説明

アルツハイマー病の治療用のベンジルエーテル及びベンジルアミノβ−セクレターゼ阻害薬

本発明は、β−セクレターゼ酵素の阻害薬であり、β−セクレターゼ酵素が含まれる疾患、例えば、アルツハイマー病の治療で有用である化合物に指向している。本発明は、また、これらの化合物を含有する医薬組成物並びにβ−セクレターゼ酵素が含まれるこのような疾患の治療に於ける、これらの化合物及び組成物の使用に指向している。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
アルツハイマー病は、細胞外プラーク及び細胞内神経原線維のもつれの形態での、脳内のアミロイドの異常沈着によって特徴付けられる。アミロイド蓄積の速度は、形成、凝集及び脳からの脱出の速度の組合せである。一般に、アミロイドプラークの主構成成分は、より大きいサイズの前駆体タンパク質のタンパク質分解性生物である、4kDアミロイドタンパク質(βA4、また、Aβ、β−タンパク質及びβAPとして参照される。)であることが受け入れられている。アミロイド前駆体タンパク質(APP又はAβPP)は、大きい外部ドメイン、膜貫通領域及び短い細胞質尾を有する受容体様構造を有している。Aβドメインは、APPの細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインの両方を包含する。したがって、この放出は、このNH−及びCOOH−末端を生じる二つの別個のタンパク質分解事象の存在を暗示する。膜からAPPを放出するものとAPP(APP)の可溶性COOH−切断形を発生するものとの少なくとも二つの分泌機構が存在する。膜からAPP及びこのフラグメントを放出するプロテアーゼは、「セクレターゼ(secretase)」と命名されている。大部分のAPPは、Aβタンパク質内で開裂して、α−APPを放出し、無傷のAβの放出を妨げる、推定上のα−セクレターゼによって放出される。APPの小部分は、APPのNH−末端付近で開裂し、Aβドメイン全体を含有するCOOH−末端フラグメント(CTF)を産生するβ−セクレターゼ(「β−セクレターゼ」)によって放出される。
【0002】
従って、β−セクレターゼ又はβ−部位アミロイド前駆体タンパク質開裂酵素(「BACE」)の活性は、APPの異常な開裂、Aβの産生及びアルツハイマー病の特徴である脳内のβアミロイドプラークの蓄積に至る(R.N.Rosenberg、Arch.Neurol.、第59巻、2002年9月、第1367−1368頁;H.Fukumotoら、Arch.Neurol.、第59巻、2002年9月、第1381−1389頁;J.T.Huseら、J.Biol.Chem.、第277巻、第18号、2002年5月3日発行、第16278−16284頁;K.C.Chen及びW.J.Howe、Biochem.Biophys.Res.Comm.、第292巻、第702−708頁、2002年参照)。従って、β−セクレターゼ又はBACEを阻害することができる治療薬は、アルツハイマー病の治療のために有用であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の化合物は、β−セクレターゼ又はBACEの活性を阻害し、かくして不溶性Aβの形成を防止し、Aβの産生を阻止することにより、アルツハイマー病を治療するために有用である。
【0004】
本発明は、β−セクレターゼ酵素の阻害薬であり、β−セクレターゼ酵素が含まれる疾患、例えば、アルツハイマー病の治療で有用である化合物に指向している。本発明は、また、これらの化合物を含有する医薬組成物並びにβ−セクレターゼ酵素が含まれるこのような疾患の治療に於ける、これらの化合物及び組成物の使用に指向している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I):
【0006】
【化15】

[式中、XはO又はNHであり、
YはCH又はNであり、
は、
(1)フェニル及びナフチルからなる群から選択されたアリール又は
(2)ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピラジニル、ジヒドロピラジニル、ピラゾリル、ジヒドロピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ジヒドロピリジニル、ピリミジニル、ジヒドロピリミジニル、ピロリル、ジヒドロピロリル、テトラゾリル、ジヒドロテトラゾリル、フラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、イミダゾリル、ジヒドロイミダゾリル、トリアジニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、チアゾリル、チエニル、ジヒドロチエニル、チオフェニル、トリアゾリル、ジヒドロトリアゾリル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロチアジアゾリル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル及びベンゾオキサゾリルからなる群から選択されたヘテロシクリルであり、
ここで、該アリール又はヘテロシクリルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−C2−6アルケニル、
(d)−C2−6アルキニル、
(e)−OH、
(f)−CN若しくは
(g)−O−C1−6アルキル
で置換されており、
は、
(1)R−S(O)N(R)−(式中、RはC1−6アルキルであり、ここで該アルキルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−OH、
(d)−CN若しくは
(e)−O−C1−6アルキル
で置換されており、および
は、
(a)水素及び
(b)−C1−6アルキル
からなる群から選択され、ここで該アルキルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−OH、
(iv)−CN若しくは
(v)−O−C1−6アルキル
で置換されている。);
【0007】
【化16】

からなる群から選択され、
は、
【0008】
【化17】

(式中、Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC2−6アルキニルである。)
からなる群から選択され、
6a、R6b及びR6cは、
(1)水素、
(2)ハロ、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−C2−6アルケニル、
(5)−C2−6アルキニル、
(6)−OH、
(7)−CN及び
(8)−O−C1−6アルキル
からなる群から独立に選択され、
及びR10は、
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C2−6アルケニル及び
(4)−C2−6アルキニル、
からなる群から独立に選択され又はR及びR10は、これらが結合している窒素原子と一緒に結合して、ピロリジン環(但し、この環は、
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル、
(d)(CH−フェニル及び
(e)(CH−フラニル
で場合により置換されており、ここで該アルキル、フェニル及びフラニルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
i)ハロ、
ii)−C1−6アルキル、
iii)−OH、
iv)−CN若しくは
v)−O−C1−6アルキル
で置換されている。)
を形成し、
11は、
(1)−CH−、
(2)−O−及び
(3)−NH−
からなる群から選択され、但し、R11が−CH−であるとき、点線は結合を形成し、およびR11が−O−又は−NH−であるとき、点線は存在せず、
12は、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC2−6アルキニルであり、
mは、1又は2であり、
nは、0、1、2、3又は4であり、
pは、1、2、3又は4である。]
の化合物及びこれらの医薬適合性の塩に指向している。
【0009】
式(I)の化合物の一つの実施態様に於いて、mは1であり、およびRは、置換されていない又はハロ、好ましくはフルオロ若しくはクロロによって1個若しくは2個の位置で置換されたフェニルである。他の実施態様に於いて、mは2であり、およびRは、置換されていない又はハロ、好ましくはフルオロ若しくはクロロによって1個若しくは2個の位置で置換されたフェニルである。他の実施態様に於いて、mは1であり、およびRはチオフェニルである。
【0010】
式(I)の化合物の他の実施態様に於いて、Rは、R−S(O)N(R)−(式中、R及びRは、それぞれC1−6アルキル、例えばそれぞれメチルである)である。
【0011】
式(I)の化合物の他の実施態様に於いて、Rは、
【0012】
【化18】

である。
【0013】
式(I)の化合物の他の実施態様に於いて、XはOである。
【0014】
式(I)の化合物の他の実施態様に於いて、YはCHである。
【0015】
本発明の実施態様は、式II:
【0016】
【化19】

(式中、X、Y、R、R、R、R6a、R6b、R6c及びmは、本明細書に定義した通りである。)
の化合物及びこれらの医薬適合性の塩に指向している。
【0017】
式(II)の化合物の一つの実施態様に於いて、Rはメチルである。式(II)の化合物の他の実施態様に於いて、R6a及びR6bは水素であり、およびR6cはフルオロである。
【0018】
式(II)の化合物の他の実施態様に於いて、XはOである。
【0019】
式(II)の化合物の他の実施態様に於いて、YはCHである。
【0020】
本発明の他の実施態様は、式(III):
【0021】
【化20】

