、電圧印加により配線短絡部となって現れる事態を回避することができる。すなわち、本発明に係る配線欠陥検査方法によれば、短絡予備部を配線短絡部に成長させた後に判定工程をおこなうため、正確な判定を実施することができるという効果を奏する。
【0011】
また、上記の構成によれば、前処理工程において、電圧を印加して短絡予備部を配線短絡部に成長させた後、電圧無印加状態を所定時間維持する。これにより、前処理工程において、電圧印加により温度上昇した短絡経路(短絡予備部から成長した配線短絡部を含む短絡経路)が冷めて、赤外線カメラによる検査の開始時点では、元から在る配線短絡部と、短絡予備部から成長した配線短絡部とで温度を統一することができる。そのため、元から在る配線短絡部と、短絡予備部から成長した配線短絡部とにおけるそれぞれの電圧印加による温度上昇を同一条件で開始することができる。よって、正確な判定を実施することができる。
【0012】
また本発明に係る配線欠陥検査方法の一形態は、上記の構成に加えて、
上記前処理工程と上記判定工程との間に、上記配線の抵抗値を測定することにより、配線短絡部の有無を判定する抵抗値測定工程を含み、
上記判定工程は、
上記抵抗値測定工程において上記配線短絡部を有すると判定された半導体基板の該配線短絡部を含む短絡経路に、該抵抗値測定工程で測定された抵抗値に基づいて特定された電圧を印加して、該短絡経路を発熱させる発熱工程と、
上記発熱工程において発熱した短絡経路を、赤外線カメラで撮影して、該撮影の情報に基づいて上記配線短絡部の位置を特定する位置特定工程と、
を含む、ことが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、抵抗検査によって事前に取得された抵抗値に基づいて特定された電圧を、上記半導体基板に印加することにより、該半導体基板における発熱量が一定になり、赤外線カメラを用いる赤外線検査により温度上昇を確実に確認することができ、短絡部を特定することができる。また、印加電圧が高すぎて欠陥部を焼き切ってしまうことがないため、短絡部を安定して特定することができる。
【0014】
また、本発明に係る配線欠陥検査方法の一形態は、より具体的には、
上記前処理工程において印加する電圧は、上記判定工程において印加する電圧以上とすることができる。これにより、欠陥予備軍を効率的かつ確実に真欠陥に成長させることができる。
【0015】
また、本発明に係る配線欠陥検査方法の一形態は、より具体的には、
上記前処理工程における電圧印加時間は、上記判定工程における電圧印加時間以上とすることができる。これにより、欠陥予備軍を効率的かつ確実に真欠陥に成長させることができる。
【0016】
また本発明に係る配線欠陥検査装置は、上記の課題を解決するために、
半導体基板に設けられた配線に電圧を印加する電圧印加部と、
上記電圧印加部を制御する制御部と、
上記制御部による制御を受けた電圧印加によって発熱した半導体基板から赤外線を検出する赤外線カメラと、
を備えており、
上記制御部は、上記赤外線カメラによる上記赤外線の検出の前に、上記配線に電圧を印加して、当該印加後には電圧無印加状態を所定時間維持するように、上記電圧印加部を制御する、ことを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、電圧を印加すれば配線短絡部となる、配線短絡部の前段階である短絡予備部を、電圧を印加によって、配線短絡部に成長させることができる。このため、当該電圧印加をおこなわないで赤外線の検出のみをおこなう場合では、上記短絡予備部を含む配線が「配線短絡部有り」と判定されるほど発熱せずに「配線短絡部無し」と誤って判定され、後工程で、電圧印加により配線短絡部となって現れる事態を回避することができる。すなわち、本発明に係る配線欠陥検査方法によれば、短絡予備部を配線短絡部に成長させた後に判定工程をおこなうため、正確な判定を実施することができるという効果を奏する。
【0018】
また、上記の構成によれば、電圧を印加して短絡予備部を配線短絡部に成長させた後、電圧無印加状態を所定時間維持する。これにより、電圧印加により温度上昇した、短絡予備部から成長した配線短絡部を含む短絡経路が冷めて、赤外線カメラによる検査の開始時点では、元から在る配線短絡部と、短絡予備部から成長した配線短絡部とで温度を統一することができる。そのため、元から在る配線短絡部と、短絡予備部から成長した配線短絡部とにおけるそれぞれの電圧印加による温度上昇を同一条件で開始することができる。よって、正確な判定を実施することができる。
【0019】
また本発明に係る配線欠陥検査装置の一形態は、上記の構成に加えて、
上記配線の予め測定された抵抗値を取り込むデータ取り込み部を更に備えており、
上記制御部は、上記赤外線カメラによる上記赤外線の検出の際に、上記データ取り込み部によって取り込まれた抵抗値に基づいて、上記発熱のための印加電圧の電圧値を制御する構成となっていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、予め測定された配線の抵抗値に基づいて特定された電圧を、半導体基板(リーク欠陥基板)に印加することにより、該半導体基板(リーク欠陥基板)における発熱量が一定になり、赤外線カメラを用いる赤外線検査により温度上昇を確実に確認することができ、短絡部を特定することができる。また、印加電圧が高すぎて欠陥部を焼き切ってしまうことがないため、短絡部を安定して特定することができる。
