説明

エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】 エポキシ樹脂組成物の製造方法及び無機充填剤の前処理方法に依存せずに無機充填剤の凝集を起こりにくくする化合物を用いることにより、流動性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供すること。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)カップリング剤及び(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物、を含有するエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料、積層板用又は接着剤用材料として好適なエポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を用いて封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形材料、積層板用及び接着剤用材料等の分野において、エポキシ樹脂が広範囲で使用されている。また、トランジスタ、IC等の電子部品の素子に関する封止技術の分野でも、エポキシ樹脂をベースとした組成物が広く用いられている。その理由としては、エポキシ樹脂が成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。特に、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とフェノールノボラック硬化剤との組み合わせは、上記諸特性において優れたバランスを有するため、IC封止用成形材料のベース樹脂として主流になっている。
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い、実装の高密度化が進み、電子部品装置は従来のピン挿入型から、表面実装型のパッケージがなされるようになってきている。半導体装置を配線板に取り付ける場合、従来のピン挿入型パッケージはピンを配線板に挿入した後、配線板裏面から半田付けを行うため、パッケージが直接高温にさらされることはなかった。しかし、表面実装型パッケージでは半導体装置全体が半田バスやリフロー装置などで処理されるため、直接半田付け温度にさらされる。この結果、パッケージが吸湿した場合、半田付け時に吸湿水分が急激に膨張し、接着界面の剥離やパッケージクラックが発生し、実装時のパッケージの信頼性を低下させるという問題があった。
上記の問題を解決する対策として、半導体装置内部の吸湿水分を低減するためにICの防湿梱包や、配線板へ実装する前に予めICを十分乾燥して使用するなどの方法もとられているが、これらの方法は手間がかかり、コストも高くなる(例えば、非特許文献1参照。)。別の対策としては充填剤の含有量を増加する方法が挙げられるが、この方法では半導体装置内部の吸湿水分は低減するものの、大幅な流動性の低下を引き起こしてしまう問題があった。これまでにエポキシ樹脂成形材料の流動性を損なうことなく充填剤の含有量を増加する方法として、予め充填剤にカップリング剤処理を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
【非特許文献1】(株)日立製作所半導体事業部編「表面実装形LSIパッケージの実装技術とその信頼性向上」応用技術出版1988年11月16日、254−256頁
【特許文献1】特開平8−20673号公報
【特許文献2】特開2003−138099号公報
【特許文献3】特開2003−213095号公報
【特許文献4】特開平8−81543号公報
【特許文献5】特開平7−304851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、予め充填剤にカップリング剤処理を行う方法では処理方法によって、充填剤が凝集して流動性が低下することがあるため、処理条件の設計及び制御が必要であるという問題点があった。また、予めカップリング剤処理を行わない方法でも製造法により、充填剤の凝集が確認されることもあり、この観点からも製造方法及び処理方法に依存せずに凝集が起こらないカップリング剤が求められている。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、エポキシ樹脂組成物の製造方法及び無機充填剤の前処理方法に依存せずに無機充填剤の凝集を起こりにくくする化合物を用いることにより、流動性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料、及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、カップリング剤と特定の窒素原子を有する化合物の併用を使用することによって、流動性に優れるエポキシ樹脂組成物が得られ、所期の目的を達成可能であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は以下に関する。
(1) (A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)カップリング剤及び(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物、を含有するエポキシ樹脂組成物。
(2) (D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物が、下記一般式(I−a)で示される少なくとも一種類の化合物を含有する(1)に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0007】
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Arは、炭素数6〜24の置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる。また、R及びArの中から2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
(3) (C)カップリング剤が、シランカップリング剤である(1)又は(2)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4) (C)カップリング剤が、下記一般式(I−b)で示される少なくとも一種類の化合物及び(I−b)で示される少なくとも一種類の化合物を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0008】
【化2】

