説明

アンダーフィル樹脂組成物

【課題】 隙間への浸入性が良好で、ヒートサイクル試験後のクラックや剥離の抑制に効果的なアンダーフィル樹脂組成物、及び、それを使用した半導体装置を提供する。
【解決の手段】 エポキシ樹脂(A)、アミン化合物又はフェノール化合物の硬化剤(B)、有機ポリマーからなるシェル部と、ガラス転移温度が0℃以下のシリコーン化合物からなるコア部とを有するゴム粒子(C)、及び、最大粒径が0.1〜10μmで比表面積が3.2m/gより大きく10m/g以下である無機充填材(D)を含有してなり、前記エポキシ樹脂(A)と前記硬化剤(B)との混合物の25℃における粘度が300〜10000mPa・sであるアンダーフィル樹脂組成物、並びにそれを使用したフリップチップデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子のアンダーフィル封止に用いるアンダーフィル樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、エポキシ樹脂、硬化剤、有機ポリマーのシェル部とシリコーン化合物のコア部とを有するゴム粒子及び無機充填材からなるアンダーフィル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高集積化の動向を反映して、半導体素子のサイズは大きくなり、配線は微細化している。このような半導体素子を配線基板に電気的に接続して高速で動作させるために、半導体素子に半球状の突起電極(バンプともいう。ハンダ等の金属製。)を形成して、このバンプによって配線基板と一括接合するフリップチップ接続と呼ばれる実装方法が採用されている。この場合に、フリップチップ接続の微細な接続部であるバンプを保護するために、半導体素子と配線基板との隙間(通常数十μm程度)に、毛管現象を利用して半導体素子の側部からアンダーフィル樹脂を充填し、硬化させることにより封止するアンダーフィル封止技術が使用されている。同様に、ハンダボールをグリッド状に並べたICのパッケージであるBGA(Ball Grid Arrayの略。)やCSP(Chip Size Packageの略。BGAの狭ピッチのもので、チップと同サイズ又はわずかに大きいパッケージの総称。)の実装においても、ハンダボールの接続強度の補強のためにアンダーフィル樹脂が使用されている。
【0003】
このフリップチップ接続やBGAやCSPの実装において、バンプやボールを形成するハンダが共晶ハンダから鉛フリーハンダに移行するに伴い、リフロー温度がより高くなり、半導体素子のパッケージにかかる熱応力が増大し、その結果、従来のアンダーフィル樹脂組成物では封止部にクラック、剥離及びハンダバンプのクラック、変形等が発生することが問題となってきた。また、ハンダフラックスに関しても、ノンクリーンフラックスの採用や、またはフラックス洗浄工程をとる場合であっても、ハンダバンプピッチの微細化などが原因で、フラックス残渣が発生し、そのために半導体パッケージの信頼性が低下することが指摘されてきた。
【0004】
こうした問題を防ぐためにアンダーフィル樹脂組成物の低応力化、高接着力化、高靱性化等が試みられてきた。このような技術としては、例えば、液状エポキシ樹脂に無機充填材とアクリル系微粒子を添加した組成物(特許文献1参照。)、液状エポキシ樹脂にエラストマーと界面活性剤を添加した組成物(特許文献2参照。)、充填材として比表面積1.4〜3.2m/gの粒子を添加した組成物(特許文献3参照。)等が開示されている。しかしながら、従来の方法では、隙間への浸入性が悪かったり、ヒートサイクル試験後のクラックや剥離の抑制効果が充分ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−146160号公報
【特許文献2】特開2004−75835号公報
【特許文献3】特開2001−127215公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の現状に鑑み、本発明は、隙間への浸入性が良好で、ヒートサイクル試験後のクラックや剥離の抑制に効果的なアンダーフィル樹脂組成物、及び、それを使用した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、有機ポリマーからなるシェル部と、ガラス転移温度が0℃以下のシリコーン化合物からなるコア部とを有するゴム粒子(C)、及び、最大粒径が0.1〜10μmで比表面積が3.2m/gより大きく10m/g以下である無機充填材(D)を含有してなり、前記エポキシ樹脂(A)と前記硬化剤(B)との混合物の25℃における粘度が300〜10000mPa・sであるアンダーフィル樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明のアンダーフィル樹脂組成物は、上述の構成により、隙間への浸入性、接着性において良好な結果を与える。
(2)本発明のアンダーフィル樹脂組成物は、上述の構成により、ゴム粒子の分離を生じることがなく、安定した性能を発揮する。
(3)本発明のアンダーフィル樹脂組成物は、上述の構成により、充填材とエポキシ樹脂との分離を生じることがない。