【0021】
また、抵抗測定を別装置において実施するため、抵抗測定と赤外線カメラ撮像を並行して動作することができ、処理能力を向上させることが可能となる。
【0022】
また本発明に係る配線欠陥検査装置の一形態は、上記の構成に代えて、
上記配線の抵抗値を測定する抵抗測定部を更に備えており、
上記制御部は、上記赤外線カメラによる上記赤外線の検出の際に、上記抵抗測定部によって測定された抵抗値に基づいて、上記発熱のための印加電圧の電圧値を制御する構成となっている、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、抵抗検査によって事前に取得された抵抗値に基づいて特定された電圧を、半導体基板に印加することにより、該半導体基板における発熱量が一定になり、赤外線カメラを用いる赤外線検査により温度上昇を確実に確認することができ、短絡部を特定することができる。また、印加電圧が高すぎて欠陥部を焼き切ってしまうことがないため、短絡部を安定して特定することができる。
【0024】
さらに、配線欠陥検査装置自身が配線の抵抗値を測定するため、抵抗値を測定する装置を別途必要としなくなるため、装置台数を削減することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る配線欠陥検査方法および配線欠陥検査装置により、短絡予備部を見逃すことなく検出することができ、正確な短絡部の特定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る配線欠陥検査装置の構成を示すブロック図と、液晶パネルを有するマザー基板の構成を示す斜視図である。
【図2】上記配線欠陥検査装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態において用いられる液晶パネルおよびプローブの平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る配線欠陥検査方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態において用いられる画素部の欠陥を示す模式図である。
【図6】比較例の欠陥検出について説明するグラフ図である。
【図7】本発明の実施形態において用いられる短絡経路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
本発明に係る配線欠陥検査方法および配線欠陥検査装置の一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0028】
(配線欠陥検査装置の構成)
図1の(a)は、本実施形態における配線欠陥検査方法をおこなう配線欠陥検査装置100の構成を示すブロック図であり、図1の(b)は、配線欠陥検査装置100を用いて配線欠陥検査される対象であるマザー基板1(半導体基板)の斜視図である。
【0029】
配線欠陥検査装置100は、図1の(b)に示すマザー基板1上に形成された複数の液晶パネル2(半導体基板)の配線欠陥(短絡欠陥)を検査することができる。そのため、配線欠陥検査装置100は、液晶パネル2と導通させるためのプローブ3、および、プローブ3を各液晶パネル2上に移動させるプローブ移動手段4を備えている。また配線欠陥検査装置100は、赤外線画像を取得するための赤外線カメラ5、および、赤外線カメラ5を液晶パネル2上において移動させるカメラ移動手段6を備えている。更に配線欠陥検査装置100は、プローブ移動手段4およびカメラ移動手段6を制御する制御部7を備えている。
【0030】
上記プローブ3には、液晶パネル2の配線間に電圧を印加するための電圧印加部9が接続されている。電圧印加部9は、制御部7により制御されている。詳細は後述するが、電圧印加部9は、制御部7によって、発熱を測定して短絡箇所の位置を特定する判定工程においてプローブ3に電圧印加するほかに、当該判定工程よりも前の段階である前処理工程においてプローブ3に電圧印加する。
【0031】
また上記プローブ3には、液晶パネル2の配線間の抵抗を測定するための抵抗測定部8が接続されている。抵抗測定部8も制御部7により制御されている。
【0032】
上記制御部7は、配線間の抵抗値および画像データを記憶するデータ記憶部10に接続されている。
【0033】
図2は、本実施形態における配線欠陥検査装置100の詳細な構成を示す斜視図である。配線欠陥検査装置100は、図2に示すように、基台上にアライメントステージ11が設置されており、アライメントステージ11にはマザー基板1が載置できるように構成されている。マザー基板1が載置されたアライメントステージ11は、プローブ移動手段4およびカメラ移動手段6のXY座標軸と平行に位置調整される。このとき、アライメントステージ11の位置調整には、アライメントステージ11の上方に設けられた、マザー基板1の位置を確認するための光学カメラ12が用いられる。