(式中、X、Y、R、R、R、R10及びmは、本明細書に定義した通りである。)
の化合物に指向している。
【0022】
式(III)の化合物の他の実施態様に於いて、R及びR10は、一緒に結合して、置換されていない又は−(CH−フラニル(式中、nは0である。)によって置換されたピロリジン環を形成する。
【0023】
式(III)の化合物の他の実施態様に於いて、XはOである。
【0024】
式(III)の化合物の他の実施態様に於いて、YはCHである。
【0025】
本発明の他の実施態様は、式(IV):
【0026】
【化21】

(式中、X、R、R、R11、R12及びmは、本明細書に定義した通りである。)
の化合物に指向している。
【0027】
式(IV)の化合物の実施態様に於いて、XはOである。
【0028】
式(IV)の化合物の他の実施態様に於いて、YはCHである。
【0029】
本発明の他の実施態様には、下記の実施例の標題化合物及びこれらの医薬適合性の塩から選択される化合物が含まれる。
【0030】
本明細書で使用されるとき、それ自体又は他の置換基の一部としての用語「アルキル」は、指定された炭素原子の数を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する(例えば、C1−6アルキルは、1から6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する)。代表的アルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。
【0031】
本明細書で使用されるとき、それ自体又は他の置換基の一部としての用語「アルケニル」は、1個の炭素−炭素二重結合及び指定された炭素原子の数を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルケニルは、2から10個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する)。本発明に於いて使用するために好ましいアルケニル基は、2から6個の炭素原子を有するC2−6アルケニル基である。代表的アルケニル基には、エテニル及びプロペニルが含まれる。
【0032】
本明細書で使用されるとき、それ自体又は他の置換基の一部としての用語「アルキニル」は、1個の炭素−炭素三重結合及び指定された炭素原子の数を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する(例えば、C2−10アルキニルは、2から10個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する)。本発明に於いて使用するために好ましいアルキニル基は、2から6個の炭素原子を有するC2−6アルキニル基である。代表的アルキニル基には、エチニル及びプロピニルが含まれる。
【0033】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
【0034】
本発明の化合物は、少なくとも1個の非対称中心を有する。分子上の種々の置換基の性質に依存して、追加の非対称中心が存在してもよい。非対称中心を有する化合物は、エナンチオマー(光学異性体)、ジアステレオマー(立体配置異性体)又は両方を生じ、混合物中で、純粋な又は部分的に精製された化合物としての、可能性のあるエナンチオマー及びジアステレオマーの全てが、本発明の範囲内に含まれることが意図される。本発明は、これらの化合物の全てのこのような異性体形を包含すると意味される。
【0035】
エナンチオマー的に又はジアステレオマー的に富んだ化合物の独立の合成又はこれらのクロマトグラフィー的分離は、本明細書に開示された方法論の適切な修正によって、当該技術分野で公知であるようにして達成することができる。これらの絶対的立体化学は、必要に応じて、公知の絶対立体配置の非対称中心を含有する試薬によって誘導される、結晶性生成物又は結晶性中間体のX線結晶学によって決定することができる。
【0036】
所望により、化合物のラセミ混合物は、個々のエナンチオマーが単離されるように分離することができる。この分離は、当該技術分野で周知の方法、例えば、化合物のラセミ混合物をエナンチオマー的に純粋な化合物にカップリングさせて、ジアステレオマー混合物を形成し、続いて、分別結晶化又はクロマトグラフィーのような標準的方法によって個々のジアステレオマーを分離することによって実施することができる。このカップリング反応は、しばしば、エナンチオマー的に純粋な酸又は塩基を使用する塩の形成である。次いで、ジアステレオマー誘導体を、付加したキラル残基の開裂によって、純粋なエナンチオマーに転化させることができる。化合物のラセミ混合物は、また、キラル固定相を使用するクロマトグラフィー方法(この方法は、当該技術分野で周知である)によって、直接的に分離することができる。
【0037】
代わりに、化合物の全てのエナンチオマーは、既知の立体配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用し、当該技術分野で周知の方法による立体選択的合成によって得ることができる。
【0038】
本発明の化合物は、下記の反応図式1で略記した方法によって製造される。
【0039】
反応図式1に於いて、タイプ1のアルキルセリン誘導体は、対応するアルコール2に転化され、このアルコール2は次いで、Boc誘導体3として保護される。種々の臭化アルキル又は臭化ベンジルによるジエチル 2−[N−(tert−ブトキシカルボニル)−アミノ]マロナート4の脱プロトン化及びアルキル化、続く還元によって、タイプ3のジオールの製造への代替が得られる。次いでBoc除去によって、2への代替経路が得られる。タイプ1のアルキルセリン誘導体は、MeOHによってエステル化され、Bocで保護され、ヒドロキシル基は対応するアジドに転化され、このアジドは還元されて、タイプ5のアミンを与える。
【0040】
【化22】

【0041】
下記の反応図式2に於いて、ジメチル 5−アミノイソフタラート6は、スルホニル化、アルキル化、加水分解、アミンカップリング、加水分解、還元及び臭素化を含む7工程列を経て、臭化物7に転化される。ジオール2の脱プロトン化、続く臭化物7によるアルキル化によって、誘導体8へのアクセスが得られる。代わりに、ジオール3を、銀トリフラートの存在下で、臭化物7によってアルキル化して、Boc除去の後に8を得ることができる。臭化物7によるアミン5のアルキル化、続くエステル還元及びBoc除去によって、アミン9が得られる。
【0042】
反応図式2から4に於いて、NR’R”は、前記のようなR基(a)又は(b)を表す。
【0043】
【化23】

【0044】
反応図式3に、Pdカップリング、加水分解、還元及び臭素化を経る、ジメチル 5−ヨードイソフタラート10からのタイプ11の臭化物の製造を示す。臭化物11によるジオール3のアルキル化、続く加水分解、アミンカップリング及びBoc除去によって、エーテル12へのアクセスが得られる。
【0045】
【化24】

【0046】
反応図式4に、次いで、反応図式2に記載したようにして、ジオール2又は3にカップリングされる、タイプ15の臭化物の製造を示す。Pd0カップリング方法論を使用して両側鎖を設けること、続くエステル単位の還元及び次の臭素化により、15が得られる。
【0047】
【化25】

【0048】
反応図式5に、次いで、反応図式2に記載したようにして、ジオール2又は3にカップリングされる、タイプ19及び22の臭化物の製造を示す。フェノール16をアルキル化し、メチルエステルをブロモメチル官能基に転化させ、中間体17へのアクセスを得る。TMS−CN及び必要なジブロモアルカンにより、シアノシクロアルキル基を導入する。続くシクロプロパン化により18が得られ、これを臭化物19に転化させる。臭化物22の製造は、R12−含有側鎖に関する同様の方法論及びRNSOの導入のためのクルチウス転位に頼る。
【0049】
【化26】

【0050】
反応図式6は、次いで、反応図式2に記載したようにして、ジオール2又は3にカップリングされる、タイプ23の臭化物の2個の代替製造を示す。第一製造は、メチルエステルのアルデヒドへの転化及びR−含有アルケンを設けるためのウィッティッヒカップリングに頼る。第二製造は、インデニウム(indenium)/パラジウムカップリング方法に基づいている。
【0051】
【化27】

