説明

エポキシ系硬化性組成物及び電子部品

【課題】 速硬化性に優れているだけでなく、接合すべき部材間の接合の信頼性を高めることができ、塩素等の不純物による接合の信頼性の低下が生じ難い、エポキシ系硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 エポキシ化合物と、該エポキシ化合物の硬化剤と、該硬化剤による硬化を促進する硬化促進剤とを含み、前記硬化促進剤として、マイクロカプセル型硬化促進剤とアミンアダクト型硬化促進剤との少なくとも一方の硬化促進剤と、イミダゾール系硬化促進剤とを含む、並びに電子部品素子2と、電子部品素子2が実装される基板4とを備え、基板4上に上記エポキシ系硬化性組成物からなる硬化物6を用いて該電子部品素子が接合されている、電子部品1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップなどの電子部品素子の接合に用いられるエポキシ系硬化性組成物及び電子部品に関し、より詳細には、硬化性に優れているだけでなく、信頼性に優れた接合を与え得るエポキシ系硬化性組成物及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップでは、各種信頼性を高めるために、半導体チップがパッケージに収納されたり、パッケージ材に実装された構造などが用いられている。近年、小型化及び薄型化を果たすために、半導体チップをパッケージ化するに際し、フリップチップ実装法が広く用いられてきている。フリップチップ実装法では、半導体チップの回路形成面を下面とし、かつ該下面上にパッケージ側の電極ランドと電気的に接続するための金属バンプを下方に突出するように設けている。
【0003】
フリップチップ実装法では、半導体チップの下面である回路形成面が十分に保護されないおそれがある。そのため、水分やイオン性不純物が侵入し易く、信頼性が低下するおそれがあった。そこで、従来、半導体チップの下面である回路形成面と基板との間の隙間に、アンダーフィル材として、エポキシ樹脂組成物を充填し、接合部の補強及び半導体チップの保護が図られている。この種の樹脂組成物を介在させる方法としては、種々の方法が存在する。一般には、液状のエポキシ樹脂組成物を、半導体チップ周辺に滴下し、毛細管現象により半導体チップの下面と基板との間の隙間に含浸させる方法が採用されている。
【0004】
しかしながら、この方法では生産性が非常に悪く、歩留まりが悪かった。そこで、下記の特許文献1には、上記アンダーフィル材を基板上に先に塗布し、しかる後、半導体チップを上方から圧接し、金属バンプによりアンダーフィル材を押し退けるとともに、金属バンプを基板上の電極に接合する方法が採用されている。この方法は、NCF工法(Non−Condactive Film工法)と称されている。この方法では、圧接時に金属バンプと、基板上の電極とが接触されて、導通が図られる。そして、圧接に際して熱プレスを利用することにより、熱硬化性のエポキシ樹脂組成物が硬化されている。
【0005】
ところで、金属バンプと基板上の電極とを電気的に接続するために、上記アンダーフィル材としては、導電性粒子が分散されたエポキシ系硬化物からなる異方導電性フィルムもしくはシートが用いられている。すなわち、導電性粒子が分散されている半硬化状態の異方導電性フィルムを金属バンプと基板上の電極との間に介在させ、熱プレスにより金属バンプと基板上の電極とを圧接する。
【0006】
この場合、金属バンプが電極側に圧接される際に、半硬化状態の異方導電性フィルムが押しのけられるとともに、内部に分散されている導電性粒子が金属バンプ及び電極に付着し、電気的接続の信頼性が高められる。他方、上記導電性粒子間には、絶縁性の樹脂材料が存在する。従って、硬化後には、上記導電性フィルムの面方向、すなわち基板上面の面方向においては、絶縁性が確保されている。
【0007】
しかしながら、電子部品の小型化に伴って、基板上の電極の配置密度が高まってきている。すなわち、多数の異なる電位に接続される電極が基板上に形成されており、各電極に多数の金属バンプが圧接されるように構成されてきている。この場合、異なる電位に接続される隣接する電極にまたがるように導電性粒子が付着すると、短絡不良となる。従って、導電性粒子が分散されている異方導電性フィルムを上記アンダーフィル材として用いた場合、基板上の電極密度や半導体チップにおける金属バンプの配置密度を高めることが困
難であった。
【0008】
また、上記導電性粒子を用いないアンダーフィル材を用いた場合には、電気的接続の信頼性が著しく低下せざるを得なかった。
【特許文献1】WO2004/060996A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の欠点を解消し、速やかに硬化させることができるとともに、導電性粒子が含有されていない場合においても、接合すべき部材間の接合の信頼性を高めることを可能とするエポキシ系硬化性組成物、並びに該エポキシ系硬化性組成物を用いて構成されており、金属バンプと電極ランドとの電気的接続の信頼性が高められている電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、エポキシ化合物と、該エポキシ化合物の硬化剤と、該硬化剤による硬化を促進する硬化促進剤とを含み、前記硬化促進剤として、マイクロカプセル型硬化促進剤とアミンアダクト型硬化促進剤との少なくとも一方の硬化促進剤と、イミダゾール系硬化促進剤とを含むことを特徴とする、エポキシ系硬化性組成物が提供される。
