説明

エポキシ樹脂組成物、プリプレグ及び硬化物

【課題】強化繊維への含浸性に優れ、更に、硬化物の耐熱性、機械物性にも優れた繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】フェノールノボラック樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂と硬化剤とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物において、前記フェノールノボラック樹脂が該2核体のフェノールノボラック樹脂と4核体のフェノールノボラック樹脂とを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたクロマトグラムの面積比率でそれぞれ4〜20%、9〜25%含有し、且つ、4核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(4)と2核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(2)との比〔(4)/(2)〕が、0.4〜2.5となる範囲で含有するフェノールノボラック型樹脂(A)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用途や一般産業用途等の繊維強化複合材料を始めとする複合材料や半導体封止材や積層板(プリント配線板)等の電気・電子部品絶縁材料や接着剤、塗料等に有用なエポキシ樹脂組成物、プリプレグおよびその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とエポキシ樹脂組成物とからなる繊維強化複合材料は、軽量であり、かつ優れた力学特性を有するために、ゴルフシャフト、釣り竿、及びテニスラケットなどのスポーツ用途、航空宇宙用途、及び一般産業用途などに広く用いられている。前記繊維強化複合材料の製造には、例えば、強化繊維に未硬化樹脂を含浸させたシート状中間基材であるプリプレグを用いる方法が普及している。この方法では、プリプレグを複数枚積層した後、これを加熱することによって、成形体である繊維強化複合材料とする。
【0003】
その際、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等の混合物が用いられている。
【0004】
しかしながら、前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は耐熱性に劣り、機械物性が低いという問題を有している。また、多官能型エポキシ樹脂は架橋間密度が小さいためガラス転移温度が高く、耐熱性、機械物性は高くなるが、特に多官能型エポキシ樹脂として従来汎用されているノボラック型エポキシ樹脂類を用いると強化繊維への含侵性が良好ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−169829号公報(第2−4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、強化繊維への含浸性に優れ、更に、硬化物の耐熱性、機械物性にも優れた繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、エポキシ樹脂として2核体のフェノールノボラック樹脂と4核体のフェノールノボラック樹脂とを特定の範囲で含有するフェノールノボラック樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂を用いることにより強化繊維への含浸性に優れる組成物となること、得られる硬化物の耐熱性、機械物性も優れること等を見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、フェノールノボラック樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂と硬化剤とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物において、前記フェノールノボラック樹脂が該2核体のフェノールノボラック樹脂と4核体のフェノールノボラック樹脂とを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたクロマトグラムの面積比率でそれぞれ4〜20%、9〜25%含有し、且つ、4核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(4)と2核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(2)との比〔(4)/(2)〕が、0.4〜2.5となる範囲で含有するフェノールノボラック型樹脂(A)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグを提供するものである。
【0010】
また、本発明は前記エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供するものである。
【0011】
更に、本発明は前記プリプレグを硬化してなる硬化物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエポキシ樹脂組成物によれば、エポキシ樹脂組成物に比べ、粘度が低く、強化繊維への含侵性に優れるエポキシ樹脂組成物が得られる。また、得られる硬化物は機械物性に優れ、炭素強化複合材料などの用途に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いるエポキシ樹脂は、2核体のフェノールノボラック樹脂と4核体のフェノールノボラック樹脂とを、GPC法で測定されたクロマトグラムの面積比率でそれぞれ4〜20%、9〜25%含有し、且つ、4核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(4)と2核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(2)との比〔(4)/(2)〕が、0.4〜2.5となる範囲で含有するフェノールノボラック型樹脂(A)とエピハロヒドリンとを反応させて得られる。このようなフェノールノボラック型樹脂(A)を用いることで、強化繊維への含侵性が高く、硬化物の耐熱性、機械物性にも優れるエポキシ樹脂組成物が得られる。
【0014】
