説明

ウインカ忘れ警告装置およびウインカ忘れ警告装置用のプログラム

【課題】曲折する予定の分岐点の手前でウインカをオンしていない場合に警告を発する技術において、より個々のドライバの特性に応じたタイミングで警告を行う。
【解決手段】車両用ナビゲーション装置は、曲折する予定の分岐点Aの手前において、当該分岐点Aが属する分岐カテゴリ(ステップ210)についてのウインカオン時学習距離を読み出し(ステップ215)、読み出したウインカオン時学習距離と、車両の現在位置から分岐点Aまでの距離と、を比較することで、自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定し(ステップ225)、その判定結果が肯定的であるにも関わらず、ウインカがオンされていないことに基づいて(ステップ230)、車両のドライバに警告を行う(ステップ240)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインカ忘れ警告装置およびウインカ忘れ警告装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、曲折する予定の分岐点の手前でウインカをオンしていない場合に警告を発する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−255167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の技術においては、所定距離内に車両が入ったときに警告を行うようになっているので、警告を発するタイミングが一律である。このような技術では、ドライバ毎に異なるウインカオンのタイミングに対応することができない。例えば、ドライバとしてはこれからウインカをオンしようとしているにも関わらず、警告を受けてしまう場合がある。このような場合には、ドライバはお節介な警告を受けたと感じてしまう可能性がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、曲折する予定の分岐点の手前でウインカをオンしていない場合に警告を発する技術において、より個々のドライバの特性に応じたタイミングで警告を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、ウインカ忘れ警告装置が、ウインカのオン時における車両の分岐点までの距離を、ウインカオン時学習距離として、複数機会に渡って記録する。更にウインカ忘れ警告装置は、曲折する予定の分岐点Aの手前において、当該ウインカオン時学習距離と、車両の現在位置から分岐点Aまでの距離と、を比較することで、車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定し、その判定結果が肯定的であるにも関わらず、ウインカがオンされていないことに基づいて、車両のドライバに警告を行う。
【0006】
このようになっていることで、複数機会におけるウインカのオンのタイミングにおける分岐点までの距離が、ウインカオン時学習距離として記録され、そのウインカオン時学習距離との関係において自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定する。したがって、ウインカ忘れ警告装置は、より個々のドライバの特性(すなわち、ドライバ個々に異なるウインカのオンのタイミング)に応じた警告を行うことができる。
【0007】
なお、ウインカオン時学習距離の記録は、記録する時点(すなわち今回)における距離そのものであってもよいし、過去の機会における距離と今回の距離とについての統計的な値(例えば平均値)であってもよい。前者の場合は、記録されたウインカオン時学習距離の統計的な値と、車両の現在位置から分岐点Aまでの距離とが、比較対照となる。
【0008】
また、請求項2に記載のように、ウインカ忘れ警告装置は、複数の分岐カテゴリ(すなわち、分岐点における分岐の特徴を複数グループに分類したカテゴリ)のそれぞれについて、当該分岐カテゴリに属する複数の分岐点のウインカオン時学習距離をまとめて(すなわち、1まとまりの統計対象として)記録するようになっていてもよい。
【0009】
この場合、ウインカ忘れ警告装置は、分岐点Aの手前において、分岐点Aが属する分岐カテゴリについてのウインカオン時学習距離と、車両の現在位置から分岐点Aまでの距離と、を比較することで、車両が前記ウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定するようになっていてもよい。
【0010】
このように、分岐点をグループ分けし、それぞれのグループについて別個にウインカオン時学習距離を記録して警告の判断に用いることで、よりきめ細かく警告の実行・非実行の制御を行うことができる。
【0011】
