説明

アンテナ装置およびレーダ装置

【課題】大きい反射体と小さい反射体で、従来よりも実体的な大きさの差に近いエコーが得られるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】導波管11の開口中心位置から2/3程度の開口分布を−20dBのチェビシェフ分布とし、残る1/3程度の開口分布を−40dBのチェビシェフ分布に設定する。そして、スロットのピッチの狭い箇所(スロット12A〜スロット12E)と広い箇所(スロット12E〜スロット12I)とを設けることで、管軸方向の途中で位相を上面方向に向かって凸状に曲げる態様とし、上記第1サイドローブをメインローブに内包させる態様とする。同程度のサイドローブ比を有するアンテナ装置で、チェビシェフ分布より3dB幅では狭ビーム、20dB幅では広ビームを実現することで、反射体の実体的な大きさの差に近いエコーが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置および当該アンテナ装置を用いたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ用のアンテナ装置は、例えば導波管スロットアンテナが用いられる(特許文献1を参照)。特許文献1には、導波管に長方形状のスロットを複数配列したアレイアンテナが記載されている。このようなアレイアンテナでは、各スロットの位相を揃えることで狭いビーム幅を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−117803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーダ装置では、反射体の実体的な大きさの差をレーダ画面上のエコー画像で認識し難いという課題がある。例えば、図10(A)に示すように、実体的な大きさの差が5倍程度である反射体501および反射体502が、同図(B)に示すように、それぞれ2度の幅を有するエコー、5度の幅を有するエコーの画像としてしか表示されない場合があり、レーダ画面上では2.5倍程度の差でしか現れない場合がある。
【0005】
このように、大きい反射体と小さい反射体で、レーダ画面上のエコーの大きさの差からは実体的な大きさの差が認識できず、反射体の大きさを過小評価するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、大きい反射体と小さい反射体で、従来よりも実体的な大きさの差に近いエコーが得られるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナ装置は、複数のスロットを有する導波管を備え、発射される電磁波のビームは、互いに異なる複数のサイドローブレベルを有する開口分布のビームを合成したものとし、前記導波管の各スロットの位相分布を管軸方向に対して非リニア形状とすることを特徴とする。位相面は、管軸方向の途中で曲がるように(管軸方向に対して開口位置の途中から非リニア形状となるように)してもよく、管軸方向に徐々に位相変化度が変わるようにして、全体として非リニア形状としてもよい。
【0008】
また、本発明のアンテナ装置は、複数のスロットを有する導波管を備え、前記複数のスロットのうち少なくとも1つは、前記導波管の管軸方向に対して垂直方向から所定の傾斜角で傾斜して設置されており、各スロットは、前記管軸方向に対してピッチが異なる箇所を有することを特徴とする。例えば、隣接するスロット間でピッチが異なる(管軸方向に徐々にピッチを変更していく)、あるいは相対的に狭いピッチで等間隔に配列された箇所と、広いピッチで等間隔に配列された箇所を有する(開口中心位置の左右でピッチの狭い箇所と広い箇所を設けた)構造である。
【0009】
なお、スロットのピッチが異なる箇所を設ける態様に代えて、誘電率の異なる複数の誘電体をスロットの開口側に設ける、あるいは管軸方向に対して幅の異なる複数の導波管をスロットの開口側に設ける構造であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、大きい反射体と小さい反射体で、従来よりも実体的な大きさの差に近いエコーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のアンテナ装置の開口分布(アンテナ開口位置と振幅の関係)および位相分布を示す図である。
【図2】従来のチェビシェフ分布における開口分布およびビーム形状を示す図である。
【図3】本発明のアンテナ装置のビーム形状、およびレーダ画面上のエコーを示した模式図である。
