説明

エアバッグ用クリップの取付構造

【課題】 エアバッグの展開を許容する隙間を拡大できるエアバッグ用クリップの取付構造の提供。
【解決手段】 ガーニッシュGを車体パネルPに取り付けるクリップの取付構造であって、クリップは、ガーニッシュ又は車体パネルの一方に取り付くピン部材1と、他方に取り付くグロメット部材2から成り、ピン部材は、頭部3と脚部4を備え、脚部は、エアバックの収納状態でガーニッシュを保持する第一係止部8と、エアバッグの展開状態でガーニッシュを保持する第二係止部9を有し、グロメット部材は、フランジ部13と胴部15備え、胴部は、第一係止部を係合する第一係合部と、第二係止部を係合する第二係合部を有し、エアバッグの展開状態では、第二係止部が第二係合部に対して揺動可能に係合して、この係合により、ピン部材又はグロメット部材が揺動して、ガーニッシュと車体パネルの間に画成される隙間Sを拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを収納した状態で、ピラーガーニッシュを車体パネルに取り付けるためのエアバッグ用クリップの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種エアバッグ用クリップの取付構造は、特許文献1に示す如く、乗員をより安全に保護する目的で、自動車室内の側面側にエアバッグを設けようとするもので、エアバッグ用クリップは、ピン部材とグロメット部材とから成り、前者のピン部材は、後述するピラーガーニッシュの取付座に装着される頭部と、グロメット部材の内部にスライド可能に挿入される脚部とを備え、該脚部に第一係止爪と第二係止爪を形成し、後者のグロメット部材は、中央にグロメット部材の内部と連通する開口を有するフランジ部と、後述する車体パネルたるフロントピラーの取付孔に係着する胴部とを備え、該胴部に上記第一係止爪を係合する第一係合壁と第二係止爪を係合する第二係合壁を形成する構成となっている。
【0003】
又、ピラーガーニッシュに対しては、エアバッグを収納してフロントピラーに着脱可能に取り付けられるもので、その裏面に上記ピン部材の頭部を装着する取付座を設け、フロントピラーに対しては、上記グロメット部材の胴部を係着する取付孔を穿設する構成となっている。
【0004】
そして、実際の使用に際しては、ピン部材の頭部をピラーガーニッシュの取付座に装着する一方、グロメット部材の胴部をフロントピラーの取付孔に係着して、この状態で、ピン部材の脚部をグロメット部材の胴部内に深く挿入すると、ピン部材側の第一係止部がグロメット部材側の第一係合壁に係合して、これにより、エアバッグ用クリップがピラーガーニッシュとフロンドピラー間に取り付けられると共に、ピラーガッニッシュ自体がフロントピラー側に取り付けられることとなる。
【0005】
斯かる状態の下で、自動車の側面衝突によって、エアバッグが展開されると、その膨張圧で、ピラーガーニッシュが押されることにより、ピン部材に対してグロメット部材から抜け出る方向の外力が作用して、第一係止爪と第一係合壁との係合が解除される一方、新たに、第二係止爪と第二係合壁とが係合して、ピラーガーニッシュがフロントピラーから離間して隙間を画成するので、エアバッグがこの隙間を通して車室内に展開されて、乗員の安全が確保されることとなる。
【0006】
しかし、この特許文献1に示される取付構造の下では、エアバッグを展開させる時には、ピン部材のグロメット部材からの軸線方向の引出量しかピラーガーニッシュをフロントピラーから離間させることができないので、エアバッグを確実に展開させるために、隙間を拡大する必要が生じたような場合には、ピン部材の全長を延ばす以外に方法がなかった。この為、これに伴い、ピラーガッニッシュが車室内に不要に張り出して、車室側スペースを制限する恐れがあった。
【0007】
そこで、特許文献2に示す取付構造が提案されている。この取付構造は、ピラーガーニッシュの裏面の上端部付近と下端部付近にストラップを巻き付けるブリッジを一体に成形すると共に、その中間の長手方向にフロントピラー側の取付孔に係着するクリップを間隔をおいて一体に成形する一方、上記ブリッジに巻き付けられた各ストラップの端部にボルト挿通孔を開設して、該各ストラップをそのボルト挿通孔を介してフロントピラー側に固定することにより、ピラーガーニッシュをフロントピラーに所定の弛み量をもって連結する構成となっている。
【0008】