【0034】
上記プローブ移動手段4は、アライメントステージ11の外側に配置されたガイドレール13aにスライド可能に設置されている。また、プローブ移動手段4の本体側にもガイドレール13bおよび13cが設置されており、マウント部14aがこれらのガイドレール13に沿ってXYZの各座標方向に移動できるように設置されている。このマウント部14aには、液晶パネル2に対応したプローブ3が搭載されている。
【0035】
上記カメラ移動手段6は、プローブ移動手段4の外側に配置されたガイドレール13dにスライド可能に設置されている。また、カメラ移動手段6の本体にもガイドレール13eおよび13fが設置されており、3箇所のマウント部14b、14c、および14dがこれらのガイドレール13に沿ってXYZの各座標方向に別々に移動することができる。
【0036】
マウント部14cにはマクロ計測用の赤外線カメラ5aが搭載され、マウント部14bにはミクロ計測用の赤外線カメラ5bが搭載され、また、マウント部14dには光学カメラ16が搭載されている。
【0037】
マクロ計測用の赤外線カメラ5aは、視野が520×405mm程度まで広げられたマクロ計測が可能な赤外線カメラである。マクロ計測用の赤外線カメラ5aは、視野を広げるため、例えば、4台の赤外線カメラを組み合わせて構成されている。すなわち、マクロ計測用の赤外線カメラ1台当たりの視野は、マザー基板1の概ね1/4になっている。
【0038】
また、ミクロ計測用の赤外線カメラ5bは、視野が32×24mm程度と小さいが高分解能の撮影がおこなえるミクロ計測が可能な赤外線カメラである。
【0039】
なお、カメラ移動手段6には、マウント部を追加して、欠陥箇所を修正するためのレーザ照射装置を搭載することもできる。レーザ照射装置を搭載することにより、欠陥部の位置を特定した後、欠陥部にレーザを照射することにより連続して欠陥修正をおこなうことができる。
【0040】
プローブ移動手段4およびカメラ移動手段6は、それぞれが別々のガイドレール13aおよび13dに設置されている。そのため、アライメントステージ11の上方をX座標方向に、互いに干渉されずに移動することができる。これにより、液晶パネル2にプローブ3を接触させた状態のまま、赤外線カメラ5a、5b、および光学カメラ16を液晶パネル2上に移動させることができる。
【0041】
図3(a)は、マザー基板1に形成されている複数の液晶パネル2のうちの1つの液晶パネル2の平面図である。各液晶パネル2には、図3(a)に示すように、走査線および信号線が交差する各交点にTFTが形成された画素部17、および、走査線および信号線をそれぞれ駆動する駆動回路部18が形成されている。液晶パネル2の縁部には、端子部19a〜19dが設置されており、端子部19a〜19dは画素部17または駆動回路部18の配線と繋がっている。
【0042】
図3(b)は、液晶パネル2に設置された端子部19a〜19dと導通させるためのプローブ3の平面図である。プローブ3は、図3(a)に示す液晶パネル2の大きさとほぼ同じ大きさの枠状の形状を成しており、液晶パネル2に設置された端子部19a〜19dに対応した複数のプローブ針21a〜21dを備えている。
【0043】
複数のプローブ針21a〜21dは、スイッチングリレー(図示なし)を介して、プローブ針21の一本ずつを個別に図1の(a)に示す抵抗測定部8および電圧印加部9に接続することができる。このため、プローブ3は、端子部19a〜19dに繋がる複数の配線を選択的に接続させたり、複数の配線をまとめて接続させたりすることができる。
【0044】
また、プローブ3は、液晶パネル2とほぼ同じ大きさの枠の形状を成している。そのため、端子部19a〜19dおよびプローブ針21a〜21dの位置を合わせる際に、プローブ3の枠の内側から光学カメラ16を用いて該位置を確認することができる。
【0045】
上記のように、本実施形態に係る配線欠陥検査装置100は、プローブ3、および、プローブ3と接続された抵抗測定部8を備えており、プローブ3を液晶パネル2に導通させて、それぞれの配線の抵抗値および隣接する配線間の抵抗値などを測定することができる。そして、本実施形態の配線欠陥検査装置100は、プローブ3、プローブ3と接続された電圧印加部9、および、赤外線カメラ5aおよび5bを備え、プローブ3を介して液晶パネル2の配線または配線間に電圧を印加し、欠陥部に電流が流れることによる発熱を赤外線カメラ5aおよび5bを用いて計測し、欠陥部の位置を特定することができる。したがって、本実施形態の配線欠陥検査装置100によれば、1台の検査装置により、抵抗検査および赤外線検査を兼用しておこなうことができる。更に本実施形態では、上述のように、発熱を測定して短絡箇所の位置を特定する判定工程よりも前の段階である前処理工程においてプローブ3に電圧印加することによって、液晶パネル2において配線短絡まで至っていない短絡予備軍である短絡予備部を短絡させて配線短絡にする前処理工程をおこなう。すなわち、抵抗検査および赤外線検査の前の前処理工程を含めて、1つの配線欠陥検査装置100において実現することができる。