また、請求項3に記載のように、ウインカ忘れ警告装置は、警告したにもかかわらず、分岐点Aに入るまでにウインカがオンされなかったことに基づいて、分岐点Aについては、以後警告を禁止するようになっていてもよい。
【0012】
このようになっていることで、ウインカ忘れ警告装置としては分岐であると判断しても、ドライバ自身は分岐と判断しないような地点において、ウインカをオンしないことに対する警告を抑えることができる。
【0013】
また、請求項4に記載のように、ウインカ忘れ警告装置は、警告後にウインカがオンされた場合、そのウィンカのオン時における車両から分岐点Aまでの距離は、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外するようになっていてもよい。
【0014】
警告を受けたことによって実行されるウインカのオンは、ドライバが自発的に実行したウインカのオンとは異なり、実行タイミングがドライバの特性を反映していない。このような場合のウインカのオンを、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外することで、より正確にドライバの特性に応じた警告を行うことができる。
【0015】
また、ウインカ忘れ警告装置は、ウインカのオン時に車両の走行速度が基準速度未満であることに基づいて、そのウィンカのオン時における車両から分岐点Aまでの距離は、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外するようになっていてもよい。
【0016】
走行速度が十分低い場合には、車両の周辺の道路が渋滞している可能性が高い。そのような場合は、ドライバが通常のタイミングではウインカをオンしない可能性が高い。したがって、このような場合のウインカのオンを、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外することで、より正確に通常時のドライバの特性に応じた警告を行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載のように、本発明の特徴は、ウインカ忘れ警告装置に用いるプログラムとしても実現可能である。
【0018】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置(ウインカ忘れ警告装置の一例に相当する)1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、シート振動制御装置10、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、車間距離センサ15、ウインカスイッチ16、地図データ取得部17、および制御回路18を有している。
【0020】
シート振動制御装置10は、制御回路18からの制御信号に応じて、車両用ナビゲーション装置1が搭載される車両のドライバ席を振動させるアクチュエータである。
【0021】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路18に出力する。
【0022】
画像表示装置12は、制御回路18から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。操作部13は、ドライバによる入力装置への操作(例えば、メカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチ)に基づいた信号を制御回路18に出力する。
【0023】
車間距離センサ15は、自車両と自車両後方の車両との間の距離を検出する装置である。車間距離センサ15は、例えば、車両の後部に設けられたレーザーセンサ、超音波センサ、ミリ波センサ等によって実現可能である。
【0024】
ウインカスイッチ16は、車両のウインカ(すなわち、右折表示用のランプおよび左折表示用のランプ)の点滅の有無を制御するための操作装置である。ウインカスイッチ16をユーザが操作すると、その操作内容に対応して、右折表示用のランプおよび左折表示用のランプのいずれかが点滅し、また、どちらのランプが点滅しているかを示す信号を制御回路18に出力する。
【0025】
地図データ取得部17は、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出しおよび書き込みを行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路18が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0026】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別(例えば、高速道路、主要一般道路、細街路の別、ならびに、リンクが有する車線数の別)情報、走行方向情報、ノード(すなわち、交差点等の分岐点)の位置情報、種別情報、信号機の有無の情報、一時停止表示の有無(および、ノードへのどのからの進入に対して一時停止規制があるか)、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、土地地番情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0027】
