説明

インゴットブロックの複合面取り加工装置および加工方法

【課題】スループット時間が短く、フットプリントがコンパクトなシリコンインゴットブロックの複合面取り加工装置を提供する。
【解決手段】円柱状インゴットブロックの四側面剥ぎ加工をスライサー装置の一対の回転刃91a,91bで行って得られた角柱状インゴットの四隅R面および四側面を一対のカップホイール型粗研削砥石11g,11gで粗研削加工して面取りし、ついで、一対のカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gでそのブロックの四隅R面および四側面を仕上げ研削加工する面取り加工して表面平滑度の優れた角柱状インゴットブロックを製造する複合面取り加工装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池(太陽光発電板)の基板として用いられる正方形もしくは長方形基板の原材料の角柱状の多結晶シリコンインゴットブロックや単結晶シリコンインゴットブロックの側面や円周面を面取り加工できる複合面取り加工装置に関する。また、この複合面取り加工装置を用い、C軸端面を切断したインゴットブロックの四隅のコーナー部や四側面表面を面取り加工して表面が平滑なインゴットシリコンインゴットブロックを製造する方法に関する。製造された表面が平滑なインゴットシリコンインゴットブロックをワイヤーカットソウを用いて厚み200〜240μmにスライスして同時に多くの太陽電池用シリコン基板を得る際に、得られるシリコン基板にチッピングや割れが生じることがない。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用シリコン基板を製造する工程において、円柱状単結晶シリコンインゴットの円断面四周片をバンドソウで切り取り、四隅部に円弧(Rコーナー部)を残した角柱状シリコンインゴット(ワークピース)となし、ついで、横形円筒研削装置の主軸台と心押台よりなるクランプ装置で支架し、カップホイール型砥石で四側面の表面を所望厚み(8〜10mm)を面取りし、ついでスライスして厚み200〜330μmの正方形状シリコン基板を製造することが行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、角柱状シリコンインゴットブロックとして、溶解した金属珪素溶湯を角柱状グラファイト容器内に注湯し一方向に凝固させた後、容器内面と接触汚染した下端面と側面をバンドソウで面取りして得られる多結晶シリコンインゴットを2乃至4のブロックに切断したインゴットブロックや、半導体基板の生産が閑散な時期に、半導体基板製造用円柱状シリコンインゴットブロックの四側面を一部R部分を残してスライサーにより切断し、ついで、両端面を面取り加工し、その後、柱状インゴットブロックのコーナーR面取り加工(取り代量は7.5〜8mm)を行ったのち、四側面平面を面取り加工(取り代量は0.5〜1mm)して太陽電池用の角柱状単結晶シリコンインゴットブロックとしたものが利用されている。多結晶シリコン基板に比較して単結晶シリコン基板の方が光変換率は高いが、面取り加工は難しいと言われている。
【0004】
例えば、特開平8−73297号公報(特許文献1)は、ケイ石またはケイ砂を電気炉で還元して得た金属シリコン融液を、耐熱性柱状容器内に流し込み、容器下端から上端に向けて徐々に冷却することによって一方向凝固した角柱状多結晶シリコンインゴット棒とし、容器内面と接触汚染した下端面と側面を5mm取り代量研削、研磨して面取りし、さらにフッ酸・硝酸混合水溶液でエッチングして多結晶シリコンインゴットを製造する方法を提案する。
【0005】
米国特許第6679759号公報(特許文献2)は、C軸端面が垂直に切断されたシリコンインゴットブロック側面の粗面を研磨工具で研磨加工して表面平滑度Ryを8μm以下とした後、シリコンインゴットブロックを厚み200〜330μmの太陽電池用シリコン基板とする方法を提案する。この特許文献は、表面平滑度Ryが8μm以下のシリコンブロックであればワイヤーソウでシリコンインゴットブロックを厚み200〜330μmの太陽電池用シリコン基板に同時カットしても基板に割れやチッピングが生じることはないと記載する。
【0006】
更に、特開2009−99734号公報(特許文献3)は、鋳造によって成形されたシリコンインゴットを切断して複数のシリコンブロックとし、次いで該シリコンブロックをスライスして多数のシリコンウエハとするシリコンウエハの製造方法において、鋳造によって成形されたシリコンインゴットを切断して複数(2〜4個)のシリコンブロックとするに際して、予めシリコンインゴットの少なくとも1面を平らに研削する研削工程と、シリコンインゴットを、その平らに研削された面を下向きにして基台上に載置し、該シリコンインゴットから複数のシリコンブロックを切り出すシリコンブロック切り出し工程とを含むことを特徴とするシリコンウエハの製造方法を提案する。
【0007】
特開2004−6997号公報(特許文献4)は、太陽電池用シリコンウエハ製造用の円柱状シリコンブロックをバンドソウで面取りして角柱状シリコンブロックとした後、ロール型ダイヤモンドスポンジ平砥石を用いて側平面を研磨加工し、そののち、スライス加工して角状ウエハを製造する方法を提案する。
【0008】
特開2009−55039号公報(特許文献5)は、又、円柱状シリコンブロックをバンドソウで面取りして角柱状シリコンブロックとした後、砥粒径が80〜60μmのカップホイール型砥石で側平面を粗研削加工し、ついで、砥粒径が3〜40μmのカップホイール型砥石で側平面を仕上げ研削加工し、さらに表面をエッチング処理したのち、スライシング加工して角状ウエハを製造する方法を提案する。
【0009】
特許弟4133935号明細書(特許文献6)は、鋳造によって成形されたシリコンインゴットを円筒研削して外周面を平滑にした後、スライサーなどの側面剥ぎ機で四側面を切り取って四隅Rを有する略正方形断面のシリコンインゴットとなし、これを切断して複数のシリコンインゴットブロックとなし、更に、前記四側面を平らに研磨工具で研磨加工してその側面の平滑度Ryを10〜20μmとなし、このシリコンインゴットブロックをワイヤーカット方法で垂直方向に切断して略正方形状の薄いシリコン基板を製造する方法を提案する。
【0010】
特開2009−233794号公報(特許文献7)は、シリコンブロックの表面を研削/研磨する際に、シリコンブロックの長手方向の前後を機械的にチャッキング(クランピング)する一対のチャッキング部材(主軸台と心押台)で保持し、この状態でシリコンブロックの側面及びこれらを結ぶ4つの角部(4隅のRコーナー部)を粗研削砥石と精密仕上げ砥石を用いて研削研磨する方法を提案する。この方法により、シリコンブロックの4つの角部および4側面を非接触でチャッキング部材に宙に浮かせたような状態で保持することができるので、その側面及び角部に傷が付いてしまうことを防止でき、さらにシリコンブロックの側面だけではなく角部も研削研磨して面取りすることができることから、シリコンブロックをスライス加工してシリコンウエハを製造する際、その周縁部が欠けたりすることを回避でき歩留まりを向上することができる。
【0011】
角柱状シリコンインゴットの一辺の長さが50mmから125mm、156mm、200mm、240mmと長くなるに連れて、一辺が156mmm乃至240mmの角柱状シリコンインゴットをワイヤーカットソウで一度にスライスして厚み200〜330μmの太陽電池用シリコン基板を多量生産する際に前述したように角柱状シリコンインゴットのRコーナー部分でチッピングが発生することが往々にあり、シリコン基板の生産ロス率を高めていることが基板加工メーカーより指摘されている。前記特許文献3、特許文献6のように研磨工具で側面を平坦研磨加工したのち、ワイヤーソウカッティングする対処方法や特開2002−252188号公報(特許文献8)に記載されるように研磨ブラシで研磨加工する方法、あるいはエッチング処理方法で前記ウエハに切断する際のチッピング現象が生じることを防いでいる。
【0012】
一辺が156mm、高さが250mmであり四隅にRコーナー部を残して切断された角柱状単結晶シリコンインゴットの面取り加工に現在では約95〜120分、一辺が156mm、高さが500mmであり四隅にRコーナー部を残して切断された角柱状単結晶シリコンインゴットの面取り加工に約180〜210分要しているのが実情である。この加工時間に、粗研削装置から仕上げ研削装置へのシリコンインゴットの受け渡し時間約10分が追加される。
【0013】
