説明

エキスパートルート生成サーバ及びナビゲーション装置

【課題】エキスパートルートデータを求め、有効利用できる技術を提供する。
【解決手段】エキスパートルート生成サーバ(センタサーバ)Bは、マイクロプロセッサやDRAMなどのメモリから構成される処理装置10と、サーバセンタ装置からの指示や情報の入力を受け付けるための入力部11と、DVDやHDDなどの記憶媒体へ回収データや解析データを読み書きするためのドライブ装置(ここでは、DVDドライブを例にしている)12、ドライブ装置12に装着されているDVD媒体、HDD媒体13と、図1に示すナビゲーション装置からインターネットなどを介してデータを受信し、解析データを送信(配信)するための通信部14と、USBメモリなどの外部記憶媒体16と、各種データを画面に表示するための表示装置(ディスプレイ)18と、を有している。処理装置10内には、CPU10aと各種処理プログラム等を格納するメモリ10bとが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパートルート生成サーバ及びナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション装置の汎用性が高まり、多くの車両にナビゲーション装置が搭載されるようになってきている。一般的なナビゲーション装置は、利用者が設定した目的地までの推奨経路(以下、「ルート」と称する。)を計算し画面上に表示する経路探索機能を有している。経路探索機能における経路計算アルゴリズムは、地図データベースに収容されている道路データ内の静的な道路リンクコストと、道路種別毎にそれぞれ設定した重みコストを基本として用い、さらにVICSやプローブデータなどのリアルタイム交通情報データや過去の統計交通情報データに収容された実際の交通状況データを反映した動的な道路リンクコストを付加して、ダイクストラ法などによるネットワーク計算アルゴリズムによって最適とされる推奨ルートを計算している。それにより、利用者の望む最適ルートにどれだけ近づくかを示すルート品質も向上し続けている。
【0003】
しかしながらナビゲーション装置が出力したルートは、利用者の求めている最適ルートとは乖離したルートが未だ出力されることがあり、問題となっている。その解決手段・方法として、例えば、下記特許文献1および特許文献2に記載の文献が知られている。いずれの文献も、ネットワーク計算時に考慮する道路種別ごとに設定した重みコストを、学習機能によりその利用者に合わせて自動的にチューニングしていく技術である。
【0004】
これらの特許文献に記載の技術を用いると、ナビゲーション装置が計算した初回ルートを利用者が逸脱した事象を契機に、逸脱前後の道路種別を比較するなどして、利用者が頻繁に使う道路種別に対する重みコストを下げて通りやすくすることにより、その利用者のニーズに合ったルートをエキスパートルートデータとして出力しやすくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−23174号公報
【特許文献2】特開2008−175566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載のいわゆる経路探索に関する学習効果を利用すれば、その利用者に対する有用性は上がっていく。しかしながら、上記学習技術は、その利用者が利用するナビゲーション装置の内部で閉じて進化していくものにすぎない。
【0007】
本発明は、複数の利用者が共有可能なエキスパートルートデータを求め、有効利用できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両に搭載するカーナビゲーション装置に関して、自車の走行軌跡時保存すると共に、自車が初回ルートから逸脱しその後復帰した場合にルート逸脱/復帰データを保存するナビゲーション装置、および、単数もしくは複数のナビゲーション装置から、走行軌跡データ、ルート逸脱/復帰データを回収し、ルート逸脱地点からルート復帰地点までの走行軌跡データを抽出し解析した上で、ナビゲーション装置が最初に算出した推奨経路よりも現実の道路事情に適合した最適ルートをエキスパートルートデータとして求めるシステムである。本発明は、それぞれの利用者が利用しているナビゲーション装置の内部にある走行軌跡データ情報やルート逸脱/復帰データを、外部のエキスパートルートデータ生成システムにて回収し解析することで、複数の利用者が共有できる有用なエキスパートルートデータを生成し、ナビゲーション装置の利用者に配信して経路探索時に活用する、というサイクルを回すことで経路品質を利用者全体で継続的に向上させることができる。
【0009】