また地図データ取得部17の記憶媒体は、学習DBのための記憶領域を有している。学習DBは、ウインカオン時学習距離の情報を分岐カテゴリ毎に有するデータである。分岐カテゴリとは、分岐点における分岐の特徴を複数グループに分類したカテゴリである。ここで、分岐とは、分岐点、分岐点への進入道路、および分岐点からの退出道路の3つによって一意に特定できる。
【0028】
分岐点のグループ分けは、分岐点そのものの特徴、および/または、分岐点への進入および分岐点からの退出の態様の特徴に基づいて行われる。具体的には、分岐点のグループ分けに用いる指標としては、以下のようなもののうちいずれか1つまたは複数の組み合わせを採用することができる。
(1)右折する分岐と左折する分岐の別
(2)分岐前後の走行方向の角度変化量(例えば、鈍角か鋭角か)
(3)分岐点における信号機の有無の別
(4)分岐点への進入道路の種別および分岐点からの退出道路の種別
(5)直前の分岐にすぐ(例えば30m以内に)続く分岐(すなわち連続分岐)か否かの別
(6)分岐点への進入速度(例えば、第1の基準速度より速いか遅いか)
(7)分岐点への進入時に自車両から基準距離以内の後続車両がいるか否かの別
なお、(3)の指標を用いる場合は、当該分岐点に信号がない場合、分岐点の手前に一時停止表示があるか否かの別を用いて、更にグループ分けを細分化してもよい。
【0029】
ウインカオン時学習距離とは、分岐点の手前で、右折または左折表示のためにウインカがオンされたときの、自車両から当該分岐点までの距離(以下、残距離という)についての、1まとめの統計量である。具体的には、ある分岐カテゴリに該当する分岐についての、過去の残距離の平均値および残距離の記録回数の情報が、当該分岐カテゴリのウインカオン時学習距離の情報に相当する。
【0030】
制御回路(コンピュータに相当する)18は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部17から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部17から情報を読み出し、RAMおよび(可能であれば)地図データ取得部17の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、シート振動制御装置10、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、車間距離センサ15、およびウインカスイッチ16と信号の授受を行う。
【0031】
制御回路18がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示処理、案内経路算出処理、経路案内処理、学習記録処理、ウインカオン警告処理等がある。
【0032】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。
【0033】
案内経路算出処理は、操作部13からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な案内経路を算出する処理である。経路案内処理は、案内経路上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、案内経路に沿った車両の運転を案内する処理である。
【0034】
学習記録処理は、車両の走行時において、曲折すべき分岐点の手前で、ウインカのオン時における車両の分岐点までの残距離を、ウインカオン時学習距離として、複数機会に渡って学習DBに記録する処理である。
【0035】
ウインカオン警告処理は、車両の走行時において、案内経路に沿えば曲折する予定となっている分岐点Aの手前において、当該分岐点Aが属する分岐カテゴリのウインカオン時学習距離と、車両の現在位置から前記分岐点Aまでの距離と、の比較等に基づいて、車両のドライバにウインカのオンに関する警告を行う処理である。
【0036】
以下、これら学習記録処理およびウインカオン警告処理について詳述する。制御回路18は、学習記録処理のために、自車両のイグニッションスイッチ(図示せず)がオンになっているときには、図2に示すプログラム100を繰り返し実行する。また制御回路18は、ウインカオン警告処理のために、自車両のイグニッションスイッチ)がオンになっているときには、図3および図4に示すプログラム200を、プログラム100と並列的に、繰り返し実行する。
【0037】
制御回路18は、学習記録処理におけるプログラム100の実行において、まずステップ110において、自車両のウインカがオンになるまで待ち、ウインカスイッチ16からオンとなった旨の信号を受けると、続いてステップ120を実行する。