一方、特公昭49−16400号公報(特許文献9)、特開平4−322965号公報(特許文献10)、特開平6−166600号公報(特許文献11)および特開平6−246630号公報(特許文献12)は、半導体基板用シリコン基板製造用の円柱状シリコンインゴットの表面を面取り加工する横形の円筒研削装置を提案する。
【0014】
これら特許文献9乃至特許文献12に開示される横形の円筒研削装置は、減速機構を介してサーボモータによりセンター軸を回転させる主軸台と左右方向に移動可能な心押台の一対よりなるクランプ機構と、このクランプ機構の主軸台シンターと心押台センターとによって円柱状シリコンインゴットの軸芯が水平(横)方向に、かつ、回転可能に支持された円柱状インゴットの円周上面部に円板状平砥石の円形平面が向くように砥石軸に軸承した研削ヘッドを昇降させる昇降機構と、前記研削ヘッドを円柱状インゴットの前記軸芯に対し平行に左右直線移動させる移動機構よりなる。
【0015】
円柱状シリコンインゴットの円筒研削は、回転する円柱状インゴットの円周上面部高さ位置の面取りする高さ位置に円板状平砥石の底面を昇降機構により下降させ、ついで、リニア移動機構により研削ヘッドを右方向に移動させて研削ヘッドの円板状平砥石を円柱状インゴットの円周上面に回転させながら円柱状インゴット当接させて切り込みを開始し、円板状平砥石が円柱状インゴットの右端位置に到達した後、円板状平砥石を昇降機構により切り込み量の高さ量下降させ、リニア移動機構により円板状平砥石の移動方向を左方向に反転させ、ついで、円板状平砥石が円柱状インゴットの左端位置に到達した後、円板状平砥石を昇降機構により切り込み量の高さ量下降させ、リニア移動機構により研削ヘッドを右方向に移動させ、円板状平砥石が円柱状インゴットの右端位置に到達した後、円板状平砥石を昇降機構により切り込み量の高さ量下降させ、リニア移動機構により円板状平砥石の移動方向を左方向に反転させ、ついで、円板状平砥石が円柱状インゴットの左端位置に到達後、以下同様にして円板状平砥石の下降、反転、面取り、下降、反転、面取りを繰り返し、所望の厚み(10μm〜5mm)の面取り加工を行う。
【0016】
本願特許出願人は、ワイヤーカッティングする際のチッピングが生じない角柱状シリコンインゴットブロック(角柱状シリコンインゴットブロック)を短時間で製造できるワークローディング/アンローディングステージ、ワークの側面粗研削ステージ、ワークの側面仕上げ研削ステージおよびワーク四隅R仕上げ研削ステージを有する面取り加工装置にワークローダーを付属させた複合面取り加工装置を特願2009−296602号明細書(特許文献13)で提案した。
【0017】
本願特許出願人は又、a)機枠2上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル4、
b)このワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台7aと心押台7bの一対よりなるクランプ機構、
c)ワーク(インゴットブロック)wを支架した前記クランプ機構を搭載する前記ワークテーブル4を左右方向に往復移動させる駆動機構5、
d)前記ワークテーブルを正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、
i)前後移動可能なスピンドル軸92a,92bの一対に軸承された回転刃(スライサー刃)の一対91a,91bをその直径面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられたインゴットブロック面剥ぎステージ90、
e)前後移動可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対11g,11gをその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた第一研削ステージ11、
f)前記第一研削ステージの右横側に平行に設けた、前後移動可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対10g,10gをその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた第二研削ステージ10、
g)上記第二研削ステージの右横側であって前記ワークテーブルの前側に位置するハウジング材にワークを前記クランプ機構への移出入を可能とする開口部を備えるロードポート8、
および、
h)上記ロードポート8に対向する前記ワークテーブルの後側に、砥石車を有する砥石軸をワークテーブルの左右方向に平行であって、この砥石軸をその軸芯が前後方向に移動可能にツールテーブル上に設けたRコーナー部仕上げ研削ステージ9、
を設けたことを特徴とするインゴットブロックの複合面取り加工装置1(図5および図6参照)を特願2010−61844号明細書(特許文献14)で提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平8−73297号公報
【特許文献2】米国公開特許第2008/0223351A1明細書
【特許文献3】特開2009−99734号公報
【特許文献4】特開2004−6997号公報
【特許文献5】特開2009−55039号公報
【特許文献6】特許弟4133935号明細書
【特許文献7】特開2009−233794号公報
【特許文献8】特開2002−252188号公報
【特許文献9】特公昭49−16400号公報
【特許文献10】特開平4−322965号公報
【特許文献11】特開平6−166600号公報
【特許文献12】特開平6−246630号公報
【特許文献13】特願2009−299602号明細書(未公開)
【特許文献14】特願2010−61844号明細書(未公開)
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】株式会社ジェイシーエム、“太陽電池製造装置 単結晶 全自動ライン”,〔オンライン〕、平成21年3月9日検索、インターネット<URL:http://www.e-jcm.co.jp/SolarCell/Mono/Auto/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前記特許文献14記載の複合面取り装置は、一辺が156mm、高さが250mmであり四隅にR部を残してバンドソウで切断された角柱状単結晶シリコンインゴットの面取り加工をスループット加工時間40〜45分で行うことができ、表面平滑度Ryが0.2〜0.5μmと極めて平滑度の高いインゴットブロックを生産性高く加工できるものである。また、スライサーによる面剥ぎ加工ステージ90を設けたことにより半導体基板の生産の閑散期に余った円柱状シリコンインゴットブロックを太陽光電池基板用の角柱状シリコンインゴットブロックに加工できる利点がある。
【0021】
しかしながら、カップホイール型砥石による四隅Rコーナー部の面取り加工でカップホイール型砥石砥石刃の外周縁部の磨耗によりカップホイール型砥石の交換時期が早いことが判明した。また、特許文献2が記載するようにワイヤーソウによるインゴットブロックのスライスカット時のチッピングや割れ防止にはインゴットブロックの表面平滑度Ryが8μm以下であれば良く、半導体基板のシリコン基盤面のカップホイール型砥石による裏面研削では表面平滑度Ryが0.5〜2μmのシリコン基盤面が得られていることから四隅Rコーナー部の面取り加工する砥石車の代りにカップホイール型砥石を用いることで装置のフットプリントをより小さくできることが推量される。
【0022】
本発明者らは、前記特許文献14記載の複合面取り装置1において、e)前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた粗研削ステージ、およびf)前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた仕上げ研削ステージとし、前記粗研削ステージでシリコンインゴットの四隅Rコーナー部の面取り加工と四側面の面取り加工を行い、および前記仕上げ研削ステージでシリコンインゴットの四隅Rコーナー部の面取り加工と四側面の面取り加工を行うこととし、前述のh)砥石車によるRコーナー部仕上げ研削ステージを削除して複合面取り加工装置のフットプリントをより小さくするとともにインゴットの面取り加工時間も短縮可能と推量した。
【0023】
カップホイール型砥石の寿命延長については、シリコンインゴットの四隅Rコーナー部の面取り加工時に砥石軸の昇降を行ってカップホイール型砥石の一対の砥石軸芯間の高さを50〜120mm離した状態で行うことによりインゴットブロクのRコーナー部に触れるカップホイール型砥石の砥石刃の面積を広げることができ四隅Rコーナー部の面取り加工1回当たりの切削刃の磨耗量を少なくすることにより達成できると推量した。
