説明

アンダープロテクション装置を備える自動車

本発明は、自動車の下側に取り付けられるデフレクタ(16)を有するアンダープロテクション装置(2)を備える、自動車、特にオフロード車両又はピックアップ車に関する。改良型アンダープロテクション装置を構築するため、デフレクタ(16)は格納位置と展張位置との間を移動可能な方式で下側に取り付けられる。
(図2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に従う、自動車の下側に装着される耐衝撃プレートを有するアンダープロテクション装置を備える、自動車、特にオフロード車両又はピックアップ車に関する。
【背景技術】
【0002】
大きいロードクリアランス及び高いオーバハング角を備える自動車の場合、衝突の際に従来の乗用車のより低い前部構造に乗り上げるリスクがあり、これはより低い前部構造を備える乗用車がより大きいロードクリアランスを備える自動車の下に進入することにつながる。かかる潜り込みを回避するため、オフロード車両又はピックアップ車にアンダープロテクション装置を設けることが知られている。
【0003】
特許文献1は、プリセーフシステム(Pre−Safe System)を備える自動車を開示し、これは少なくとも1台の車両環境検出装置及びバネ及び車台と車体との間に配置されるバネ及び衝撃吸収装置を有し、バネ及び衝撃吸収装置は車両環境検出装置により検知されるデータ評価装置において評価される信号の関数として作動される。車両環境検出装置のデータ評価装置がアクティブ車台制御システムの制御ユニットに連結されることでバネ及び衝撃吸収装置が作動されるとともに、それによって特定の衝突状況が事前に特定され、かつ少なくとも実質的に1つの持ち上げ動作である車高調整が実行される。
【0004】
特許文献2は、その前端に装着される耐衝撃体を備える鉄道車両用保護装置を開示する。人が轢かれるのを防止するため、及び当人に対する衝突に伴う重大な傷害を最小限に抑えるため、耐衝撃体が車両の全幅を被覆するとともにレールの上縁から約2m上まで到達し、及び相当な厚さのプラスチック材料からなる。耐衝撃体の下部はロータリージョイントによって耐衝撃体の残りの固定部までのその後部ライン上に取り付けられる事ができる。防撃体は、非常スイッチにより起動される少なくとも1個の作動要素により、及び/又は自動制動システムにより、及び/又は運転者により作動される制動システムにより、上方から作用される事ができる。
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10337620A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4216025A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改良型アンダープロテクション装置を有する、自動車、特にオフロード車両又はピックアップ車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的を達成するため、請求項1の特徴を備える自動車が提案され、該自動車は、自動車の下側に装着される耐衝撃プレートを備えるアンダープロテクション装置を有する。自動車は、耐衝撃プレートが、格納位置と展張位置との間を可動にその下側に装着されることを特徴とする。耐衝撃プレートは自動車の下側の前部、後部又は側方に配置される事ができる。複数の耐衝撃プレートが異なる箇所に配置されてもよい。その格納位置において、耐衝撃プレートは大きいロードクリアランス及び高いオーバハング角を可能にする。その展張位置において、耐衝撃プレートは、より低いレベル、好ましくはその衝突構造物と同じレベルに配置される耐衝撃面又は耐衝撃縁を使用することにより低い前部構造を備える衝突相手の潜り込みを防止し、衝突車両に対し抵抗を提供する。従って、その展張位置において、アンダープロテクション装置は潜り込み防止装置の機能を呈する。
【0008】
異なる剛性領域のため、耐衝撃プレートは、より低速での衝突において、車両支持構造体の一体化部材であってアンダープロテクションの後方に位置する一体化部材の破損を回避するうえで好適な変形特性を伴い実現される事ができる。
【0009】
自動車の好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが自動車の下側に枢着されることを特徴とする。好ましくは耐衝撃プレートは、好ましくは自動車の前輪軸の領域に配置される1個又は複数のピボット軸受によって枢動可能に取り付けられる。枢動可能な装着はまたフィルムヒンジを用いた線状の脆弱部によっても行われる事ができる。有利な実施形態において、耐衝撃プレートはスタビライザに連結され、次にスタビライザが一体化部材に装着される事ができる。