【0038】
ステップ120では、自車両の現在位置から分岐点までの距離(すなわち残距離)を算出する。分岐点としては、自車両が現在走行しているリンク上の、現在の走行方向側にある端点のノード(すなわち、自車両の前方にある最も近い分岐点)を用いる。この分岐点の特定および特定した分岐点の位置の特定は、地図データ中の情報に基づいて行う。
【0039】
続いてステップ130では、今回の分岐(すなわち、当該分岐点における曲折)についてのカテゴリ振り分けを行う。すなわち、今回の分岐が上述の分岐カテゴリのうちいずれに属するかを判定する。
【0040】
分岐カテゴリのグループ分けとして、指標(1)が採用されている場合は、今回の分岐が右折か左折かを、ウインカスイッチ16からの信号に基づいて特定することで、カテゴリ振り分けが実現する。
【0041】
また、指標(2)が採用されている場合は、地図データに基づいて、今回の分岐点における進入道路と退出道路の方向を特定し、それらの方向の角度ずれ量を算出することで、カテゴリ振り分けが実現する。なお、進入道路としては、現在自車両が走行しているリンクを採用し、退出道路としては、ウインカスイッチ16に基づいて特定した曲折方向に進入道路から曲がった先のリンクを採用する。
【0042】
また、指標(3)が採用されている場合は、地図データに基づいて、今回の分岐点において信号機が設置されているか否か、および、今回の進入道路から今回の分岐点に入る地点に一時停止の制限があるか否か、を判定することで、カテゴリ振り分けが実現する。
【0043】
また、指標(4)が採用されている場合は、地図データに基づいて、今回の分岐点への進入道路の種別および分岐点からの退出道路の種別を特定することで、カテゴリ振り分けが実現する。
【0044】
また、指標(5)が採用されている場合は、地図データおよび自車両の走行軌跡に基づいて、字車両が最後に通過した分岐点から今回の分岐点までの道路に沿った距離を算出することで、カテゴリ振り分けが実現する。
【0045】
また、指標(6)が採用されている場合は、現在の自車両の車速を特定することで、カテゴリ振り分けが実現する。また、指標(7)が採用されている場合は、車間距離センサ15からの信号に基づいて、自車両から後続車両までの距離を特定することで、カテゴリ振り分けが実現する。
【0046】
続いてステップ135では、自車両の速度が第2の基準速度(第1の基準速度より小さい;例えば10km/h)以上であるか否かを判定し、第2の基準速度以上であれば続いてステップ140を実行し、基準速度以下であればプログラム100の今回の実行を終了する。
【0047】
ステップ140では、今回の分岐点についてウインカオン警告処理において警告出力が為されたか否かを判定し、為されていなければ続いてステップ150を実行し、為されていればプログラム100の今回の実行を終了する。
【0048】
ステップ150では、ステップ120で計測した残距離を、ウインカオン時学習距離として学習DBへ記録する。具体的には、ステップ130で特定した今回の分岐が属する分岐カテゴリから、平均値Mおよび記録回数Nを読み出し、これらと今回の残距離Zを用いて、以下の式により新たな平均値M´を算出する。
M´=(M・N+Z)/(N+1)
また、記録回数Nに1を加えた値を、新たな記録回数N´とする。このようにして得た新たな平均値M´および記録回数N´を、それまでの平均値Mおよび記録回数Nに置き換えて、当該分岐カテゴリのウインカオン時学習距離として、学習DBに記録する。ステップ150の後、プログラム100の今回の実行を終了する。
【0049】
学習記録処理においてこのようなプログラム100を繰り返し複数機会および複数種類の分岐に対して行うことで、制御回路18は、ウインカのオン時(ステップ110参照)における車両の分岐点までの残距離を特定し(ステップ120参照)、学習DB中の複数の分岐カテゴリのうち、今回の分岐が属する分岐カテゴリ(ステップ130参照)のウインカオン時学習距離として、特定した残距離を組み込んだ平均値および記録回数を、1組の統計対象として記録する(ステップ150参照)。
【0050】
ただし制御回路18は、後述するウインカオン警告処理における警告後にウインカがオンされた場合(ステップ140参照)、そのウィンカのオン時における車両から分岐点までの距離は、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外する(ステップ140→NO参照)。
【0051】
警告を受けたことによって実行されるウインカのオンは、ドライバが自発的に実行したウインカのオンとは異なり、実行タイミングがドライバの特性を反映していない。このような場合のウインカのオンを、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外することで、より正確にドライバの特性に応じた警告を行うことができる。