【0011】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、好ましくは、上記エポキシ系硬化性組成物のDTAによる発熱ピーク温度が160℃以下とされている。
【0012】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物においては、好ましくは、上記イミダゾール系硬化促進剤として、イソシアヌル酸変性されたイミダゾール系硬化促進剤が用いられる。
【0013】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、好ましくは、導電性粉末がさらに含有される。
【0014】
本発明に係る電子部品は、電子部品素子と、前記電子部品素子が実装される基板とを備え、前記基板上に本発明に従って構成されているエポキシ系硬化性組成物からなる硬化物を用いて前記電子部品素子が接合されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る電子部品のある特定の局面では、前記電子部品素子が、金属バンプを有し、前記基板上に該金属バンプに電気的に接続される電極ランドが形成されており、前記金属バンプと電極ランドとが、前記エポキシ系硬化性組成物の硬化物により接合されている。
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物は、エポキシ化合物と、該エポキシ化合物の硬化剤と、該硬化剤による硬化を促進する硬化促進剤とを含む組成において、硬化促進剤として、マイクロカプセル型硬化促進剤とアミンアダクト型硬化促進剤との少なくとも一方の硬化促進剤と、イミダゾール系硬化促進剤とを含むことを特徴とする。本発明では、これらの硬化促進剤を用いることにより、導電性粒子が含有されていない場合であっても、接合すべき部材間の接合の信頼性が効果的に高められる。
【0018】
(マイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤)
本発明のエポキシ系硬化性組成物で用いられている上記マイクロカプセル型硬化促進剤とは、マイクロカプセル化されている硬化促進剤である。マイクロカプセル型硬化促進剤
において、マイクロカプセル化される硬化促進剤自体については特に限定されない。
【0019】
一般に、エポキシ化合物の硬化反応では、エポキシ化合物が硬化剤と反応し、付加重合したり、アニオン重合したりして硬化が進行する。硬化促進剤は、このような反応を触媒的に促進する作用を有する。
【0020】
上記マイクロカプセル型硬化促進剤に用いられる硬化促進剤としては、例えばアミン系硬化促進剤が好適に用いられる。上記アミン系硬化促進剤の性状については特に限定されないが、マイクロカプセル化を行うには、常温で粉末状とされ得るように常温で固体であるアミン系硬化剤が好ましく、より好ましくは、融点が40℃以上であるアミン系硬化剤が望ましい。
【0021】
上記アミン系硬化剤としては、特に限定されないが、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族多価アミン;ジアミノシクロヘキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂肪族多価アミン;これらの多価アミン類とエポキシ樹脂及び/又はモノエポキシ化合物との付加反応生成物;エチレンジアミン、キシリレンジアミン等のジアミン類とアジピン酸、ダイマー酸等のジカルボン酸とを縮合させたポリアミドアミン類;2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾールトリメリット酸塩等のイミダゾール系化合物;前記イミダゾール系化合物と前記(A)エポキシ樹脂との付加反応生成物;2−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物;ジシアンジアミド等のグアニジン化合物;1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の第三級アミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7のノボラック塩等の化合物が挙げられる。
【0022】
上記アミン系硬化促進剤をマイクロカプセル化する方法については、公知のマイクロカプセル化法を用いることができる。例えば、アミン系硬化剤の微粉末粒子表面に被膜を形成し得る材料によりコーティングする方法、あるいはアミン系硬化促進剤の微粉末粒子の表面層に存在する硬化促進剤の官能基を、該官能基と反応され得る他の反応性物質によりブロックする方法などが挙げられる。
【0023】
また、マイクロカプセル型硬化促進剤としては、市販のマイクロカプセル型硬化促進剤を用いることもできる。市販されているマイクロカプセル型硬化促進剤としては、例えば、商品名:MCE−9957(日本化薬社製、メチルメタアクリレートをシェル部として使用しているもの)、旭チバ社製のノバキュアー(商品名:HX−3748、3741、3742、HX−3921HR、HX−3941HP)等が挙げられる。
【0024】
上記マイクロカプセル型硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上併用されてもよい。
【0025】
上記アミンアダクト型硬化促進剤とは、アミン類と種々の化合物を反応させて得られる付加化合物の形態の硬化促進剤である。一般に、アダクト型化合物とは、触媒活性を有する化合物と種々の化合物とを反応させて得られる付加化合物をいう。触媒活性を有する化合物が、イミダゾール化合物や1級、2級または3級アミノ基を有する化合物などのアミン類化合物である場合には、上記付加反応によりアミンアダクト型化合物が得られる。