【0046】
(配線欠陥検査方法)
図4は、上記した配線欠陥検査装置100を用いておこなう配線欠陥検査方法のフローチャートである。本実施形態に係る配線欠陥検査方法は、図4に示すように、マザー基板1に形成された複数の液晶パネル2について、ステップS1〜ステップS10のステップにより、順次、配線欠陥検査が実施される。
【0047】
ステップS1において、配線欠陥検査装置100のアライメントステージ11にマザー基板1が載置され、XY座標軸と平行になるように基板の位置が調整される。
【0048】
ステップS2において、プローブ移動手段4によりプローブ3が検査対象となる液晶パネル2の上部に移動され、プローブ針21a〜21dが液晶パネル2の端子部19a〜19dと接触する。
【0049】
ステップS3において、各種欠陥のモードに対応して、後の抵抗検査するための配線または配線間が選択され、導通させるプローブ針21の切り替えがおこなわれる。
【0050】
ステップS4(前処理工程)において、ステップS3で切り替えられたプローブ針21に電圧が印加される。印加される電圧値は、後の発熱工程において印加される電圧値と同等かそれ以上の強度とする。電圧印加時間が長い方が強く、また印加電圧が大きい方が強い。一例としては、60V、3秒間の電圧印加をおこなう。この電圧印加により、液晶パネル2において配線短絡まで至っていない短絡予備軍である短絡予備部を短絡させて配線短絡(欠陥部23)にする。短絡予備部が欠陥部23に成長すると当該欠陥部23を含む配線が発熱する。なお、ステップS4における電圧印加方法は、連続して印加してもよいし、断続的に複数回印加してもよい。また、電圧印加の開始時点から電圧を徐々に上げるようにしてもよい。
【0051】
更にステップS4においては、上述のような電圧印加の後、所定の時間、電圧無印加状態を維持する。この電圧無印加時間を設けることによって、電圧印加によって短絡予備部が配線短絡部(欠陥部23)となるとともに配線または配線間に発生した熱を冷ます。無印加状態の維持時間は、特に制限はない。なお、冷却は完全に冷却する必要はなく、例えば0.3秒程度の極短時間でも無印加状態があれば、その間にわずかでも冷却されればよい。
【0052】
ステップS5(抵抗値測定工程)において、抵抗検査がおこなわれる。ステップS5では、選択された配線または配線間の抵抗値が測定され、該抵抗値と、欠陥が無い場合の抵抗値との比較により欠陥の有無が検査される。具体例としては、予めデータ記憶部10に記憶されている抵抗検査閾値とが比較される。ここで、ステップS5で取得された抵抗値が、予めデータ記憶部10に記憶されている抵抗検査閾値よりも大きい場合、この検査中の液晶パネル2に欠陥は無いと特定することができ、後述するステップS9に移行する。一方、ステップS5において取得された抵抗値が、予めデータ記憶部10に記憶されている抵抗検査閾値以下である場合、この検査中の液晶パネル2において配線間に欠陥が有ると特定することができ、続くステップS7に移行する。
【0053】
そして、当該検査の結果により欠陥が有ると判明した場合は、測定された該抵抗値がデータ記憶部10に記憶される。
【0054】
ここで図5(a)〜(c)では、一例として、画素部17に生じる欠陥部23(配線短絡部)の位置を模式的に示している。
【0055】
図5(a)は、例えば、走査線および信号線のように、配線Xおよび配線Yが上下に交差する液晶パネルにおいて、当該交差部分において配線Xと配線Yとが短絡している欠陥部23を示している。導通させるプローブ針21を、図3に示した21aと21dとの組または21bと21cとの組に切り替え、配線X1〜X10および配線Y1〜Y10に関して1対1で配線間の抵抗値を測定することにより、欠陥部23の有無と位置を特定することができる。
【0056】
図5(b)は、例えば、走査線および補助容量線のような、隣接する配線Xの配線間において短絡した欠陥部23を示している。このような欠陥部23は、導通させるプローブ針21を、21bの奇数番と21dの偶数番との組に切り替えて、配線X1〜X10の隣り合う配線間の抵抗値を測定することにより、欠陥部23の有る配線を特定することができる。そして、検査の結果により欠陥が有ると判明した場合、測定された該抵抗値がデータ記憶部10に記憶される。
【0057】
図5(c)は、例えば、信号線および補助容量線のような、隣接する配線Yの配線間において短絡した欠陥部23を示している。このような欠陥部23は、導通させるプローブ針21を、21aの奇数番と21cの偶数番との組に切り替えて、配線Y1〜Y10の隣り合う配線間の抵抗値を測定することにより、欠陥部23の有る配線を特定することができる。そして、検査の結果により欠陥が有ると判明した場合、測定された該抵抗値がデータ記憶部10に記憶される。
【0058】
ステップS6において、ステップS5において検査された欠陥部23の有無により、赤外線検査をおこなうか否かが判断される。欠陥部23が有る場合は赤外線検査をおこなうためにステップS7に移行し、欠陥部23がない場合は赤外線検査をおこなわずにステップS9に移行する。このステップS6は、抵抗値測定工程の一部であるといえる。