【0024】
本発明の第一の目的は、角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の研削加工および四側面の表面研削加工を前記特許文献14の複合面取り加工装置より短時間に加工できる複合面取り加工装置の提供にある。
【0025】
本発明の第二の目的は、前記特許文献13記載の複合面取り加工装置のインゴットブロックのワークローディング/アンローディングステージに備え付けられたワークのチャック機構(主軸台と心押台)をブロックの面剥ぎ加工ステージのチャック機構に利用するために、前記複合面取り加工装置の左端側にスライサー装置を付属させて、円柱状ブロックの四側面の面剥ぎ加工とこの面剥ぎ加工されて形成された角柱状ブロックの四側面平坦化加工と四隅R研削加工できる複合面取り加工装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の請求項1は、
a)機枠(ベース)上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル、
b)このワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構、
c)前記クランプ機構に支架されたワークを載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブルを正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、
e)前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた粗研削ステージであって、前記一対のカップホイール型砥石の砥石径はワークの対角線長さより共に大きい直径を示し、かつ、一方のカップホイール型砥石の径は他方のカップホイール型砥石の径より5〜20mm短い、
f)前記粗研削ステージの右横側に平行に設けた、前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた仕上げ研削ステージ、
および
g)上記仕上げ研削ステージの右横側位置であって前記ワークテーブル上に左右に分離して搭載された前記主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構にワークの移出入を可能とする開口部を備えるロードポート、
を設けたことを特徴とするインゴットブロックの複合面取り加工装置を提供するものである。
【0027】
本発明の請求項2は、請求項1に記載のインゴットブロックの複合面取り加工装置を用い、ロードポート位置にあるクランプ機構の主軸台と心押台に支架した角柱状インゴットブロックを次の工程を経て四隅Rコーナー部と四側面平面をカップホイール型砥石により面取り加工することを特徴とする角柱状インゴットブロックの複合面取り加工方法を提供するものである。
1)ロードポート位置にあるクランプ機構の主軸台と心押台に角柱状インゴットブロックを支架する。
2)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、角柱状インゴットブロック(ワーク)の右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
3)粗研削ステージの一対の砥石軸の一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯間高さを50〜120mmとする。
4)粗研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させる。
5)クランプ機構の主軸台のワークスピンドル軸を回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向(C軸)に回転させ、ついでワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたらRコーナー部粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。また、Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸の回転を停止させる。
6)Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
7)粗研削ステージの一対の砥石軸の一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯
が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
8)上記粗研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石を回転させる。
9)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型粗研削砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。
10)上記クランプ機構を搭載するワークテーブルを左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
11)上記クランプ機構の主軸台のワークスピンドルを90度回転させ、シリコンブロックの未粗研削加工側面がカップホイール型粗研削砥石面に対向する位置とする。
12)前記一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止する。
13)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。
14)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸の一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯間高さを50〜120mmとする。
15)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させる。
16)クランプ機構の主軸台のワークスピンドル軸を回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向に回転させ、ついで前記粗研削加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ砥石の右端位置を越えたらRコーナー部仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。また、Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸の回転を停止させる。
17)Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
18)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸の一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
19)上記仕上げ研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石を回転させる。
20)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石の右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。
21)上記クランプ機構を搭載するワークテーブルを左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
22)上記クランプ機構の主軸台のワークスピンドルを90度回転させ、シリコンブロックの未仕上げ研削加工側面がカップホイール型仕上げ研削砥石面に対向する位置とする。
23)前記一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止する。
24)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石の右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。