【0052】
用語「実質的に純粋な」は、単離した物質が、当該技術分野で公知の分析技術によって分析したとき、少なくとも90%純粋、好ましくは95%純粋、なお更に好ましくは99%純粋であることを意味する。
【0053】
用語「医薬適合性の塩」は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、医薬適合性の非毒性塩基又は酸から製造された塩を指す。無機塩基から誘導された塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛塩等々が含まれる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形にある塩は、2種以上の結晶構造で存在することができ、水和物の形態であってもよい。医薬適合性の有機非毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級及び第三級アミン類、天然に存在する置換アミン類を含む置換アミン類、環式アミン類並びに塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等々の塩が含まれる。本発明の化合物が塩基性であるとき、塩は、無機及び有機酸を含む医薬適合性の非毒性の酸から製造することができる。このような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等々が含まれる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸、酒石酸及びトリフルオロ酢酸が特に好ましい。
【0054】
本発明は、下記のような阻害が必要である哺乳動物のような患者又は被検者に於いて、有効量の本明細書中に開示された化合物を投与することを含む、β−セクレターゼ酵素活性又はβ−部位アミロイド前駆体タンパク質開裂酵素(「BACE」)活性の阻害薬としての、この化合物の使用に指向している。用語「β−セクレターゼ酵素」、「β−部位アミロイド前駆体タンパク質開裂酵素」及び「BACE」は、本明細書に於いて互換的に使用される。ヒトに加えて、種々の他の哺乳動物を、本発明の方法に従って治療することができる。
【0055】
本発明は、更に、本発明の化合物を薬物的担体又は希釈剤と組み合わせることを含む、ヒト及び動物に於けるβ−セクレターゼ酵素活性を阻害するための薬物又は組成物の製造方法に指向している。
【0056】
本発明の化合物は、アルツハイマー病を治療する際に有用性を有する。例えば、この化合物は、アルツハイマー型の早期、中期又は後期痴呆を含む、アルツハイマー型の痴呆を治療する際に有用であろう。この化合物は、また、アミロイド前駆体タンパク質(APPとしても参照する)の異常開裂によって仲介される疾患及び□−セクレターゼの阻害によって治療又は予防することができる他の状態を治療する際にも有用であろう。このような状態には、中度の認識悪化、トリソミー21(ダウン症候群)、大脳アミロイド血管症、退行性痴呆、ダッチ型(Dutch−Type)のアミロイド症を有する遺伝性脳出血(HCHWA−D)、クロイツフェルト−ヤコブ病、プリオン異常症、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、頭外傷、発作、ダウン症候群、膵臓炎、封入体性筋炎、他の末梢性アミロイド症、糖尿病及びアテローム硬化症が含まれる。
【0057】
本発明の化合物が投与される被検者又は患者は、一般的に、β−セクレターゼ酵素活性の阻害が望まれる、男性又は女性であるヒトであるが、β−セクレターゼ酵素活性の阻害又は上記の異常症の治療が望まれる、他の動物、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、サル、チンパンジー又は他の類人猿若しくは霊長類を包含することもできる。
【0058】
本発明の化合物は、本発明の化合物が有用性を有する疾患又は状態の治療に於いて、1種又は2種以上の他の薬物と組み合わせて使用することができ、薬物を一緒に組み合わせることは、何れかの薬物単独よりも安全であるか又は一層有効である。更に、本発明の化合物は、治療し、予防し、制御し、改善し又は本発明の化合物の副作用若しくは毒性の危険性を減少する、1種又は2種以上の他の薬物と組み合わせて使用することができる。このような他の薬物は、これらのために一般的に使用される経路により及び量で、本発明の化合物と同時に又は逐次的に投与することができる。従って、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて、1種又は2種以上の他の活性成分を含有するものが含まれる。組合せ物を、単位剤形組合せ生成物の一部として又は1種又は2種以上の追加の薬物を、治療処方計画の一部として別の剤形で投与するキット若しくは治療プロトコルとして投与することができる。
【0059】
単位剤形又はキット剤形での、他の薬物との本発明の化合物の組合せの例には、抗アルツハイマー剤、例えば他のβ−セクレターゼ阻害薬;γ−セクレターゼ阻害薬;HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;イブプロフェンを含むNSAID;ビタミンE;ヒト化モノクローナル抗体を含む抗アミロイド抗体;CB−1受容体拮抗薬若しくはCB−1受容体反作用薬;抗生物質、例えばドキシサイクリン及びリファンピン;N−メチル−D−アスパラタート(NMDA)受容体拮抗薬、例えばメマチン(mematine);コリンエステラーゼ阻害薬、例えばガランタミン、リバスチグミン(rivastigmine)、ドネペジル(donepezil)及びタクリン;成長ホルモン分泌促進薬、例えばイブタモレン(ibutamoren)、イブタモレンメシラート及びカプロモレリン(capromorelin);ヒスタミンH拮抗薬;AMPA作用薬、PDEIV阻害薬;GABA反作用薬;神経細胞ニコチン作用薬又は本発明の化合物の、効能、安全性、利便性を増加させるか若しくは望まない副作用若しくは毒性を減少させる受容体若しくは酵素に影響を与える他の薬物との組合せが含まれる。組合せの上記のリストは、例示のみであり、決して限定であることを意図しない。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、予定の量又は比率で特定された成分を含有する製品並びに特定された量での特定された成分の組合せから、直接的に又は間接的に得られる全ての製品を包含することを意図する。この用語は、医薬組成物に関連して、1種若しくは2種以上の活性成分及び不活性成分を含む任意の担体を含有する製品並びに何れか2種若しくは3種以上の成分の組合せ、錯化若しくは凝集から又は1種若しくは2種以上の成分の解離から又は1種若しくは2種以上の成分の他の形式の反応若しくは相互作用から、直接的に又は間接的に得られる全ての製品を包含することを意図する。一般的に、医薬組成物は、活性成分を、液体担体若しくは微細に分割した固体担体又は両方と、均一に及び緊密に会合状態にし、次いで必要に応じて、生成物を所望の配合物に造形することによって製造される。医薬組成物に於いて、活性目的化合物は、疾患の過程又は状態に所望の効果をもたらすために十分な量で含有されている。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬適合性の担体とを混合することによって製造された全ての組成物を包含する。
【0061】
経口使用のために意図された医薬組成物は、医薬組成物の製造のための技術分野で公知のいずれかの方法に従って製造することができ、このような組成物には、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択された1種又は2種以上の薬剤を含有させて、医薬的に見た目及び風味が良い製剤を提供することができる。錠剤には、錠剤の製造のために適している無毒性の医薬適合性の賦形剤との混合物で、有効成分が含有されている。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアラビアゴム及び滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであってよい。錠剤はコーティングしなくてよく又はこれは、胃腸管内での崩壊及び吸収を遅延させるための公知の技術によってコーティングし、これによってより長期間に亘って持続的作用を与えるようにすることができる。
【0062】
経口使用のための組成物は、活性成分が、不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混和されている硬質ゼラチンカプセルとして又は活性有効成分が、水若しくは油媒体、例えば落花生油、液体パラフィン若しくはオリーブ油と混合されている軟質ゼラチンカプセルとして提供することもできる。
【0063】
他の医薬組成物には、活性物質を、水性懸濁液の製造のために適している賦形剤との混合物で含有する水性懸濁液が含まれる。更に、油性懸濁液は、活性成分を、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油中に又は鉱油、例えば液体パラフィン中に懸濁させることによって配合することができる。油性懸濁液には、種々の賦形剤が含有されていてよい。本発明の医薬組成物は、また、水中油滴型エマルジョンの形態であってもよく、これには、また、例えば甘味剤及び矯味・矯臭剤のような添加物が含有されていてもよい。
【0064】
医薬組成物は、滅菌注射可能水性又は油性懸濁液であってよく、これらは公知の技術に従って配合することができ又は薬物の直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。
【0065】
本発明の組成物は、また、吸入により、当業者に公知である吸入デバイスの手段により又は経皮パッチにより投与することもできる。
【0066】
「医薬適合性の」によって、担体、希釈剤又は賦形剤が、配合物の他の成分と適合性でなくてはならず、これらの受容体に対して有害であってはならないことが意味される。
【0067】
用語、化合物「の投与」又は「を投与すること」は、本発明の化合物を、治療が必要な個体に、これらに限定されないが、経口剤形、例えば錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁剤など;注射可能剤形、例えばIV、IM又はIPなど;経皮剤形、クリーム剤、ジェリー剤、散剤又はパッチ剤を含む;バッカル剤形;吸入散剤、スプレー剤、懸濁剤など;及び直腸坐剤を含む、この個体の体の中に、治療的に有用な剤形及び治療的に有用な量で導入することができる剤形で与えることを意味すると理解されるべきである。
【0068】
用語「有効量」又は「治療的有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床家によって探し求められている、組織、システム、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出す主題化合物の量を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「治療」は、特に疾患又は異常症の症状を示す患者に於ける、前記の状態の治療を指す。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「治療すること」は、本発明の化合物の全ての投与を意味し、これには、(1)疾患の病状又は総体的症状を経験している又は示している動物に於ける疾患を阻害すること(即ち、病状及び/又は症状の更なる発達を抑止すること)又は(2)疾患の病状又は総体的症状を経験している又は示している動物に於ける疾患を改善すること(即ち、テアトロジー(theathology)及び/又は症状を逆にすること)が含まれる。用語「制御する」には、制御される状態の酷度を、予防すること、治療すること、根絶すること、改善すること又は他の方法で減少することが含まれる。
【0070】
本発明の化合物を含有する組成物は、単位用量剤形で提供することができ、薬剤学の技術分野に於いて周知である方法の全てによって製剤することができる。用語「単位用量剤形」は、あらゆる活性成分及び非活性成分が、適切なシステム内で、患者又は患者に薬物を投与するヒトが、この中に含有されている全用量を含有する1個の容器又はパッケージを開けることができ、2個又は3個以上の容器又はパッケージからの如何なる成分も一緒に混合する必要がないように組み合わせられている単一用量を意味すると取られる。単位用量剤形の典型的な例には、経口投与用の錠剤若しくはカプセル剤、注射用の1回用量バイアル又は直腸投与用の坐剤である。単位用量剤形のこのリストは、決して限定することを意図せず、単に単位用量剤形の薬剤学技術分野に於ける典型的な例を表すことを意図する。
【0071】
本発明の化合物を含有する組成物は、キットとして便利に提供することができ、この場合に、活性成分又は非活性成分であってよい2種又は3種以上の成分、担体、希釈剤などは、患者又は患者に薬物を投与するヒトによる実際の用量剤形の製剤のための指示書と共に提供される。このようなキットは、この中に含有される全ての必要な物質及び成分と共に提供されるか又はこれらには、患者又は患者に薬物を投与するヒトが独立に得なくてはならない、物質又は成分を使用する又は作るための指示書が含まれているであろう。
【0072】
このために本発明の化合物が示されるアルツハイマー病又は他の疾患を治療するとき、一般的に満足できる結果は、本発明の化合物が、好ましくは、1日1回投与として又は1日2から6回の分割投与で又は遅延放出型で与えられるとき、動物体重kg当たり、約0.1mgから約100mgの1日用量で投与されるとき得られる。全1日用量は、体重kg当たり、約1.0mgから約2000mg、好ましくは約0.1mgから約20mgである。70kgの成人ヒトの場合に、全1日用量は、一般的に約7mgから約1,400mgであろう。この用量処方は、最適治療応答を与えるように調節することができる。この化合物は、1日当たり1から4回、好ましくは1日1回又は2回の処方で投与することができる。
【0073】
投与のための、本発明の化合物又はこれらの医薬適合性の塩の特別の用量には、1mg、5mg、10mg、30mg、100mg、300mg及び500mgが含まれる。本発明の医薬組成物は、約0.5mgから1000mgの活性成分を含む、更に好ましくは約0.5mgから500mgの活性成分又は0.5mgから250mgの活性成分又は1mgから100mgの活性成分を含む配合物で提供することができる。特別の医薬組成物には、約1mg、5mg、10mg、30mg、100mg、300mg及び500mgの活性成分が含まれていてよい。
【0074】
しかしながら、全ての特別の患者についての特定の用量レベル及び投与の頻度は、変化させることができ、使用する特定の化合物、この化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的健康状態、性、食事、投与の方式及び時間、排泄の速度、薬物組合せ、特定の状態の酷度並びに治療を受ける宿主を含む種々の要因に依存するであろう。
【0075】
β−セクレターゼ酵素活性の阻害薬としての本発明に従った化合物の有用性は、当該技術分野で公知の方法論によって示すことができる。酵素阻害は下記のようにして決定される。
【0076】
FRETアッセイ:均一終点蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer)(FRET)アッセイは、BACE1によって開裂されて、TAMRAから蛍光を放出する基質([TAMRA−5−CO−EEISEVNLDAEF−NHQSY]QFRET)と共に使用される。この基質のKmは、基質の溶解度の限界のために決定されない。典型的な反応物には、100μLの全反応体積中に、約30nMの酵素、1.25μMの基質及び緩衝剤(50mMのNaOAc、pH4.5、0.1mg/mLのBSA、0.2%のCHAPS、15mMのEDTA及び1mMのデフェロキサミン)が含有されている。この反応を30分間進行させ、TAMRAフラグメントの遊離を、96ウエルプレートLJLアナリストAD中で、530nmの励起波長及び580nmの発光波長を使用して測定する。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によって処理される。これらの研究に於いて使用した酵素は、バクロウイルス発現システムに於いて産生される可溶性(膜貫通ドメイン及び細胞質伸長排除)ヒトタンパク質であった。化合物の阻害効能を測定するために、DMSO中の阻害薬の溶液(阻害薬の4種の濃度、1mM、100μM、10μM、1μMを調製した。)を、反応混合物(最終DMSO濃度は0.8%である)中に含有させた。全ての実験は、上記の標準反応条件を使用して、室温で実施した。化合物のIC50を決定するために、化合物の阻害効能を予想するために競合方程式V0/Vi=1+[I]/[IC50]を使用した。解離定数を再現する際の誤差は、典型的に2倍未満である。
【0077】
HPLCアッセイ:均一終点HPLCアッセイは、BACE1によって開裂されて、クマリンによって結合されているN−末端フラグメントを放出する、基質(クマリン−CO−REVNFEVEFR)と共に使用される。この基質のKmは、100μMよりも大きく、基質の溶解度の限界のために決定できない。典型的な反応物には、100μLの全反応体積中に、約2nMの酵素、1.0μMの基質及び緩衝剤(50mMのNaOAc、pH4.5、0.1mg/mLのBSA、0.2%のCHAPS、15mMのEDTA及び1mMのデフェロキサミン)が含有されている。この反応を30分間進行させ、25μLの1M トリス−HCl、pH8.0の添加によって停止する。得られる反応混合物をHPLCに載せ、生成物を基質から、5分間直線勾配で分離した。これらの条件下で、基質の10%未満がBACE1によって処理される。これらの研究に於いて使用した酵素は、バクロウイルス発現システムに於いて産生される可溶性(膜貫通ドメイン及び細胞質伸長排除)ヒトタンパク質であった。化合物の阻害効能を測定するために、DMSO中の阻害薬の溶液(阻害薬の12種の濃度を調製し、濃度範囲は、FRETによって予測された効能に依存性であった)を、反応混合物(最終DMSO濃度は10%である。)中に含有させた。全ての実験は、上記の標準反応条件を使用して、室温で実施した。化合物のIC50を決定するために、曲線適合のために4パラメーター方程式を使用する。解離定数を再現する際の誤差は、典型的に2倍未満である。
【0078】
特に、下記の実施例の化合物は、一般的に約1nMから100μMのIC50で、前記のアッセイに於けるβ−セクレターゼ酵素を阻害する際の活性を有していた。このような結果は、β−セクレターゼ酵素活性の阻害剤として使用する際の化合物の固有活性の指標である。
【0079】
本発明の化合物を製造するための幾つかの方法を、下記の反応図式及び実施例に例示する。出発物質は当該技術分野で公知の手順に従って又は本明細書に例示したようにして製造する。下記の実施例は、本発明を一層完全に理解できるように提供される。これらの実施例は例示のみであり、決して本発明を限定するとして解釈すべきではない。
【0080】
下記の略号を、本明細書を通して使用する。
【0081】
Ar:アリール
Ph:フェニル
Me:メチル
Et:エチル
Ac:アセチル
t−bu:tert−ブチル
Pyr:ピリジン
TFA:トリフルオロ酢酸
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
LAH:水素化アルミニウムリチウム
TFA:トリフルオロ酢酸
DMSO:ジメチルスルホキシド
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル
rac:ラセミ
DIBAL:水素化ジイソブチルアルミニウム
BOP:ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート
DEAD:ジエチルアゾールジカルボキシラート
中間体I:2−アミノ−2−ベンジルプロパン−1,3−ジオール
【0082】
【化28】