【0052】
また制御回路18は、ウインカのオン時に(ステップ110参照)車両の走行速度が第2の基準速度未満であることに基づいて(ステップ135参照)、今回の分岐点までの残距離は、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外する(ステップ135→NO参照)。
【0053】
走行速度が十分低い場合には、車両の周辺の道路が渋滞している可能性が高い。そのような場合は、ドライバが通常のタイミングではウインカをオンしない可能性が高い。したがって、このような場合のウインカのオンを、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外することで、より正確に通常時のドライバの特性に応じた警告を行うことができる。
【0054】
このように、学習DBにウインカオン時学習距離を蓄積する時、ノイズとなるデータは、蓄積した後の学習DBの信頼性を下げることになるため、除去する。また、学習DBへのウインカオン時学習距離の蓄積は、案内経路に沿った経路案内が為されているか否かに関わらず実行される。
【0055】
次に、ウインカオン警告処理について説明する。制御回路18は、プログラム200の各回の実行において、まずステップ205で、案内経路が算出されており、かつ、当該案内経路について経路案内処理が実行されているか否かを判定し、判定結果が肯定的ならば続いてステップ210を実行し、否定的ならば今回のプログラム200の実行を終了する。
【0056】
ステップ210では、案内経路の情報、地図データの情報、現在位置特定処理の結果、車間距離センサ15からの信号等に基づいて、案内経路に沿えば自車両が次に進入すると予想される分岐点(以下、分岐点Aという)における分岐が属する分岐カテゴリを特定する。
【0057】
分岐カテゴリのグループ分けとして採用されている指標と、分岐カテゴリの特定の方法との対応関係は、学習記録処理におけるステップ130のカテゴリ振り分け処理と同じである。ただし、指標(1)が採用されている場合は、案内経路が分岐点Aにおいて右折しているか左折しているかに基づいて、分岐点Aが属する分岐カテゴリを決定する。また、退出道路は、案内経路が分岐点Aの次に入るリンクとする。
【0058】
続いてステップ215では、ステップ210で決定した分岐カテゴリに対応するウインカオン時学習距離を、学習DBから読み出す。続いてステップ220では、当該分岐点A、進入道路、および退出道路に対応するウインカフラグを地図データ取得部17の記憶媒体から読み出す。ウインカフラグは、分岐点、進入道路、および退出道路の組(以下、単に分岐種ともいう)毎に設けられたフラグであり、その初期値は1である。そして、後述するように、ウインカフラグが0であるような分岐種については、警告が禁止されるようになっている。読み出したウインカフラグが1であれば続いてステップ220を実行し、0であればステップ240をバイパスしてステップ245を実行する。
【0059】
ステップ225では、自車両の現在位置から分岐点Aまでの距離と、ステップ215で読み出したウインカオン時学習距離中の平均値とを比較し、現在位置から分岐点Aまでの距離の方が短かければ、続いてステップ230を実行し、短くなければ再度ステップ225を実行する。この、ウインカオン時学習距離中の平均値よりも、現在位置から分岐点Aまでの距離の方が短かいか否かという基準は、車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定するための基準の一例である。
【0060】
ステップ230では、ウインカスイッチ16からの信号に基づいて、現在ウインカが予定の(すなわち案内経路に沿った)曲折方向にオンされているか否かを判定し、オンされていれば続いてステップ235を実行し、オンされていなければステップ240をバイパスしてステップ245を実行する。
【0061】
ステップ235では、車両の速度が第2の基準速度以上であるか否かを判定し、第2の基準速度以上であれば続いてステップ240を実行し、基準速度以下であればステップ240をバイパスしてステップ245を実行する。
【0062】
ステップ240では、ドライバに対して、適切な方向へウインカをオンするよう促す警告を出力する。例えば、画像表示装置12に「右ウインカをオンしてください」という文字を表示させてもよいし、スピーカ14にビープ音を出力させるようになっていてもよいし、シート振動制御装置10を制御してドライバシートを振動させてもよい。
【0063】
このように、地図データ取得部17は、曲折する予定の分岐点Aの手前において、当該分岐点Aが属する分岐カテゴリ(ステップ210参照)についてのウインカオン時学習距離(具体的には、ウインカオン時の自車両から同種の分岐点までの距離の平均値)を読み出し(ステップ215参照)、読み出したウインカオン時学習距離と、車両の現在位置から分岐点Aまでの距離と、を比較することで、自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定し(ステップ225参照)、その判定結果が肯定的であるにも関わらず、ウインカがオンされていないことに基づいて(ステップ230参照)、車両のドライバに警告を行う(ステップ240参照)。