本発明の一観点によれば、新たな目的地が設定されてから最初に出力された推奨経路(以下、「初回ルート」と称する。)から逸脱しその後に前記初回ルートに復帰した際に、それぞれの逸脱位置及び逸脱日時と、復帰位置及び復帰日時を含むルート逸脱/復帰データと、走行軌跡データと、を、少なくとも1の車両の少なくとも1のナビゲーション装置からを回収する回収手段と、取得した前記走行軌跡データの中から、ルート逸脱地点からルート復帰地点までの区間を走行した車両のデータを検索して抽出する検索抽出手段と、抽出した走行データに基づいて、ルート逸脱地点から復帰地点までの最適ルートを解析して求める解析手段と、解析した結果をエキスパートルートデータとして生成し、前記ナビゲーション装置に配信する配信手段と、を備えることを特徴とするエキスパートルートデータ生成サーバが提供される。前記解析手段は、多数の前記ルート逸脱/復帰データについて、重複しているデータセットをグルーピングした上で、重複件数をカウントし、重複件数の多いデータセットについて、エキスパートルートの開始・終了地点であると解析することが好ましい。また、前記解析手段は、前記日時と、重複件数とが、一時的に変化するデータセットをは、一時的な通行止めなどに起因する可能性が高いため、前記エキスパートルートから除外しうるルートとするようにすると良い。
【0010】
また、本発明は、デジタル形式の道路データを格納した地図データベースと、画面上に前記の地図データベースを用いて任意の地図を表示する手段と、センサ部から取得されたデータと前記の地図データベースを用いて自車位置と自車方向を算出し、地図上に自車位置を表示する手段と、新たな目的地が設定されてから最初に算出された推奨経路を初回ルートとして保存する手段と、自車が初回ルートから逸脱したかどうかを判定する手段と、自車が初回ルートに対してルート逸脱した状態から自車がルートに復帰したかどうかを判定する手段と、自車が初回ルートから逸脱しその後初回ルートに復帰した際のそれぞれの地点や日時などのルート逸脱/復帰データを取得し保存する手段と、自車の走行軌跡データを取得し保存する手段と、それぞれの逸脱位置及び逸脱日時と、復帰位置及び復帰日時を含むルート逸脱/復帰データと、走行軌跡データと、送信する手段とを、を備えることを特徴とするナビゲーション装置である。上記エキスパートルートデータ生成サーバから、前記エキスパートルートデータを受信する手段を有する。このような構成により、ルート逸脱地点から復帰地点までの最適ルートを解析して、複数の利用者が共有できる有用な経路パターンを生成し、利用者に提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の適用により、ナビゲーション装置の利用者それぞれが生成した、旅行時間短縮が可能なエキスパートルートデータを、その利用者のみならず他の利用者にも有効利用できる。それにより、目的地までのよりスムーズな移動が期待できることのみならず、インフラとして稼動させることで、DRGS(動的経路誘導システム)の実現となり、渋滞の減少などによりCO排出量の削減などが実現できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態によるナビゲーション装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】図2(a)は、地図データ、およびルートデータ、交通情報データ、走行軌跡データ道路データの構成を示す図であり、図2(b)は、日時と度数との関係を示す例示的な図である。
【図3】ルート逸脱/復帰データの一構成例を示す図である。
【図4】本実施の形態によるエキスパートルート生成サーバを含むシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】エキスパートルートデータを作成する処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】本実施の形態によるエキスパートルートデータの一構成例を示す図である。
【図7】本実施の形態によるエキスパートルートの一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態によるエキスパートルート生成サーバ及びナビゲーション装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態によるナビゲーション装置の一構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態によるナビゲーション装置Aは、マイクロプロセッサ(CPU)1aやDRAM、SRAMなどのメモリ1bなどを有して構成される制御部1と、利用者からの指示や情報の入力を受け付