このような効果が発現される理由は定かではないが、2核体と4核体を上記の数値範囲に限定することで、フェノールノボラック型樹脂(A)の諸物性のバランスが取れていると考えられている。
【0015】
本発明で用いるフェノールノボラック樹脂(A)の中でも、GPC法で測定されたクロマトグラムの面積比率でそれぞれ5〜20%、10〜20%含有し、且つ、4核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(4)と2核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(2)との比〔(4)/(2)〕が、0.5〜2.0となる範囲で含有するフェノールノボラック型樹脂がより好ましい。
【0016】
フェノールノボラック型樹脂(A)は前記の通り2核体のフェノールノボラック樹脂と4核体のフェノールノボラック樹脂とを、それぞれの比率で含有していれば良く、その製造方法には限定はないが、例えば、下記に示す工程を含む方法で効率的に製造することができる。
【0017】
酸触媒の存在下、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させ、フェノールとビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(1)を得る第一工程、
混合物(1)に対して薄膜蒸留を行った後、更にスチーム蒸留を行い、該混合物から未反応のフェノールを除去しビスフノェールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(2)を得る第二工程、および
薄膜伝面熱媒温度が200〜250℃、蒸留機出口圧力が0.1〜3mmHgに保たれた薄膜蒸留器へ混合物(2)を該薄膜の伝面1cmあたり8〜20g/hrの供給量となるように供給し蒸留することにより、混合物(2)から留出物としてビスフェノールFを得、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂とを得る第三工程
を含有する方法。
【0018】
第一工程〜第三工程を含む前記製法を以下に詳細に説明する。第一工程は、酸触媒の存在下、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させ、フェノールとビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(1)を得る工程である。第一工程では、化学量論的に過剰のフェノールとホルムアルデヒドとを反応機に装入する。具体的には、例えば、攪拌機、温度調節装置、還流冷却器等を備えた反応機に、フェノール、ホルムアルデヒド及び酸触媒を装入し、攪拌下、所定温度において、所定時間反応させる。
【0019】
フェノールとしては、フェノールの他に例えばクレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどのアルキルフェノール類や、その(o−、m−、p−)位置置換体、(n−、sec−、tert−などの)置換基構造異性体を使用することも出来る。中でも、ホリマリンとの反応性、蒸留回収の容易さから、フェノールが好ましい。フェノールは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0020】
ホルムアルデヒドとしては、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン及び環状ホルマール等が挙げられる。中でもホルマリンが好ましく、42重量%までの濃度のホルマリン水溶液を使用することができ、更に40〜42重量%の濃度のホルマリン水溶液がより好ましい。ホルムアルデヒドは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0021】
第一工程にてフェノール(P)とホルムアルデヒド(F)との反応モル比〔(P)/(F)は通常3以上、好ましくは3〜75であり、さらに好ましくは5〜40である。
【0022】
第一工程にて使用する酸触媒は、陽イオン交換樹脂のような固体酸触媒の固定床であっても良いし、塩酸、硫酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸及び無機酸であっても良い。反応温度、反応時間は用いる触媒の種類、量または反応モル比〔(P)/(F)〕等により異なるが、反応温度は通常50〜110℃である。反応時間は通常0.5〜10時間である。第一工程で混合物(1)を得た後、必要に応じて触媒の分解と生成水の除去を行うことができる。触媒の分解と生成水の除去は、例えば、反応終了後に得られる混合物(1)を170〜200℃で1〜5時間維持することにより行うことができ、必要に応じて該温度を保持したまた200mmHg以下の減圧を行っても良い。
【0023】
第一工程で得られる混合物(1)は、前記〔(P)/(F)〕を30とした場合、GPC分析による含有量は、例えば、ビスフェノールFを含むフェノール樹脂混合物30〜50面積%、未反応のフェノール50〜70面積%となる。
【0024】
第二工程では、第一工程で得られた混合物(1)に対して薄膜蒸留を行った後にスチーム蒸留を行う。薄膜蒸留装置には該蒸発器からの蒸発ガスの一部を凝縮させた凝縮液を該蒸発器に戻すことができる分縮器を備えていても良い。また、薄膜蒸留装置は複数基繋いで用いても良い。複数基の蒸発器を用いる場合には各蒸発器は、分縮器を備えたものであっても良いし、分縮器を備えないものであっても良いが、少なくとも最終段に用いる蒸発器は分縮器を備えたものであることが好ましい。
【0025】
第二工程は、第一工程終了後すぐに行っても良いし、第一工程終了後、混合物を例えば、別の槽に2〜10バッチ程度貯めた後、行っても良い。
【0026】
薄膜蒸留を行う際の薄膜伝面熱媒温度は、150〜200℃がフェノールの揮発性とフェノール樹脂が分解しにくいこと好ましく、170〜190℃がより好ましい。また、薄膜蒸留器は蒸留機出口圧力は10〜50mmHg保たれることがフェノールの揮発性が良好となることから好ましく、20〜40mmHgに保たれた薄膜蒸留器がより好ましい。更に、薄膜蒸留器へ混合物(1)を供給する際には、薄膜蒸留器の薄膜の伝面1mあたり100〜400kg/hrとなるように供給するのが効率的にフェノールを揮発(除去)できることから好ましく、200〜320kg/hrがより好ましい。
【0027】