【0064】
このようになっていることで、過去の複数機会におけるウインカのオンのタイミングにおける分岐点までの距離が、ウインカオン時学習距離として記録され(図2のプログラム100参照)、そのウインカオン時学習距離との関係において自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定する。したがって、車両用ナビゲーション装置1は、個々のドライバの特性(すなわち、ドライバ個々に異なるウインカのオンのタイミング)に応じた警告を行うことができる。
【0065】
また、車両用ナビゲーション装置1は、分岐点Aの手前において、分岐点Aが属する分岐カテゴリについてのウインカオン時学習距離と、車両の現在位置から分岐点Aまでの距離と、を比較することで、車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定する。このように、分岐点をグループ分けし、それぞれのグループについて別個にウインカオン時学習距離を記録して警告の判断に用いることで、よりきめ細かく警告の実行・非実行の制御を行うことができる。
【0066】
ただし制御回路18は、自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったときにウインカがオンになっていなかったとしても、車速が第2の基準速度未満の場合は(ステップ235参照)警告出力を行うことはない。これは車速が十分小さい場合は、車両の周囲が渋滞している可能性が高いので、そのような場合には、通常時よりも遅いタイミングでウインカをオンしても問題にならない場合が多いという考えに基づく作動である。このようになっていることで、ドライバがおせっかいと感じるような警告を行ってしまう可能性が低減する。
【0067】
また制御回路18は、当該分岐点A、進入道路、および退出道路の組に対応するウインカフラグがオフの場合は(ステップ220参照)、自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったときにウインカがオンになっていなかったとしても、警告出力を行うことはない。
【0068】
ステップ245以降の処理は、分岐点A、進入道路、および退出道路の今回の組についてのウインカフラグ(以下、対象ウインカフラグという)の値の設定についての処理である。制御回路18は、ステップ245で、自車両が分岐点Aを退出するまで待ち、退出した後に、自車両が分岐点Aを案内経路に沿って分岐したか否かを判定し、案内経路に沿って分岐していれば続いてステップ250を実行し、分岐していなければ、対象ウインカフラグの値は変化させずに、今回のプログラム200の実行を終了する。
【0069】
ステップ250では、分岐点Aの手前でウインカが実際に予定の曲折方向にオンされたか否かを判定し、オンされていれば続いてステップ255で対象ウインカフラグの値を1に設定し、オンされていなければ続いてステップ260で対象ウインカフラグの値を0に設定する。ステップ255、260に続いては、ステップ265で、設定した対象ウインカフラグの値を、地図データ取得部17の記憶媒体に上書き記録する。
【0070】
このようになっていることで、制御回路18は、警告出力後(ステップ240参照)、ウインカがオンされ、自車両が案内経路に沿って分岐点Aを曲折し)というケースにおいては、ステップ245、250を経て、ステップ255で対象ウインカフラグを1に設定する。
【0071】
これは、警告出力後にウインカがオンされたのは、ドライバがウインカをオンし忘れていた可能性が高いので、この分岐種については、後の機会においても、引き続き必要時に警告を続けるべきであるという考えに基づく作動である。なお、このような分岐種については、上述のように、自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎた時点で警告出力をすると共に、自車両がウインカをオンすべき位置を過ぎる前にも、ウインカオンを促す警告を行うようになっていてもよい。
【0072】
また、制御回路18は、警告出力したにも関わらず(ステップ240参照)、ドライバがそれを無視して案内経路に沿って走行した結果、分岐点Aに入るまでにウインカがオンされなかった場合、ステップ245、250を経て、ステップ260で、対象ウインカフラグを0にすることで分岐点Aについては、以後警告を禁止する。
【0073】
これは、ドライバが警告を無視した理由は必ずしも明らかではないが、ドライバの何らかの意図によってウインカをオンしなかったとして、次回以降、同じ分岐種の手前においては、警告を行うべきではないという考えに基づく作動である。