けるための入力部2と、車速センサやジャイロ、GPS受信機などから構成されるセンサ3と、地図データが格納されたCD−ROMやDVD−ROMやHDDなどの記憶媒体よりデータを読み出すためのドライブ装置4と、ドライブ装置4に装着されているCD−ROMやDVD−ROMやHDD媒体5と、ナビゲーション装置内部に保存されたデータを外部に送信したりエキスパートルートデータ生成システムから提供される最適ルートデータを受信するためのインタフェースであって、携帯電話などの通信部6と、USBメモリなどの外部記憶媒体7と、地図や自車位置、経路情報を画面に表示するための表示装置(ディスプレイ)8と、VICSやプローブデータなどの交通情報データを受信する受信部9と、を有している。
【0015】
次に、ドライブ装置4に装着されているCD−ROMやDVD−ROM媒体に格納された地図データについて説明する。
【0016】
地図データは、一般的に、緯線・経線に平行に一定間隔で区切られたメッシュと呼ばれる格子状の範囲毎に格納されている。各メッシュは、ユニークなメッシュ番号を持っており、メッシュ内の地図データは、交差点を境にリンクに分断される。つまり、リンクは、交差点同士を接続する。リンクは道路の形状を表すために複数のノードで形成される。また、リンクはメッシュ内でユニークなリンク番号と、リンク長、旅行時間などの静的なリンクコストと、を持ち、これらのデータは、経路を探索する際に用いられる。探索された経路は、ルートデータとして出力される。
【0017】
VICSやプローブデータなどの交通情報データは、通信部6を介して取得される。上記リンクに対応する形でリンク長や旅行時間などの動的なリンクコストを持ち、これも経路探索を実行する際に用いられる。
【0018】
ここで、ナビゲーション装置による推奨経路の探索方法について簡単に説明する。ナビゲーション装置内には、地図データの一部として経路計算データが記録されている。この経路計算データは、経路探索時に各経路を評価するために用いられる評価基準を表しており、リンクコスト、交差点コストおよび重み付け係数を少なくとも含むものである。リンクコストは、道路に対する車両の通過所要時間を表しており、道路リンクごとに設定されている。交差点コストは、交差点に対する車両の通過所要時間を表しており、交差点における車両の進行方向に応じて設定されている。なお、交差点コストは地図上の各交差点に対して共通の値が設定される。重み付け係数は、道路種別に対するユーザの選択性向を反映した重み付けを行うための係数であり、道路種別に応じて設定されている。ユーザの入力操作により目的地が設定されると、ナビゲーション装置は、経路計算データに含まれる上記のような各評価基準に基づいて、複数の経路についてそれぞれの経路評価値を算出する。このとき、各経路に含まれる全道路リンクについて、そのリンクコストに道路種別に応じた重み付け係数をそれぞれ乗算した値を加算し、さらに、各経路に含まれる全交差点について進行方向に応じた交差点コストを加えることにより、経路ごとの経路評価値が算出される。この経路評価値が最も小さい経路が、推奨経路に設定される。
【0019】
本実施の形態によるナビゲーション装置では、走行軌跡データを常に取得しておき、これをメモリ1b内に保存していく。また、ルートから逸脱した後に、初回ルートに復帰した際は、初回ルートから逸脱した逸脱データとその後に復帰した復帰データとを、ルート逸脱/復帰データとして取得し対にしてこれを保存する。この際、ルート逸脱およびルート復帰した際の座標およびその日時とその直前・直後の道路リンクのメッシュ番号およびリンク番号を記録する。そして、それらのデータを、後述するエキスパートルートデータ生成システムへ定期的にアップロードする。
【0020】
図2(a)は、地図データおよびルートデータ、交通情報データ、走行軌跡データの一般的な構成例を示す図である。図2(a)に示すように、これらのデータD1は、#0から#mまでのメッシュ毎にまとめられており、これらのメッシュ毎の各データは、例えば、リンク#0から#nまでのリンクデータにより構成されている。各リンクデータは、例えばリンクデータ#0において、リンク長と、リンクコスト(所要時間)と、ノード数とからなり、ノード数は、ノード#0座標からノード#p座標までのノード情報から構成されている。
【0021】
