説明

ウエザストリップ

【課題】塗料の中で粒子を均一に混入させるとともに、ウエザストリップが低摩耗性と低摩擦性を有するとともに、接触相手部材との固着をしないような耐接触性の塗膜層を有するウエザストリップを提供する。
【解決手段】自動車の開口部と開口部開閉部材との間をシールするウエザストリップの相手部材との接触面に形成される耐接触性のウエザストリップの塗膜層10において、ウエザストリップの塗膜層10は、水系のエマルジョン塗料11と、エマルジョン塗料11に混入された耐摩耗性、異音防止性、固着防止性機能を有するための2種類以上の合成樹脂粒子12を含有し、2種類以上の合成樹脂粒子12と水系のエマルジョン塗料11はいずれも比重が略等しいウエザストリップの塗膜層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の開口部と開口部開閉部材との間をシールするウエザストリップにおいて、ウエザストリップが取付けられた部材に対して、その相手部材へウエザストリップが当接するが、ウエザストリップが接触する面に形成される耐磨耗性や低摩擦性や、低付着性等を有する耐接触性の塗膜層を有するウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の開口部と開口部開閉部材との間をシールするウエザストリップは、図3に示すように、例えば、開口部である車体開口部周縁6を開口部開閉部材であるドア1で開閉しているところでは、ドア1に取付けられるガラスラン20とドアウエザストリップ30及び車体開口部周縁6に取付けられるオープニングトリムウエザストリップ40が使用されている。
【0003】
ガラスラン20は、図3に示すように、ドアフレーム2のチャンネル3内に取付けられて、ドアガラス5の昇降を案内するとともにドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。ガラスラン20は、車外側シールリップ24、車内側シールリップ25及び底壁23がドアガラス5に接触し、その表面にはドアガラス5との接触抵抗を下げて、耐磨耗性のよい表面処理層26が形成されている。
【0004】
ドアフレーム2の外周に取付けられるドアウエザストリップ30は、リテーナー4に取付けられる取付基部31と、取付基部31に一体的に形成され車体開口部周縁6に当接する中空シール部32とシールリップ33を有する。中空シール部32とシールリップ33の表面には、車体開口部周縁6とドア閉時に固着しなく、耐磨耗性のよい表面処理層36が形成されている。
【0005】
車体開口部周縁6のフランジ7に取付けられるオープニングトリムウエザストリップ40は、フランジ7に取付けられるトリム部41と、トリム部41と一体的に形成され、ドアフレーム2の膨出部に当接する中空シール部42を有する。中空シール部42の表面には、ドアフレーム2の膨出部とドア閉時に固着しなく、耐磨耗性のよい表面処理層46が形成されている。
【0006】
これ等の表面処理層26、36、46を形成するために使用される塗料には、従来、ベースの合成樹脂とは別に、合成樹脂粒子を混入させており、これにより塗膜に低摩擦性や低固着性を付与している。しかしながら、図4に示すように、塗料111のベースの樹脂に対して合成樹脂粒子112の比重が大きいと、塗料111を基材層113に塗布した後に塗料111が硬化する前に合成樹脂粒子112が沈殿して、基材層113付近に溜り、塗膜層110の表面に合成樹脂粒子112が存在しなくなり、塗膜層110は充分な低摩擦性や低固着性が得られなかった。
また、塗料を塗布する前に貯蔵タンク内や配管内に合成樹脂粒子112が沈殿し、塗膜層110に合成樹脂粒子112の量が少なくなったり、配管が詰まったり、塗料の流れが悪くなったりしていた。
【0007】
そのため、図5に示すように、中空の樹脂粒子212を使用し、比重を軽くして表面に樹脂粒子212を浮上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この場合には、樹脂粒子212が塗料211の内部に均一に混合されずに表面に集中するため、長時間の使用で表面が少し磨耗すると急速に低摩擦性や低固着性が損なわれることとなる。
【0008】