本発明において、ゲルパーエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記の条件に従った。
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8120GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN HXL−H
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0028】
本発明において、混合物(1)を薄膜蒸留することにより混合物(2)中の未反応フェノールの含有率(面積%)は通常3〜8面積%程度となる。
【0029】
混合物(1)に対して薄膜蒸留を行い、缶出物を得た後、缶出物に対してスチーム蒸留を行う。スチーム蒸留を行う事により、薄膜蒸留で除去しきれなかった未反応のフェノールを缶出物(ノボラック型フェノール樹脂)から除去できる。スチーム蒸留は減圧、加圧、常圧のいづれの圧力においても行うことができ、系内の圧力によって混合物の温度をコントロールすることができる。
【0030】
スチーム蒸留は、前記缶出物の温度が150〜200℃になる様、系内の圧力又はスチーム吹き込み量を調整するのが好ましく、缶出物の温度が160〜190℃になる様に系内の圧力又はスチーム吹き込み量を調整するのがより好ましい。スチーム蒸留に要する時間は通常1hr以上であり、好ましくは2〜20hrである。また、スチームの供給量は20〜100kg/hrが好ましい。
【0031】
尚、第二工程において、スチーム蒸留は薄膜蒸留を行った後すぐに行っても良いし、薄膜蒸留終了後、混合物を例えば、別の槽に2〜10バッチ程度貯めた後、行っても良い。第二工程により回収されたフェノールは、再びビスフェノールF、ノボラック型フェノール樹脂の原料として使用できる。このようにして、第二工程で得られた混合物(2)中のビスフェノールF(2核体)の含有量は、例えば、触媒としてシュウ酸を使用して、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)との反応モル比〔(P)/(F)〕=5で実施した場合は通常56〜61面積%程度、反応モル比〔(P)/(F)〕=10で実施した場合は通常73〜77面積%程度、そして、反応モル比〔(P)/(F)〕=30で実施した場合は通常88〜92面積%程度となる。
【0032】
第三工程において、混合物(2)を薄膜蒸留装置へ供給し、蒸留することにより、混合物(2)から留出物としてビスフェノールFを得、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂とを得る。この薄膜蒸留装置による薄膜蒸留を行う際の条件としては、薄膜伝面熱媒温度が200〜250℃、蒸留機出口圧力が0.1〜3mmHgに保たれた薄膜蒸留器を用い、該薄膜蒸留器に混合物(2)を該薄膜の伝面1cmあたり8〜20g/hrとなるように供給する。このような条件により混合物(2)を薄膜蒸留装置へ供給し、混合物(2)からビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂とを分離することにより純度の高いビスフェノールFと低粘度でハンドリングが良好で硬化物の耐熱性に優れるノボラック型フェノール樹脂が得られる。
【0033】
本発明者らは、本発明で用いるノボラックフェノール樹脂は、特に第三工程がポイントであると考えている。第三工程において、薄膜蒸留を行う際の薄膜伝面熱媒温度、薄膜出口圧力及び薄膜の伝面1cmあたりの供給量を上記の通りにそれぞれ設定する事により、2核体と4核体との含有量を別途あえて調整せずとも2核体と4核体との含有量のバランスに優れる、GPC分析チャートパターンが正規分布に近いノボラック型フェノール樹脂が容易に得られると考えられている。
【0034】
第三工程において薄膜伝面熱媒温度は200〜250℃が蒸留効率が良好で、且つ、ノボラック型フェノール樹脂の分解を回避できることからより好ましく、205〜240℃がより好ましい。薄膜出口圧力は0.1〜3mmHgが蒸留効率が良好で、且つ、品質の良好な留出物も得られることから好ましく、0.2〜2mmHgがより好ましい。また、第三工程において、薄膜蒸留器に混合物(2)を該薄膜の伝面1cmあたり8〜20g/hrとなるように供給するのが、品質の良好な留出物が得られることからから好ましく、10〜18g/hrがより好ましい。
【0035】
第三工程で用いる薄膜蒸留器には該蒸留器からの蒸発ガスの一部を凝縮させた凝縮液を該蒸発器に戻すことができる分縮器を備えでいても良い。薄膜蒸留器は複数基用いても良く、複数基の薄膜蒸留器を用いる場合には各蒸留器は、分縮器を備えたものであっても良いし、分縮器を備えないものであっても良いが、少なくとも最終段に用いる蒸留器は分縮器を備えたものであることが好ましい。
【0036】
第三工程は、具体的には、例えば、薄膜蒸留装置に混合物(2)を連続的に供給し、該蒸留器から発生する蒸発ガスの一部を分縮器を用いて凝縮させ、その凝縮液を該蒸留器に戻しながら蒸留し、該蒸発ガスの他の部分を全縮器を用いて凝縮させ、留出物としてビスフェノールFを製造し、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂を抜き出す。
【0037】
ビスフェノールFの純度は97重量%以上であり、好ましくは98%以上となる。また、ノボラック型フェノール樹脂は、GPC分析チャートの2核体面積%が4〜20面積%、好ましくは5〜20面積%となる。ノボラック型フェノール樹脂は、GPC分析チャートの4核体面積%が9〜25面積%、好ましくは10〜20面積%となる。そして、ノボラック型フェノール樹脂の4核体と2核体の面積比〔(4)/(2)〕は0.4〜2.5、好ましくは0.5〜2.0となる。
【0038】
前記製法において全縮器を用いる場合、好ましく用いられる全縮器としては、多管式円筒形熱交換器、コイル式熱交換器等が挙げられる。また、分縮器を用いる場合、好ましく用いられる分縮器としては、多管式円筒形熱交換器、コイル式熱交換器等が挙げられる。また、蒸発器から全縮器に至る蒸発ラインを外部から冷却するようなタイプのものでもよい。
【0039】
第三工程終了後、蒸留缶から缶出物としてノボラック型フェノール樹脂を抜き出し、大気中で放冷するか、または強制的に冷却する等して40℃以下程度に冷却し、好ましくは粉砕して粉砕状のノボラック型フェノール樹脂とすることができる。粉砕する方法には特に制限がなく、例えば、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機が好ましく用いられる。