従って、斯かる取付構造の下では、自動車の側面衝突によって、エアバッグが展開されると、その膨張圧で、今度は、クリップがフロントピラーの取付孔から外れて、ピラーガーニッシュは車室内に離間することとなるが、この特許文献2のものは、ブリッジに巻き付けられたストラップを介して、ピラーガーニッシュとフロントピラーが連結されているため、クリップがフロントピラーの取付孔から外れても、ピラーガーニッシュはストラップによってフロントピラー側に確実に連結されているので、ピラーガーニッシュが飛散することが防止できることは言うまでもないが、ピラーガーニッシュがフロントピラーから離間して隙間を画成して、やはり、エアバッグがこの隙間を通して車室内に展開されるので、これにより、乗員の安全が確保されることとなる。
【特許文献1】特開2002−37007号公報
【特許文献2】特許第3497452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に示す取付構造は、ストラップの弛め量を調整することにより、ピラーガーニッシュとフロントピラーとの間に画成される隙間を拡大することは可能となるので、一応、特許文献1の問題点を解消することはできるが、ピラーガーニッシュはストラップを介してフロントピラー側に連結されている関係で、エアバッグの展開後に、ピラーガーニッシュの動きを規制できないので、ピラーガーニッシュが乗員の頭部に当たってしまう恐れがあった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み案出されたもので、エアバッグ展開後のピラーガーニッシュの動きを規制しながら、車室内のスペースを狭くすることなく、ピラーガーニッシュとフロントピラーとの間に画成される隙間を拡大できるエアバッグ用クリップの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これら従来の取付構造が抱える課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、エアバッグを収納した状態で、ピラーガーニッシュを車体パネルに着脱可能に取り付けるエアバッグ用クリップの取付構造であって、エアバッグ用クリップは、上記ピラーガーニッシュ又は車体パネルのいずれか一方に取り付くピン部材と、他方に取り付くグロメット部材とから成り、ピン部材は、ピラーガーニッシュ又は車体パネルに装着される頭部と、グロメット部材の内部にスライド可能に挿入される脚部とを備え、該脚部は、エアバッグの収納状態でピラーガーニッシュを保持する第一係止部と、エアバッグの展開状態でピラーガーニッシュを保持する第二係止部とを有し、グロメット部材は、中央にグロメット部材の内部と連通する開口を形成したフランジ部と、内部にピン部材の脚部を挿入する挿入孔を形成した胴部とを備え、該胴部は、上記ピン部材の第一係止部を係合する第一係合部と、ピン部材の第二係止部を係合する第二係合部とを有し、エアバッグの展開状態では、上記第二係止部が第二係合部に対して揺動可能に係合して、この係合により、ピン部材又はグロメット部材が揺動して、ピラーガーニッシュと車体パネルの間に画成される隙間を拡大することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、ピン部材又はグロメット部材は、エアバッグが収納されている側のピラーガッニッシュの端部と車体パネルの間の隙間を開くように揺動することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1乃至請求項2を前提として、第二係止部は、ピン部材の脚部先端に設けられた一対の突起からなることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3を前提として、第二係止部としての一対の突起は、ピラーガーニッシュのエアバッグが展開される側の縁部に沿って配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4を前提として、ピン部材の頭部の平面形状は、長軸と短軸を有する形状であり、車体パネルは、グロメット部材の胴部を係着する取付孔を有し、該取付孔は、円形又は正方形を呈することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5を前提として、ピン部材の脚部は、その先端に向って先細りとなっていることを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6を前提として、グロメット部材の胴部は、ピン部材の第二係止部を自身の第二係合部に導くスライドガイドを有することを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至請求項7を前提として、ピン部材の第二係止部とグロメット部材の第二係合部の係合面は、少なくとも、どちらか一方が曲面を呈していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
