説明

ウエハの接着方法、薄板化方法、及び剥離方法

【課題】薄板化したウエハにサポートプレートの貫通孔の跡が転写されにくく且つウエハの端部がめくれ上がりにくい薄板接着方法を提供する。
【解決手段】サポートプレート1とウエハ5を接着する接着剤層は硬質接着剤層16を上下から軟質接着剤層17及び18で挟む三層構造から成っている。接着剤層の表裏がいずれも軟質接着剤層であるのでウエハ5やサポートプレート1に対して接着性が良く研削加工で薄板化されたウエハ5がダイシング前に剥離した端部がめくり上がってくるようなことはない。また研削装置内でサポートプレート1の非接着面側から真空引きされても又研削の押圧力が加わっても中間の接着剤層が硬質接着剤層16であり変形に対する抵抗が強く、軟質接着剤層18が貫通孔2に引き込まれたり押し込まれるのに追随して貫通孔2側に変形することはない。したがって、剥離工程を経たウエハ5の回路形成面に貫通孔2の跡が転写されることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを研削・研摩して薄板化する工程に先立ってサポートプレートにウエハを保持するためのウエハの接着方法、その薄板化方法、及びその剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICカード、携帯電話、デジタルカメラ、その他の携帯用電子機器が広く用いられている。近年、これらの携帯用電子機器は、例外なく薄型化、小型化、軽量化が要求されている。
【0003】
このような要求を満たすためには、これらの電子機器に組み込まれる半導体チップも薄型化しなければならない。このため半導体チップを形成するシリコンウエハ(以下、単にウエハという)の厚さは、現状の125μm〜150μmの厚さから、次世代の半導体チップ用として25μm〜50μmの厚さにしなければならないと言われている。
【0004】
従来、ウエハの薄板化には、例えば、ウエハの回路形成面に保護テープを貼り付け、これを反転させてウエハの裏面をグラインダで研削して薄層化し、更に研摩して、この薄層化したウエハの裏面をダイシングフレームに保持されているダイシングテープ上に固定し、この状態でウエハの回路形成面を覆っている保護テープを剥離し、この後ダイシング装置によって各チップ毎に切り離すようにしていた。
【0005】
しかし、これでは、保護テープをウエハから剥離する際に、ウエハに割れや欠けが生じやすい。また保護テープだけでは薄層化したウエハを支えることができないため、搬送は人手によって行わなければならず自動化することができないなどの面倒がある。
【0006】
そこで、保護テープの代わりに窒化アルミニウム−窒化硼素気孔焼結体にラダー型シリコーンオリゴマーを含浸させた保護基板を用いたり、ウエハと実質的に同一の熱膨張率のアルミナ、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素などから成る保護基板を用いてウエハを保持するようになってきた。
【0007】
この場合、保護基板とウエハとを接着しなければならないが、この接着剤としては、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂を用いて10〜100μmの厚さのフィルムとする方法、或いは接着剤樹脂溶液をスピンコートし、乾燥させて20μm以下のフィルムにする方法がある。
【0008】
このように固い保護基板を用いる方法は、加工工程中の取り扱いや搬送の自動化が可能になる。しかし、保護基板とウエハとを一旦乾燥した熱可塑性フィルムを接着材として用いているため、ウエハを保護基板から剥離する際に熱可塑性フィルムを柔らくするための加熱工程が必要となる。そして、一旦乾燥した熱可塑性フィルムを軟化させるには高温が必要であり、ウエハの回路を損傷する虞が多分にある。
【0009】
また、フィルム状の接着材を用いると接着強度に部分的なバラツキが生じ、研削の際に剥がれたり、逆にウエハを保護基板から剥離する際に剥離しにくい箇所が現れるなどの欠点がある。
【0010】
そこで、ウエハを研削・研摩して薄層化する工程に先立って、ウエハに割れや欠けが生じにくいように、多数の貫通孔を有する剛体のサポートプレートにウエハを接着剤で貼り付ける方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