【0026】
そして、アダクトされている化合物の種類により、アミンアダクト型硬化促進剤としては、アミン−エポキシアダクト系硬化促進剤、アミン−ウレイドアダクト系硬化促進剤、アミン−ウレタンアダクト系硬化促進剤などが存在する。中でも、硬化の際に発泡し難く
、かつ弾性が低く、耐熱性及び耐湿性が良好な硬化物が得られるため、アミン−エポキシアダクト系硬化促進剤が好ましく、より好ましくは、エポキシ化合物が長鎖であるアミン−エポキシアダクト系硬化促進剤が潜在性がより高いためより一層好ましい。
【0027】
上記アミン−エポキシアダクト系硬化促進剤とは、室温ではエポキシ化合物に不溶性の固体であり、加熱されると可溶化し、硬化促進剤として機能する。このアミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤は、上記のように、アミン類とエポキシ化合物と反応して得られる付加化合物である。これらの付加化合物の表面は、イソシアネート化合物や酸性化合物などで処理されていてもよい。
【0028】
アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、あるいはp−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、あるいは4,4'−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどとエピ
クロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン化合物、さらにはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン等の多官能性エポキシ化合物や、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の単官能性エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるアミン類は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1個以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基の中から選ばれた置換基を分子内に少なくとも1個以上有するものであれば良い。このようなアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4'−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミ
ン類、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルアニリン等の芳香族アミン類、
2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン等の窒素含有複素環化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物の中でも特に3級アミノ基を有する化合物は潜在性が極めて高い硬化促進剤を与える原料であり、そのような化合物の例を以下に示すがこれらに限定されるものではない。例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ−n−プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン等のようなアミン化合物や、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物等のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類などがある。アミン−ウレイドアダクト系潜在性硬化促進剤、アミン−ウレタンアダクト系潜在性硬化促進剤の原料となるアミン化合物も同様のものが使用できる。
【0030】
上記アミン−ウレタンアダクト系潜在性硬化促進剤を製造するに際し、アミンの活性をキャップをするために用いられる処理剤としてのイソシアネート化合物としては、特に限定されるわけではないが、様々なイソシアネート化合物を用いることができる。このようなイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフエニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフエニルス
ルホンジイソシアネート、トリフエニルメタンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5一トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート、ジフエニルプロパンジイソシアネート、フエニレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3,3'−ジイソシアネートジプロピルエーテル、トリフェ
ニルメタントリイソシアネート、ジフエニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート等の
ポリイソシアネート化合物、これらの二量体又は三量体、これらのポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコールとの付加物などがある。
【0031】