【0040】
また、留出物として得たビスフェノールFは保温することにより液体のまま製品としてもよいし、別途設置された造粒工程に送り造粒し、粒状の製品としてもよい。また、冷却固化後に粉砕により塊状にしてもよい。
【0041】
ノボラック型フェノール樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は通常400〜470である。数平均分子量(Mn)は通常340〜450である。そして、分子量分布を示すパラメーターである(Mw)/(Mn)は、1.04〜1.20程度となり、分子量分布が狭いものが得られる。
【0042】
また、前記ノボラック型フェノール樹脂は必要に応じてそれ自身を原料とみなし、前出ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトンケトン等のケトン類と公知のフェノールノボラック樹脂合成法に従い反応させ、分子量を高めた樹脂を得ても良い。
【0043】
更に、前記二核体純度の高いビスフェノールFはフェノールノボラック樹脂と任意に混ぜて使用することも出来る。
【0044】
前記フェノールノボラック型樹脂(A)とエピハロヒドリンとを反応させて本発明で用いるエポキシ樹脂を得る。
【0045】
前記エピハロヒドリンは特に限定されものではなく、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。なかでも入手の容易性からエピクロルヒドリンが好ましい。また、これらエピハロヒドリンの使用量は特に限定されるものではないが、通常、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基の1モルに対して過剰量使用して、得られる樹脂を低分子量化することが、ドレープ性が高くなること、或いは、エポキシ樹脂の官能基密度が低下せず、そのため硬化剤による架橋後の耐熱性が極端に低下しにくいことから好ましい。エピハロヒドリンの過剰の程度は、目的とする分子量によって適宜選択されるが、低粘度化を図る点からフェノール性水酸基1モルに対して3〜10倍モル量の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
なお、工業生産を行う際は、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みエピハロヒドリンの全てを新しいものを使用するが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分及で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用することが好ましい。この際のエポキシ化反応の反応条件は、特に制限されるものではなく、例えば、塩基の存在下に50〜120℃で反応を行えばよく,メタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類,ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒,あるいは1,4−ジオキサン等の環状エーテルや鎖状エーテル類等の溶媒を併用することができる。
【0047】
前記フェノールノボラック樹脂(A)とエピハロヒドリンとを反応する際には、通常塩基性化合物を用いるが、その際に用いる塩基は特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが挙げられる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂は単独、或いは他のエポキシ樹脂をと併用してもよい。併用する場合、前記エポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は50重量%以上が好ましく、特に60重量%以上が好ましい。前記他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、ビフェノール類、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂 、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ樹脂であればこれらに限定されるものではない。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
本発明に用いる硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などがあげられるがこれに限定されるものではない。硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、0.6〜1.2当量が特に好ましい。
【0050】
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために適当な硬化助剤を組合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)を硬化助剤として組合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に第三アミンを硬化助剤として組合わせる例が,またこれ以外でも、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物などが挙げられる。これら硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ含有される。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物に適用できる強化繊維としては特に限定されず、繊維強化複合材料の強化繊維として用いられるいずれの繊維も用いることができる。これらの強化繊維の例としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、および表面処理した有機繊維等があり、これらは単独で用いてもまた2種類以上をハイブリッド構造の繊維の形で用いてもよい。特に、好ましいのは炭素繊維であり、炭素繊維を強化繊維として用いた場合、軽量で高剛性の成形物が得られる。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物においてはその性能を損なわない範囲で、靱性付与剤、フィラー、着色剤等を配合することができる。本発明の樹脂組成物に所望に応じて含有することのできる靱性付与樹脂としては、反応性エラストマー、ハイカーCTBN変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ニトリルゴム添加エポキシ樹脂、架橋アクリルゴム微粒子添加エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、熱可塑性エラストマー添加エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