【0010】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが自動車の前輪軸部材に連結されることを特徴とする。車両の長手方向にかかる大きい長手方向の力は耐衝撃プレートにより前輪軸部材を介して自動車の支持構造体に導入される事ができる。
【0011】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが自動車のバンパー領域、特にフロントバンパー領域内に展張することを特徴とする。耐衝撃プレートの展張位置において、耐衝撃プレートの外側、特に前端は好ましくは、自動車のフロント又はリアバンパー領域と地面との間に配置される。結果として、自動車のロードクリアランスがこの領域内において減少されることとなる。
【0012】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートを移動させるためにアクチュエータ装置が提供され、該アクチュエータ装置が耐衝撃プレートに対し、例えばその自動車のフロントバンパー領域に隣接する領域内において作用することを特徴とする。第1の変形実施形態に従えば、アクチュエータ装置は耐衝撃プレートをその格納位置からその展張位置へと、及びその逆に、枢動させる働きをする。第2の変形実施形態によると、アクチュエータ装置は展張された耐衝撃プレートをその格納された基本位置へと再定置する働きのみをする。この変形実施形態の場合、耐衝撃プレートのその格納位置からその展張位置への移動は、例えば、耐衝撃プレートの自重により自動的に行なわれ得るととともに、適切であるならば、追加的にバネ力によって補助される。
【0013】
アクチュエータ装置はクラッシュボックスの前方、クラッシュボックス上又は後方に配置される事ができる。アクチュエータ装置は好ましくは、比較的軽度の事故時にアクチュエータ装置の破損を防止するため、クラッシュボックスの後方に装着される。
【0014】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、アクチュエータ装置がフロントバンパー領域の後方で自動車の支持構造体に装着されることを特徴とする。アクチュエータ装置は好ましくは、支持構造体のクロスメンバ又は自動車のバンパー曲げ部材に装着される。アクチュエータ装置は好ましくは、低い衝突速度でのアクチュエータ装置の破損を回避するため、クラッシュボックスの後方に配置される。
【0015】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、アクチュエータ装置が複数のアクチュエータ要素を有し、耐衝撃プレートがその展張位置にあるとき、それらが衝撃を及ぼす衝突相手に対し支持ベースを形成し得ることを特徴とする。耐衝撃プレートの展張位置において、アクチュエータ要素は好ましくは、鉛直方向に、すなわち、地面に対して本質的に垂直に展張する。
【0016】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが自動車の長手方向に所定の方式で変形可能な設計であることを特徴とする。耐衝撃プレートの意図される所定の変形により得られる効果は、衝突相手との衝突において、衝撃力が意図的に吸収されることである。
【0017】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが特に自動車の長手方向に高い固有剛性を有することを特徴とする。本質的にシート状、すなわち板状設計である耐衝撃プレートの固有剛性は、好ましくは、その壁厚により、又は好ましくは自動車の長手方向における耐衝撃プレート上の対応するエンボス加工により得られる。エンボス加工された耐衝撃プレートはまた、2層シェルの形態であるべき閉鎖プレートによっても構成され、ひいては支持要素を作り出すことができる。耐衝撃プレートはまたその前側で、枢動可能な構造モジュールの作動時に負荷分散効果を提供する支持部品へと開放することもできる。
【0018】
本発明のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが、折り畳み補助要素が提供される外側、特に前部剛性領域、及び、外側、特に前部剛性領域より特に自動車の長手方向に有意に高い固有剛性を有する内側、特に後部剛性領域を有することを特徴とする。衝突の際、前部領域は好ましくは、曲げクロスメンバ及びクラッシュボックスと共に作動する、すなわち、衝突相手から力を受ける。後部領域は好ましくは長手方向により有意に高い固有剛性を有する。従って高速での衝突時、エネルギー/力は追加的な荷重経路により車両支持構造体の一体化部材へと取り込まれる事ができる。耐衝撃プレートの力のレベルは、特に2層シェルの形態において、対応するビード形状を介して、又はシェルの異なる壁厚により、例えば柔軟な圧延材料により、それぞれの要件に釣り合う事ができる。シェルの特有のエンボス加工によって、事故の相手方とのより良好な重なり合いが達成される事ができる。耐衝撃プレートは前部及び/又は後部において多段階式に、又は連続的に変形可能な設計とされる事ができる。剛性は好ましくは、特に前部から後部に向け連続的に増加する。