【0083】
室温の60mLのTHF中のrac−ベンジルセリン(4.00g、20.49ミリモル)の溶液に、NaBH(2.71g、71.71ミリモル)を一度に添加した。この溶液に還流凝縮器を嵌め、0℃に冷却した。20mLのTHF中のヨウ素(7.80g、30.73ミリモル)を、カニューレを経て滴下により添加した。添加が完結した後、この反応物を還流まで15時間加熱した。次いで、この反応物を0℃に冷却し、バブリングが治まるまで、メタノールの添加によってクエンチした。残渣を、pHが1以下になるまで6N HClの添加によって酸性にし、次いで濃縮して、無機残渣で汚染された2−アミノ−2−ベンジルプロパン−1,3−ジオールを得た。この未精製の反応混合物をメタノール中に再溶解し、セライトのパッドを通して濾過して(新しいメタノールで多数回洗浄する)、幾らかの不溶性無機残渣を除去した。濃縮した後、イオン交換クロマトグラフィー(SCXカートリッジ)を使用して更なる精製を行って、2−アミノ−2−ベンジルプロパン−1,3−ジオールIを白色固体として得た。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ7.34−7.25(m,5H),3.52(s,4H),3.00(s,2H)。
【0084】
中間体II:tert−ブチル [1−ベンジル−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]カルバマート
【0085】
【化29】