25)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させ、ロードポート位置で移動停止させ、ついでクランプ機構の心押台を後退させて四隅コーナー部の面取り加工および四側面の面取り加工が終了した角柱状インゴットブロックの支架を解除し、この角柱状インゴットブロックを複合面取り加工装置外へ搬出する。
【0028】
本発明の請求項3に記載のインゴットブロックの複合面取り加工装置は、前記請求項1記載のインゴットブロックの複合面取り加工装置の左端面に前記ワークテーブルの左右移動案内レールを延長して設けるとともに、ワークテーブルを搭載するクランプ機構の主軸台と心押台のワーク支持軸を挟んで一対の回転刃をその回転刃直径面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた側面剥ぎ加工ステージを設けたことを特徴とするインゴットブロックの複合面取り加工装置にある。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明のインゴットブロックの複合面取り加工装置は特許文献14記載の複合面取り加工装置と比較すると砥石車によるインゴットブロックの四隅Rコーナー部研削ステージを削除できるのでフットプリント(設置面積)をより小さくできる。また、請求項2記載の面取り加工方法を採用することによりカップホイール型研削砥石の寿命を1.5〜2倍程度長くできる。さらに、一辺が156mm、高さが250mmの角柱状シリコンインゴットブロックの面取り加工を27〜38分で行うことができ、この面取り加工時間は、特許文献14に記載の複合面取り加工装置の40〜45分と比較すると短い時間である。また、156mm辺、高さ500mmの角柱状シリコンインゴットの面取り加工のスループット加工時間は、78〜82分で行うことができる。更に、面取りされたインゴットブロックの四側面の表面平滑度Ryは0.5〜2μmであり、特許文献3に記載の実施例記載の5μmの値と比較して格段と優れる値である。
【0030】
請求項3記載の複合面取り加工装置は、C軸端面が切断された円柱状インゴットブロックをクランプ機構に支持した状態でスライサー刃の回転で四側面剥ぎ取り加工した後、一対の粗研削砥石を用いてインゴットブロックの四隅R粗研削加工と四側面粗研削加工をし、続いて一対の仕上げ研削砥石を用いてインゴットブロックの四隅R仕上げ研削加工と四側面の仕上げ研削加工をなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は面剥ぎ加工ステージを備えた複合面取り加工装置の平面図である。
【図2】図2は面剥ぎ加工ステージを備えた複合面取り加工装置の中央部および後部を示す一部を切り欠いた右側面図である。
【図3】図3は複合面取り加工装置の仕上げ研削加工ステージの一部を切り欠いた背面図である。
【図4】図4のa,b,c,d,e,f,g,hは円柱状インゴットブロックを角柱状インゴットブロックに面取り加工する工程を示す複合面取り装置の側面がわから見たフロー図である。
【図5】図5は、特願2010−61844号明細書に記載の複合面取り加工装置の正面図である。(未公開)
【図6】図6は、特願2010−61844号明細書に記載の複合面取り加工装置の斜視図である。(未公開)
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の請求項1および請求項3記載の複合面取り加工装置1は、特願2010−61844号明細書に記載の複合面取り加工装置のe)前後移動可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対11g,11gをその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた第一研削ステージ11、およびf)前後移動可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対10g,10gをその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた第二研削ステージ10における双方の砥石軸を前後移動可能の他に上下昇降移動可能にした点である。また、砥石車による角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の仕上げ面取りステージ9を削除した点である。
【0033】
図1、図2および図3に示されるように、複合面取り加工装置1は、機枠(ベース)2に左右方向に延びて敷設された一対の案内レール3,3上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル4を設けてある。このワークテーブル4の左右往復移動は、サーボモータ5による回転駆動をボールネジ6が受けて回転し、このボールネジ6に螺合された固定台6aが左方向または右方向に移動することにより、この固定台表面にワークテーブル4の裏面が固定されているワークテーブル4が左方向または右方向に前進する。ワークテーブル4の左方向または右方向の前進は、サーボモータ5の回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0034】
このワークテーブル4上に左右に分離して搭載された主軸台7aと心押台7bの一対よりなるクランプ機構7が搭載されている。よって、ワークテーブル4の左方向または右方向の移動に付随してこのクランプ機構7も左方向または右方向に移動し、クランプ機構7の主軸台センター支持軸(ワークスピンドル軸)7aと心押台センター支持軸7bにより支架されて宙吊り状態となったワーク(シリコンインゴットブロック)wが側面剥ぎ加工ステージ90、仕上げ研削ステージ10、粗研削ステージ11、またはロードポート8位置へと移動することを可能としている。
【0035】
クランプ機構7は特許文献7に記載されるように公知のチャック機構であり、円筒研削盤でよく使用されている。主軸台7aは主軸台センター支持軸7aをサーボモータ7aで回転させることによりワークwを360度あるいは90度回転させる機能を有する。心押台7bは空気シリンダー7e駆動でガイドレール上を左右に移動できる移動台7b上に設けられ、ワークをクランプ機構7で支架したのち、レバー7を押し下げることにより固定し、ワークテーブル4の移動により心押台7bを搭載する移動台7bが移動するのを防ぐ。
【0036】
前記側面剥ぎ加工ステージ90、仕上げ研削ステージ10、粗研削ステージ11、およびロードポート8の位置関係は、前記ワークテーブル4を正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、側面剥ぎ加工ステージ90、粗研削ステージ11、仕上げ研削ステージ10およびロードポート8となっている。側面剥ぎ加工ステージ90、粗研削ステージ11および仕上げ研削ステージ10は密閉カバー12で覆われている。また、ロードポート8は片手横スライド扉により閉じられる。密閉カバー12で覆われた各研削ステージ10,11および側面剥ぎ加工ステージ90の空間には排気ダクト(図示されていない)が接続され、この空間内に浮遊するミストや研削屑を外部へ排出する。
【0037】
仕上げ研削ステージ10は、サーボモータ10m,10mの回転駆動により前後移動可能なツールテーブル10t,10t上に設けられた砥石軸の一対10a,10aに軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石の一対10g,10gをその研削砥石面10g,10gが相対向するようにワークテーブル4を挟んでワークテーブル4前後に対称にかつ砥石軸芯10,10が同一線上となる位置に設け、これら砥石軸10a,10aはサーボモータ10,10の回転駆動により回転される構造となっている。これら砥石軸10a,10aは固定板16aに固定され、この固定板16aはサーボモータ10m,10mの回転駆動によりボールネジ16cが回転されることにより、コラム16の前面に設けられた案内レール16b,16b上を固定板16aが上下移動可能となっている。砥石軸10a,10aを昇降可能としたことによりインゴットブロックの研削加工時に一対のカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gの砥石軸芯高さを双方同じ高さとすることも、異なった高さに位置させることもできる。
【0038】
