説明

アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置

【課題】確実に、内部空間(可動板が設けられている空間)の気密性を確保することができるアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置を提供すること
【解決手段】アクチュエータ1は、内部空間Sを画成する壁部を有するパッケージ2と、内部空間Sに回動可能に収容された可動板32と、可動板32の一方の面側に設けられた永久磁石41と、コイル(駆動用コイル42、挙動検知用コイル51)とを有し、前記コイルは、少なくとも一部がパッケージ2の壁部に埋設されており、永久磁石41と対向するように、または永久磁石41が内側に位置するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、レーザープリンタ等にて光走査により描画を行うための光スキャナとして、捩り振動子で構成されたアクチュエータを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、絶縁基板と、この絶縁基板に支持されたスキャナ本体とを有するアクチュエータが開示されている。スキャナ本体は、枠状の外側可動板と、この外側可動板の内側に設けられた内側可動板とを有している。また、外側可動板および内側可動板には、それぞれ、コイルが設けられており、各コイルに電力を供給することにより、外側可動板および内側可動がそれぞれ回動するように構成されている。すなわち、特許文献1のアクチュエータは、電磁駆動型のアクチュエータである。
【0003】
このような特許文献1のアクチュエータにおいては、絶縁基板のアクチュエータ側の面上に、ワイヤボンディングにより前記コイルと電気的に接続されたボンディングパッドを設けるとともに、反対側に装置外部に突出するようにコネクタピンを設け、これらを絶縁基板を貫通するように設けられた導体ポストを介して電気的に接続することにより、アクチュエータ外部に設けられた電源から、各コイルに電力を供給することができるように構成されている。
【0004】
ここで、このようなアクチュエータにおいては、光スキャナ本体を気密的に収容するのが通常である。これにより、機密空間内を減圧した状態や、アルゴン等の希ガスを充填した状態とすることにより、光スキャナ本体の安定した駆動を達成することができたり、光スキャナへの埃等の付着を防止することができたりする。そこで、特許文献1のアクチュエータにおいて、光スキャナ本体が設けられている空間を気密空間とするために、絶縁基板と枠状のヨークとで形成された凹部(光スキャナが設けられている空間)の開口を塞ぐようにガラス基板等の窓部を設けることが考えられる。
【0005】
しかしながら、特許文献1のアクチュエータにおいては、光スキャナ本体に設けられたコイルを装置外部の電源と電気的に接続するために、前述したようなコネクタピンや導体ポストを形成しているため、例えば、絶縁基板と導体ポストとの間に、アクチュエータの内外を連通する空隙が形成されやすく、光スキャナが設けられた空間の気密性を確保することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−322227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、確実に、内部空間(可動板が設けられている空間)の気密性を確保することができるアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクチュエータは、内部空間を画成する壁部を有するパッケージと、
前記内部空間に回動可能に収容された可動板と、
前記可動板の一方の面側に設けられた磁石と、
前記磁石と対向するように、または前記磁石が内側に位置するように設けられたコイルとを有し、
前記コイルは、少なくとも一部が前記パッケージの前記壁部に埋設されていることを特徴とする。
これにより、内部空間(可動板が設けられている空間)の気密性を確保することができるアクチュエータを提供することができる。
【0009】
本発明のアクチュエータでは、前記コイルは、前記内部空間に露出していないことが好ましい。
これにより、内部空間の気密性をより確実に確保することができる。
本発明のアクチュエータでは、前記コイルは、前記可動板を回動駆動させるための駆動用コイルであることが好ましい。
これにより、コイルを用いて、可動板を回動させることができる。
本発明のアクチュエータでは、前記コイルは、前記可動板の挙動を検知するための挙動検知用コイルであることが好ましい。
これにより、コイルを用いて、可動板の挙動を検知することができる。
【0010】
本発明のアクチュエータでは、前記コイルは、前記可動板を回動駆動させるための駆動用コイルと、前記可動板の挙動を検知するための挙動検知用コイルとを含んでいることが好ましい。
これにより、コイルを用いて、可動板を回動させることができるとともに、可動板の挙動を検知することができる。
【0011】
本発明のアクチュエータでは、前記挙動検知用コイルは、前記駆動用コイルよりも前記可動板側に設けられていることが好ましい。
これにより、駆動用コイルと挙動検知用コイルとを互いに絶縁した状態で、より接近させて配置することができる。そのため、パッケージ(アクチュエータ)の小型化を図ることができる。
【0012】
本発明のアクチュエータでは、前記可動板の厚さ方向おいて、前記駆動用コイルは、その最内周が、前記可動板に接近する方向に漸増するように設けられていることが好ましい。
これにより、駆動用コイルから発生する磁界を、効率的に、磁石に作用させることができる。そのため、可動板を円滑に回動させることができるとともに、アクチュエータの省電力駆動を行うことができる。
【0013】
本発明のアクチュエータでは、前記パッケージは、箱状の本体と、前記本体の開口を覆うように設けられた窓部とを有し、前記コイルは、前記本体に埋設されており、前記本体は、低温焼成セラミックスで構成されていることが好ましい。
これにより、簡単に、本体にコイルを埋設することができる。すなわち、アクチュエータの製造の簡易化を図ることができる。
【0014】
本発明の光スキャナは、内部空間を画成する壁部を有するパッケージと、
一方の面側に光反射性を有する光反射部を備え、前記内部空間に回動可能に収容された可動板と、
前記可動板の前記光反射部とは反対の面側に設けられた磁石と、
前記磁石と対向するように、または前記磁石が内側に位置するように設けられたコイルとを有し、
前記コイルは、少なくとも一部が前記パッケージの前記壁部に埋設されていることを特徴とする。
これにより、内部空間(可動板が設けられている空間)の気密性を確保することができる光スキャナを提供することができる。
