説明

エピタキシャル成長装置

【課題】リフレクタからの熱線を調節してシリコン単結晶基板を面内均一に加熱し、膜厚が均一なエピタキシャル層を成長させることができる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】サセプタの上下に各々配置され、放射状に円形に並べられた複数の棒状の単体ヒータを有するヒータと、上のヒータの上側及び前記下のヒータの下側に各々配置された上下のドーナツ状リフレクタとを備え、上下のドーナツ状リフレクタの少なくとも一つは、ヒータの熱放射を収束させる収束反射板部と熱放射を分散させる分散反射板部とを有し、収束反射板部は棒状の単体ヒータに沿って形成された円筒凹面を有し、かつ該円筒凹面はドーナツ状リフレクタの径方向で異なった曲率半径の断面の部分を有するものであるエピタキシャル成長装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶基板の主表面にエピタキシャル層を成長させるエピタキシャル成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長法により、シリコン単結晶基板の表面にエピタキシャル層(シリコン単結晶薄膜)を形成したシリコンエピタキシャルウェーハは、バイポーラICやMOS−IC等の電子デバイスに広く使用されている。
近年、電子デバイスの微細化によって、薄膜化やウェーハの大直径化が進む中、形成されるエピタキシャル層厚の面内均一化が重要な課題の一つとなっている。例えば直径200mmのシリコンエピタキシャルウェーハの製造においては、複数枚の基板をバッチ処理する方法に代えて、膜厚分布等の制御が比較的容易な枚葉式エピタキシャル成長装置が主流になりつつある。これは、反応室内において、1枚のシリコン単結晶基板をサセプタ上で水平に保持し、原料ガスを反応室の一端から他端へ水平かつ一方向に供給しながら、エピタキシャル層を成長させるものである。
【0003】
エピタキシャル層の成長速度は温度の影響を強く受けるので、エピタキシャル層厚の均一性を向上させるためには、シリコン単結晶基板の面内の温度分布の制御が重要である。
エピタキシャル成長装置の加熱方式には様々なものがあり、シリコン単結晶基板を1枚ずつエピタキシャル成長させる枚葉式エピタキシャル装置の場合は、シリコン単結晶基板の上下からハロゲンランプヒータで加熱する方式が多く使われる。ハロゲンランプに片口金型ランプを用いる場合は、ランプを放射状に1列の円形に配列することになり、このランプの背後にはヒータからの熱線を反射して基板に照射するためのドーナツ状のリフレクタを配置する(特許文献1、2参照)。また他に、サセプタの支持軸の保護や温度計測のための光路確保のために、サセプタに載置された基板の上下で、ドーナツ状のリフレクタの中心を通る円筒形状のリフレクタも配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−147350号公報
【特許文献2】特開平4−255214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒータの背後に配置されるドーナツ状のリフレクタは、基板の中心付近を強く照射するインサイド用ランプの背後には円筒凹面形状の反射板部が、基板の周辺付近を強く照射するアウトサイド用ランプの背後には平面形状の反射板部が設けられる。
インサイド用ランプの円筒凹面形状の反射板部では、ランプの光が収束されるため、基板に帯状の照射面が形成され、円形に複数配置されたインサイド用ランプの帯状照射面が軸対称で加算されて、基板の中心付近の照射強度が周辺よりも強くなってしまう。一方、平面形状の反射板部においては、ランプの光が分散されるため、分散された光が、基板上に設けた円筒形状のリフレクタで反射され、基板周辺付近の照射強度が増大する。ヒータのインサイド/アウトサイド用ランプの照射強度を調整することにより、基板面内の温度分布の均一化を図るが、上記したように円筒凹面形状の反射板部から反射した熱線により、基板中心付近で帯状照射面の重なりが多くなるため、当該基板中心付近の照度が急激に増大しやすく、インサイド/アウトサイド用ランプの照度を調整しても、急激に変動した照度分布が残ってしまう問題があった。