本発明の樹脂組成物に所望に応じて含有することのできるフィラーとしては、マイカ、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイト、微粉状シリカ、ウォラストナイト、チタン酸カルシウム、セピオライト、塩基性硫酸マグネシウム、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム、ビーズ、バルーン、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン粉末、亜鉛末、アルミニウム粉、有機微粒子すなわち、アクリル微粒子、エポキシ樹脂微粒子、ポリアミド微粒子、ポリウレタン微粒子等が挙げられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物に所望に応じて配合することのできる着色剤としては、有機顔料ではアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料等、無機顔料では二酸化チタン、黄鉛、コバルトバイオレット、ベンガラ、カーボンブラック等が挙げられる。
【0055】
本発明のプリプレグの形態も特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては一方向材プリプレグ、織物プリプレグ、組紐状織物プリプレグ、不織布プリプレグ等が挙げられる。
【0056】
本発明において、プリプレグは、樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノールなどの有機溶媒に溶解して低粘度化させ、強化繊維に含浸させる方法(いわゆるウエット法)や、樹脂組成物を加熱により低粘度化させ、強化繊維に含浸させる方法(いわゆるホットメルト法又はドライ法)などの方法により製造することができる。
【0057】
ウェット法は、強化繊維を樹脂組成物の溶液に浸漬した後引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させてプリプレグを得る方法である。また、ホットメルト法は、まず、樹脂組成物を離型紙などの上にコーティングして樹脂のフィルムを作成し、次いで、強化繊維の両側あるいは片側からそのフィルムを重ね、加熱加圧することにより樹脂を含浸させてプリプレグを製造する方法、あるいは強化繊維束を引き出しながら、樹脂組成物をコーティングして作成したフィルムを使用せず、直接、樹脂組成物を含浸させプリプレグを製造する方法である。
【0058】
ウェット法で作製したプリプレグには、溶媒が残りやすく、得られる繊維強化複合材料において、ボイドの原因となり易い。そのため、本発明においては、プリプレグの製造方法としては、ホットメルト法が好ましく採用できる。
【0059】
このようにして得られるプリプレグを裁断して積層した後、かかる積層物に圧力を付与しながら、樹脂を加熱硬化させることにより、繊維強化複合材料が得られる。熱及び圧力を付与する方法には特に限定されず、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、シートワインディング法、及び内圧成形法などが例示できる。
【実施例】
【0060】
次に、実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明する。例中「部」とあるのは、特にことわりがない限り重量部を表すものとする。実施例、比較例においては、ノボラック樹脂の粘度は[1]に示す方法で,エポキシ樹脂のエポキシ当量、粘度の測定は下記[2]、[3]に示す方法で測定し、エポキシ樹脂組成物、プリプレグの作製、樹脂硬化物の物性の測定は[4]〜[8]次に示す方法で行った。なお、曲げ弾性率や引張伸度など各種材料の機械物性は、全て23℃、相対湿度50%の環境下で測定した。
【0061】
[1]ノボラック型フェノール樹脂(A)の粘度:東亜工業株式会社製 溶融回転粘度計CV−1Sを用い、測定温度150℃
【0062】
[2]エポキシ当量:JIS K−7236に準じた方法で測定した。
[3]粘度;NV=60%ブチルカルビトール溶液の25℃におけるガードナー粘度
[4]エポキシ樹脂組成物の調製:エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、および熱可塑性樹脂を、ニーダーを用いて混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0063】
[5]プリプレグの作製:エポキシ樹脂組成物をリバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを作成した。次に、シート状に一方向に整列させた炭素繊維トレカT800HB−12K−40B(登録商標、東レ(株)製)に樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧して樹脂組成物を含浸させ、炭素繊維目付125g/m、樹脂重量分率24%の一方向プリプレグを作製した。
【0064】
[6]樹脂硬化物の曲げ弾性率:樹脂組成物を80℃に加熱してモールドに注入し、130℃の熱風乾燥機中で2時間加熱硬化して厚さ2mmの樹脂硬化板を作製した。次に樹脂硬化板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、試験速度2.5mm、支点間距離32mmで3点曲げ試験を行い、JIS K7203に従い曲げ弾性率を求めた。
【0065】
[9]樹脂硬化物の引張伸度:[8]と同様にして作製した樹脂硬化板より、JIS K7113に従い、小型1(1/2)号形試験片を切り出し、引張伸度を求めた。
【0066】
また、得られるノボラック型フェノール樹脂の分子量分布、各核体の面積比は下記GPCによる分析により決定した。