【0074】
このようになっていることで、ウインカ忘れ警告装置としては分岐であると判断しても、ドライバ自身は分岐と判断しないような地点において、ウインカをオンしないことに対する警告を抑えることができる。したがって、ドライバが警告をおせっかいだと感じる場面が少なくなる。
【0075】
また、制御回路18は、案内経路に沿って分岐点を分岐しなかった時は、ステップ245で否定判定となり、対象ウインカフラグをそのままにする。警告出力されている場合は(ステップ240参照)、その時点で対象ウインカフラグは1なので、次回以降も当該分岐種については次回以降も必要に応じて警告出力される。
【0076】
このようにするのは、今回は案内経路に沿わずに分岐Aを通ったため、実際にその案内経路に沿って分岐Aを通ったときに、ドライバが警告に従ってウインカをオンしたかどうか不明のため、今回のケースを以後の警告出力の有無の判断に使用すべきではないという考えに基づくものである。
【0077】
また、同じ分岐種に対して、前回はドライバが警告を受けたにも係わらずウインカをオンせずに案内経路に沿って走行した結果対象ウインカフラグがゼロとなり、今回はそのために制御回路18は警告を行わなかったが(ステップ220→NO参照)、ドライバはウインカを自発的にオンにして(ステップ250参照)案内経路を走行した場合(ステップ245参照)、制御回路18は、対象ウインカフラグを1に変化させ(ステップ255参照)、次回からは当該分岐種に対して必要に応じて警告出力を行うようになる。
【0078】
これは、ドライバが分岐種を予定通り曲折しつつ、警告を無視してウインカをオンにしなかった場合があったとしても、その後に同じ分岐種においてウインカをオンにするのならば、警告を無視したのは一時的な原因によるものである可能性が高いからである。このようにすることで、真に必要な場合にまで警告を抑制してしまう可能性が低減し、よりドライバの特性に合った警告処理を行うことができる。
【0079】
ここで、分岐カテゴリとして、指標(1)、(2)、(3)、(4)、および(6)の組み合わせが採用されている場合に、車両が分岐点Aを通る例について説明する。例えば、案内経路に沿えば次に分岐点Aで左折し、分岐点Aには信号機があり、分岐点Aの前後の道路の角度変化量は90度であり、分岐点Aの前後とも片道1車線道路であり、車の進入速度は、10km/h以上(すなわち、第2の基準速度以上)であるという状況を想定する。その状況において、学習DB中の当該分岐点Aの属する分岐カテゴリについての平均距離は30mであったとする。また、今回の分岐A、進入道路、退出道路の組についてのウインカフラグは1であったとする。
【0080】
このとき、今回、分岐点Aから30m未満の位置に自車両が近づいても(ステップ225参照)ウインカがオンになっていないとする(ステップ230参照)。その時は、制御回路18は、ウインカをオンするよう警告出力を行い(ステップ240参照)、その後にウインカがオンになったとしても、残距離を学習DBに反映させない(ステップ140→NO参照)。
【0081】
しかし、分岐点Aから40m手前でウインカをオンにした場合は、警告出力を行わず(ステップ230→NO参照)、残距離を学習DBに反映させる(ステップ140→YES参照)。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0083】
例えば、上記実施形態においては、ウインカフラグは、分岐点、進入道路、退出道路の組毎に設けられているが、分岐カテゴリ毎に設けられていてもよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、ある分岐カテゴリのウインカオン時学習距離は、当該分岐カテゴリに該当する分岐についての、過去の残距離の平均値および残距離の記録数の情報である。しかし、ある分岐カテゴリのウインカオン時学習距離は、当該分岐カテゴリについての過去の残距離を1まとめにした統計量であれば足りる。
【0085】
例えば、ある分岐カテゴリのウインカオン時学習距離は、当該分岐カテゴリについての過去の残距離の値すべてであってもよい。その場合、図3のステップ225では、当該分岐カテゴリについて記録されたすべての残距離のデータを用いて平均値および標準偏差σを算出し、自車両から分岐点Aまでの距離が、当該平均値に比べて、標準偏差σの3倍以上短い場合に(すなわち自車両から分岐点Aまでの距離が平均値より大きく外れて下回っている場合)、肯定的判定を行うようになっていてもよい。
【0086】
また、車両用ナビゲーション装置1は、分岐カテゴリを設けずに、すべての分岐について、一つのウインカオン時学習距離を用いても、ドライバの特性に応じたウインカオン忘れ警告を行うという本発明の効果は達成される。また逆に、分岐カテゴリは、分岐点、進入道路、退出道路の組毎に分けられていてもよい。
【0087】