【図4】本実施形態に係る導波管スロットアンテナの一部構成を示した図である。
【図5】本実施形態の開口分布およびビーム形状を示す図である。
【図6】本実施形態の位相分布を示す図である。
【図7】本実施形態のビーム形状を示す図である。
【図8】他の例に係る導波管スロットアンテナの一部構成を示した図である。
【図9】他の例に係る導波管スロットアンテナの一部構成を示した図である。
【図10】レーダ画面上のエコーを示した模式図である。
【図11】他の例に係る導波管スロットアンテナの一部構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のアンテナ装置の開口分布(アンテナ開口位置と振幅の関係)および位相分布を示す図である。同図(A)に示すように、本発明のアンテナ装置は、導波管の各スロットの開口分布を、サイドローブレベルの異なる複数の開口分布を融合した特性に設定している。すなわち、アンテナ装置から発射される電磁波ビームが、互いに異なる複数のサイドローブレベルを有する開口分布のビームを融合したものとなるように構成している。また同図(B)に示すように、本発明のアンテナ装置は、導波管の各スロットの位相分布を管軸方向に対して非リニア形状(例えば、同図においては上面方向に向かって凸形状)としている。
【0013】
一般に、導波管スロットアンテナでは、狭指向性のビームを実現するために、開口分布をチェビシェフ分布とすることが多い。図2にチェビシェフ分布の開口分布とビーム形状を示す。同図(A)はサイドローブレベルが−40dBのチェビシェフ分布を示した図であり、同図(B)は同図(A)に示したチェビシェフ分布におけるビーム形状(放射角度θ=90度)を示した図である。
【0014】
同図(B)に示すように、チェビシェフ分布では、定められたサイドローブレベルで最も狭いビーム幅を形成する特性を有し、レーダ装置用としては好適である。ただし、反射体の実体的な大きさの差をレーダ画面上のエコー画像で認識し難いという課題がある。
【0015】
例えば、図10(A)に示したように、排水量5t、長さ10mの船舶と、排水量100t、長さ50mの船舶について考察する。この場合、それぞれのレーダ反射断面積(RCS)は、排水量5tの船舶でRCS=10m2、排水量100tの船舶でRCS=1000m2となる。排水量5tの船舶で反射強度が相対的に3dB程度であるとすると、排水量100tの船舶での反射強度は23dB程度となる。
【0016】
ここで、図2に示したチェビシェフ分布を用いた場合、3dBのビーム幅が2度程度であるのに対して、23dBのビーム幅は5度程度である。したがって、図10(B)に示したように、レーダ画面上には、それぞれ2度の幅を有するエコー、5度の幅を有するエコーの画像が表示される。すると、実体的な大きさの差は5倍程度であるにも関わらず、レーダ画面上では2.5倍程度の差でしか現れない。
【0017】
一方、本発明のアンテナ装置では、図1に示したように、サイドローブレベルの異なる複数の開口分布を融合した特性に設定し、導波管の各スロットの位相分布を管軸方向に対して非リニア形状としたことで、図3(A)に示すような、サイドローブレベルが異なる複数のチェビシェフ分布のビームを融合したようなビームを形成する。つまり、サイドローブレベルが高く、メインローブの指向性が鋭い−20dBのチェビシェフ分布のビーム形状と、サイドローブレベルが低く、メインローブの指向性が鈍い−40dBのチェビシェフ分布のビーム形状とを融合したビーム形状に設定する。そして、本発明のアンテナ装置では、位相分布を管軸方向に対して非リニア形状とし、第1サイドローブをメインローブに内包させている。このため、同図(A)に示すように、開口中心位置付近はビーム幅が狭く、それ以外の部分ではビーム幅が広くなる形状のメインローブを形成する。つまり、この開口分布および位相分布は、チェビシェフ分布と同様のサイドローブレベルでチェビシェフ分布より狭いビーム幅を実現することができる特徴を有する。
【0018】
その結果、同図(B)に示すように、小さい反射体と大きい反射体とで、ビーム幅の差が大きくなるため、レーダ画面上でより実体的な大きさの差に近いエコーを表示することができる。
【0019】
次に、上記開口分布および位相分布を実現するための具体的な構成について説明する。
【0020】
図4は、本発明の実施形態に係る導波管スロットアンテナの一部構成を示した図である。同図(A)は外観斜視図であり、同図(B)はマイクロ波の放射方向(θ=90度)を上面方向(Z方向)とした場合の正面図である。同図においては、放射用の導波管のみ示し、導入用の導波管等、その他の構成は省略している。
【0021】