(4)本発明のアンダーフィル樹脂組成物は、上述の構成により、ヒートサイクル試験後のクラックや剥離の抑制に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の組成物におけるエポキシ樹脂(A)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーであれば特に限定されない。上記エポキシ樹脂(A)は、常温で液状でないものでもよいが、常温で液状のものが好ましい。上記エポキシ樹脂(A)としては、具体的には、例えば、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0010】
また、上記エポキシ樹脂(A)に加えて、1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物を使用してもよい。このような化合物としては、例えば、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0011】
上記1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物の配合量は、上記エポキシ樹脂(A)との合計量に対して50重量%未満であることが好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。
【0012】
なお、上記エポキシ樹脂、及び、上記1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物としては、不純物イオン濃度の低いものが好ましい。
【0013】
本発明の組成物における硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂の硬化に使用される化合物であれば使用可能であるが、なかでも、アミン系化合物、フェノール系化合物が好ましい。
【0014】
上記アミン系化合物としては、1分子中に2個以上のアミノ基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーであってよく、常温で液状でないものでもよいが、常温で液状のものが好ましい。上記アミン系化合物の具体例としては、例えば、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0015】
上記フェノール系化合物としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーであってよく、常温で液状でないものでもよいが、常温で液状のものが好ましい。上記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック系化合物、クレゾールノボラック系化合物、ナフトール系化合物、ビスフェノール系化合物、ハイドロキノン系化合物等を挙げることができ、なかでも、3−(2−プロペニル)−4−ヒドロキシ−3′−(2−プロペニル)−4′−ヒドロキシジフェニルメタン等の室温で液状のものが好ましい。
【0016】
本発明の組成物中、上記硬化剤(B)の配合量は、上記エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、10〜100重量部が好ましく、より好ましくは30〜80重量部である。
【0017】
本発明の組成物においては、上記エポキシ樹脂(A)及び上記硬化剤(B)の混合物の25℃における粘度が300〜10000mPa・sである。25℃における粘度が300mPa・sより小さいと、一旦分散したゴム粒子(C)(ゴム粒子(C)については以下に詳述する。)が硬化中に分離してしまい、硬化物の安定した機械特性が得られず、10000mPa・sを超えると、隙間への浸入性が悪化して使用が困難となる。より好ましくは600〜5000mPa・sであり、さらに好ましくは1000〜3000mPa・sである。上記混合物の粘度の調節は、例えば、上記1分子中に1個以上のエポキシ基を有し、常温で低粘度の化合物を使用して行うことができる。なお、粘度はE型回転粘度計で測定することができる。
【0018】
本発明の組成物におけるゴム粒子(C)は、有機ポリマーからなるシェル部と、ガラス転移温度が0℃以下のシリコーン化合物からなるコア部とを有する。コア部となるシリコーン化合物は、2官能性シロキサンであるジオルガノシロキサンを主原料とし、[RR′SiO2/2]を主たる構成単位とするオリゴマー又はポリマーである。
【0019】
上記シリコーン化合物は、架橋成分として3官能性シロキサン及び/又は4官能性シロキサンが使用されて[R′′SiO3/2]単位及び/又は[SiO4/2]単位を含有することが好ましい。これらの式中、R、R′、R′′は、独立して、アルキル基又はアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数6個以下のアルキル基又はフェニル基が好ましい。また、コア部の重合後にシェル部を形成する際にコア部とシェル部とをより強固に結合させるために、これらの基の少なくとも一部において、末端不飽和エチレン基を持つ置換基を有していてもよい。