【0086】
50mLのTHF中の2−アミノ−2−ベンジルプロパン−1,3−ジオールI(0.901g、4.971ミリモル)の溶液に、二炭酸二tert−ブチル(1.139g、5.22ミリモル)を添加した。室温で14時間後、この反応物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(40gのシリカ、0→10%MeOH/CHCl)によって精製して、tert−ブチル [1−ベンジル−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]カルバマートIIを白色固体として得た。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ7.25−7.15(m,5H),3.59(d,J=11.0Hz,2H),3.54(d,J=11.0Hz,2H),2.98(s,2H),1.449(s,9H)。
【0087】
中間体III:tert−ブチル 2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−1−(チエン−3−イルメチル)エチルカルバマート
【0088】
【化30】

【0089】
工程A:アルキル化
0℃に冷却した30mLのEtOH中の、ジエチル 2−[N−(tert−ブトキシカルボニル)−アミノ]マロナート(1.44mL、5.65ミリモル)の溶液に、ナトリウムエトキシド(2.22mL、5.93ミリモル、EtOH中21%)を添加した。この反応混合物を0℃で5分間攪拌し、10mLのEtOH中の3−ブロモメチル−チオフェン(1g、5.65ミリモル)を滴下により添加した。この反応混合物を室温にまで14時間かけて加温した。この反応混合物を水でクエンチし、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(120gのシリカ、0→25%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、ジエチル 2,2−[N−(tert−ブトキシカルボニル)−アミノ]−(チエン−3−イルメチル)マロナートを無色油として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.22(dd,J=4.8Hz,2.5Hz,1H),6.94(d,J=2.5Hz,1H),6.81(d,J=4.8Hz,1H),5.82(brs,1H),4.34−4.14(m,4H),3.66(s,2H),1.47(s,9H),1.27(t,J=7.2Hz,6H)。
【0090】
工程B:還元
10mLのジエチルエーテル中のジエチル 2,2−[N−(tert−ブトキシカルボニル)−アミノ]−(チエン−3−イルメチル)マロナート(1.52g、12.69ミリモル)の溶液を、0℃に冷却した20mLのジエチルエーテル中のLAH(12.7mL、12.7ミリモル、ジエチルエーテル中1M)に滴下により添加した。この反応混合物を0℃で1.25時間攪拌した。この反応混合物を、水(0.48mL)、15%NaOH(0.48mL)、水(1.45mL)で注意深くクエンチし、室温で5分間激しく攪拌し、THFで希釈し、セライト上で濾過し、THFで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(120gのシリカ、25→50%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、tert−ブチル 2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−1−(チエン−3−イルメチル)エチルカルバマートIIIを濃厚な無色油として得た。H NMR(400MHz,CDOD)δ7.29(dd,J=4.8Hz,3.2Hz,1H),7.08(dd,J=3.2Hz,0.8Hz,1H),6.98(dd,J=4.8,0.8HzHz,1H),3.61(ABのA,d,J=20.0Hz,2H),3.55(ABのB,d,J=20.0Hz,2H),3.04(s,2H),1.47(s,9H)。
【0091】
中間体IV:メチル α−(アミノメチル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアラニナート
【0092】
【化31】

【0093】
工程A:ヒドロキシのアジドへの転化
10mLのTHF中の、ベンジルセリンからMeOH中のエステル化及びBoc付加により(又はA.Kozikowskiら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、1998年、第8巻、第447−452頁に従って)製造した、メチル N−(tert−ブトキシカルボニル)−α−(ヒドロキシメチル)フェニルアラニナート(0.5g、1.62ミリモル)の溶液に、5mLのTHF中の、ヒドラゾ酸(1.2mL、2.42ミリモル、ベンゼン中2M)、トリフェニルホスフィン(0.42g、1.62ミリモル)及びジエチルアゾジカルボキシラート(0.28mL、1.78ミリモル)を滴下により添加した。この反応混合物を室温で16時間攪拌し、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(90gのシリカ、0→20%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、N−(tert−ブトキシカルボニル)−α−アジドメチル)フェニルアラニナートを得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.30−7.20(m,3H),7.05−6.98(m,2H),5.47(brs,1H),4.33(d,J=12.4Hz,1H),3.78(s,3H),3.61(d,J=12.4Hz,1H),3.51(d,J=13.2Hz,1H),2.96(d,J=13.2Hz,1H),1.48(s,9H)。
【0094】
工程B:水素化
アルゴンでパージした、20mLのMeOH中のN−(tert−ブトキシカルボニル)−α−アジドメチル)フェニルアラニナート(144mg、0.43ミリモル)の溶液に、10%Pd/C(15mg)を添加し、システムを水素でフラッシュした。この反応混合物を室温で1atmの水素化で1時間攪拌した。セライト上で濾過し、MeOHで洗浄し、真空中で濃縮して、メチル α−(アミノメチル)−N−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアラニナートIVを得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.30−7.20(m,3H),7.08−7.02(m,2H),5.45(brs,1H),3.78(s,3H),3.56(brd,J=13.6Hz,1H),3.50(brd,J=13.2Hz,1H),3.10(d,J=13.2Hz,1H),3.06(d,J=13.6Hz,1H),1.48(s,9H),1.07(brs,1H)。
【0095】
中間体A:3−(ブロモメチル)−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミド
【0096】
【化32】