本実施形態の導波管スロットアンテナは、方形断面を有する中空の(または誘電体を内包した)導波管11と、導波管11の上面側(狭面側)に設けられた複数のスロット(スロット12A〜スロット12I)とを備えている。なお、本実施形態では、説明のために一部(この例では8つ)のスロットだけを示すものであるが、実際にはさらに多数のスロットを有する。同図の例では、導波管11の中心位置(左右中心位置)からマイクロ波が導入され、管軸方向に沿って右面側(X方向)および左面側(−X方向)にマイクロ波が伝送される。ただし、マイクロ波は、導波管のいずれか一端から導入される態様であってもよい。
【0022】
各スロットは、導波管を上面(マイクロ波が放射される側)から見て、垂直方向(Y方向)からわずかに傾斜しており、隣接するスロットはそれぞれ傾斜が逆向きになっている。左面側から順にスロット12A〜スロット12Eは、等間隔に配列されており、それぞれピッチp1〜p4の間隔で配列されている(p1=p2=p3=p4である)。さらに向かって右面側のスロット12E〜スロット12Iは、上記ピッチp1〜ピッチp4よりも狭い間隔で等間隔に配列されており、それぞれピッチp5〜ピッチp8の間隔で配列されている(p4>p5=p6=p7=p8である)。なお、同図に示す各スロット間のピッチは一例であり、本発明としては少なくとも1つのピッチが他のピッチのいずれかと異なる態様であればよい。また、各スロットの傾斜についても、本発明としては少なくとも1つのスロットが傾斜していればよい。
【0023】
図5(A)は、導波管の管軸方向の中心位置をX方向の原点とした開口分布(アンテナ開口位置と振幅の関係)を示す図である。同図(A)に示すように、本実施形態に係る導波管スロットアンテナは、サイドローブレベルの異なる複数のチェビシェフ分布を融合した開口分布の特性に設定している。つまり、開口中心位置から2/3程度の開口分布を−20dBのチェビシェフ分布の特性とし、残る1/3程度の開口分布を−40dBのチェビシェフ分布の特性に設定している。各スロットは、傾斜角を大きくすると放射されるマイクロ波(電界強度)が強くなる。したがって、開口分布は、スロットの傾斜角を調整することにより任意に設定できる。一般的に、傾斜角は開口中心位置で最も大きく、両端に向けて徐々に小さくなるように調整するが、図5(A)のような開口分布は、例えば、導波管の端から給電する場合、給電側のスロットの傾斜角を小さく、中心位置付近にかけて徐々に傾斜角を大きくし、最後はまた傾斜角を小さくすることにより実現することができる。ただし、スロット自体のサセプタンスは0に、かつ各スロットから全てのマイクロ波が照射されるように各スロットのコンダクタンスの総和が1になることを理想として、導波管の広面側への切り込み深さも考慮して管軸に垂直な方向に対する傾斜角を決めるものとする。
【0024】
同図(B)は、上記本実施形態の開口分布において、スロット間のピッチが全て等しく、位相分布が管軸方向に対して直線状(リニア形状)に変化したと仮定した場合のビーム形状を示す図である。上述のように、開口中心位置から2/3程度の開口分布を−20dBのチェビシェフ分布とし、残る1/3程度の開口分布を−40dBのチェビシェフ分布に設定すると、融合したビームは、中心位置付近では−20dBのチェビシェフ分布のメインローブおよび第1サイドローブを有し、その他の部分では−40dBのチェビシェフ分布のサイドローブを有する形状となる。つまり、サイドローブレベルが高く、メインローブの指向性が鋭い−20dBチェビシェフ分布のビームと、サイドローブレベルが低く、メインローブの指向性が鈍い−40dBチェビシェフ分布のビームを融合したビーム形状となる。
【0025】
ここで、本実施形態の導波管スロットアンテナは、スロットのピッチの狭い箇所と広い箇所とを設けることで、管軸方向の途中で位相面を凸状に曲げる(開口位置に対する位相変化度を変更する)態様とし、第1サイドローブをメインローブに内包させる態様とする。
【0026】
図6は、上記スロット配列における導波管の位相分布を示す図である。同図(A)は、導波管の管軸方向の中心位置をX方向の原点とした位相分布を示す図であり、同図(B)は波面進行を示した模式図である。なお、同図においては、説明を容易にするために、導波管には上記8つのスロットだけが存在すると仮定した場合の例を示している。
【0027】
本実施形態では、同図(A)および同図(B)に示すように、スロット12A〜スロット12E間は、ピッチが等しいため、導波管の左面側から順に、位相は管軸方向に対して直線状(リニア形状)に変化する。一方で、スロット12Eより右面側では、ピッチが狭くなるため、位相面は上記直線からずれ、開口位置に対する位相変化度が小さくなる。したがって、全体としての位相分布は、上面方向に向かって凸形状となる(管軸方向に対して非リニア形状となる)。