(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、R、R及びRから選ばれる2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
(5) (E)硬化剤を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(6) (F)硬化促進剤を含有する(1)〜(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(7) 上記(E)硬化剤が分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物を含有する(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8) (B)無機充填剤の含有量が55〜95重量%であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(9) (C)カップリング剤及び(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物の混合物を予め(B)無機充填剤に表面処理を施したことを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(10) (D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物が(C)カップリング剤の0.1〜100mol%である(1)〜(9)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(11) (A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、からなる群より選ばれる1以上のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(12) (E)硬化剤が、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、からなる群より選ばれる1以上の樹脂を含有することを特徴する(5)〜(11)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(13) (B)無機充填剤の平均粒径が1〜50μmである(1)〜(12)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(14) (1)〜(13)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、流動性等の成形性に優れ、無機充てん剤の高充てん化が可能となる。特に、流動性に優れることが要求される薄型の電子部品装置に適したエポキシ樹脂組成物を提供することが可能となり、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
(A)エポキシ樹脂
本発明において、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることができる。そのようなエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂)、
ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型またはメチルグリシジル型のエポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
ハイドロキノン型エポキシ樹脂;
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;
硫黄原子含有エポキシ樹脂
等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロークラック性及び流動性の点でビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物がより好ましい。これらのエポキシ樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、それらの性能を発揮するためには、エポキシ樹脂全量に対して、それらを合計で30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
【0013】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、全てのRが水素原子である4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子である場合の混合品であるYL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0014】
【化3】

(式(II)中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数4〜18のアリール基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
スチルベン型エポキシ樹脂としては、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂の中でも、Rのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合と3,3´,5,5´位のうちの3つがメチル基、1つがtert−ブチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合の混合品であるESLV−210(住友化学工業株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0015】
【化4】

(式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子でありR12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0016】
【化5】

(式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
硫黄原子含有型エポキシ樹脂としては、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´位がtert−ブチル基で6,6´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0017】
【化6】

(式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましく、例えば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子でありR15がメチル基でi=1であるESCN−190、ESCN−195(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0018】
【化7】

(式(VI)中、R14及びR15は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化したエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP−7200(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0019】
【化8】

(式(VII)中、R16は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、k=0である1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、EPPN−502H(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0020】
【化9】

(式(VIII)中、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂としては、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でi=1であり、j=0、k=0であるNC−7300(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0021】
【化10】

(式(IX)中、R19〜R21は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示し、pは平均値で0〜1の数を示し、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の数であり(l+m)は1〜11の数を示す。)
上記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、R40が水素原子であるNC−3000S(日本化薬株式会社製商品名)、i=0、R40が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を重量比80:20で混合したCER−3000(日本化薬株式会社製商品名)等が、下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、j=0、k=0であるESN−175(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0023】
【化11】

(式(X)及び(XI)において、R37〜R41は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
上記一般式(II)〜(XI)中のR〜R21及びR37〜R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0024】
上記一般式(II)〜(XI)中のnは、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(A)成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0025】
以上、本発明によるエポキシ樹脂組成物に使用可能な好ましいエポキシ樹脂の具体例を上記一般式(II)〜(XI)に沿って説明したが、より具体的な好ましいエポキシ樹脂として、耐リフロークラック性の観点からは、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3´,5,5´−テトラメチルビフェニルが挙げられ、成形性及び耐熱性の観点からは、4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−ビフェニルが挙げられる。
【0026】
(B)無機充填剤
本発明において用いられる(B)無機充填剤としては、一般に樹脂組成物に用いられるものであってよく、特に限定されるものではない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズなどが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からは結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素が好ましい。難燃効果のある無機充填剤の中では、信頼性の観点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物が好ましい。これらの無機充填剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(B)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に対して55〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が55体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向があり、90体積%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
【0028】
また、(B)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下したりする傾向がある。
【0029】
流動性の観点からは、(B)無機充填剤の粒子形状は角形より球形が好ましく、(B)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70重量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいため配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、(C)カップリング剤を含むことを必須とする。
【0031】
上記(C)カップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、tert−ブチルジメチルシラノール、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、3−アミノエチルアミノメチルベンジロキシジメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、tert−ブチルジフェニルメトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジメチルイソプロポキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルホスフィノエチルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で併用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の効果を発揮しやすいという観点からはシラン系カップリング剤を使用することが好ましく、中でも、下記一般式(I−b)で示される化合物であることがより好ましい。
【0032】
【化12】