依って、請求項1記載の発明にあっては、車室内のスペースを制限することなく、ピラーガーニッシュと車体パネルの間に画成される隙間を拡大して、エアバッグを確実に展開することが保障できると共に、ピン部材とグロメット部材で支持するので、ピラーガーニッシュの動きを規制して、ピラーガーニッシュが乗員の頭部に衝突することも有効に防止できる。
【0020】
請求項2記載の発明にあっては、ピン部材又はグロメット部材は、エアバッグが収納されている側のピラーガーニッシュの端部と車体パネルの間の隙間を開くように揺動するので、隙間を確実に広げて、エアバッグの完全なる展開を保障できると共に、エアバッグ展開後のピラーガーニッシュの動きもより確実に規制できる。
【0021】
請求項3記載の発明にあっては、第二係止部がピン部材の脚部先端に設けられた一対の突起からなるので、ピラーガーニッシュの揺動方向を簡単に規制できる。
【0022】
請求項4記載の発明にあっては、一対の突起はピラーガーニッシュのエアバッグが展開される側の縁部に沿って配置されているので、より簡単に、ピラーガーニッシュの揺動方向を規制しながら、エアバッグの完全なる展開を保障できる。
【0023】
請求項5記載の発明にあっては、ピン部材の頭部の平面形状が長軸と短軸を有する形状であるので、エアバッグ用クリップをピラーガーニッシュ側に組み付ける場合には、その方向性により、正しい姿勢で確実に組み付けて、揺動方向を適切に規制することができ、且つ、車体パネルの取付孔は円形又は正方形を呈しているので、その無方向性により、エアバッグ用クリップを車体パネル側に組み付ける場合には、簡単に組み付けることが可能となるので、いずれにしても、取付作業が容易となる。
【0024】
請求項6記載の発明にあっては、ピン部材の脚部はその先端に向って先細りとなっているので、ピン部材がグロメット部材から引き出されるにつれ、ピン部材とグロメット部材間のクリアランスが増えることとなり、ピン部材又はグロメット部材の揺動がスライドの途中でも該クリアランスにより可能となって、エアバッグの展開時に、ピラーガッニッシュに無理な力が掛かり難い。
【0025】
請求項7記載の発明にあっては、グロメット部材の胴部はピン部材の第二係止部を自身の第二係合部に導くスライドガイドを有しているので、第二係止部を第二係合部まで確実に導くことが可能となり、且つ、第二係合部までのスライド区間も、ピラーガーニッシュの動きを規制できる。
【0026】
請求項8記載の発明にあっては、ピン部材の第二係止部とグロメット部材の第二係合部の係合面が曲面を呈しているので、ピン部材又はグロメット部材の円滑な揺動が保障できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、エアバッグを収納した状態で、ピラーガーニッシュを車体パネルに着脱可能に取り付けるエアバッグ用クリップの取付構造を前提として、エアバッグ用クリップは、上記ピラーガーニッシュ又は車体パネルのいずれか一方に取り付くピン部材と、他方に取り付くグロメット部材とから成り、ピン部材は、ピラーガーニッシュ又は車体パネルに装着される頭部と、グロメット部材の内部にスライド可能に挿入される脚部とを備え、該脚部は、エアバッグの収納状態でピラーガーニッシュを保持する第一係止部と、エアバッグの展開状態でピラーガーニッシュを保持する第二係止部とを有し、グロメット部材は、中央にグロメット部材の内部と連通する開口を形成したフランジ部と、内部にピン部材の脚部を挿入する挿入孔を形成した胴部とを備え、該胴部は、上記ピン部材の第一係止部を係合する第一係合部と、ピン部材の第二係止部を係合する第二係合部とを有し、エアバッグの展開状態では、上記第二係止部が第二係合部に対して揺動可能に係合して、この係合により、ピン部材又はグロメット部材が揺動して、ピラーガーニッシュと車体パネルの間に画成される隙間を拡大することにより、エアバッグの確実な展開を保障せんとするものである。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る取付構造も、従来と同様に、図1に示す如く、エアバッグBを収納した状態で、エアバッグ用クリップCを介して、ピラーガーニッシュGを車体パネルたるフロントピラーFに着脱可能に取り付けようとするもので、ピラーガーニッシュGに対しては、後述するピン部材1の頭部3を装着する取付座Gaを一体に形成し、フロントピラーFに対しては、そのインナーパネルPに後述するグロメット部材2の胴部15を係着する円形又は正方形を呈する取付孔Paを穿設する構成となっている。尚、図中、W1はフロントウィンドウ、W2はサイドウィンドウである。
【0029】
そして、斯かる取付構造に供されるエアバッグ用クリップCは、図2に示す如く、ピラーガーニッシュG側に取り付くピン部材1と、フロントピラーFのインナーパネルP側に取り付くグロメット部材2とから成り、ピン部材1とグロメット部材2は、いずれも、合成樹脂の一体成形品である。