また、図6に示すように、平均粒径が1μm〜3μmの細かい樹脂粉末を塗料311に混入して、塗料311中に均一に分散させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この場合には、細かい粒子を塗料311に混入させるために、混入作業に手間がかかるとともに、コストも上昇することとなる。
【特許文献1】特開平9−290646号公報
【特許文献2】特開2002−233821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、塗料の中で粒子を均一に混入させるとともに、ウエザストリップが耐摩耗性と低摩擦性を有するとともに、接触相手部材との固着や異音の発生をしないような耐接触性の塗膜層を有するウエザストリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、自動車の開口部と開口部開閉部材との間をシールするウエザストリップの相手部材との接触面に形成される耐接触性の塗膜層を有するウエザストリップにおいて、
ウエザストリップの塗膜層は、水系のエマルジョン塗料と、エマルジョン塗料に混入された耐摩耗性、異音防止性、固着防止性機能を有するための2種類以上の合成樹脂粒子と水系のエマルジョン塗料を含有し、2種類以上の合成樹脂粒子と水系のエマルジョン塗料はいずれも比重が略等しいことを特徴とする塗膜層を有するウエザストリップである。
【0011】
請求項1の本発明では、ウエザストリップの塗膜層は、水系のエマルジョン塗料と、エマルジョン塗料に混入された耐摩耗性、異音防止性、固着防止性機能を有するための2種類以上の合成樹脂粒子と水系のエマルジョン塗料を含有している。水系のエマルジョン塗料のため、有機溶剤を使用しなくて、安全性が高く、取り扱いが容易であり、作業環境にも好ましい。2種類以上の合成樹脂粒子を含有するため、異音発生防止性に優れ、耐摩耗性に優れた粒子や、耐摩擦性に優れた粒子、あるいはウエザストリップが相手部材と当接したときに固着や付着を防止する粒子を選択して混入することができ,ウエザストリップの表面を、相手部材との長期間に亘る接触においても、摩擦の低い、磨耗や付着のしない耐接触性のウエザストリップの塗膜層で覆うことができる。2種類以上の合成樹脂粒子を含有させるのは、1種類の合成樹脂粒子では上記の性能を広く満足させることができるものはないからである。
【0012】
2種類以上の合成樹脂粒子と水系のエマルジョン塗料はいずれも比重が略等しいため、そのエマルジョン塗料に混入される2種類以上の合成樹脂粒子はいずれも比重が略等しいため、エマルジョン塗料と合成樹脂粒子が充分に混合されて、分離することがなく懸濁状態を維持することができる。そのため、エマルジョン塗料は、塗布前の貯蔵タンク中でも配管中でも合成樹脂粒子が沈殿することがない。さらに、貯蔵タンクや配管が詰まることがなく、ウエザストリップの表面に塗布した後も、塗膜中で均一に分散して、表面にも合成樹脂粒子が存在するとともに、長時間の使用後、表面が磨耗しても、塗膜の表面に合成樹脂粒子を析出させ続けることができ、耐接触性のウエザストリップの塗膜層を維持することができる。
【0013】
請求項2の本発明は、2種類以上の合成樹脂粒子の比重は1.0〜1.1であるウエザストリップである。
【0014】
請求項2の本発明では、2種類以上の合成樹脂粒子の比重は1.0〜1.1であるため、水系のエマルジョン塗料の比重は水の占める割合が大きいため約1であるが、2種類以上の合成樹脂粒子の比重と略等しく、エマルジョン塗料と合成樹脂粒子が充分に混合されて、分離することがなく懸濁状態を維持することができる。
【0015】
請求項3の本発明は、エマルジョン塗料は、ウレタン系塗料又はシリコーン系塗料のいずれかであり、
2種類以上の合成樹脂粒子はいずれもそれぞれの平均粒径が2μm〜30μmであり、ウエザストリップの塗膜層の膜厚が5μm〜25μmであるウエザストリップである。
【0016】
請求項3の本発明は、エマルジョン塗料は、ウレタン系塗料又はシリコーン系塗料のいずれかであるため、ウレタン系塗料の場合は、柔軟性に富み、基材層であるウエザストリップのゴムとの密着性が良く、耐久性に優れて長時間の使用にも耐接触性のウエザストリップの塗膜層を維持することができる。シリコーン系塗料の場合は、耐候性、耐水性、耐アルカリ性に優れて、柔軟性に富み、基材層であるウエザストリップのゴムとの密着性が良く、耐久性に優れて長時間の使用にも耐接触性のウエザストリップの塗膜層を維持することができ、ウエザストリップの当接する相手部材と密着することが少ない。