また、前記サーボモータ10m,10mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進または後退することにより、この固定台表面にツールテーブル10t,10tの裏面が固定されているツールテーブル10t,10tが前進移動または後退移動する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ10m,10mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0039】
粗研削ステージ11は、サーボモータ11m,11mの回転駆動により前後移動可能なツールテーブル11t,11t上に設けられた砥石軸の一対11a,11aに軸承されたカップホイール型粗研削砥石の一対11g,11gをその研削砥石面11g,11gが相対向するようにワークテーブル4を挟んでワークテーブル4前後に対称にかつ砥石軸芯11,11が同一線上となる位置に設け、これら砥石軸11a,11aはサーボモータ11,11の回転駆動により回転される構造となっている。これら砥石軸11a,11aは固定板に固定され、この固定板はサーボモータ11m,11mの回転駆動により回転され、コラムの前面に設けられた案内レール上を上下昇降移動可能となっている。
【0040】
サーボモータ11m,11mによる回転駆動をボールネジが受けて回転し、このボールネジに螺合された固定台が前方向または後方向に前進移動または後退移動することにより、この固定台表面にツールテーブル11t,11tの裏面が固定されているツールテーブル11t,11tが前進または後退する。このツールテーブルの前進または後退の移動方向は、サーボモータ11m,11mの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0041】
粗研削ステージ11は、前記仕上げ研削ステージ10の右横側に各砥石軸が平行となるように設けられる。即ち、両研削ステージ10,11の砥石軸芯10,11は平行となるよう設けられる。
【0042】
前記粗研削ステージ11で使用するカップホイール型砥石の砥番は130〜200で、仕上げ研削ステージ10で使用するカップホイール型砥石の砥番は380〜700が好ましい。
【0043】
カップホイール型研削砥石10g,10g,11g,11gのカップ砥石直径またはリング砥石直径は、一辺が150mmの正方形状の太陽電池用シリコン基板を目的とするときは、230〜260mmであり、カップ砥石片10gs,11gsの幅は3〜10mm、リング状砥石幅は5〜15mmであるのがシリコンインゴットの研削焼け防止の観点から好ましい。砥石の中心点から砥石片幅外周の距離(半径)は、カップホイール型粗研削砥石11gの1個とカップホイール型仕上げ研削砥石10gの2個は同一半径であるが、一対のカップホイール型粗研削砥石11g,11gのカップ砥石直径は一方の直径が他方の直径よりも5〜20mm短い方が四隅Rコーナー部粗研削加工時のインゴットブロックのヨーイング(前後側面の振動揺れ)を防ぐので好ましい。
【0044】
研削砥石10g,11gの砥粒は、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒が好ましく、結合剤(ボンド)はメタルボンド、ビトリファイドボンド、エポキシレジンボンドがよい。例えば、カップホイール型研削砥石10g,11gは、例えば特開平9−38866号公報、特開2000―94342号公報や特開2004−167617号公報等に開示される有底筒状砥石台金の下部環状輪に砥石刃の多数を研削液が散逸する隙間間隔で環状に配置したカップホイール型砥石で、台金の内側に供給された研削液が前記隙間から散逸する構造のものが好ましい。このカップホイール型砥石11gの環状砥石刃の直径は、角柱状シリコンインゴットの一辺の長さの1.2〜1.5倍の直径であることが好ましい。
【0045】
研削液としては、純水、コロイダルシリカ水分散液、セリア水分散液、SC−1液、SC−2液、あるいは、純水とこれら前記の水分散液または研削液を併用する。なお、研削液としては、環境を考慮した水処理の面から純水のみを利用するのが好ましい。
【0046】
ロードポート8は、仕上げ研削ステージ10の右横側であってワークテーブル4の前側に位置するハウジング材にワークを前記クランプ機構7への移出入を可能とする開口部8を設けることにより形成される。
【0047】
図1に示されるように、ワークが円筒状シリコンインゴットブロックであることも想定し、複合面取り加工装置1の左端面に前記ワークテーブルの左右移動案内レール3,3を延長して設けるとともに、ワークテーブル4を搭載するクランプ機構の主軸台7aと心押台7bのワーク支持軸7a,7bを挟んで前後移動可能なスピンドル軸92a,92bの一対に軸承された回転刃(スライサー刃)の一対91a,91bをその直径面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた円筒状インゴットブロック側面剥ぎステージ90を設ける。
【0048】
回転刃91a,91bの前後移動は、回転刃91a,91bを軸承するスピンドル軸92a,92bを回転させるサーボモータ93m,93mを搭載したツールテーブル94,94を図示されていないモータ駆動ボールネジを回転駆動することにより行われる。このツールテーブル94の前進または後退の移動方向は、モータの回転軸が時計廻り方向か、逆時計廻り方向かに依存する。
【0049】
一対の回転刃(内周刃)91a,91bは、一対のスピンドル軸92a,92bに軸承され、これらスピンドル軸は駆動モータ93m,93mにより回転されることにより、回転刃91a,91bはワークに対し同一時計廻り方向に50〜7,500min−1の回転速度で回転される(両スピンドル軸の回転方向は互いに逆方向となる)。前記スピンドル軸92a,92bはツールテーブル94,94を前後移動することによりインゴットブロックwの面剥ぎ加工開始位置へと移動可能である。ワークテーブル4は、5〜200mm/分の速度で移動可能であり、回転軸92a,92bの昇降は100mmまで上下移動可能である。前記回転刃としては、直径が450〜800mm、厚み0.1〜1.0mmの鋼板シートにダイヤモンド微粒子を電着したダイヤモンドカッターが使用される。
【0050】
ワーク(円柱状インゴットブロック)のC軸を水平方向に支持するクランプ機構7を搭載するワークテーブル4を左方向に移動させることによりワーク端面の前後が一対の回転刃91a,91bに当接し、これら回転刃により円柱状ワーク前面および後面が円弧状に削ぎ落とされる面剥ぎ加工が行われる。ワーク前後面の面剥ぎ加工が終了したら、クランプ機構7の主軸台7aの支持軸を90度回転させ、面剥ぎ加工が為されていないワークの円弧面を前後位置に向け、ついで、ワークテーブル4を右方向に反転させ、前記一対の回転刃91a,91bを逆方向に駆動モータ93m,93mで回転させて面剥ぎ加工を行う。四側面の面剥ぎ加工時間は、直径が200mm、高さが250mmの円柱状単結晶シリコンインゴットブロックで10〜20分、直径が200mm、高さ500mmの円柱状単結晶シリコンインゴットブロックで18〜36分で行うことができる。
【0051】
図1に示すように、本発明のインゴットブロックの複合面取り加工装置1は、前記ワークテーブル4の前側であって前記ロードポート8と前記第二研削ステージ10との空間部にワークローディング/アンローディング装置13およびインゴットブロック3本を貯えるワークストッカー14,14,14を機枠2上に並設している。
【0052】
ワークストッカー14,14,14は、インゴットブロック(ワーク)3本を45度傾斜して収納できる断面が逆2等辺三角形状のV字棚段を備え、機枠から突き出した位置決めピン上に載置されている。
【0053】
前記ワークローディング/アンローディング装置13は、ワークストッカー14V字棚段に保管されているインゴットブロック1本を1対の爪で挟持し、両爪を上昇させることによりワークを吊り上げ、ついで、後退、右方向への移動、下降してロードポート8前に位置させ、さらに後退させることによりこのロードポート8からワークをクランプ装置7の主軸台7aと心押台7b間へと搬送する。ワークの一端を主軸台7aのセンター支持軸7aに当接させた後、心押台7bを空気シリンダー7eで右方向に移動させてセンター支持軸7bに他端を当接させワークを45度V傾斜させかつ4面を宙吊り状態に支架する。ついで、前記爪を離間させてワークの把持を開放し、ついで、両爪を支持する固定台を上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪を待機位置へと戻す。
【0054】