(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、R、R及びRから選ばれる2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0033】
上記一般式(I−b)のR〜Rとして記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を意味する。
【0034】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものなどが挙げられる。
【0035】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、グリシジル基、ハロゲン等で置換したものなどが挙げられる。
【0036】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−ブチルアミノフェニル基、N,N−ジブチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基等のアミノ基置換アリール基、等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、グリシジル基、ハロゲン等で置換したもの等であってもよい。
【0037】
上記一般式(I−b)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、アルキル基、アリール基、グリシドキシ基置換のアルキル基又はアリール基、アミノ基置換のアルキル基又はアリール基、水酸基置換のアルキル基又はアリール基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基等がさらに好ましい。
【0038】
上記一般式(I−b)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、アルキル基、アリール基、グリシドキシ基置換のアルキル基又はアリール基、アミノ基置換のアルキル基又はアリール基、水酸基置換のアルキル基又はアリール基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メトキシエトキシ基、tert−ブチル基、フェノキシ基等がさらに好ましい。
【0039】
上記一般式(I−b)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、アルキル基、アリール基、グリシドキシ基置換のアルキル基又はアリール基、アミノ基置換のアルキル基又はアリール基、水酸基置換のアルキル基又はアリール基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、グリシジドキシプロピル基、アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、ビニル基、エポキシシクロヘキシルエチル基等がさらに好ましい。
【0040】
上記一般式(I−b)で示される化合物としては、これらに限られるものではないが、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、tert−ブチルジメチルシラノール、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、3−アミノエチルアミノメチルベンジロキシジメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、tert−ブチルジフェニルメトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジメチルイソプロポキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジフェニルホスフィノエチルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン等が挙げられ、これらを単独で併用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の効果を発揮しやすいという観点からは中でも、エポキシ基を有する化合物を使用することがより好ましい。
【0041】
(C)カップリング剤の全体の配合量は、(B)無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性向上の効果が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0042】
(C)カップリング剤の配合方法としては、特に制限はなく、例えば、そのまま他の構成材料に添加するインテグラルブレンド法、予め充填剤と混ぜ合わせてから他の構成材料と混合する乾式処理法、湿式処理法、予めエポキシ樹脂又は/及び硬化剤と混ぜ合わせてから他の構成材料と混合するマスターバッチ法が挙げられる(以下、予め充填剤と混ぜ合わせてから他の構成材料と混合する乾式処理法、湿式処理法を「前処理法」と記載する。)。本発明の効果が発揮されれば、配合方法に制限はないが、効率よく本発明の効果が発揮されるという観点からは、前処理法が好ましく、簡便な製造方法で本発明の効果が発揮されるという観点からは、インテグラルブレンド法が好ましい。また、上記配合方法を複数組み合わせても構わない。その場合、一部を前処理法で用いて、一部をインテグラルブレンド法で用いるのが、特性のバランスの観点から好ましい。
【0043】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物を含むことを必須とする。
【0044】
(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物が、下記一般式(I−a)で示される化合物であることが好ましい。
【0045】
【化13】