【0017】
2種類以上の合成樹脂粒子はいずれもそれぞれの平均粒径が2μm〜30μmであり、粒径が小さく、エマルジョン塗料と充分に混合されて、ウエザストリップへ塗布するときに、塗料と一緒に塗布される。ウエザストリップの塗膜層の膜厚が5μm〜25μmであるため、ウエザストリップの表面を覆い、膜厚が充分であり、長時間の使用で塗膜が磨耗してもウエザストリップの表面の保護し続けることができる。平均粒径小さいものでも塗膜中に保持して、耐接触性を発揮することができ、ウエザストリップの塗膜層の表面に合成樹脂粒子の表面が出ていても、合成樹脂粒子の平均粒径が大きいものでも、合成樹脂粒子を保持することができる。
【0018】
合成樹脂粒子としてシリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂の粉体を使用する場合には、異音防止性と固着防止性に優れた塗膜層を得ることができる。
合成樹脂粒子としてポリアミド樹脂(ナイロン12)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂の粉体を使用する場合には、耐摩耗性と低摺動性性に優れた塗膜層を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
ウエザストリップの塗膜層は、水系のエマルジョン塗料と、エマルジョン塗料に混入された2種類以上の合成樹脂粒子を含有しているため、耐摩耗性に優れた粒子や、低摩擦性に優れた粒子、あるいはウエザストリップが相手部材と当接したときに固着や付着を防止する粒子を選択して混入することができ。
【0020】
エマルジョン塗料に混入される2種類以上の合成樹脂粒子はいずれも比重が1.0〜1.1であるため、エマルジョン塗料と合成樹脂粒子が充分に混合されて、分離することがなく懸濁状態を維持することができ、ウエザストリップの表面に塗布した後も、塗膜中で均一に分散して、表面にも合成樹脂粒子が存在するとともに、長時間の使用後、表面が磨耗しても、塗膜の表面に合成樹脂粒子を析出させ続けることができ、耐接触性のウエザストリップの塗膜層を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、図1〜図3に基づき説明する。
図1は、基材層13であるウエザストリップの表面に水系のエマルジョン塗料11を塗布した直後の硬化前のウエザストリップの塗膜層10の断面図である。図2は、基材層13であるウエザストリップの表面に水系のエマルジョン塗料11を塗布して、硬化後のウエザストリップの塗膜層10の断面図である。図3は、ウエザストリップの塗膜層10を塗布する各ウエザストリップとその接触する相手部材の関係を示す自動車のドア1と車体開口部周縁6の断面図である。
【0022】
本発明に使用される水系のエマルジョン塗料11は、水中に塗料成分がエマルジョンとして存在する塗料であり、水の量が多いためその比重は約1である。水系のエマルジョン塗料のため、有機溶剤を使用しなくて、可燃性が低く、安全性が高く、取り扱いが容易であり、換気等が不要であり、作業環境にも好ましい。
塗料成分としては、ウレタン系塗料又はシリコーン系塗料が好ましいが、その他の成分の塗料も使用することができる。
【0023】
ウレタン系塗料の場合は、硬化した後において、塗膜が柔軟性に富み、基材層であるウエザストリップのゴム又は熱可塑性エラストマーとの密着性が良く、耐水性や対アルカリ性及び耐久性に優れて、長時間の使用にも、低摺動抵抗や非粘着性等の耐接触性のウエザストリップの塗膜層を維持することができる。
【0024】
シリコーン系塗料の場合は、硬化した後において、紫外線や日光に対して耐久性を有し、耐候性、耐水性、耐アルカリ性に優れて、柔軟性に富み、基材層であるウエザストリップのゴムとの密着性が良く、耐久性に優れて長時間の使用にも耐接触性のウエザストリップの塗膜層を維持することができ、ドア閉時にウエザストリップが当接する相手部材と密着することが少ない。