また、前記クランプ装置7に4面を宙吊り状態に支架されている面取り加工および洗浄・風乾されたワークを両爪で把持し、ついで、両爪を支持する固定台を上昇させ、左方向に移動させ、さらに、前方向に後退させ両爪をワークストッカー14,14,14の空棚上方へ移動したのち、下降させてワークを前記空棚に載置下後、両爪を離間してワークを開放したのち、前記待機位置へと両爪を戻す。
【実施例】
【0055】
本発明のインゴットブロックの複合面取り加工装置1を用い、ワークwとして両端が平面切断された円柱状インゴットブロックを面剥ぎ加工および面取り加工して四隅に長さ5〜30mmの円弧が残された角柱状シリコンインゴットブロックに加工する作業は、次の工程を経て行われる。
【0056】
1).ワークストッカー14V字棚段に保管されているインゴットブロック(ワーク)1本をワークローディング/アンローディング装置13を用いてロードポート8位置にあるクランプ機構7へ搬送し、ついで、ワークをクランプ機構7の主軸台7aと心押台7bで支架させる。
【0057】
2).インゴットブロックを宙吊りに支架したクランプ機構7を搭載するワークテーブル4を左方向に1〜15mm/分の速度で移動させ、ワーク端面の前後を一対の回転刃91a,91bに当接し、これら回転刃により円柱状ワーク前面および後面が円弧状半月に削ぎ落とす面剥ぎ加工を行う。(図4a参照)
【0058】
3).ワーク前後面の面剥ぎ加工が終了したら、クランプ機構7の主軸台7aの支持軸7aを90度回転させ、面剥ぎ加工が為されていないワークの円弧面を前後位置に向け、ついで、ワークテーブル4を右方向に反転させ、前記一対の回転刃91a,91bを逆方向に駆動モータ93m,93mで回転させて面剥ぎ加工を行う。例えば、直径200mmの円柱状インゴットブロックは一辺の長さが約155mmの正方形断面となるように円弧部は削ぎ落とされる。(図4b参照)
【0059】
4).前記クランプ機構を搭載するワークテーブル4を右方向に移動させ、角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端に近い位置に到達したら前記ワークテーブル4の右方向移動を停止させる。
【0060】
5).粗研削ステージ11の一対の砥石軸11a,11aの前側11aを5mm下降、後ろ側11aを5mm上昇させて双方の砥石軸芯11,11間高さを50〜120mmとする。
【0061】
6).粗研削ステージ11の一対の砥石軸11a,11aを前進移動(送り速度は50〜70mm/分)させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石11g,11g間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸11a,11aを1,800〜2,500rpmで回転させる。
【0062】
7).クランプ機構の主軸台7aのワークスピンドル軸7aを45度回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向(C軸)に回転させ、ついでワークテーブル4を右方向に移動(送り速度は40〜70mm/分)させて前記同期制御回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃11gs,11gsに角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させつつ、上記ワークの前後面に研削液20〜1,000cc/分の量を作業点に供給する研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたら2〜7mm厚みのR面取り加工作業を終了させる。ついで、前記一対のカップホイール型粗研削砥石11g,11gを軸承する砥石軸11a,11aを後退させる。また、Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸7aの回転を停止させる。(図4c参照)
【0063】
8).Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置7を搭載するワークテーブル4を左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージ11のカップホイール型粗研削砥石11gの左端を越えた位置で前記ワークテーブル4の移動を停止させる。
【0064】
9).粗研削ステージの一対の砥石軸の一方11aを下降、他方11aを上昇させて双方の砥石軸芯11,11が前記角柱状インゴットブロックの軸芯(C軸)と同一線上となる位置に調整する。
【0065】
10).上記粗研削ステージ11の一対の砥石軸11a,11aを前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸11a,11aを回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石11g,11gを1,800〜2,600rpmで回転させる。
【0066】
11).前記クランプ機構を搭載するワークテーブル4を右方向に送り速度180〜220mm/分で移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石11gの砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブル4の右方向移動を続行し、クランプ機構7に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型粗研削砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石11gを軸承する砥石軸11aを後退させる。ワ−クテーブル4の1回の右方向移動で終了しないときは、ワ−クテーブル4の左右方向に180〜220mm/分速度で往復移動および粗研削砥石11g,11gのインフィード研削(infeed-grinding)を行う。この粗研削砥石による両側面取り加工の際、角柱状インゴットブロックとカップホイール型粗研削砥石11g,11gが当接する加工作業点に向けて研削液が50〜1,000cc/分の供給量で供給される。(図4d参照)
【0067】
12).上記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージ10のカップホイール型粗研削砥石11g,11gの左端を越えた位置で前記ワークテーブル4の移動を停止させる。
【0068】
13).上記クランプ機構の主軸台7aのワークスピンドル7aを90度回転させ、シリコンブロックの未粗研削加工側面がカップホイール型粗研削砥石11g面に対向する位置とする。
【0069】
14).前記一対の砥石軸11a,11aを前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石11g,11gが到達したら砥石軸11a,11aの前進移動を停止する。
【0070】
15).前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を右方向に送り速度180〜220mm/分で移動させて前記1,800〜2,600rpmで回転しているカップホイール型粗研削砥石11g,11gの砥石刃11gs,11gsに角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構7に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石11g,11gを軸承する砥石軸11a,11aを後退させ、ついで、砥石軸11a,11aの回転を停止する。ワ−クテーブル4の1回の右方向移動で終了しないときは、ワ−クテーブル4の左右方向に180〜220mm/分速度で往復移動および粗研削砥石11g,11gのインフィード研削(infeed-grinding)を行う。この粗研削砥石による両側面取り加工の際、角柱状インゴットブロックとカップホイール型粗研削砥石11g,11gが当接する加工作業点に向けて研削液が50〜1,000cc/分の供給量で供給される。(図4e参照)
【0071】
16).仕上げ研削ステージ10の一対の砥石軸10a,10aの一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯10,10間高さを50〜120mmとする。
【0072】
17).仕上げ研削ステージ10の一対の砥石軸10a,10aを前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10g間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸10a,10aを2,800〜3,200rpmで回転させる。