本発明において用いられるアミンアダクト型硬化促進剤としては、様々な市販のアミンアダクト型硬化促進剤を用いることができる。このような市販品としては、以下のアミンアダクト型硬化促進剤が挙げられる。すなわち、アミン−エポキシアダクト系硬化促進剤としては、味の素社製、商品名:アミキュPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアMY−D、及びアミキュアMY−Hなど、エー・シー・アール社製、商品名:ハードナーX−3615S、ハードナーX−3293Sなど、パシフィックアンカーケミカル社製、商品名:Ancamine2014ASまたはAncamine2014FGなどが挙げられる。また、アミン−ウレイド型アダクト系硬化促進剤としては、富士化成社製、商品名:フジキュアFXE−1000、フジキュアFXR−1030などが市販されている。
【0032】
上記アミンアダクト型硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記マイクロカプセル型硬化促進剤と、アミンアダクト型硬化促進剤の少なくとも一方の硬化促進剤が含有されるが、これらの配合割合については、後述のエポキシ化合物100重量部に対し、合計で0.1〜20重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、1.0〜15重量部である。0.1重量部未満では、硬化速度が極めて遅くなり、良好な接着硬化物が得られないことがあり、20重量部を超えると、可使時間が短くなり、作業が困難となることがある。
【0034】
(イミダゾール系硬化促進剤)
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、イミダゾール系硬化促進剤が含有されている。イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されないが、下記の一般式(1)で示されるイミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。
【0035】
【化1】

【0036】
【化2】

【0037】
なお、上記R1及びR2は同じであってもよく、異なっていてもよい。さらに、上記R1
及びR2は、炭素数1〜12の置換もしくは非置換の一価の炭化水素基であってもよいが
、この場合、好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは非置換の一価の炭化水素基が望ましい。このような一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、ヘドロキシ基、またはフェニル基などのアルキル基、これらのアルキル基が置換されている置換アルキル基、あるいはアリール基などが挙げられる。R3を構成する上記置換もしくは非置換の一価の
炭化水素基についても、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜6の適宜の置換もしくは非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、アリール基などのアルキル基、アルケニル基またはアリール基などが挙げられる。上記R4
構成する炭素数1〜12の置換もしくは非置換の一価の炭化水酸基としては、好ましくは、炭素数1〜12の置換もしくは非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、このような一価の炭化水酸基としては、メチル基、エチル基、シアノエチル基、ベンジル基などのアルキル基、置換アルキル基またアラルキル基などが挙げられる。
【0038】
なお、上述したR1〜R4における置換一価炭化水酸基としては、例えばヒドロキ置換された炭化水酸基、シアノ置換された炭化水酸基などが挙げられる。
【0039】
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、より具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4-ジメチルイミ
ダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸付加物、2−フェニ
ル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0040】
中でも、貯蔵安定性及び硬化性を両立し得るため、イソシアヌル酸変性されたたイミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。このようなイソシアヌル酸変性されたイミダゾール系硬化促進剤は、商品としては、四国化成社製から販売されている。より具体的には、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジンイソシアヌール酸付加物等があげられる。
【0041】
上記イミダゾール系硬化促進剤は、1種のみを用いられてもよく、2種以上が併用され
てもよい。
【0042】
上記イミダゾール系硬化促進剤の配合割合については、エポキシ化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、1.0〜15重量部である。0.1重量部未満では、硬化速度が極めて遅くなり、良好な硬化物が得られないことがあり、20重量部を超えると可使時間が短くなり、かつ残存することによる電気的特性の劣化を引き起こすことがある。
【0043】