【0025】
エマルジョン塗料11には、2種類以上の合成樹脂粒子12を混合する。この2種類以上の合成樹脂粒子12は、それぞれその特性に応じて選択することができる。例えば、耐摩耗性に優れた粒子や、低摩擦性に優れた粒子、あるいはウエザストリップが相手部材と当接したときに固着や付着を防止する粒子を選択して混入することができる。この合成樹脂粒子12を含有するエマルジョン塗料11をウエザストリップの表面に塗布すると、その表面が耐接触性のウエザストリップの塗膜層10で覆うことができる。
【0026】
水系のエマルジョン塗料11の比重が水系であり約1であるが、そのエマルジョン塗料に混入される2種類以上の合成樹脂粒子12はいずれも比重がお。9〜1.1にすることが好ましい。そうするとエマルジョン塗料11と合成樹脂粒子12の比重が略同じとなり、ウエザストリップの表面に塗布した場合には、図1に示すように、塗布した直後のエマルジョン塗料11が硬化前においても、合成樹脂粒子12がウエザストリップである基材層13の側に堆積することなく、均一に分散することができる。
【0027】
そして、エマルジョン塗料11が硬化した後は、図2に示すように、合成樹脂粒子12がエマルジョン塗料11中に均一に存在して、ウエザストリップの塗膜層10を形成し、ウエザストリップの表面処理層とすることができる。これにより塗布後、ウエザストリップの塗膜層10の表面にも合成樹脂粒子12が存在するとともに、ウエザストリップを長時間使用して、ウエザストリップの塗膜層10が磨耗しても、順次新しい合成樹脂粒子12が表面に析出し、低摺動性や耐摩擦性である耐接触性のウエザストリップの塗膜層10を維持することができる。
【0028】
また、エマルジョン塗料11と合成樹脂粒子12が充分に混合されて、分離することがなく懸濁状態を維持することができるため、塗布前のエマルジョン塗料11を貯蔵タンク中に貯蔵した場合にも、合成樹脂粒子12が沈殿することがなく、エマルジョン塗料11の中の合成樹脂粒子12の配合量が変化することがなく、配管中でも合成樹脂粒子12が沈殿して、エマルジョン塗料11を移送する配管や塗装ガンが詰まることがない。
【0029】
エマルジョン塗料11に混合される2種類以上の合成樹脂粒子12はいずれもそれぞれの平均粒径が2μm〜30μmであることが好ましい。合成樹脂粒子12の平均粒径が前記の場合には、粒径が充分に小さく、エマルジョン塗料11と充分に混合されて、ウエザストリップへ塗布するときに、エマルジョン塗料11と合成樹脂粒子12が同じ液体となって、一緒に塗布される。
【0030】
さらに、ウエザストリップの塗膜層10の膜厚が5μm〜25μmであることが好ましい。この場合には、ウエザストリップの塗膜層10がウエザストリップの表面を完全に覆い、耐接触性の表面にすることができる。また、長時間使用してウエザストリップの塗膜層10が磨耗しても、ウエザストリップの塗膜層10が消滅することはなく、ウエザストリップの表面の保護し続けることができる。
【0031】
合成樹脂粒子12の平均粒径が2μm又はそれ以上で2μmに近い場合には、ウエザストリップの塗膜層10の中に完全に分散して、表面に存在する合成樹脂粒子12が耐接触性の表面にすることができる。
合成樹脂粒子12の平均粒径が30μm又はそれ以下で30μmに近い場合には、合成樹脂粒子12はウエザストリップの塗膜層10から一部が出る場合があるが、この場合でもウエザストリップの塗膜層10が合成樹脂粒子12を確実に保持して、耐接触性の表面にすることができる。
【0032】
2種類以上の合成樹脂粒子12は、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン12)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂の粉体から選んだものを使用することが好ましい。合成樹脂粒子12としてシリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂の粉体を使用する場合には、異音防止性と固着防止性に優れた塗膜層を得ることができる。