【0028】
なお、同図の例では、波面進行方向が垂直方向から左面側に傾いている例を示しているが、垂直方向と同一であってもよく、無論、右面方向に傾いていてもよい。例えば波面進行方向が右面方向に傾いている場合、開口位置に対する位相変化度が途中で大きくなるようにすればよい。いずれにしても、全体としての位相分布が上面方向に向かって凸形状(開口位置の途中で位相の微分成分を下げる形状)であればよい。また、上記例では、管軸方向に垂直な中心位置から位相面が曲がる(互いに隣接する複数のスロットの間のピッチが中心位置に対する両側で互いに異なる)例を示しているが、位相面が曲がる箇所(ピッチが変わる箇所)は、中心位置に限るものではない。
【0029】
図7は、上記位相分布におけるビーム形状を示した図である。一般に、スロットの間隔がλg/2(λg:管内波長)である場合、導波管の上面と平行な面で各スロットの位相がそろう。この場合、位相分布が管軸方向に対して均一になり、導波管上面に垂直な方向で最も電界強度が強くなる。ここで、スロットの間隔をλg/2からずらす(かつ各スロットの間隔を等しくする)と、導波管上面と平行な面から傾いた面で位相がそろう。したがって、スロット間隔を変更すると位相分布が管軸方向に対して変化し(傾きが変わり)、導波管上面に垂直な方向から傾いた箇所で電界強度が強くなる。本実施形態では、図7(A)に示すように、位相分布を上面方向に向かって凸形状(非リニア形状)としたことにより、電界強度が強くなる箇所が、波面進行方向以外の周辺にもわずかに含まれることになり、メインローブの形状が、第1サイドローブを内包した形状となっている。この場合、メインローブの形状は、3dB幅ではビーム幅が狭いが、それ以外の20dB幅ではビーム幅が広くなる形状(三角形状のビーム形状)となっている。つまり、従来の−40dBチェビシェフ分布のビーム形状よりも3dB幅のビーム幅が狭く、それ以外の部分ではビーム幅が広くなる。
【0030】
ここで、本実施形態のアンテナ装置から発射された電波に基づくエコー信号を処理する受信回路を備えたレーダ装置について、図10(A)に示した排水量5t、長さ10mの船舶(RCS=10m2)と排水量100t、長さ50mの船舶(RCS=1000m2)のエコーを考察する。長さ10mの船舶の反射強度が相対的に3dB、長さ50mの船舶の反射強度が23dBとする。本実施形態のメインローブでは、図7(B)に示すように、3dBのビーム幅が1.8度程度で、23dBのビーム幅は7度程度であるため、図3(B)のように、上記レーダ装置のレーダ画面上には、それぞれ1.8度の幅を有するエコー、7度の幅を有するエコーの画像が表示される。したがって、レーダ画面上では約4倍程度の差として表示され、従来よりも実体的な大きさの差に近いエコーとして認識される。したがって、反射体の大きさを過小評価するおそれが少なくなる。
【0031】
なお、第1サイドローブをメインローブに内包させることができれば、位相分布は図6に示した例に限るものではない。例えば、図4(C)に示すように、管軸方向に徐々にピッチを変更していくことで、位相分布全体を非リニア形状としてもよい。また、上面方向に向かって凹形状の位相分布であっても第1サイドローブをメインローブに内包させることが可能である。
【0032】
また、スロットのピッチが異なる箇所を設ける態様に代えて、誘電率の異なる複数の誘電体をスロットの開口側に設ける、あるいは管軸方向に対して幅の異なる複数の導波管をスロットの開口側に設けることにより、位相分布を非リニア形状とすることも可能である。
【0033】
図8は、誘電率の異なる複数の誘電体をスロットの開口側に設ける例を示した図であり、図9は、管軸方向に対して幅の異なる複数の導波管をスロットの開口側に設ける例を示した図である。図8(A)および図9(A)は外観斜視図であり、図8(B)および図9(B)はマイクロ波の放射方向を上面方向とした場合の正面図である。いずれの図においても、放射用の導波管のみ示し、導入用の導波管等、その他の構成は省略している。
【0034】
まず、図8に示す導波管スロットアンテナは、方形断面を有する中空の(または誘電体を内包した)導波管21と、導波管21の上面側に設けられた複数のスロット(スロット22A〜スロット22G)とを備えている。なお、同図においても説明のために一部(この例では7つ)のスロットだけを示すが、実際にはさらに多数のスロットを有するものである。同図に示す各スロットも、導波管を上面から見て、垂直方向から傾斜しており、隣接するスロットはそれぞれ傾斜が逆向きになっている。したがって、同図の例における導波管21においても、開口分布は、図5(A)に示したように、開口中心位置から2/3程度を−20dBのチェビシェフ分布の特性とし、残る1/3程度を−40dBのチェビシェフ分布の特性に設定している。