なお、前述したマイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤の配合量と、イミダゾール系硬化促進剤の配合量との割合は、重量比で10:0.5〜0.5:10の割合とすることが好ましい。10:0.5よりもマイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤の配合割合が多い場合にはイオン不純物が多くなることがあり、0.5:10よりもマイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤の配合割合が少ない場合には、硬化速度不良となることがある。
【0044】
(硬化剤)
前述したように、本発明に係るエポキシ系硬化組成物では、エポキシ化合物と当量反応で硬化反応を引き起こす硬化剤が含有されている。このようなエポキシ硬化剤としては、従来からエポキシ化合物の硬化剤として知られている公知の硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、潜在性硬化剤(ジシジアミドなど)、ジアミン系硬化剤などが挙げられる。中でも、酸無水物硬化剤が、粘度調整が容易であり、かつ硬化物の電気的特性を劣化させないため、好適に用いられる。
【0045】
上記無水物系硬化剤としては特に限定されないが、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
硬化剤の配合割合については、エポキシ化合物のエポキシ基に対し、当量比で0.8倍から0.5倍の範囲で添加することが好ましい。これは、当量比で0.8倍を超えると、余剰の酸無水物が残存し、硬化物の物性が低下することがあるからであり、0.5倍未満では、前述した硬化促進剤のエポキシ化合物に対するイオン反応が生じるおそれがあり、それによって応力緩和性に乏しい硬化物となることがあるからである。
【0047】
(エポキシ化合物)
本発明のエポキシ系硬化性組成物において硬化成分として用いられるエポキシ系化合物とは、少なくとも1個のオキシラン環を有する有機化合物をいうものとする。上記エポキシ化合物としては、特に限定される訳ではないが、例えば、下記の様々なエポキシ樹脂及びエポキシ含有化合物が挙げられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、並びにこれらの水添化物や臭素化物;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6
−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)等のような脂環族エポキシ樹脂;1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個(好ましくは2〜4個)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等のような脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂並びにこれらの水添化物;トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等のようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂並びにこれらの水添化物;グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体;エポキシ化ポリブタジエン等のような、共役ジエン化合物を主体とする重合体またはその部分水添物の重合体の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;エポキシ化SBS等のような、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック」と「共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックまたはその部分水添物の重合体ブロック」とを同一分子内にもつブロック共重合体の、共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの;上記各種エポキシ基含有化合物にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂;等、従来公知の各種エポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0048】
上記エポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記エポキシ化合物の中でも、少なくとも、エポキシ基を多量に含むポリマーを用いることにより、本発明の硬化性組成物を硬化させることにより得られた硬化物における耐熱性を飛躍的に高めることができ、望ましい。このようなエポキシ基を多量に含むポリマーとしては特に限定されないが、エポキシ基含有アクリル系ポリマーが好適に用いられる。
【0050】
エポキシ基含有ポリマーの重量平均分子量は、5000〜200000の範囲が好ましく、より好ましくは10000〜100000の範囲である。重量平均分子量が5000未満では、耐熱性を向上させる効果が得られないことがあり、200000を超えると貯蔵安定性が低下することがある。
【0051】