【0097】
工程A:スルホン化
0℃の100mLのCHCl/ピリジン(3:1)中の5−アミノイソフタル酸ジメチル(5.0g、23.90ミリモル)の攪拌したスラリーに、メタンスルホニルクロリド(1.85mL、23.90ミリモル)を添加した。得られた混合物を室温で4時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、酢酸エチル(100mL)を添加すると、沈殿が生成した。生成物を濾過によって集めて、スルホンアミドを白色固体として得た。H NMR(DMSOd6)δ8.15(s,1H),8.02(s,2H),3.89(s,6H),3.02(s,3H)LCMS[M−OCH]+=256.16。
【0098】
工程B:メチル化
10mLのDMF中の水素化ナトリウム(0.153g、3.83ミリモル、60%油分散液)の溶液に、工程Aからのスルホンアミド(1.0g、3.48ミリモル)、続いてヨウ化メチル(0.43mL、6.97ミリモル)を添加した。1時間後に、反応物をHO(100mL)でクエンチし、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機抽出液をMgSOで乾燥し、蒸発させて生成物を得た。H NMR(DMSOd6)δ8.40(s,1H),8.19(s,2H),3.91(s,6H),3.34(s,3H),3.01(s,3H)。LCMS[M+H]=302.15。
【0099】
工程C:加水分解
工程Bからのジエステル(1.03g、3.38ミリモル)を、50mLのTHF−MeOH(1:1)中に溶解させ、0℃に冷却した。1N NaOH(3.38mL、3.38ミリモル)を添加し、反応物をRTまで8時間かけて加温した。この溶液を1N HCl(30mL)で酸性にし、EtOAc(3×50mL)で抽出した。一緒にした有機抽出液を食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上での精製(5%MeOH/1%HOAcを含有するCHCl)によって、モノ酸を得た。H NMR(DMSOd6)δ8.30(s,1H),8.10(s,2H),3.84(s,3H),3.27(s,3H),2.94(s,3H)。LCMS(M+H)=288.16。
【0100】
工程D:アミンカップリング
5mLのCHCl中の0.133g(0.46ミリモル)の工程Cからのモノ酸、BOP試薬(0.235g、0.55ミリモル)、(R)−(+)−α−メチルベンジルアミン(0.071mL、0.55ミリモル)及びジイソプロピルアミン(0.24mL、1.39ミリモル)を含有する溶液を、環境温度で1時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(90%EtOAc/ヘキサン)によって、ベンジルアミドを得た。H NMR(CDCl)δ8.26(s,1H),8.17(s,1H),8.06(s,1H),7.31(m,5H),6.50(d,J=7.1Hz,1H),5.33(q,J=7.1Hz,1H),3.96(s,3H),3.37(s,3H),2.88(s,3H),1.64(d,J=7.0Hz,3H)。LCMS(M+H)=391.20。
【0101】
工程E:加水分解
10mLのTHF:MeOH(1:1)中の0.171g(0.438ミリモル)の工程Dからのベンジルアミドに、2N NaOH(0.66mL、1.32ミリモル)を添加した。この溶液を50℃で1時間加熱した。冷却した後、溶液を、1N HCl(20mL)の添加によって酸性にし、EtOAc(3×30mL)で抽出した。一緒にした有機抽出液をMgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、所望のカルボン酸を得た。H NMR(CDCl)δ8.22(t,1H),8.11(m,1H),8.06(m,1H),7.34(m,5H),6.47(d,J=7.1Hz,1H),5.33(m,1H),3.37(s,3H),2.87(s,3H),1.64(d,J=7.0Hz,3H)。LCMS(M+H)=377.2。
【0102】
工程E:還元
0℃に冷却した20mLのTHF中の工程Dからの酸(800mg、2.0ミリモル)の溶液に、ボラン(6.0mL、6.0ミリモル、THF中1M)を滴下により添加した。この反応混合物を0℃で20分間、室温で1時間45分間攪拌した。この反応混合物をMeOHでクエンチし、室温で16時間攪拌し、真空中で濃縮した。残渣をEtOAc中に溶解し、水、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮して、粗製アルコールを得、これを工程Fでこのまま臭素化した。
【0103】
工程F:臭素化
4.6mLの1:1 CHCN:CHCl中の、工程Eからの粗製アルコール(355mg、0.93ミリモル)及び四臭化炭素(0.4g、1.2ミリモル)の溶液に、4.6mLの1:1 CHCN:CHCl中のトリフェニルホスフィン(0.29g、1.1ミリモル)を滴下により添加した。室温で45分間攪拌した後、2個の四臭化炭素及びトリフェニルホスフィンの追加のバッチ(200mg/150mg及び20mg/15mg)を、30分間間隔で、LC/MS分析によって反応が完結したと見えるまで添加した。この反応混合物を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(40gのシリカ、25→60%EtOAc/ヘキサン)によって精製して、220mgの3−(ブロモメチル)−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミドAを得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.73(s,1H),7.65(s,1H),7.57(s,1H),7.32−7.40(m,2H),7.09−7.01(m,2H),6.32(d,J=7.6Hz,1H),5.36−5.24(m,1H),4.50(s,2H),3.36(s,3H),2.78(s,3H),1.62(d,J=6.5Hz,3H)。
【0104】
中間体B:メチル 5−(ブロモメチル)−2’−シアノ−1,1’−ビフェニル−3−カルボキシラート
【0105】
【化33】

【0106】
100mLのTHF中の5−ヨードイソフタル酸ジメチル(13g、40.6ミリモル)の溶液に、2−シアノフェニル亜鉛ブロミド(97.5mL、48.7ミリモル、0.5M THF)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(214mg、0.2ミリモル)を添加し、この反応混合物を室温で2時間攪拌した。沈殿した固体を濾過し、濾液をMeOHで希釈して、濾過した後、第二収穫物である5−(2−シアノフェニル)イソフタル酸ジメチルを得、これを、中間体A製造、工程Cに記載したのと同様の手順に従って、加水分解して、対応するモノ酸、2’−シアノ−5−(メトキシカルボニル)−1,1’−ビフェニル−3−カルボン酸にした。H NMR(400MHz,d−DMSO)δ13.55(brs,1H),8.60−8.55(m,1H),8.38−8.31(m,2H),8.02(d,J=8.3Hz,1H),7.85(td,J=8.3Hz,1.5Hz1H),7.75(d,J=8.3Hz,1H),7.66(td,J=8.3Hz,1.5Hz1H),3.93(s,3H)。
【0107】
中間体A製造、工程E及びFに記載したのと同様の手順を使用する、ボランによる還元及び臭素化によって、中間体B:メチル 5−(ブロモメチル)−2’−シアノ−1,1’−ビフェニル−3−カルボキシラートを得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.12−8.18(m,2H),7.83−7.77(m,2H),7.69(td,J=8.5Hz,1.4Hz1H),7.55(d,J=8.5Hz,1H),7.51(td,J=8.5Hz,1.4Hz1H),4.59(s,2H),3.96(s,3H)。
【実施例1】
【0108】
3−[(2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロポキシ)メチル]−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミド
【0109】
【化34】

【0110】
0℃に冷却した2mLのDMF中の中間体I:2−アミノ−2−ベンジルプロパン−1,3−ジオール(0.09g、0.50ミリモル)の溶液に、ナトリウム ヘキサメチルジシラジド(0.5mL、0.50ミリモル、THF中1M)を添加した。この反応混合物を0℃で5分間攪拌し、1mLのDMF中の中間体A:3−(ブロモメチル)−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミド(0.1g、0.23ミリモル)を、滴下により添加した。この反応混合物を0℃で0.5時間攪拌し、水でクエンチし、EtOAcで抽出し、LiCl水溶液(3×)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(40gのシリカ、0→8%(MeOH中10%NHOH)/CHCl)によって精製して、3−[(2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロポキシ)メチル]−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミドを得た。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ7.80(s,2H),7.64(s,1H),7.44−7.40(m,2H),7.26−7.20(m,5H),7.07−7.02(m,2H),5.24(q,J=7.0Hz,1H),4.61(s,2H),3.48(ABのA,d,J=10.4Hz,1H),3.43(ABのB,d,J=10.4Hz,1H),3.35(s,3H),2.91(s,3H),2.72(ABのA,d,J=13.9Hz,1H),2.66(ABのB,d,J=13.9Hz,1H),1.57(d,J=7.0Hz,3H)。
HRMSC2834FNS+Hについての計算値:544.2276,実験値:544.2275。
【実施例2】
【0111】
3−{[2−アミノ−3−ヒドロキシ−2−(チエン−3−イルメチル)プロポキシ]メチル}−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミド
【0112】
【化35】