【0020】
上記3官能性シロキサン又は4官能性シロキサンの配合量、該当する場合は3官能性シロキサン及び4官能性シロキサンの配合量、は、シリコーン化合物中、1〜10モル%が好ましく、2〜8モル%がより好ましい。シリコーン化合物の柔軟性を保持し、エポキシ樹脂組成物の機械強度の向上、発生応力の低減の観点から、3官能性シロキサン又は4官能性シロキサンの配合量が10モル%以下が好ましく、架橋密度を確保しつつ未反応のシロキサンが残留して硬化後にしみ出すおそれを防止する観点から、1モル%以上が好ましい。
【0021】
上記シリコーン化合物のガラス転移温度は0℃以下である。ガラス転移温度が0℃を超えると充分な柔軟性が発揮できず、エポキシ樹脂組成物の機械強度の向上、発生応力の低減効果が発揮されない。
【0022】
上記シェル部をなす有機ポリマーとしてはその種類を特に限定するものではないが、エポキシ樹脂及び硬化剤との相溶性がよいものが好ましい。このようなものとしては、例えば、不飽和エチレン基含有モノマーの重合体を使用することができる。上記不飽和エチレン基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、ビニルブチラール、酢酸ビニル等を挙げることができる。また、エポキシ樹脂との界面の強化のために、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基と不飽和エチレン基との両方を有する化合物を使用してもよい。
【0023】
上記ゴム粒子(C)において、上記コア部と上記シェル部との割合は、ゴム粒子中、コア部の割合が50〜95重量%であることが好ましい。コア部の割合が50重量%未満であるとゴム粒子の柔軟性が損なわれ、硬化エポキシ樹脂組成物の機械強度の向上、発生応力の低減効果が薄れてしまう。コア部の割合が95重量%を超えると、ゴム粒子とエポキシ樹脂との濡れ性が悪化し、隙間への浸入性が悪化し、機械強度の不均一等を誘発する。コア部の割合が60〜85重量%がより好ましい。
【0024】
上記ゴム粒子(C)は、1次粒子の平均粒径が10〜500nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、ゴム粒子の凝集が激しくて均一に分散できないおそれがあり、500nmを超えると硬化物の機械強度の向上、発生応力の低減効果が充分に発揮できないおそれがある。1次粒子の平均粒径は30〜300nmがより好ましい。
【0025】
上記ゴム粒子の製造は、公知の方法によることができ、例えば、まずコア部のシリコーン化合物を重合し、つぎに、上記シリコーン化合物の重合体の存在下に、不飽和エチレン基含有モノマーの重合を行う方法で得ることができる。シリコーン化合物の重合は、例えば、乳化重合等の公知の手法を採用することができる。不飽和エチレン基含有モノマーの重合は、公知の開始剤の存在下に行うことができ、上記シリコーン化合物の重合に引き続いて、上記不飽和エチレン基含有モノマー及び開始剤を添加し、重合反応を行えばよい。
【0026】
本発明の組成物中、上記ゴム粒子(C)の添加量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して5〜40重量部が好ましい。5重量部未満であると添加の効果が充分でない場合があり、40重量部を超えると隙間への浸入性が悪化するおそれがある。より好ましくは10〜25重量部である。
【0027】
本発明の組成物における無機充填材(D)は、最大粒径が0.1〜10μmである。最大粒径が0.1μm未満であると組成物の粘度が増大してチキソトロピーが発生し、浸入速度が著しく低下する。最大粒径が10μmを超えると、アンダーフィル時に半導体素子と基板との間の隙間が目詰まりする。好ましくは2〜10μmであり、より好ましくは4〜8μmである。なお、最大粒径は、粒径分布における最大粒径であるが、造粒時にそれ以上の粒径の粒子をカットするように設定することにより得られる粒子の場合においては、そのような上限カットの設定値として与えられる。
【0028】
また、無機充填材(D)の比表面積は3.2m/gより大きく10m/g以下である。比表面積が3.2m/g以下であると、浸入速度は速くなるものの、充填材と液状成分との分離が発生し、硬化物の機械強度の向上、発生応力の低減効果が安定に発揮できない。比表面積が10m/gを超えると、チキソトロピーが発生し、浸入速度が著しく低下する。従って、本発明における無機充填材(D)の比表面積は、上記範囲に限定される。好ましくは4〜9m/gであり、より好ましくは5〜8m/gである。
【0029】
上記無機充填材(D)としては、具体的には、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ(例えば、気相法、ゾルゲル法、ナトナウムシリケート法等の方法によるもの。)、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等を挙げることができる。これらのうち、合成シリカが純度の点で好ましく、さらに、球状のものが、添加時の粘度が低いので、優れた隙間への浸入性を得る観点から、好ましい。