図3は、本実施の形態による技術の1つの特徴であるルート逸脱/復帰データの一例を示す図である。ルート逸脱/復帰データD2は、ルート逸脱/復帰データ#0からルート逸脱/復帰データ#mまでにより構成されており、これらのデータは、前述のように、ルートの逸脱/復帰のイベント毎に取得され、記憶されていくデータである。ルート逸脱/復帰データは、逸脱情報と、復帰情報とが対になって構成されており、さらに、図2(a)に示す走行軌跡データが付加されている。逸脱情報は、逸脱した地点の座標を示す逸脱地点座標と、逸脱日時と、進入リンクのメッシュ#、リンク#と、退出リンクのメッシュ#、リンク#と、を有している。復帰情報は、復帰した地点の座標を示す復帰地点座標と、復帰日時と、進入リンクのメッシュ#、リンク#と、退出リンクのメッシュ#、リンク#と、を有している。走行を重ねていくほど、このルート逸脱/復帰データ数が増加していくことになる。
【0022】
図4は、本実施の形態に係るエキスパートルートデータ生成システムの一構成例を示す機能ブロック図である。図4に示すように、エキスパートルートデータ生成システムは、図1のナビゲーション装置Aと、図4のエキスパートルート生成サーバ(センタサーバ)Bと、からなる。エキスパートルート生成サーバ(センタサーバ)Bは、マイクロプロセッサやDRAMなどのメモリから構成される処理装置10と、サーバセンタ装置からの指示や情報の入力を受け付けるための入力部11と、DVDやHDDなどの記憶媒体へ回収データや解析データを読み書きするためのドライブ装置(ここでは、DVDドライブを例にしている)12、ドライブ装置12に装着されているDVD媒体、HDD媒体13と、図1に示すナビゲーション装置からインターネットなどを介してデータを受信し、解析データを送信(配信)するための通信部14と、USBメモリなどの外部記憶媒体16と、各種データを画面に表示するための表示装置(ディスプレイ)18と、を有している。処理装置10内には、CPU10aと各種処理プログラム等を格納するメモリ10bとが設けられている。
【0023】
図5は、エキスパートルートデータ生成システムにおいて、エキスパートルートデータを作成する処理の流れを示すフローチャート図である。エキスパートルートデータ生成システムは、図1の示すナビゲーション装置から、随時又は定期的に送られる上記の走行軌跡データおよびルート逸脱/復帰データを回収していき、記録型DVD又はHDDなど12に保管する。ここで、図1のデータ回収対象は、多数の車のナビゲーション装置であることが好ましい。多数の車、特にタクシーやトラックなどの業務用の車のデータは、運転者がルートに精通しており、迂回や復帰に関する正しい判断が行われた可能性が高い。車の運転手によってランク付けし、熟練者の車からのデータの重みを高くすることが好ましい。多数の車のデータを取得することで、統計的処理が自動的に行なわれ、エキスパートルートデータの精度が向上するという利点がある。
【0024】
そして、図5に示す手順により、定期的に統計的解析処理を実行し、エキスパートルートデータを生成する。まず、処理の開始すると、ステップ100において、記録型DVD又はHDD12などに保管されている走行軌跡データD1およびルート逸脱/復帰データD2(図3参照)を読み込む。次に、ステップ101において、ルート逸脱/復帰データパターンについて、重複しているデータセットをグルーピングした上で、重複件数をカウントする。重複件数の多いデータセットについては、数多くの利用者(すなわち、ナビゲーション装置をそれぞれ有した自動車)が、初回ルートに違和感を感じ、同じ走行軌跡によって回避した可能性が高いことを意味する。すなわち、重複件数の多いデータセットは、例えば「開かずの踏み切り」や「信号待ちの長い右折交差点」のような常態化した『通行難所』を、その地域の交通特性を熟知したタクシー運転手等が避けるために選んだ『エキスパートルート』の開始・終了地点である可能性が高いと考えられる。
【0025】
尚、図2(b)に示すように、日時(特に時間)と、度数(重複件数)とが、P1のように一時的に急激にあがり、次の日又は次の週はその度数が上がらない場合には、例えば、一時的な通行止めなどの可能性が高いものと推測される。このようなケースは、『エキスパートルート』から除外しうるルートと言える。このように、時間帯や曜日、1月のなかの特定の日というような規則性が有るか、或いは、一時的(突発的)な度数の上がりであるかにより、エキスパートデータとなりうるか否か(前者は規則性があるのでなりうるデータである)を推定することができる。
【0026】
さらに、ステップ102では、重複件数の多いルート逸脱/復帰データパターンについて、その区間を実際に走行した走行軌跡データのうち、逸脱せず初回ルートを走行したもの(以下、「走行軌跡データ群A」と称する。)と、逸脱して初回ルート以外を走行したもの(以下、「走行軌跡データ群B」と称する。)を検索し取得する。そして、ステップ103では、逸脱して初回ルート以外を走行した走行軌跡データ群Bの中で重複のものをグルーピングした上で重複件数をカウントする。重複件数の多いものは、エキスパートルートの候補となり、その走行軌跡データ自体がより適した道順(経路)を示すデータとなる可能性が高いことを意味する。最後に、ステップ104において、平均リンクコスト(旅行時間)について、エキスパートルート候補のコストが走行軌跡データ群Aのコストよりも少ない場合に『エキスパートルート』と認定して出力する。