【0113】
0℃に冷却した1mLのCHCl中の中間体A:3−(ブロモメチル)−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミド(50mg、0.11ミリモル)の溶液に、中間体III:tert−ブチル 2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−1−(チエン−3−イルメチル)エチルカルバマート(81mg、0.28ミリモル)、銀トリフラート(72mg、0.28ミリモル)及び2,6−ジtert−ブチルピリジン(76μL、0.34ミリモル)を添加した。この反応混合物を0℃で40分間攪拌し、フラッシュクロマトグラフィー(20gのシリカ、30→80%EtOAc/ヘキサン)及び分取HPLC(0.1%のTFAを含有する水中5%→95%CHCN、C18PRO YMC20×150mm)によって精製して、2,6−ジtert−ブチルピリジンによって汚染されたtert−ブチル 2−({3−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンジル}オキシ)−1−(ヒドロキシメチル)−1−(チエン−3−イルメチル)を得た。CHCl中の10%TFAによって30分間処理し、続いて窒素の流れ下で濃縮し、分取HPLC(0.1%のTFAを含有する水中5%→95%CHCN、C18PRO YMC20×150mm)によって精製して、3−{[2−アミノ−3−ヒドロキシ−2−(チエン−3−イルメチル)プロポキシ]メチル}−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミドをTFA塩として得た。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ8.86(d,J=7.9Hz,1H),7.83(s,1H),7.80(s,1H),7.65(s,1H),7.48−7.36(m,3H),7.17(s,1H),7.10−7.00(m,2H),6.95(d,J=5.0Hz,1H),5.30−5.20(m,1H),4.68(ABのA,d,J=12.0Hz,1H),4.63(ABのB,d,J=12.0Hz,1H),3.57(s,2H),3.51(ABのA,d,J=11.0Hz,1H),3.45(ABのB,d,J=11.0Hz,1H),3.09(s,3H),3.04(ABのA,d,J=13.6Hz,1H),3.45(ABのB,d,J=13.6Hz,1H),2.94(s,3H),1.58(d,J=7.1Hz,3H)。
HRMSC2632FN+Hについての計算値:550.1840,実験値:550.1814。
【実施例3】
【0114】
3−{[(2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロピル)アミノ]メチル}−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミド
【0115】
【化36】

【0116】
工程A:臭化物中間体Aによる中間体IVのアルキル化
1.5mLのDMF中の、臭化物中間体A(102mg、0.23ミリモル)、アミン中間体IV(72mg、0.23ミリモル)及び炭酸カリウム(35mg、0.25ミリモル)の溶液を、室温で16時間攪拌した。この反応混合物をEtOAcで希釈し、水(2×)、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮して、粗製メチル N−(tert−ブトキシカルボニル)−α−[({3−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンジル}アミノ)メチル]フェニルアラニナートを得、これを工程Bに於いてこのまま使用した。
【0117】
工程B:メチルエステルの還元
0℃に冷却した1mLのTHF中の、工程Bからの粗製メチルエステル(38mg、0.06ミリモル)の溶液に、LiBH(0.14mL、0.29ミリモル、2M THF)を滴下により添加した。この反応混合物を室温にまで加温し、進行をLC/MSによってモニターした。LiBHの追加の部分を48時間かけて添加して、出発エステルの消滅を得た。この反応混合物をアセトン及びMeOHでクエンチし、室温で16時間攪拌した。真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(20gのシリカ、50→100%EtOAc/ヘキサン、続いて0→8%(MeOH中10%NHOH)/CHCl)及び分取HPLC(0.1%のTFAを含有する水中5%→95%CHCN、C18PRO YMC20×150mm)によって精製して、tert−ブチル 1−ベンジル−2−({3−({[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]アミノ}カルボニル)−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンジル}アミノ)−1−(ヒドロキシメチル)エチルカルバマートを得、これを工程Cに於いてこのまま脱保護した。
【0118】
工程C:Boc除去
工程BからのBoc誘導体を、CHCl中の50%TFAで30分間処理し、続いて窒素の流れ下で濃縮し、分取HPLC(0.1%のTFAを含有する水中5%→95%CHCN、C18PRO YMC20×150mm)によって精製して、3−{[(2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロピル)アミノ]メチル}−N−[(1R)−1−(4−フルオロフェニル)エチル]−5−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ベンズアミドを、ビスTFA塩として得た。H NMR(400MHz,d−MeOH)δ8.85(d,J=7.9Hz,1H),7.84(s,2H),7.67(s,1H),7.46−7.38(m,2H),7.36−7.25(m,3H),7.25−7.18(m,2H),7.10−7.00(m,2H),5.40−5.18(m,1H),4.12−4.00(m,2H),3.66(ABのA,d,J=11.0Hz,1H),3.61(ABのB,d,J=11.0Hz,1H),3.35(s,3H),3.06−2.88(m,2H),2.95(s,3H),1.58(d,J=7.1Hz,3H)。
【実施例4】
【0119】
3’−[(2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロポキシ)メチル]−5’−{[2−(2−フリル)ピロリジン−1−イル]カルボニル}−1,1’−ビフェニル−2−カルボニトリル
【0120】
【化37】

【0121】
工程A:臭化物中間体Bによる中間体IIのアルキル化
実施例2に記載したのと同様の手順に従って、銀トリフラート及びポリマー結合した2,6−ジtert−ブチルピリジンを使用して、tert−ブチル [1−ベンジル−2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エチル]カルバマートIIを、メチル 5−(ブロモメチル)−2’−シアノ−1,1’−ビフェニル−3−カルボキシラートBによってアルキル化して、メチルエステル上のジオールの追加のエステル交換反応から得られる生成物で汚染された、メチル 5−({2−ベンジル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−ヒドロキシプロポキシ}メチル)−2’−シアノ−1,1’−ビフェニル−3−カルボキシラートを得た。この混合物を、工程Bに於いてこのまま使用した。
【0122】
工程B:加水分解
4mLのTHF中の、工程Aからの粗製メチル 5−({2−ベンジル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−ヒドロキシプロポキシ}メチル)−2’−シアノ−1,1’−ビフェニル−3−カルボキシラート(442mg、0.83ミリモル)の溶液に、1N LiOH(1.25mL、1.25ミリモル)を添加し、この反応混合物を室温で1.5時間攪拌した。1N LiOH(1.25mL、1.25ミリモル)を添加し、この反応混合物を、室温で16時間攪拌した。この反応混合物を水で希釈し、CHCl(3×)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(90gのシリカ、0→85%(EtOAc中の0.5%HOAc)/ヘキサン)によって精製して、259mgの5−({2−ベンジル−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−ヒドロキシプロポキシ}メチル)−2’−シアノ−1,1’−ビフェニル−3−カルボン酸を無色油として得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.21(s,1H),8.13(s,1H),7.84(s,1H),7.81(d,J=7.7Hz,1H),7.70(t,J=7.3Hz,1H),7.57(d,J=7.7Hz,1H),7.51(t,J=7.3Hz,1H),7.30−7.16(m,5H),4.98(s,1H),4.69(ABのA,d,J=12.0Hz,1H),4.65(ABのB,d,J=12.0Hz,1H),3.77(ABのA,d,J=12.0Hz,1H),3.69(ABのB,d,J=12.0Hz,1H),3.59(ABのA,d,J=9.3Hz,1H),3.69(ABのB,d,J=9.3Hz,1H),3.17(ABのA,d,J=13.8Hz,1H),2.93(ABのB,d,J=13.8Hz,1H),1.44(s,9H)。
【0123】
工程C:Pアミンのカップリング及び脱保護
0.5mLのDMF中の、工程Bからの酸(20mg、0.04ミリモル)、2−(2−フリル)ピロリジン(16mg、0.12ミリモル、国際特許出願公開第2000058283号明細書)及びジイソプロピルエチルアミン(0.017mL、0.1ミリモル)の溶液に、BOP試薬(0.021mg、0.05ミリモル)を添加し、この反応混合物を室温で0.25時間保持した。分取HPLC(0.1%のTFAを含有する水中5%→95%CHCN、C18PRO YMC20×150mm)によって精製して、tert−ブチル 1−ベンジル−2−[(2’−シアノ−5−{[2−(2−フリル)ピロリジン−1−イル]カルボニル}−1,1’−ビフェニル−3−イル)メトキシ]−1−(ヒドロキシメチル)エチルカルバマートをTFA塩として得た。CHCl中のHCl(g)で16時間処理し、続いて窒素を流しながら濃縮し、分取HPLC(0.1%のTFAを含有する水中5%→95%CHCN、C18PRO YMC20×150mm)及びフラッシュクロマトグラフィー(8gのシリカ、0→20%(MeOH中10%NHOH)/CHCl)によって精製して、3’−[(2−アミノ−2−ベンジル−3−ヒドロキシプロポキシ)メチル]−5’−{[2−(2−フリル)ピロリジン−1−イル]カルボニル}−1,1’−ビフェニル−2−カルボニトリルを得た。H NMR(400MHz,d−MeOH)ca.1:回転異性体 混合物δ9.91−7.12(m,13H),6.34(brs,0.5H),6.31(brs,0.5H),6.14(brs,0.5H),5.82(brs,0.51−1),5.42−5.36(m,0.5H),5.13−5.05(m,0.5H),4.67(s,1H),4.59(ABのA,d,J=12.8Hz,0.5H),4.53(ABのB,d,J=12.8Hz,0.5H),3.85−3.73(m,1.5H),3.65−3.54(m,0.5H),3.50−3.40(m,2H),2.80(ABのA,d,J=13.2Hz,1H),2.74(ABのB,d,J=13.2Hz,1H),2.38−2.00(m,4H)。
【0124】
LC/MS M+H=536。
【0125】
下記の化合物を、適切な出発物質及び試薬を使用して、前記の実施例の化合物と同様の方法で製造する。
【0126】
【化38】