【0030】
前者のピン部材1は、図3にも示す如く、上記ピラーガーニッシュGの取付座Gaに装着される頭部3と、グロメット部材2の内部にスライド可能に挿入される脚部4とを備え、頭部3は、取付座Gaの孔縁を内外側から挾持する第一フランジ5・第二フランジ6に加えて、後述するグロメット部材2のフランジ部13に当接する第三フランジ7を有し、脚部4は、該第三フランジ7の下面から対向して垂下する一対の側壁4aを有して、当該各側壁4aの外面上位に、エアバッグBの収納状態でピラーガーニッシュGを保持する突起状を呈する一対の第一係止部8を突設し、各側壁4aの外面下位つまり側壁4aの先端部に、エアバッグBの展開状態でピラーガーニッシュGを保持する突起状を呈する一対の第二係止部9を突設すると共に、各側壁4aの先端縁を連結壁10で一体に連結する構成となっている。
【0031】
又、ピン部材1の第一フランジ5の平面形状は、長軸と短軸を有する略楕円形状とされ、この方向性ある形状を利用して、ピラーガーニッシュGの取付座Gaに正しい姿勢で装着できる工夫が施されていると共に、脚部4の各側壁4aは、その途中から先端に向って先細りとなし、且つ、第二係止部9は、後述するグロメット部材2のスライドガイド溝17の上端縁と係合する係合面を曲面となす構成となっている。尚、第二フランジ6と第三フランジ7との間に放射状に配される複数の壁11は、ピラーガーニッシュGの取付座Gaに対する誤組付を防止するためのものである。更に、第二係止部9は、ピラーガーニッシュGのエアバッグBが展開される側の縁部に沿って配置されているので、ピラーガーニッシュGの揺動方向を簡単に規制できる。
【0032】
後者のグロメット部材2は、図4にも示す如く、中央にグロメット部材2の内部と連通する開口12を形成したフランジ部13と、内部にピン部材1の脚部4を挿入する挿入孔14を形成した有底の胴部15とを備え、胴部15の一の対向する周壁に、フロントピラーFのインナーパネルPに穿設された取付孔Paの孔縁をフランジ部13と共働して挾持する一対の係止爪16を設けると共に、同他の対向する周壁に、逆U字状を呈する一対のスライドガイド溝17を開設して、該各スライドガイド溝17内に同一線上に設けられた上記ピン部材1の各第一係止部8と各第二係止部9とをスライド可能に係入する構成となっている。尚、各スライドガイド溝17の上端縁に対しては、上記突起状を呈する第二係止部9の曲面に合致する曲面形状を積極的に付与して、ピン部材1の円滑な揺動を保障している。
【0033】
従って、本実施例にあっては、ピン部材1の脚部4のグロメット部材2の挿入孔14に対する挿入状態に応じて、このスライドガイド溝17の上端縁が、同一線上に設けられた第一係止部8と第二係止部9とが係合する係合部を兼用することとなるが、少なくとも、エアバッグBの収納状態では、第一係止部8が第一係合部に係合し、エアバッグBの展開状態では、第二係止部9が第二係合部に係合すれば良いので、本発明は、これに限定されるものではなく、第一係止部8と第二係止部9を同一線上に設けない場合には、第一係止部8に対する専用の第一係合部と第二係止部9に対する専用の第二係合部とを夫々独立して設けることも実施に応じ任意である。
【0034】
依って、斯かる構成の取付構造の下で、ピラーガーニッシュGをフロントピラーFのインナーパネルP側に着脱可能に取り付ける場合には、まず、上記した第一係止部8・第二係止部9と兼用の係合部となるスライドガイド溝17とを整合させながら、ピン部材1の脚部4をグロメット部材2の胴部15内に形成された挿入孔14に挿入すると、図5に示す如く、第二係止部9はスライドガイド溝17の下位側に導かれるが、ピン部材1の第三フランジ7がグロメット部材2のフランジ部13に当接するので、第一係止部8はスライドガイド溝17の上端縁と係合して、これにより、第三フランジ7と第一係止部8のフランジ部13に対する挾持作用で、ピン部材1とグロメット部材2とが一体化される。この姿勢が、本実施例にあっては、エアバッグ用クリップCの納入状態とピラーガーニッシュGとフロントピラーFへのセット状態となる。
【0035】
そこで、この姿勢を得た後は、第一フランジ5と第二フランジ6を介して、ピン部材1の頭部3をピラーガーニッシュGの取付座Gaに装着する一方、フランジ部13と一対の係止爪16を介して、グロメット部材2の胴部15をフロントピラーFのインナーパネルPに穿設されている取付孔Paに差し込めば、図6・図7に示す如く、エアバッグ用クリップCがピラーガーニッシュGとインナーパネルPの間に取り付けられると共に、ピラーガッニッシュG自体がフロントピラーF側に取り付けられることとなるが、この時には、既述した如く、ピン部材1の第一フランジ5が長軸と短軸を有する略楕円形状となっているので、図8に示す如く、この方向性により、ピン部材1の頭部3をピラーガーニッシュGの取付座Gaに組み付ける場合には、正しい向きで確実に組み付けることが可能となり、又、インナーパネルPの取付孔Paが円形又は正方形となっているので、この無方向性により、グロメット部材2の胴部15を取付孔Paに容易に差し込むことが可能となる。尚、図中、P1はフロントピラーFのアウターパネル、P2は同レインフォースメントである。