【0015】
本発明の画像形成装置は、内部空間を画成する壁部を有するパッケージと、
一方の面側に光反射性を有する光反射部を備え、前記内部空間に回動可能に収容された可動板と、
前記可動板の前記光反射部とは反対の面側に設けられた磁石と、
前記磁石と対向するように、または前記磁石が内側に位置するように設けられたコイルとを有し、
前記コイルは、少なくとも一部が前記パッケージの前記壁部に埋設されている光スキャナを備えることを特徴とする。
これにより、内部空間(可動板が設けられている空間)の気密性を確保することができる光スキャナを備えた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のアクチュエータの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すアクチュエータが備える振動体の平面図である。
【図3】図1に示すアクチュエータの平面図である。
【図4】図1に示すアクチュエータが備える駆動用コイルが発生する磁界を示す断面図である。
【図5】図1に示すアクチュエータの駆動を説明する断面図である。
【図6】図1に示すアクチュエータの製造方法を説明する断面図である。
【図7】図1に示すアクチュエータの製造方法を説明する断面図である。
【図8】図1に示すアクチュエータの製造方法を説明する断面図である。
【図9】本発明のアクチュエータの第2実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明のアクチュエータの第3実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明のアクチュエータの第4実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明のアクチュエータの第5実施形態を示す断面図である。
【図13】本発明のアクチュエータの第6実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明の画像形成装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のアクチュエータの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明のアクチュエータの好適な実施形態を示す断面図、図2は、図1に示すアクチュエータが備える振動体の平面図、図3は、図1に示すアクチュエータの平面図、図4は、図1に示すアクチュエータが備える駆動用コイルが発生する磁界を示す断面図、図5は、図1に示すアクチュエータの駆動を説明する断面図、図6ないし図8は、それぞれ、図1に示すアクチュエータの製造方法を説明する断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1、図4〜図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図3および図4では、説明の便宜上、構成要件の一部の図示を省略している。
【0018】
図1に示すように、アクチュエータ1は、パッケージ2と、パッケージ2に収容された振動体3と、振動体3を駆動する駆動手段4と、振動体3の挙動を検知する挙動検知手段5とを有している。
図2に示すように、振動体3は、枠状の支持部31と、支持部31の内側に設けられた可動板32と、支持部31と可動板32とを連結する一対の連結部33、34とで構成されている。
【0019】
可動板32は、板状をなしている。また、可動板32の平面視形状は、円形である。なお、可動板32の平面視形状は、特に限定されず、例えば、楕円であってもよいし、矩形であってもよいし、異形であってもよい。
可動板32の上面(後述するパッケージ2の窓部22側の面)には、光反射性を有する光反射部321が形成されている。これにより、アクチュエータ1を後述するような光スキャナとして用いることができる。
【0020】
一方、可動板32の下面(後述する駆動用コイル42側の面)には、永久磁石(磁石)41が設けられている。このような可動板32は、一対の連結部33、34によって、支持部31に両持ち支持されている。
一対の連結部33、34は、それぞれ、長手形状(棒状)をなしており、弾性変形可能である。また、一対の連結部33、34は、可動板32を介して対向するように設けられている。このような一対の連結部33、34は、可動板32を支持部31に対して回動可能とするように、可動板32と支持部31とを連結している。また、一対の連結部33、34は、互いに同軸的に設けられており、この軸を(以下、「回動中心軸X」とも言う)を中心として、可動板32が、一対の連結部33、34を捩れ変形させつつ、支持部31に対して回動する。
【0021】
このような振動体3は、例えば、シリコンを主材料として構成されていて、支持部31、可動板32および各連結部33、34が一体的に形成されている。シリコンを主材料とすることで、優れた回動特性を実現できるとともに、優れた耐久性を発揮することができる。また、微細な処理(加工)が可能であり、アクチュエータ1の小型化を図ることができる。
このような振動体3は、パッケージ2に収容されている。
【0022】
図1に示すように、パッケージ2は、凹部211が形成された本体21と、凹部211を覆うように設けられた窓部22とを有している。
本体21に形成された凹部211は、前述した振動体3を収容する収容空間として機能する。図1に示すように、凹部211は、第1の凹部211aと、第1の凹部211aよりも開口面積の小さい第2の凹部211bとで構成されている。
【0023】
第1の凹部211aは、本体21の上面(窓部22側の面)に開口するように形成されており、第2の凹部211bは、第1の凹部211aの底面の中央部に開口するように形成されている。このように、大きさの違う2つの凹部211a、211bを形成することにより、凹部211の深さ方向の途中に、段差部211cを形成することができる。このような段差部211cに、振動体3の支持部31を固定することにより、凹部211内に、振動体3を、可動板32が回動可能な状態で収容することができる。
【0024】
なお、上述の観点からすれば、第1の凹部211aの平面視形状(開口形状)は、振動体3の支持部31の外形よりもサイズの大きい相似形をなしていることが好ましい。一方、第2の凹部211bの平面視形状は、振動体3の支持部31の内形とサイズが等しいか、サイズが若干大きい相似形をなしている、または可動板32および連結部33、34のの外形よりサイズが若干大きい相似形をなしていることが好ましい。これにより、本体21に、内側に振動体3を収容でき、かつ振動体3を確実に支持することのできる凹部211を簡単に形成することができる。