上記エポキシ基含有ポリマーを用いる場合、上記エポキシ化合物全体を100重量部とした場合、100重量部中、1重量部〜10重量部の範囲で用いることが望ましい。1重量部よりも少ない場合には、耐熱性向上効果がさほど得られないことがあり、10重量部を超えると、硬化性組成物からなるペーストを作製した際の粘度が高くなりすぎ、また糸引などの不具合が生じ易くなるおそれがある。上記エポキシ基含有ポリマーのエポキシ当量としては200〜1000の範囲が好ましい。200〜1000の範囲のエポキシ当量のエポキシ基含有ポリマーは、他のエポキシ系モノマーと相溶性に優れ、従って得られる硬化物の耐熱性を高めることができ、望ましい。
【0052】
(導電性粉末)
本発明に係る硬化性組成物には、必要に応じて、金属粉末などの導電性粉末がさらに含
有されていてもよい。このような導電性粉末としては、Ag、Cu、Al、Auなどの金属粉末、あるいは合成樹脂粒子の表面に導電膜が形成された導電性粒子などを挙げることができ、特に限定されない。導電性粉末を含有させることにより、本発明に係る硬化性組成物の硬化により得られた硬化物に導電性を付与することができる。従って、上記硬化物を用いて、部材間の接合だけでなく、電気的接続も果たすことが可能となる。
【0053】
導電性粉末を含有させる場合には、上記硬化性組成物において、エポキシ化合物100重量部に対して導電性粉末は0.2〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲で配合することが望ましい。0.2重量部未満では、十分な導電性が得られないことがあり、20重量部を超えると、硬化物の物性が低下するおそれがある。
【0054】
(その他の添加物)
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物には、本発明の課題を達成する上で阻害しない範囲で、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、脂肪族水酸基含有化合物、熱可塑性樹脂、密着性向上剤、充填材、補強材、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、揺変剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、脱水剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、防黴剤などが挙げられる。これらの添加剤は1種のみがもちいられてもよく、2種以上が添加されてもよい。
【0055】
また、本発明に係るエポキシ系硬化性組成物には、他の樹脂成分として各種熱可塑性樹脂の1種または2種以上が配合されてもよい。
【0056】
(製造方法)
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物の製造方法は特に限定されず、上記各種成分を均一に分散・混合することにより得ることができる。この分散・混合方法は特に限定されないが、例えば、三本ロール、らいかい機、プラネタリーミキサーなどによる分散・混練方法を挙げることができる。混合に際し、必要に応じて減圧してもよい。また、遊星式の攪拌機を用いることにより、各成分を混合することが望ましく、それによって金属物の混入を避けつつ、各成分を均一にかつ容易に混合することができる。
【0057】
(電子部品)
本発明に係る電子部品は、本発明に従って構成された上記エポキシ系硬化性組成物を硬化することにより得られた硬化物により、電子部品素子と、電子部品素子が電気的に接続される電極ランドを表面に有する基板の電極ランドに接合されていることを特徴とする。このような構造であれば特に限定されないが、好ましくは、電子部品素子が金属バンプを有し、該金属バンプが上記硬化物により基板上の電極ランドに接合されている構造を挙げることができる。このような構造は、前述したフリップチップ実装法で電子部品素子が基板に実装されている構造であり、例えば半導体チップのパッケージ基板の搭載などに広く用いられている。
【0058】
図1は、このような本発明の電子部品の一例を模式的に示す正面断面図である。電子部品1では、電子部品素子2は、下面に複数の金属バンプ3を有する。また、基板4の上面には、複数の電極ランド5が形成されている。ここでは、本発明に従って構成されたエポキシ系硬化性組成物を硬化させることにより得られたシート状硬化物6により、金属バンプ3と電極ランド5とが接合され、かつ電気的に接続されている。
【0059】
なお、接合方法は特に限定されないが、半硬化状態のシート状のエポキシ系硬化性組成物を基板4上に配置し、上方から電子部品素子2の金属バンプ3が形成されている側を下面として圧接させ、該圧接に際し加熱すればよい。圧接に際し、金属バンプ3によりシート状のエポキシ系硬化性組成物が押し退けられ、金属バンプ3が電極ランド5に搭設され
る。そして、加熱によりシート状の硬化性組成物が硬化し、シート状硬化物6が形成される。もっとも、本発明においては、上記金属バンプ3を有しない電子部品素子を基板上の電極ランドに接合してなる電子部品にも適応することができる。
【0060】
また、電子部品素子についても、半導体チップの他様々な能動部品もしくは受動部品を用いることができる。さらに、基板についても、様々な電子部品素子が実装される回路基板に限らず、パッケージ材などであってもよい。
【発明の効果】
【0061】
本発明に係るエポキシ系硬化性組成物では、硬化促進剤として、マイクロカプセル型硬化促進剤とアミンアダクト型硬化促進剤との少なくとも一方の硬化促進剤と、イミダゾール系硬化促進剤とが含有されている。ここで、マイクロカプセル型硬化促進剤及びアミンアダクト型硬化促進剤は、潜在性硬化促進剤であり、従って、本発明に係るエポキシ系硬化性組成物の貯蔵安定性を高めることが可能とされている。加えて、マイクロカプセル型硬化促進剤及びアミンアダクト型硬化促進剤による硬化促進作用によれば、初期の硬化反応が効果的に促進される。