【0030】
本発明の組成物中、上記無機充填材(D)の添加量は、組成物中、40〜70重量%であることが好ましい。40重量%未満であると熱膨張係数が大きくなり、半導体素子やバンプ、ボールとアンダーフィル材との界面での応力が大きくなって、剥離、クラックのおそれが増す。70重量%を超えると組成物の粘度が増加し、浸入速度が低下するおそれがある。より好ましくは50〜65重量%である。
【0031】
本発明の組成物には、本発明の目的を阻害しないかぎり、必要に応じてその他の添加物を使用することができる。上記その他の添加物としては、例えば、シランカップリング剤、カーボンブラック(着色剤)、消泡剤、界面活性剤、硬化促進剤(例えば、イミダゾール系化合物等、例えば、2−メチルイミダゾール等)等を挙げることができる。
【0032】
上記その他の添加物の配合量は、添加物の種類にもよるが、概ね、本発明の組成物中、0.5〜5重量%が好ましい。
【0033】
本発明の組成物は、上述の各成分を、所定量において、混合機で充分混合することにより好適に製造することができる。上記混合機としては、例えば、3本ロールミル、2軸ミキサー、回転式混合機、ポットミル等を挙げることができる。その際、ゴム粒子(C)はマスターバッチ化し、できるだけ1次粒子に近い状態で組成物中に分散させてから使用することが好ましく、例えば、(1)ゴム粒子をエポキシ樹脂に添加し、3本ロールで分散させた後、ミキサーにて120℃で加熱混合する方法、又は、(2)ゴム粒子を溶剤(例えば、メチルイソブチルケトン等)に分散させた状態でエポキシ樹脂を加え、混合した後、加熱減圧混合により溶剤を除去する方法等を使用することができる。上記方法によりゴム粒子とエポキシ樹脂との濡れ性が向上する。
【0034】
本発明の組成物は、フリップチップ接続の微細な接続部であるバンプを保護するために、半導体素子と配線基板との隙間に充填して封止するフリップチップ用アンダーフィル樹脂として使用することにより、フリップチップを使用した半導体装置を製造することができる。また、ハンダボールをグリッド状に並べたICのパッケージであるBGAやCSPの実装においても、ハンダボールの接続強度の補強のためのアンダーフィル樹脂として使用してBGAやCSPを実装した半導体装置を製造することができる。図1は、本発明の組成物を使用した半導体装置の模式図である。本発明の組成物は、常温で液状とすることができるので、アンダーフィル樹脂11はディスペンサーを使用して常温(25℃程度)で充填を行うことができるが、一般には、樹脂の充填は、常温〜120℃程度で行うことができる。この際、チップの周囲の側部がスカート状に広がり、いわゆるフィレット13が形成されることが好ましい。硬化条件としては、例えば、120〜170℃、1〜10時間が好ましい。
【0035】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
以下における略号の意味は以下のとおり。
エポキシ樹脂:ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル(エポキシ当量160、粘度2000mPa・s(25℃))
硬化剤A:3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン
硬化剤B:3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン
硬化剤C:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(日立化成社製HN5500)
硬化剤D:メチルテトラヒドロフタル酸無水物(日本ゼオン社製クインハード200)
硬化剤E:3−(2−プロペニル)−4−ヒドロキシ−3′−(2−プロペニル)−4′−ヒドロキシジフェニルメタン(粘度2500mPa・s(25℃)、水酸基当量141g/eq)
シリカA:合成球状シリカ(最大粒径6μm、比表面積5m/g)
シリカB:合成球状シリカ(最大粒径6μm、比表面積2m/g)
シリカC:合成球状シリカ(最大粒径20μm、比表面積1m/g)
シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ゴム粒子:ジメチルジメトキシシラン97mol%、メチルトリメトキシシラン3mol%から合成されたコア(Tgは0℃以下)部と、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のシェル部を有し、平均1次粒子径が70nmのゴム粒子(コア部がゴム粒子全体に占める重量割合は約70%)
CTBN:カルボキシル基末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合物(アクリロニトリル18重量%、数平均分子量9000)
ブタジエンゴム粒子:ブタジエンゴムをコア部にもち、PMMAをシェル部にもち、1次粒子径が150nmのゴム粒子)
【0037】
実施例1〜4、比較例1〜7