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8120GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN HXL−H
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSK−GEL G2000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4重量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0067】
合成例1〔フェノールノボラック型樹脂(A)の合成〕
攪拌機、熱電対、環流冷却機、窒素導入管を有したステンレス製フラスコ1を窒素雰囲気に置換後、フラスコ1にフェノール1880g(20モル)、41.5%ホルマリン145g(2モル)及び蒸留水にて20%に希釈した蓚酸4.2gを仕込み、攪拌しながら液温を100℃まで1時間かけて昇温した。液温が100℃に到達した後、更に100℃にて2時間反応を行い、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させ、フェノールと水とビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(1)を得た。混合物(1)の液温をその後170℃に昇温し、150mmHgの減圧下30分保持し、留分(反応水とフェノール)を槽1に受けた。その後混合物(1)は窒素導入管、ジャケット付きの槽2へ移送した。
【0068】
槽2へ混合物(1)を移送後、空となったステンレス製フラスコ1を用いて、前記と同様にフェノールとホルムアルデヒドとの反応を計5回行い、留分はすべて槽1へ、混合物(1)はすべて槽2へ移送した。槽2では窒素雰囲気下、混合物(1)の液温を170℃に維持した。
【0069】
次に、5バッチ分の混合物(1)を槽2から薄膜蒸留器へ連続的に供給し、フェノール留分を分離した。薄膜蒸留器による蒸留の条件は薄膜伝面の温度:190℃、薄膜伝面の圧力:25mmHg、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1cmあたり27g/hrである。留分は全て槽1へ、残分は全て窒素導入管、ジャケット付きの槽3へ移送した。
【0070】
次に槽3中の液を、攪拌機、熱電対、環流冷却機、スチーム吹き込み装置、減圧装置を有したステンレス製フラスコ2へ移送しスチーム蒸留を行い、未反応のフェノールを除去したビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(2)を得た。スチーム蒸留の条件は、液温:170℃、フラスコ内の圧力:50mmHg、スチーム供給量:1時間あたり10Kgのスチームを3時間である。スチーム供給停止後170℃、50mmHgの条件で2時間保持した後、混合物(2)を窒素導入管、ジャケット付きの槽4へ移送した。
【0071】
混合物(2)を槽4から薄膜蒸留器へ連続的に供給し、蒸留により留出物としてビスフェノールFを1432g、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂452gをそれぞれ得た。薄膜蒸留器による蒸留の条件は薄膜伝面熱媒温度:215℃、蒸留器出口の圧力:0.7mmHg、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1cmあたり15g/hrである。
【0072】
GPCによる分析の結果、得られたビスフェノールFの純度は98面積%であった。ノボラック型フェノール樹脂中の2核体の割合は13面積%、3核体の割合は62面積%、4核体の割合は18面積%であり、(4核体)/(2核体)面積比=1.4であった。ノボラック型フェノール樹脂の粘度は0.3dPa・s、軟化点は58℃であった。このノボラック型フェノール樹脂を(PN1)とする。
【0073】
合成例2(同上)
攪拌機、熱電対、環流冷却機、窒素導入管を有したステンレス製フラスコ1を窒素雰囲気に置換後、フラスコ1にフェノール1880g(20モル)、41.5%ホルマリン48g(0.67モル)及び蒸留水にて20%に希釈した蓚酸4.2gを仕込み、攪拌しながら液温を100℃まで1時間かけて昇温した。液温が100℃に到達した後、更に100℃にて2時間反応を行い、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させ、フェノールと水とビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(1)を得た。混合物(1)の液温をその後170℃に昇温し、150mmHgの減圧下30分保持し、留分(反応水とフェノール)を槽1に受けた。その後混合物(1)は窒素導入管、ジャケット付きの槽2へ移送した。
【0074】
槽2へ混合物(1)を移送後、空となったステンレス製フラスコ1を用いて、前記と同様にフェノールとホルムアルデヒドとの反応を計5回行い、留分はすべて槽1へ、混合物(1)はすべて槽2へ移送した。槽2では窒素雰囲気下、混合物(1)の液温を170℃に維持した。
【0075】
次に、5バッチ分の混合物(1)を槽2から薄膜蒸留器へ連続的に供給し、フェノール留分を分離した。薄膜蒸留器による蒸留の条件は薄膜伝面の温度:190℃、薄膜伝面の圧力:25mmHg、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1cmあたり27g/hrである。留分は全て槽1へ、残分は全て窒素導入管、ジャケット付きの槽3へ移送した。
【0076】
次に槽3中の液を、攪拌機、熱電対、環流冷却機、スチーム吹き込み装置、減圧装置を有したステンレス製フラスコ2へ移送しスチーム蒸留を行い、未反応のフェノールを除去したビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(2)を得た。スチーム蒸留の条件は、液温:170℃、フラスコ内の圧力:50mmHg、スチーム供給量:1時間あたり10Kgのスチームを3時間である。スチーム供給停止後170℃、50mmHgの条件で2時間保持した後、混合物(2)を窒素導入管、ジャケット付きの槽4へ移送した。
【0077】