【0036】
そして、自動車の側面衝突によって、エアバッグBが展開されると、この展開による膨張圧を受けて、ピラーガーニッシュGが押されることにより、ピン部材1に対してグロメット部材2から抜け出る方向の外力が作用するので、この時、図9に示す如く、第一係止部8の係合部たるスライドガイド溝17の上端縁との係合が解除される一方、今度は、第二係止部9がスライドガイド溝17に案内されて、第二係止部9がスライドガイド溝17の上端縁に係合するので、ピラーガーニッシュGがインナーパネルPから離間して、ピラーガーニッシュGとインナーパネルPとの間に隙間を画成するので、エアバッグBはこの隙間を通って車室内に展開されて、乗員の頭部を保護することとなる。従って、本実施例にあっては、従来と同様に、第一係止部8の係合力は、第二係止部9の係合力よりも小さくなるように設定されている。
【0037】
又、斯かる状態にあっては、図10に示す如く、曲面同士の作用で、第二係止部9とスライドガイド溝17の上端縁とが揺動可能に係合する関係で、ピラーガーニッシュGがエアバッグBの膨張圧を受けると、ピラーガーニッシュGに取り付いているピン部材1がグロメット部材2に対して揺動して、エアバッグBが収納されている側のピラーガーニッシュGの端部とインナーパネルPとの間に画成される隙間Sを自動的に拡大することとなるので、この隙間Sの拡大で、エアバッグは確実に展開することが可能となる。尚、この場合には、第二係止部9のスライドガイド溝17の上端縁に対する係合により、ピラーガーニッシュGがインナーパネルPから飛散する心配がないことは言うまでもないが、ピラーガーニッシュGは、ピン部材1とグロメット部材2の支持により、その動きが規制されることとなるので、乗員の頭部に不用意に当たる心配も決してない。
【0038】
従って、本実施例の取付構造にあっては、車室内のスペースを制限することなく、ピラーガーニッシュGとフロントピラーFのインナーパネルPとの隙間Sを最大限確保することができるので、これにより、従来取付構造の課題を一挙に解決できる訳である。その上、ピン部材1の脚部4は、先端に向って先細りとなっているので、ピン部材1の揺動が、グロメット部材2に対するスライドの途中でも可能となって、エアバッグBの展開時に、ピラーガッニッシュGに無理な力が掛かり難い利点もある。
【0039】
尚、作動したエアバッグBを交換する時や、或いは、エアバッグBの保守・点検を行なう時には、いずれにしても、第二係止部9がスライドガイド溝17の上端縁に係合するまで、ピン部材1をグロメット部材2が引き出して、そのフランジ部13内に臨むグロメット部材2の各係止爪16の先端部16aを内側に摘むと、一対の係止爪16のインナーパネルPの取付孔Paに対する係着状態が即座に解除できるので、後は、ピラーガーニッシュGをインナーパネルPから外して、エアバッグBの交換や保守・点検を行なえば良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るエアバッグ用クリップの取付構造は、エアバッグの展開を許容するピラーガーニッシュと車体パネルの間に画成される隙間を最大限拡大して、エアバッグの確実な展開を保障できるので、これをエアバッグを装備する各種自動車に応用すれば、頗る好都合なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明をフロントピラー用のピラーガーニッシュに適用した状態を示す要部斜視図である。
【図2】本発明の取付構造に供されるエアバッグ用クリップを示す分解斜視図である。
【図3】(A)はピン部材の正面図、(B)は同側面図、(C)は図3AのA−A線断面図、(D)は図3BのB−B線断面図である。
【図4】(A)はグロメット部材の正面図、(B)は同側面図、(C)は図4AのC−C線断面図、(D)は図4BのD−D線断面図である。
【図5】(A)はピン部材とグロメット部材を一体化した状態を示す断面図、(B)は同一体化状態を別の角度で示す断面図である。
【図6】ピラーガーニッシュをフロントピラーのインナーパネルに取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】図6のE−E線断面図である。