【0059】
例えば、図5(a)に示すように、配線Xおよび配線Yが交差する箇所において欠陥部23が生じる場合は、配線間の抵抗検査により、配線X4および配線Y4に異常が検出されるので、欠陥部23の位置まで特定することができる。そのため、図5(a)に示す欠陥部23の場合は、その位置を赤外線検査により特定(ステップS6)することを必ずしも要しない。つまり、配線Xと配線Yのすべての組み合わせ毎に抵抗検査するのであれば、位置特定もできるので、赤外線検査は不要となる。しかし、組み合わせ数は膨大であるため長時間を要する。例えば、フルハイビジョン用液晶パネルの場合、配線Xが1080本、配線Yが1920本なので、全組み合わせは約207万通りとなる。このような組み合わせ毎に抵抗検査をすると、タクトが長時間となり、検査処理能力が大幅に低くなってしまい、現実的ではない。そのため、配線Xと配線Yのすべての組み合わせをいくつかにまとめて抵抗検査をすることで、抵抗検査回数を削減できる。例えば、一つにまとめた配線Xと、一つにまとめた配線Yとの間で抵抗検査をおこなえば、この抵抗検査回数はわずか1回となる。しかしながら、抵抗検査により、配線間の短絡を検出することはできるが、位置を特定することはできない。そのため、欠陥部23の位置を赤外線検査により特定することが必要となる。
【0060】
一方、図5(b)または図5(c)のように、隣接する配線間において欠陥部23が生じる場合は、一対の配線、例えば、配線X3と配線X4との間に欠陥部が有ることは特定することができる。しかし、その配線の長さ方向においては欠陥部23の位置は特定することができないため、欠陥部23の位置を赤外線検査により特定することが必要となる。
【0061】
隣り合う配線間の抵抗検査は膨大な数であるため長時間を要する。例えば、フルハイビジョン用液晶パネルの場合、隣り合う配線X間の抵抗検査回数は1079回、隣り合う配線Y間の抵抗検査回数は1919回となる。図5(b)の場合のような隣り合う配線X間の抵抗検査の場合、すべてのX奇数番と、すべてのX偶数番との間で抵抗検査をおこなえば、この抵抗検査回数はわずか1回となる。図5(c)の場合のような隣り合う配線Y間の抵抗検査の場合、すべてのY奇数番と、すべてのY偶数番との間で抵抗検査をおこなえば、この抵抗検査回数はわずか1回となる。しかしながら、抵抗検査により、配線間の短絡を検出することはできるが、位置を特定することはできない。そのため、欠陥部23の位置を赤外線検査により特定することが必要となる。
【0062】
ステップS7(判定工程、発熱工程)において、赤外線検査が必要と判断された液晶パネル2に関して赤外線検査がおこなわれる。ステップS7では、ステップS5においてデータ記憶部10に記憶された抵抗値に基づいて電圧値を設定し、該電圧値の電圧が電圧印加部9により上記液晶パネル2に印加される。具体的には、本実施形態では、ステップS5において取得した抵抗値の平方根に比例する印加電圧V(ボルト)を、上記液晶パネル2に印加する。すなわち、ステップS7では、印加電圧V(ボルト)を以下の式(1);
【0063】
【数1】

【0064】
と設定する。
【0065】
ここで、単位時間当たりの発熱量J(ジュール)は、以下の式(2);
【0066】
【数2】

【0067】
と表されるから、上記式(1)および(2)より、単位時間当たりの発熱量Jは以下の式(3);
【0068】
【数3】

【0069】
と表される。
【0070】
すなわち、式(1)に基づいて、抵抗値の平方根に比例する印加電圧V(ボルト)を液晶パネル2に印加することにより、単位時間当たりの発熱量を一定にすることができる。
【0071】
したがって、基板の種類または基板上における欠陥部23の発生場所等の短絡原因により、欠陥部23を含む短絡経路の抵抗値は大きく変動するが、本実施形態のステップS5をおこなうことにより、単位時間当たりの発熱量を一定にすることができる。
【0072】
このようにステップS7によれば、抵抗検査により欠陥の有無を判断し、欠陥が有ると判断された場合は液晶パネル2の短絡経路における抵抗値が取得され、該抵抗値に基づいて特定された電圧を液晶パネル2に印加する。これにより、欠陥部23または配線部の何れかが十分に発熱するため、赤外線検査の際に欠陥の位置を容易に認識することができる。また、欠陥部23および配線部の発熱量が足りずに欠陥部23の位置が分からないということもない。更に、高電圧がかかりすぎて欠陥部23が焼き切れてしまったりすることもないため、赤外線検査の際に欠陥部23の位置を安定して特定することができる。
【0073】
なお、ステップS7の電圧調整は、図1に示す制御部7が電圧印加部9を制御しておこなう。
【0074】