この方法は、サポートプレートに多数の貫通孔が設けられていることで、接着剤との接合性が良いことと、サポートプレートがガラス等の剛体であることで、ウエハを極薄の薄板に研削。研摩したのちも、取り扱いが容易であること、そして、上記のようにサポートプレートに多数の貫通孔が設けられていることで、貫通孔を介して剥離液を接着剤層に浸透させることが容易であるという各種の利点を有している。
【特許文献1】特開2005−191550号公報([要約]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ウエハの研削と研摩時には、ウエハを保持するサポートプレートが裏面から真空引きされて加工台上に固定される。
ところが、上述したようにサポートプレートに多数の貫通孔が設けられているので、接着剤層が柔軟であると、貫通孔の跡が真空引きでウエハの回路面に転写される虞がある。また研削の際の回転研石からの押圧力でもウエハに貫通孔跡の転写が起きることがある。
【0012】
このような不具合を防止するためサポートプレートに転写防止シートを貼る方法が実行されているが、それでもウエハに貫通孔跡の転写が発生する。
この問題は、接着剤層をより硬質なものにすると解決できるが、接着剤層があまり硬質であると、接着性が低下し、研削と研摩により薄板化されたウエハが、周辺部で接着剤層から剥離してめくれ上がるという不具合が生じる虞がある。
【0013】
また、サポートプレートには接着剤層が塗布されるのではなく圧着されるので、接着剤層があまり硬いと接着性が低下するという問題も残されている。
したがって、研摩後のウエハの厚さによって、接着剤の厚さ、材質、硬さ等については十分に調整する必要があって面倒である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の一つを解決すべく本発明のウエハの接着方法は、サポートプレートとウエハとを硬軟複数種類の接着剤にて接着するようにした。
上記接着剤は、例えば、硬軟二層から成り、硬質層はウエハに接着され、軟質層はサポートプレートに接着されるようにする。勿論、その逆でも良い。
【0015】
また、接着剤の硬軟二層の形成は、例えば、ウエハ上に、硬質層、軟質層を順に形成し、この後、軟質層にサポートプレートを接着するようにする。
また、上記接着剤は、例えば、硬軟三層から成るように構成してもよい。この場合、上記接着剤は、例えば、硬質層を上下から軟質層で挟む三層構造から成るのが有効である。また、この場合、接着剤の硬軟三層の形成は、例えば、ウエハ上に、軟質層、硬質層、軟質層を順に形成してよい。
【0016】
また、上記サポートプレートは、複数の貫通孔を有するように構成してもよい。この場合、上記貫通孔は、開口径が200〜700μmであり、開口総面積が上記サポートプレートの面の面積の20%以上であることが好ましい。
【0017】
また、上記課題の他の一つを解決すべく本発明のウエハの薄板化方法は、上記記載のいずれかの接着方法により接着されたウエハを研削または研磨してウエハを薄板化する。
また、上記課題の更に他の一つを解決すべく本発明のウエハの剥離方法は、上記の薄板化方法により薄板化されたウエハを剥離液で接着剤を溶解することにより剥離する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、硬軟複数種類の接着剤層によりウエハとサポートプレートを接着するので、サポートプレートが多数の貫通孔を有する場合に、薄板化したウエハに貫通孔の跡が転写されにくく且つウエハの端部がめくれ上がりにくい薄板接着方法を提供することが可能となる。
【0019】
また、硬軟複数種類の接着剤層によりウエハとサポートプレートとを接着するのでウエハがサポートプレートに強固に保持され、これにより、研削・研磨によるウエハの薄板化が容易にできるようになる。
【0020】
また、ウエハの薄板化後には接着剤層を剥離液で溶解してウエハを剥離するのでウエハの回路形成面に外からの高熱等の無用な作用が加わらないので、ウエハの破損が少なく、したがって歩留まりが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0022】
図1(a) は、実施例1において、後述するウエハの薄板化加工工程にて用いられるサポートプレートの構成を模式的に示す斜視図であり、同図(b) はサポートプレートとウエハの位置合わせ時の対応関係を模式的に示す断面図、同図(c) はサポートプレートとウエハの接着剤層による熱圧着後の状態を模式的に示す断面図である。
【0023】