【0025】
このような本体21は、例えば、低温焼成セラミックス(LTCC)で構成されている。この本体21には、後述するように、駆動用コイル42および挙動検知用コイル51が埋設されているが、本体21を低温焼成セラミックスで構成することにより、簡単に、本体21に駆動用コイル42および挙動検知用コイル51を埋設することができる。すなわち、本体21を低温焼成セラミックスで構成することにより、アクチュエータ1の製造の簡易化を図ることができる。なお、本体21の製造方法(駆動用コイル42および挙動検知用コイル51の埋設方法)については、その一例を後に述べる。
【0026】
窓部22は、板状をなしており、本体21に形成された凹部211の開口を覆うように設けられている。このような窓部22は、例えば、テンパックスガラス、パイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)等のガラスで構成されており、実質的に無色透明である(すなわち、光透過性を有している)。これにより、アクチュエータ1の外部に設けられた光源(例えば、後述する光源装置91)から射出された光を、窓部22を介してパッケージ2内に入射させ、入射した光を振動体3の可動板32に設けられた光反射部321により反射し、反射した光を窓部22を介してパッケージの外部へ導くことができる。
【0027】
本体21と窓部22の接合は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、本体21が低温焼成セラミックスで構成され、窓部22がテンパックスガラス、パイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)等のガラスで構成されている場合には、図1に示すように、本体21と窓部22との間に、シリコンで構成された接合膜23を設け、本体21と接合膜23とを陽極接合するとともに、窓部22と接合膜23とを陽極接合することにより、本体21と窓部22とを接合膜23を介して接合することができる。なお、接合膜23は、例えば、本体21の上面に、スパッタ等を用いて形成することも可能で、この場合にはシリコン膜付き本体21と窓部22を陽極接合することができる。
このような接合方法によれば、簡単かつ確実に本体21と窓部22とを接合することができ、内部空間S(収容空間)を気密状態とすることができる。また、このような接合方法は、減圧雰囲気下や、希ガス雰囲気下でも簡単に行うことができるため、簡単に、パッケージ2の内部空間Sを減圧状態や、希ガス充填状態にすることができる。
【0028】
駆動手段4は、振動体3の可動板32を回動中心軸Xを中心に回動させるための手段である。このような駆動手段4は、永久磁石41と、駆動用コイル(コイル)42とを有している。
図1および図2に示すように、永久磁石41は、可動板32の下面(光反射部321と反対側の面)に設けられている。これにより、永久磁石41によって、光反射部321での光走査が阻害されてしまうのを防止することができる。永久磁石41は、例えば、接着剤を介して可動板32に固定されている。
【0029】
永久磁石41は、長手形状をなし、その長手方向に磁化している。このような永久磁石41は、回動中心軸Xに対して直交する方向に延在するように設けられている。すなわち回動中心軸Xの一方側がS極、他方側がN極となるように、永久磁石41が可動板32に設けられている。
このような永久磁石41としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0030】
駆動用コイル42は、永久磁石41の下側(直下)に、永久磁石41と対向するように設けられている。すなわち、駆動用コイル42は、通電により発生する磁界を永久磁石41に作用させ、可動板32を回動させることができるように設けられている。また、図3に示すように、駆動用コイル42は、非駆動状態(図1の状態)の可動板32の平面視(以下、単に「可動板32の平面視」とも言う)にて、永久磁石41を包含するように設けられている。このように駆動用コイル42を設けることにより、駆動用コイル42が発生する磁界を永久磁石41に効率的に作用させることができるため、可動板32を円滑に回動させることができる。
【0031】
図1に示すように、駆動用コイル42は、パッケージ2の本体21に埋設されている。言い換えれば、駆動用コイル42は、パッケージ2の内部空間Sを画成する壁部に埋設されている。また、駆動用コイル42は、内部空間Sに露出していない。このように、駆動用コイル42をパッケージ2の本体21に埋設することにより、次のような効果を発揮することができる。すなわち、従来では、駆動用コイルがパッケージの収容空間内に設けられていたため、パッケージ外にある電源と駆動用コイルとを電気的に接続するために、パッケージの本体に、パッケージの内外を連通する貫通孔(スルーホール)を形成するとともに、形成した貫通孔内に導体ポストを形成し、この導体ポストを介して前記電源と駆動用コイルとを電気的に接続する必要があった。
【0032】
しかしながら、このような方法では、導体ポストとパッケージの本体との間に、パッケージの内外を連通するような空隙が形成され易く、パッケージの内部空間の気密性を確保することができないという問題がある。
これに対して、本実施形態のアクチュエータ1では、駆動用コイル42が、パッケージ2の本体21に埋設されているため(すなわち、内部空間Sに設けられていないため)、従来のようなパッケージ2の内外を連通する貫通孔を形成する必要ない。そのため、パッケージ2の内部空間Sの気密性を確実に確保することができる。
【0033】
また、駆動用コイル42をパッケージ2の本体21に埋設しているため、後述するようなアクチュエータ1の駆動の際の駆動用コイル42への通電によって発生する熱が、振動体3に伝わることを効果的に抑制することができる。これにより、振動体3の熱膨張が抑制されるため、アクチュエータ1は、長時間にわたって、所望の振動特性を発揮することができる。
【0034】
なお、駆動用コイル42の両端は、例えば、本体21の底面212からパッケージ2の外部に露出している(図示せず)。パッケージ2の外部には、駆動用コイル42に電力を供給する図示しない電源が設けられており、駆動用コイル42は、前記露出した部分(両端部)を介して、前記電源と電気的に接続されている。なお、前記電源として、アクチュエータ1が搭載される装置が有する電源を用いてもよい。
【0035】
このような駆動手段4は、次のようにして可動板32を回動させる。