(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
Arは、炭素数6〜24の置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる。
また、R及びArの中から2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0046】
上記一般式(I−a)のRとして記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を意味する。
【0047】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものなどが挙げられる。
【0048】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、グリシジル基、ハロゲン等で置換したものなどが挙げられる。
【0049】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−ブチルアミノフェニル基、N,N−ジブチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基等のアミノ基置換アリール基、等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、グリシジル基、ハロゲン等で置換したもの等であってもよい。
【0050】
上記一般式(I−a)のArとして記載した用語「炭素数6〜24の置換又は非置換のアリール基」は、炭素数6〜24を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい芳香族炭化水素基を意味する。芳香族炭化水素基としては、上述の基が挙げられる。
【0051】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−ブチルアミノフェニル基、N,N−ジブチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基等のアミノ基置換アリール基、等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、グリシジル基、ハロゲン等で置換したもの等であってもよい。
【0052】
また、一般式(I−a)のR及びArとして記載した用語「R及びArの中から2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、R及びArの中から選ばれる2又は3つ基が結合し、全体としてそれぞれ2又は3価の有機基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、これらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基又はジオキシ基が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン等で置換されていてもよい。
【0053】
上記一般式(I−a)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、アルキル基、アリール基、グリシドキシ基置換のアルキル基又はアリール基、アミノ基置換のアルキル基又はアリール基、水酸基置換のアルキル基又はアリール基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、グリシジル基等がさらに好ましい。
【0054】
上記一般式(I−a)のArとしては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、グリシドキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基、アミノフェニル基、N−アルキルアミノフェニル基、N,N−ジアルキルアミノフェニル基、N−ジグリシジルアミノフェニル基、N,N−ジグリシジルアミノフェニル基、4−(N,N−ジグリシジルアミノ)−3−エチルフェニルメチル基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、フェニル基、エチルフェニル基、グリシドキシフェニル基、4−(N,N−ジグリシジルアミノ)−3−エチルフェニルメチル基がさらに好ましい。
【0055】
上記一般式(I−a)で示される化合物として、これらに限られるわけではないが、例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、2−イソプロピルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、N−アリルアニリン、N−アリル−N−メチルアニリン、ベンジルアニリン、N−ベンジル−N−エチルアニリン、N−ベンジル−p−メトキシアニリン、m−(ベンジルオキシ)アニリン、4,4’−(p−ビフェニレンジオキシ)ジアニリン、N,N−ビス(2−クロロエチル)アニリン、ブロモアニリン、クロロアニリン、2−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリン、4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−ブトキシアニリン、p−ブチルアニリン、4−ブチル−2−メチルアニリン、3−クロロ−4−メチルアニリン、3−クロロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、N−シクロヘキシルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,6−ジエチルアニリン、ジメトキシアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ−n−プロピルアニリン、N−エチルアニリン、2−エチルアニリン、4−フルオロ−N−メチルアニリン、N−イソプロピルアニリン、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2−メチル−N−メチルアニリン、4−(メチルチオ)アニリン、4−フェノキシアニリン、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジアニリン、o−(フェニルスルホニル)アニリン、o−(フェニルチオ)アニリン、N−プロピルアニリン、3,3’−[スルホニルビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、4,4’−[スルホニルビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、2,2’−チオジアニリン、4,4’−チオジアニリン、2,4,6−トリ−tert−ブチルアニリン、3,4,5−トリメトキシアニリン、2,4,6−トリメチルアニリン、N−ベンジルアニリン、3−ベンジルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、p−アミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、2,6−ジクロロジフェニルアミン、3,3’−ジメチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、ジフェニルアミン、3−メトキシジフェニルアミン、N−メチルジフェニルアミン、3−メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、4,4’−ジメトキシジフェニルアミン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリジジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリジジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、N,N−ジグリシジル−4−グリシドキシアニリン、N,N−ジグリシジル−3−グリシドキシアニリン、N,N−ジグリシジル−2−グリシドキシアニリン、N,N−ジグリシジル−2−エチル−4−グリシドキシアニリン等が挙げられるが、これらに限らず式(I−a)で示される公知の化合物を使用することができる。