同図(a) に示すように、サポートプレート1は、剛性体であるガラス板から成る円板状の形状をなしている。このサポートプレート1には、同図(a),(b),(c) に示すように、一面に均等に配置された多数の微細な貫通孔2が形成されている。
【0024】
このサポートプレート1は、貼り合せ装置の中で、同図(b) に示すように、回路形成面に硬軟複数種類(同図に示す例では硬質接着剤層3と軟質接着剤層4との二種類)の接着剤層を塗布されたウエハ5に対向して位置合わせされる。
【0025】
この後、サポートプレート1とウエハ5とが、熱と圧力を加えられて硬質接着剤層3と軟質接着剤層4を介して貼り合せられる。この硬軟二層から成る接着剤層を介しての貼り合せでは、同図(c) に示す例では、軟質接着剤層4がサポートプレート1に接着され、硬質接着剤層3がウエハ5に接着されている。
【0026】
尚、この硬軟二層から成る接着剤層へのサポートプレート1とウエハ5の接着は、上記とは逆に軟質接着剤層4にウエハ5を接着させ、硬質接着剤層3にサポートプレート1に
接着させるようにしてもよい。
【0027】
図2(a) は、上記のようにサポートプレート1とウエハ5とを接着剤層を介しての貼り合せる貼り付け装置の透視的平面図であり、図3(b) は、その正面図である。
図2(a) に示すように、貼り付け装置10は、正面側端部に複数の使用前のサポートプレート1を保持するサポートストッカ6、回路形成済みのウエハを収容した複数のカセットを保持するウエハカセットステーション7、及び重ね合わせ装置8が配置されている。
【0028】
また、中央部には、約左2/3を占めるロボット移動路9が形成され、その右側に貼り合せで一体となったサポートプレート1とウエハ5と貼り付ける貼り付け装置11が配置されている。また、ロボット移動路9の左端には、ロボット12が待機している。
【0029】
装置の後側端部には、ウエハ5に接着剤を塗布するスピンカップ13が配置され、その右方に、フラットファインダ/クールプレート14、及びベークまたはオーブンプレート15が横に並んで配置されている。スピンカップ13の近傍に、塗布ノズル16が添設されている。
【0030】
この貼り付け装置10は、図2(b) に示すように、上部保護カバー17の正面上部右側に、入力操作しながら所望の情報を表示させることができる入力表示装置18が設けられている。オペレータは、この入力表示装置18の表示を見ながら入力操作して、内部の諸装置の動作を制御することができる。
【0031】
図3は、サポートプレート1とウエハ5の貼り合わせとウエハ5の薄板化の一連の処理工程を模式的に説明する図である。この処理はオペレータからの指示が入力表示装置18から入力されることによって開始される。
【0032】
先ず、図3に示す工程S1では、図2に示したロボット12が、ロボット移動路9内を左右に移動しながら、回転し、アームを伸縮させて、ウエハカセットステーション7から取り出したウエハ5を、スピンカップ13の加工台上に載置する。
【0033】
そして、スピンカップ13では、加工台に載置されたウエハ5を、図3の矢印aで示すように回転させる。そして、ウエハ5に、液状の接着剤3´を滴下してスピン塗布する。これにより、ウエハ5の上面(回路形成面)全面に、液状の接着剤3´が均一に塗布される。
【0034】
なお、接着剤の塗布では、スピン塗布以外に、麺棒で麺材を伸ばすように接着剤を塗布するアプリケータによる塗布、あるいは、少なくともウエハ5の直径以上の幅のスリットノズルで接着剤を塗布する方法等がある。
【0035】
また、接着剤としては、DAF(ダイアタッチフィルム)の貼り付けなどの高温処理工程があるため軟化点の高いもの、例えばアクリル系樹脂材料が使用される。
次に工程S2では、ロボット12によって、接着液を塗布されたウエハ5がスピンカップ13から取り出され、ベークプまたはオーブンレート15に移送される。
【0036】
このベークまたはオーブンプレート15では、上記液状の接着剤3´を乾燥させて流動性を低減させ、硬質接着剤層3としての層形状を維持させる。この乾燥では、例えば40〜200℃で所定時間加熱される。
【0037】
また、硬質接着剤層3の厚さはウエハ5の接着剤面に形成されている回路の凹凸に応じて決定される。また、硬質接着剤層3は後述する熱圧着後の状態で比較的硬質の接着剤層となるように接着剤原料として使用される樹脂の質が選択される。
【0038】
続いて、上記の工程S1及びS2と同様の工程を繰り返して、硬質接着剤層3の上に軟質接着剤層4を形成する。この軟質接着剤層4としては、後述する熱圧着後の状態で比較的軟質の接着剤層となるように接着剤原料として使用される樹脂の質が選択される。