まず、前記電源から、駆動用コイル42に交流電力を供給する。これにより、図4(a)に示すような、駆動用コイル42が上側(永久磁石41側)がN極、下側(永久磁石41と反対側)がS極となる第1の磁界を発生する状態と、図4(b)に示すような、駆動用コイル42が上側がS極、下側がN極となる第2の磁界を発生する状態とが、交互にかつ周期的に発生する。
【0036】
第1の磁界では、永久磁石41側がS極であるため、図5(a)に示すように、永久磁石41のN極側が駆動用コイル42に引きつけられ、反対にS極側が駆動用コイル42から遠ざかるように、可動板32が回動中心軸Xを中心に時計回りに回動する(第1の状態)。
反対に、第2の磁界では、永久磁石41側がN極であるため、図5(b)に示すように、永久磁石41のS極側が駆動用コイル42に引きつけられ、反対にN極側が駆動用コイル42から遠ざかるように、可動板32が回動中心軸Xを中心に反時計回りに回動する(第2の状態)。
このような第1の状態および第2の状態とを交互に繰り返すことにより、可動板32が回動中心軸Xを中心に回動する。
【0037】
挙動検知手段5は、振動体3の可動板32の挙動を検知する手段である。このような挙動検知手段5は、永久磁石41と、挙動検知用コイル51と、図示しない誘起電力計測部(検流計)とを有している。このような挙動検知手段5は、永久磁石41の作用によって挙動検知用コイル51が発生する誘起電力の周期的な変化に基づいて、可動板32の挙動を検知するように構成されている。
【0038】
挙動検知用コイル51は、駆動用コイル42の上側に、駆動用コイル42と絶縁された状態で設けられている。このように、挙動検知用コイル51を、駆動用コイル42の上側に設けることにより、挙動検知用コイル51と永久磁石41との離間距離を短くすることができる。そのため、挙動検知用コイルが発生する誘起電力を大きくすることができ、可動板32の挙動を、正確に検知することができる。
【0039】
また、挙動検知用コイル51は、駆動用コイル42と同軸的に設けられている。これにより、駆動用コイル42と挙動検知用コイル51とを互いに絶縁した状態で、より接近させて配置することができる。そのため、パッケージ2(アクチュエータ1)の小型化を図ることができる。
また、挙動検知用コイル51は、その内側に永久磁石41を位置させるように設けられている。さらには、非駆動状態の可動板32の厚さ方向(すなわち、図1中の上下方向)において、挙動検知用コイル51は、その中心が永久磁石41の中心と一致するように設けられている。これにより、後述するように、可動板32の回動によって挙動検知用コイル51が発生する誘起電力がより大きくなるため、可動板32の挙動をより正確に検知することができる。
【0040】
このような挙動検知用コイル51は、パッケージ2の本体21に埋設されている。言い換えれば、挙動検知用コイル51は、パッケージ2の内部空間Sを画成する壁部に埋設されている。また、挙動検知コイル51は、内部空間Sに露出していない。このように、挙動検知用コイル51をパッケージ2の本体21に埋設することにより、前述した駆動用コイル42を本体21に埋設するのと同様の効果を発揮することができる。すなわち、アクチュエータ1では、挙動検知用コイル51が、パッケージ2の本体21に埋設されているため(すなわち、内部空間Sに設けられていないため)、従来のようなパッケージ2の内外を連通する貫通孔を形成する必要ない。そのため、パッケージ2の内部空間Sの気密性を確実に確保することができる。
挙動検知用コイル51の両端は、例えば、本体21の底面212からパッケージ2の外部に露出している(図示せず)。パッケージ2の外部には、前記誘起電力計測部が設けられており、挙動検知用コイル51は、前記露出した部分(両端部)を介して、前記誘起電力計測部と電気的に接続されている。
【0041】
このような挙動検知手段5は、次のようにして可動板32の挙動を検知する。
挙動検知用コイル51は、永久磁石41の磁界によって誘起電力を発生する。挙動検知用コイル51が発生する誘起電力の値は、可動板32の回動(それに伴う永久磁石41の回動)に伴って周期的に変化するため、この周期的に変化する誘起電力を前記誘起電力計測部により計測し、計測された誘起電力の値(大きさ)に基づいて可動板32の挙動検知を行う。これにより、正確に、可動板32の挙動を検知することができる。
【0042】
特に、実施形態では、アクチュエータ1の非駆動状態にて、永久磁石41が、挙動検知用コイル51の内側に位置するように設けられている(非駆動状態の可動板32の厚さ方向において、永久磁石41が、その中心が挙動検知用コイル51の中心と一致するように設けられている)ため、可動板32の回動速度が最も速くなるときに、永久磁石41が挙動検知用コイル51に最も接近する。そのため、挙動検知用コイル51が発生する誘起電力がより大きくなる。これにより、より正確に、可動板32の挙動を検知することができる。
【0043】
以上のようなアクチュエータ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
図6ないし図8は、アクチュエータ1の製造法方を説明するための図である。なお、以下では、説明の便宜上、図6ないし図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図6は、図3中A−A線断面図に対応する図である。
【0044】
[振動体3の形成工程]
まず、図6(a)に示すように、振動体3を形成するためのシリコン基板100を用意する。そして、図6(b)に示すように、シリコン基板100の上面に、支持部31、可動板32および一対の連結部33、34の平面視形状に対応する形状をなすレジストマスクMを形成する。
【0045】
次いで、レジストマスクMを介して、シリコン基板100をエッチングする。その後、レジストマスクMを除去する。これにより、図6(c)に示すように、支持部31、可動板32および一対の連結部33、34が一体的に形成されたシリコン基板100が得られる。
なお、エッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
【0046】
次に、図6(d)に示すように、可動板32の上面に、金属膜を形成し、光反射部321を形成する。これにより、振動体3が得られる。金属膜の形成方法としては、特に限定されず、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。
次に、図6(e)に示すように、可動板32の下面に、接着剤を介して永久磁石41を固定する。なお、可動板32の下面に、接着剤を介して硬磁性体を固定し、その後、この硬磁性体を着磁することにより、永久磁石41としてもよい。
【0047】
[パッケージ2の形成工程]