【0019】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、外側、特に前部変形部分が交換可能な設計であることを特徴とする。これはアンダープロテクション装置の修理を簡素化する。加えて、低速での事故後、交換される必要があるのは耐衝撃プレート全体よりむしろ耐衝撃プレートの一部のみであることから、費用が節減される。
【0020】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが外側、特に前部変形部分を有し、これが外側変形部分より高い剛性を有する内側、特に後部支持部分に装着されることを特徴とする。異なるレベルの剛性の目的は、低速での衝突について、車両支持構造体の一体化部材の破損を回避する変形特性を実現することであり、該一体化部材はアンダープロテクションの後方に定置される。従ってアクチュエータが接続される領域の前の前部領域は交換可能な設計であるように構成される事ができる。
【0021】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、変形部分が支持部分に枢着されることを特徴とする。枢動性は、例えば、所定の曲げ縁又は線状の脆弱部又は1つ又は複数のピボット軸受によって実現される事ができる。
【0022】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートがモータ又は手動により格納位置から展張位置へと可動であることを特徴とする。耐衝撃プレートのモータ駆動式降下は結果として自動車の前端構造に入口開口をもたらし、該入口開口はまた、例えば工具の収容など、別の方式でも使用され得るとともに一連のさらなる可能性を提供する。
【0023】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが自動車の通常運転中はその展張位置に配置されるとともに必要性が生じた時のみ格納位置に移動することを特徴とする。耐衝撃プレートはオフロードモードにおいては、例えば手動制御システムを介して、上方に移動、特に枢動する事ができる。
【0024】
自動車のさらなる好ましい実施形態は、耐衝撃プレートが自動車の通常運転中はその格納位置に配置されるとともに必要性が生じた時のみ展張位置に移動することを特徴とする。耐衝撃プレートの動作は好ましくは対応するプリクラッシュ(Pre−Crash)作動又はプリセーフ(Pre−Safe)作動を介して制御される。降下及び適合性位置とも称される展張位置におけるロックは、プリセーフ(Pre−Safe)状況又はプリクラッシュ(Pre−Crash)状況においてのみ始動される。
【0025】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、様々な実施形態が図面の参照を伴い詳細に記載される下記の説明から明らかとなる。特許請求の範囲及び明細書から明らかとなる特徴は、本発明にとって個別にそれ自体又は任意の所望の組み合わせにおいて各々本質的である事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は自動車の支持構造体1の前部領域を概略断面図で図示する。アンダープロテクション装置2が支持構造体1に装着される。支持構造体1は長手方向部材5の前端4を有する。接続部材7が長手方向部材5の前端4から自動車の長手方向に伸張する。クロスメンバ9が接続部材7の前端に装着される。クロスメンバ9はフロントバンパー10(単に示唆されるのみ)を固着する働きをする。
【0027】
さらに、接続部材12が車両支持構造体1の上部長手方向部材5から垂直方向下方に伸張する。別の下部長手方向部材14が接続部材12をその下端で安定させる。耐衝撃プレート16は、後端17及び前端18を有し、接続部材12の下端に枢着される。その後端17において、耐衝撃プレート16は、車両の長手方向に対し横方向かつ図1における図の平面に対し垂直に延びる枢軸20の周囲を枢動できるような方式で、接続部材12の下端に装着される。枢軸20は支持構造体1に対する耐衝撃プレート16の連結点である。
【0028】
その前端18において、耐衝撃プレート16は別の連結点22を有し、その補助により耐衝撃プレート16はアクチュエータ装置24(単に両端矢印により示唆されるのみ)の一端に枢着連結される。アクチュエータ装置24の他端は連結点25を介して支持構造体1のクロスメンバ9に枢着連結される。
【0029】
図1は耐衝撃プレート16をその格納位置において図示する。格納位置において、耐衝撃プレート16は高いオーバハング角及び大きいロードクリアランスを可能にする。事実上、耐衝撃プレート16の前端18とバンパー10との間に、対象物が挟まれる、又は貫通する間隙はない。
