説明

エンジンフードのダクト取付構造

【課題】エンジンフード内において、吸音材を装着するための距離(スペース)を取ることが可能なエンジンフードのダクト取付構造を提供する。
【解決手段】吸気口11を通じてエンジンフード1内部に流入する外気は、冷却ファン15の回転によりラジエータ13を通過してエンジン本体17に向かって流れる空気流となる。空気流がエンジン本体17に当ると、駆動中のエンジン本体17から生じる高温の熱によって空気流が熱せられ、空気流の流れの方向が水平方向から垂直方向に変化する。駆動中のエンジン本体17から高温の熱を奪った空気流は、ダクト5にスムーズに導かれルーバー或いはメッシュ(6a、6b)を介して夫々の開口部5a、5bから外部へ流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械のような各種の車輌に適用されるエンジンフードのダクト取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械等の大型で且つ重量のある車輌においては、エンジンの駆動によってエンジンフード内に蓄積される熱を外部に排出するためのダクトを、エンジンフードの両側面の部位に設けた構成のものが多い。このように大型で重量のある車輌を駆動するエンジンにあっては、駆動音が通常の車輌のエンジンのそれに比較して格段に大きいので、騒音規制の観点から、ダクトに吸音材を取付ける必要がある。従来より、この吸音材に係わる提案がなされている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11-117,761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、騒音規制が更に厳しくなってきており、吸音材の吸音効果による騒音低減を達成できる長さの通路を備えたダクトが必要になっている。しかしながら、従来の建設機械にあっては、上述した機能を有するダクトが、エンジンフードの両側面の部位に設けられていたため、エンジン本体や補器類との関係でエンジンフード内のダクトに吸音材を装着するための距離(スペース)がとれないという問題があった。
【0005】
従って本発明の目的は、エンジンフード内のダクトにおいて、吸音材を装着するための距離(スペース)を取ることが可能なエンジンフードのダクト取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従うエンジンフードのダクト取付構造は、エンジンフード(1)内のエンジン(17)設置箇所の上方に、前面入口(27)と下面入口(29)とを持つダクト(5)を備える。
【0007】
本発明に係る好適な実施形態では、上記ダクト(5)の出口(5a、5b)が、エンジンフード(1)の側面に設けられている。
【0008】
上記とは別の実施形態では、上記ダクト(5)が、上記エンジンフード(1)を構成する補強用のリブ(25)を利用して形成されている。
【0009】
また、上記とは別の実施形態では、上記ダクト(5)の内壁面に、吸音材(19、21)を着脱自在に装着している。
【0010】
また、上記とは別の実施形態では、上記ダクト(5)の出口部が、外側に向かうにつれて広がるように形成されている。
【0011】
更に、上記とは別の実施形態では、上記ダクト(5)の少なくとも一部が、上記エンジンフード(1)に対して取外し可能に構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンフード内のダクトにおいて、デッドスペースであったエンジン設置箇所の上方に、前面入口と下面入口とを持つダクトを備えているので、吸音材を装着するための距離(スペース)を取ることが可能なエンジンフードのダクト取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンフードのダクト取付構造を備える車輌
(例えば建設機械)の要部を示す説明図である。
【0015】
図1において、エンジンフード1は、車体フレーム3の前面端部にヒンジ結合されている。エンジンフード1は、実線、及び2点鎖線にて示すように、車体フレーム3の前面端部を中心にして開/閉自在に構成されている。エンジンフード1の前方に向かって傾斜している上面の内側には、後述する(図2、及び図3において符号17で示す)エンジン本体の直上部に設けられた、エンジンフード1の上面を天面とするダクト5が設けられている。
【0016】
ダクト5は、エンジンフード1の天面に沿って横方向に延びて、エンジンフード1の両側端に夫々形成された2つの開口部(本願発明の出口に対応。図1では、図示と説明の都合上、符号5aで示す左側端の開口部しか記載していない)に連通している。開口部5aは、ルーバー若しくはメッシュ(符号6aで示す)で覆われている。