合成樹脂粒子12としてポリアミド樹脂(ナイロン12)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂の粉体を使用する場合には、耐摩耗性と低摺動性性に優れた塗膜層を得ることができる。
【0033】
また、ナイロン樹脂の粉体を使用する場合は、ナイロン樹脂が耐摩耗性と耐熱性に優れているため、ウエザストリップの塗膜層10の磨耗を防止することができる。
シリコーン樹脂の粉体を使用する場合は、シリコーン樹脂の粉体とエマルジョン塗料11との硬さが略同じであり、ウエザストリップの塗膜層10からシリコーン樹脂の粉体が脱落しにくく、塗膜の低摩擦性を維持することができる。シリコーン樹脂は耐候性に優れており、低摩擦力のため、摺動抵抗の低いウエザストリップの塗膜層10とすることができる。
【0034】
本発明のウエザストリップの塗膜層10は、自動車の開口部と開口部開閉部材との間をシールするウエザストリップに塗布されて、形成されるが、そのウエザストリップは、自動車ドアの付近では、例えば図3に示すように、ガラスラン20、ドアウエザストリップ30、オープニングトリムウエザストリップ40があり、さらにラッゲージウエザストリップ、サンルーフウエザストリップ等がある。ウエザストリップとして、ガラスラン20、ドアウエザストリップ30、オープニングトリムウエザストリップ40を例にとりウエザストリップの塗膜層10の表面処理層について説明する。
【0035】
ガラスラン20は、図3に示すように、ドアフレーム2のチャンネル3内に取付けられて、開口部開閉部材であるドアガラス5の昇降を案内するとともにドアガラス5とドアフレーム2との間をシールしている。ガラスラン20は、車外側側壁21、車内側側壁22及び底壁23からなるガラスラン本体と、車外側側壁21からガラスラン本体内に延設される車外側シールリップ24、車内側側壁22からガラスラン本体内に延設される車内側シールリップ25が形成されている。ウエザストリップの塗膜層10は、車外側シールリップ24、車内側シールリップ25及び底壁23のドアガラス5と当接する表面に塗布されて表面処理層26が形成される。
【0036】
ドアガラス5がガラスラン本体の内部に侵入すると、車外側シールリップ24、車内側シールリップ25がドアガラス5の側面に接触し、ドアガラス5の先端が底壁23に当接する。このとき、表面処理層26は、ドアガラス5との摺動抵抗を下げて、スムースなドアガラス5の昇降をさせて、異音の発生を防止することができる。表面処理層26には、2種類以上の合成樹脂粒子12が混入されているため、耐磨耗性のよい表面処理層26が形成されている。
【0037】
開口部開閉部材であるドア1のドアフレーム2の外周に取付けられるドアウエザストリップ30は、ドアフレーム2の外周に形成された断面C字形のリテーナー4に取付けられる取付基部31と、取付基部31の外面に一体的に形成され、開口部である車体開口部周縁6の若干車内側に当接する中空シール部32と、車体開口部周縁6に当接し、車体開口部周縁6とドア1の車外側の先端の間をシールするシールリップ33を有する。
【0038】
中空シール部32とシールリップ33の車体開口部周縁6と当接する表面には、ウエザストリップの塗膜層10が塗布された表面処理層36形成されている。表面処理層36には2種類以上の合成樹脂粒子12が含有されているため、ドア閉時に車体開口部周縁6と当接するドアウエザストリップ30が車体開口部周縁6と粘着したり、固着したりすることがなく、ドアの開閉がスムースであり、ドアウエザストリップ30の表面が磨耗することも少ない。
【0039】
開口部である車体開口部周縁6のフランジ7に取付けられるオープニングトリムウエザストリップ40は、フランジ7に取付けられるトリム部41と、トリム部41と一体的に形成され、相手部材であり開口部開閉部材であるドアフレーム2の膨出部に当接する中空シール部42を有する。中空シール部42のドアフレーム2の膨出部に当接する表面には、ウエザストリップの塗膜層10が塗布された表面処理層46が形成されている。このため、ドア閉時にドアフレーム2の膨出部と当接する中空シール部42がドアフレーム2と粘着したり、固着したりすることがなく、ドアの開閉がスムースであり、オープニングトリムウエザストリップ40の表面が磨耗することも少ない。
【0040】