中でも、アニリン、N−メチルアニリン、N−ブチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、2−イソプロピルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、N−アリルアニリン、N−アリル−N−メチルアニリン、ベンジルアニリン、N−ベンジル−N−エチルアニリン、N−ベンジル−p−メトキシアニリン、m−(ベンジルオキシ)アニリン、4,4’−(p−ビフェニレンジオキシ)ジアニリン、N,N−ビス(2−クロロエチル)アニリン、ブロモアニリン、クロロアニリン、2−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリン、4−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、p−ブトキシアニリン、p−ブチルアニリン、4−ブチル−2−メチルアニリン、3−クロロ−4−メチルアニリン、3−クロロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、N−シクロヘキシルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、2,6−ジエチルアニリン、ジメトキシアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ−n−プロピルアニリン、N−エチルアニリン、2−エチルアニリン、4−フルオロ−N−メチルアニリン、N−イソプロピルアニリン、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2−メチル−N−メチルアニリン、4−(メチルチオ)アニリン、4−フェノキシアニリン、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジアニリン、o−(フェニルスルホニル)アニリン、o−(フェニルチオ)アニリン、N−プロピルアニリン、3,3’−[スルホニルビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、4,4’−[スルホニルビス(p−フェニレンオキシ)]ジアニリン、2,2’−チオジアニリン、4,4’−チオジアニリン、2,4,6−トリ−tert−ブチルアニリン、3,4,5−トリメトキシアニリン、2,4,6−トリメチルアニリン、N−ベンジルアニリン、3−ベンジルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、3,4−(メチレンジオキシ)アニリン、p−アミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリジジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリジジル−4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、N,N−ジグリシジル−4−グリシドキシアニリン、N,N−ジグリシジル−3−グリシドキシアニリン、N,N−ジグリシジル−2−グリシドキシアニリン、N,N−ジグリシジル−2−エチル−4−グリシドキシアニリン等の上記一般式(I−a)で示される化合物のうち、2つのRが共に芳香族炭化水素基ではない化合物が好ましい。
【0056】
本発明における(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物の配合量としては、本発明の効果が発揮される範囲であれば限定されるものではないが、(C)カップリング剤に対して、0.1〜100mol%であることが好ましく、0.5〜50mol%であることがより好ましく、1.0〜30mol%であることがさらに好ましい。0.1mol%以下であると、本発明の効果が充分に発揮されない傾向があり、100mol%以上であると信頼性が低下する傾向がある。
【0057】
(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物の配合方法としては、特に制限はないが、本発明の効果が発揮されやすいという観点からは、(C)カップリング剤に予め混合して用いるのが好ましい。(C)カップリング剤と予め混合して用いる場合、混合した(C)及び(D)成分は、インテグラルブレンド法、前処理法、マスターバッチ法により(B)成分と配合することができる。本発明の効果が発揮されれば、配合方法に制限はないが、効率よく本発明の効果が発揮されるという観点からは、前処理法が好ましく、簡便な製造方法で本発明の効果が発揮されるという観点からは、インテグラルブレンド法が好ましい。また、上記配合方法を複数組み合わせても構わない。その場合、(D)成分と混合した(C)成分を前処理法で用いて、(D)成分と混合した又はしていない(C)成分をインテグラルブレンド法で用いるのが、特性のバランスの観点から好ましい。
前処理法を用いる場合、混合方法は特に制限されないが、より均一になっている方がこのましい。混合方法としては、これらに限られるわけではないが、カップリング剤を混合した後均一となるようにダマを篩等で除去してから混ぜる方法、カップリング剤を混合した後スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等で機械的に混ぜて均一とする方法等が挙げられる。
【0058】
(E)硬化剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物には、(E)硬化剤を用いることができる。使用可能な硬化剤としては、(A)エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物、ジアミン、ポリアミン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の無水有機酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸化合物等が挙げられ、これら化合物の1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。中でも、本発明の効果が十分に発揮されるという観点からは、フェノール化合物が好ましい。
【0059】
(E)硬化剤として使用可能なフェノール化合物としては特に制限はない。例えば、硬化剤として一般に使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物であってよく、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;
これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上述のフェノール化合物の中でも、耐リフロークラック性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂がより好ましい。これらのフェノール樹脂は、いずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、それらの性能を発揮するためには、フェノール樹脂全量に対して、それらを合計で30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。
【0061】
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XII)〜(XIV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0062】
【化14】