【0027】
その際、重複データの逸脱/復帰日時を解析して、特定の日時に収束している傾向がある場合は、適用日時および適用時間帯を設定する(図2(a)及び上記記載も参照)。不揮発メモリには、推奨用コストテーブル、有料道路優先用コストテーブル、距離優先用コストテーブルなどの各種リンクコストテーブルが記憶される。上述のリンクコストテーブルは、各リンクに設定されたリンクコストに重み付けを行うための距離補正係数(付加倍率)を一覧形式にしたものであり、それぞれが異なる傾向を有している。
【0028】
より具体的には、各リンクコストテーブルは、各道路種別について、その道路種別を通りやすくするための距離補正係数「通りやすい」、その道路種別を通りにくくするための距離補正係数「通りにくい」、および通常の距離補正係数「普通」の各距離補正係数から構成されている。このうち、推奨用コストテーブルは、高速道路、有料道路または一般道路のうち高速道路および有料道路を優先し、且つ道路種別間の距離補正係数の差が小さく設定されている。また、有料道路優先用コストテーブルは、高速道路、有料道路または一般道路のうち高速道路および有料道路を優先し、且つ高速道路および有料道路と一般道路との距離補正係数の差が大きく設定されている。また、距離優先用コストテーブルは、高速道路、有料道路および一般道路の距離補正係数が同一に設定されている。
【0029】
図6は、エキスパートルートデータの一構成例を示す図である。エキスパートルートデータD3は、定期的に生成・更新されるものである。図1に示すナビゲーション装置側で、定期的に更新されたエキスパートルートデータD3を、適宜ダウンロードし、ナビゲーション装置側の経路探索機能中において活用することができる。
【0030】
エキスパートルートデータD3は、エキスパートルートデータ#1から#mまでから構成されており、各エキスパートルートデータ(例えば#1)は、適用曜日と、適用時間帯と、平均リンクコスト(所要時間)と、ルートデータ(図2(a))と、を有している。適用曜日と適用時間帯とにより、エキスパートルートデータが特定されるのは、上述のように、突発的な特殊なケースと規則的に生じるケースとを区別し、規則的に生じるケースは、適用曜日と適用時間帯とに依存しているからである。具体的な処理内容としては、従来どおり、初回ルートを計算したのち、逸脱地点および復帰地点が共に初回ルート上に存在し、かつ、現在日時が適用日時および適用時間帯に該当するエキスパートルートデータを検索する。その逸脱地点から復帰地点までの区間部分のリンクコスト(所要時間)について、初回ルートとエキスパートルートとの間で比較を行い、エキスパートデータの方がリンクコスト(所要時間)が小さければ、その区間部分の提示ルートをエキスパートデータへ差し替えることにより旅行時間の短縮が可能となる。
【0031】
図7は、本実施の形態によるエキスパートルートの一例を示す図である。図7のように、初回ルートA−B−C−D(R1)について、A’−B(2分)−B’(3分)のルートをエキスパートルート1A’−B’(4分)に差し替える。次いで、初回ルートA−B−C−Dについて、C’−C(3分)−C’’(3分)のルートをエキスパートルート2C’−C’’(4分)に差し替えることで所要時間コストを下げることができる。そこで、右図のように、ルートデータを、A−A’−B’−C’−C’’−D(R2)に変更することができる。
【0032】
このエキスパートルートが、多数のナビゲーション装置における新しい初回提示ルートとなり、新たに、走行軌跡データを常に取得しておき、これをメモリ1b内に保存していく。また、ルートから逸脱した後に、初回ルートに復帰した際は、初回ルートから逸脱した逸脱データとその後に復帰した復帰データとを、ルート逸脱/復帰データとして取得し対にしてこれを保存する処理が開始される。以上に説明したように、本実施の形態によるエキスパートルートナビゲーションシステムによれば、多数のナビゲーション装置の利用者それぞれが生成した、旅行時間短縮が可能なエキスパートルートデータを、その利用者のみならず他の利用者にも有効利用できるシステムを構築することができる。これにより、目的地までのよりスムーズな移動が可能となる。
【0033】
さらに、インフラとして稼動させることで、DRGS(動的経路誘導システム)の実現となり、渋滞の減少などによりCO排出量の削減なども実現できる。
【0034】