これにより、基板の面内の温度分布が不均一になり、エピタキシャル層厚が面内で不均一になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、リフレクタからの熱線を調節して、シリコン単結晶基板を面内均一に加熱し、膜厚が均一なエピタキシャル層を成長させることができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、サセプタに水平に載置されたシリコン単結晶基板の主表面にエピタキシャル層を成長させるエピタキシャル成長装置であって、前記サセプタの上下に各々配置され、放射状に円形に並べられた複数の棒状の単体ヒータを有するヒータと、前記上のヒータの上側及び前記下のヒータの下側に各々配置された上下のドーナツ状リフレクタとを備え、前記上下のドーナツ状リフレクタの少なくとも一つは、前記ヒータの熱放射を収束させる収束反射板部と熱放射を分散させる分散反射板部とを有し、前記収束反射板部は前記棒状の単体ヒータに沿って形成された円筒凹面を有し、かつ該円筒凹面は前記ドーナツ状リフレクタの径方向で異なった曲率半径の断面の部分を有するものであることを特徴とするエピタキシャル成長装置を提供する。
【0008】
このようなリフレクタの収束反射板部の円筒凹面であれば、基板中心領域への照射強度を効率的に調整することができ、基板面内で均一に加熱することができる。また、円筒凹面で反射するため、基板中心領域への熱線の反射を効果的に行うことができる。従って、基板を面内均一に加熱することにより、面内均一な膜厚のエピタキシャル層を成長させることができ、高品質なエピタキシャルウェーハを製造できる装置となる。
【0009】
このとき、前記収束反射板部の円筒凹面は、前記リフレクタの外周端から内周端に向かって、断面の曲率半径が段階的に大きくなっているものであることが好ましい。
このように曲率半径が段階的に大きくなっているものであれば、本発明の円筒凹面の形成が容易で、かつ基板への熱線の照射を効果的に調節できる装置となる。
【0010】
このとき、前記収束反射板部の円筒凹面は、前記リフレクタの外周端の断面の曲率半径が70mm以下で、前記内周端の断面の曲率半径が100mm以上であることが好ましい。
このような円筒凹面であれば、基板の面内の温度差を効果的に低減でき、基板の面内で均一な厚さのエピタキシャル層を成長させることができる装置となる。
【0011】
このとき、前記収束反射板部の円筒凹面は、前記リフレクタの内周端の断面の曲率半径が無限大であることが好ましい。
このような内周端の断面が直線の円筒凹面は形成が容易で、基板の中央領域への照射強度を効果的に調節することができる装置となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、ヒータにより基板面内均一に加熱して膜厚均一性が高いエピタキシャル層を成長させることができ、高品質のエピタキシャルウェーハを製造することができる装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエピタキシャル成長装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のエピタキシャル成長装置のヒータとドーナツ状リフレクタの概略図である。
【図3】本発明のエピタキシャル成長装置のドーナツ状リフレクタを部分的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に本発明のエピタキシャル成長装置の概略図を示す。
【0015】
図1の枚葉式エピタキシャル成長装置10は、反応室11内にシリコン単結晶基板Wを水平に配置するためのサセプタ12が設けられ、サセプタ12は支持軸13により支持され、この支持軸13はサセプタ12を回転させるための機構(不図示)を有する。
このサセプタ12の上下には、シリコン単結晶基板Wを加熱するための単体ヒータが円形に並べられたヒータ15a、15bが各々配置されている。また、この上下のヒータ15a、15bの中央には、円筒状のリフレクタ14a、14bが各々配置されている。この円筒状のリフレクタ14a、14bにより、支持軸13の加熱防止や、温度計測のための光路を確保することができる。
【0016】
図2はサセプタ12側から見たヒータ15a、15bと、その背後に設けられたドーナツ状リフレクタ16a、16bの概略図である。ヒータ15a、15bは、放射状に円形に並べられた複数の棒状の単体ヒータ17a、17bを有する。この単体ヒータ17a、17bとしては、例えばハロゲンランプを用いることができ、主に基板中央部に熱線を照射するインサイド用ランプである単体ヒータ17aと、主に基板の周辺部に熱線を照射するアウトサイド用ランプである単体ヒータ17bとを並べてヒータ15a、15bを形成する。これらインサイド/アウトサイド用の単体ヒータ17a、17bの照射強度を各々調節して基板を面内均一に加熱する。