混合物(2)を槽4から薄膜蒸留器へ連続的に供給し、蒸留により留出物としてビスフェノールFを586g、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂73gをそれぞれ得た。薄膜蒸留器による蒸留の条件は薄膜伝面熱媒温度:225℃、蒸留器出口の圧力:0.3mmHg、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1cmあたり15g/hrである。
【0078】
GPCによる分析の結果、得られたビスフェノールFの純度は99面積%であった。ノボラック型フェノール樹脂中の2核体の割合は6面積%、3核体の割合は83面積%、4核体の割合は11面積%であり、(4核体)/(2核体)面積比=1.8であった。ノボラック型フェノール樹脂の粘度は0.1dPa・s、軟化点は56℃であった。このノボラック型フェノール樹脂を(PN2)とする。
【0079】
合成例3(同上)
第三工程の薄膜蒸留工程における薄膜伝面熱媒温度を210℃に変更する以外は、実施例2と同様に処理し、留出物としてビスフェノールFを575g、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂82gをそれぞれ得た。
【0080】
GPCによる分析の結果、得られたビスフェノールFの純度は99面積%であった。ノボラック型フェノール樹脂中の2核体の割合は12面積%、3核体の割合は77面積%、4核体の割合は10面積%であり、(4核体)/(2核体)面積比=0.8であった。ノボラック型フェノール樹脂の粘度は0.1dPa・s、軟化点は56℃であった。このノボラック型フェノール樹脂を(PN3)とする。
【0081】
合成例4(同上)
攪拌機、熱電対、環流冷却機、窒素導入管を有したステンレス製フラスコ1を窒素雰囲気に置換後、フラスコ1にフェノール1692g(18モル)、41.5%ホルマリン260g(3.6モル)及び蒸留水にて20%に希釈した蓚酸4.2gを仕込み、攪拌しながら液温を100℃まで1時間かけて昇温した。液温が100℃に到達した後、更に100℃にて2時間反応を行い、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させ、フェノールと水とビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(1)を得た。混合物(1)の液温をその後170℃に昇温し、150mmHgの減圧下30分保持し、留分(反応水とフェノール)を槽1に受けた。その後混合物(1)は窒素導入管、ジャケット付きの槽2へ移送した。
【0082】
槽2へ混合物(1)を移送後、空となったステンレス製フラスコ1を用いて、前記と同様にフェノールとホルムアルデヒドとの反応を計5回行い、留分はすべて槽1へ、混合物(1)はすべて槽2へ移送した。槽2では窒素雰囲気下、混合物(1)の液温を170℃に維持した。
【0083】
次に、5バッチ分の混合物(1)を槽2から薄膜蒸留器へ連続的に供給し、フェノール留分を分離した。薄膜蒸留器による蒸留の条件は薄膜伝面の温度:190℃、薄膜伝面の圧力:25mmHg、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1cmあたり27g/hrである。留分は全て槽1へ、残分は全て窒素導入管、ジャケット付きの槽3へ移送した。
【0084】
次に槽3中の液を、攪拌機、熱電対、環流冷却機、スチーム吹き込み装置、減圧装置を有したステンレス製フラスコ2へ移送しスチーム蒸留を行い、未反応のフェノールを除去したビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(2)を得た。スチーム蒸留の条件は、液温:170℃、フラスコ内の圧力:50mmHg、スチーム供給量:1時間あたり10Kgのスチームを3時間、である。スチーム供給停止後170℃、50mmHgの条件で2時間保持した後、混合物(2)を窒素導入管、ジャケット付きの槽4へ移送した。
【0085】
混合物(2)を槽4から薄膜蒸留器へ連続的に供給し、蒸留により留出物としてビスフェノールFを590g、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂67gをそれぞれ得た。薄膜蒸留器による蒸留の条件は薄膜伝面熱媒温度:210℃、蒸留器出口の圧力:0.3mmHg、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1mあたり15g/hrである。
【0086】
GPCによる分析の結果、得られたビスフェノールFの純度は99面積%であった。ノボラック型フェノール樹脂中の2核体の割合は13面積%、3核体の割合は61面積%、4核体の割合は19面積%であり、(4核体)/(2核体)面積比=1.5であった。ノボラック型フェノール樹脂の粘度は0.2dPa・s、軟化点は57℃であった。このノボラック型フェノール樹脂を(PN4)とする。
【0087】
合成例5(同上)
第三工程の薄膜蒸留工程において、薄膜蒸留器へ混合物(2)の供給量を薄膜の伝面1cmあたり25g/hrに変更する以外は、実施例2と同様に処理し、留出物としてビスフェノールFを494g、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂160gをそれぞれ得た。
【0088】
GPCによる分析の結果、得られたビスフェノールFの純度は99面積%であったものの、ノボラック型フェノール樹脂中の2核体の割合は31面積%も含まれ、3核体の割合は58面積%、4核体の割合は10面積%であり、(4核体)/(2核体)面積比=0.3であった。ノボラック型フェノール樹脂の粘度は0.1dPa・s以下であり、また、タックが著しく軟化点は測定不能であった。このノボラック型フェノール樹脂を(pn1)とする。
【0089】
合成例6(同上)
第三工程の薄膜蒸留工程において、薄膜伝面熱媒温度:280℃、薄膜蒸留器への供給量:薄膜の伝面1cmあたり12g/hrに変更する以外は、実施例1と同様に処理し、留出物としてビスフェノールFを1430g、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂450gをそれぞれ得た。このとき、蒸留機出口の圧力は1〜2mmHgの間で安定しなかった。
【0090】
GPCによる分析の結果、得られたビスフェノールFの純度は95面積%であり、分解生成したと思われるフェノール成分が4%含まれていた。また、ノボラック型フェノール樹脂は着色が著しいものが得られ、粘度は0.1dPa・s以下、軟化点は64℃であった。このノボラック型フェノール樹脂を(pn2)とする。
【0091】
合成例7〜12(エポキシ樹脂の合成)