(式(XII)〜(XIV)において、R22〜R28は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、jは0〜2の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
上記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、R23が全て水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0063】
上記一般式(XIII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、k=0であるXL−225、XLC(三井化学株式会社製商品名)、MEH−7800(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0064】
上記一般式(XIV)で示されるフェノール樹脂の中でも、j=0、R27のk=0、R28のk=0であるSN−170(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0065】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0であるDPP(新日本石油化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0066】
【化15】

(式(XV)中、R29は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
サリチルアルデヒド型フェノール樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0067】
下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0であるMEH−7500(明和化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0068】
【化16】

(式(XVI)中、R30及びR31は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
ベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0069】
下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、q=0であるHE−510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0070】
【化17】

(式(XVII)中、R32〜R34は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、qは0〜5の整数、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の数であり(l+m)は1〜11の数を示す。)
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0071】
下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社製商品名)、HP−850N(日立化成工業株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0072】
【化18】

(式(XVIII)中、R35及びR36は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の数を示す。)
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるR22〜R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XIV)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23〜R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22〜R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22およびR23の全てについて同一でも異なっていてもよく、R30およびR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0073】
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるnは、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(E)硬化剤成分の溶融粘度が高くなるため、エポキシ樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0074】
本発明によるエポキシ樹脂組成物において(A)エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、そのエポキシ樹脂の(E)硬化剤としてフェノール化合物を使用する場合、上記成分(A)と(E)との配合比率は、全エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する全フェノール化合物の水酸基当量の比率(フェノール化合物中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)で0.5〜2.0の範囲に設定することが好ましく、上記比率が0.7〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.3であることがさらに好ましい。上記比率が0.5未満ではエポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性の効果が低下する傾向がある。一方、上記比率が2.0を超えるとフェノール化合物成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性の効果が低下する傾向がある。
【0075】
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、必要に応じて(F)硬化促進剤を使用することが好ましい。本発明において併用可能な硬化促進剤としては、(A)エポキシ樹脂と(E)硬化剤の反応を促進する化合物であれば限定されるものではなく、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンなどのシクロアミジン化合物、その誘導体、それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、又はこれら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体やこれら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036記載)、などが挙げられる。これら硬化促進剤を併用する場合、中でも、流動性の観点からは有機ホスフィン類とπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物、硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。
【0076】
上記に例示した硬化促進剤の中でも、流動性の観点からは、下記一般式(XIX)で示される化合物及びその分子間塩から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含有することがより好ましい。
【0077】
【化19】

((XIX)式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Yは、1以上の放出可能なプロトンを有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
なお、上記一般式(XIX)のRとして記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0078】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、先に説明した通りである。
【0079】
一般式(I)および(XIX)のRとして記載した用語「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2又は3つのRが結合し、全体としてそれぞれ2又は3価の炭化水素基となる場合を意味する。例えば、P原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン等で置換されていてもよい。
【0080】
なお、上記一般式(XIX)のRとしては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基であることがさらに好ましい。
【0081】
上記一般式(XIX)のRとして記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、及びカルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
【0082】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基としては、先に説明した通りである。
【0083】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等が挙げられる。
【0084】
上記カルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等が挙げられる。
【0085】
上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの等が挙げられる。
【0086】
上記カルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したもの等が挙げられる。
【0087】
上記一般式(XIX)のRとして記載した用語「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく」とは、2〜4つのRが結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、これらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基又はジオキシ基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン等で置換されていてもよい。
【0088】
上記一般式(XIX)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−クレゾキシ基、m−クレゾキシ基、o−クレゾキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のRが互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、Rが結合しているベンゼン環と併せて、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0089】
上記一般式(XIX)におけるYは、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、Yは水酸基、メルカプト基、ハイドロセレノ基等の16族原子に水素原子が結合した基からプロトンが脱離した基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシフェニル基カルボキシナフチル基等のカルボキシル基を有する炭素数1〜18の基からカルボン酸のプロトンが脱離した基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基を有する炭素数1〜18の基からフェノール性プロトンが脱離した1価の有機基等が挙げられる。
【0090】
また、式(XIX)中のYが1以上のRと結合して環状構造を形成する場合、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基を形成する2価の有機基が挙げられる。
【0091】
先に例示したYの中でも、特に限定されるものではないが、水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオン、又はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオンを有する1価の有機基であることが好ましい。
【0092】
一般式(XIX)で示される化合物としては、トリ−(4−メトキシフェニル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−o−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−m−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジ−(4−メトキシフェニル)フェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジ−p−トリルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジ−o−トリルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル−(4−メトキシフェニル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル−o−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル−m−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンと2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンと2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンとメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンと2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンと2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンとt−ブチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンとフェニル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−オクチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、n−ブチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、n−オクチルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジ−n−ブチルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物等のホスフィン化合物とキノン化合物との付加反応物、ホスフィン化合物と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036記載)等が挙げられる。中でも入手しやすさの観点からは、トリ−(4−メトキシフェニル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−o−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−m−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、ジフェニル−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリフェニルホスフィンとメチル−1,4−ベンゾキノンとの付加反応物トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物、特開2004−156035の合成例1〜9で製造した式(XXIX)〜(XXXVII)に記載の構造で示される化合物が好ましい。
【0093】
また、上記一般式(XIX)で示される化合物の分子間塩としては、限定されるものではないが、式(XIX)で示される化合物とフェノール、ナフトール、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物等のフェノール性水酸基を有する化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール基を有する化合物、シュウ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸等との分子間塩化合物が挙げられる。
【0094】
(F)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成できれば特に制限はない。しかし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性における改善の観点からは、(A)エポキシ樹脂の合計100重量部に対し、(F)硬化促進剤を合計で好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは1〜7.0重量部配合することが望ましい。配合量が0.1重量部未満では短時間で硬化させることが困難であり、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合がある。
【0095】
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、必要に応じて上述の成分(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)カップリング剤、(E)硬化剤、(F)硬化促進剤に加えて、以下に例示するイオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加してもよい。しかし、本発明によるエポキシ樹脂組成物には、以下の添加剤に限定することなく、必要に応じて各種添加剤を追加してもよい。
【0096】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(XIX)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0097】
【化20】