パッケージ2の窓部22は、テンパックスガラス、パイレックスガラス(「パイレックス」は登録商標)等のガラスで構成された板状の部材を所定のサイズに加工することにより得られる。
一方、パッケージ2の本体21は、次のようにして得られる。
本体21は、低温焼成セラミック多層基板を製造するのと同様の方法で製造することができる。すなわち、本体21は、複数のグリーンシート61を形成する第1工程と、各グリーンシート61に導電パターンPを形成する第2工程と、導電パターンPが形成された複数のグリーンシート61を積層して積層体6を形成する第3工程と、積層体6を焼成する第4工程とを、順に実行することにより製造することができる。
【0048】
(第1工程)
まず、ガラスセラミック粉末やバインダ等を含むガラスセラミック組成物を分散媒でスラリー化し、これをキャリアフィルムの上に塗布することにより塗布膜を形成する。次いで、この塗布膜を乾燥することによって、グリーンシート61が得られる。図7(a)に示すように、本工程では、このようなグリーンシート61を複数枚、用意する。なお、分散媒としては、例えば界面活性剤やシランカップリング剤等を用いることができ、ガラスセラミック粉末を均一に分散させるものであれば良い。また、キャリアフィルムの上に塗布膜を形成する方法としては、特に限定されず、ドクターブレード法やリバースロールコータ法等の各種シート成形法を用いることができる。
【0049】
ガラスセラミック粉末としては、例えば、アルミナやフォルステライト等のセラミック粉末にホウ珪酸系ガラスを混合したガラス複合セラミックを用いることができる。このようなガラスセラミック粉末の平均粒径としては、特に限定されないが、0.1μm以上、5μm以下程度であることが好ましい。なお、ガラスセラミック粉末としては、ZnO−MgO−Al−SiO系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO−Al−SiO系セラミック粉末やAl−CaO−SiO−MgO−B系セラミック粉末等を用いた非ガラス系セラミックを用いても良い。
【0050】
また、バインダとしては、ガラスセラミック粉末の結合剤として機能し、第4工程で容易に除去できる有機高分子が好適に用いられる。このようなバインダとしては、例えばブチラール系、アクリル系、セルロース系等のバインダ樹脂を用いることができる。アクリル系のバインダ樹脂としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物の単独重合体を用いることができる。なお、バインダは、例えばアジピン酸エステル系可塑剤、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)フタル酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤等の可塑剤を含有しても良い。
【0051】
ここで、図7(a)に示すように、上述の方法により得られた複数のグリーンシート61には、形状の異なる3種類のグリーンシート61a、61b、61cが含まれている。3種類のグリーンシート61a、61b、61cは、外形(平面視形状)が互いに同じであるが、以下の点で相違する。
すなわち、グリーンシート61aには、その中央部に開口(孔)611aが貫通形成されており、グリーンシート61bには、その中央部に開口611aよりも開口面積の小さい開口611bが貫通形成されており、グリーンシート61cには、上記のような開孔は形成されていない。グリーンシート61aに形成された開口611aは、本体21の第1の凹部211aを形成するための開口であり、グリーンシート61bに形成された開口611bは、本体21の第2の凹部211bを形成するための開口である。
このような形状の異なる3種類のグリーンシート61a、61b、61cを用意し、これらグリーンシート61a、61b、61cをこの順で上側から積層することにより、この積層体の形状を本体21の形状とすることができる。
【0052】
(第2工程)
次いで、グリーンシート61に、駆動用コイル42および挙動検知用コイル51となる導電パターンPおよび導体ポストを形成する。
具体的には、第1工程で得られた複数のグリーンシート61のうち、必要なグリーンシート61に、打ち抜き加工やレーザー加工によって、数十μm以上数百μm以下程度の孔径からなる図示しないビアホール(円形孔、円錐孔)を貫通形成する。次いで、グリーンシートに形成された前記ビアホールの内部に、スクリーン印刷等の各種印刷法によって、銀、金、銅等の金属粉末の導体性ペーストを充填して導体ポストを形成するとともに、グリーンシート61の表面に導体ペーストを塗布し導体層を形成する。
【0053】
次いで、導体層の表面にフォトレジストを塗布し、所定パターンに露光・現像することにより、導体層の表面にレジスト膜を形成する。次いで、このレジスト膜を介して導体層をエッチングし、レジスト膜を除去することにより、図7(b)に示すように、表面に導電パターンPが形成されたグリーンシート61が得られる。前述したように、グリーンシート61に形成された導体ポストや導電パターンは、駆動用コイル42または挙動検知用コイル51の一部を構成するものであるため、駆動用コイル42および挙動検知用コイル51の配線のパターンに対応して、必要なグリーンシート61に、導体ポストや導電パターンを形成する。
【0054】
(第3工程)
本工程では、複数のグリーンシート61を積層し、積層体を形成する。
具体的には、複数のグリーンシート61を、図7(b)に図示されている順番で、順に積層する。すなわち、図7(b)中、最も下側に位置するグリーンシート(1層目のグリーンシート)61を図示しない剛性部材によって位置決めした状態で、そのすぐ上側に位置するグリーンシート(2層目のグリーンシート)61を、1層目のグリーンシート61上に積層する。以後同様に、複数のグリーンシート61を順に積層し、導電パターンPを内蔵するグリーンシート61の積層体6が形成される。なお、複数のグリーンシート61を積層する際に、加熱および加圧を行うことにより、より一体化された積層体6を得ることができる。
【0055】
(第4工程)
次いで、積層体6を高温焼成炉内に入れて、焼結させる。焼成温度は、例えば800℃〜900℃であって、グリーンシート61の組成に応じて適宜変更される。導電パターンPとしてCuを用いる場合には、酸化防止のため還元雰囲気中で焼成するのが好ましい。銀、金等を用いる場合には大気中で焼成しても良い。
【0056】
これにより、図8(a)に示すように、低温焼成セラミック多層基板で構成され、駆動用コイル42および挙動検知用コイル51が埋設された本体21が得られる。このような製法によれば、駆動用コイル42および挙動検知用コイル51が埋設された本体21を簡単に製造することができる。