【0030】
図2は耐衝撃プレート16のその展張位置を実線で、その格納位置を破線26で図示する。その展張位置においても、耐衝撃プレート16は、例えば、従来の乗用車などのより低い衝突相手に支持構造体も提供し、当該支持構造体に対してより低い車両はその前端構造を作動させることができる。これにより本発明に従うアンダープロテクション装置2を装備するオフロード車両がより低い車両に「乗り上げる」ことが確実に回避される。
【0031】
本発明に従うアンダープロテクション装置2は好ましくは、前輪軸部材の下に装着されるとともにバンパー領域の範囲まで上昇する。耐衝撃プレート16はその後端17で前輪軸部材又はボディシェルとも称される支持構造体1の別の耐荷重要素にヒンジの方式で接続されるとともに、車体の支持構造体に大きい長手方向の力を導入することができる。その前端18において、耐衝撃プレート16は前部クロスメンバ9の、又はバンパー曲げ部材にアクチュエータ装置24を介して接続される。アクチュエータ装置24は、例えば、枢動可能な、格納及び/又は展張可能な、又はトグルレバーの方式のアクチュエータ要素を有する。耐衝撃プレート16は前記アクチュエータ要素を介してその後部ヒンジ状固着体20の周りを枢動される事ができる。アクチュエータ要素は好ましくは、前部に対し車両の前側に向かって衝撃を及ぼす車両又は他の衝突相手用の支持ベースを形成するような方式で設計される。
【0032】
枢動動作は手動で、又はプリセーフ(Pre−Safe)作動又はプリクラッシュ(Pre−Crash)作動を介して起動される事ができる。手動作動において、アンダープロテクション装置2の通常位置は、耐衝撃プレート16の降下又は展張位置にある。耐衝撃プレート16はオフロードモードにおいてのみ上方に枢動される。プリセーフ(Pre−Safe)作動又はプリクラッシュ(Pre−Crash)作動において、通常運転中は耐衝撃プレート16はその格納位置にある。プリセーフ(Pre−Safe)状況又はプリクラッシュ(Pre−Crash)状況においてのみ、耐衝撃プレート16の降下及び適合位置とも称されるその展張位置におけるロックが始動される。耐衝撃プレート16の枢動動作は好ましくは可逆的に行われる。耐衝撃プレート16の作動後に衝撃が起こらない場合、耐衝撃プレートはその開始位置に再定置される事ができる。再定置動作は手動で、又は自動的に、好ましくはアクチュエータ装置24によって実行される事ができる。
【0033】
耐衝撃プレート16は衝突時に衝撃吸収要素を、及び従っていくらか低い構造物である小さい車両との適合構造を形成するような固有剛性を有する。本発明に従い配置及び設計される耐衝撃プレート16によって、水平方向に対する自動車の下側の傾斜が少なくなる。結果として、自動車が衝突相手に乗り上げる傾向が低減される。加えて、耐衝撃プレート16の本発明に従う設計は結果として長手方向に変形要素の構築をもたらす。耐衝撃プレート16の固有剛性は対応するその壁厚により、又は好ましくは自動車の長手方向に延びる対応するシート状耐衝撃プレート16のエンボス加工により獲得される。枢動可能な耐衝撃プレートの原理は基本的にはまた、後部の潜り込みを回避するための後部構造及び事故結果の重大度を低減するための自動車の側面構造にも好適である。
【0034】
図3はさらなる実施形態に従う自動車の前部領域を断面図で図示する。アンダープロテクション装置42が支持構造体41に装着される。支持構造体41は長手方向部材45の前端44を有する。接続部材47が長手方向部材45の前端44から前方に伸張するとともにクラッシュボックス48がその前端に装着される。次にクロスメンバ49がクラッシュボックス48の前端に固着される。接続部材52の下端は別の長手方向部材54に対し車両の長手方向に支持される。
【0035】
耐衝撃プレート56が支持構造体41の接続部材52の下端に枢着される。耐衝撃プレート56は後端57及び前端58を有する。耐衝撃プレート56はその後端57で接続部材52の下端に連結点60において連結される。別の連結点62が耐衝撃プレート56のほぼ中央に設けられ、当該連結点を介してアクチュエータ装置64の一端が耐衝撃プレート56に枢着連結される。アクチュエータ装置64の他端は支持構造体41の接続部材47に連結点65において枢着連結される。
【0036】