(0<X≦0.5、mは正の数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0098】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01重量%未満では離型性の効果が不十分な傾向があり、10重量%を超えると接着性が阻害される可能性がある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
【0099】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。応力緩和剤を配合することにより、パッケージの反り変形量、パッケージクラックを低減させることができる。使用できる応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の可とう剤(応力緩和剤)であれば特に限定されるものではない。一般に使用されている可とう剤としては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられる。
【0100】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。本発明において用いられる難燃剤としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機若しくは無機の化合物、金属水酸化物などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、エポキシ樹脂などの(A)エポキシ樹脂に対して1〜30重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
【0101】
また、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合しても良い。
【0102】
先に説明した本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると取り扱いが容易である。
【0103】
本発明による電子部品装置は、上述のエポキシ樹脂組成物によって封止した素子を備えることを特徴とする。電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものが挙げられ、それら素子部を本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したものが挙げられる。より具体的には、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形などによって封止した、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明のエポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明のエポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明のエポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0104】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0105】
以下、本発明について実施例によってより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例によって限定されるものではない。
〔表面処理溶融シリカの作製〕
無機充填剤として平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカ、カップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤1:東レ・ダウコーニング株式会社製商品名A−187)を用意した。本発明の分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物として、アニリン(窒素含有化合物1)、N−メチルアニリン(窒素含有化合物2)、N−ブチルアニリン(窒素含有化合物3)、比較例の窒素含有化合物として、トリブチルアミン(窒素含有化合物A)、ブチルアミン(窒素含有化合物B)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)(窒素含有化合物C)、ジエチルアミン(窒素含有化合物D)を用意した。表1に示す比率で、カップリング剤と窒素含有化合物を混合した後、この混合物を球状溶融シリカに混合し、均一になるように、塊となった溶融シリカを指で解砕しながら、全ての溶融シリカがなくなるまで100μmの篩いを通した。その後、ポリ瓶に入れ、ミックスローターを用いて14日間混合し、実施例1〜4及び比較例1〜5の表面処理溶融シリカを得た。
【0106】
【表1】