本体21が得られた後、本体21の上面に、スパッタ等によりシリコンで構成された接合膜23を形成する。
【0057】
[パッケージ2への振動体3の収容工程]
次いで、振動体3をパッケージ2の本体21に固定する。具体的には、図8(b)に示すように、振動体3の支持部31を、パッケージ2の本体の段差部211cに固定(接合)する。支持部31の段差部211cへの固定は、例えば、接着剤を用いて行ってもよいし、陽極接合により行ってもよい。
【0058】
次いで、本体21の開口を覆うように、窓部22を本体21の上面に被せ、接合膜23と本体21、および接合膜23と窓部22を、それぞれ、陽極接合により接合する。これにより、本体21と窓部22とが接合され、パッケージ2の内部に、気密性を有する内部空間Sが形成される。
なお、本工程を、例えば、減圧下で行うことにより、内部空間Sを減圧状態とすることができ、また、希ガス雰囲気下で行うことにより、内部空間Sを希ガス充填状態とすることができる。どのような環境下(雰囲気下)で本工程を行うかは、アクチュエータ1に求める特性に応じて、適宜選択することができる。
以上の工程により、図8(c)に示すように、アクチュエータ1が得られる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第2実施形態について説明する。
図9は、本発明のアクチュエータの第2実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図9中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0060】
以下、第2実施形態のアクチュエータ1について、前述した実施形態のアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第2実施形態にかかるアクチュエータ1は、挙動検知手段5が省略されている以外は、第1実施形態のアクチュエータ1とほぼ同様である。なお、図9にて、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0061】
すなわち、本実施形態のアクチュエータ1では、パッケージ2の本体21には、駆動用コイル42のみが埋設されている。また、駆動用コイル42は、アクチュエータ1が非駆動状態の時に、その内側に永久磁石41の少なくとも一部(本実施形態では、永久磁石41の下側の部分)が位置するように設けられている。なお、永久磁石41の全部が駆動用コイル42の内側に位置するように、駆動用コイル42を設けることが、さらに好ましいい。このように、駆動用コイル42の内側に永久磁石41の一部または全部が位置するように、駆動用コイル42を設けることにより、通電により駆動用コイル42が発生する磁界を、永久磁石41により効率的に作用させることができる。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第3実施形態について説明する。
図10は、本発明のアクチュエータの第3実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態のアクチュエータ1について、前述した実施形態のアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第3実施形態にかかるアクチュエータ1は、第2の凹部211bの形状および駆動用コイル42の形状が異なる以外は、前述した第2実施形態のアクチュエータ1とほぼ同様である。なお、図10にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0063】
図10に示すように、駆動用コイル42は、紙面上下方向(可動板32の厚さ方向)において、永久磁石41に接近するにつれてコイルの最内周(内部空間の横断面積)が漸増するようなテーパ状をなしている。さらには、可動板32の中心と交わり、回動中心軸Xと直交する面における断面(すなわち、図10に示す断面)において、駆動用コイル42は、その最内周が、可動板32の回動の際に、可動板32の端が描く円弧状の軌跡Rに沿うように形成されている。言い換えれば、駆動用コイル42は、その最内周が、回動中心軸Xを中心とし、可動板32の半径よりも若干大きい半径を有する円弧上に沿うように形成されている。
【0064】
駆動用コイル42をこのような形状とすることにより、駆動用コイル42が発生する磁界を可動板32に設けられた永久磁石41に効率的に作用させることができる。より具体的には、永久磁石41の姿勢は、可動板32の回動に伴って変化するが、駆動用コイル42を上述のような形状とすることにより、永久磁石41の姿勢に関係なく(可動板32の回動中絶えず)、駆動用コイル42から発生する磁界を、効率的に、永久磁石41に作用させることができる。そのため、可動板32を円滑に回動させることができるとともに、アクチュエータ1の省電力駆動を行うことができる。
【0065】
図10に示すように、第2の凹部211bは、その開口から底部(底面)に向けて、横断面積が漸増するようなテーパ状をなしている。また、可動板32の中心と交わり、回動中心軸Xと直交する面における断面(すなわち、図10に示す断面)において、第2の凹部211bは、その側面が、可動板32の回動の際に、可動板32の端が描く円弧状の軌跡Rに沿うように形成されている。すなわち、第2の凹部211bは、駆動用コイル42の形状に対応する形状をなしている。このように、第2の凹部211bの形状を駆動用コイル42の形状と対応させることにより、本体21に、駆動用コイル42を埋設するスペースを十分に確保することができる。すなわち、アクチュエータ1の大型化を防止しつつ、確実に、駆動用コイル42をパッケージ2の本体21に埋設することができる。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0066】
<第4実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第4実施形態について説明する。
図11は、本発明のアクチュエータの第4実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第4実施形態のアクチュエータ1について、前述した実施形態のアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第4実施形態にかかるアクチュエータ1は、パッケージ2の本体21に、軟磁性体43、44が埋設されている以外は、前述した第2実施形態のアクチュエータとほぼ同様である。なお、図11にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0067】