【0127】
本発明を、この或る特別の実施態様を参照して説明し、例示したけれども、当業者は、手順及びプロトコルの、種々の適合、変更、修正、置換、削除又は追加を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができることを認識するであろう。従って、本発明は、特許請求の範囲によって定義され、このような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、XはO又はNHであり、
YはCH又はNであり、
は、
(1)フェニル及びナフチルからなる群から選択されたアリール又は
(2)ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、ピラジニル、ジヒドロピラジニル、ピラゾリル、ジヒドロピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ジヒドロピリジニル、ピリミジニル、ジヒドロピリミジニル、ピロリル、ジヒドロピロリル、テトラゾリル、ジヒドロテトラゾリル、フラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、イミダゾリル、ジヒドロイミダゾリル、トリアジニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、チアゾリル、チエニル、ジヒドロチエニル、チオフェニル、トリアゾリル、ジヒドロトリアゾリル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロチアジアゾリル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル及びベンゾオキサゾリルからなる群から選択されたヘテロシクリルであり、
ここで、前記アリール又はヘテロシクリルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−C2−6アルケニル、
(d)−C2−6アルキニル、
(e)−OH、
(f)−CN若しくは
(g)−O−C1−6アルキル
で置換されており、
は、
(1)R−S(O)N(R)−(式中、RはC1−6アルキルであり、ここで前記アルキルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
(a)ハロ、
(b)−C1−6アルキル、
(c)−OH、
(d)−CN若しくは
(e)−O−C1−6アルキル
で置換されており、および
は、
(a)水素及び
(b)−C1−6アルキル
からなる群から選択され、ここで前記アルキルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
(i)ハロ、
(ii)−C1−6アルキル、
(iii)−OH、
(iv)−CN若しくは
(v)−O−C1−6アルキル
で置換されている。);
【化2】

からなる群から選択され、
は、
【化3】

(式中、Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC2−6アルキニルである。)
からなる群から選択され、
6a、R6b及びR6cは、
(1)水素、
(2)ハロ、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−C2−6アルケニル、
(5)−C2−6アルキニル、
(6)−OH、
(7)−CN及び
(8)−O−C1−6アルキル
からなる群から独立に選択され、
及びR10は、
(1)水素、
(2)−C1−6アルキル、
(3)−C2−6アルケニル及び
(4)−C2−6アルキニル、
からなる群から独立に選択され又はR及びR10は、これらが結合している窒素原子と一緒に結合して、ピロリジン環(但し、この環は、
(a)−C1−6アルキル、
(b)−C2−6アルケニル、
(c)−C2−6アルキニル、
(d)(CH−フェニル及び
(e)(CH−フラニル
で場合により置換されており、ここで前記アルキル、フェニル及びフラニルは、置換されていないか又は1種若しくは2種以上の
i)ハロ、
ii)−C1−6アルキル、
iii)−OH、
iv)−CN若しくは
v)−O−C1−6アルキル
で置換されている。)
を形成し、
11は、
(1)−CH−、
(2)−O−及び
(3)−NH−
からなる群から選択され、但し、R11が−CH−であるとき、点線は結合を形成し、およびR11が−O−又は−NH−であるとき、点線は存在せず、
12は、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル又はC2−6アルキニルであり、
mは、1又は2であり、
nは、0、1、2、3又は4であり、
pは、1、2、3又は4である。]
の化合物及びこれらの医薬適合性の塩。
【請求項2】
mが1であり、およびRが、置換されていない又は1個若しくは2個以上のクロロ若しくはフルオロで置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mが2であり、およびRが、置換されていない又は1個若しくは2個以上のクロロ若しくはフルオロで置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
mが1であり、およびRがチオフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が(R)−S(O)N(R)−であり、およびRがC1−6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
及びRがそれぞれメチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、
【化5】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
6a及びR6cが水素であり、およびR6bがフルオロである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、
【化6】

である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が、
【化7】

であり、およびR及びR10が、これらが結合している窒素原子と一緒に結合して、ピロリジン環(但し、この環は、置換されていないか又は
(a)C1−6アルキル、
(b)(CH−フェニル若しくは
(c)(CH−フラニル
で置換されている。)を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
及びR10が、これらが結合している窒素原子と一緒に結合して、(CH−フラニル(式中、nは0である。)で置換されたピロリジン環を形成する、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
が、
【化8】

である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、
【化9】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式II:
【化10】

(式中、X、Y、R、R、R、R6a、R6b、R6c及びmは、請求項1に定義した通りである。)
の、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式(III):
【化11】

(式中、X、Y、R、R、R、R10及びmは、請求項1に定義した通りである。)
の、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
式(IV):
【化12】

(式中、X、Y、R、R、R11、R12及びmは、請求項1に定義した通りである。)
の、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
【化13】






からなる群から選択された、請求項1に記載の化合物並びにこれらの医薬適合性の塩。
【請求項20】
【化14】


からなる群から選択された、請求項19に記載の化合物並びにこれらの医薬適合性の塩。
【請求項21】
有効量の請求項1に記載の化合物及び医薬適合性の担体を含有する医薬組成物。
【請求項22】
哺乳動物に治療的に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、β−セレクターゼ活性の阻害が必要な哺乳動物に於けるβ−セクレターゼ活性の阻害方法。
【請求項23】
患者に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、アルツハイマー病の治療が必要な患者に於けるアルツハイマー病の治療方法。
【請求項24】
患者に有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、アルツハイマー病の治療が必要な患者に於けるアルツハイマー病の治療方法。

【公表番号】特表2007−507515(P2007−507515A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534062(P2006−534062)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/032009
【国際公開番号】WO2005/032471
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】