【0062】
もっとも、マイクロカプセル型硬化促進剤やアミンアダクト型硬化促進剤のみを用いた場合には、初期の硬化反応は促進されるものの、硬化が進行し、ゲル分率が90%程度で飽和し、それ以上、ゲル分率(架橋度)が高まらない。また、エポキシ化合物に結合している塩素イオンを引き抜く反応が生じ、塩素イオンが他の物質と結合してなるような不純物が生成するといいう問題があった。このような不純物が存在すると、例えば電子部品の実装構造において前述したアンダーフィル材として用いた場合、電気的接続の信頼性が損なわれることがあった。
【0063】
これに対して、イミダゾール系硬化促進剤のみを用いた場合には、上記のような不純物が生じ難い。しかしながら、イミダゾール系硬化促進剤では、硬化反応を促進する際の反応性が十分でないおそれがある。
【0064】
そこで、本発明では、上記マイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤を用いることにより、初期状態における硬化反応速度が高められ、速硬化性が実現され、しかも硬化反応の中期及び後期には、上記イミダゾール系硬化促進剤の作用により十分に硬化反応が進行する。従って、速硬化性及び硬化物による接合の信頼性の向上を両立することが可能となる。このように、硬化物による接合の信頼性が高められるため、導電性粉末を含有させない場合であっても、導通されるべき部材同士を接触させた状態で本発明に係る硬化性組成物を硬化させるだけで、導通状態を確実に保持することも可能となる。
【0065】
特に、DTAによる発熱ピーク温度が160℃以下である場合には、硬化速度が速くなる。
【0066】
イミダゾール系硬化促進剤が、イソシアヌル酸変性されたイミダゾール系硬化促進剤である場合にはエポキシ系硬化性組成物の貯蔵安定性及び硬化性をより一層高めることができる。
【0067】
導電性粉末がさらに含有されている場合には、本発明に従って、導電性を有する硬化物を提供することができる。従って、例えば電子部品の実装構造において、硬化物自体によって電気的接続をも果たすことが可能となる。
【0068】
本発明に係る電子部品では、基板上に本発明のエポキシ系硬化性組成物からなる硬化物
を用いて電子部品素子が接合されており、速やかに硬化されるため、生産性に優れている。しかも接続の信頼性に優れた実装構造を提供することができる。特に、電子部品の金属バンプと基板上の電極ランドとが、上記エポキシ系硬化性組成物の硬化物により接合されている場合には、金属バンプと電極ランドとの接合の信頼性が高められるため、電気的接続の信頼性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を説明することにより本発明を明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(使用した材料)
(1)エポキシ化合物
エポキシ基含有アクリルポリマー:日本油脂社製、品番:CP−30、重量平均分子量10000、エポキシ当量500
ナフタレン型エポキシ:大日本インキ社製、品番:HP−4032D
ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物:大日本インキ社製、品番:HP−7200
(2)硬化剤
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸:JER社製、品番:YH−306
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸:JER社製、品番:YH−307
(3)硬化促進剤
イソシアヌル酸付加型トリアジン型イミダゾール:四国化成工業社製、品番:2MAOK−PW
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール:四国化成工業社製、品番:2PZ−CN
アミンアダクト型イミダゾール:味の素ファインテクノ社製、品番:PN−23J
マイクロカプセル型潜在性硬化剤:旭化成社製、品番:HX−3748
(4)接着性付与剤
イミダゾールシランカップリング剤:日鉱マテリアルズ社製、品番:SP−1000
【0071】
(実施例1)
下記の表1に示す組成となるように、上記材料を200mlのポリ容器に秤量し、遊星式攪拌機により均一に混合し、ペーストを得た。このペーストを、開口径20μmのポリエステルメッシュを用い、加圧濾過し、さらに10mlのシリンジ中に充填し、実施例1の硬化性組成物を得た。
【0072】
(実施例2〜7及び比較例1〜3)
下記の表1に示すように、使用した材料の配合割合を変更したこと除いては、実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0073】
(実施例及び比較例の評価)
上記各硬化性組成物について、(1)DTAによる発熱温度の測定、(2)電気的接続及び機械的接合評価、(3)TCT冷熱サイクル試験及び(4)Clイオン不純物濃度の測定を下記の要領で行った。
【0074】
(1)DTAによる発熱温度の測定:硬化性組成物ペーストについて、セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6000を用い、発熱ピークを観測した。すなわち、アルミパン中に約10mgのペーストを計り取り、10℃/分の昇温速度で昇温し、このときの最大発熱ピークの温度を読み取り、発熱温度とした。
【0075】
(2)接合及び電気的接続の信頼性評価