【0035】
ここで、スロット22A〜スロット22Gは、全て等間隔に配列されている。したがって、スロットの開口面における位相分布は、管軸方向に対してリニア形状となる。しかし、同図の例では、誘電率の異なる複数の誘電体15A〜誘電体15G(誘電率:ε1〜ε7)を各スロット22A〜スロット22Gの開口側にそれぞれ設けることで、位相分布が全体として非リニア形状となるように設定されている。つまり、スロット毎に異なる誘電率の誘電体を設けることで位相を変更し、図6に示したような上面方向に向かって凸形状の位相分布を実現する。なお、この例においても、一部のスロットの開口面側にのみ誘電体を設け、開口位置の途中で位相面が凸に曲がる態様としてもよい。
【0036】
次に、図9に示す導波管スロットアンテナは、図8に示した誘電体15A〜誘電体15Gに代えて、複数の導波管17A〜導波管17Gを各スロットの開口面に設けた構造を有するものである。導波管17A〜導波管17Gは、それぞれ管軸方向に対する幅bは同一であり、高さcも同一である。しかし、管軸方向に垂直な方向に対する幅が異なる(a1〜a7)。具体的には、導波管17Aから導波管17Dに向かって、順に垂直方向に対する幅が大きくなり(a1<a2<a3<a4)、導波管17Dから導波管17Gに向かって、順に垂直方向に対する幅が小さくなる(a4>a5>a6>a7)。管内波長λgは、
【0037】
【数1】

【0038】
で表されるため、導波管17Aから導波管17Dに向かって、管内波長が徐々に短くなり、導波管17Dから導波管17Gに向かって、管内波長が徐々に長くなっている。最終的な透過位相pは、p=c/λgで表されるため、導波管17Dから導波管17Gにかけて位相面が凸状に曲がることになる。したがって、導波管スロットアンテナ全体としての位相分布は、上面方向に向かって凸形状となる(管軸方向に対して非リニア形状となる)。
【0039】
つまり、図9に示す導波管スロットアンテナは、管軸方向に対して管内波長の異なる複数の導波管17A〜導波管17Gを各スロット22A〜スロット22Gの開口側に設けることにより、図6に示したような上面方向に向かって凸形状の位相分布を実現する。なお、この例においても、一部のスロットの開口面側にのみ導波管を設け、開口位置の途中で位相面が凸に曲がる態様としてもよい。
【0040】
なお、本実施形態では、導波管11の上面側(狭面側)に複数のスロットを形成する例を示したが、図11に示すように、導波管の正面側(広面側)に複数のスロットを形成してもよい。また、複数のスロット(スロット列)は1段に限らず、図11に示すように管軸方向に垂直な方向に複数段設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
11…導波管
12…スロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有する導波管を備えたアンテナ装置であって、
前記複数のスロットのうち少なくとも一つは、前記導波管の管軸方向に対して垂直方向から所定の傾斜角で傾斜して形成され、
互いに隣接する前記各スロット間の前記管軸方向に対するピッチのうち少なくとも一つのピッチが他のピッチのいずれかと異なることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
互いに隣接する前記複数のスロット間の前記管軸方向に対するピッチが、前記アンテナ装置の前記管軸方向に垂直な中心軸に対する両側で互いに異なることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ装置は、
互いに隣接する前記各スロット間が第1のピッチで等間隔に配列された前記スロットと、
互いに隣接する前記各スロット間が前記第1のピッチより大きい第2のピッチで等間隔に配列された前記スロットと、
を有していることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記各スロットは、互いに隣接するスロット間で前記管軸方向に対する傾斜が互いに逆方向であるスロットを有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記各スロットの前記傾斜角は、前記導波管の前記管軸方向に垂直な中心軸近傍と前記導波管の両端部近傍で異なることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記中心軸近傍の前記傾斜角が、前記両端部近傍の前記傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項5記載のアンテナ装置。