【0107】
〔エポキシ樹脂組成物の調製及びその特性評価〕
エポキシ樹脂として、
エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX−4000H)、
エポキシ当量192、融点79℃のジフェニルメタン骨格型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:新日鐡化学株式会社製商品名YSLV−80XY)、
エポキシ当量195、軟化点62℃のオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:住友化学工業株式会社製商品名ESCN−190−2)、
エポキシ当量167のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4:日本化薬株式会社製商品名EPPN−502H)、
エポキシ当量282、軟化点59℃のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物(エポキシ樹脂6:日本化薬株式会社製商品名NC−3000)、
難燃効果のあるエポキシ樹脂として、エポキシ当量393、軟化点80℃、臭素含有量48重量%の臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(臭素化エポキシ樹脂)
を用意した。
【0108】
硬化剤として、
水酸基当量176、軟化点70℃のフェノールアラルキル樹脂(硬化剤1:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL−225)、
水酸基当量199、軟化点89℃のビフェニル骨格型フェノール樹脂(硬化剤2:明和化成株式会社製商品名MEH−7851)、
水酸基当量106のフェノールノボラック樹脂(硬化剤3:日立化成工業株式会社製商品名HP−850N)、
水酸基当量156のベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂(硬化剤4:エア・ウォーター株式会社製商品名HE−510)、
水酸基当量183、軟化点79℃のナフトールアラルキル樹脂(硬化剤5:新日鐵化学株式会社製商品名SN−170)、
水酸基当量106のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂(硬化剤6:明和化成株式会社製商品名MEH−7500)
を用意した。
【0109】
カップリング剤として、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤1:東レ・ダウコーニング株式会社製商品名A−187)
を用意した。
【0110】
本発明の分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物として、
アニリン(窒素含有化合物1)、
N−メチルアニリン(窒素含有化合物2)、
N−ブチルアニリン(窒素含有化合物3)、
比較例の窒素含有化合物として、
トリブチルアミン(窒素含有化合物A)、
ブチルアミン(窒素含有化合物B)、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)(窒素含有化合物C)、ジエチルアミン(窒素含有化合物D)
を用意した。
これら窒素含有化合物は、予めカップリング剤と混合してから、それ以外の原材料に配合して用いた。
【0111】
硬化促進剤として、
トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤1)、
トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物(硬化促進剤2)、
4−トリフェニルホスホニオフェノラート(硬化促進剤3)、
トリフェニルホスフィン(硬化促進剤4)、
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU) (硬化促進剤5)
を用意した。
【0112】
無機充填剤として、
平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカ
を用意した。また、作製した表面処理溶融シリカ1〜4(実施例1〜4に対応)及びA〜E(比較例1〜5に対応)を用意した。
その他、各種添加剤として、着色剤であるカーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名MA−100)、離型剤であるカルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)、難燃剤である三酸化アンチモンを用意した。
【0113】
上述の成分をそれぞれ表2〜5に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例5〜26、比較例6〜24のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【0117】
【表5】

次に、実施例5〜26、及び比較例6〜24によって得られたエポキシ樹脂組成物を、以下に示す各種試験によって評価した。評価結果を表6〜9に示す。なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件下で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、上記条件でエポキシ樹脂組成物を成形して流動距離(cm)を測定した。
(2)円板フロー
200mm(W)×200mm(D)×25mm(H)の上型と200mm(W)×200mm(D)×15mm(H)の下型を有する円板フロー測定用平板金型を用いて、上皿天秤にて秤量したエポキシ樹脂組成物5gを180℃に加熱した下型の中心部にのせ、5秒後に180℃に加熱した上型を閉じて、荷重78N、硬化時間90秒の条件で圧縮成形し、ノギスで成形品の長径(mm)及び短径(mm)を測定して、その平均値(mm)を円板フローとした。
(3)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
【0118】
【表6】

【0119】
【表7】

【0120】
【表8】

【0121】
【表9】

【0122】
表6〜9から分かるように、本発明による分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物を含有する実施例5〜26は、いずれにおいても本発明による化合物を除き同じ樹脂組成である比較例と比較し、流動性に優れる結果となった。特に、本発明による分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物を含有するカップリング剤により表面処理した溶融シリカを含有する実施例は、流動性に優れる結果となった。
これに対して、本発明による分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物を含有しない比較例6〜24では、シラン化合物を除き同じ樹脂組成である実施例と比較し流動性に劣る結果となった。特に、本発明による分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物を含有しないカップリング剤により表面処理した溶融シリカを含有する実施例は、流動性に劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)カップリング剤及び(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物、を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物が、下記一般式(I−a)で示される少なくとも一種類の化合物を含有する請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Arは、炭素数6〜24の置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる。また、R及びArの中から2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項3】
(C)カップリング剤が、シランカップリング剤である請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(C)カップリング剤が、下記一般式(I−b)で示される少なくとも一種類の化合物及び(I−b)で示される少なくとも一種類の化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、R、R及びRから選ばれる2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項5】
(E)硬化剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(F)硬化促進剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
上記(E)硬化剤が分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(B)無機充填剤の含有量が55〜95重量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
(C)カップリング剤及び(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物の混合物を予め(B)無機充填剤に表面処理を施したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
(D)分子内にアリール基に結合した窒素原子を有する化合物が(C)カップリング剤の0.1〜100mol%である請求項1〜9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、からなる群より選ばれる1以上のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
(E)硬化剤が、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、からなる群より選ばれる1以上の樹脂を含有することを特徴する請求項5〜11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
(B)無機充填剤の平均粒径が1〜50μmである請求項1〜12のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。

【公開番号】特開2008−81591(P2008−81591A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262585(P2006−262585)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】