また、学習DB等の、更新が必要なデータは、地図データ取得部17の記憶媒体に限らず、他の、車両用ナビゲーション装置1の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体(例えばフラッシュメモリ、EEPROM、バックアップRAM)に記憶されるようになっていてもよい。その場合、地図データ取得部17の記憶媒体は、HDD等の書き込み可能な記憶媒体である必要はなく、DVD、CD−ROM等の書き込み不可能な記憶媒体であってもよい。
【0088】
また、上記の実施形態において、制御回路18がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1の構成図である。
【図2】制御回路18が実行するプログラム100のフローチャートである。
【図3】制御回路18が実行するプログラム200のフローチャートである。
【図4】制御回路18が実行するプログラム200のフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用ナビゲーション装置
10 シート振動制御装置
11 位置検出器
12 画像表示装置
14 スピーカ
15 車間距離センサ
16 ウインカスイッチ
18 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインカのオン時における車両の分岐点までの距離を、ウインカオン時学習距離として、複数機会に渡って記録する記録手段(100)と、
曲折する予定の分岐点Aの手前において、前記記録手段(100)によって複数機会に渡って記録された前記ウインカオン時学習距離と、前記車両の現在位置から前記分岐点Aまでの距離と、を比較することで、前記車両が前記ウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定する判定手段(225)と、
前記判定手段が肯定的判定を行ったにも関わらず、前記ウインカがオンされていないことに基づいて、前記車両のドライバに警告を行う警告手段(240)と、を備えたウインカ忘れ警告装置。
【請求項2】
前記記録手段(100)は、複数の分岐カテゴリのそれぞれについて、当該分岐カテゴリに属する複数の分岐点のウインカオン時学習距離をまとめて記録し、
前記判定手段(225)は、前記分岐点Aの手前において、前記分岐点Aが属する分岐カテゴリについてのウインカオン時学習距離と、前記車両の現在位置から前記分岐点Aまでの距離と、を比較することで、前記車両が前記ウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のウインカ忘れ警告装置。
【請求項3】
前記警告手段(240)が警告したにもかかわらず、前記分岐点Aに入るまでに前記ウインカがオンされなかったことに基づいて、前記分岐点Aについては、以後警告を禁止する警告禁止手段(260)を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のウインカ忘れ警告装置。
【請求項4】
前記記録手段(100)は、前記警告手段(240)による警告後に前記ウインカがオンされた場合、そのウィンカのオン時における前記車両から前記分岐点Aまでの距離は、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のウインカ忘れ警告装置。
【請求項5】
前記記録手段(100)は、前記ウインカのオン時に前記車両の走行速度が基準速度未満であることに基づいて、そのウィンカのオン時における前記車両から前記分岐点Aまでの距離は、ウインカオン時学習距離としての記録対象から除外することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のウインカ忘れ警告装置。
【請求項6】
ウインカのオン時における車両の分岐点までの距離を、ウインカオン時学習距離として、複数機会に渡って記録する記録手段(100)、
曲折する予定の分岐点Aの手前において、前記記録手段(100)によって複数機会に渡って記録された前記ウインカオン時学習距離と、前記車両の現在位置から前記分岐点Aまでの距離と、を比較することで、前記車両が前記ウインカをオンすべき位置を過ぎてしまったか否かを判定する判定手段(225)、および
前記判定手段が肯定的判定を行ったにも関わらず、前記ウインカがオンされていないことに基づいて、前記車両のドライバに警告を行う警告手段(240)として、コンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−229149(P2009−229149A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72631(P2008−72631)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】