【請求項7】
複数のスロットを有する導波管を備えたアンテナ装置であって、
前記複数のスロットのうち少なくとも1つは、前記導波管の管軸方向に対して垂直な方向から所定の傾斜角で傾斜して形成され、
誘電率の異なる複数の誘電体が各スロットの開口側に設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
複数のスロットを有する導波管を備えたアンテナ装置であって、
前記複数のスロットのうち少なくとも1つは、前記導波管の管軸方向に対して垂直な方向から所定の傾斜角で傾斜して形成され、
前記管軸方向に対して幅の異なる複数の導波管が前記各スロットの開口側に設けられていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項9】
前記各スロットの前記傾斜角は、前記導波管の前記管軸方向に垂直な中心軸近傍と前記導波管の両端部近傍で異なることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記中心軸近傍の前記傾斜角が、前記両端部近傍の前記傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項9記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記複数のスロットは、前記導波管の前記管軸方向に対し平行な側面のうちより狭い側面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかの請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記複数のスロットは、前記導波管の前記管軸方向に対し平行な側面のうちより広い側面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかの請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記複数のスロットは、前記管軸方向と垂直な方向に複数段形成されていることを特徴とする請求項12に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかの請求項に記載のアンテナ装置であって、さらに、前記導波管に電磁波を導入する給電部を備えていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項15】
前記給電部は、前記導波管の管軸方向に垂直な中心軸近傍に配置されていることを特徴とする請求項14記載のアンテナ装置。
【請求項16】
前記給電部は、前記導波管の端部に配置されていることを特徴とする請求項14記載のアンテナ装置。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれかの請求項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置から発射された電磁波によるエコー信号を処理する受信回路と
を備えていることを特徴とするレーダ装置。
【請求項18】
複数のスロットを有する導波管を備え、
前記スロットから発射される電磁波のビームが互いに異なる複数のサイドローブレベルを有する開口分布のビームが融合されたビームであって、
前記複数のスロットの管軸方向に対する位相分布が非線形である
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項19】
前記位相分布は、管軸方向に対して線形である部分と非線形である部分を含んでいることを特徴とする請求項18記載のアンテナ装置。
【請求項20】
請求項18または請求項19に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置から発射された電磁波によるエコー信号を処理する受信回路と
を備えていることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−99766(P2011−99766A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254844(P2009−254844)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】