ステップS8(判定工程、位置特定工程)において、上記電圧が印加されることにより電流が生じて発熱した欠陥部23からの赤外光を検出するために、赤外線カメラを用いて欠陥部23を撮影する。本実施形態では、マクロ計測用の赤外線カメラ5aと、ミクロ計測用の赤外線カメラ5bとを備え、まずは液晶パネル2の広範囲を視野内に収めることができるマクロ計測用の赤外線カメラ5aを用いて、必要に応じてマクロ計測用の赤外線カメラ5aを走査して欠陥部23の位置を特定する。続いて、必要に応じて、発熱部の周辺をミクロ計測用の赤外線カメラ5bを用いて計測してもよい。マクロ計測用の赤外線カメラ5aにより、発熱部の位置が特定されているため、ミクロ計測用の赤外線カメラ5bの視野内に、発熱部が位置するように、カメラを移動させることができ、欠陥部23の座標位置を高精度に特定したり、あるいは修正に必要な形状等の情報についての計測をおこなうことができる。なお、本実施形態では、マクロ計測用の赤外線カメラ5aと、ミクロ計測用の赤外線カメラ5bとを備えて2段階での撮影をおこなっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つの赤外線カメラを用いて1段階での撮影をおこなう構成であってもよい。あるいは、後述する変形例のような撮影ステップを実施してもよい。
【0075】
ここで、上記短絡経路は、配線部分と欠陥部23とから構成されているので、短絡経路の発熱量Jは、配線部分の発熱量Jと、欠陥部23の発熱量Jとから構成される。
【0076】
そして、以下のように;
(a)欠陥部23の抵抗値が比較的小さい場合、この欠陥部23の発熱量Jは小さくなる。しかし、上述のように短絡経路の発熱量Jは一定であるので、欠陥部23の発熱量Jが小さくなることにより、配線部分の発熱量Jが大きくなる。したがって、赤外線画像には、よく発熱している配線部分を容易に認識することができる。そして、この認識された部分を更に解析して、配線と配線とが短絡している部分を特定することにより、欠陥部23を検出することができる。
【0077】
(b)欠陥部23の抵抗値が比較的大きい場合、この欠陥部23の発熱量Jは大きくなる。この場合、上述のように短絡経路の発熱量Jは一定であるので、欠陥部23の発熱量Jが大きくなることにより、配線部分の発熱量Jが小さくなる。したがって、赤外線画像には、よく発熱している欠陥部23を容易に認識することができる。
【0078】
(c)欠陥部23の抵抗値が小さくもなく大きくもない場合、上述のように、短絡経路の発熱量Jは一定であるので、欠陥部23も配線部分も同程度に発熱することになる。したがって、赤外線画像から、欠陥部23も配線部分も容易に認識することができる。
【0079】
以上の(a)から(c)により、欠陥部23または配線部の何れかは十分に発熱するため、撮影された赤外線画像において、電流が流れる欠陥部23または配線部の温度が周辺よりも高く表示される。これにより、容易に欠陥部23の位置が特定される。特定された該位置は、データ記憶部10に記憶される。
【0080】
ステップS9において、検査中の液晶パネル2について、各種欠陥モードの全検査が終了しているか否かが判断され、未検査の欠陥モードがある場合、ステップS3に戻る。そして、次の欠陥モードに合わせてプローブ3の接続が切り替えられ、欠陥検査が繰り返される。ここで、欠陥モードとは、図5に示したような欠陥部23の種類である。図5では、3つの欠陥モードを示している。すなわち、図5(a)の配線Xと配線Yとの短絡欠陥モード、図5(b)の配線X間の短絡欠陥モード、図5(c)の配線Y間の短絡欠陥モードである。
【0081】
ステップS10において、検査中のマザー基板1について、全ての液晶パネル2の欠陥検査が終了しているか否かが判断され、未検査の液晶パネル2が残っている場合、ステップS2に戻る。そして、次の検査対象となる液晶パネル2にプローブが移動されて、欠陥検査が繰り返される。
【0082】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、電圧を印加しない状態では欠陥部23とは言えない配線短絡の前の段階の‘短絡予備軍’である短絡予備部であっても、赤外線カメラを用いて検出することができる。
【0083】
ここで、本実施形態の作用効果を、比較例の問題点を指摘しつつ説明する。図6は、比較例の液晶パネルにおいて、上述した発熱工程を実施した場合の、当該液晶パネルに配された配線の電圧印加時間と温度上昇値との関係を示したグラフ図である。図6では、2秒間電圧印加したときに1℃以上温度上昇(発熱)する箇所を、欠陥部として検出する。すなわち、図6の欠陥Aを検出することができる。ここで、欠陥Aは、この電圧印加開始前より配線が短絡したいわゆる真欠陥である。ここで、図6には、欠陥Bの温度上昇が示されているが、欠陥Bはこの電圧印加開始前は、未だ短絡に至っていない欠陥予備軍(短絡予備部)である。この欠陥Bは、電圧印加開始後1.5秒後に配線短絡(真欠陥)に成長する欠陥である。すると、この欠陥Bが、電圧印加開始後1.5秒後に真欠陥に成長して、1.5秒以降から徐々に発熱する。しかしながら、欠陥Bは、電圧印加開始後2秒後となっても、閾値である温度上昇1℃に満たない。すなわち、比較例では、この欠陥Bは欠陥として位置特定工程においても位置が特定されない。このように欠陥Bが見逃されると、後工程で液晶パネルもしくは当該液晶パネルを搭載した液晶表示装置に悪影響を及ぼす。そこで、本実施形態では、発熱工程および位置特定工程の前の段階で、電圧を印加して、欠陥Bを真欠陥として成長させて、発熱工程の電圧印加開始時点で、図6の欠陥Aと同じく既に真欠陥となった状態にすることができる。このため、発熱工程および位置特定工程において、位置が特性され、上述のような修復処理を施すことができる。すなわち、本実施形態の配線欠陥検査方法によれば、正確な判定を実施することができるという効果を奏する。