【図8】ピン部材の第一フランジとピラーガッニッシュの取付座の関係を示す説明図である。
【図9】自動車の側面衝突の状態を示す断面図である。
【図10】ピン部材がグロメット部材に対して揺動して、ピラーガーニッシュとフロントピラーのインナーパネルとの間に画成される隙間を拡大した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ピン部材
2 グロメット部材
3 頭部
4 脚部
4a 側壁
5 第一フランジ
6 第2フランジ
7 第三フランジ
8 第一係止部
9 第二係止部
10 連結壁
11 壁
12 開口
13 フランジ部
14 挿入孔
15 胴部
16 係止爪
16a 係止爪の先端部
17 スライドガイド溝
C エアバッグ用クリップ
B エアバッグ
G ピラーガーニッシュ
Ga 取付座
F フロントピラー
P フロントピラーのインナーパネル(車体パネル)
Pa 取付孔
P1 フロントピラーのアウターパネル
P2 フロントピラーのレインフォースメント
W1 フロントウィンドウ
W2 サイドウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグを収納した状態で、ピラーガーニッシュを車体パネルに着脱可能に取り付けるエアバッグ用クリップの取付構造であって、エアバッグ用クリップは、上記ピラーガーニッシュ又は車体パネルのいずれか一方に取り付くピン部材と、他方に取り付くグロメット部材とから成り、ピン部材は、ピラーガーニッシュ又は車体パネルに装着される頭部と、グロメット部材の内部にスライド可能に挿入される脚部とを備え、該脚部は、エアバッグの収納状態でピラーガーニッシュを保持する第一係止部と、エアバッグの展開状態でピラーガーニッシュを保持する第二係止部とを有し、グロメット部材は、中央にグロメット部材の内部と連通する開口を形成したフランジ部と、内部にピン部材の脚部を挿入する挿入孔を形成した胴部とを備え、該胴部は、上記ピン部材の第一係止部を係合する第一係合部と、ピン部材の第二係止部を係合する第二係合部とを有し、エアバッグの展開状態では、上記第二係止部が第二係合部に対して揺動可能に係合して、この係合により、ピン部材又はグロメット部材が揺動して、ピラーガーニッシュと車体パネルの間に画成される隙間を拡大することを特徴とするエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項2】
ピン部材又はグロメット部材は、エアバッグが収納されている側のピラーガッニッシュの端部と車体パネルの間の隙間を開くように揺動することを特徴とする請求項1記載のエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項3】
第二係止部は、ピン部材の脚部先端に設けられた一対の突起からなることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項4】
第二係止部としての一対の突起は、ピラーガーニッシュのエアバッグが展開される側の縁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項3記載のエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項5】
ピン部材の頭部の平面形状は、長軸と短軸を有する形状であり、車体パネルは、グロメット部材の胴部を係着する取付孔を有し、該取付孔は、円形又は正方形を呈することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項6】
ピン部材の脚部は、その先端に向って先細りとなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項7】
グロメット部材の胴部は、ピン部材の第二係止部を自身の第二係合部に導くスライドガイドを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエアバッグ用クリップの取付構造。
【請求項8】
ピン部材の第二係止部とグロメット部材の第二係合部の係合面は、少なくとも、どちらか一方が曲面を呈していることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエアバッグ用クリップの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−159013(P2010−159013A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3528(P2009−3528)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】