【0073】
18).クランプ機構の主軸台のワークスピンドル軸7aを回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向に回転させ、ついで前記粗研削加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ機構を搭載するワークテーブル4を右方向に送り速度40〜70mm/分で移動させて前記2,800〜3,200rpmで回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃10gsに角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブル4の右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ砥石10g,10gの右端位置を越えたらRコーナー部仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸10a,10aを後退させる。また、Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸7aの回転を停止させる。ついで、砥石軸10a,10aの回転を停止する。(図4f参照)
【0074】
19).Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置7を搭載するワークテーブル4を左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージ10のカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gの左端を越えた位置で前記ワークテーブル4の移動を停止させる。
【0075】
20).仕上げ研削ステージ10の一対の砥石軸10a,10aの一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
【0076】
21).上記仕上げ研削ステージ10の一対の砥石軸10a,10aを前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gが到達したら砥石軸10a,10aの前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を2,800〜3,200rpmで回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gを回転させる。
【0077】
22).前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を右方向に送り速度210〜240mm/分で移動させて前記回転しているカップホイール型砥石の砥石刃10gs,10gsに角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gの右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り(インゴットブロックの前後面を同時に同期制御精密仕上げ研削加工(0.05〜0.1mm量の面取りを行う作業)を行う。この仕上げ側面取り加工の際、角柱状インゴットブロックとカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gが当接する加工作業点に向けて研削液が50〜1,000cc/分の供給量で供給される。加工終了後、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gを軸承する砥石軸10a,10aを後退させる。(図4g参照)
【0078】
23).上記クランプ機構を搭載するワークテーブル4を左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gの左端を越えた位置で前記ワークテーブル4の移動を停止させる。
【0079】
24).上記クランプ機構の主軸台のワークスピンドル7aを90度回転させ、シリコンブロックの未仕上げ研削加工側面がカップホイール型仕上げ研削砥石面に対向する位置とする。
【0080】
25).前記一対の砥石軸10a,10aを前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gが到達したら砥石軸10a,10aの前進移動を停止する。
【0081】
26).前記クランプ機構7を搭載するワークテーブル4を右方向に送り速度210〜240mm/分で移動させて前記2,800〜3,200rpmで回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃10gs,10gsに角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブル4の右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gの右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。この仕上げ側面取り加工の際、角柱状インゴットブロックとカップホイール型仕上げ研削砥石10g,10gが当接する加工作業点に向けて研削液が50〜1,000cc/分の供給量で供給される。(図4h参照)
【0082】
27).前記クランプ機構を搭載するワークテーブル4を右方向に移動させ、ロードポート8位置で移動停止させる。その位置8で角柱状インゴットブロックを主軸台のワークスピンドル7aで回転させながら圧空をインゴットブロック表面に噴き付けて風乾させる。風乾が終えたらクランプ機構7の主軸台7aによる角柱状シリコンインゴットの回転作業を終了させる。次にクランプ機構の心押台7bを後退させて四隅コーナー部の面取り加工および四側面の面取り加工が終了した角柱状インゴットブロックのクランプ機構による支架を解除し、この角柱状インゴットブロックをワークローディング/アンローディング装置13を用いて複合面取り加工装置1外のワークストッカー14,14,14のうちの空いているストッカー棚内へと搬出する。
【0083】
上記の面取り加工作業において、スライサーによる面剥ぎ加工ステージ90での作業を除いたとき、一辺が156mm、高さが250mmであり四隅にR部を残した角柱状単結晶シリコンインゴットブロックの面取り加工のスループット加工時間(スループット)は、砥石径230mmと260mmの砥番170のカップホイール型粗研削砥石一対と砥石径260mmの砥番500のカップホイール型仕上げ研削砥石一対を用い、粗研削ステージ11での四隅Rコーナー部面取り時のワークテーブル4送り速度60mm/分、両側面取り時のワークテーブル4送り速度200mm/分、砥石軸11a回転数2,400rpm、仕上げ研削ステージ10での四隅Rコーナー部面取り時のワークテーブル4送り速度60mm/分、両側面取り時のワークテーブル4送り速度220mm/分、砥石軸10a回転数3,000rpmの条件下では27分であった。面取り加工されたインゴットブロックの面平滑度Ryは1.2μmであった。
【0084】
本発明の別の実施態様として、粗研削ステージ11および仕上げ研削ステージ10における角柱状インゴットブロックの四隅R研削加工と両側面研削加工は、その加工順序を逆にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
シリコンインゴットブロックの面取り加工作業のスループット時間が従来(conventional)加工装置の半分で行うことができるシリコンインゴットブロックの複合面取り加工装置である。また、四隅R研削加工時にカップホイール型砥石一対の砥石軸芯間の高さを5〜20mm離すことによりカップホイール型砥石の寿命が特願2010−61844号明細書記載の面取り加工方法を採用したときと比較して1.5〜2倍の寿命となった。
【符号の説明】
【0086】
1 複合面取り加工装置
w インゴットブロック
2 機枠
4 ワークテーブル
7 クランプ機構
7a 主軸台
7b 心押台
8 ロードポート
10 仕上げ研削ステージ
10g カップホイール型仕上げ研削砥石
11 粗研削ステージ
11g カップホイール型粗研削砥石
13 ワークローディング/アンローディング装置
14 ワークストッカー
90 面剥ぎ加工ステージ