【0084】
また、上記の構成によれば、前処理工程において、電圧を印加して短絡予備部を配線短絡部に成長させた後、電圧無印加状態を所定時間維持する。これにより、前処理工程において、電圧印加により温度上昇した短絡経路(短絡予備部から成長した配線短絡部を含む短絡経路)が冷めて、赤外線カメラによる検査の開始時点では、元から在る配線短絡部と、短絡予備部から成長した配線短絡部とで温度を統一することができる。そのため、元から在る配線短絡部と、短絡予備部から成長した配線短絡部とにおけるそれぞれの電圧印加による温度上昇を同一条件で開始することができる。よって、より一層正確な判定を実施することができる。
【0085】
このように本実施形態によれば、液晶パネルの配線または配線間に電流の向きを考慮しないで電圧を印加するという簡易な手法によって、検査不良を回避することができる。
【0086】
(変形例)
本実施形態では、図1に示すように、配線の抵抗値を測定する抵抗測定部8が設けられた構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、配線の予め測定された抵抗値を取り込むデータ取り込み部(不図示)を備えた構成として、制御部7は、上記データ取り込み部によって取り込まれた抵抗値に基づいて、上記発熱のための印加電圧の電圧値を制御する構成となっていてもよい。
【0087】
このように構成することによって、抵抗測定を別装置において実施するため、抵抗測定と赤外線カメラ撮像を並行して動作することができ、処理能力を向上させることが可能となる。
【0088】
〔実施形態2〕
本発明に係る他の実施形態について説明する。本実施形態においては、実施形態1における装置と同様の装置を用いる。上述の実施形態1では、ステップS7において、ステップS5において取得した抵抗値の平方根に比例する印加電圧V(ボルト)を液晶パネル2に印加する。これに対して、本実施形態では、ステップS5において取得した抵抗値に比例する印加電圧V(ボルト)を、液晶パネル2(図1の(b)および図2)に印加する。
【0089】
具体的には、本実施形態のステップS6では、印加電圧V(ボルト)を以下の式(4);
【0090】
【数4】

【0091】
と設定する。ここで、電流I(アンペア)は次の式(5);
【0092】
【数5】

【0093】
となる。つまり、印加電圧を適切に定めることにより、電流を一定にすることができる。
【0094】
ここで、基板に形成された配線の抵抗値Rは、次の式(6);
【0095】
【数6】

【0096】
であり、電気抵抗率ρおよび断面積Aは、配線の種類および場所によって決まっている定数である。したがって、単位長さ当たりの配線の抵抗値R/L=ρ/Aも定数となる。すなわち、配線の種類および場所ごとに付与した番号をiとすると、配線iの単位長さ当たりの抵抗値r(i)は、次の式(7);
【0097】
【数7】

【0098】
と表される。
【0099】
したがって、配線iの単位長さ当たりの配線iの発熱量は、上記式(2)、(5)および(7)より、次の式(8);
【0100】
【数8】

【0101】
となる。
【0102】
ここで、図7は、短絡経路を説明するための図であり、薄膜トランジスタ基板の電気的配線図の一例である。図7の薄膜トランジスタ基板は、ガラス基板上に走査線(配線)31〜35と信号線(配線)41〜45が格子状に配置され、各交点には図示しない薄膜トランジスタおよび透明画素電極が接続された、全体で5×5画素が形成された基板である。この薄膜トランジスタ基板と、図示しない共通電極基板とを平行に配置して、その間に液晶が封入したものが、液晶パネルである。また、薄膜トランジスタ基板には、図7に示すように、走査線の各引き出し線31p〜35pの先端部を共通線30により共通に接続して静電破壊を防止するようにしている。信号線についても同様である。図7に示す薄膜トランジスタ基板では、走査線33と信号線43との間に、短絡箇所50が形成されている。このような薄膜トランジスタ基板において、短絡経路が引き出し線33p→走査線33→短絡箇所50→信号線43→引き出し線43pのように分けられた場合を考えると、単位長さ当たりの走査線33および信号線43の発熱量を、それぞれ一定にすることができる。
【0103】
したがって、短絡箇所の電気抵抗の大小に関わらず、あらかじめ定数mを適切に定めておくことにより、赤外線画像により、走査線33および信号線43を安定して認識することができる。
【0104】