図3において、耐衝撃プレート56はその格納位置にある。図4において、耐衝撃プレート56はその展張位置にある。耐衝撃プレート56は前部及び後部領域において異なるレベルの剛性を有する。前部領域には好ましくは折り畳み補助要素が提供されるとともに、衝突の際、衝突相手により曲げクロスメンバ及びクラッシュボックスと共に作動する。耐衝撃プレート56の後部領域は車両の長手方向に前部領域より有意に高い固有剛性を有する。衝突の際、後部領域は追加的な荷重経路を形成し、衝突時にはそれを介してエネルギーが車両支持構造体41に導入される。耐衝撃プレート56は単層シェル又は2層シェル設計とされる事ができる。力のレベルは、ビード形状を介して、又はシェルの異なる壁厚により、例えば柔軟な圧延材料により所望の要件に適合される事ができる。事故の相手方とのより良好な重なり合いは、シェルの特有のエンボス加工により達成される事ができる。特に、鋭利な縁部を有する端部領域は回避される。発生する修理費用の観点から、耐衝撃プレート56の2つの領域は好ましくは別個に分解可能である。
【0037】
耐衝撃プレート56の手動又は自動降下は結果として前端構造に入口開口をもたらし、該入口開口はまた別の方式でも使用される事ができる。これは、とりわけ、以下の可能性及び利点をもたらす。
【0038】
1.牽引装置へのアクセス:少なくとも1個の牽引ラグを有する牽引装置が入口開口の領域に配置される事ができる。牽引ラグはボディシェル又は車両内部に面する耐衝撃プレート内側に直接固着される事ができる。別の案として、牽引装置は、牽引ラグが装着、例えば螺合され得る牽引ブシュを追加的に有することができ、該牽引ラグはブシュから取り外し可能とされる。耐衝撃プレートが展張位置に配置されると、牽引ラグ/ブシュへのアクセスが可能になる。耐衝撃プレートが格納位置に配置されると牽引ラグ/ブシュが包覆されるという事実により、より高い自由度の設計が可能となる。加えて、フロントバンパー配置内の開口に配置されるとともに牽引ラグの収容を目的とする牽引ブシュを有する公知の牽引装置とは異なり、この開口用の被覆が省略され得ることで、費用節減の可能性を提供する。
【0039】
2.取り外し又は折り畳み可能な連結装置へのアクセス:ボディシェル、曲げ部材又はクラッシュボックスに固着されるとともに使用していない時には取り外し可能な連結装置が入口開口の領域に提供される事ができる。第2の変形実施形態に従えば、連結装置はボディシェル、曲げ部材又はクラッシュボックスに固定して装着されるとともに耐衝撃プレートが展張位置に配置されるとその機能的位置へと展張される事ができる。耐衝撃プレートが格納位置に配置されると、連結装置は好ましくは完全に包覆される。車両の前部領域における連結装置の配置によりトレーラの駐車及び操縦を簡素化することができる。
【0040】
3.フォグランプへのアクセス:ポップアップ式とされるか、又は格納位置において耐衝撃プレートにより被覆されるかのいずれかであり得るフォグランプが入口開口の領域に提供される事ができる。フォグランプの手動又は自動による作動/停止において、耐衝撃プレートは制御された方式で降下/再定置される事ができる。フォグランプは、好ましくはアンダーボディ被覆としても働く耐衝撃プレート近傍の車両上に固定される一部分、例えばクロスメンバ又はクラッシュボックス、又は耐衝撃プレートのいずれかに配置/固着される事ができる。フォグランプのこの配置は特に大きいロードクリアランスを有するオフロード車両の場合に特に有利であり、該配置によりヘッドライトが車道のより近くに配置されることが可能となる。これはまた、包覆される方式で収容されるフォグランプが、より高い自由度の設計を許容するとともにオフロード走行時により良好に保護される点でも有利である。加えて、フォグランプがフロントバンパー配置で配置される既知の車両と比較してバンパー費用が低減される事ができる。
【0041】
4.アンダープロテクション装置のモータ駆動式作動時における空力効果の使用。
【0042】
5.エンジン冷却の改善:開閉可能な耐衝撃プレートにより必要が生じた時に入口開口を介して空気を下方より追加的に流入させることが可能であるとともに、従って前記開口の後方に直接配置可能であるエンジン室に空気が追加的に導入され、該空気が駆動ユニットのより良好な冷却に寄与する。この手段により、駆動ユニットが過熱されるリスクが格段に低減される事ができる。同様に本使用例の場合において、耐衝撃プレートは手動又は制御された方式のいずれかで展張することが可能であり、制御には以下のパラメータを連結するか、又は個々に使用可能である:
−エンジン温度;
−車両速度、例えば速度限界;
−例えばオフロード走行時に起動されないといった、車道条件及び/又は周囲条件。
【0043】
上述されるとおり、エンジン冷却は耐衝撃プレートの降下により開始され、十分な冷却、速度増加、所定の時間及び/又は、別の、又は異なるパラメータが満足した後、該耐衝撃プレートは手動又は自動でその格納位置に再定置される。
【0044】
6.歩行者保護の改善。
【0045】
7.より高い設計可能性。
【0046】
8.追加的な荷重経路を介したエネルギーのボディシェルへのより良好な取り込み。
【0047】
9.結果として、特定の負荷状況における追加的なエネルギー消費、いわゆる「イントルーション」が低減される事ができる。
【0048】