10×10mmの平面形状を有し、ワイヤボンディングで作製された金からなる複数のスタッドバンプ(直径100μm及び突出高さ約50μm)が下面の周縁に沿って172個配置されているICチップ)と、20mm×20mm×1.0mm厚のガラス/エポキシ系FR−4基板とを用意した。この基板の表面には、上記スタッドバンプの密度に応じて配線パターンが形成されている。配線パターンは、18μmの厚みの銅箔上に、5μmのニッケルメッキ膜及び0.3μmの金メッキ膜を積層した構造を有する。
【0076】
上記基板の配線パターン上に、硬化性組成物ペーストを吐出し、ICチップを下面のスタッドバンプが突出している側から載置し、78N/cm2の荷重を加えつつ、200℃
の温度で30秒加熱し、接合した。しかる後、125℃の温度で1時間養生し、導通接合体を得た。なお、上記接合に際しての温度は、熱電対を硬化性組成物ペースト中に挿入し、測定した。
【0077】
上記のようにして得られた導通接合体における導通性を、スタッドバンプと基板側の配線パターンとの導通の有無により評価するとともに、硬化性組成物ペーストの硬化物の性状をフィレット部分の硬化度をもとに評価した。下記の表1に結果を示す。なお、表1の評価記号の意味は、以下の通りである。
【0078】
○…導通不良なし
△…導通不良なし、硬化性組成物のペーストの硬化が完了しておらず、進行中
×…導通不良発生及び/または硬化が進行不十分
【0079】
(3)TCT冷熱サイクル試験
(2)において導通不良が生じていなかった導通接合体について、常温(20℃)において、高い導通抵抗安定性を有することを確認した後、−40℃に10分間維持し、しかる後、125℃に10分間維持する冷熱サイクルを行うための冷熱サイクル試験機を用い、冷熱サイクル試験を行った。適宜のサイクル数の段階で導通接合体を取り出し、導通抵抗値の変化を確認し、導通抵抗値が所期状態から10%以上低下した冷熱サイクル数を求めた。
【0080】
(4)塩素イオン濃度の測定
上記硬化性組成物ペーストを170℃のオーブンで30分間加熱硬化させた後、硬化物を約1mg計り取った。この1mgの硬化物を細かく粉砕し、ガラス製試験管中に入れ、蒸留水を10g添加し、バーナーで試験管を封管し、110℃のオーブン中で時々揺動させつつ、12時間加熱抽出を行った。イオンクロマトグラフィーを用い、得られた抽出水中の塩素イオン不純物濃度(ppm)を測定した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、硬化促進剤として、マイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤と、イミダゾールとを併用した実施例1〜7では、硬化自体が速く進行し、しかも抽出中の塩素イオンの不純物量も少なく、さらに冷熱サイクル試験における信頼性においても優れていることがわかった。
【0083】
これに対して、マイクロカプセル型硬化促進剤及び/またはアミンアダクト型硬化促進剤のみを用いた比較例1,2では、塩素イオン純物量が多く、さらに接合の信頼性が低いことがわかった。さらに、比較例3では、イミダゾール系硬化促進剤のみを用いたためか、硬化速度が十分でなかった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のエポキシ系硬化性組成物の硬化物により電子部品素子が基板に接合されている電子部品の一例を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0085】
1…電子部品
2…電子部品素子
3…金属バンプ
4…基板
5…電極ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、該エポキシ化合物の硬化剤と、該硬化剤による硬化を促進する硬化促進剤とを含み、
前記硬化促進剤として、マイクロカプセル型硬化促進剤とアミンアダクト型硬化促進剤との少なくとも一方の硬化促進剤と、イミダゾール系硬化促進剤とを含むことを特徴とする、エポキシ系硬化性組成物。
【請求項2】
DTAによる発熱ピーク温度が160℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項3】
前記イミダゾール系硬化促進剤が、イソシアヌル酸変性されたイミダゾール系硬化促進剤であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項4】
導電性粉末をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ系硬化性組成物。
【請求項5】
電子部品素子と、前記電子部品素子が実装される基板とを備え、
前記基板上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ系硬化性組成物からなる硬化物を用いて前記電子部品素子が接合されていることを特徴とする、電子部品。
【請求項6】
前記電子部品素子が、金属バンプを有し、前記基板上に該金属バンプに電気的に接続される電極ランドが形成されており、前記金属バンプと電極ランドとが、前記エポキシ系硬化性組成物の硬化物により接合されていることを特徴とする、請求項5に記載の電子部品。


【図1】
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【公開番号】特開2006−160953(P2006−160953A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357198(P2004−357198)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】