91a、91b 回転刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)機枠上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル、
b)このワークテーブル上に左右に分離して搭載された主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構、
c)前記クランプ機構に支架されたワークを載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブルを正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、
e)前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた粗研削ステージであって、前記一対のカップホイール型砥石の砥石径はワークの対角線長さより共に大きい直径を示し、かつ、一方のカップホイール型砥石の径は他方のカップホイール型砥石の径より5〜20mm短い、
f)前記粗研削ステージの右横側に平行に設けた、前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた仕上げ研削ステージ、
および
g)上記仕上げ研削ステージの右横側位置であって前記ワークテーブル上に左右に分離して搭載された前記主軸台と心押台の一対よりなるクランプ機構にワークの移出入を可能とする開口部を備えるロードポート、
を設けたことを特徴とするインゴットブロックの複合面取り加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインゴットブロックの複合面取り加工装置を用い、ロードポート位置にあるクランプ機構の主軸台と心押台に支架した角柱状インゴットブロックを次の工程を経て四隅Rコーナー部と四側面平面をカップホイール型砥石により面取り加工することを特徴とする角柱状インゴットブロックの複合面取り加工方法。
1)ロードポート位置にあるクランプ機構の主軸台と心押台に角柱状インゴットブロックを支架する。
2)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
3)粗研削ステージの一対の砥石軸の一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯間高さを50〜120mmとする。
4)粗研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させる。
5)クランプ機構の主軸台のワークスピンドル軸を回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向に回転させ、ついでワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたらRコーナー部粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。また、Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸の回転を停止させる。
6)Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
7)粗研削ステージの一対の砥石軸の一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯
が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
8)上記粗研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石を回転させる。
9)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型粗研削砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。
10)上記クランプ機構を搭載するワークテーブルを左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
11)上記クランプ機構の主軸台のワークスピンドルを90度回転させ、シリコンブロックの未粗研削加工側面がカップホイール型粗研削砥石面に対向する位置とする。
12)前記一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止する。
13)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。
14)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸の一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯間高さを50〜120mmとする。
15)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させる。
16)クランプ機構の主軸台のワークスピンドル軸を回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向に回転させ、ついで前記粗研削加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ砥石の右端位置を越えたらRコーナー部仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。また、Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸の回転を停止させる。
17)Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
18)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸の一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
19)上記仕上げ研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石を回転させる。
20)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石の右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。
21)上記クランプ機構を搭載するワークテーブルを左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
22)上記クランプ機構の主軸台のワークスピンドルを90度回転させ、シリコンブロックの未仕上げ研削加工側面がカップホイール型仕上げ研削砥石面に対向する位置とする。
23)前記一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止する。
24)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石の右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。
25)前記クランプ機構を搭載するワークテーブルを右方向に移動させ、ロードポート位置で移動停止させ、ついでクランプ機構の心押台を後退させて四隅コーナー部の面取り加工および四側面の面取り加工が終了した角柱状インゴットブロックの支架を解除し、この角柱状インゴットブロックを複合面取り加工装置外へ搬出する。
【請求項3】
前記請求項1記載のインゴットブロックの複合面取り加工装置の左端面に前記ワークテーブルの左右移動案内レールを延長して設けるとともに、ワークテーブルを搭載するクランプ機構の主軸台と心押台のワーク支持軸を挟んで一対の回転刃をその回転刃直径面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた側面剥ぎ加工ステージを設けたことを特徴とするインゴットブロックの複合面取り加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255454(P2011−255454A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131606(P2010−131606)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】