図11に示すように、本実施形態のアクチュエータ1は、パッケージ2の本体21に埋設された一対の軟磁性体43、44を有している。一対の軟磁性体43、44は、通電により駆動用コイル42が発生する磁力線(磁束)を導く機能を有している。このような軟磁性体43、44を設けることにより、駆動用コイル42が発生する磁界(図4に示すような磁界)の強度を強くすることができるため、可動板32を円滑に回動させることができるとともに、アクチュエータ1の省電力駆動を行うことができる。
【0068】
特に、本実施形態では、一対の軟磁性体43、44が、本体21に埋設されているため、本体21のスペースを有効活用することができるとともに、一対の軟磁性体43、44を駆動用コイル42により接近させて設けることができる。そのため、アクチュエータ1の小型化を図りつつ、通電により駆動用コイル42が発生する磁界(図4に示すような磁界)の強度をより強くすることができる。
【0069】
軟磁性体43は、板状をなしており、駆動用コイル42の下側に設けられている。一方、軟磁性体44は、第2の凹部211bの周囲を囲むような枠状をなし、駆動用コイル42の上側に設けられている。すなわち、一対の軟磁性体43、44は、駆動用コイル42を介して互いに対向するように設けられている。このように、一対の軟磁性体43、44を、駆動用コイル42を介して互いに対向するように設けることにより、通電により駆動用コイル42が発生する磁力線(磁束)をより効率的に導くことができ、駆動用コイル42が発生する磁界(図4に示すような磁界)の強度をより強くすることができる。そのため、可動板32を円滑に回動させることができるとともに、アクチュエータ1の省電力駆動を行うことができる。
【0070】
軟磁性体43、44は、それぞれ、軟磁性材料を主材料として構成されている。このような軟磁性材料としては、特に限定されず、Fe、各種Fe合金(ケイ素鉄、パーマロイ、アモルファス、センダスト)などが挙げられる。
このような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0071】
<第5実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第5実施形態について説明する。
図12は、本発明のアクチュエータの第5実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第5実施形態のアクチュエータ1について、前述した実施形態のアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第5実施形態にかかるアクチュエータ1は、パッケージ2の内部空間Sに、軟磁性体45が埋設されている以外は、前述した第2実施形態のアクチュエータとほぼ同様である。なお、図12にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0072】
図12に示すように、本実施形態のアクチュエータ1は、パッケージ2の内部空間Sに設けられた軟磁性体45を有している。軟磁性体45は、通電により駆動用コイル42が発生する磁力を高める磁心としての機能を有している。
軟磁性体45は、板状をなしており、第2の凹部211bの底面に設けられている。また、軟磁性体45は、駆動用コイル42の内側に位置してもいる。このような軟磁性体45を設けることにより、通電により駆動用コイル42が発生する磁力線(磁束)をより効率的に導くことができ、駆動用コイル42が発生する磁界(図4に示すような磁界)の強度をより強くすることができる。そのため、可動板32を円滑に回動させることができるとともに、アクチュエータ1の省電力駆動を行うことができる。
また、軟磁性体45をパッケージ2の内部空間Sに設けることにより、前述した第4実施形態のように、軟磁性体45をパッケージ2の本体21に埋設する必要がなく、アクチュエータ1の製造を簡易化することもできる。
【0073】
軟磁性体45は、軟磁性材料を主材料として構成されている。このような軟磁性材料としては、特に限定されず、Fe、各種Fe合金(ケイ素鉄、パーマロイ、アモルファス、センダスト)などが挙げられる。
このような第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0074】
<第6実施形態>
次に、本発明のアクチュエータの第6実施形態について説明する。
図13は、本発明のアクチュエータの第6実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図13中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第5実施形態のアクチュエータ1について、前述した実施形態のアクチュエータとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第5実施形態にかかるアクチュエータ1は、駆動用コイル42の配置が異なる以外は、前述した第1実施形態のアクチュエータとほぼ同様である。なお、図13にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0075】
図13に示すように、本実施形態のアクチュエータ1では、駆動用コイル42が、パッケージ2の外側に設けられている。具体的には、駆動用コイル42は、パッケージ2の本体21の底面212に設けられている。
このような第6実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0076】
以上説明したようなアクチュエータは、可動板に光反射部を備えているため、例えば、加速度センサ、角速度センサなどのMEMS応用センサや、レーザープリンタ、バーコードリーダー、走査型共焦点レーザー顕微鏡、イメージング用ディスプレイ等の画像形成装置に備える光スキャナ、光スイッチ、光アッテネータなどの光学デバイスに用いることができる。
【0077】
本発明の光スキャナは、可動板に光反射部を備えている以外は、本発明のアクチュエータと同様の構成である。なお、本発明の光スキャナの実施形態としては、前述した実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。このような光スキャナは、例えば、プロジェクタ、レーザープリンタ、イメージング用ディスプレイ、バーコードリーダー、走査型共焦点顕微鏡などの画像形成装置に好適に適用することができる。その結果、優れた描画特性を有する画像形成装置を提供することができる。
【0078】
具体的に、図14に示すようなプロジェクタ9について説明する。なお、説明の便宜上、スクリーンSCの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。