尚、本実施の形態による装置及び方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。カーナビゲーション装置が多数あるシステムについて説明したが、1つの場合であっても良い。また、実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、カーナビゲーション装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
A ナビゲーション装置
1 制御部
2 入力部
3 センサ部
4 ドライブ装置
5 CD−ROMまたはDVD−ROMまたはHDD媒体
6 通信部
7 外部記憶媒体
8 表示部(ディスプレイ)
9 交通情報受信部
B エキスパートルート生成サーバ(センタサーバ)
10 処理装置
11 入力部
12 ドライブ装置
13 CD−ROMまたはDVD−ROMまたはHDD媒体
14 通信部
15 外部記憶媒体
16 表示部(ディスプレイ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション装置において新たな目的地が設定されてから最初に算出された推奨経路(以下、「初回ルート」と称する。)から逸脱しその後に前記初回ルートに復帰した際に、それぞれの逸脱位置及び逸脱日時と、復帰位置及び復帰日時を含むルート逸脱/復帰データと、走行軌跡データと、を、少なくとも1の車両の少なくとも1のナビゲーション装置からを回収する回収手段と、
取得した前記走行軌跡データの中から、ルート逸脱地点からルート復帰地点までの区間を走行した車両のデータを検索して抽出する検索抽出手段と、
抽出した走行データに基づいて、ルート逸脱地点から復帰地点までの最適ルートを解析して求める解析手段と、
解析した結果をエキスパートルートデータとして生成し、前記ナビゲーション装置に配信する配信手段と、
を備えることを特徴とするエキスパートルートデータ生成サーバ。
【請求項2】
前記解析手段は、
多数の前記ルート逸脱/復帰データについて、重複しているデータセットをグルーピングした上で、重複件数をカウントし、重複件数の多いデータセットについて、エキスパートルートの開始・終了地点であると解析することを特徴とする請求項1に記載のエキスパートルートデータ生成サーバ。
【請求項3】
前記解析手段は、
前記日時と、重複件数とが、一時的に変化するデータセットを、前記エキスパートルートから除外しうるルートとすることを特徴とする請求項1又は2に記載のエキスパートルートデータ生成サーバ。
【請求項4】
平均リンクコスト(旅行時間)について、エキスパートルート候補のコストが走行軌跡データ群のコストよりも少ない場合に前記エキスパートルートと決定することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のエキスパートルートデータ生成サーバ。
【請求項5】
前記解析は、日時、交通状況などの条件別に行われることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のエキスパートルートデータ生成サーバ。
【請求項6】
デジタル形式の道路データを格納した地図データベースと、
画面上に前記の地図データベースを用いて任意の地図を表示する手段と、
センサ部から取得されたデータと前記の地図データベースを用いて自車位置と自車方向を算出し、地図上に自車位置を表示する手段と、
新たな目的地が設定されてから最初に算出された推奨経路を初回ルートとして保存する手段と、
自車が前記初回ルートから逸脱したかどうかを判定する手段と、
自車が前記初回ルートに対してルート逸脱した状態から自車がルートに復帰したかどうかを判定する手段と、
自車が前記初回ルートから逸脱しその後前記初回ルートに復帰した際のそれぞれの地点や日時などのルート逸脱/復帰データを取得し保存する手段と、
自車の走行軌跡データを取得し保存する手段と、
それぞれの逸脱位置及び逸脱日時と、復帰位置及び復帰日時を含むルート逸脱/復帰データと、走行軌跡データと、送信する手段とを、を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1から5までのエキスパートルートデータ生成サーバから、前記エキスパートルートデータを受信する手段を有することを特徴とする請求項6に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−237178(P2010−237178A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88176(P2009−88176)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】