【0039】
尚、上述したように、硬軟二層から成る接着剤層へのサポートプレート1とウエハ5の接着関係を逆にする場合には、工程S1及び工程S2におけるウエハ5への接着剤の塗布は、先に硬質接着剤層3を塗布し、次に軟質接着剤層4を塗布することになる。
【0040】
続いて工程S3では、ウエハ5とサポートプレート1との位置合わせを行う。この位置合わせでは、ロボット12は、ウエハ5をベークまたはオーブンプレート15から取り出し、重ね合わせ装置8の重ね合わせ台上に載置する。
【0041】
続いて、ロボット12は、サポートストッカ6からサポートプレート1を取り出して、それを重ね合わせ装置8の重ね合わせ台上に載置されているウエハ5に重ねて位置合わせする。
【0042】
そして、工程S4において、上記のように重ね合わせしたウエハ5とサポートプレート1とを接着剤層3及び4を介して熱圧着する。この熱圧着では、ロボット12は、重ねて位置合わせの完了したサポートプレート1とウエハ5を重ね合わせ装置8から取り出して、そのサポートプレート1とウエハ5を、貼り付けユニット11に移送する。
【0043】
上記の熱圧着は、貼り付けユニット11の減圧チャンバ内で行われ、例えば40〜300℃の熱が加えられる。この熱圧着によりウエハ5とサポートプレート1とが一時的に一体化される。サポートプレート1には、上述したように例えばガラス等の剛性を有す材質のものが使用されるので、このサポートプレート1とウエハ5との一体化物の取り扱いは容易である。
【0044】
熱圧着が完了し、減圧チャンバから取り出された一体化物は、ロボット12により取り出されて、図示していないが、クーリングエリアにて自然冷却される。
続いて工程S5において、この冷却後の一体化物には、先ず、特には図示しないが、サポートプレート1の裏面(ウエハ5を支持している面の反対側面)に、転写防止シートが貼着される。
【0045】
次に、冷却後の一体化物は、これも不図示の研削装置に搬入され、サポートプレート1側を真空引きで加工台上に固定される。そして、研削装置の回転軸21の先端に保持されるグラインダ22が矢印bで示すように回転しながらウエハ5の裏面(非接着面)を所定の厚さに研削する。
【0046】
そして、工程S6において、上記グラインダ22で荒削りされたウエハ5の裏面(非接着面)が研摩されて鏡面化される。
その後の、工程7は、行われる場合もあれば、行われない場合もある。すなわち、工程7は、鏡面化されたウエハ5の裏面に金属の薄膜23を生成するバックメタライズ処理又は鏡面化されたウエハ5の裏面に裏面回路24を形成する処理である。いずれか一つの処理が選択的に行われるか、又はいずれも行われない場合もある。
【0047】
上記に続いて剥離処理が行われる。
図4は、剥離処理工程を説明する図である。先ず、工程S8では、回路が形成されていない面にダイシングテープを貼り付ける。図示しない溶剤供給プレートを、サポートプレート1に押し付ける。
【0048】
そして、溶剤供給プレートの溶剤供給孔から溶剤(剥離液27)を供給して、サポートプレート1の貫通孔2から、接着剤層に剥離液27を浸透させ、剥離液27を全体に供給する。
【0049】
これにより、剥離液27がサポートプレート1の貫通孔2(図1(a),(b),(c) 参照)に進入し、硬質接着剤層3及び軟質接着剤層4に浸透して、硬質接着剤層3及び軟質接着剤層4を徐々に溶解させる。
【0050】
この状態で、工程10において、取っ手治具28を用いてサポートプレート1をウエハ5から剥離させる。
この剥離方法としては、接着剤層3及び4が全て溶解するのを待つのではなく、サポートプレート1が剥離できるくらいに溶解させて剥離するので、全体としてのタクトが早くなる。
【0051】
その後、工程S11において、ウエハ5の表面に残留する接着剤3及び4を洗浄液29で洗浄する。
ここで、ウエハ5とサポートプレート1を接着していた接着剤層は硬軟二層構造であるので、研削装置内におけるサポートプレート1の非接着面側からの真空引きが行われても、また、グラインダ22や研摩機からの押圧力が加わっても、ウエハ5に貫通孔2の跡が転写されることはない。
【0052】
すなわち、サポートプレート1側の軟質接着剤層4が貫通孔2内に幾分引き込まれたり押し込まれることがあっても、ウエハ5側の硬質接着剤層3は変形に対する抵抗が強く、軟質接着剤層4が貫通孔2に引き込まれたり押し込まれることに追随して貫通孔2側に変形することはない。したがって、剥離工程を経たウエハ5に貫通孔2の跡が転写されるようなことはない。
【0053】