そして、上のヒータ15aの上側及び下のヒータ15bの下側に、上下のドーナツ状リフレクタ16a、16bが各々配置される。この上下のドーナツ状リフレクタ16a、16bの少なくとも一つは、ヒータ15a、15bの熱放射を収束させる収束反射板部18aと熱放射を分散させる分散反射板部18bとを有する。これら収束反射板部18a、分散反射板部18bは、交互に形成されてもよいし、回転対称又は線対称に形成されてもよい。
【0017】
この収束反射板部18aは、棒状の単体ヒータ17aに沿って形成された、図3(A)、(B)に示すような円筒凹面19、19’を有し、かつ該円筒凹面19、19’はドーナツ状リフレクタ16a、16bの径方向で異なった曲率半径の断面の部分を有するものである。
このような円筒凹面19、19’は、その形状により、単体ヒータ17aからの熱放射を効果的に収束させて反射することができる。また、単に円筒凹面の曲率半径を大きくしても、逆に基板中央部の加熱が不十分になり、基板の温度が面内で不均一になってしまうが、本発明のように、ドーナツ状リフレクタ16a、16bの径方向で異なった曲率半径の断面の部分を有するものであれば、反射された熱線による帯状の照射面の基板中心付近での重なりを抑制しつつ、適切な加熱が可能である。従って、基板中心付近が過剰に加熱されることはなく、基板の面内を均一に加熱することができる。
【0018】
また、図3(A)、(B)に示すように、収束反射板部18a、18’aの円筒凹面19、19’は、ドーナツ状リフレクタ16a、16’aの外周端から内周端に向かって、断面の曲率半径が段階的に大きくなっているものであることが好ましい。
このように曲率半径を段階的に大きくすることで、収束反射板部18a、18’aの形成が容易で、また、基板中心付近への熱線の照射を効果的に調節できる。
【0019】
この収束反射板部18aの円筒凹面19は、ドーナツ状リフレクタ16a、16bの外周端の断面の曲率半径が70mm以下で、内周端の断面の曲率半径が100mm以上であることが好ましい。
このような円筒凹面19であれば、ヒータ15a、15bからの熱放射を効果的に収束して反射し、かつ、基板中心付近への過剰な照射を抑制することができる。
【0020】
また、図3(B)に示すように、収束反射板部18’aの円筒凹面19’は、ドーナツ状リフレクタ16’a、16’bの内周端の断面の曲率半径が無限大であることが好ましい。
このような曲率半径が無限大の場合には、断面が直線であり、円筒凹面19’の内周部に平面が形成される。これにより、基板中心付近に帯状照射面の重なりが形成されにくく、過剰な照射を十分に抑制することができ、また、円筒凹面19’の形成も容易である。
【0021】
上記した円筒凹面19を有する収束反射板部18aは、上下のドーナツ状リフレクタ16a、16b両方に形成されてもよいし、どちらか一方のみに形成されてもよい。一方のみに形成する場合には、他方のドーナツ状リフレクタは例えば平面の反射板部を形成したものを用いることができる。
【0022】
上記した本発明のエピタキシャル成長装置10を用いて、例えば、サセプタ12上にシリコン単結晶基板Wを載置し、ヒータ15a、15bにより基板Wを加熱し、トリクロロシラン等の原料ガスを反応室11内に導入しながらエピタキシャル層を成長させることができる。
本発明の装置であれば、シリコン単結晶基板を面内で均一に加熱することができるため、面内均一な膜厚のエピタキシャル層を成長させることができ、高品質のエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す直径300mmウェーハ用の枚葉式エピタキシャル成長装置を用いて、直径300mmのシリコンウェーハの中心温度を1100℃に加熱したときのウェーハ面内温度分布を測定した。測定は、特公平07−058730に記載されている方法で行った。これは、イオン注入によって表面に不純物注入層が形成された拡散ウェーハを用意して加熱し、熱拡散後のシート抵抗を測定することによりウェーハ温度を求める方法である。
上のドーナツ状リフレクタのインサイド用ランプの収束反射板部には、2種類の曲率半径の断面を組み合わせた円筒凹面を有する反射板部を使用し、アウトサイド用ランプの反射板部は平面とした。また、下のドーナツ状リフレクタには、ドーナツ状リフレクタの内周端から外周端まで一様な曲率半径の断面を有する円筒凹面の反射板部と、平面の反射板部を形成したものを用いた。
【0024】
上のドーナツ状リフレクタのインサイド用ランプの反射板部において、円筒凹面の外周部の断面の曲率半径を40mmとし、円筒凹面の内周部の断面の曲率半径を70、100、200mm(図3(A))、及び無限大(平面)(図3(B))とした。