プロジェクタ9は、レーザーなどの光を照出する光源装置91と、クロスダイクロイックプリズム92と、1対の本発明の光スキャナ93、94(例えば、前述した各実施形態のアクチュエータ1と同様の構成の光スキャナ)と、固定ミラー95とを有している。
【0079】
光源装置91は、赤色光を照出する赤色光源装置911と、青色光を照出する青色光源装置912と、緑色光を照出する緑色光源装置913とを備えている。
クロスダイクロイックプリズム92は、4つの直角プリズムを貼り合わせて構成され、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
【0080】
このようなプロジェクタ9は、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから、図示しないホストコンピュータからの画像情報に基づいて照出された光をクロスダイクロイックプリズム92で合成し、この合成された光が、光スキャナ93、94によって走査され、さらに固定ミラー95によって反射され、スクリーンSC上でカラー画像を形成するように構成されている。
【0081】
ここで、光スキャナ93、94の光走査について具体的に説明する。
まず、クロスダイクロイックプリズム92で合成された光は、光スキャナ93によって横方向に走査される(主走査)。そして、この横方向に走査された光は、光スキャナ94によってさらに縦方向に走査される(副走査)。これにより、2次元カラー画像をスクリーンSC上に形成することができる。このような光スキャナ93、94として本発明の光スキャナを用いることで、極めて優れた描画特性を発揮することができる。
ただし、プロジェクタ9としては、光スキャナにより光を走査し、対象物に画像を形成するように構成されていれば、これに限定されず、例えば、固定ミラー95を省略してもよい。
【0082】
以上、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、例えば、本発明のアクチュエータ、光スキャナおよび画像形成装置では、前述した実施形態を、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1……アクチュエータ 2……パッケージ 21……本体 211……凹部 211a……第1の凹部 211b……第2の凹部 211c……段差部 212……底面 22……窓部 23……接合膜 3……振動体 31……支持部 32……可動板 321……光反射部 33、34……連結部 4……駆動手段 41……永久磁石 42……駆動用コイル 43、44、45……軟磁性体 5……挙動検知手段 51……挙動検知用コイル 6……積層体 61、61a、61b、61c……グリーンシート 611a、611b……開口 9……プロジェクタ 91……光源装置 911……赤色光源装置 912……青色光源装置 913……緑色光源装置 92……クロスダイクロイックプリズム 93、94……光スキャナ 95……固定ミラー 100……シリコン基板 M……レジストマスク S……内部空間 SC……スクリーン P……導電パターン R……軌跡 X……回動中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を画成する壁部を有するパッケージと、
前記内部空間に回動可能に収容された可動板と、
前記可動板の一方の面側に設けられた磁石と、
前記磁石と対向するように、または前記磁石が内側に位置するように設けられたコイルとを有し、
前記コイルは、少なくとも一部が前記パッケージの前記壁部に埋設されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記コイルは、前記内部空間に露出していない請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルは、前記可動板を回動駆動させるための駆動用コイルである請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記コイルは、前記可動板の挙動を検知するための挙動検知用コイルである請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記コイルは、前記可動板を回動駆動させるための駆動用コイルと、前記可動板の挙動を検知するための挙動検知用コイルとを含んでいる請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記挙動検知用コイルは、前記駆動用コイルよりも前記可動板側に設けられている請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記可動板の厚さ方向おいて、前記駆動用コイルは、その最内周が、前記可動板に接近する方向に漸増するように設けられている請求項3、5または6に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記パッケージは、箱状の本体と、前記本体の開口を覆うように設けられた窓部とを有し、前記コイルは、前記本体に埋設されており、前記本体は、低温焼成セラミックスで構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
内部空間を画成する壁部を有するパッケージと、
一方の面側に光反射性を有する光反射部を備え、前記内部空間に回動可能に収容された可動板と、
前記可動板の前記光反射部とは反対の面側に設けられた磁石と、
前記磁石と対向するように、または前記磁石が内側に位置するように設けられたコイルとを有し、
前記コイルは、少なくとも一部が前記パッケージの前記壁部に埋設されていることを特徴とする光スキャナ。
【請求項10】
内部空間を画成する壁部を有するパッケージと、
一方の面側に光反射性を有する光反射部を備え、前記内部空間に回動可能に収容された可動板と、
前記可動板の前記光反射部とは反対の面側に設けられた磁石と、
前記磁石と対向するように、または前記磁石が内側に位置するように設けられたコイルとを有し、
前記コイルは、少なくとも一部が前記パッケージの前記壁部に埋設されている光スキャナを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−41994(P2011−41994A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190250(P2009−190250)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】