【0017】
また、エンジンフード1の両側面(エンジン本体17の両側面、図1では、図示の都合上、左側面のみ示す)の内側にも、開口部をルーバー若しくはメッシュ(符号8aで示す)で覆われたダクト7が設けられている。車体フレーム3の、エンジンフード1が取付けられている部位の後部には、キャブ(建設機械の運転室)9が配置されている。
【0018】
図2は、図1のA−A線から切断したときのエンジンフードの平面図、図3は、図2のB−B線から切断したときのエンジンフードの側面図である。
【0019】
図2、及び図3において、エンジンフード1内には、吸気口11、ラジエータ13、冷却(送風)ファン15、エンジン本体17が、図2に示すように、車体フレーム3の前面側から後部のキャブ9側に向かって、上述した順に配置されている。そして、(エンジンフード1の)上面側のダクト5は、既述のように、エンジン本体17の直上部から立ち上がり、エンジンフード1の天面に達すると該天面に沿って横方向に延びて、エンジンフード1の両側端に夫々形成された2つの開口部5a、5bに連通している。開口部5aは、ルーバー若しくはメッシュ6aで覆われており、また、開口部5bも、ルーバー若しくはメッシュ6bで覆われている。図4にも示すように、ダクト5の前面には前面入口27が設けられ、ダクト5の下面にはエンジン本体17の直上部に下面入口29が設けられている。前面入口27には、冷却(送風)ファン15から直接の空気流が流入するように開口し、下面入口29には、エンジン本体17から上昇してくる空気流が流入するように開口している。
【0020】
図4は、図2、及び図3で示したダクト5の一方の側の部分を、その下方から見たときの斜視図である。
【0021】
本実施形態では、図4に示すように、ダクト5は、主な構成として、ダクト本体24とリブ25とを備えている。ダクト本体24は、上述した前面入口27、下面入口29、及び開口部5aを持つ箱体であり、ボルト等の締結部材によりエンジンフード1の内側に着脱自在に取付けられている。そして、前面入口27にはルーバー若しくはメッシュ27aが、下面入口29にはルーバー若しくはメッシュ29aが、夫々設けられている。リブ25は、エンジンフード1のコーナー部に設けられたエンジンフード補強用の枠体である。リブ25は、ダクト本体24と開口部5aとを連通させるダクト5の出口部として機能している。図5では、図示と説明の都合上、ダクト5の一方の側(車輌の前面に向かって右側)の部分しか記載していないが、ダクト5の他方の側(車輌の前面に向かって左側)の部分についても、ダクト5の一方の側の部分と同様の構成になっている。
【0022】
図5は、図2のC−C線に沿って見たエンジンフードの正面図である。
【0023】
本実施形態に係るエンジンフード1では、図5に示すように、ダクト5の出口部であるリブ25は、何れもダクト5の内側から外側に向かうにつれてその断面積が広がるように、所謂末広がりに形成されている。更に、本実施形態に従えば、駆動中のエンジン本体17から出る騒音を規制するために、ダクト本体24の各内壁面に、板状を呈する吸音材19、21が、着脱自在に装着されている。各々の吸音材19、21は、エンジン本体17側から上昇するエンジン本体17の高温の熱を吸収した空気流を導入する導入口が一端側の横手方向に、流入した該空気流を夫々の開口部5a、5bへと排出する排出口が他端側に、夫々形成されている。
【0024】
なお、符号23で示すエンジンフード1内部のスペースは、エンジン本体17とラジエータ13とを連結するエンジン本体17を冷却する冷却液配管(図示しない)を布設するためのスペースである。即ち、本実施形態では、左右のダクト5、5は、上記スペース23を確保するため、両者が或る程度の距離を隔てて配置されている。
【0025】
本実施形態によれば、エンジンフード1の両側面に設けられたダクト7、7に加えて、従来デッドスペースであったエンジンフード1内におけるエンジン本体17の上方にも、ダクト5、5を設けることにしたので、ダクト(5、5)の通路長さを確保することができ、それにより騒音を低減することができる。
【0026】
図2、及び図3で示した構成において、エンジンフード1の前面から吸気口11を通じてエンジンフード1内部に流入する外気は、冷却ファン15の回転により、ラジエータ13を通過してエンジン本体17に向かって流れる空気流となる。この空気流がエンジン本体17に当ると、駆動中のエンジン本体17から生じる高温の熱によって該空気流が熱せられ、それにより該空気流の流れの方向が、水平方向から垂直方向に変化する。
【0027】