図5は障害物68と衝突した際の図4の自動車を図示する。クラッシュボックス48がその長さの半分だけ事実上圧縮された(図3と比較して)ことが図5に確認される。加えて、前端58と連結点62との間に配置される固有剛性の前部領域が変形した一方で耐衝撃プレート56の固有剛性の後部領域及び自動車の支持構造体41は変形していない。
【0049】
図1〜5におけるものと同様のアンダープロテクション装置が図6〜8に図示される。同一の符号が同一の部品を参照するために使用される。繰り返しを避けるため、参照は図1〜5の先行する記載に対しなされる。以下では個々の実施形態間の差異のみがさらに詳細に説明される。
【0050】
図6に図示される実施形態の場合、後端71及び前端72を有する耐衝撃プレート70が接続部材12の下端に連結される。耐衝撃プレート70は、そのほぼ中央に、連結点74を有し、それにより耐衝撃プレート70がアクチュエータ装置75の一端に枢着連結される。アクチュエータ装置75の他端は車両支持構造体1の接続部材7に連結点76を介して枢着連結される。図6において、耐衝撃プレート70はその展張位置において図示される。耐衝撃プレート70は破線77によりその格納位置において図示される。
【0051】
耐衝撃プレート70は変形部分とも称される前部分81、及び支持部分とも称される後部分82を有する。2つの部分81、82は線状の脆弱部83によるヒンジの方式で互いに分離される。支持部分82は、その力であれば前部分81は既に変形/圧縮されるであろう力より大きい力が作用した場合のみ変形する。アクチュエータ装置75用の連結点74は後部分82の領域に配置されるとともに、従って、前部分81が交換される時、アクチュエータ装置75は取り外し/分解される必要がない。さらに、歩行者との衝突時、前部分81により脚がバンパー下の第2の領域上に支持されることが可能となる。この第2の領域は耐衝撃プレート70の前端72により形成される。第2の下方領域により膝関節に横方向に衝撃を及ぼす歩行者の膝関節の重篤な横方向屈曲を回避することが可能となる。この場合、下方の第2の領域は歩行者保護を目的としてバンパー外板下に定置される変形発泡体と同一の変形剛性を有することができる。これにより確実に脚が平行に押し上げられる。図6に図示される実施形態の場合において、前部分81の変形は線状の脆弱部83の回りで折曲することが実現される。
【0052】
図7に図示される実施形態の場合において、耐衝撃プレート70の前部剛性部分の変形がヒンジ継手88の周囲に回転することによっても起こり得ることが示される。低速での衝突についての、又は歩行者との衝突時の変形経路が91により参照される。高度な剛性を有する変形経路が92により示される。
【0053】
図8において、耐衝撃プレート70の前部分がそれ自体変形可能であるように設計され得ることが示される。低速での事故時の変形経路が101により参照される。変形経路102は高度な剛性に関連する。変形経路102は高速での事故の場合においてのみ使用される。
【0054】
図9は自動車の一体化部材121を斜視図で図示する。2個のエンジンマウント軸受124、125が一体化部材121に装着される。加えて、スタビライザ130が一体化部材121に装着される。本発明のさらなる態様に従えば、変形構造体を備える2層シェル耐衝撃プレート132がスタビライザ130に連結される。トリガ要素135が起動されると、耐衝撃プレート132がアクチュエータ装置138、139によりスタビライザ130の周囲で枢動する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】アンダープロテクション装置を備える自動車の前部領域を断面図で示し、ここで該アンダープロテクション装置の耐衝撃プレートはその格納位置にある。
【図2】図1に従う自動車の前部領域を示し、ここで耐衝撃プレートはその展張位置にある。
【図3】第2の実施形態に従うアンダープロテクション装置を備える自動車の前部領域を断面図で示し、ここで耐衝撃プレートはその格納位置にある。
【図4】図3の詳細図を示し、ここで耐衝撃プレートはその展張位置にある。
【図5】障害物との衝突の瞬間における図3及び4に図示される自動車を部分的に示す。
【図6】第3の実施形態に従うアンダープロテクション装置を備える自動車の前部領域を示す。
【図7】比較的低速での衝突の際の図6のアンダープロテクション装置を示す。
【図8】第4の実施形態に従う図7のものと同様のアンダープロテクション装置を示す。
【図9】本発明に従うアンダープロテクション装置の第5の実施形態の斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の下側に装着される耐衝撃プレート(16;56;70)を有するアンダープロテクション装置(2;42)を備える、自動車、特にオフロード車両又はピックアップ車であって、
格納位置と展張位置との間を可動に自動車の下側に装着されることを特徴とする自動車。