この後、特には図示しないが、ダイヤモンドの回転ダイシングソーでウエハ5をダイシングして多数のチップに分割する。分割されたチップは、ダイシングテープ26から剥離され、配線ボンディング装置に供給される。
【0054】
ここで、接着剤の硬度と転写性の関係、及び接着剤の硬度と接着力の関係について簡単に説明する。
図5(a) は、接着剤の硬度と転写性の関係を示す特性図であり、同図(b) は接着剤の硬度と接着力の関係を示す特性図である。
【0055】
同図(a) は縦軸に転写性を示し、原点で転写性「小」、上にいくほど転写性「大」となっている。そして、横軸に接着剤の硬度を示し、原点で硬度「小」、右にいくほど硬度「大」となっている。
【0056】
同図(b) は縦軸に接着力を示し、原点で接着力「小」、上にいくほど接着力「大」となっている。そして、横軸に接着剤の硬度を示し、原点で硬度「小」、右にいくほど硬度「大」となっている。
【0057】
同図(a) の特性図で判明するように、接着剤の硬度が「小」であると転写性は「大」となり、接着剤の硬度が「大」であると転写性は「小」となる。したがって、転写性が「小」となることのみを考えれば、接着剤の硬度は「大」であるほど良いということができる。
【0058】
しかし、同図(b) の特性図で判明するように、接着剤の硬度が「小」であると接着力は「大」となり、接着剤の硬度が「大」であると接着力は「小」となる。したがって、接着力が「大」となることのみを考えれば、接着剤の硬度は「小」であるほど良いということができる。
【0059】
つまり、接着剤の硬度と転写性又は接着力の間には、二律背反の性質がある。これら二律背反の性質を有する2つの特性から、ウエハ5側に接着させる硬質接着剤層3として、接着力が程よく且つ転写性が見られないような特性のものを選択する必要がある。
【0060】
また、転写性については、サポートプレート1の貫通孔2の開口の大きさも関係するので、ウエハ5のサイズや形成される回路の状態に応じて決定される接着剤層の厚さとも考え合わせて最適の硬質接着剤層3の材質を選択するとよい。
【0061】
また、転写の発生を抑えるには、硬質接着剤層3の接着をウエハ5側と限ることなく、サポートプレート1側であっても効果に差はない。
【実施例2】
【0062】
図6は、実施例2における前述同様のウエハの薄板化加工工程にて、ウエハを研削・研摩して薄層化する工程に先立って行われるサポートプレートとウエハの接着剤層による熱圧着後の状態を模式的に示す断面図である。
【0063】
同図に示すように、サポートプレート1とウエハ5を接着する接着剤層は、硬質接着剤層31を上下から軟質接着剤層32及び33で挟む三層構造から成っている。
そして、上下いずれか一方の軟質接着剤層(同図の例では下の軟質接着剤層32をウエハ5に接着され、他方の軟質接着剤層(同図の例では上の軟質接着剤層33をサポートプレート1に接着されている。
【0064】
尚、三層構造の接着剤層の形成は、図3に示した工程S1及びS2を繰り返すことによって塗布を重ねてもよく、また、軟質接着剤層32を塗布してから、その上に硬質接着剤層31のシートと軟質接着剤層33のシートを重ねて熱接着するようにしてもよい。
【0065】
また、軟質接着剤層32と軟質接着剤層33は、共に図1に示した軟質接着剤層4と同一のものを用いても良く、また硬質接着剤層31は図1に示した硬質接着剤層3と同一のものを用いても良い。
【0066】
本例の場合は、三層構造の接着剤層の表裏がいずれも軟質接着剤層であるので、ウエハ5やサポートプレート1に対して親和性が良く、つまり接着性が良いので、研削加工で薄板化されたウエハ5がダイシング前に剥離した端部がめくり上がってくるようなことはない。
【0067】
また、本例においても、研削装置内におけるサポートプレート1の非接着面側からの真空引きが行われたり、研削・研摩の際の押圧力が加わっても、ウエハ5に貫通孔2の跡が転写されることはない。
【0068】
すなわち、サポートプレート1側の軟質接着剤層33が貫通孔2内に幾分引き込まれたり押し込まれることがあっても、中央の硬質接着剤層31による変形に対する抵抗が強く、ウエハ5側の軟質接着剤層32が貫通孔2側に引き込まれて変形することはない。したがって、剥離工程を経たウエハ5に貫通孔2の跡が転写されるようなことはない。
【0069】
尚、軟質接着剤層と硬質接着剤層に使用される樹脂は、同系の樹脂を使用すると、軟質接着剤層と硬質接着剤層との間における親和性が強いので、これらの間における接着性については特段の考慮は殆ど必要がなくなる。