そして、この認識された配線部分を更に解析して、走査線33と信号線43とが短絡している部分を特定することにより、短絡箇所を特定することができる。もし、短絡箇所の抵抗値が高い場合、短絡箇所の発熱量が大きくなるため、赤外線画像から短絡箇所を容易に特定することができる。
【0105】
また、配線の抵抗値に基づいて電圧を定めるには、制御部7が上記式(1)ないしは式(4)を計算する処理をその都度実行すればよい。あるいは、抵抗値と電圧との関係を予めテーブルにして記憶しておき、制御部7がこのテーブルをその都度参照して、抵抗値から電圧を定めればよい。
【0106】
以上のように、本実施形態の配線欠陥検査方法および配線欠陥検査装置によっても、実施形態1と同様に、欠陥を赤外線画像により認識することができる。
【0107】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、液晶パネルなどの配線を有する半導体基板の配線状態の検査に用いることができる。
【符号の説明】
【0109】
1 マザー基板(半導体基板)
2 液晶パネル(半導体基板)
3 プローブ
4 プローブ移動手段
5a、5b 赤外線カメラ
6 カメラ移動手段
7 制御部(制御部)
8 抵抗測定部
9 電圧印加部
10 データ記憶部
11 アライメントステージ
12、16 光学カメラ
13a、13b、13c、13d、13e、13f ガイドレール
14a、14b、14d、14d マウント部
17 画素部
18 駆動回路部
19a、19b、19c、19d 端子部
21a、21b、21c、21d プローブ部
23 欠陥部(配線短絡部)
30、40a、40b 共通線
31、32、33、34、35 走査線
31p、32p、33p、34p、35p 走査線引出線
41、42、43、44、45 信号線
41p、42p、43p、44p、45p 信号線引出線
50 短絡箇所
100 配線欠陥検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられた配線に電圧を印加して配線短絡部を含む短絡経路を発熱させて、発熱した短絡経路を、赤外線カメラで撮影して、該撮影の情報に基づいて配線短絡部の位置を特定する判定工程を含み、
上記判定工程よりも先に、
上記配線に電圧を印加して、当該印加後には電圧無印加状態を所定時間維持する前処理工程を含む、ことを特徴とする配線欠陥検査方法。
【請求項2】
上記前処理工程と上記判定工程との間に、上記配線の抵抗値を測定することにより、配線短絡部の有無を判定する抵抗値測定工程を含み、
上記判定工程は、
上記抵抗値測定工程において上記配線短絡部を有すると判定された半導体基板の該配線短絡部を含む短絡経路に、該抵抗値測定工程で測定された抵抗値に基づいて特定された電圧を印加して、該短絡経路を発熱させる発熱工程と、
上記発熱工程において発熱した短絡経路を、赤外線カメラで撮影して、該撮影の情報に基づいて上記配線短絡部の位置を特定する位置特定工程と、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の配線欠陥検査方法。
【請求項3】
上記前処理工程において印加する電圧は、上記判定工程において印加する電圧以上である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の配線欠陥検査方法。
【請求項4】
上記前処理工程における電圧印加時間は、上記判定工程における電圧印加時間以上である、ことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の配線欠陥検査方法。
【請求項5】
半導体基板に設けられた配線に電圧を印加する電圧印加部と、
上記電圧印加部を制御する制御部と、
上記制御部による制御を受けた電圧印加によって発熱した半導体基板から赤外線を検出する赤外線カメラと、
を備えており、
上記制御部は、上記赤外線カメラによる上記赤外線の検出の前に、上記配線に電圧を印加して、当該印加後には電圧無印加状態を所定時間維持するように、上記電圧印加部を制御する、ことを特徴とする配線欠陥検査装置。
【請求項6】
上記配線の予め測定された抵抗値を取り込むデータ取り込み部を更に備えており、
上記制御部は、上記赤外線カメラによる上記赤外線の検出の際に、上記データ取り込み部によって取り込まれた抵抗値に基づいて、上記発熱のための印加電圧の電圧値を制御する構成となっている、ことを特徴とする請求項5に記載の配線欠陥検査装置。
【請求項7】
上記配線の抵抗値を測定する抵抗測定部を更に備えており、
上記制御部は、上記赤外線カメラによる上記赤外線の検出の際に、上記抵抗測定部によって測定された抵抗値に基づいて、上記発熱のための印加電圧の電圧値を制御する構成となっている、ことを特徴とする請求項5に記載の配線欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108854(P2013−108854A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254411(P2011−254411)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】