加熱装置と攪拌装置とコンデンサと温度計および下部に分液コックが装着された反応装置に、ノボラック型フェノール樹脂225gとエピクロルヒドリン 925gおよびイソプロピルアルコール275gを添加した。(エピクロルヒドリン量は全てフェノール性水酸基1当量に対して4.0倍当量である)次いで35重量%水酸化カリウム水溶液 440gを2段階に分けて添加した。まず40℃で全量の10重量%を添加して、40℃を保ちながら4時間攪拌した。次いで50℃に昇温して残りの90重量%を液温50℃に保持しながら3時間要して滴下した。さらに50℃で30分間攪拌した後に、生成塩が飽和濃度になるような量の水を添加して塩を溶解して、攪拌を止めて水層を棄却した。未反応のエピクロルヒドリンを1時間かけて150℃まで加熱し蒸留回収した。次いで150℃を保持したまま気相の圧力が最終的に1.3kPaとなるまで減圧を行いながら、未反応のエピクロルヒドリンを蒸留回収し、粗樹脂を得た。得られた粗樹脂に対し、メチルイソブチルケトン590gを添加して溶解した後、n−ブタノール 460gと10%水酸化ナトリウム水溶液110gを加えて、80℃で2時間攪拌して分液した。それに第一燐酸ソーダで中和した後に、共沸によって脱水し、精密濾過を経た後にメチルイソブチルケトンを蒸溜によって溜去する事によって、第1表に示すエポキシ樹脂(EP1〜EP4、ep1、ep2)を得た。
【0092】
【表1】

【0093】
試験例1〜4および比較試験例1〜4
前記した方法に従い、プリプレグの特性および樹脂硬化物特性を評価した結果を第2表に示した。
【0094】
【表2】

【0095】
第2表の脚注
EPICLON 1055:DIC(株)社製BPA型エポキシ樹脂
EPICLON N−740:DIC(株)社製フェノールノボラック型エポキシ樹脂
硬化剤DICY:ジシアンジアミド
硬化促進剤DCMU:3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールノボラック樹脂とエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂と硬化剤とを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物において、前記フェノールノボラック樹脂が該2核体のフェノールノボラック樹脂と4核体のフェノールノボラック樹脂とを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたクロマトグラムの面積比率でそれぞれ4〜20%、9〜25%含有し、且つ、4核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(4)と2核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(2)との比〔(4)/(2)〕が、0.4〜2.5となる範囲で含有するフェノールノボラック型樹脂(A)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノールノボラック樹脂(A)が、GPC法で測定されたクロマトグラムの面積比率でそれぞれ5〜20%、10〜20%含有し、且つ、4核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(4)と2核体のフェノールノボラック樹脂の面積比率(2)との比〔(4)/(2)〕が、0.5〜2.0となる範囲で含有するフェノールノボラック型樹脂である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノールノボラック樹脂(A)が、酸触媒の存在下、フェノールとホルムアルデヒドとを反応させ、フェノールとビスフェノールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(1)を得る第一工程、
混合物(1)に対して薄膜蒸留を行った後、更にスチーム蒸留を行い、該混合物から未反応のフェノールを除去しビスフノェールFとノボラック型フェノール樹脂との混合物(2)を得る第二工程、および
薄膜伝面熱媒温度が200〜250℃、蒸留機出口圧力が0.1〜3mmHgに保たれた薄膜蒸留器へ混合物(2)を該薄膜の伝面1cmあたり8〜20g/hrの供給量となるように供給し蒸留することにより、混合物(2)から留出物としてビスフェノールFを得、缶出物としてノボラック型フェノール樹脂とを得る第三工程
を含有する方法により得られるノボラック型フェノール樹脂である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記第三工程が薄膜伝面熱媒温度205〜240℃、蒸留機出口圧力が0.1〜3mmHgに保たれた薄膜蒸留器へ混合物(2)を該薄膜の伝面1cmあたり8〜20g/hrの供給量となるように供給する工程である請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記第一工程が、蓚酸存在下、フェノールとホルムアルデヒドとをモル比で、(フェノール)/(ホルムアルデヒド)=3〜75となる範囲で反応させる請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記第二工程の薄膜蒸留を薄膜伝面熱媒温度が150〜200℃で、蒸留機出口圧力が10〜70mmHgで、薄膜の伝面1cmあたり10〜40g/hrの供給量となるように供給することにより缶出物を得、その後、該缶出物の温度が150〜200℃で、スチームの供給量が2〜10kg/hrとなるようにスチーム蒸留を行う請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記1〜6のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項8】
前記1〜6のいずれか1項記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
請求項7記載のプリプレグを硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2011−74220(P2011−74220A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227046(P2009−227046)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】