【0070】
また、上記実施例ではいずれの場合も、接着剤層へのウエハ5の貼り付け面は回路が形成されている表面と一定しているが、サポートプレート1には表裏の区別はなく、接着剤層へのサポートプレート1の貼り付け面は、いずれの面であってもよい。
【0071】
また、上記三層構造の接着剤の形成では、ウエハ上に、硬質層、軟質層、硬質層を順に形成した後、露出側の硬質層にサポートプレートを接着するようにしてもよい
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a) は実施例1においてウエハの薄板化加工工程にて用いられるサポートプレートの構成を模式的に示す斜視図、(b) はサポートプレートとウエハの位置合わせ時の対応関係を模式的に示す断面図、(c) はサポートプレートとウエハの接着剤層による熱圧着後の状態を模式的に示す断面図である。
【図2】(a) はサポートプレートとウエハとを接着剤層を介しての貼り合せる貼り付け装置の透視的平面図、(b) はその正面図である。
【図3】サポートプレートとウエハの貼り合わせとウエハの薄板化の一連の処理工程を模式的に説明する図である。
【図4】剥離処理工程を説明する図である。
【図5】(a) は接着剤の硬度と転写性の関係を示す特性図、(b) は接着剤の硬度と接着力の関係を示す特性図である。
【図6】実施例2においてウエハを研削・研摩して薄層化する工程に先立って行われるサポートプレートとウエハの接着剤層による熱圧着後の状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 サポートプレート
2 貫通孔
3 硬質接着剤層
4 軟質接着剤層
5 ウエハ
6 サポートストッカ
7 ウエハカセットステーション
8 位置合わせ装置
9 ロボット移動路
11 貼り付け装置
12 ロボット
13 スピンカップ
14 フラットファインダ/クールプレート
15 ベークまたはオーブンプレート
16 塗布ノズル
17 上部保護カバー
18 入力表示装置
21 回転軸
22 グラインダ
23 金属薄膜
24 裏面回路
25 テープフレーム
26 ダイアタッチフィルム(ダイシングテープ)
27 剥離液
28 取っ手治具
29 洗浄液
31 硬質接着剤層
32 軟質接着剤層
33 軟質接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポートプレートとウエハとを硬軟複数種類の接着剤にて接着する、ことを特徴とするウエハの接着方法。
【請求項2】
前記接着剤は、硬軟二層から成り、前記接着剤の硬質層は、前記ウエハに接着され、前記接着剤の軟質層は前記サポートプレートに接着される、ことを特徴とする請求項1記載のウエハの接着方法。
【請求項3】
ウエハ上に、硬質層、軟質層を順に形成した後、軟質層にサポートプレートを接着する、ことを特徴とする請求項2に記載のウエハの接着方法。
【請求項4】
前記接着剤は、硬軟三層から成る、ことを特徴とする請求項1記載のウエハの接着方法。
【請求項5】
前記接着剤は、硬質層を上下から軟質層で挟む三層構造から成る、ことを特徴とする請求項4記載のウエハの接着方法。
【請求項6】
ウエハ上に、軟質層、硬質層、軟質層を順に形成する、ことを特徴とする請求項5に記載のウエハの接着方法。
【請求項7】
前記サポートプレートは、複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のウエハの接着方法。
【請求項8】
前記貫通孔は、開口径が400μm以下であり、開口総面積が前記サポートプレートの面の面積の20%以上である、ことを特徴とする請求項8記載のウエハの接着方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の接着方法により接着されたウエハを研削または研磨して、ウエハを薄板化することを特徴とするウエハの薄板化方法。
【請求項10】
請求項9に記載の薄板化方法により薄板化された前記ウエハを剥離液で接着剤を溶解することにより剥離することを特徴とするウエハの剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−34623(P2008−34623A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206319(P2006−206319)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】