測定した結果を表1に示す。表1から分かるように、面内最大温度差はそれぞれ10.4、9.1、7.4、5.3℃となり、円筒凹面の内周部の断面の曲率半径が100mm以上で10℃以下となり、円筒凹面の内周部が平面のときに最も小さい温度差となった。
【0025】
(実施例2)
実施例1と同様に加熱を行って、その際の基板の面内最大温度差を測定した。ただし、上のドーナツ状リフレクタのインサイド用ランプの反射板部の円筒凹面の内周部を平面とし、外周部の断面の曲率半径を55、70、100mmとした。
測定結果を表1に示す。基板の面内最大温度差はそれぞれ8.7、9.8、11.5℃となり、円筒凹面の外周部の断面の曲率半径が70mm以下で10℃以下となった。
【0026】
(実施例3)
実施例1と同様に加熱を行って、その際の基板の面内最大温度差を測定した。ただし、上のドーナツ状リフレクタのインサイド用ランプの反射板部の円筒凹面の内周部の断面の曲率半径を40mmとし、外周部を平面とした。
測定結果を表1に示す。実施例3では、基板の面内最大温度差は8.6℃で、10℃以下になった。
【0027】
(実施例4)
実施例1と同様に加熱を行って、その際の基板の面内最大温度差を測定した。ただし、上のドーナツ状リフレクタについて、3種類の曲率半径の断面を組み合わせた円筒凹面を有するインサイド用ランプの反射板部を使用し、反射板部の円筒凹面の内周部を平面、中央部を断面の曲率半径40mmとし、外周部を平面とした。
測定結果を表1に示す。実施例4では、基板の面内最大温度差は7.2℃となった。
【0028】
(比較例)
実施例1と同様に加熱を行って、その際の基板の面内最大温度差を測定した。ただし、上のドーナツ状リフレクタのインサイド用ランプの反射板部の円筒凹面は断面の曲率半径が一様に40mmのものを用いた。
測定結果を表1に示す。基板の面内最大温度差は12.7℃で、不均一な加熱となっていた。
【0029】
【表1】

【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0031】
10…エピタキシャル成長装置、 11…反応室、 12…サセプタ、
13…支持軸、 14a、14b…円筒状のリフレクタ、 15a、15b…ヒータ、
16a、16b、16’a、16’b…ドーナツ状リフレクタ、
17a、17b…単体ヒータ、 18a、18’a…収束反射板部、
18b…分散反射板部、 19、19’…円筒凹面、 W…シリコン単結晶基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サセプタに水平に載置されたシリコン単結晶基板の主表面にエピタキシャル層を成長させるエピタキシャル成長装置であって、前記サセプタの上下に各々配置され、放射状に円形に並べられた複数の棒状の単体ヒータを有するヒータと、前記上のヒータの上側及び前記下のヒータの下側に各々配置された上下のドーナツ状リフレクタとを備え、前記上下のドーナツ状リフレクタの少なくとも一つは、前記ヒータの熱放射を収束させる収束反射板部と熱放射を分散させる分散反射板部とを有し、前記収束反射板部は前記棒状の単体ヒータに沿って形成された円筒凹面を有し、かつ該円筒凹面は前記ドーナツ状リフレクタの径方向で異なった曲率半径の断面の部分を有するものであることを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項2】
前記分散反射板部の円筒凹面は、前記リフレクタの外周端から内周端に向かって、断面の曲率半径が段階的に大きくなっているものであることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記分散反射板部の円筒凹面は、前記リフレクタの外周端の断面の曲率半径が70mm以下で、前記内周端の断面の曲率半径が100mm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項4】
前記分散反射板部の円筒凹面は、前記リフレクタの内周端の断面の曲率半径が無限大であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエピタキシャル成長装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−58627(P2013−58627A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196339(P2011−196339)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】