【請求項2】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が前記自動車の下側、特にスタビライザに枢着されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が少なくとも間接的に前記自動車の前輪軸部材に連結されることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車。
【請求項4】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が前記自動車のバンパー領域、特にフロントバンパー領域に展張することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項5】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が、特に前記自動車のフロントバンパー領域の後方で、アクチュエータ装置(24;64;75)に装着されることを特徴とする、請求項4に記載の自動車。
【請求項6】
前記アクチュエータ装置(24;64;75)がフロントバンパー領域の後方で前記自動車の支持構造体(1;41)に装着されることを特徴とする、請求項5に記載の自動車。
【請求項7】
前記アクチュエータ装置(24;64;75)が、前記耐衝撃プレート(16;56;70)がその展張位置にある時、衝撃を及ぼす衝突相手用の支持ベースを形成する複数のアクチュエータ要素を有することを特徴とする、請求項5または6に記載の自動車。
【請求項8】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が前記自動車の長手方向に変形可能に形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項9】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が前記自動車の特に長手方向に高い固有剛性を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項10】
前記耐衝撃プレート(56)が、特に折り畳み補助要素が備えられた前部領域である外側剛性領域及び、特に後部領域である内側剛性領域を有し、前記内側剛性領域が前記自動車の特に長手方向に前記外側剛性領域より有意に高い固有剛性を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項11】
前記耐衝撃プレート(70)が、特に前部である外側変形部分(81)を有し、前記変形部分(81)がそれより高い剛性を有する特に後部である内側支持部分(82)に装着されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項12】
特に前部である前記外側変形部分(81)が交換可能に配設されることを特徴とする、請求項11に記載の自動車。
【請求項13】
特に前部である前記外側変形部分(81)が前記支持部分(82)に枢着されることを特徴とする、請求項11または12に記載の自動車。
【請求項14】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)がモータ又は手動により前記格納位置から前記展張位置へと可動であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項15】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が前記自動車の通常運転中はその展張位置に配置されるとともに必要が生じた時のみ前記格納位置へと移動することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の自動車。
【請求項16】
前記耐衝撃プレート(16;56;70)が前記自動車の通常運転中はその格納位置に配置されるとともに必要が生じた時のみ前記展張位置へと移動することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−546595(P2008−546595A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518719(P2008−518719)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006288
【国際公開番号】WO2007/003328
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【出願人】(508000445)イーエスエー イノモーティヴ システムズ ヨーロッパ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】