表1の配合(重量部)により各成分を混合した。ゴム粒子は、エポキシ樹脂に添加して3本ロールで分散させた後、ミキサーにて120℃で加熱混合してマスターバッチとした。得られた樹脂組成物について、以下の項目を評価した。なお、粘度は、エポキシ樹脂と硬化剤との混合物の25℃における粘度をE型回転粘度計で測定した。
評価方法
分離の有無:組成物を160℃、5時間の条件で、80mm×10mm×0.5mmのサイズにて硬化後、ゴム成分の分離の有無を目視にて観察した。分離が生じていないものを○、分離が生じているものを×とした。なお、分離が生じたものについては、以下の項目の評価を実施しなかった。
接着強度:SiN膜を形成したSiチップ(2mm×5mm)を得られた組成物で貼り合わせてから硬化させ、チップの長さ方向に並行に押し、破壊したときの強度をチップ面積で割った値で表した。
隙間への浸入性:2枚のガラス板の間に、ハンダバンプで50μmのギャップを作成し、このギャップに得られた組成物を100℃で浸入させた。浸入後に目視で観察し、分離やボイドがない場合を○とし、分離やボイドが発生した場合を×とした。
ヒートサイクル試験:模擬フリップチップパッケージ(Siチップ15mm角、ハンダバンプ中央間ピッチ200μm)を得られた組成物でアンダーフィル封止したものを、−55℃と+125℃に交互に15分間ずつ放置するサイクルを250回繰り返すごとに顕微鏡及びSATにてクラック、剥離を観察し、不良が出るまで(クラック及び/又は剥離が観察されたか否かで判定した。)のサイクル数を測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例及び比較例から、以下のことがわかる。
実施例1〜4では、充分に液状粘度が高いために、ゴム粒子の分離がなく、隙間への浸入性、接着性、ヒートサイクル試験の全てに良好な結果を示した。このため、硬化物の機械強度の向上、発生応力の低減効果が充分であり、しかも、ヒートサイクル試験にも良好な結果を発揮することができた。
比較例1、2では、液状粘度が低いため、ゴム粒子の分離が生じた。このため、接着強度やヒートサイクル試験の対象としなかった。
比較例3は、実施例1の配合からゴム粒子を除いた配合に相当するが、接着強度が低く、ヒートサイクル試験も結果がよくない。
比較例5、6は、実施例1の配合におけるゴム粒子の代わりに、別のゴム粒子を使用した配合に相当するが、接着強度やヒートサイクル試験の結果が実施例1に比べて悪化した。
比較例4、7は、実施例1の配合から充填材の粒径を変化させた配合に相当するが、隙間への浸入性試験時に充填材と液状成分との分離が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のアンダーフィル樹脂組成物は、隙間への浸入性が良好で、ヒートサイクル試験後のクラックや剥離の抑制に効果的であるので、鉛フリーハンダを使用したフリップチップ接続やBGAやCSPの実装に使用することにより、高信頼性の半導体装置を製造することができるので、歩留りよく良好な半導体装置を製造することができる。また、フラックス残渣の発生に対しても効果的に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】アンダーフィル封止をした半導体装置の概念図。
【符号の説明】
【0042】
10.半導体素子
11.アンダーフィル樹脂
12.バンプ又はハンダボール
13.フィレット
14.基板
15.電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、有機ポリマーからなるシェル部と、ガラス転移温度が0℃以下のシリコーン化合物からなるコア部とを有するゴム粒子(C)、及び、最大粒径が0.1〜10μmで比表面積が3.2m/gより大きく10m/g以下である無機充填材(D)を含有してなり、前記エポキシ樹脂(A)と前記硬化剤(B)との混合物の25℃における粘度が300〜10000mPa・sであるアンダーフィル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ゴム粒子(C)は、不飽和エチレン基含有モノマーの重合体からなるシェル部と、3官能性シロキサン及び/又は4官能性シロキサン1〜10モル%と2官能性シロキサン99〜90モル%との重合体からなるコア部とを有し、1次粒子の平均粒径が10〜500nmのゴム粒子である請求項1記載のアンダーフィル樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(B)は、アミン化合物又はフェノール化合物である請求項1又は2記載のアンダーフィル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のアンダーフィル樹脂組成物を用いて封止された半導体装置。


【図1】
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【公開番号】特開2006−169395(P2006−169395A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−364486(P2004−364486)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】