ウエザストリップの成形においては、ガラスラン20、ドアウエザストリップ30及びオープニングトリムウエザストリップ40にいずれにおいてもその直線部は、押出成形で成形される。
成形材料は、熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムのソリッド材とスポンジ材が使用され、熱可塑性エラストマーでは、ポリオレフィン系エラストマー等が使用される。EPDMゴムの場合は押出成形後に加熱し加硫される。
【0041】
コーナー部は型成形で成形され、直線部を接続する。コーナー部においても、オレフィン系熱可塑性エラストマー又はEPDMゴムで形成する。同種の材料であり、ウエザストリップの直線部とコーナー部の接着性がよい。また、いずれもオレフィン系の材料であり、耐候性がよく、同時に粉砕処理ができ、リサイクル容易な製品を得ることができる。
【0042】
ウエザストリップの表面処理層26、36、46は、直線部では押出成形と同時に所定部分に塗布されか、あるいは加硫後に所定部分に塗布される。コーナー部では、型成形後に所定部分に塗布される。
ウエザストリップの塗膜層が形成されるウエザストリップは、EPDMゴム又はオレフィン系熱可塑性エラストマーで形成されたため、柔軟性に富み、耐候性に優れているとともに、リサイクルによる再利用も容易である。また、ウエザストリップの塗膜層10がウエザストリップと強固に接着することができ、長期間の耐接触性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態であるウエザストリップの表面にエマルジョン塗料を塗布して硬化前の表面処理層の拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の形態であるウエザストリップの表面にエマルジョン塗料を塗布して硬化後の表面処理層の拡大断面図である。
【図3】ドア閉時における、ガラスラン、ドアウエザストリップ及びオープニングトリムウエザストリップを自動車ドアと車体開口部周縁に取付けた状態の断面図である。
【図4】ウエザストリップの表面に従来のエマルジョン塗料を塗布して硬化前の表面処理層の拡大断面図である。
【図5】ウエザストリップの表面に従来の他のエマルジョン塗料を塗布して硬化前の表面処理層の拡大断面図である。
【図6】ウエザストリップの表面に従来の他のエマルジョン塗料を塗布して硬化前の表面処理層の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
2 ドアフレーム
6 車体開口部周縁
10 ウエザストリップの塗膜層
11 エマルジョン塗料
12 合成樹脂粒子
20 ガラスラン
26、36、46 表面処理層
30 ドアウエザストリップ
40 オープニングトリムウエザストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の開口部と開口部開閉部材との間をシールするウエザストリップの相手部材との接触面に形成される耐接触性の塗膜層を有するウエザストリップにおいて、
該ウエザストリップの塗膜層は、水系のエマルジョン塗料と、該エマルジョン塗料に混入された耐摩耗性、異音防止性、固着防止性機能を有するための2種類以上の合成樹脂粒子水系のエマルジョン塗料を含有し、該2種類以上の合成樹脂粒子と水系のエマルジョン塗料はいずれも比重が略等しいことを特徴とする塗膜層を有するウエザストリップ。
【請求項2】
上記2種類以上の合成樹脂粒子の比重は1.0〜1.1である請求項1に記載のウエザストリップ。
【請求項3】
上記エマルジョン塗料は、ウレタン系塗料又はシリコーン系塗料のいずれかであり、
上記2種類以上の合成樹脂粒子はいずれもそれぞれの平均粒径が2μm〜30μmであり、上記ウエザストリップの塗膜層の膜厚が5μm〜25μmである請求項1又は請求項2に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−6225(P2010−6225A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167318(P2008−167318)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】