本実施形態に係るエンジンフード1では、エンジン本体17の直上部に、エンジンフード1の天面に沿って横方向に延びて、エンジンフード1の両側端に夫々形成された2つの開口部5a(、5b)に連通しているダクト5が設けられている。そのため、駆動中のエンジン本体17から高温の熱を奪った空気流は、前面入口27、下面入口29からダクト5にスムーズに導かれ、ルーバー或いはメッシュ(6a、6b)を介して夫々の開口部5a、5bから外部へ流出する。このとき、高温の熱を含んだ空気流は、キャブ9に直接当ることがないから、フロントガラス10のワイパーゴムが劣化したり、或いは、キャブ9内の温度が異常に上昇することがない。
【0028】
また、ダクト5の開口部5a(、5b)が、上方ではなく、エンジンフード1の上面の両側端に夫々形成されているから、雨水や枯葉等の塵芥が開口部5a(、5b)からダクト5を介してエンジンフード1内に入り込む不具合は生じない。
【0029】
また、ダクト5の下面入口29がエンジン本体17の直上部に設けられているために、エンジン本体17に生じた高温の熱のエンジンフード1から外気への排熱効果も大きい。また、ダクト5に前面入口27が設けられているので、冷却ファン15の回転により、エンジンフード1の前面から吸気口11を通じてエンジンフード1内部に流入する外気を、エンジンフード1の後部に向かって流れる空気流に生成し易くなる。よって、駆動中のエンジン本体17から生じる高温の熱を、効率的に吸収することができる。
【0030】
上記のように、ダクト本体24の各内壁面に吸音材19、21を装着することによって、駆動中のエンジン本体17から発生する騒音を吸収することが可能になるので、騒音の大幅な低減を図ることができ、顕著な防音効果が得られる。なお、吸音材19、21は、共にダクト5に対して着脱自在に構成されているので、騒音規制の緩やかな環境下では、吸音材19、21をダクト5から取外した状態で、車輌(建設機械)を駆動することができる。また、ダクト5の出口部(リブ25)が、所謂末広がりになっているので、排熱効果をより高めることも可能になる。
【0031】
本実施形態では、エンジンフード1の内側に取付けられるエンジンフード補強用のリブ25を利用して、ダクト5を設けることとしたので、補強用のリブ25と共にダクト5自体もエンジンフード1の補強部材としての機能を果たすことになり、エンジンフード1の軽量化を図ることが可能になる。また、リブ25を逃げてダクト5を設ける構造にはなっていないから、エンジンフード1の内部空間に余裕を持たせることも可能になる。
【0032】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、エンジンフード1の両側面に設けられたダクト7、7に加えて、従来デッドスペースであったエンジンフード1内におけるエンジン本体17の直上部に、エンジンフード1の天面に沿って横方向に延びて、エンジンフード1の両側端に夫々形成された2つの開口部5a(、5b)に連通しているダクト(5、5)を設けたので、駆動中のエンジン本体17からの高温の熱を含んだ空気流が、エンジンキャビン9に直接当って、フロントガラスのワイパーゴムを劣化させたり、或いは、エンジンキャビン9内の温度が異常に上昇するのを防止することができる。
【0033】
また、ダクト5の開口部5a(、5b)が、上方ではなく、エンジンフード1の上面の両側端に夫々形成されているので、雨水や枯葉等の塵芥が開口部5a(、5b)からダクト5を介してエンジンフード1内に入り込む不具合をも防止することができる。
【0034】
また、冷却ファン15の回転により、エンジンフード1の前面から吸気口11を通じてエンジンフード1内部に流入する外気を、エンジンフード1の後部に向かって流れる空気流に生成し易くなるので、駆動中のエンジン本体17から生じる高温の熱を、効率的に吸収することができる。
【0035】
また、エンジンフード補強用のリブ25を利用して、ダクト5を設けることとしたので、補強用のリブ25と共にダクト5自体もエンジンフード1の補強部材としての機能を果たすことになり、エンジンフード1の軽量化を図ることも可能になる。
【0036】
また、ダクト5の内部(内壁面)に吸音材19、21を装着することによって、駆動中のエンジン本体17から発生する騒音を吸収することが可能になるので、騒音の大幅な低減を図ることができ、顕著な防音効果が得られる。
【0037】
更には、ダクト5の開口部5a、5bが、所謂末広がりになっているので、排熱効果をより高めることも可能になる。
【0038】
図6は、本発明の一実施形態の別の変形例に係るエンジンフードのダクト取付構造の要部を示す図である。図6で示した部位は、図4、即ち、図2のC−C線に沿って見たエンジンフードの正面図に対応している。
【0039】
本変形例に係るエンジンフードの取付構造では、エンジンフード31の内側に、エンジン本体17とラジエータ(13)とを連結するエンジン本体17を冷却する冷却液配管(図示しない)を布設するためのスペースが不要な場合に対応している。そのため、本変形例に係るエンジンフ−ドのダクト取付構造では、図6に示すように、左右のダクト5、5が互いに密着した状態でエンジンフード31内に設置されている。本変形例によれば、ダクト(5、5)の通路長さが更に長くなり、吸音材(19、21)の装着距離が増加するので、騒音低減効果が更に向上する。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0041】
なお、吸音材19、21を、ダクト本体24に貼着してもよい。この場合、騒音規制の緩やかな環境下では、ダクト本体24を、エンジンフード1から取外して、図7に示すように、リブ25のみの状態にして車輌を駆動することができる。この場合、ダクト本体24をエンジンフード1から取外しているので、ダクト本体24をエンジンフード1に装着している場合よりも排熱効率を高めることができる。また、サイズの異なるダクト本体(24)を設定することにより、用途その他の技術的要求等に応じた仕様変更に容易に対応することができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、リブ25の内面には、吸音材19、21を装着していない場合について説明したが、ダクト本体24と同様に、リブ25の内面に吸音材を装着しても差し支えない。また、ダクト本体24については、着脱が自在な構成のものを例にとって説明したが、溶接等の手段により、エンジンフード1内に固定的に取付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンフードのダクト取付構造を備える車輌の要部を示す説明図。
【図2】図1のA−A線から切断したときのエンジンフードの平面図。
【図3】図2のB−B線から切断したときのエンジンフードの側面図。
【図4】図2、及び図3で示したダクトの一方の側の部分を、その下方から見たときの斜視図。
【図5】図2のC−C線に沿って見たエンジンフードの正面図。
【図6】本発明の一実施形態の別の変形例に係るエンジンフードのダクト取付構造の要部を示す図。
【図7】本発明の一実施形態の変形例に係るエンジンフードのダクト取付構造の要部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1、31 エンジンフード
3 車体フレーム
5、7 ダクト
5a、5b 開口部(出口)
6a、6b、8a、27a、29a ルーバー若しくはメッシュ
9 キャブ
10 フロントガラス
11 吸気口
13 ラジエータ
15 冷却(送風)ファン
17 エンジン本体
19、21 吸音材
23 スペース
25 エンジンフード補強用のリブ
27 前面入口
29 下面入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンフード(1)内のエンジン(17)設置箇所の上方に、前面入口(27)と下面入口(29)とを持つダクト(5)を備えるエンジンフードのダクト取付構造。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンフードのダクト取付構造において、
前記ダクト(5)の出口(5a、5b)が、エンジンフード(1)の側面に設けられているエンジンフードのダクト取付構造。
【請求項3】
請求項1記載のエンジンフードのダクト取付構造において、
前記ダクト(5)が、前記エンジンフード(1)を構成する補強用のリブ(25)を利用して形成されているエンジンフードのダクト取付構造。
【請求項4】
請求項1記載のエンジンフードのダクト取付構造において、
前記ダクト(5)の内壁面に、吸音材(19、21)を着脱自在に装着したエンジンフードのダクト取付構造。
【請求項5】
請求項1記載のエンジンフードのダクト取付構造において、
前記ダクト(5)の出口部が、外側に向かうにつれて広がるように形成されているエンジンフードのダクト取付構造。
【請求項6】
請求項1記載のエンジンフードのダクト取付構造において、
前記ダクト(5)の少なくとも一部が、前記エンジンフード(1)に対して取外し可能に構成されているエンジンフードのダクト取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−153042(P2007−153042A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348681(P2005−348681)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】